ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H05B 審判 全部申し立て 2項進歩性 H05B |
---|---|
管理番号 | 1406751 |
総通号数 | 26 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2024-02-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-10-16 |
確定日 | 2024-01-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7259452号発明「エレクトロルミネッセンス表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7259452号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7259452号の請求項1〜6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019−54632号)は、平成31年3月22日(先の出願(特願2018−55550号及び特願2018−55554号)に基づく優先権主張 平成30年3月23日)を出願日とする出願であって、令和5年4月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月18日に特許掲載公報が発行された。 本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和5年10月16日に、特許異議申立人 石川 竜郎(以下「特許異議申立人」という。)から、請求項1〜6に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」〜「本件特許発明6」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「 【請求項1】 エレクトロルミネッセンスセル、及び該エレクトロルミネッセンスセルよりも視認側に配置される円偏光板を備えたエレクトロルミネッセンス表示装置であって、 前記円偏光板は、順に、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有し、 (1)基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であり、 (2)偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在し(ここで偏光子と位相差層との間は位相差層自身も含むものとする)、及び (3)偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行である エレクトロルミネッセンス表示装置。 【請求項2】 前記基材フィルムの面内複屈折ΔNxyが0.06以上0.2以下である、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。 【請求項3】 前記基材フィルムの遅相軸方向及び進相軸方向の直角形引裂き法による引裂き強度のうち小さいほうの値が250N/mm以上である、請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。 【請求項4】 前記偏光子の厚みが12μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。 【請求項5】 前記偏光子が重合性液晶化合物と二色性色素とからなる、請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。 【請求項6】 前記位相差層が液晶化合物からなる、請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。」 第3 特許異議申立ての概要 1 証拠方法 特許異議申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 (1)甲第1号証:国際公開第2014/155887号 (2)甲第2号証:特開2018−28573号公報 (3)甲第3号証:特開2018−28612号公報 (4)甲第4号証:特開2017−227905号公報 (5)甲第5号証:特開2017−111432号公報 (6)甲第6号証:特開2016−200716号公報 (7)甲第7号証:特開2018−3020号公報 (8)甲第8号証:特開2018−22060号公報 (9)甲第9号証:特開2016−139133号公報 (10)甲第10号証:特開2016−170369号公報 以下、「甲第1号証」〜「甲第10号証」をそれぞれ、「甲1」〜「甲10」という。 2 申立て理由の概要 特許異議申立人が主張する特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 申立ての理由1(特許法29条1項3号) 本件特許発明1及び2は、甲1に記載された発明である。 (2) 申立ての理由2(特許法29条2項) 本件特許発明1〜6は、甲1〜甲10に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。 (なお、甲1、甲2は主引用文献であり、甲3は副引用文献である。) 第4 当合議体の判断 1 申立ての理由1及び2(甲1を主引用文献とする場合) (1) 甲1の記載及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。以下同様である。 (ア) 「 技術分野 [0001] 本発明は、偏光板、画像表示装置、および画像表示装置における明所コントラストの改善方法に関する。」 (イ) 「 発明が解決しようとする課題 [0005] ところで、種々の材料からなる保護フィルムを備えた偏光板を表示装置用に試していたところ、ポリエステルフィルム、典型的にはポリエチレンテレフタレートからなる偏光板用保護フィルムを用いた場合に、表示装置の明所コントラストが目視で感知できる程度にまで向上することが発見された。この点について本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、ポリエステルフィルムが通常有することになる複屈折率に関連した保護フィルムの進相軸と、表示装置の明所コントラストの向上とに相関関係があることが見出された。より詳しくは、表示装置に組み込まれた状態での保護フィルムの進相軸の方向自体と、さらに当該保護フィルムの進相軸の方向及び偏光子の吸収軸の方向の相対関係と、の組み合わせが、表示装置の明所コントラストに多大なる影響を与え得ることが見出された。そして本件発明者らが得られた知見に基づき更に研究を進めたところ、驚くべきことに、従来光学等方性材料として用いられてきたセルロースエステル等の材料からなる保護フィルムに対してすら、敢えて複屈折率を持たせることにより、当該保護フィルムを含む偏光板が組み込まれた表示装置の明所コントラストを向上させ得ることが見出された。本発明は、本件発明者らのこのような知見に基づくものであり、複屈折率を有した保護フィルムを含む偏光板を用いることにより、或いは、本来複屈折率を有さない材料からなる偏光板用保護フィルムに敢えて意図的に複屈折率を付与することにより、当該偏光板表示装置のコントラストを改善することを目的とする。」 (ウ) 「 発明の効果 [0009] 本発明の一の態様の偏光板によれば、敢えて複屈折率を有した光透過性フィルムを用い、当該光透過性フィルムが上記式(1)を満たし、かつ前記光透過性フィルムの進相軸方向と、偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、偏光子および光透過性フィルムが配置されるので、光学等方性の光透過性フィルムを用いた場合と比較して、明所コントラスを向上させることができる。」 (エ) 「 発明を実施するための形態 ・・・中略・・・ [0014] ≪偏光板≫ 図1に示されるように、偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の片面に設けられた光透過性フィルム12と、光透過性フィルム12の偏光子11が設けられている面とは反対側の面に設けられた機能層13とを備えている。本発明の偏光板は、偏光子と、光透過性フィルムとを備えていればよく、機能層を備えていなくともよい。偏光板10は、画像表示装置に用いることが可能である。偏光板10が画像表示装置に用いられる場合、偏光板10は、光透過性フィルム12が偏光子11よりも観察者側に位置するように配置されることが好ましく、また偏光板10は画像表示装置の表示素子よりも観察側に配置されることが好ましい。 [0015] <偏光子> 偏光子11は吸収軸を有するものであるが、偏光子11は、図2に示されるように、偏光子の吸収軸方向が水平方向に沿うように配置されるものである。「偏光子の吸収軸方向が水平方向に沿う」とは、偏光子の吸収軸方向が水平方向に対して±10°未満の範囲内にあることを意味する。偏光子11は、偏光子の吸収軸方向が水平方向に対して±5°未満の範囲内となるように配置されていることが好ましい。 [0016] 偏光子11としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等が挙げられる。 [0017] <光透過性フィルム> 光透過性フィルム12は、偏光子11を保護するための保護フィルムとして機能する。光透過性フィルム12は、面内に複屈折性を有するものである。光透過性フィルムが面内に複屈折性を有しているか否かは、波長550nmの屈折率において、Δn(nx−ny)≧0.0005であるものは、複屈折性を有しているとし、Δn<0.0005であるものは、複屈折性を有していないとした。複屈折率は、王子計測機器社製KOBRA−WRを用いて、測定角0°かつ測定波長552.1nmに設定して、測定を行うことができる。この時、複屈折率算出には、膜厚、平均屈折率が必要となる。膜厚は、例えば、マイクロメーター(Digimatic Micrometer、ミツトヨ社製)や、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定できる。平均屈折率は、アッベ屈折率計や、エリプソメーターを用いて測定することができる。 ・・・中略・・・ [0023] 光透過性フィルム12は、図3に示されるように、光透過性フィルム12の進相軸方向が水平方向に沿うように配置される。すなわち、偏光板10は、光透過性フィルム12の進相軸方向と、偏光子11の吸収軸方向と、の両方が、水平方向に沿うように配置される。したがって、光透過性フィルム12の進相軸が、水平方向および偏光子11の吸収軸の両方に対して位置決めされることになる。なお、「光透過性フィルムの進相軸方向が水平方向に沿う」とは、光透過性フィルムの進相軸方向が水平方向に対して±10°未満の範囲内にあることを意味する。ここで、本明細書においては、光透過性フィルムを正面から見たとき、光透過性フィルムの進相軸が水平方向に対して時計回り方向にずれている場合を+方向とし、光透過性フィルムの進相軸が水平方向に対して反時計回り方向にずれている場合を−方向とする。光透過性フィルム12は、光透過性フィルムの進相軸方向が水平方向に対して±5°未満の範囲となるように配置されていることが好ましい。 ・・・中略・・・ [0069] <偏光板による明所コントラストの改善> 本実施形態においては、光透過性フィルム12が上記式(1)の関係を満たし、かつ、偏光子の吸収軸方向と、光透過性フィルムの進相軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、偏光子11および光透過性フィルム12が配置されている。本件発明者らが確認したところ、この偏光板10を表示装置の観察者側に位置する偏光板、いわゆる上偏光板として用いることにより、目視にて改善の程度を感知し得る程度にまで明所コントラストを効果的に上昇させることができた。このような現象が生じる詳細な理由は不明であるが、以下のことが一要因と考えられ得る。ただし、本発明は以下の推定に拘束されるものではない。 [0070] まず、明所コントラストは、{(白表示の輝度+外光反射)/(黒表示の輝度+外光反射)}として算出され、得られたコントラスト値が高いほどコントラストに優れる。したがって、光透過性フィルム12の表面での外光反射を低減することができれば、明所コントラストを向上させることができる。その一方で、偏光板に含まれる各層は、種々の機能を発現することを期待されており、各層に用いられる材料、そして当該材料によって決まる各層の屈折率の設定には当然に制約が生じる。このため、特別な場合を除き、光透過性フィルム12と機能層13との間に屈折率差が不可避的に生じてしまう。また、図示された形態とは異なり、光透過性フィルム12の観察者側に機能層13等の層が設けられないことも想定されるが、この場合にも、反射を引き起こす屈折率界面が空気と光透過性フィルム12との間に生じることになる。この屈折率差が、光透過性フィルム12と機能層13との間の界面での外光の反射を引き起こし、表示装置の明所コントラストの低下の一因をなしていた。 [0071] その一方で、表示装置に入射して明所コントラストを引き起こし得る光の偏光成分として、P偏光とS偏光とが存在する。そして、P偏光の反射率はS偏光の反射率よりも低く、しかもP偏光には反射率が0%となるブリュースター角が存在する。このため、床面や天井面で反射して、画像表示装置の画像表示面に入射する光には、必然的に、水平方向に振動する偏光成分(S偏光)が偏って含まれるようになる。以上のことからすれば、たとえ用いられる材料に依存して決まる平均屈折率が光透過性フィルム12と機能層13との間で異なっていたとしても、光透過性フィルム12の水平方向に沿った面内屈折率を、機能層13の水平方向に沿った面内屈折率に近付けさえすれば、明所コントラストの低下を引き起こす光透過性フィルム12と機能層13との間での外光反射を効果的に防止することができる。 [0072] そこで、本実施の形態の偏光板10では、材料選択の制約から必然的に生じ得る光透過性フィルム12と機能層13との間での平均屈折率差を許容しながらも、複屈折率を有した光透過性フィルム12を用いることにより、さらには、通常光学等方性として扱われてきた材料からなる光透過性フィルム12に対してさえも敢えて複屈折率を付与することにより、水平方向に振動する偏光成分の反射率を支配する光透過性フィルム12と機能層13との間での水平方向における屈折率差を少しでも低減するようにしている。より具体的には、光透過性フィルム12の平均屈折率が、通常、機能層13の平均屈折率よりも高くなるので、光透過性フィルム12の面内屈折率の中で最も低屈折率となる進相軸方向を水平方向に揃え、水平方向における光透過性フィルム12と機能層13との間での屈折率差を低減する。このように、偏光板10に含まれる光透過性フィルム12の進相軸の方向を水平方向に揃えることにより、光透過性フィルム12と機能層13との間で平均屈折率に屈折率差が生じることを許容して光透過性フィルム12と機能層13に用いられる材料選択の自由度を確保しながら、光透過性フィルム12と機能層13との間の界面での水平方向における屈折率差を低減し、明所コントラストの低下を引き起こす主原因となる水平方向に振動する偏光成分の光透過性フィルム12と機能層13との界面での反射を効果的に低減している。なお、機能層13が存在していない場合には、光透過性基材12は空気と接することになるので、光透過性フィルム12の面内屈折率の中で最も低屈折率となる進相軸方向を水平方向に揃えることにより、空気との間での屈折率差を低減することができる。これにより、上記と同様に、明所コントラストの低下を引き起こす主原因となる水平方向に振動する偏光成分の反射を効果的に低減することができる。 [0073] さらに、また、画像表示面に入射する割合の多い水平方向に振動する偏光成分(S偏光)の光透過性フィルム12での反射を低減させることができるが、結果として、多くの水平方向に振動する偏光成分が光透過性フィルム12を透過することとなる。通常、光透過性フィルムを透過した水平方向に振動する偏光成分は、画像表示装置内部で吸収されるか、或いは、迷光となり観測者側に戻ってくる。観測者側に戻る迷光は、表示画像とは異なる明るさ分布を生み出し、このため明所コントラストを低減させる一要因となる。この点、本実施形態では、偏光子11の吸収軸が水平方向に沿うように偏光子11が配置されているので、光透過性フィルム12を透過した水平方向に振動する偏光成分を偏光子11で吸収することができる。これにより、光透過性フィルム12を透過した後に観察者側に戻ってくる水平方向に振動する偏光成分の光量を低下させることができる。このように、偏光板10に含まれる光透過性フィルム12の進相軸の方向と、偏光子11の吸収軸の方向とを揃えることによって、迷光の発生を効果的に防止して、明所コントラストを向上させることができる。 [0074] 以上のようにして本実施形態によれば、光透過性フィルム12の表面における水平方向に振動する偏光成分(S偏光)の反射を低減することができるので、明所コントラストを効果的に改善することができる。さらに光透過性フィルムを透過した水平方向に振動する偏光成分(S偏光)であって、観察者側に戻ってくる迷光を偏光子によって吸収することができるので、画質の劣化を抑制して更なる明所コントラストの改善を図ることができる。 ・・・中略・・・ [0085] 画像表示装置は、水平方向に偏光子の吸収軸を設置した有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELディスプレイ)であっても良い。有機ELディスプレイは、画像表示原理上、偏光子を必要としないが、外光反射防止の観点から、観察者側から偏光子、λ/4位相差板、有機ELの順に積層した構成を用いる場合がある。偏光子、λ/4位相差板は、外光反射防止用円偏光板として機能するわけであるが、通常のλ/4位相差板は、ある特定の波長に対してのみ、λ/4位相差板として機能するため、入射したすべての外光反射防止できない。したがって、偏光子の吸収軸を水平方向として、S偏光を吸収し、ディスプレイ内部に入射する光を低下させることにより、観察者側に戻ってくる光を低下させることができる。有機ELディスプレイの画像表示方式としては、白色発光層を用い、カラーフィルタを通すことで、カラー表示を得るカラーフィルタ方式、青色発光層を用い、その発光の一部を、色変換層を通すことによりカラー表示を得る色変換方式、赤色・緑色・青色の発光層を用いる3色方式、この3色方式にカラーフィルタを併用した方式などが挙げられる。発光層の材料としては、低分子であっても、高分子であっても良い。」 (オ) 「 実施例 ・・・中略・・・ [0087] <明所コントラスト> 以下、実施例、および比較例で得られた各偏光板において、明所コントラストを評価したが、明所コントラストの評価は、以下のようにして行った。偏光子の吸収軸方向が水平方向となるように、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側に設置された偏光板の変わりに、実施例および比較例に係る偏光板を設置し、周辺照度400ルクス(明所)において、黒表示した液晶モニターから50〜60cm程度離れた場所から、この黒表示を被験者15人が鑑賞することで、明所コントラストを官能評価により評価した。もっとも黒く見えると答えた人数が多かった液晶モニターを明所コントラストが優れているとし、黒く見えると答えた人数が少ない液晶モニターは、劣ると評価した。 ・・・中略・・・ [0089] <実施例1、比較例1、比較例2> ポリエチレンナフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。未延伸フィルムは、Δn=0.0004であり、平均屈折率N=1.63であった。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率1.1倍に延伸した後、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率4.0倍にて延伸を行い、nx=1.82、ny=1.60、(nx−ny)=0.22の光透過性フィルムを得た。 [0090] (偏光子の作製) 平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光子を得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。 [0091] 得られた偏光子の一方の面側に、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が0度となるように光透過性フィルムを接着貼合した。次いで、偏光子の光透過性フィルムが積層された側とは反対側面に、等方性フィルムであるTD80UL−M(富士フィルム社製)Bを、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して接着貼合し、実施例1に係る偏光板を作製した。 ・・・中略・・・ [0095] <実施例2、比較例3、比較例4> ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。未延伸フィルムは、Δn=0.00035であり、平均屈折率N=1.61であった。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.57、(nx−ny)=0.13の光透過性フィルムを得た。実施例2においては、この光透過性フィルムを用いた以外は、実施例1同様の方法にて、偏光板を作製した。 [0096] 比較例3においては、実施例2で作製した光透過性フィルムを用い、偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が90度となるように偏光子と光透過性フィルムを接着貼合した以外は、実施例1と同様の方法にて、偏光板を作製した。 [0097] 比較例4においては、実施例2で作製した未延伸フィルムを用いて、実施例1と同様の方法にて、偏光板を作製した。 [0098] 実施例2、比較例3、比較例4にかかる偏光板の反射率を測定したところ、それぞれ、4.92%、6.72%、5.46であり、実施例2に係る偏光板が、反射防止性能に優れていた。また、実施例2、比較例3、比較例4を用いた液晶モニターの明所コントラストを目視により評価したところ、実施例2の偏光板を用いた液晶モニターは、比較例3、比較例4の偏光板を用いた液晶モニターよりも明所コントラストに優れていた。」 (カ) 「請求の範囲 [請求項1] 偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する光透過性フィルムとを備える偏光板であって、 前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をnxとし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をnyとし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、 nx>N>ny …(1) 前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されることを特徴とする、偏光板。 ・・・中略・・・ [請求項8] 請求項1に記載の偏光板を備え、前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように前記偏光板が配置されている、画像表示装置。 ・・・中略・・・ [請求項10] 前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置された有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである、請求項8に記載の画像表示装置。」 イ 甲1に記載された発明 (ア) 甲1の[0098]には、「比較例3」「の偏光板を用い」た「液晶モニター」の発明が記載されている。 (イ) 上記(ア)の「比較例3」「の偏光板」とは、甲1の[0096]の記載より、「実施例2で作製した光透過性フィルムを用い、偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が90度となるように偏光子と光透過性フィルムを接着貼合した以外は、実施例1と同様の方法にて、」「作製」された「偏光板」と解される。 (ウ) 上記(イ)の「偏光子」は、甲1の[0090]〜[0091]の記載より、「平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し」、「その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し」、「引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向され」、「延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍で」「得た」「偏光子」である。 (エ) 上記(イ)の「実施例2で作製した光透過性フィルム」は、甲1の[0095]の記載より「ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、」「Δn=0.00035であり、平均屈折率N=1.61であ」る「未延伸フィルムを作製し」、「この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍にて延伸を行」って「得た」、「nx=1.70、ny=1.57、(nx−ny)=0.13の光透過性フィルム」である。 (オ) 上記(イ)の「光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が90度となるように偏光子と光透過性フィルムを接着貼合した以外は、実施例1と同様の方法」とは、甲1の[0091]の記載より、「偏光子の一方の面側に、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が」「90度」「となるように光透過性フィルムを接着貼合し」、「次いで、偏光子の光透過性フィルムが積層された側とは反対側面に、等方性フィルムであるTD80UL−M(富士フィルム社製)Bを、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して接着貼合」する作製方法を意味すると解される。 (カ) さらに、上記(ア)の「偏光板を用い」た「液晶モニター」は、甲1の[0087]の記載から、「偏光板」を「偏光子の吸収軸方向が水平方向となるように、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側に設置された偏光板の変わりに」「設置」したものである。 (キ) 上記(ア)〜(カ)を総合すると、甲1には、次の「液晶モニター」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「偏光子の一方の面側に、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が90度となるように光透過性フィルムを接着貼合し、次いで、偏光子の光透過性フィルムが積層された側とは反対側面に、等方性フィルムであるTD80UL−M(富士フィルム社製)Bを、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して接着貼合して作製された偏光板を、偏光子の吸収軸方向が水平方向となるように、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側に設置された偏光板の変わりに設置した液晶モニターであって、([0087]、[0091]、[0096]) 偏光子は、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向され、延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍で得た偏光子であり、([0090]) 光透過性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、Δn=0.00035であり、平均屈折率N=1.61である未延伸フィルムを作製し、この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍にて延伸を行って得た、nx=1.70、ny=1.57、(nx−ny)=0.13の光透過性フィルムである、([0095]) 液晶モニター。」 (2) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 (ア) エレクトロルミネッセンスセル、エレクトロルミネッセンス表示装置 甲1発明の「液晶モニター」が、その中に「液晶セル」を備えることは明らかである。 そうすると、甲1発明の「液晶セル」、「液晶モニター」は、それぞれ、本件特許発明1の「エレクトロルミネッセンスセル」、「エレクトロルミネッセンス表示装置」と、「画像表示セル」、「画像表示装置」である点で共通するといえる。 (イ) エレクトロルミネッセンスセルよりも視認側に配置される、円偏光板 甲1発明の「偏光子」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「偏光子」に相当する。 また、甲1発明の「偏光子の一方の面側に、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が90度となるように光透過性フィルムを接着貼合し、次いで、偏光子の光透過性フィルムが積層された側とは反対側面に、等方性フィルムであるTD80UL−M(富士フィルム社製)Bを、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して接着貼合して作製された偏光板」(以下、単に「甲1偏光板」という。)は、「液晶モニター」「の観察者側に設置された偏光板の変わりに設置した」ものであるから、「甲1偏光板」は、「液晶モニター」の観察者側に設置される光学部材(偏光板)といえる。 したがって、本件特許発明1の「円偏光板」と甲1発明の「甲1偏光板」とは、「偏光子を」「有し」、「画像表示装置よりも視認側に配置される」光学部材である点で共通する。 (ウ) 基材フィルム 甲1発明の「甲1偏光板」は、「等方性フィルムであるTD80UL−M(富士フィルム社製)B」、「偏光子」、「光透過性フィルム」を有するものであり、上記(イ)に示したとおり、甲1発明の「偏光子」は、本件特許発明1の「偏光子」に相当する。そうすると、甲1発明の「光透過性フィルム」は、その光学特性や配置等からみて、本件特許発明1の「基材フィルム」に相当する。 また、甲1発明の「光透過性フィルム」(「基材フィルム」)は、「nx=1.70、ny=1.57、(nx−ny)=0.13の光透過性フィルム」であり、進相軸(すなわち、屈折率が相対的に小さい)方向の屈折率は「1.57」である。 そうすると、甲1発明の「光透過性フィルム」は、本件特許発明1の「基材フィルム」における、「基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であり」との要件を満たす。 (エ) 偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行 甲1発明は、「偏光子の一方の面側に、」「偏光子の吸収軸と、光透過性フィルムの進相軸とのなす角度が90度となるように光透過性フィルムを接着貼合し」「て作製された」ものである。ここで、甲1発明の「偏光子」における「吸収軸」と「透過軸」とが直交していることは技術常識であるから、本件特許発明1と甲1発明とは、「偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行」である点において共通する。 (オ) 一致点及び相違点 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と甲1発明とは、 「 画像表示セル、及び該画像表示セルよりも視認側に配置される、偏光子を有する光学部材を備えた画像表示装置であって、 前記光学部材は、偏光子、及び基材フィルムを有し、 (1)基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であり、 (3)偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行である 画像表示装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1−1) 本件特許発明1は、「エレクトロルミネッセンスセル」「を備えた」「エレクトロルミネッセンス表示装置」であるのに対して、甲1発明はそのように特定されていない点。 (相違点1−2) 本件特許発明1は、「偏光子を有する光学部材」が「円偏光板」であり、「前記円偏光板は、順に、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有し」ているのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 (相違点1−3) 本件特許発明1は、「(2)偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在し(ここで偏光子と光透層との間は位相差層自身も含むものとする)」たものであるのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 イ 判断 技術的関連性に鑑み、相違点1−1〜相違点1−3についてまとめて検討する。 甲1において「本発明」とされる発明が解決しようとする課題は、「偏光板表示装置のコントラストを改善すること」([0005])であり、本課題を解決するための手段は、甲1の請求項1で特定されるとおり、以下の偏光板である。 「偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する光透過性フィルムとを備える偏光板であって、 前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をnxとし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をnyとし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、 nx>N>ny …(1) 前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されることを特徴とする、偏光板。」(請求項1) そして、甲1の請求項1で特定される「偏光板」の発明を具現化した例として、甲1の[0095]に実施例2が記載されているところ、甲1の[0095]〜[0098]の記載によれば、当該実施例2に係る偏光板の反射防止性能、液晶のモニターに用いた際の明所コントラストの効果を評価するための比較対象として、甲1発明(比較例3)が甲1に開示されていると理解される。ここで、上記甲1発明は、上記「甲1偏光板」を「設置した液晶モニター」であるが、これは、甲1の請求項1で特定される事項のうち、「前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置される」との要件を満たさないものであって、実際、偏光板の反射防止性能、液晶のモニターに用いた際の明所コントラストの効果について、実施例2よりもその評価結果が劣るもの(甲1の[0098])、すなわち、甲1発明は、甲1の「偏光板表示装置のコントラストを改善する」という課題を解決できないものである。そして、このような評価結果は、甲1の[0069]〜[0074]に記載された明所コントラストの改善に関する作用機序の推定にも沿ったものである。 以上によれば、甲1の上記各記載に接した当業者が、明所コントラストに劣る「甲1偏光板」を用いた甲1発明を出発点とし、改良を試みるように動機づけられることはないのであって、甲1発明に相違点1−1〜相違点1−3に係る本件特許発明1の構成を採用して、本件特許発明1に想到することはないというべきである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲1を主引用文献として、甲1の[0085]、請求項10の記載も引用しつつ、本件特許発明1の新規性及び進歩性の欠如を主張している。 しかしながら、本件特許発明1と甲1発明との間に相違点が存在することは上記「ア 対比」で説示したとおりである。 また、甲1に記載された上記課題を解決できない「甲1偏光板」を、甲1における「本発明」に対応する[0085]及び請求項10等の記載に基づいて、「λ/4位相差板を備え」る「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ」に適用するように当業者が動機づけられることがないことは、上記イで説示したとおりである。 