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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1406709
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-05-16 
確定日 2024-02-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第7185967号発明「造粒物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7185967号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7185967号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和4年4月8日(優先権主張 令和3年7月12日)を出願日とする特許出願であって、令和4年11月30日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和5年5月16日に特許異議申立人 小池 潤一(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年同月31日に特許異議申立人 豊田 享子(以下、「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年6月6日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「特許異議申立人C」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年同月8日に特許異議申立人 小林 美帆子(以下、「特許異議申立人D」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月18日付けで取消理由が通知され、同年10月12日に特許権者 株式会社 東洋新薬(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出がされ、同年同月19日付けで特許異議申立人AないしDに対して審尋を行ったところ、同年11月7日に特許異議申立人Cより回答書が提出され、同年同月8日に特許異議申立人B及びDよりそれぞれ回答書が提出されたものの、特許異議申立人Aからは何ら応答がなかったものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物であって、
比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする飲食品用造粒物。
【請求項2】
緑葉が麦類の緑葉であることを特徴とする請求項1に記載の飲食品用造粒物。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年5月16日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由A1(新規性進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証ないし甲第A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第A1号証ないし甲第A5号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由A2(明確性要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

ア 請求項1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉」という選択肢は、嵩比重の規定、分散性及び飲みやすさの改良等といった技術思想において、共通の性質・活性を有していないので、一群のものとして認識される物質群に属しておらず、マーカッシュクレーム違反である。

イ 請求項1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉」は、嵩比重特定に特徴がある発明にとっては、意味のない限定記載である。

ウ 請求項1の「比重」は、同じ「ゆるめ嵩密度」であったとしても、測定方法や粉体がどのように取り扱われたかによって大きく異なる値が測定されるので、一義的に決まるとはいえない。

(3)申立理由A3(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

ア 明細書には、比較例5として、緑茶末だけが発明の効果を奏しないものとして挙げられてはいるが、緑葉の範囲の限定がないと特許性が明らかにない発明において、緑茶末だけが効果を示さない比較例があったからと言って、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉」の範囲が、本件特許発明の効果を有するものであるとは認められず、本件特許発明が明細書によってサポートされているとは認められない。

イ 本件特許発明の「比重が0.300g/cm3未満である」は、最終の発明物の性質(要件)であって、本件特許発明においては、造粒物の製造方法や造粒条件が規定されていない。

ウ 本件特許発明においては、嵩比重を特定し分散性の良さを「発明の効果」とする上で当然規定されるべき、造粒物の粒径範囲(D50)や、個数若しくは質量平均粒子径、粒子形状等の、「小さい比重」とリンクするはずの必須要件が規定されていない。

(4)証拠方法
甲第A1号証:特開2002−136270号公報
甲第A2号証:特開2021−47号公報
甲第A3号証:特開2005−73557号公報
甲第A4号証:特開2008−86311号公報
甲第A5号証:特開2006−166776号公報
甲第A6号証:特願2021−138353の意見書
甲第A7号証:「造粒の基本の基」、日本油化学会誌、第48巻第9号、861−869(1999)
甲第A8号証:「粉体粒子の付着と凝集」、色材協会誌、第48巻、165−176(1975)
甲第A9号証:第十八改正日本薬局方 p.98-100
証拠の表記は、特許異議申立書Aの記載におおむね従った。
以下、順に「甲A1」のようにいう。

2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年5月31日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由B1(甲第B1ないしB5号証から認定される公然実施をされた発明に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、下記の甲第B1ないしB5号証から認定される、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるか、該公然実施をされた発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由B2(甲第B6号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B6号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)証拠方法
甲第B1号証:『有機八彩の青汁』の小袋包装品(賞味期限は2021.4)、セコム医療システム株式会社
甲第B2号証:『有機八彩の青汁』 (https://web.archive.org/web/20160525033530/http://www.secomfoods.com/health/products/detail.asp?SHN=OOO1FDOK7050)、2016年5月25日(アーカイブ日)
甲第B3号証:写真『有機八彩の青汁』の外箱裏面、撮影日:2023年4月12日、撮影者:豊田享子、撮影場所:自宅
甲第B4号証:『有機八彩の青汁』の造粒品分析結果、2023年3月22日、株式会社大川原製作所
甲第B5号証:『有機八彩の青汁』のゆるめかさ密度分析結果、2023年4月10日、ホソカワミクロン株式会社
甲第B6号証:特開2015−2715号公報
甲第B7号証:特開2005−73557号公報
甲第B8号証:特開2017−99318号公報
甲第B9号証:特開2016−131508号公報
甲第B10号証:特開2006−304605号公報

