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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1407867
総通号数 27 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-10-27 
確定日 2024-02-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第7266454号発明「配線基板、積層型配線基板、及び配線基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7266454号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7266454号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成31年4月25日に出願され、令和5年4月20日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年10月27日に特許異議申立人栗暢行(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。


第2 本件発明
特許第7266454号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された電極パッドと、
前記絶縁層に埋設され、前記電極パッドに接続するビアと、
を有し、
前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し、
前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成されることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第2導電体層は、前記第1導電体層よりも粒界密度が小さいことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された電極パッドと、
を有し、
前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し、
前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成され、
前記絶縁層は、
絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層と、
を有し、
前記電極パッドは、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に埋設され、
前記くびれは、前記第1絶縁層の絶縁性樹脂に接することを特徴とする配線基板。
【請求項4】
前記第1導電体層は、前記絶縁層の一面において露出する端面と前記絶縁層の一面とが同一平面上に位置するように、形成され、
前記絶縁層の一面には、前記配線基板と他の配線基板とを接着するための接着層が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の配線基板。
【請求項5】
前記ビアは、前記絶縁層の上端面と面一の上端面を有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
他の配線基板と、
前記他の配線基板上に搭載された請求項1〜5のいずれか一つに記載の配線基板と、
を有し、
前記電極パッドは、前記他の配線基板の電極パッドに接合されることを特徴とする積層型配線基板。
【請求項7】
ベース基板上にエッチストップ層及び第1導電体層を形成する工程と、
前記第1導電体層上に、複数の開口を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の各開口において露出する前記第1導電体層上に、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層を形成する工程と、
前記レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程と、
前記空隙において前記エッチストップ層が露出するまで前記第1導電体層をエッチングして、前記第1導電体層と前記第2導電体層とを有する電極パッドを形成する工程と、
前記第1導電体層のエッチングと並行して、前記空隙の幅方向に前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分をエッチングして、前記電極パッドの外側面のうち、前記境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程と、
前記エッチストップ層上に、少なくとも一部が絶縁性樹脂からなり前記電極パッドを被覆する絶縁層を形成する工程と、
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層を貫通して前記電極パッドの前記第2導電体層を露出させるビアホールを形成する工程と、
前記絶縁層の前記ビアホールの位置に、前記第2導電体層に接続するビアを形成する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記エッチストップ層から前記ベース基板を剥離する工程と、
前記エッチストップ層を除去して、前記絶縁層の一面において前記電極パッドの前記第1導電体層の端面を露出させる工程と、
前記絶縁層の一面に、前記第1導電体層の端面を被覆するように接着層を形成する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の配線基板の製造方法。」


第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第12号証を提出し、以下の申立理由1ないし5により、請求項1ないし9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

1 申立理由1(新規性
本件発明1、2、5は、甲第1号証に記載された発明である。
よって、本件請求項1、2、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 申立理由2(進歩性
本件発明1、2、5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明3、4、6ないし9は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

3 申立理由3(新規性
本件発明1、2、6ないし8は、甲第2号証に記載された発明である。
よって、本件請求項1、2、6ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

4 申立理由4(進歩性
本件発明1、2、6ないし8は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明3ないし5、9は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

5 申立理由5(新規性
本件発明1、2は、甲第3号証に記載された発明である。
よって、本件請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

6 申立理由6(進歩性
本件発明1、2は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明3ないし9は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

7 申立理由7(進歩性
本件発明1ないし9は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

8 申立理由8(サポート要件)
本件発明1ないし9は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

9 申立理由9(明確性
本件発明1ないし9は、明確でない。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

10 申立理由10(実施可能要件
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
よって、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2005−136316号公報
甲第2号証:特開2018−61018号公報
甲第3号証:特開2006−222217号公報
甲第4号証:特開2010−192547号公報
甲第5号証:「銅薄膜の室温再結晶における不均一ひずみの影響」
日本金属学会誌第67巻第4号(2003)第169〜172 頁、日本金属学会、2003年発行
甲第6号証:特開2015−167179号公報
甲第7号証:特開2010−130003号公報
甲第8号証:特開2016−162851号公報
甲第9号証:特開2018−26464号公報
甲第10号証:特開2013−150013号公報
甲第11号証:「銀ナノ粒子を下地としたセミアディティブ法による銅パタ ーン形成技術」第28回マイクロエレクトロニクスシンポジ ウム(2018)第285〜288頁、マイクロエレクトロ ニクスシンポジウム、2018年9月発行
甲第12号証:「めっき膜の構造制御―結晶粒径の制御―」
日本金属学会誌第66巻第4号(2002)第350〜36 1頁、日本金属学会、2002年発行


第4 甲各号証の記載
1甲第1号証に記載された発明
甲第1号証(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0003】
このように、樹脂付き金属箔上にセミアディティブ法により回路形成を行う場合、無電解銅めっきが過剰にエッチングされ、導体回路形状が損なわれる不具合が発生しやすい。特に無電解銅めっきの銅箔直上部分はエッチング速度が速くなりやすい傾向がある。以下このような現象をアンダーカットと呼ぶ。図1を用いてアンダーカットの定義を行う。ここで、符号1は電解銅、2は無電解銅、3は金属箔、4は樹脂を示す。図1において、導体回路は(a)のように矩形であることが電気特性の上からも導体回路の接着性の面からも望ましい。しかしながら実際に回路を形成する場合、(b)のように無電解銅めっき部分を中心に凹みを生じることがある。この無電解銅めっき部分の凹みをアンダーカットと呼ぶ。ここでパターン電気銅めっき部分と無電解銅めっき部分の幅の差Aをアンダーカット量と定義する。アンダーカットは銅箔の表面形状が平滑であると特に発生しやすい。ここでアンダーカットの発生要因は多岐にわたっており、一義的に定義するのが難しい。しかしながら発明者らは鋭意努力の末、アンダーカットの発生を防ぐため金属箔上のパラジウムの吸着量を調整することを見出した。本発明は、無電解銅めっきが過剰にエッチングされるアンダーカットの不具合を抑制し、尚且つ電気特性が良好なプリント配線板の製造方法を提供するものである。」
「【0038】
以上のような樹脂組成物と表面が粗し処理されていない金属箔とは従来公知の方法により積層一体化され、図2(a)に示す積層板を得ることができる。
【0039】
次に上記積層体に層間接続用の貫通スルーホール7を形成する(図2(b))。
・・・<略>・・・
【0041】
次に図2(c)に示すように触媒核を付与した金属箔上及びスルーホール内部に薄付けの無電解めっき層8を形成する。
・・・<略>・・・
【0042】
次に図2(d)に示すように無電解めっきを行った上にめっきレジスト9を形成する。
・・・<略>・・・
【0043】
次に図2(e)に示すように電気めっきにより回路パターン10を形成する。
・・・<略>・・・
【0044】
次に図2(f)に示すようにアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてレジストの剥離を行い、パターン部以外の銅をエッチング除去する。
・・・<略>・・・
【0045】
以上示した方法により2層より成るコア基板が完成する。
・・・<略>・・・
【0046】
次にコア基板の上に、図2(g)に示す様に片面金属箔付樹脂をラミネートとする。
・・・<略>・・・
【0047】
次いで図2(h)に示す様に金属箔の上から層間樹脂絶縁層にIVH13を形成する。
・・・<略>・・・
【0050】
次に図2(i)に示すように触媒核を付与した金属箔上及びIVH内部に薄付けの無電解めっき層14を形成する。
・・・<略>・・・
【0051】
次に図2(j)に示すように無電解めっきを行った上にめっきレジスト15を形成する。
・・・<略>・・・
【0052】
次に図2(k)に示すように電気めっきにより回路パターン16を形成する。
・・・<略>・・・
【0054】
次にパターン部以外の銅を好ましくは10〜300g/Lの硫酸及び10〜200g/Lの過酸化水素を主成分とするエッチング液を用いて除去することで回路形成が終了する(図2(l))。エッチング終了後、アンダーカットが片側5μm以内であることが好ましい。」
「【図1】(b)


「【図2】



上記記載から、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
(1)引用例1に記載された物の発明(以下、「引用発明1」という。)
「樹脂組成物と金属箔を一体化した積層板の金属箔3上に形成した薄付けの無電解めっき層8、電気めっきにより形成した回路パターン10、IVH13を形成した層間樹脂絶縁層、IVH13内部に形成した薄付けの無電解めっき層14を有し、無電解銅めっき部分の凹みであるアンダーカットを片側5μm以内としたプリント配線板。」

(2)引用例1に記載された製造方法の発明(以下、「引用発明1’」という。)
「樹脂組成物と金属箔を一体化した積層板を得て、積層板の金属箔3上に薄付けの無電解めっき層8を形成し、その上にめっきレジスト9を形成し、電気めっきにより回路パターン10を形成し、レジスト9の剥離を行い、パターン部以外の銅をエッチング除去し、片面金属箔付樹脂をラミネートし、層間樹脂絶縁層にIVH13を形成し、IVH13内部に薄付けの無電解めっき層14を形成し、無電解銅めっき部分の凹みであるアンダーカットを片側5μm以内とするプリント配線板の製造方法。」