したがって、特許異議申立人の主張はいずれも採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 本件特許発明2〜6について 本件特許の特許請求の範囲の請求項2〜6は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明2〜6は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1発明でなく、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明2〜6も、甲1発明でなく、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 2 申立ての理由2(甲2を主引用文献とする場合) (1) 甲2の記載及び甲2に記載された発明 ア 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数の粘着剤層と、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、を含むフレキシブル画像表示装置用積層体であって、 前記偏光膜の厚みが、20μm以下であり、 前記複数の粘着剤層のうち、前記積層体を折り曲げた場合の凸側の最外面の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’が、他の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’と略同一、又は、小さいことを特徴とするフレキシブル画像表示装置用積層体。 【請求項2】 前記光学フィルムが、前記偏光膜と、前記偏光膜の第1の面に有する透明樹脂材料の保護膜と、前記偏光膜の前記第1の面とは異なる第2の面に有する位相差膜と、を含む光学積層体であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル画像表示装置用積層体。 ・・・中略・・・ 【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載のフレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルと、を含み、 前記有機EL表示パネルに対して、視認側に前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されることを特徴とするフレキシブル画像表示装置。」 (イ) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、少なくとも偏光膜を含む光学フィルム、及び、複数の特定の粘着剤層を含むフレキシブル画像表示装置用積層体、並びに、前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されたフレキシブル画像表示装置に関する。」 (ウ) 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1に示されるような従来の有機EL表示装置は、折り曲げることを念頭に設計されているものではない。有機EL表示パネル基材にプラスチックフィルムを用いれば、有機EL表示パネルに屈曲性を与えることができる。また、タッチパネルにプラスチックフィルムを用いて、有機EL表示パネル中に組み込むような場合であっても、有機EL表示パネルに屈曲性を与えることができる。しかし、有機EL表示パネルに積層される、従来の偏光膜等を含む光学フィルムが、有機EL表示装置の屈曲性を阻害する問題が生じている。 【0006】 そこで、本発明は、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、複数の特定の粘着剤層を用いることで、繰り返しの屈曲に対してもハガレや破断することがなく、耐屈曲性や密着性に優れたフレキシブル画像表示装置用積層体、及び、前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されたフレキシブル画像表示装置を提供することを目的とする。」 (エ) 「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明のフレキシブル画像表示装置用積層体は、複数の粘着剤層と、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、を含むフレキシブル画像表示装置用積層体であって、前記偏光膜の厚みが、20μm以下であり、前記複数の粘着剤層のうち、前記積層体を折り曲げた場合の凸側の最外面の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’が、他の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’と略同一、又は、小さいことを特徴とする。 ・・・中略・・・ 【0016】 本発明のフレキシブル画像表示装置は、前記フレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルと、を含み、前記有機EL表示パネルに対して、視認側に前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されることが好ましい。」 (オ) 「【発明の効果】 【0018】 本発明によれば、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、複数の特定の粘着剤層を用いることで、繰り返しの屈曲に対してもハガレや破断することがなく、耐屈曲性や密着性に優れたフレキシブル画像表示装置用積層体を得ることができ、更に、前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されたフレキシブル画像表示装置を得ることができ、有用である。」 (カ) 「【発明を実施するための形態】 【0021】 [フレキシブル画像表示装置用積層体] 本発明のフレキシブル画像表示装置用積層体は、複数の粘着剤層と、光学フィルムと、を含むことを特徴とする。 【0022】 [光学フィルム] 本発明のフレキシブル画像表示装置用積層体は、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムを含むことを特徴とし、前記光学フィルムとしては、前記偏光膜に加えて、例えば、透明樹脂材料から形成される保護膜や位相差膜などのフィルムを含むものを指す。 また、本発明において、前記光学フィルムとして、前記偏光膜と、前記偏光膜の第1の面に有する透明樹脂材料の保護膜と、前記偏光膜の前記第1の面とは異なる第2の面に有する位相差膜と、を含む構成を光学積層体という。なお、前記光学フィルム中には、後述する第1の粘着剤層などの複数の粘着剤層は含まれない。 ・・・中略・・・ 【0029】 <位相差膜> 本発明に用いられる光学フィルムには、位相差膜を含むことができ、前記位相差膜(位相差フィルムともいう。)は、高分子フィルムを延伸させて得られるものや液晶材料を配向、固定化させたものを用いることができる。本明細書において、位相差膜は、面内及び/又は厚み方向に複屈折を有するものをいう。 ・・・中略・・・ 【0033】 <保護膜> 本発明に用いられる光学フィルムには、透明樹脂材料から形成される保護膜を含むことができ、前記保護膜(透明保護フィルムともいう。)は、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などを用いることができる。 ・・・中略・・・ 【0097】 [フレキシブル画像表示装置] 本発明のフレキシブル画像表示装置は、上記のフレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとを含み、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル画像表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。任意ではあるが、フレキシブル画像表示装置用積層体に対して視認側にウインドウを配置することができる。 【0098】 図2は、本発明によるフレキシブル画像表示装置の1つの実施形態を示す断面図である。このフレキシブル画像表示装置100は、フレキシブル画像表示装置用積層体11と、折り曲げ可能に構成された有機EL表示パネル10を含む。そして、有機EL表示パネル10に対して、視認側にフレキシブル画像表示装置用積層体11が配置され、フレキシブル画像表示装置100は折り曲げ可能に構成されている。また、任意ではあるが、フレキシブル画像表示装置用積層体11に対して、視認側に透明なウインドウ40が第1の粘着剤層12−1を介して配置させることができる。 【0099】 フレキシブル画像表示装置用積層体11は、光学積層体20と、更に、第2の粘着剤層12−2、及び、第3の粘着剤層12−3を構成する粘着剤層とを含む。 【0100】 光学積層体20は、偏光膜1、透明樹脂材料の保護膜2及び位相差膜3を含む。透明樹脂材料の保護膜2は、偏光膜1の視認側の第1面に接合される。位相差膜3は、偏光膜1の第1面とは異なる第2面に接合される。偏光膜1と位相差膜3は、例えば、偏光膜1の視認側から内部に入射した光が内部反射して視認側に射出されることを防止するために円偏光を生成したり、視野角を補償したりするためのものである。 【0101】 本実施形態においては、従来偏光膜の両面に保護膜が設けられていたのに対して、片面のみに保護膜が設けられる構成とされ、偏光膜自体も従来の有機EL表示装置に使用されている偏光膜に比べて、非常に薄い厚み(20μm以下)の偏光膜が使用されることによって、光学積層体20の厚みが低減することができる。