なお、特許異議申立人Bは、令和5年11月8日に提出した回答書(以下、「回答書B」という。)に添付して、甲第B11号証を提出している。
甲第B11号証:「手打ちうどんを成功に導く!基本情報とコツをリサーチ」、オリーブオイルをひとまわし編集部、2020年4月10日更新、2023年11月6日印刷、(https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/12/post-3403.html)

証拠の表記は、特許異議申立書B及び回答書Bの記載におおむね従った。
以下、順に「甲B1」のようにいう。なお、甲B7は甲A3と同じである。

3 特許異議申立人Cが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年6月6日に特許異議申立人Cが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書C」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由C1(甲第C1号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第C1号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由C2(甲第C2号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C2号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)証拠方法
甲第C1号証:特開2006−121930号公報
甲第C2号証:特開2017−99318号公報
甲第C3号証:特開2005−73557号公報

なお、特許異議申立人Cは、令和5年11月7日に提出した回答書(以下、「回答書C」という。)に添付して、甲第C4号証ないし甲第C7号証を提出している。
甲第C4号証:特開2006−166776号公報
甲第C5号証:特開2008−86311号公報
甲第C6号証:特開2015−100324号公報
甲第C7号証:特開2015−104347号公報

証拠の表記は、特許異議申立書C及び回答書Cの記載におおむね従った。
以下、順に「甲C1」のようにいう。なお、甲C2は甲B8と同じであり、甲C3は甲A3及び甲B7と同じであり、甲C4は甲A5と同じであり、甲C5は甲A4と同じである。

4 特許異議申立人Dが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年6月8日に特許異議申立人Dが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書D」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由D1(甲第D1号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第D1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第D1号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由D2(甲第D2号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第D2号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由D3(明確性要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・請求項1の「比重」の語は文言上明確でない。「比重」の値は測定装置への投入条件、測定環境、粉体特性評価装置、及び、造粒物の保存環境による経時変化により変動するから、本件特許の明細書の記載を参酌しても、「比重」の測定値は一義的に定まらない。

(4)申立理由D4(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

ア 比重を特定値未満としたことにより造粒物の「飲みやすさ」の課題を解決したことは、本件特許明細書において実証されていない。

イ 原料となる植物の種類により分散性が異なるのは技術常識であり、請求項1で規定するすべての植物を原料とした場合について、「分散性」の課題を解決できることを当業者は理解できない。

ウ 請求項1は「・・・含有する造粒物」と規定していることから、本件特許発明には、緑葉の粉砕末を極僅か含有し、残り大半が別の成分である造粒物も包含され、このような場合に「分散性」の課題を解決できるとは認められない。

エ 造粒物の「比重」は測定条件によって変化するので、請求項1に規定する植物を原料とした造粒物を作製し、その比重を測定した結果、0.300g/cm3未満であったとしても、該造粒物が「飲みやすさ」及び「分散性」の課題を解決できるか不明である。

(5)申立理由D5(実施可能要件
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・本件特許明細書の記載から造粒物の比重が0.300g/cm3未満となるような条件を割り出すことは、当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。

(6)証拠方法
甲第D1号証:特開2017−99318号公報
甲第D2号証:特開2006−166776号公報
甲第D3号証:特開2021−47号公報
甲第D4号証:特開2018−7632号公報
甲第D5号証:固体製剤のスケールアップ【第2回】|GMP Platform
(https://www.gmp-platform.com/article_detail.html?id=213)
甲第D6号証:国際公開第2020/136981号
甲第D7号証:特開2009−254240号公報
甲第D8号証:特開2019−193595号公報
甲第D9号証:「日本薬局方」ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000066530.html) 第十八改正日本薬局方 p.98-100
甲第D10号証の1:粉体工学会誌,1979年,Vol.16, No.9, p.528-533
甲第D10号証の2:粉体工学研究会誌,1972年,Vol.9, No.2, p.90-97
甲第D11号証:化学装置 2020年6月号 p.60-61
甲第D12号証:異議2021−700065の異議決定書
甲第D13号証:特願2021−138353の意見書

なお、特許異議申立人Dは、令和5年11月8日に提出した回答書(以下、「回答書D」という。)に添付して、甲第D14号証を提出している。
甲第D14号証:特開2019−182748号公報

証拠の表記は、特許異議申立書D及び回答書Dの記載におおむね従った。
以下、順に「甲D1」のようにいう。なお、甲D1は甲B8及び甲C2と、甲D2は甲A5及び甲C4と、甲D3は甲A2と、甲D9は甲A9と、甲D13は甲A6と、それぞれ同じである。

第4 令和5年8月18日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要

請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和5年8月18日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由には、申立理由B1、申立理由B2、申立理由C1が包含される。