2甲第2号証に記載された発明
甲第2号証(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0045】
図6A〜図6Iは、図4の配線層13の製造工程を説明するための図である。以下では、Cu電極層41が高純度銅からなる場合を例にとって説明する。
まず、図6Aを参照して、多層配線構造21の上にパッシベーション膜22が形成された半導体基板20(図4も併せて参照)が準備される。パッシベーション膜22および第3層間絶縁膜25には、これらを貫通する第2ビア電極34が形成されている。
【0046】
次に、バリア電極層40および銅シード層60が、パッシベーション膜22の表面の上にこの順に形成される。バリア電極層40および銅シード層60は、それぞれ、スパッタ法によって形成されてもよい。バリア電極層40は、100nm以上500nm以下の厚さで形成されてもよい。
次に、図6Bを参照して、所定パターンを有するマスク61が、銅シード層60の上に形成される。マスク61は、銅シード層60においてCu電極層41を形成すべき領域を露出させる開口61aを選択的に有している。
【0047】
次に、図6Cを参照して、Cu電極層41が形成される。Cu電極層41は、マスク61の開口61aから露出する銅シード層60の表面の上に形成される。Cu電極層41は、電解銅めっき法によって形成されてもよい。Cu電極層41は、マスク61の開口61aの深さ方向途中部まで形成される。Cu電極層41は、銅シード層60と一体的に形成される。
【0048】
次に、図6Dを参照して、ニッケル層55およびパラジウム層56が、Cu電極層41の上面41aの上にこの順に形成される。ニッケル層55およびパラジウム層56は、それぞれ、マスク61の開口61aから露出するCu電極層41の上面41aの上に形成される。ニッケル層55およびパラジウム層56は、それぞれ、無電解めっき法によって形成されてもよい。
【0049】
次に、図6Eを参照して、マスク61が除去される。
次に、図6Fを参照して、銅シード層60の不要な部分が、除去される。銅シード層60は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。この工程では、銅シード層60の厚さに応じた分だけCu電極層41の側面41cも除去される。そのため、Cu電極層41の側面41cは、パッド電極層52の側面よりも内方に位置するように形成される。
【0050】
これにより、パッド電極層52が形成される。パッド電極層52は、Cu電極層41の上面41aに機械的および電気的に接続された第1部分53と、第1部分53からバリア電極層40の側方に張り出した第2部分54とを含む。
次に、図6Gを参照して、バリア電極層40の不要な部分が、除去される。バリア電極層40は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。この工程では、バリア電極層40の厚さに応じた分だけ、Cu電極層41の直下に位置するバリア電極層40が除去される。そのため、バリア電極層40の側面は、Cu電極層41の側面41cよりも内方に位置するように形成される。
【0051】
次に、図6Hを参照して、Cu電極層41において下面41bおよび側面41cを接続する角部が除去される。Cu電極層41の角部は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。
ウエットエッチング工程は、バリア電極層40の主面が露出するまで行われる。これにより、Cu電極層41における側面41cの下面41b側の領域に、バリア電極層40の縁部の上面を露出させる凹部46が形成される。
【0052】
次に、図6Iを参照して、半導体基板20が加熱されて、パッド電極層52にボンディングワイヤ5が接合される。ボンディングワイヤ5の接合工程は、より具体的には、ダイパッド2およびリード端子3を含むリードフレーム(図示せず)が準備され、リードフレームのダイパッド2に半導体チップ4が接合された後、実施される。
半導体基板20は、たとえば200℃程度まで加熱される。この工程では、半導体基板20に加えてCu電極層41も加熱されるため、Cu電極層41の外面に酸化銅を含む自然酸化膜が形成される。」
「【0060】
樹脂膜72は、封止樹脂6の樹脂材料とは異なる樹脂材料を含む。樹脂膜72は、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
樹脂膜72は、Cu電極層41の外面に加えて、パッド電極層52の外面を被覆している。樹脂膜72は、ボンディングワイヤ5が接続されたパッド電極層52の上面を露出させるパッド開口73を含む。樹脂膜72は、Cu電極層41の凹部46を埋めている。」
「【0074】
図10は、図4に対応する部分の拡大図であり、本発明の第3実施形態に係る半導体装置81の配線層13およびその周辺の構造を示す図である。図11は、図10の領域XIの拡大図である。以下では、第1実施形態において述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
第1実施形態では、ウエットエッチングによって、Cu電極層41の下面41bと側面41cとを接続する角部が除去されて、バリア電極層40の主面を露出させる凹部46を有するCu電極層41が形成される工程(図6Hを参照)について説明した。
【0075】
これに対して、図10および図11を参照して、半導体装置81では、Cu電極層41の下面41bおよび側面41cを接続する角部に加えて、バリア電極層40の縁部も同時に除去されている。
バリア電極層40の主面において、Cu電極層41の凹部46から露出する縁部は、バリア電極層40の側方に向かって下り傾斜した傾斜面82を含む。バリア電極層40の傾斜面82は、凹部46の内面と連なるように形成されている。バリア電極層40の傾斜面82は、バリア電極層40に対するCu電極層41の積層方向に、凹部46の内面と対向している。」
「【図10】


「【図11】



上記記載から、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
(1)引用例2に記載された物の発明(以下、「引用発明2」という。)
「多層配線構造21の上に形成したパッシベーション膜22、その上にスパッタ法によって形成したバリア電極層40および銅シード層60、その上に電解銅めっき法によって形成したCu電極層41を有し、Cu電極層41の下面41bおよび側面41cを接続する角部とバリア電極層40の縁部を除去し、パッド電極層52にボンディングワイヤ5を接合し、樹脂膜72でCu電極層41の外面とパッド電極層52の外面を被覆し、樹脂膜72でCu電極層41の凹部46を埋めた半導体装置81の配線層13。」

(2)引用例2に記載された製造方法の発明(以下、「引用発明2’」という。)
「多層配線構造21の上にパッシベーション膜22を形成し、その上にバリア電極層40および銅シード層60をスパッタ法によって形成し、その上に開口61aを選択的に有するマスク61を形成し、マスク61の開口61aから露出する銅シード層60の表面の上にCu電極層41を電解銅めっき法によって形成し、マスク61を除去し、銅シード層60の不要な部分とバリア電極層40の不要な部分をウエットエッチングによって除去し、Cu電極層41の下面41bおよび側面41cを接続する角部とバリア電極層40の縁部をウエットエッチングによって同時に除去し、パッド電極層52にボンディングワイヤ5を接合し、樹脂膜72でCu電極層41の外面とパッド電極層52の外面を被覆し、樹脂膜72でCu電極層41の凹部46を埋める半導体装置81の配線層13の製造方法。」