また、偏光膜1は、従来の有機EL表示装置に使用されている偏光膜に比べて非常に薄いので、温度又は湿度条件で発生する伸縮による応力が極めて小さくなる。したがって、偏光膜の収縮によって生じる応力が隣接する有機EL表示パネル10に反り等の変形を生じさせる可能性が大幅に軽減され、変形に起因する表示品質の低下やパネル封止材料の破壊を大幅に抑制することが可能になる。また、厚みの薄い偏光膜の使用により、屈曲を阻害することがなく、好ましい態様となる。 ・・・中略・・・ 【0108】 また、本発明のフレキシブル画像表示装置としては、図4に示すように、タッチセンサを構成する透明導電層6が有機EL表示パネル10−1に内蔵されたインセル型のフレキシブル画像表示装置としても使用することが可能である。」 (キ) 「【実施例】 【0109】 以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。また、表中の数値は、配合量(添加量)であり、固形分又は固形分比(重量基準)を示した。配合内容及び評価結果を表1〜表4に示した。 ・・・中略・・・ 【0121】 [光学フィルム(光学積層体)] 上記のように得られた位相差膜と、上記のように得られた偏光フィルムとを上記接着剤を用いてロールツーロール方式を用いて連続的に貼り合わせ、遅相軸と吸収軸の軸角度が45°となるように、積層フィルム(光学積層体)を作製した。 ・・・中略・・・ 【0143】 表4の評価結果より、全ての実施例において、耐折性試験により、折れやハガレにおいて、実用上問題ないレベルであることが確認できた。すなわち、各実施例のフレキシブル画像表紙装置用積層体においては、使用する偏光膜の厚みを薄くし、複数の特定の粘着剤層を用いることで、繰り返しの屈曲に対してもハガレや破断することがなく、耐屈曲性や密着性に優れたフレキシブル画像表示装置用積層体を得られることが確認できた。」 (ク) 「【符号の説明】 【0146】 1 偏光膜 2 保護膜 2−1 保護膜 2−2 保護膜 3 位相差層 4−1 透明導電フィルム 4−2 透明導電フィルム 5−1 基材フィルム 5−2 基材フィルム 6 透明導電層 6−1 透明導電層 6−2 透明導電層 7 スペーサー 8 透明基材 8−1 透明基材(PETフィルム) 8−2 透明基材(PETフィルム) 9 基材(PIフィルム) 10 有機EL表示パネル 10−1 有機EL表示パネル(タッチセンサ付き) 11 フレキシブル画像表示装置用積層体(有機EL表示装置用積層体) 12 粘着剤層 12−1 第1の粘着剤層 12−2 第2の粘着剤層 12−3 第3の粘着剤層 13 加飾印刷フィルム 20 光学積層体 30 タッチパネル 40 ウインドウ 100 フレキシブル画像表示装置(有機EL表示装置)」 (ケ) 「【図4】 」 イ 甲2に記載された発明 (ア)甲2の【0108】には、「図4に示す」、「タッチセンサを構成する透明導電層6が有機EL表示パネル10−1に内蔵されたインセル型のフレキシブル画像表示装置」が記載されている。 (イ)ここで、甲2の図4に示される「インセル型のフレキシブル画像表示装置」について、その図面と【符号の説明】(【0146】)より、以下の順に部材が積層されたものと解される。 「有機EL表示パネル(タッチセンサ付き)10−1/第2の粘着剤層12−2/位相差層3/偏光膜1/保護膜2/第1の粘着剤層12−1/加飾印刷フィルム13/ウインドウ40」 (ウ)上記(ア)及び(イ)を総合すると、甲2には、以下に示す「インセル型のフレキシブル画像表示装置」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「有機EL表示パネル(タッチセンサ付き)10−1/第2の粘着剤層12−2/位相差層3/偏光膜1/保護膜2/第1の粘着剤層12−1/加飾印刷フィルム13/ウインドウ40の順に積層された、タッチセンサを構成する透明導電層6が有機EL表示パネル10−1に内蔵されたインセル型のフレキシブル画像表示装置。」 (2) 甲3の記載及び甲3に記載された発明及び技術的事項 ア 甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板がこの順に配置されている液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、かつ、600nm以上780nm以下の波長領域における最もピーク強度の高いピークの半値幅が5nm未満である発光スペクトルを有する白色発光ダイオードであり、 前記光源側偏光板は、偏光子の光源側にポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムが積層されており、 前記ポリエステルフィルムは、液晶表示装置の表示画面の水平方向と平行な方向の屈折率が1.53〜1.62である、 VAモード又はIPSモードの液晶表示装置。」 (イ) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶表示装置に関する。詳しくは、虹状の色斑の発生が改善された液晶表示装置に関する。」 (ウ) 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 近年の液晶表示装置の色域拡大要求の高まりから、青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオード(例えば、青色発光ダイオードと、蛍光体として少なくともK2SiF6:Mn4+等のフッ化物蛍光体とを有する白色発光ダイオード等)からなるバックライト光源を使用した液晶表示装置が開発されている。 【0008】 偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた偏光板を用いて液晶表示装置を工業的に生産する場合、偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸の方向は、通常互いに垂直になるように配置される。これは、偏光子であるポリビニルアルコールフィルムは、縦一軸延伸をして製造されるところ、その保護フィルムであるポリエステルフィルムは、縦延伸した後、横延伸をして製造されるため、ポリエステルフィルム配向主軸方向は横方向となり、これらの長尺物を貼り合わせて偏光板が製造されると、ポリエステルフィルムの進相軸と偏光子の透過軸は通常垂直方向となるためである。この場合、ポリエステルフィルムとして特定のリタデーションを有する配向ポリエステルフィルムを用い、バックライト光源として白色LEDのような連続的な発光スペクトルを有する光源を用いることにより、虹状の色斑は大幅に改善されるものの、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を用いた場合、依然として虹斑が生じるという新たな課題が存在することを発見した。 【0009】 すなわち、本発明の課題は、青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合にも、虹斑が抑制された液晶表示装置を提供することである。特に、液晶テレビ等で使用されているVAモード又はIPSモードの液晶表示装置において虹斑が抑制された液晶表示装置を提供することを課題とする。」 (エ) 「【発明の効果】 【0011】 本発明の液晶表示装置は、いずれの観察角度においても虹状の色斑の発生が有意に抑制された良好な視認性を確保することができる。」 (オ) 「【発明を実施するための形態】 ・・・中略・・・ 【0028】 本発明らは鋭意検討した結果、上述したバックライト光源のように、青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を有するVAモード又はIPSモードの液晶表示装置において、光源側偏光板に用いるポリエステルフィルムの、液晶表示装置の表示画面の水平方向と平行な方向の屈折率を1.53〜1.62の範囲にすれば、有為に虹斑を抑制できることを見出した。上記態様により虹状の色斑の発生が抑制される機構としては、次のように考えている。 【0029】 偏光子の片側に配向ポリエステルフィルムを配した場合、バックライトユニット、または、偏光子から出射した直線偏光はポリエステルフィルムを通過する際に偏光状態が変化する。バックライトユニット、または、偏光子から出射した直線偏光が配向ポリエステルフィルムを通過する際に偏光状態が変化する要因の一つに、空気層と配向ポリエステルフィルムとの界面の屈折率差、または偏光子と配向ポリエステルフィルムとの界面の屈折率差が影響している可能性を見出した。斜め方向から入射した直線偏光が、各界面を通過する際に、界面間の屈折率差により光の一部が反射される。この時に出射光、反射光とも偏光状態が変化することが考えられることから、虹状の色斑が発生する要因の一つとなっていると考えられる。このため、入射する直線偏光の偏光方向(透過軸方向)における、空気層と配向ポリエステルフィルムとの屈折率差、および偏光子と配向ポリエステルフィルムとの屈折率差を小さくすることで、各界面での反射が抑制されて、虹状の色斑が抑制されると考えられる。入射する直線偏光の偏光方向(透過軸方向)における、空気層と配向ポリエステルフィルムとの屈折率差、および偏光子と配向ポリエステルフィルムとの屈折率差を小さくするためには、前記透過軸と平行な方向におけるポリエステルフィルムの屈折率を1.53〜1.62程度に低く調節することで達成することができる。