1 取消理由1(甲第B1ないしB5号証から認定される公然実施をされた発明に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第B1ないしB5号証から認定される、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるか、該公然実施をされた発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 取消理由2(甲第B6号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B6号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 取消理由3(甲第C1号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第C1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第C1号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 当審の判断
1 令和5年8月18日付け取消理由通知で通知した取消理由について
(1) 主な証拠の記載事項等
ア 甲B1ないし甲B5に記載された事項等
(ア) 甲B1に記載された事項
甲B1は「有機八彩の青汁」の小袋包装品であり、袋裏面には、賞味期限として「2021.04 3」と記載されている。

(イ) 甲B2に記載された事項
甲B2は、「有機八彩の青汁」に関し、おおむね次の事項が記載されている。


」(第3頁)



」(第6頁ないし第7頁)

(ウ) 甲B3に記載された事項
甲B3は、「有機八彩の青汁」に関し、次の事項が記載されている。




(エ) 甲B4に記載された事項
甲B4には、「サンプル品の造粒について」として、次の事項が記載されている。




」(第1頁ないし第3頁)

(オ) 甲B5に記載された事項
甲B5には、「分析評価結果報告書」として、次の事項が記載されている。



」(第1頁ないし第2頁)

(カ) 甲B1ないしB5より認定される発明
上記アないしオの記載に基づき、甲B1ないしB5から次の発明を認める。
<甲B1発明>
「有機八彩の青汁。」

イ 甲B6に記載された事項等
(ア) 甲B6に記載された事項
甲B6には、「桑葉加工品及びその製造方法」に関し、おおむね次の事項が記載されている。
「【請求項1】
生の桑葉を、まず98℃〜100℃の蒸気で蒸し、その後200℃〜300℃の蒸気で蒸して殺青をし、該殺青をした桑葉を、揉むことなく熱風で解しながら乾燥させ、該乾燥させた桑葉を粉砕し、該粉砕した桑葉の粉を造粒し顆粒状にして得られた
桑葉加工品。」

「【0007】
本発明者は、飲用や食用として利用することができる桑葉加工品の製造において、桑葉加工品が湯水に溶けやすいように、桑葉加工品の色と、桑葉加工品を湯水に溶かした桑葉茶の桑葉由来の緑色が自然な明るい緑色となるように、且つ桑葉特有の臭いやえぐみを低減し、茶として飲んだときの喉越しをよくするために、試行と研究を重ねた。そして、桑葉の蒸し方や製品の形態、造粒の方法、或いは製品の粒径(粒径分布)等の好適な組合せを見出し、本発明を完成したものである。
【0008】
本発明は、飲用や食用として利用することができ、湯水に簡単に溶けて利用しやすく、その色と、それを湯水に溶かした桑葉茶の色、すなわち桑葉由来の緑色が自然な明るい緑色であり、桑葉特有の臭いやえぐみが低減され、茶として飲んだときの喉越しも良い桑葉加工品及びその製造方法を提供することを目的とする。」