3甲第3号証に記載された発明
甲第3号証(以下、「引用例3」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0003】
しかし、上記したアディティブ法では、図3(a)に示すように、基材26の上の金属膜21の上に形成したメッキ用レジストパターン22において、金属膜21に接触する底部に、下方に向かうに従って幅広となる裾引き部23を生じる。そうすると、図3(b)に示すように、金属膜21の上におけるメッキ用レジストパターン22が形成されていない部分に金属配線パターン24を形成し、その後、図3(c)に示すように、メッキ用レジストパターン22を除去すると、金属配線パターン24には、裾引き部23に起因して、金属膜21に接触する底部に、下方に向かうに従って幅狭となるサイドエッチング部25を生じる。そのため、次いで、金属膜21をエッチングにより除去すると、図3(d)に示すように、そのサイドエッチング部25に起因して、金属配線パターン24の底部の金属膜21が、金属配線パターン24の内側に大きくえぐられるようにエッチングされる。このように、金属膜21がサイドエッチングされると、基材26と金属膜21との接着力が大幅に低下し、その後の処理工程などで、サイドエッチング部25に処理剤が浸入して、基材26から金属膜21および金属配線パターン24が剥離するという不具合を生じる。特に、金属配線パターン24をファインピッチで形成する場合には、そのような不具合が顕著となる。
【0004】
本発明の目的は、めっきレジストの裾引き部に起因して、導体層にサイドエッチング部が生じても、ベース絶縁層から導体層が剥離することを防止することができる、配線回路基板の製造方法を提供することにある。」
「【0008】
図1および図2は、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態としての、フレキシブル配線回路基板の製造方法を示す製造工程図である。以下、図1および図2を参照して、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態であるフレキシブル配線回路基板の製造方法を説明する。
この方法では、まず、図1(a)に示すように、ベース絶縁層1を用意する。
・・・<略>・・・
【0010】
次いで、この方法では、図1(b)に示すように、ベース絶縁層1の上に、金属薄膜2を形成する。金属薄膜2を形成する金属は、例えば、クロム、ニッケル、銅などが好ましく用いられる。また、金属薄膜2の形成は、めっきや真空蒸着法などが用いられ、好ましくは、真空蒸着法、とりわけ、スパッタ蒸着法が用いられる。より具体的には、例えば、ベース絶縁層1の表面全面に、クロム薄膜と銅薄膜とをスパッタ蒸着法によって順次形成する。
【0011】
なお、金属薄膜2の厚みは、通常、1nm〜6μm、好ましくは、50nm〜5μmである。
次いで、この方法では、図1(c)に示すように、金属薄膜2の上に、めっきレジスト3を導体パターン4の反転パターンで形成する。
めっきレジスト3は、特に制限されないが、例えば、ドライフィルムレジストを、金属薄膜2の全面に積層した後、露光および現像することにより、導体パターン4の反転パターンのレジストパターンとして形成する。なお、このようにして形成されるめっきレジスト3には、金属薄膜2に接触する底部において、下方に向かうに従って幅広となる断面略三角形状の裾引き部5を両側に生じる。
【0012】
なお、めっきレジスト3の厚みは、通常、5〜30μm、好ましくは、10〜20μmである。各裾引き部5の最底部の幅W1は、通常、0.5μm以上、5μm以下である。
その後、この方法では、図1(d)に示すように、めっきレジスト3から露出する金属薄膜2の上に、導体層6を導体パターン4で形成する。
導体層6の導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、または、これらの合金などの金属が用いられ、好ましくは、銅が用いられる。また、導体層6の形成は、無電解めっき、電解めっきなどのめっきが用いられ、好ましくは、電解めっきが用いられる。より具体的には、金属薄膜2におけるめっきレジスト3が形成されていない部分に、電解銅めっきにより、銅からなる導体層6を導体パターン4として形成する。電解銅めっきのめっき液としては、例えば、硫酸銅めっき液、ピロ燐酸銅めっき液などが用いられる。
【0013】
なお、導体層6の厚みは、通常、5〜20μm、好ましくは、5〜15μmであり、導体層6の幅は、通常、10〜50μm、各導体層6の間隔は、通常、15〜50μmである。
次いで、この方法では、図1(e)に示すように、めっきレジスト3を除去する。めっきレジスト3の除去は、例えば、エッチング液として水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ溶液を用いる化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法または剥離が用いられる。
【0014】
めっきレジスト3が除去されると、導体層6におけるめっきレジスト3の裾引き部5が形成されていた底部には、下方に向かうに従って幅狭となる断面略三角形状のサイドエッチング部7を両側に生じる。各サイドエッチング部7の最底部の幅W2は、通常、0.5μm以上、5μm以下である。
次いで、この方法では、図1(f)に示すように、導体層6から露出する金属薄膜2を除去する。金属薄膜2の除去は、例えば、エッチング液として塩化第二鉄溶液などを用いる化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法が用いられる。
【0015】
そして、この方法では、図1(g)に示すように、導体層6の上面を含むベース絶縁層1の上における各導体層6の間に、ポジ型感光性樹脂8のワニスを塗布し、乾燥する。ポジ型感光性樹脂8としては、例えば、感光性ポリイミド樹脂、感光性ポリベンゾキサゾール樹脂などが用いられる。また、ポジ型感光性樹脂8は、IC実装における異方導電性フィルム(ACF)の熱圧着を考慮すると、露光および現像し、加熱した後のガラス転移温度Tgが200℃以上であるものが好適である。」
「【図1】



上記記載から、引用例3には、次の発明が記載されていると認められる。
(1)引用例3に記載された物の発明(以下、「引用発明3」という。)
「ベース絶縁層1の上に、スパッタ蒸着法により形成した金属薄膜2、その上に電解めっきにより形成した導体層6を有し、導体層6におけるめっきレジスト3の裾引き部5が形成されていた底部に、下方に向かうに従って幅狭となる断面略三角形状のサイドエッチング部7を両側に生じさせ、ベース絶縁層1の上における各導体層6の間にポジ型感光性樹脂8のワニスを形成した配線回路基板。」

(2)引用例3に記載された製造方法の発明(以下、「引用発明3’」という。)
「ベース絶縁層1の上にスパッタ蒸着法により金属薄膜2を形成し、金属薄膜2の上にめっきレジスト3を導体パターン4の反転パターンで形成し、めっきレジスト3から露出する金属薄膜2の上に電解めっきにより導体層6を形成し、めっきレジスト3を除去し、導体層6におけるめっきレジスト3の裾引き部5が形成されていた底部に、下方に向かうに従って幅狭となる断面略三角形状のサイドエッチング部7を両側に生じさせ、導体層6から露出する金属薄膜2を化学エッチングにより除去し、ベース絶縁層1の上における各導体層6の間にポジ型感光性樹脂8のワニスを塗布し乾燥する配線回路基板の製造方法。」

4甲第4号証に記載された発明
甲第4号証(以下、「引用例4」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0035】
次に、多層配線基板11の製造方法について説明する。
【0036】
本実施形態では、十分な強度を有する支持基板(ガラスエポキシ基板など)を準備し、その支持基板上に、多層配線基板11(配線積層部40)の導体層51及び樹脂絶縁層43〜46をビルドアップしていく方法を採用している。図5〜図20は、その製造方法を説明するための図である。
【0037】
詳述すると、図5に示されるように、まず、支持基板70の両面に、それぞれ積層金属シート体72(即ち支持体層)を配置する。両積層金属シート体72は、2枚の銅箔層73,74を剥離可能な状態で密着させてなる。具体的には、金属めっき(例えば、クロムめっき)を介して各銅箔層73,74を積層することで積層金属シート体72が形成され
ている。各銅箔層73,74において対向していない側の面は粗化面となっており、微細な凹凸が存在している。
【0038】
続く端子形成工程では、積層金属シート体72上にめっきレジスト(マスク)としてのドライフィルム76(厚さ約15μm)をラミネートする(図6参照)。次に、露光及び現像を行うことにより、ドライフィルム76の所定箇所に開口77(内径100μm)を形成し、銅箔層73の表面の一部を露出させる(図7,図8参照)。特に本実施形態においては、露光量を適正値よりも若干少なくしたり、現像時の圧力を適正値よりも若干上げたり、あるいは現像時間を適正値よりも若干長くしたりすることにより、支持体層接触側の開口縁にアンダーカット77aを意図的に生じさせている。アンダーカット77aの大きさ(切れ込み量)は2μm〜3μm程度に設定される。
【0039】
そして、開口77から露出している銅箔層73部分に、金めっき層33、ニッケルめっき層32及び銅めっき層31をこの順序で積層することにより、端子パッド30を形成する(図9〜図11参照)。より詳しくは、まず、電解金めっきを行い、図9に示すような所定厚さの金めっき層33を形成する。本実施形態では、アンダーカット77aの生じている部分(即ち開口77の大径部分)を埋める程度の電解金めっきを行う。次に、アンダーカット77aの生じていない部分(即ち開口77の小径部分)を埋めるように電解ニッケルめっきを行い、金めっき層33上に所定厚さのニッケルめっき層32を形成する。さらに、電解銅めっきを行うことにより、ニッケルめっき層32上に所定厚さの銅めっき層31を形成し、端子パッド30を完成させる(図11参照)。その後、ドライフィルム76を除去する(図12参照)。
【0040】
なお端子形成工程では、開口77が位置合わせ用マーク59の形成予定箇所にも設けられる。そして、当該箇所から露出している銅箔層73部分に、金めっき層33、ニッケルめっき層32及び銅めっき層31をこの順序で積層することにより、位置合わせ用マーク59を形成する。従って、少なくともこの時点において、端子パッド30及び位置合わせ用マーク59は等しい構造を有したものとなる。また、端子パッド30及び位置合わせ用マーク59における金めっき層33に張出部33aが形成される。
【0041】
続く樹脂絶縁層形成工程では、前記両積層金属シート体72の上にシート状の絶縁樹脂基材75を積層し、真空圧着熱プレス機(図示略)を用いて真空下にて加圧加熱した後、硬化させることにより、端子パッド30を被覆する第4層の樹脂絶縁層46を形成する(図14参照)。そして、レーザ加工を施すことによって樹脂絶縁層46の所定の位置にビア穴56を形成し、次いで各ビア穴56内のスミアを除去する従来周知のデスミア処理を行う。
【0042】
続く導体形成工程では、従来公知の手法に従って無電解銅めっき及び電解銅めっきを行うことで、各ビア穴56内にビア導体57を形成する(図14,図15参照)。このとき、樹脂絶縁層46に形成されたビア導体57の小径側端面58が、端子パッド30に接続される。さらに、従来公知の手法(例えばセミアディティブ法)によってエッチングを行うことで、樹脂絶縁層46上に導体層51をパターン形成する。
・・・<略>・・・
【0045】
続く支持体層除去工程では、まず、積層体80を配線積層部40と支持基板70とに分離し、銅箔層73を露出させる。具体的に言うと、積層金属シート体72を2枚の銅箔層73,74の界面にて剥離して、配線積層部40を支持基板70から分離する(図18,図19参照)。
【0046】
さらに、配線積層部40(樹脂絶縁層46)の主面41上にある銅箔層73に対してエッチングを行って、銅箔層73を除去するとともに、端子パッド30等の金層33を主面41から露出させる(図2,図3,図20参照)。なお、本実施形態の多層配線基板11では、端子パッド30が金層33に張出部33aを有している。このため、端子パッド30と樹脂絶縁層46との界面の断面形状が非直線的になり、かつ、従来構造に比べて長くなる。このため、銅を溶解するエッチング液が当該界面を介して配線積層部40の内部に浸入しにくくなり、エッチング液の浸入による銅層31のエッチアウトを防止することができる。」
「【図3】