ここで、VAモード又はIPSモードの液晶表示装置は、光源側偏光子の透過軸は、表示画面の水平方向と平行であるため、ポリエステルフィルムの、表示画面の水平方向における屈折率を1.53〜1.62程度に低く調節することで、各界面での反射が抑制され、虹状の色斑が抑制されると考えられる。 ・・・中略・・・ 【0036】 偏光子の透過軸方向と平行な方向の、ポリエステルフィルムの屈折率を1.53以上1.62以下の範囲に設定するには、光源側偏光板は、偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸(遅相軸と垂直方法)とが略平行であることが好ましい。ポリエステルフィルムの進相軸方向(遅相軸と垂直方向)の屈折率は、後述する製膜工程における延伸処理により、1.53〜1.62の範囲に調節することが可能である。そして、ポリエステルフィルムの進相軸方向と偏光子の透過軸方向を略平行とすることで、偏光子の透過軸方向と平行な方向のポリエステルフィルムの屈折率が1.53〜1.62である偏光板を製造することができる。ここで略平行であるとは、偏光子の透過軸と偏光子保護フィルムの進相軸とがなす角が、好ましくは−15°〜15°、より好ましくは−10°〜10°、さらに好ましく−5°〜5°、よりさらに好ましくは−3°〜3°、一層好ましくは−2°〜2°、特に好ましくは−1°〜1°であることを意味する。好ましい一実施形態において、略平行とは実質的に平行である。ここで実質的に平行であるとは、偏光子と保護フィルムとを貼り合わせる際に不可避的に生じるずれを許容する程度に透過軸と進相軸とが平行であることを意味する。遅相軸の方向は、分子配向計(例えば、王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)で測定して求めることができる。 ・・・中略・・・ 【0038】 すなわち、本発明で使用するポリエステルフィルムの進相軸方向の屈折率は1.53以上1.62以下が好ましい。ポリエステルフィルムの進相軸方向の屈折率の下限は1.53以上、好ましくは1.54以上、より好ましくは1.55以上、さらに好ましくは1.56以上、よりさらに好ましくは1.57以上である。屈折率が1.53未満になると、ポリエステルフィルムの結晶化度が不十分となり、寸法安定性、力学強度、耐薬品性等の延伸により得られる性能が不十分となることから好ましくない。ポリエステルフィルムの進相軸方向の屈折率の上限は1.62以下、好ましくは1.61以下、より好ましくは1.60以下であり、さらに好ましくは1.59以下であり、よりさらに好ましくは1.58以下である。屈折率が1.62を超えると、斜め方向から観察した際に虹状の色斑が生じることがある。そして、偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸とを略平行となるように積層することで、偏光子の透過軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの屈折率を1.53以上1.62以下の偏光板を製造することができる。そして、VAモード又はIPSモードの液晶表示装置では、光源側偏光板の透過軸が、表示画面に対して水平方向となるよう配置するため、最終的に、液晶表示装置の表示画面の水平方向のポリエステルフィルムの屈折率を1.53〜1.62とすることができる。 ・・・中略・・・ 【0043】 上記ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムは、入射光側(光源側)と出射光側(視認側)の両方の偏光板に用いることができる。入射光側に配される偏光板において、上記ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムは、その偏光子を起点として入射光側に配置されていることが好ましい。出射光側に配置される偏光板については、上記ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムは、その偏光子を起点として出射光側に配置されていることが好ましい。」 (カ) 「【実施例】 ・・・中略・・・ 【0071】 (5)虹斑観察 各実施例で得られた液晶表示装置を、正面、及び斜め方向から暗所で目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。 【0072】 ○: 虹斑が観察されない △: 虹斑が僅かに観察される ×: 虹斑が観察される ××: 虹斑が著しく観察される ・・・中略・・・ 【0077】 (偏光子保護フィルム1) 基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。 【0078】 次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。 【0079】 この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、10秒間で処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸延伸PETフィルムを得た。得られたフィルムのReは10300nm、Rthは12350nm、Re/Rthは0.83、Nx=1.588、Ny=1.691であった。 ・・・中略・・・ 【0084】 (偏光子保護フィルム6) 偏光子保護フィルム1と同様の方法により作製された未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に2.0倍延伸した後、温度135℃の熱風ゾーンに導き幅方向に4.0倍延伸し、偏光子保護フィルム1と同様の方法でフィルム厚み約100μmの二軸延伸PETフィルムを得た。得られたフィルムのReは6400nm、Rthは14600nm、Re/Rthは0.44、Nx=1.617、Ny=1.681であった。 ・・・中略・・・ 【0087】 偏光子保護フィルム1〜8を用いて後述するように液晶表示装置を作成した。 【0088】 (実施例1) PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に偏光子保護フィルム1を偏光子の透過軸とフィルムの進相軸が平行になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板1を作成した。東芝社製のREGZA 43J10X(IPSモード)の光源側の偏光板を、ポリエステルフィルムが液晶とは反対側(遠位)となるように上記偏光板1に置き換えて、液晶表示装置を作成した。なお、偏光板1の透過軸の方向が、置き換え前の偏光板の透過軸の方向と同一となるよう置き換えた。光源側偏光板に用いられたポリエステルフィルムの進相軸方向と、液晶表示装置の表示画面の水平方向は平行であった。 ・・・中略・・・ 【0094】 (実施例7) PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に偏光子保護フィルム6を偏光子の透過軸とフィルムの進相軸が平行になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板6を作成した。偏光板1を偏光板6に変えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。光源側偏光板に用いられたポリエステルフィルムの進相軸方向と、液晶表示装置の表示画面の水平方向は平行であった。 ・・・中略・・・ 【0118】 各実施例で得た液晶表示装置について、虹斑観察を測定した結果を以下の表1及び表2に示す。 【0119】 【表1】 」 イ 甲3に記載された発明及び技術的事項 上記アによれば、甲3には、次の発明及び技術的事項が開示されていると認められる。 (ア) 甲3に記載される発明の技術分野は、「液晶表示装置」、「詳しくは、虹状の色斑の発生が改善された液晶表示装置」に関するものであること(【0001】)。 (イ) 甲3に記載される発明が解決しようとする課題は、「青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合にも、虹斑が抑制された液晶表示装置を提供することである。特に、液晶テレビ等で使用されているVAモード又はIPSモードの液晶表示装置において虹斑が抑制された液晶表示装置を提供すること」である点(【0009】)。 (ウ) 本課題を解決するための手段としての以下に示す「液晶表示装置」の発明。 「バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板がこの順に配置されている液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、かつ、600nm以上780nm以下の波長領域における最もピーク強度の高いピークの半値幅が5nm未満である発光スペクトルを有する白色発光ダイオードであり、 前記光源側偏光板は、偏光子の光源側にポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムが積層されており、 前記ポリエステルフィルムは、液晶表示装置の表示画面の水平方向と平行な方向の屈折率が1.53〜1.62である、 VAモード又はIPSモードの液晶表示装置。」