「【実施例】
【0029】
(1)桑葉を所要量収穫した。
(2)収穫した桑葉の生葉を一時コンテナ保管した。
(3)桑葉の生葉1000kgを蒸機(SKD−S型 1300型)の投入口から順次投入した。投入する際に、98℃の高温蒸気を桑葉に吹き付け、この蒸気を利用し、蒸機内部で出口側へ搬送しながら撹拌し、30秒間蒸した。そして、蒸機内部で蒸した桑葉に、蒸機の出口のやや手前側で300℃の高温蒸気を吹き付け、桑葉が出口から出るまでの間、桑葉を蒸した。
【0030】
(4)上記のように蒸した桑葉を、乾燥炉である碾茶炉を使用し、炉内で170℃〜210℃の熱風で葉の重なりを解しながら30〜40分間かけてゆっくり乾燥させた。これにより、桑葉の含水率が6%となり、桑葉の全体の重さが230kgとなった。
(5)そして、乾燥した桑葉230kgを使用して葉と茎に分類し、後の作業の障害となる茎を除去した。これにより、桑葉の全体の重さは190kgとなった。
【0031】
(6)桑葉から茎を除いた残りの葉分を、乾燥機(D60k型)を使用し、82℃〜95℃の熱風で30〜40分乾燥させた。これにより、桑葉の含水率が4〜4.8%となり、桑葉の全体の重さが186kgとなった。
(7)次に、乾燥した葉分186kgを使用し、適当な大きさに切断した。
(8)切断した葉分を篩い機(14R-220型式、12号)にかけて廻し篩いし、葉と葉脈及び細粉に篩い分けた。葉と分かれた葉脈及び細粉は除去し、残りの葉170kgを加工品原料とした。
【0032】
(9)加工品原料の一日の生産分にNo.1、No.2〜と順次番号を付け、例えば十日分を順次ストックした。
(10)ストックする加工品原料はそれぞれ真空包装にした。
(11)加工品原料を焙煎機(マイクロ波遠赤外線乾燥火入機 NJE6007型)を使用して、150℃で3分間焙煎し、これにより、加工品原料の葉に適度なロースト香を付けた。
【0033】
(12)そして、加工原料の各ストック分から同量ずつ取り出し、それらを合組(ブレンド)した。例えば、加工品原料1000kgを加工して桑葉加工品を製造する場合は、上記No.1からNo.10までの各加工品原料から100kgずつを取り出し、これらを合組(ブレンド)し、合計1000kgとする。上記十日分を同様に合組することで、ストックした加工品原料から原料を取り出す際に、原料の品質を均等にすることができる。なお、加工品原料には、例えば緑茶又は芋の葉等をブレンドする場合がある。
【0034】
(13)このように焙煎した葉を殺菌装置(型式KPU-20)を使用し殺菌した。本実施例における殺菌方法は、気流式殺菌方式といわれるものを採用した。気流式殺菌方式とは、殺菌をする対象物に、加熱した蒸気を吹き付けながら、加圧配管の中を移動させるというものである。なお、殺菌方法については、他の公知手段を採用しても良い。
【0035】
(14)殺菌した葉を気流式粉砕機(型式400S型)を使用し、粉砕した。粉砕機としては、ボールミル機等、他の粉砕機を使用することもできる。粒径は、2〜80μmとした。
(15)粉砕した桑葉の粉を、造粒機(流動層造粒乾燥機:300型)を使用し、デキストリン等の結合剤を使用せず水だけで造粒し顆粒とした。顆粒の粒径分布については、後で詳しく説明する。
(16)得られた顆粒状の桑葉加工品を、規格である1g又は3gでスティック袋に詰めて桑葉加工品の製品とした。最後に、スティックを箱詰めにし、箱全体をシュリンク包装した。
【0036】
図3を参照し、本実施例における桑葉加工品の顆粒の粒径分布について説明する。
図3において、棒グラフは粒径の区間毎の区間重量%を表し、線グラフは粒径毎の累積重量%を表している。
この顆粒状の桑葉加工品は、粒径4.24μmまでの累積重量%が3.69重量%であり、粒径76.82μmまでの累積重量%が99.69重量%である。したがって、粒径が4〜85μmの顆粒であれば、顆粒全量のうち、少なくとも96.00(=99.69−3.69)重量%以上が含まれていることになる。なお、この顆粒状の桑葉加工品の嵩比重は、0.30であった。
【0037】
このように、桑葉加工品は、4μmから85μmまでの粒径で湯水に溶け込みやすい顆粒が桑葉加工品の大半又はほとんど(少なくとも90重量%以上)を占めているので、顆粒を湯水に溶かしたときに平均的に溶けて、湯呑み等の底に溶け滓や澱等が沈澱しにくく、濁りも生じにくい。この点から、桑葉加工品を湯水に溶かした、いわゆる桑葉茶は、喉越しがよく飲みやすい。
【0038】
また、顆粒状の桑葉加工品は、顆粒内部の粒子間に隙間を有し、水だけで造粒しているので、湯水に入れると毛細管現象によって湯水と瞬時に馴染んで崩れ、簡単に溶けるので利用しやすい。」

(イ) 甲B6に記載された発明
甲B6に記載された事項を特に実施例の桑葉加工品に関して整理すると、甲B6には次の発明が記載されていると認める。

<甲B6発明>
「粉砕した桑葉の粉を流動層造粒して得られる、嵩比重0.30の顆粒状の桑葉加工品。」

ウ 甲C1に記載された事項等
(ア) 甲C1に記載された事項
甲C1には「植物粉末及びその製造方法」に関し、おおむね次の事項が記載されている。

「【請求項4】
下記(A)〜(C)工程を含む植物粉末の製造方法。
(A) 植物を乾燥・粉砕する予備粉末調製工程。
(B) (A)工程後、予備粉末に水を添加し、粉末の含水量を20〜50質量%とする加水工程。
(C) (B)工程後、加水した予備粉末を乾燥させる乾燥工程。」

「【0011】
本発明にかかる植物粉末の製造方法を説明する。
(A)予備粉末調製工程
初めに収穫した植物に付着した泥やほこりなどを洗い流し、乾燥・粉砕する。
本発明において、植物としては、葉菜類や、根菜類、芋類、海藻類、豆類等が挙げられる。特にケール、大麦若葉、桑の葉、アシタバ、茶、笹の葉が好適である。植物は単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。
乾燥の際、植物によっては、適当な大きさ、薄さに裁断してから行うことが好ましい。乾燥は、植物の含水量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように行う。含水量10質量%を超えていると、以下の工程を行っても本発明の効果が得られないことがある。乾燥方法は、自然乾燥、温風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥等の常法を用いることができる。」

