• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1406598
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-05-12 
確定日 2024-02-06 
事件の表示 特願2019− 23210「偏心揺動型減速装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020−133653、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月13日の出願であって、令和4年9月30日付けで拒絶の理由が通知され、令和4年12月2日に意見書が提出され、令和5年2月7日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、令和5年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和5年2月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1〜6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1〜4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開平3−223548号公報
2.特開2006−77852号公報
3.特開2016−70294号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010−90889号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明6」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記偏心体と前記外歯歯車の間に配置される偏心体軸受と、を備える偏心揺動型減速装置であって、
前記偏心体軸受は、ころを有し、
前記ころは、ころ軸方向の中間部と、前記中間部からころ軸方向の端部に向かって外径が徐々に小さくなるクラウニング部と、を有し、
前記クラウニング部の突出山部高さRpkは、0.063μm以下である偏心揺動型減速装置。
【請求項2】
前記クラウニング部の前記突出山部高さRpkは、0.040μm以下である請求項1に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項3】
前記内歯歯車のピッチ円の半径と前記外歯歯車の軸方向寸法の合計値とで表される円柱体の体積を前記内歯歯車及び前記外歯歯車が構成する減速機構の体積とし、本減速装置の許容トルクを前記減速機構の体積で割った値をトルク密度としたとき、前記トルク密度は、2.9×106N/m2以上である請求項1または2に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項4】
前記中間部の突出山部高さRpkは、0.063μm以下である請求項1から3のいずれかに記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項5】
前記中間部の前記突出山部高さRpkは、前記クラウニング部の前記突出山部高さRpkより小さい請求項4に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項6】
前記ころのころ軸方向の中央から端面までの距離をLhとし、前記ころの中央から前記ころ軸方向に前記Lh×80%の位置における前記クラウニング部のドロップ量を前記Lh×80%で割った値を無次元ドロップ量Daとしたとき、前記無次元ドロップ量Daは、0.0026以上0.010以下である請求項1から5のいずれかに記載の偏心揺動型減速装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開平3−223548号公報には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。以下同様。)。

ア「〔従来の技術]
例えば、バックラッシュが小さく位置決め精度の高い減速機として内接式遊星歯車減速機があり、各種産業用ロボットに使用されている。
内接式遊星歯車減速機は、第15図に示すように、モータ1で直接駆動される入力軸2と出力軸3を同軸心状に配置し、人力軸2に偏心軸受4を介して回動自在に取付けた曲線板5に複数の透孔6を設け、出力軸3の内端に設けた出力フランジ7に各透孔6へ遊嵌する内ピン8を設け、曲線板5と出力フランジ7を回転方向に結合すると共に、曲線板5の外周に一定間隔で形成した曲線凹部の複数をケーシング9の内周に一定の間隔で配置した外ピン10に係合させた構造になっている。
この減速機は、入力軸2の回転により偏心軸受4を介して曲線板5に偏心運動を与え、外ピン10と曲線凹部の数の差により、曲線板5に自転を生しさせ、内ビン8を介して出力軸3にこの減速回転を取り出すようになっている。
ところで、上記のような減速機においては、偏心している偏心軸受4に衝撃荷重が作用するため、大きな負荷容量が要求され、従って上記減速機の寿命は偏心軸受で大きく左右される。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、内接式遊星歯車減速機はその構造上、高温希薄な潤滑状態で偏心軸受が使用されるため、この軸受の長寿命対策が要望されている。
従来、偏心軸受の長寿命対策として、転動体を浸炭窒化処理することが行なわれているが、長寿命化が得られる反面、これらの処理に特殊熱処理炉が必要であり、非常に処理コストが高くつくという問題がある。
そこでこの発明の課題は、偏心軸受の転動体における転動面の面粗さの評価を軸方向だけでなく転がり方向にも着目し、軸方向と円周方向の表面粗さを一定範囲に抑えることで油膜形成が有利に行なえ、過酷な潤滑条件においても潤滑油保持能力が優れ、軸受の長寿命化を図ることができると共に、転動体の処理コストも低減できる内接式遊星歯車減速機用偏心軸受を提供することにある。」(第1頁右欄第4行〜第2頁右上欄第3行)