「【図20】



上記記載から、引用例4には、次の発明が記載されていると認められる。
引用例4に記載された物の発明(以下、「引用発明4」という。)
「支持基板70の両面に配置した積層金属シート体72、その銅箔層73部分に、電解めっきにより形成した、金めっき層33、ニッケルめっき層32、銅めっき層31をこの順序で積層した端子パッド30、端子パッド30を被覆する樹脂絶縁層46、脂絶縁層46の所定の位置に形成したビア穴56及びビア導体57を有し、端子パッド30等の金層33を主面41から露出させた多層配線基板11。」

引用例4に記載された製造方法の発明(以下、「引用発明4’」という。)
「支持基板70の両面に積層金属シート体72を配置し、その上にめっきレジストとしてのドライフィルム76をラミネートし、ドライフィルム76の所定箇所に開口77を形成し、開口77から露出している銅箔層73部分に、電解めっきにより、金めっき層33、ニッケルめっき層32、銅めっき層31をこの順序で積層して端子パッド30を形成し、ドライフィルム76を除去し、端子パッド30を被覆する樹脂絶縁層46を形成し、脂絶縁層46の所定の位置にビア穴56及びビア導体57を形成し、積層体80を配線積層部40と支持基板70とに分離し、銅箔層73を露出させ、エッチングにより銅箔層73を除去するとともに、端子パッド30等の金層33を主面41から露出させる多層配線基板11の製造方法。」

5甲第5号証に記載された技術事項
甲第5号証(以下、「引用例5」という。)には、次の記載がある。(第170頁「3.実験結果」参照。下線は当審で付した。)
「Fig.1にメッキ銅薄膜の室温時効に伴う微細組織の変化をEBSPにより解析した結果を示す。」
「Fig.2に二種類のスパッタ薄膜の室温再結晶挙動をEBSPにより解析した結果を示す。」
「Fig.1(c)


「Fig.2(d)



上記記載から、引用例5には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「電解メッキ薄膜の粒界密度はスパッタ薄膜の粒界密度より概ね小さいこと。」

6甲第6号証に記載された技術事項
甲第6号証(以下、「引用例6」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0071】
次に、図7に示すように、第2導電層112の上にプラズマCVD法を用いて、SiN膜などの第1無機絶縁層113およびSiO2膜などの第2無機絶縁層114を成膜する。」

上記記載から、引用例6には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「導電層を2層の無機絶縁層で被覆すること。」

7甲第7号証に記載された技術事項
甲第7号証(以下、「引用例7」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0049】
このような反りを防止するために一面に最外絶縁層120をさらに形成して反りに対する補強材としての役割を果たすようにする。ただし、この場合、表面に露出されなければならない一面の外部接続パッド130が最外絶縁層120によりカバーされるため、一面の外部接続パッド130は最外絶縁層120を貫通して多層印刷回路基板の一面に露出することになる。」

上記記載から、引用例7には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「外部接続パッドに、外部接続パッドが貫通する補強材としての絶縁層を形成すること。」

8甲第8号証に記載された技術事項
甲第8号証(以下、「引用例8」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0034】
・・・<略>・・・
樹脂絶縁層30の第1表面SF1側に導体21から形成される第1導体層22が埋められる。第2金属箔14aは樹脂フィルムと重ねて接着されている。樹脂絶縁層30の第2表面SF2側に第2金属箔14aが接着される。第2金属箔14aは、好ましくは、銅箔である。
【0035】
樹脂絶縁層30は、例えばシリカ等の無機粒子とエポキシ等の樹脂で形成される。樹脂絶縁層30は、さらに、ガラスクロス等の補強材を有してもよい。図3Fの樹脂絶縁層30は無機粒子と補強材と樹脂で形成されている。また、樹脂絶縁層30は、1層であってもよく、複数の絶縁層から形成されていてもよい。」

上記記載から、引用例8には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「導体層を補強材を含む複数の樹脂絶縁層で覆うこと。」

9甲第9号証に記載された技術事項
甲第9号証(以下、「引用例9」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0055】
・・・<略>・・・
電極202の表面と電極721の表面との少なくとも一方にAu、Cu等の金属バンプを形成し、配線基板100とコア基板700の間にACF(Anisotropic Conductive Film)、NCF(Non Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)、NCP(Non Conductive Paste)などの接着性の部材を介して圧着して接続されることによって、電極202と電極721とが電気的に接続される。」

上記記載から、引用例9には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「配線基板の電極とコア基板の電極を接着性の部材を介して圧着して電気的に接続すること。」

10甲第10号証に記載された技術事項
甲第10号証(以下、「引用例10」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0066】
次に、図2(b)に示すように、支持基板21の表面にエッチングバリア層22を、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタ法、蒸着法、CVD法又は印刷法等により形成する(ステップ2)。エッチングバリア層22は、支持基板21又は支持基板21表面に形成された導電性の膜をエッチング除去する際に、第1配線層14のサイドエッチング等のダメージを防ぐために設けられるものであり、支持基板21又は支持基板21表面に形成された導電性の膜をエッチング除去するエッチング液に対して耐性を有する材料を選択する。」

上記記載から、引用例10には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「導電膜をエッチング除去する際に配線層のダメージを防ぐため、基板表面にエッチングバリア層を設けること。」

11甲第11号証に記載された技術事項
甲第11号証(以下、「引用例11」という。)には、次の記載がある。(第287頁「3.3配線の断面形状」参照。下線は当審で付した。)
「銀SAPで形成した銅配線は、断面形状が矩形に近い形状であるのに対し、ベンチマークの銅シードMSAPで形成した銅配線は、シード層をエッチングする際に銅配線も同時にエッチングされるため、断面形状が矩形ではなくなっていた。」

上記記載から、引用例11には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「銅シードMSAPで形成した銅配線は断面形状が矩形ではないこと。」

12甲第12号証に記載された技術事項
甲第12号証(以下、「引用例12」という。)には、次の記載がある。(第353頁左欄第20行〜右欄第2行参照。下線は当審で付した。)
「結晶粒径はめっき膜の膜厚方向で変化するが、膜の同じ厚さ位置ではめっき浴の種類や電流密度に関係なくほぼ同じである。」

上記記載から、引用例12には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「結晶粒径はめっき膜の膜厚方向で変化すること。」


第5 当審の判断
1 申立理由1(新規性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、
ア 引用発明1の「層間樹脂絶縁層」は、絶縁層を形成するための樹脂から構成されているので、本件発明1の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明1の「アンダーカット」は、「層間樹脂絶縁層」に埋もれているので、本件発明1の「絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれ」に相当する。
ウ 引用発明1の「IVH13」は、「層間樹脂絶縁層」に形成されているので、IVH内部に形成した「無電解めっき層14」は、本件発明1の「絶縁層に埋設され」た「ビア」に相当する。
エ 引用発明1の「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」は、プリント配線板の配線であり、本件発明1のように電極パッドとして使用されるものではない。しかし、配線基板の電極パッドも配線の一部であることを踏まえれば、引用発明1の「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」と本件発明1の「電極パッド」は、「配線」であることで共通する。
オ 引用発明1のIVH内部に形成した「無電解めっき層14」は、本件発明1のように電極パッドには接続されていない。
カ 引用発明1の「金属箔3」の端面は、電極パッドとして使用されるものではないので、本件発明1のように「層間樹脂絶縁層」の一面において露出していない。
キ 引用発明1のプリント配線板は、「無電解めっき層8」自体に凹み(アンダーカット)はあるものの、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に凹みはない。
ク 引用発明1の「プリント配線板」は、本件発明1の「配線基板」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された配線と、
前記絶縁層に埋設されたビアと、
を有する配線基板。
【相違点1A】
本件発明1は、
「前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し」ているが、
引用発明1は、そもそも電極パッドを有していない点。
【相違点1B】
本件発明1は、「ビア」が「電極パッドに接続」しているが、
引用発明1は、電極パッドを有していないため、IVH内部に形成した「無電解めっき層14」が電極パッドに接続していない点。
【相違点1C】
本件発明1は、
「前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成される」が、
引用発明1では、「無電解めっき層8」に凹み(アンダーカット)は形成されているものの、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に凹み(アンダーカット)は形成されていない点。

よって、上述のとおり相違点があるから、本件発明1は引用発明1ではない。

(2)本件発明2、5について
請求項2、5は請求項1を引用するものであり、本件発明2、5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、5は、上記引用発明1ではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1、2、5は、引用発明1ではない。