「【0016】
<予備粉末>
以下、予備粉末としては、特に断りのない限りこれを使用する。
ケールの葉を水洗後1cm四方に裁断した。これを60℃にて10時間温風乾燥後、凍結粉砕機を用いて粉砕し、平均粒子径35μm、含水量5質量%の予備粉末を得た。
・・・(略)・・・
【0021】
(実施例2)
上記予備粉末180kgを流動層造粒機(フロイント産業社製NFLO-300)に入れ、給気温度35℃にて、流動させながら水を噴霧して、含水量を30質量%とした。その後、80℃の温風を吹き込み、含水量が5質量%になるまで約2時間乾燥させた(平均粒子径180μm、嵩比重0.42)。
(比較例2)
上記予備粉末80kgを流動層造粒機(フロイント産業社製 フローコーター)に入れ、給気温度60℃、排気温度35℃にて、流動させながら1分間あたり1Lの水を40分間噴霧した。含水量は15質量%であった。その後、60℃の温風を吹き込み、含水量が5質量%になるまで約60分間乾燥させた(平均粒子径100μm、嵩比重0.3)。」

(イ) 甲C1に記載された発明
甲C1に記載された事項を特に比較例2の植物粉末に関して整理すると、甲C1には次の発明が記載されていると認める。

<甲C1発明>
「ケールの葉を粉砕した予備粉末を流動層造粒して得られる、嵩比重0.3の植物粉末。」

(2) 取消理由1(甲第B1ないしB5号証から認定される公然実施をされた発明に基づく新規性進歩性)について
ア 甲B1発明の公然実施性について
甲B1、B2、B4及びB5によれば、甲B1発明である「有機八彩の青汁」は2016年5月25日時点で販売されており、また、賞味期限が2021年4月である商品が存在したことが示されている。
してみれば、甲B1発明である「有機八彩の青汁」は、本件特許の優先日である令和3年(2021年)7月12日よりも前において既に販売されていたものであるといえるから、本件特許優先日前において公然実施されていたものといえる。

イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B1発明を対比する。
甲B1発明である「有機八彩の青汁」は、甲B2第6頁の記載によれば、大麦若葉、桑葉、ケール、抹茶、ごま若葉、はと麦若葉、モロヘイヤ、キダチアロエを原材料とするものであるから、本件特許発明1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉」「を含有する」との特定事項を満たす。
甲B1発明である「有機八彩の青汁」は、甲B2第7頁の記載によれば「栄養補助食品」であるから、本件特許発明1の「飲食品用造粒物」と、「飲食品用物」である限りにおいて一致する。

してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉を含有する、飲食品用物。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点B1−1>
本件特許発明1は「緑葉」が「粉砕末」であるのに対し、甲B1発明は「粉砕末」であるかが不明である点

<相違点B1−2>
「飲食品用物」に関して、本件特許発明1は「造粒物」であるのに対し、甲B1発明は「造粒物」であるかが不明である点

<相違点B1−3>
本件特許発明1は「比重が0.300g/cm3未満である」のに対し、甲B1発明の比重が不明である点

事案に鑑み、相違点B1−2及びB1−3について併せて検討する。
甲B4の「2.マイクロスコープ撮影結果」の項にあげられている2枚の写真は、甲B1発明の「有機八彩の青汁」の内容物をデジタルマイクロスコープで撮影したものであり、また、甲B5の「3.分析・測定結果」は、甲B1発明の「有機八彩の青汁」の内容物の「ゆるめかさ密度」を測定したものとされるところ、甲B4及び甲B5によればその賞味期限が2021年4月であるものを、甲B4は2023年3月22日に報告されたものであり、また、甲B5は2023年4月10日に分析したものである。
つまり、賞味期限をおおむね2年も経過したものについて撮影あるいは測定したものであること、また、その保管条件も明らかではないことを併せて検討すると、甲B4及び甲B5において撮影・分析された「有機八彩の青汁」の性状が、製造時と同じ状態を保持していたものであると直ちにいうことはできない。
つまり、甲B1発明の「有機八彩の青汁」の内容物が、製造された段階で「造粒物」であったとは直ちにはいえず、また、その「ゆるめかさ密度」が0.2530g/cm3であったともいえない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1発明ではない。
また、甲B1ないし甲B5及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B1発明において、「造粒物」とした上で、ゆるめかさ密度を変更・調整する動機があるとはいえないから、甲B1発明において、相違点B1−2及び相違点B1−3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