イ「〔実施例〕
以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
この発明の偏心軸受4は第1図に示すように、内輪21と保持器22で一定間隔に保持した多数の円筒ころ転動体23及びこの転動体23で回動自在に支持した外輪とで構成され、偏心軸受4は第15図で示した内接式遊星歯車減速機の内部で入力軸2に取付けられて使用される。
従って、外輪は曲線板5であり、この曲線板5の転動体23によって支持される内径面は研削加工によって表面粗さが3〜5Sの仕上面になっている。
前記転動体23は、表面がランダムな方向の微小粗面23aに形成され、この微小粗面23aは、面粗さを転動体23の軸方向と円周方向のそれぞれを求めてバラメータRMSで表示したとき、軸方向面粗さRMS(L)と円周方向面粗さRMS(C)の比RMS(L)/RMS(C)を1.0以下、例えば、0.7〜1.0にすると共に、表面粗さのパラメータSK値が軸方向、円周方向とも−1.6以下になっている。」(第2頁左下欄第5行〜同頁右下欄第6行)

ウ 「



エ 第15図には、偏心軸受4として入力軸2に取り付けられた偏心体が示されている。そして、当該偏心体と曲線板5との間に偏心軸受4としての転動体が配置されることが示されており、上記イの記載を踏まえると、上記転動体は、転動体23であるといえる。

したがって、上記ア、イの事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「曲線板5の外周に一定間隔で形成した曲線凹部の複数をケーシング9の内周に一定の間隔で配置した外ピン10に係合させた構造となっており、
曲線板5に偏心運動を与える偏心体と、当該偏心体と曲線板5との間に配置される転動体23とを備える、内接式遊星歯車減速機であって、
前記転動体23の面粗さを軸方向と円周方向のそれぞれを求めてバラメータRMSで表示したとき、軸方向面粗さRMS(L)と円周方向面粗さRMS(C)の比RMS(L)/RMS(C)を1.0以下とすると共に、表面粗さのパラメータSK値が軸方向、円周方向とも−1.6以下となるようにした内接式遊星歯車減速機。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2006−77852号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題を解消するためになされたものであり、簡単な工程により、かつ低コストで転がり摺動面の処理をしてピーリング等の表面損傷の発生を防ぐことができる転がり摺動部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転がり摺動部品は、相手部材の表面と転がり摺動する転がり摺動面を備えた転がり摺動部品であって、前記転がり摺動面に、その運動方向に沿って連続するうねり部が形成されていることを特徴としている。」

イ「【0011】
また、JIS B0601に規定される、前記うねり部の算術平均うねりWaが0.05μm≦Wa≦0.11μmであり、突出山部高さRpkが0.05μm≦Rpk≦0.15μmであり、かつ、うねり曲線要素の平均長さWSmが0.15mm≦WSm≦0.35mmであるのが好ましい。前記うねり部の算術平均うねりWaは、うねりの高さ方向の振幅、すなわちうねりの大きさを表すパラメータであり、この値が0.05μm未満であると、ピーリングを発生させるような貧潤滑領域において所要量の潤滑油をうねり間の溝に貯えることができず、一方、0.11μmを超えると、貧潤滑ゆえにうねり山部において金属接触する領域が増大するという問題がある。また、前記突出山部高さRpkは、表面の潤滑性評価パラメータとして用いられる突出部高さを表すパラメータであり、繰り返し接触の初期段階で表面粗さの先端部が磨耗によりなじむ過程があるが、この値が0.05μm未満であると、なじむ過程がほとんどなくなり、逆に表面粗さが大きくなる。一方、0.15μmを超えると、粗さが大きすぎて、なじみによる粗さの改善がなく、さらに粗さが大きくなるという問題がある。さらに、前記うねり曲線要素の平均長さWSmは、隣接するうねり部の山間の幅を表すパラメータであり、この値が0.15mm未満であると所要量の潤滑油をうねり間の溝に貯えることができず、一方、0.35mmを超えると、谷部の潤滑油が溝の円周方向に沿って漏れ易くなり、接触条件の厳しい山部先端に供給され難くなるという問題がある。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2016−70294号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

【0050】
この円筒ころ軸受41は、図7に示すように、円筒ころ44の外周面44aに、ころ端面44bから軸方向内側へ1.5mm(=M)の位置にある測定点GPで2〜15μmの径方向変位量Nを持つクラウニング(クラウニング長さCL、クラウニング半径CR)が施されている。なお、この円筒ころ44の外周面44aの軸方向中央部(両端部のクラウニング長さCLを除く部位)は、軸方向に平行な平坦面としている。なお、円筒ころ44の軸方向寸法(例えば11mm)は、曲線板26a,26bの軸方向寸法(例えば8mm)よりも大きく設定されている。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2010−90889号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