2 申立理由2(進歩性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、前記1(1)に記載したとおりである。
上記相違点1A〜1Cについて検討する。
(相違点1A)引用例1には、「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」を電極パッドとして使用することを示唆する記載はなく、プリント配線基板の技術常識を考慮しても、これらを電極パッドに転用する動機付けはない。
(相違点1B)引用発明1の「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」を電極パッドに転用する動機付けはないため、引用発明1のIVH内部に形成した「無電解めっき層14」を電極パッドに接続する動機付けもない。
(相違点1C)引用例1の段落【0003】に、「導体回路は(a)のように矩形であることが電気特性の上からも導体回路の接着性の面からも望ましい。」と記載されているとおり、導体回路に凹みを設けることは望ましくないため、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に、あえて凹みを設ける動機付けもない。
よって、本件発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし6について
請求項2、4ないし6は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、5は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術、引用例4には、配線基板の電極パッドを他の配線基板に接合するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点1A〜1Cに係る構成を導き出すことはできない。よって、本件発明4、6は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明1とを対比すると、
ア 引用発明1の「層間樹脂絶縁層」は、絶縁層を形成するための樹脂から構成されているので、本件発明3の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明1の「アンダーカット」は、「層間樹脂絶縁層」に埋もれているので、本件発明3の「絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれ」に相当する。
ウ 引用発明1の「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」は、プリント配線板の配線であり、本件発明3のように電極パッドとして使用されるものではない。しかし、配線基板の電極パッドも配線の一部であることを踏まえれば、引用発明1の「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」と本件発明3の「電極パッド」は、「配線」であることで共通する。
エ 引用発明1の「金属箔」の端面は、電極パッドとして使用されるものではないので、本件発明3のように「層間樹脂絶縁層」の一面において露出していない。
オ 引用発明1のプリント配線板は、「無電解めっき層8」自体に凹み(アンダーカット)はあるものの、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に凹みはない。
カ 引用発明1の「層間樹脂絶縁層」は、1層のみから構成され、本件発明3のように「絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層」から構成されていない。
ク 引用発明1の「プリント配線板」は、本件発明1の「配線基板」に相当する。

したがって、本件発明3と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された配線
を有する配線基板。
【相違点2A】
本件発明3は、
「前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し」、かつ
「前記電極パッドは、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に埋設され」ているが、
引用発明1は、そもそも電極パッドを有していない点。
【相違点2B】
本件発明3は、
「前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成され」るが、
引用発明1では、「無電解めっき層8」に凹み(アンダーカット)は形成されているものの、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に凹み(アンダーカット)は形成されていない点。
【相違点2C】
本件発明3は、
「前記絶縁層は、
絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層と、
を有し」ているが、
引用発明1の「層間樹脂絶縁層」は、そのような2層構造を有していない点。

上記相違点2A〜2Cについて検討する。
(相違点2C)例えば、引用例8に記載されているとおり、導体層を補強材を含む複数の樹脂絶縁層で覆うことは周知技術である。
(相違点2A)しかし、上記(1)で述べたとおり、引用例1には、「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」を電極パッドとして使用することを示唆する記載はなく、プリント配線基板の技術常識を考慮しても、これらを電極パッドに転用する動機付けはない。
(相違点2B)また、上記(1)で述べたとおり、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に、あえて凹みを設ける動機付けもない。
よって、本件発明3は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4、6について
請求項4、6は請求項3を引用するものであり、本件発明4、6は、本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術、引用例4には、配線基板の電極パッドを他の配線基板に接合するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点2A〜2Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(3)に示した本件発明3についての判断と同様の理由により、本件発明4、6は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明7について
本件発明7と引用発明1’とを対比すると、
ア 引用発明1’の「積層板」は、本件発明7の「ベース基板」に相当する。
イ 引用発明1’の「無電解めっき層8」は、本件発明7の「第1導電体層」に相当する。
ウ 引用発明1’の「めっきレジスト9」は、引用例1の図2dに示されているとおり、導体回路となるべき個所に対応する複数の開口を有しているので、本件発明7の「複数の開口を有するレジスト層」に相当する。
エ 引用発明1’の「回路パターン10」は、本件発明7の「第2導電体層」に相当する。
オ 引用発明1’の「無電解めっき層8」と電気めっきにより形成した「回路パターン10」は、めっき方法に差異があるため(無電解めっきと電解めっき)、両者の粒界密度が異なることは明らかである。したがって、引用発明1’の「回路パターン10」は、「第1導電体層とは粒界密度が異なる」と認められる。
カ 引用例1の図2fに示されているとおり、レジストを剥離することによって、隣り合う「回路パターン10」の間に空隙が形成されることは明らかである。したがって、引用発明1’の「レジスト9の剥離を行」う工程は、本件発明7の「レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程」に相当する。
キ 引用発明1’の「金属箔」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」は、プリント配線板の配線であり、本件発明7のように電極パッドとして使用されるものではない。
ク 引用発明1’のプリント配線板は、「無電解めっき層8」自体に凹み(アンダーカット)はあるものの、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に凹みはない。
ケ 引用発明1’の「層間樹脂絶縁層」は、絶縁層を形成するための樹脂から構成されているので、本件発明7の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
ク 引用発明1’の「プリント配線板の製造方法」は、本件発明7の「配線基板の製造方法」に相当する。

したがって、本件発明7と引用発明1’との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
ベース基板上に第1導電体層を形成する工程と、
前記第1導電体層上に、複数の開口を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の各開口において露出する前記第1導電体層上に、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層を形成する工程と、
前記レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程と、
前記空隙において前記第1導電体層をエッチングして、前記第1導電体層と前記第2導電体層を形成する工程と、
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層を形成する工程と、
を有する配線基板の製造方法。
【相違点3A】
本件発明7は、「エッチストップ層」を有するのに対し、
引用発明1’は、エッチストップ層を有していない点。
【相違点3B】
本件発明7は、「電極パッド」を有するのに対し、
引用発明1’は、電極パッドを有していない点。
【相違点3C】
本件発明7は、「前記第1導電体層のエッチングと並行して、前記空隙の幅方向に前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分をエッチングして、前記電極パッドの外側面のうち、前記境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程」を有するのに対し、
引用発明1’は、「無電解めっき層8」自体に凹み(アンダーカット)はあるものの、そのような境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程を有していない点。

上記相違点3A〜3Cについて検討する。
(相違点3A)例えば、引用例10に記載されているとおり、導電膜をエッチング除去する際に、配線層のダメージを防ぐため、基板表面にエッチングバリア層を設けることは周知技術である。
(相違点3B)しかし、上記(1)で述べたとおり、引用例1には、「金属箔3」、「無電解めっき層8」、「回路パターン10」を電極パッドとして使用することを示唆する記載はなく、プリント配線基板の技術常識を考慮しても、これらを電極パッドに転用する動機付けはない。
(相違点3C)また、上記(1)で述べたとおり、「無電解めっき層8」と「回路パターン10」との境界部分に、あえて凹みを設ける動機付けもない。
よって、本件発明7は、引用発明1’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明8、9について
請求項8、9は請求項7を引用するものであり、本件発明8、9は、本件発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点3A〜3Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(5)に示した本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明8、9は、引用発明1’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件発明1、2、5は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明3、4、6は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明7ないし9は、引用発明1’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 申立理由3(新規性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明2とを対比すると、
ア 引用発明2の「樹脂膜72」は、絶縁膜として機能しているので、本件発明1の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明2の「配線層13」は、「パッド電極層52」を有することから、本件発明1の「電極パッド」に相当する。
ウ 引用発明2は、樹脂膜72でCu電極層41の外面とパッド電極層52の外面を被覆し、樹脂膜72でCu電極層41の凹部46を埋めているので、引用発明2の「凹部46」は、本件発明1の「絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれ」に相当する。
エ 引用発明2の「パッド電極層52」は、「ボンディングワイヤ5」に接合されているが、本件発明1のようにビアには接続されていない。(「第2ビア電極34」はビアではあるが、「樹脂膜72」に埋設されていない点に留意されたい。)
オ 引用発明2の「バリア電極層40」は、本件発明1の「第1導電体層」に相当する。
カ 引用発明2の「バリア電極層40」の端面は、本件発明1のように「樹脂膜72」の一面において露出していない。
キ 引用発明2の「Cu電極層41」は、本件発明1の「第2導電体層」に相当する。
ク 引用発明2の「バリア電極層40」と「Cu電極層41」は、製法に差異があるため(スパッタ法と電解銅めっき法)、両者の粒界密度が異なることは明らかである。したがって、引用発明2の「Cu電極層41」は、「第1導電体層とは粒界密度が異なる」と認められる。
ケ 引用発明2の「凹部46」は、「Cu電極層41の下面41bおよび側面41cを接続する角部とバリア電極層40の縁部をウエットエッチングによって同時に除去」して形成しているので、引用例2の図11に示されているとおり、「バリア電極層40」と「Cu電極層41」の外側面のうち両者の境界部分に対応する領域にくびれが形成されているものと認められる。
コ 引用発明2は「半導体装置81の配線層13」の発明であって、本件発明1のように「配線基板」の発明ではない。しかし、半導体装置も配線を有する部材の一種であるから、引用発明2の「半導体装置81」と本件発明1の「配線基板」は「配線を有する部材」であることで共通する。