(【請求項1】) (エ) 請求項1として特定される「VAモード又はIPSモードの液晶表示装置」の発明を具現化した例として、「偏光子の片側に偏光子保護フィルム6を偏光子の透過軸とフィルムの進相軸が平行になるように貼り付け」て「作成した」「偏光板6」に、「東芝社製のREGZA 43J10X(IPSモード)の光源側の偏光板を、ポリエステルフィルムが液晶とは反対側(遠位)となるように」「置き換えて、」「作成した」「液晶表示装置」が記載され(【0094】の実施例7)、本実施例7は「虹斑観察を測定した結果」が「○:虹斑が観察されない」であった(【表1】)、すなわち、上記(イ)で説示した上記課題が解決できたこと。ここで、「偏光子保護フィルム6」は、「Reは6400nm、Rthは14600nm、Re/Rthは0.44、Nx=1.617、Ny=1.681」である(【0084】)。 (3) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 (ア) エレクトロルミネッセンスセル、エレクトロルミネッセンス表示装置 甲2発明の「有機EL表示パネル10−1」は、その文言から、「有機EL(エレクトロルミネッセンス)」により画像を表示させるパネルを意味するものであって、「エレクトロルミネッセンスセル」を含むことは明らかである。 また、甲2発明の「インセル型のフレキシブル画像表示装置」は、その装置構成からみて、「有機EL表示パネル10−1」によって画像を表示する装置であることは明らかであるから、本件特許発明1の「エレクトロルミネッセンス表示装置」に相当する。 (イ) エレクトロルミネッセンスセルよりも視認側に配置される、円偏光板 甲2発明の「位相差層3/偏光膜1/保護膜2」からなる積層体(以下「光学積層体」という。)は、本件特許発明1の「円偏光板」と、「偏光子と位相差層を備えた光学部材」である点で共通する。そして、甲2発明の「光学積層体」は、その配置より、「有機EL表示パネル10−1」に含まれる「エレクトロルミネッセンスセル」「よりも視認側に配置」されることは明らかである。 よって、上記(ア)を踏まえれば、本件特許発明1と甲2発明とは、「エレクトロルミネッセンスセルよりも視認側に配置される、偏光子と位相差層を備えた光学部材を備えたエレクトロルミネッセンス表示装置」である点で共通する。 (ウ) 位相差層、偏光子、基材フィルム、順に有すること 甲2発明の「位相差層」及び「偏光膜」は、その文言より明らかなとおり、それぞれ、本件特許発明1の「位相差層」及び「偏光子」に相当する。そして、甲2発明の「保護膜2」は、甲2の【0022】の「透明樹脂材料から形成される保護膜や位相差膜などのフィルムを含むものを指す」との記載等に鑑みれば、「フィルム」の形態であるから、本件特許発明1の「基材フィルム」に相当する。 また、上記(イ)で説示したとおり、甲2発明の上記「光学積層体」は、本件特許発明1の「円偏光板」と、「偏光子と位相差層を備えた光学部材」である点で共通するから、本件特許発明1と甲2発明とは、「偏光子と位相差層を備えた光学部材は、順に、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有」する点で共通する。 (エ) 一致点及び相違点 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と甲2発明とは、 「 エレクトロルミネッセンスセル、及び該エレクトロルミネッセンスセルよりも視認側に配置される、偏光子と位相差層を備えた光学部材を備えたエレクトロルミネッセンス表示装置であって、 前記偏光子と位相差層を備えた光学部材は、順に、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有する、 エレクトロルミネッセンス表示装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2−1) 本件特許発明1は「円偏光板」を備えるのに対し、甲2発明の「光学積層体」は「円偏光板」と特定されていない点。 (相違点2−2) 本件特許発明1は「(1)基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であ」るのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点。 (相違点2−3) 本件特許発明1は「(2)偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在し(ここで偏光子と位相差層との間は位相差層自身も含むものとする)」たものであるのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点。 (相違点2−4) 本件特許発明1は「(3)偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行である」のに対し、甲2発明はそのように特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、技術的に密接に関連する相違点2−2及び2−4についてまとめて検討する。 甲2発明は「有機EL表示パネル」を画像表示部材とした画像表示装置の発明である。他方、甲3に記載される発明は、もっぱら「青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合」に生じる課題を解決することを目的としてなされたものであって、甲3に記載される「偏光板6」は、甲3の【請求項1】で特定される発明を具現化した「実施例7」で用いられたものであり、甲3の上記課題の前提となる「液晶表示装置」以外に適用することが想定されたものと解することもできない。 してみれば、甲2及び甲3に接した当業者が、甲3に記載される発明における「偏光板6」の構成を、甲3の上記課題の前提となる「青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合」と切り離して発明を捉え、さらに、この「偏光板6」における「偏光子保護フィルム6」の「進相軸方向の屈折率」や「偏光子の透過軸とフィルムの進相軸が平行」の構成を、「有機EL表示パネル」を画像表示部材とした発明である甲2発明における、有機EL表示パネルの視認側に配置される「位相差層3/偏光膜1/保護膜2」からなる積層体に適用して、上記相違点2−2及び2−4の構成するように当業者が動機づけられることはないというべきである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲2と甲3の組合わせに関して、甲4や甲6の記載を引用し、阻害要因はない、あるいは、動機づけとなるものがある、等主張する。 しかし、上記「イ 相違点についての判断」で説示したとおり、甲3に記載された発明における「偏光板6」の構成を、甲3に記載される上記課題の前提となる「青色領域(400nm以上495nm未満)、緑色領域(495nm以上600nm未満)及び赤色領域(600nm以上780nm以下)の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、赤色領域(600nm以上780nm以下)におけるピークの半値幅が比較的狭い(5nm未満)発光スペクトルを有する白色発光ダイオードからなるバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合」と切り離して発明を捉え、この「偏光板6」のみの構成を抽出し、当該前提構成を有しない甲2発明に適用することは、甲3の技術思想に基づいたものとはいえないから、甲2発明における有機EL表示パネルの視認側に配置される「位相差層3/偏光膜1/保護膜2」からなる積層体に、甲3に記載の「偏光子保護フィルム6」の「進相軸方向の屈折率」や「偏光子の透過軸とフィルムの進相軸が平行」の構成を適用して、上記相違点2−2及び2−4の構成とするように当業者が動機づけられることはないというべきである。そして、このことは甲4及び甲6の開示内容に左右されるものではない。 よって、特許異議申立人による上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4) 本件特許発明2〜6について 本件特許の特許請求の範囲の請求項2〜6は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明2〜6は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(3)のとおり、本件特許発明1が、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明2〜6も、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第5 むすび したがって、請求項1〜6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2024-01-19 |
出願番号 | P2019-054632 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H05B)
P 1 651・ 113- Y (H05B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
廣田 健介 河原 正 |
登録日 | 2023-04-10 |
登録番号 | 7259452 |
権利者 | 東洋紡株式会社 |
発明の名称 | エレクトロルミネッセンス表示装置 |
代理人 | 弁理士法人三枝国際特許事務所 |