この点について、特許異議申立人Bは回答書Bにおいて、甲B4の顕微鏡写真からみて、「甲B4の有機八彩の青汁の顕微鏡写真に示されるような粒子間に空隙を形成する集合体という形態は有機八彩の青汁の製造後に生じたものではなく製造時に形成されたものと考えられること、少なくとも有機八彩の青汁の製造時点で「造粒物」の定義から逸脱するほどに粒子が離散していたとは考えられないこと」(回答書B第8頁)、特許権者が提示した知財高裁判例(乙5)は、その争点が異なるものであることなどを主張する。
しかしながら、上記検討のとおり、甲B5として分析された対象物は、賞味期限をおおむね2年も経過したものであることからすると、上記のとおり、甲B5の分析対象物が、製造時と同じ性状であると直ちに推認することができない。
してみると、甲B1発明の内容物が「造粒物」であるか、また、その「ゆるめかさ密度」についても不明であるといわざるを得ないから、結果として、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。

(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1が甲B1発明ではなく、甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2も甲B1発明ではなく、甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 取消理由1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(3) 取消理由2(甲B6に基づく新規性進歩性)について
ア 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B6発明とを対比する。
甲B6発明は「粉砕した桑葉の粉を流動層造粒して得られる」ものであるから、本件特許発明1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物」との特定事項を満たす。
また、甲B6発明が、本件特許発明1の「飲食品用」との特定事項を満たすことも明らかである。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物である、
飲食品用造粒物。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点B6>
「比重」に関し、本件特許発明1は「比重が0.300g/cm3未満である」のに対し、甲B6発明は「嵩比重0.30」である点。

相違点B6について検討する。
甲D9には、「粉体のかさ密度は、タップしない(緩み)状態での粉体試料の質量と粒子間空隙容積の因子を含んだ粉体の体積との比である」(第98頁左欄「1.かさ密度」の項)と記載されている。
してみると、甲B6発明の「嵩比重0.30」は、本件特許発明1でいうところの「比重」になおすと、「0.30g/cm3」であるといえ、「0.300g/cm3未満」との特定事項を満たさないものであるから、相違点B6は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲B6発明ではない。
また、甲B6及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B6発明において、比重(ゆるめかさ比重)に着目し、その比重を減じ、相違点B6に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機があるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点B6に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことにより、「分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を提供する」との格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲B6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

この点について、特許異議申立人BないしDはいずれも回答書BないしDにおいて、甲B6における目的、甲B7及び甲C4ないし甲C7の記載から分散性及び見やすさを更に向上させるために嵩密度を低くすることは技術常識である点などをあげ、甲B6発明において、嵩密度を低くし、相違点B6に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである旨主張する。
しかしながら、甲B6は、「飲用や食用として利用することができ、湯水に簡単に溶けて利用しやすく、その色と、それを湯水に溶かした桑葉茶の色、すなわち桑葉由来の緑色が自然な明るい緑色であり、桑葉特有の臭いやえぐみが低減され、茶として飲んだときの喉越しも良い桑葉加工品及びその製造方法を提供すること」(【0008】)を目的とするものの、嵩比重に着目するものではなく、また、他の全ての証拠の記載を見ても、甲B6発明において「比重が0.300g/cm3未満」とする動機があるともいえないものであるのに対し、本件特許発明1は、「比重が0.300g/cm3未満」との相違点B6に係る発明特定事項を満たすことにより、上記のとおり格別の効果を奏するものといえるから、特許異議申立人BないしDの主張は何れも採用できない。

(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1が甲B6発明ではなく、甲B6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2も甲B6発明ではなく、甲B6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 取消理由2についてのまとめ
上記アのとおりであるから、取消理由2の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(4) 取消理由3(甲C1に基づく新規性進歩性)について
ア 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲C1発明とを対比する。
甲C1発明は「ケールの葉を粉砕した予備粉末を流動層造粒して得られる」ものであるから、本件特許発明1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物」との特定事項を満たす。
また、甲C1発明が、本件特許発明1の「飲食品用」との特定事項を満たすことも明らかである。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物である、
飲食品用造粒物。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点C1>
「比重」に関し、本件特許発明1は「比重が0.300g/cm3未満である」のに対し、甲C1発明は「嵩比重0.3」である点。

相違点C1について検討する。
相違点C1は、(嵩)比重の点で実質的にも相違するものであるから、本件特許発明1は、甲C1発明ではない。
また、甲C1及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲C1発明において、嵩比重を「0.300g/cm3未満」とする動機付けもない。
そして、本件特許発明1は、相違点C1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことにより、「分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を提供する」との格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲C1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