したがって、本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された電極パッドと、
を有し、
前記電極パッドは、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し、
前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成される配線を有する部材。
【相違点4A】
本件発明1は「前記絶縁層に埋設され、前記電極パッドに接続するビア」を有するのに対し、
引用発明2は、絶縁層に埋設された電極パッドに接続するビアを有していない点。
【相違点4B】
本件発明1は「第1導電体層」が「絶縁層の一面において端面が露出する」のに対し、
引用発明2の「バリア電極層40」は、「樹脂膜72」の一面において端面が露出していない点。
【相違点4C】
本件発明1は「配線基板」の発明であるのに対し、
引用発明2は「半導体装置」の発明である点。

よって、上述のとおり相違点があるから、本件発明1は引用発明2ではない。

(2)本件発明2、6について
請求項2、6は請求項1を引用するものであり、本件発明2、6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、6は、上記引用発明2ではない。

(3)本件発明7について
本件発明7と引用発明2’とを対比すると、
ア 引用発明2’の「多層配線構造21」は、本件発明7の「ベース基板」に相当する。
イ 引用発明2’の「パッシベーション膜22」は、本件発明7の「エッチストップ層」に相当する。
ウ 引用発明2’の「バリア電極層40」は、本件発明7の「第1導体層」に相当する。
エ 引用発明2’の「マスク61」は、「配線層13」に対応した複数の「開口61a」を有しているので、本件発明7の「複数の開口を有するレジスト層」に相当する。
オ 引用発明2’の「Cu電極層41」は、本件発明7の「第2導体層」に相当する。
カ 引用発明2’の「バリア電極層40」と「Cu電極層41」は、製法に差異があるため(スパッタ法と電解銅めっき法)、両者の粒界密度が異なることは明らかである。したがって、引用発明2’の「Cu電極層41」は、「第1導電体層とは粒界密度が異なる」と認められる。
キ 引用発明2’の「Cu電極層41」は、マスク61の開口61aから露出する銅シード層60の表面の上に形成されるので、「マスク61」を剥離することによって、隣り合う「Cu電極層41」の間に空隙が形成されることは明らかである。したがって、引用発明2’の「マスク61を除去」する工程は、本件発明7の「レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程」に相当する。
ク 引用発明2’の「配線層13」は、「パッド電極層52」を有することから、本件発明7の「電極パッド」に相当する。また、引用発明2’の「配線層13」は、「バリア電極層40」と「Cu電極層41」を有している。
ケ 引用発明2’の「凹部46」は、本件発明7の「くびれ」に相当する。
コ 引用発明2’の「凹部46」は、「Cu電極層41の下面41bおよび側面41cを接続する角部とバリア電極層40の縁部をウエットエッチングによって同時に除去」して形成しているので、引用例2の図11に示されているとおり、「バリア電極層40」と「Cu電極層41」の外側面のうち両者の境界部分に対応する領域にくびれが形成されているものと認められる。
サ 引用発明2’は、樹脂膜72でCu電極層41の外面とパッド電極層52の外面を被覆し、樹脂膜72でCu電極層41の凹部46を埋めているので、引用発明2’の「樹脂膜72」は、本件発明7の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなり前記電極パッドを被覆する絶縁層」に相当する。
シ 引用発明2’は「半導体装置81の配線層13の製造方法」の発明であって、本件発明7のように「配線基板の製造方法」の発明ではない。しかし、半導体装置も配線を有する部材の一種であるから、引用発明2’の「半導体装置81」と本件発明7の「配線基板」は「配線を有する部材」であることで共通する。

したがって、本件発明7と引用発明2’との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
ベース基板上にエッチストップ層及び第1導電体層を形成する工程と、
前記第1導電体層上に、複数の開口を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の各開口において露出する前記第1導電体層上に、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層を形成する工程と、
前記レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程と、
前記空隙において前記エッチストップ層が露出するまで前記第1導電体層をエッチングして、前記第1導電体層と前記第2導電体層とを有する電極パッドを形成する工程と、
前記第1導電体層のエッチングと並行して、前記空隙の幅方向に前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分をエッチングして、前記電極パッドの外側面のうち、前記境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程と、
前記エッチストップ層上に、少なくとも一部が絶縁性樹脂からなり前記電極パッドを被覆する絶縁層を形成する工程と、
を有することを特徴とする配線を有する部材の製造方法。
【相違点5】
本件発明7は「配線基板」の発明であるのに対し、
引用発明2’は「半導体装置」の発明である点。

よって、上述のとおり相違点があるから、本件発明7は引用発明2’ではない。

(4)本件発明8について
請求項8は請求項7を引用するものであり、本件発明8は、本件発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(3)に示した本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明8は、引用発明2’ではない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1、2、6は、引用発明2ではない。また、本件発明7、8は、引用発明2’ではない。

4 申立理由4(進歩性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、前記3(1)に記載したとおりである。
上記相違点4A〜4Cについて検討する。
(相違点4A)引用発明2の「半導体装置」において、半導体チップとリード端子とを接続する「ボンディングワイヤ5」をビアに変更することはできない。
(相違点4B)また、引用発明2の「バリア電極層40」は、「パッシベーション膜22」の上に直接形成されているため、「パッシベーション膜22」を剥がして使用することはできない。
したがって、「バリア電極層40」を「樹脂膜72」の一面において露出させることはできない。また、バリア電極層からパッシベーション膜を剥がして使用することは周知技術ではない。
(相違点4C)また、引用例2に記載された「半導体装置」の「配線層13」は、ボンディングワイヤを接続するための電極であるから、これを「配線基板」として使用する動機付けはない。
よって、本件発明1は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし6について
請求項2、4ないし6は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、6は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術、引用例4には、絶縁層とビアの上端面を同一面とするという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点4A〜4Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、本件発明4、5は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明2とを対比すると、
ア 引用発明2の「樹脂膜72」は、絶縁膜として機能しているので、本件発明3の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明2の「配線層13」は、「パッド電極層52」を有することから、本件発明3の「電極パッド」に相当する。
ウ 引用発明2は、樹脂膜72でCu電極層41の外面とパッド電極層52の外面を被覆し、樹脂膜72でCu電極層41の凹部46を埋めているので、引用発明2の「凹部46」は、本件発明3の「絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれ」に相当する。
エ 引用発明2の「バリア電極層40」は、本件発明3の「第1導電体層」に相当する。
オ 引用発明2の「バリア電極層40」の端面は、本件発明3のように「樹脂膜72」の一面において露出していない。
カ 引用発明2の「Cu電極層41」は、本件発明3の「第2導電体層」に相当する。
キ 引用発明2の「バリア電極層40」と「Cu電極層41」は、製法に差異があるため(スパッタ法と電解銅めっき法)、両者の粒界密度が異なることは明らかである。したがって、引用発明2の「Cu電極層41」は、「第1導電体層とは粒界密度が異なる」と認められる。
ク 引用発明2の「凹部46」は、「Cu電極層41の下面41bおよび側面41cを接続する角部とバリア電極層40の縁部をウエットエッチングによって同時に除去」して形成しているので、引用例2の図11に示されているとおり、「バリア電極層40」と「Cu電極層41」の外側面のうち両者の境界部分に対応する領域にくびれが形成されているものと認められる。
ケ 引用発明2の「層間樹脂絶縁層」は、1層のみから構成され、本件発明3のように「絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層」から構成されていない。
コ 引用発明2は「半導体装置81の配線層13」の発明であって、本件発明3のように「配線基板」の発明ではない。しかし、半導体装置も配線を有する部材の一種であるから、引用発明2の「半導体装置81」と本件発明3の「配線基板」は「配線を有する部材」であることで共通する。

したがって、本件発明3と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された電極パッドと、
を有し、
前記電極パッドは、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し、
前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成され、
前記くびれは、絶縁層の絶縁性樹脂に接する配線を有する部材。
【相違点6A】
本件発明3は「第1導電体層」が「絶縁層の一面において端面が露出する」のに対し、
引用発明2の「バリア電極層40」は「樹脂膜72」の一面において端面が露出していない点。
【相違点6B】
本件発明3では、「絶縁層」が「絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層」を有するのに対して、
引用発明2では、「樹脂膜72」がそのような2層構造の絶縁層を有していない点。
【相違点6C】
本件発明3は「配線基板」の発明であるのに対し、
引用発明2は「半導体装置」の発明である点。