【0060】
また、円筒ころ6cの外径端部には、エッジロードの発生を防止するために、クラウニングが施され、外輪6aの軌道面および、偏心軸部4aの軌道面4dに、高周波焼き入れが施されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ケーシング9の内周に一定の間隔で配置した外ピン10」、「曲線板5」は、それぞれ、本願発明1の「内歯歯車」、「外歯歯車」に相当する。
よって、引用発明の「曲線板5の外周に一定間隔で形成した曲線凹部の複数をケーシング9の内周に一定の間隔で配置した外ピン10に係合させた構造」は、本願発明1の「内歯歯車と、前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車と」を備える点に相当する。

イ 引用発明の「偏心体」、「転動体23」は、それぞれ、本願発明1の「偏心体」、「偏心体軸受」及び「ころ」に相当する。
よって、引用発明の「曲線板5 に偏心運動を与える偏心体と、当該偏心体と曲線板5との間に配置される転動体23とを備える」点は、本願発明の「前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、前記偏心体と前記外歯歯車の間に配置される偏心体軸受と、を備える」点、及び「前記偏心体軸受は、ころを有」する点に相当する。

ウ 引用発明の「内接式遊星歯車減速機」は、偏心運動を与えるものであるから、本願発明1の「偏心揺動型減速装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記偏心体と前記外歯歯車の間に配置される偏心体軸受と、を備える偏心揺動型減速装置であって、
前記偏心体軸受は、ころを有する偏心揺動型減速装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明1は、「前記ころは、ころ軸方向の中間部と、前記中間部からころ軸方向の端部に向かって外径が徐々に小さくなるクラウニング部と、を有し、前記クラウニング部の突出山部高さRpkは、0.063μm以下である」のに対し、引用発明は、中間部と、中間部と区別したクラウニング部は明示されておらず、「前記転動体23の面粗さを軸方向と円周方向のそれぞれを求めてバラメークRMSで表示したとき、軸方向面粗さRMS(L)と円周方向面粗さRMS(C)の比RMS(L)/RMS(C)を1.0以下と共に、表面粗さのパラメータSK値が軸方向、円周方向とも−1.6以下」である点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
上記第4 2によれば、引用文献2には、ピーリング等の表面損傷の発生を防ぐために、転がり摺動部品の転がり摺動面に、その運動方向に沿って連続するうねり部が形成され、前記うねり部の算術平均うねりWaが0.05μm≦Wa≦0.11μmであり、突出山部高さRpkが0.05μm≦Rpk≦0.15μmであり、かつ、うねり曲線要素の平均長さWSmが0.15mm≦WSm≦0.35mmである摺動物品が記載されている(以下「引用文献2記載の事項」という)。
上記引用文献2記載の事項には、摺動物品の突出山部高さRpkを0.05μm≦Rpk≦0.15μmとした点が記載されており、これは、本願発明1で特定される「突出山部高さRpkは、0.063μm以下」と、Rpkの範囲が一部重複するものである。
また、ころ軸受のころにクラウニング部を設けることは、本願出願前において周知の技術である(例えば、上記第4 3で摘記した引用文献3の段落【0050】、上記第4 4で摘記した引用文献4の段落【0060】参照。)。
しかしながら、上記引用文献2記載の事項には、クラウニング部に関する記載はなく、上記周知の技術は、表面粗さについて開示するものではない。
すなわち、上記引用文献2記載の事項及び上記周知の技術は、いずれも、ころのクラウニング部の表面粗さに着目したものではなく、クラウニング部の突出山部高さRpkを、0.063μm以下とした点は開示されていない。
本願発明1は、ころの回転中心線が傾いていない通常時には、相手部材と接触しない部分であるクラウニング部に着目し、クラウニング部の突出山部高さRpkを、0.063μm以下とすることで、偏心体軸受けの転動面におけるピーリングを抑制するという効果(段落【0007】)を奏するものであり、このような効果は、引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術から予測できる範囲内のものではない。
したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1〜6は、引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2024-01-24 
出願番号 P2019-023210
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小川 恭司
特許庁審判官 平城 俊雅
内田 博之
発明の名称 偏心揺動型減速装置  
代理人 小島 誠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