この点について、特許異議申立人Cは回答書Cにおいて、有効数字の考え方から、甲C1発明は「0.3未満」である場合を含んでいる旨主張(第7頁)するが、この点をふまえて検討をしたとしても、(嵩)比重に関して本件特許発明1は「0.300g/cm3未満」と特定するのに対し、甲C1発明は「0.25g/cm3以上0.35g/cm3未満」である点で相違するものといわざるを得ず、甲C1発明が相違点C1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たしているということはできない。
また、特許異議申立人B及び特許異議申立人Dもそれぞれ回答書B及びDにおいて、甲C1発明において、相違点C1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得るものである旨主張するが、全ての証拠の記載を見ても、甲C1発明において、「比重が0.300g/cm3未満」とする動機があるともいえない。
よって、特許異議申立人BないしDの主張は何れも採用できない。

(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1が甲C1発明ではなく、甲C1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2も甲C1発明ではなく、甲C1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 取消理由3についてのまとめ
上記アのとおりであるから、取消理由3の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

2 令和5年8月18日付け取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
令和5年8月18日付け取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由A1ないし申立理由A3、申立理由C2、及び、申立理由D1ないし申立理由D5である。
以下、検討する。
(1) 申立理由A1について
甲A1ないし甲A5のいずれの記載を見ても、少なくとも、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物」であって、「比重が0.300g/cm3未満である」飲食品用造粒物にあたるものは何ら記載されていない。
また、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末」を含むもの(甲A3、甲A4、甲A5)であっても、その造粒物の比重を「0.300g/cm3未満」とする動機付けがあるとはいえないし、(嵩)比重が「0.300g/cm3未満」を満たす造粒物(甲A1、甲A2)であっても、その材料として、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末」を含むものを用いる動機付けがない。
したがって、本件特許発明1ないし3は、甲A1ないし甲A5のそれぞれに記載された発明ではなく、また、甲A1ないし甲A5それぞれの記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、申立理由A1の理由では、本件特許発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。

(2) 申立理由C2及び申立理由D1について
ア 甲C2に記載された発明
甲C2(甲D1と同じ。以下、代表して甲C2のみ表記する。)の請求項1、3、【0002】、【0015】、【0045】、【0057】(実施例7−9)の記載を整理すると、甲C2には次の発明が記載されていると認める。

「大麦の茎葉の粉砕物の粉末を含有する、青汁用の飲食用造粒物。」(以下、「甲C2発明」という。)

イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲C2発明とを対比する。
甲C2発明の「大麦の茎葉の粉砕物の粉末」、「青汁用の飲食用造粒物」は、それぞれ、本件特許発明1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末」、「飲食品用造粒物」に相当する。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物である、飲食品用造粒物。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点C2>
飲食品用造粒物の比重に関し、本件特許発明1は「0.300g/cm3未満である」と特定するのに対し、甲C2発明にはそのような特定がない点。

相違点C2について検討する。
本件特許発明1と甲C2発明とは、相違点C2の点で相違するものであるから、本件特許発明1は、甲C2発明ではない。
また、甲C2及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲C2発明において、比重を「0.300g/cm3未満」とする動機付けもない。
そして、本件特許発明1は、相違点C2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことにより、「分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を提供する」との格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲C2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1が甲C2発明ではなく、甲C2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2も甲C2発明ではなく、甲C2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 申立理由C2及び申立理由D1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由C2及び申立理由D1の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(3) 申立理由D2について
ア 甲D2に記載された発明
甲D2の請求項4、5及び【0001】の記載を整理すると、甲D2には、次の発明が記載されていると認める。

「ケール、大麦若葉、小麦若葉、明日葉、クワ若葉、及びクマザサから選ばれる少なくとも1種に由来する緑葉粉末と白きくらげ粉末とを含有する、飲料用造粒物。」(以下、「甲D2発明」という。)

イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲D2発明とを対比する。
甲D2発明の「ケール、大麦若葉、小麦若葉、明日葉、クワ若葉、及びクマザサから選ばれる少なくとも1種に由来する緑葉粉末」、「飲料用造粒物」は、それぞれ、本件特許発明1の「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末」、「飲食品用造粒物」に相当する。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末を含有する造粒物である、飲食品用造粒物。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点D2>
飲食品用造粒物の比重に関し、本件特許発明1は「0.300g/cm3未満である」と特定するのに対し、甲D2発明にはそのような特定がない点。

相違点D2について検討する。
甲D2及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲D2発明において、比重を「0.300g/cm3未満」とする動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、相違点D2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことにより、「分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を提供する」との格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲D2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1が甲D2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2も甲D2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立理由D2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由D2の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(4) 申立理由A2及び申立理由D3(明確性要件)について
明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