上記相違点6A〜6Cについて検討する。
(相違点6B)例えば、引用例8に記載されているとおり、導体層を補強材を含む複数の樹脂絶縁層で覆うことは周知技術である。
(相違点6A)しかし、上記(1)で述べたとおり、「バリア電極層40」は「パッシベーション膜22」の上に直接形成されているため、「バリア電極層40」を「樹脂膜72」の一面において露出させることはできない。また、バリア電極層からパッシベーション膜を剥がして使用することは周知技術ではない。
(相違点6C)また、上記(1)で述べたとおり、引用例2に記載された「半導体装置」を「配線基板」として使用する動機付けはない。
よって、本件発明3は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4、6について
請求項4、6は請求項3を引用するものであり、本件発明4、6は、本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点6A〜6Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(3)に示した本件発明3についての判断と同様の理由により、本件発明4、6は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明7について
本件発明7と引用発明2’との一致点及び相違点は、前記3(3)に記載したとおりである。
上記相違点5について検討する。
(相違点5)上記(1)で述べたとおり、引用例2に記載された「半導体装置」を「配線基板」として使用する動機付けはない。
よって、本件発明7は、引用発明2’に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明8、9について
請求項8、9は請求項7を引用するものであり、本件発明8、9は、本件発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(5)に示した本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明8は、引用発明2’に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点5に係る構成を導き出すことはできない。よって、本件発明9は、引用発明2’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件発明1、2、6は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明3−5は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明7、8は、引用発明2’に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明9は、引用発明2’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 申立理由5(新規性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明3とを対比すると、
ア 引用発明3の「ポジ型感光性樹脂8」からなる層は、絶縁層を形成するための樹脂から構成されているので、本件発明1の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明3の「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は、「ポジ型感光性樹脂8」に埋もれているので、本件発明1の「絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれ」に相当する。
ウ 引用発明3の「金属薄膜2」と「導体層6」は、配線回路基板の配線であって、本件発明1のように電極パッドとして使用されるものではない。しかし、配線基板の電極パッドも配線の一部であることを踏まえれば、引用発明3の「金属薄膜2」と「導体層6」と本件発明1の「電極パッド」は、「配線」であることで共通する。
エ 引用発明3の「配線回路基板」はビアを有していないため、電極パッドに接続しているビアも有していない。
オ 引用発明3の「金属薄膜2」の端面は、電極パッドとして使用されるものではないので、本件発明1のように「ポジ型感光性樹脂8」の一面において露出していない。
カ 引用発明3の「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は、「金属薄膜2」と「導体層6」の側面全体に沿って単調に幅狭となる形状であり、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分に凹みは形成されていない。
キ 引用発明3の「配線回路基板」は、本件発明1の「配線基板」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された配線
を有する配線基板。
【相違点7A】
本件発明1は、「絶縁層に埋設され、前記電極パッドに接続するビア」を有しているが、
引用発明3は、そもそもビアを有していない点。
【相違点7B】
本件発明1は、
「前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し」ているが、
引用発明3は、そもそも電極パッドを有していない点。
【相違点7C】
本件発明1は、
「前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成される」が、
引用発明3では、「金属薄膜2」と「導体層6」の側面全体に沿って単調に幅狭となる「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は有しているものの、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分に凹みは形成されていない点。

よって、上述のとおり相違点があるから、本件発明1は引用発明3ではない。

(2)本件発明2について
請求項2は請求項1を引用するものであり、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2は、上記引用発明3ではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1、2は、引用発明3ではない。


6 申立理由6(進歩性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明3との一致点及び相違点は、前記5(1)に記載したとおりである。
上記相違点7A〜7Cについて検討する。
(相違点7A)配線基板において電極パッドに接続するビアを設けることは、例示するまでもなく周知技術である。
(相違点7B)しかし、引用例3には、「金属薄膜2」と「導体層6」を電極パッドとして使用することを示唆する記載はなく、配線回路基板の技術常識を考慮しても、これらを電極パッドに転用する動機付けはない。
(相違点7C)また、引用発明3の「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は、「メッキ用レジストパターン22」の「下方に向かうに従って幅広となる裾引き部23」によって生じたものであるから(段落【0003】参照)、「メッキ用レジストパターン22」の「裾引き部23」の形状を変形し、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分にあえて凹みを設ける動機付けもない。
よって、本件発明1は、引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし6について
請求項2、4ないし6は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2は、引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術、引用例4には、絶縁層とビアの上端面を同一面とするという周知技術、配線基板の電極パッドを他の配線基板に接合するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点7A〜7Cに係る構成を導き出すことはできない。よって、本件発明4ないし6は、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明3とを対比すると、
ア 引用発明3の「ポジ型感光性樹脂8」からなる層は、絶縁層を形成するための樹脂から構成されているので、本件発明3の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明3の「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は、「ポジ型感光性樹脂8」に埋もれているので、本件発明3の「絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれ」に相当する。
ウ 引用発明3の「金属薄膜2」と「導体層6」は、配線回路基板の配線であって、本件発明3のように電極パッドとして使用されるものではない。しかし、配線基板の電極パッドも配線の一部であることを踏まえれば、引用発明3の「金属薄膜2」と「導体層6」と本件発明3の「電極パッド」は、「配線」であることで共通する。
エ 引用発明3の「金属薄膜2」の端面は、電極パッドとして使用されるものではないので、本件発明3のように「ポジ型感光性樹脂8」の一面において露出していない。
オ 引用発明3の「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は、「金属薄膜2」と「導体層6」の側面全体に沿って単調に幅狭となる形状であり、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分に凹みは形成されていない。
カ 引用発明3の「ポジ型感光性樹脂8」からなる層は、1層のみから構成され、本件発明3のように「絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層」から構成されていない。
キ 引用発明3の「配線回路基板」は、本件発明3の「配線基板」に相当する。

したがって、本件発明3と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成された配線
を有する配線基板。
【相違点8A】
本件発明3は、
「前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成され、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層と、
を有し」、かつ
「前記電極パッドは、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に埋設され」ているが、
引用発明3は、そもそも電極パッドを有していない点。
【相違点8B】
本件発明3は、
「前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成され」るが、
引用発明3では、「金属薄膜2」と「導体層6」の側面全体に沿って単調に幅狭となる「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は有しているものの、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分に凹みは形成されていない点。
【相違点8C】
本件発明3は、
「前記絶縁層は、
絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層と、
を有し」ているが、
引用発明3の「ポジ型感光性樹脂8」からなる層は、そのような2層構造を有していない点。

上記相違点8A〜8Cについて検討する。
(相違点8C)例えば、引用例8に記載されているとおり、導体層を補強材を含む複数の樹脂絶縁層で覆うことは周知技術である。
(相違点8A)しかし、上記(1)で述べたとおり、引用例3には、「金属薄膜2」と「導体層6」を電極パッドとして使用することを示唆する記載はなく、配線回路基板の技術常識を考慮しても、これらを電極パッドに転用する動機付けはない。
(相違点8B)また、上記(1)で述べたとおり、引用発明3の「メッキ用レジストパターン22」の「裾引き部23」の形状を変形し、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分にあえて凹みを設ける動機付けもない。
よって、本件発明3は、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4、6について
請求項4、6は請求項3を引用するものであり、本件発明4、6は、本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術、引用例4には、配線基板の電極パッドを他の配線基板に接合するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点8A〜8Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(3)に示した本件発明3についての判断と同様の理由により、本件発明4、6は、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明7について
本件発明7と引用発明3’とを対比すると、
ア 引用発明3’の「ベース絶縁層1」は、本件発明7の「ベース基板」に相当する。
イ 引用発明3’の「金属薄膜2」は、本件発明7の「第1導電体層」に相当する。
ウ 引用発明3’の「めっきレジスト3」は、「導体パターン4」に対応する複数の開口を有しているので、本件発明7の「複数の開口を有するレジスト層」に相当する。
エ 引用発明3’の「導体層6」は、本件発明7の「第2導電体層」に相当する。
オ 引用発明3’のスパッタ蒸着法により形成した「金属薄膜2」と電解めっきにより形成した「導体層6」は、製法に差異があるため(スパッタ蒸着法と電解めっき法)、両者の粒界密度が異なることは明らかである。したがって、引用発明3’の「導体層6」は、「第1導電体層とは粒界密度が異なる」と認められる。
カ 引用例3の図1(e)に示されているとおり、「めっきレジスト3」を除去することによって、隣り合う「導体パターン4」の間に空隙が形成されている。したがって、引用発明3’の「めっきレジスト3を除去」する工程は、本件発明7の「レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程」に相当する。
キ 引用発明3’の「金属薄膜2」と「導体層6」は、配線回路基板の配線であって、本件発明7のように電極パッドとして使用されるものではない。
ク 引用発明3’の「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は、「金属薄膜2」と「導体層6」の側面全体に沿って単調に幅狭となる形状であり、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分に凹みは形成されていない。
ケ 引用発明3’の「ポジ型感光性樹脂8」からなる層は、絶縁層を形成するための樹脂から構成されているので、本件発明7の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
コ 引用発明3’の「配線回路基板の製造方法」は、本件発明7の「配線基板の製造方法」に相当する。