イ 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。

明確性要件についての判断
上記第2のとおり、本件特許発明1,2は何れも、「飲食品用造粒物」に関し、「緑葉」の種類、「粉砕末」を含有することおよびその比重範囲が特定されており、明細書における記載とも整合するものであって、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

エ 特許異議申立人A及び特許異議申立人Dの主張について
特許異議申立人Aは上記第3 1(2)のとおり、また、特許異議申立人Dは上記第3 4(3)のとおりの主張をするが、「比重」については、本件特許の明細書の【0048】に具体的な「粉体特性評価装置(パウダテスタ(R)PT−X;ホソカワミクロン株式会社)」を用いて測定する旨の記載があることからみて、当業者であれば、当該装置を用いて常法により測定しうるものといえるから、特許異議申立人A及び特許異議申立人Dの上記主張は何れも採用できない。
また、特許異議申立人Aは、マーカッシュクレーム違反であること、意味のない限定記載があることなどを主張するが、いずれも上記ウの明確性要件の判断には何ら影響しない。

オ 申立理由A2及び申立理由D3についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由A2及び申立理由D3の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(6) 申立理由A3及び申立理由D4(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。

ウ サポート要件についての判断
本件特許発明の課題は、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有し、かつ、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物の提供を目的とする」(【0005】)ものである。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の青汁素材とは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の植物を意味する」(【0011】)こと、「本発明の緑葉の乾燥粉末とは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉を加工して乾燥粉末化したものを意味する」(【0023】)こと、「集合体(造粒物)においては粒子が凝集する際に粒子間に空隙が形成されており、造粒物と造粒に用いる原料の粒子には構造的な違いがある。前記青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物とは、前記青汁素材の緑葉乾燥粉末を原料として造粒したものであり、比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする。・・・(中略)・・・造粒物の比重が当該範囲となるように制御することにより、分散性や飲みやすさに優れた造粒物を得ることができる」(【0035】)ことが記載され、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
してみると、当業者であれば、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の粉砕末」を「原料として造粒したものであり、比重が0.300g/cm3未満」である飲食品用造粒物との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
そして、本件特許発明1及び2はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1及び2はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。

エ 特許異議申立人A及び特許異議申立人Dの主張について
特許異議申立人A及び特許異議申立人Dは、上記第3 1(3)及び第3 4(4)のとおり主張するが、いずれも本件特許発明が課題を解決できないとする具体的な証拠を挙げるものでもなく、上記ウにおけるサポート要件の判断に影響するものではない。

オ 申立理由A3及び申立理由D4についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由A3及び申立理由D4の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(7) 申立理由D5(実施可能要件)について
実施可能要件の判断基準
本件特許発明1及び2は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産、使用することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産、使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。

実施可能要件についての判断
本件特許発明の課題は、「麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有し、かつ、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物の提供を目的とする」(【0005】)ものである。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の青汁素材とは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の植物を意味する」(【0011】)こと、具体的な材料についての説明(【0012】〜【0022】)、「本発明の緑葉の乾燥粉末とは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉を加工して乾燥粉末化したものを意味する」(【0023】)こと、具体的な処理方法(【0024】〜【0034】)、「集合体(造粒物)においては粒子が凝集する際に粒子間に空隙が形成されており、造粒物と造粒に用いる原料の粒子には構造的な違いがある。前記青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物とは、前記青汁素材の緑葉乾燥粉末を原料として造粒したものであり、比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする。・・・(中略)・・・造粒物の比重が当該範囲となるように制御することにより、分散性や飲みやすさに優れた造粒物を得ることができる」(【0035】)こと、及び、具体的な造粒方法及び測定方法(【0036】〜【0050】)が記載され、具体的な実施例の記載もある。
これらの記載を総合すれば、本件特許発明1及び2に関して、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1及び2を生産し、使用することができる記載があるといえ、実施可能要件を満たすといえる。

ウ 特許異議申立人Dの主張について
特許異議申立人Dは、上記第3 4(5)の主張をするが、上記イのとおり、具体的な製造方法、測定方法、実施例の記載があることから、これらの記載にしたがって、造粒条件を調整し本件特許発明を実施することは当業者が通常なしうる程度のことにすぎず、当業者にとって過度の試行錯誤を要するものであるとはいえない。
よって、特許異議申立人Dの当該主張を採用することはできない。

エ 申立理由D5についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由D5の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

第6 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-01-25 
出願番号 P2022-064382
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 淺野 美奈
植前 充司
登録日 2022-11-30 
登録番号 7185967
権利者 株式会社東洋新薬
発明の名称 造粒物  
代理人 ▲高▼津 一也  

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