したがって、本件発明7と引用発明3’との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
ベース基板上に第1導電体層を形成する工程と、
前記第1導電体層上に、複数の開口を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の各開口において露出する前記第1導電体層上に、前記第1導電体層とは粒界密度が異なる第2導電体層を形成する工程と、
前記レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程と、
前記空隙において前記第1導電体層をエッチングして、前記第1導電体層と前記第2導電体層を形成する工程と、
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層を形成する工程と、
を有する配線基板の製造方法。
【相違点9A】
本件発明7は、「エッチストップ層」を有するのに対し、
引用発明3’は、エッチストップ層を有していない点。
【相違点9B】
本件発明7は、「電極パッド」を有するのに対し、
引用発明3’は、電極パッドを有していない点。
【相違点9C】
本件発明7は、「前記第1導電体層のエッチングと並行して、前記空隙の幅方向に前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分をエッチングして、前記電極パッドの外側面のうち、前記境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程」を有するのに対し、
引用発明3’では、「金属薄膜2」と「導体層6」の側面全体に沿って単調に幅狭となる「断面略三角形状のサイドエッチング部7」は有しているものの、そのような境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程を有していない点。

上記相違点9A〜9Cについて検討する。
(相違点9A)例えば、引用例10に記載されているとおり、導電膜をエッチング除去する際に配線層のダメージを防ぐため、基板表面にエッチングバリア層を設けることは周知技術である。
(相違点9B)しかし、上記(1)で述べたとおり、引用例3には、「金属薄膜2」と「導体層6」を電極パッドとして使用することを示唆する記載はなく、配線回路基板の技術常識を考慮しても、これらを電極パッドに転用する動機付けはない。
(相違点9C)また、上記(1)で述べたとおり、引用発明3’の「メッキ用レジストパターン22」の「裾引き部23」の形状を変形し、「金属薄膜2」と「導体層6」との境界部分にあえて凹みを設ける動機付けもない。
よって、本件発明7は、引用発明3’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明8、9について
請求項8、9は請求項7を引用するものであり、本件発明8、9は、本件発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点9A〜9Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(5)に示した本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明8、9は、引用発明3’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件発明1、2は、引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明3ないし6は、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明7ないし9は、引用発明3’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


7 申立理由7(進歩性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明4とを対比すると、
ア 引用発明4の「樹脂絶縁層46」は、絶縁層を形成する樹脂から構成されるので、本件発明1の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明4の「端子パッド30」は、樹脂絶縁層46で被覆されているので、本件発明1の「絶縁層に埋設され」た「電極パッド」に相当する。
ウ 引用発明4の「ビア導体57」は、樹脂絶縁層46の中に形成され、かつ端子パッド30に接続しているので、本件発明1の「絶縁層に埋設され、前記電極パッドに接続するビア」に相当する。
エ 引用発明4の「金めっき層33」は、「主面41から露出させる」ので、「絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層」に相当する。
オ 引用発明4の「ニッケルめっき層32」は、「金めっき層33」上に形成されているので、本件発明1の「第1導電体層上に形成され」た「第2導電体層」に相当する。
カ 引用発明4の「端子パッド30」の外側面には、本件発明1のようなくびれは形成されておらず、「端子パッド30」を構成する「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の境界部分に対応する領域にもくびれは形成されていない。
キ 引用発明4の「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」は、いずれも電解めっきにより形成されているため、両層の粒界密度が異なるとは言えない。
ク 引用発明4の「多層配線基板11」は、本件発明1の「配線基板」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明4との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設された電極パッドと、
前記絶縁層に埋設され、前記電極パッドに接続するビアと、
を有し、
前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成された第2導電体層と、
を有する配線基板。
【相違点10A】
本件発明1では、「電極パッド」の「外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成され」、かつ「前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成される」のに対し、
引用発明4では、「端子パッド30」がくびれを有していない点。
【相違点10B】
本件発明1では、「第1導電体層」と「第2導電体層」とで「粒界密度が異なる」のに対し、
引用発明4では、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の粒界密度が異なるとは言えない点。

上記相違点10A〜10Bについて検討する。
(相違点10A)配線基板において、電極パッドを構成する複数の金属層の境界部分にくびれを設けることは、周知技術ではない。
また、引用例4に、「端子パッド30が金層33に張出部33aを有している。このため、端子パッド30と樹脂絶縁層46との界面の断面形状が非直線的になり、かつ、従来構造に比べて長くなる。このため、銅を溶解するエッチング液が当該界面を介して配線積層部40の内部に浸入しにくくなり、エッチング液の浸入による銅層31のエッチアウトを防止することができる。」と記載されているとおり(段落【0046】参照)、引用発明4の「端子パッド30」は、エッチング液が「張出部33a」を超えて内部に浸入しないようにしているのだから、仮に、引用例2に開示されているとおり(段落【0074】−【0075】参照)、ウェットエッチングにより複数の金属層の境界部分にくびれを設けることが周知技術であったとしても、引用発明4の電極層に当該周知技術を採用する動機付けはない。
(相違点10B)また、引用例4には、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の粒界密度を異ならせることを示唆する記載はなく、両層のめっき方法をあえて異ならせる動機付けもない。

よって、本件発明1は、引用発明4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし6について
請求項2、4ないし6は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点10A〜10Bに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4ないし6は、引用発明4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明4とを対比すると、
ア 引用発明4の「樹脂絶縁層46」は、絶縁層を形成する樹脂から構成されるので、本件発明3の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」に相当する。
イ 引用発明4の「端子パッド30」は、樹脂絶縁層46で被覆されているので、本件発明3の「絶縁層に埋設され」た「電極パッド」に相当する。
ウ 引用発明4の「金めっき層33」は、「主面41から露出させる」ので、「絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層」に相当する。
エ 引用発明4の「ニッケルめっき層32」は、「金めっき層33」上に形成されているので、本件発明3の「第1導電体層上に形成され」た「第2導電体層」に相当する。
オ 引用発明4の「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」は、いずれも電解めっきにより形成されているため、両層の粒界密度が異なるとは言えない。
カ 引用発明4の「端子パッド30」の外側面には、本件発明3のようなくびれは形成されておらず、「端子パッド30」を構成する「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の境界部分に対応する領域にもくびれは形成されていない。
キ 引用発明4の「樹脂絶縁層46」は、1層のみから構成され、本件発明3のように「絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層」から構成されていない。
ク 引用発明4の「多層配線基板11」は、本件発明3の「配線基板」に相当する。

本件発明3と引用発明4との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層と、
前記絶縁層に埋設された電極パッドと、
を有し、
前記電極パッドは、
前記絶縁層の一面において端面が露出する第1導電体層と、
前記第1導電体層上に形成された第2導電体層と、
を有する配線基板。
【相違点11A】
本件発明3では、「電極パッド」の「外側面に前記絶縁層の絶縁性樹脂に接するくびれが形成され」、かつ「前記くびれは、前記外側面のうち前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分に対応する領域に形成され」るのに対し、
引用発明4では、「端子パッド30」がくびれを有していない点。
【相違点11B】
本件発明3では、「第1導電体層」と「第2導電体層」とで「粒界密度が異なる」のに対し、
引用発明4では、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の粒界密度が異なるとは言えない点。
【相違点11C】
本件発明3では、「絶縁層」が「絶縁性樹脂からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層され、絶縁性樹脂及び補強部材からなる第2絶縁層」を有するのに対して、
引用発明4では、「樹脂膜72」がそのような2層構造の絶縁層を有していない点。

上記相違点11A〜11Cについて検討する。
(相違点11C)例えば、引用例8に記載されているとおり、導体層を補強材を含む複数の樹脂絶縁層で覆うことは周知技術である。
(相違点11A)しかし、上記(1)で述べたとおり、配線基板において、電極パッドを構成する複数の金属層の境界部分にくびれを設けることは、周知技術ではない。
また、仮に、ウェットエッチングにより複数の金属層の境界部分にくびれを設けることが周知技術であったとしても、引用発明4の電極層に、当該周知技術を採用する動機付けはない。
(相違点11B)また、上記(1)で述べたとおり、引用例4には、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の粒界密度を異ならせることを示唆する記載はなく、両層のめっき方法をあえて互いに異ならせる動機付けもない。
よって、本件発明3は、引用発明4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4、6について
請求項4、6は請求項3を引用するものであり、本件発明4、6は、本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点11A〜11Cに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(3)に示した本件発明3についての判断と同様の理由により、本件発明4、6は、引用発明4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明7について
本件発明7と引用発明4’とを対比すると、
ア 引用発明4’の「支持基板70」は、本件発明7の「ベース基板」に相当する。
イ 引用発明4’の「金めっき層33」は、本件発明7の「第1導電体層」に相当する。
ウ 引用発明4’の「ドライフィルム76」は、端子パッドに対応する複数の「開口77」を有しているので、本件発明7の「複数の開口を有するレジスト層」に相当する。
エ 引用発明4’の「金めっき層33」は、「ドライフィルム76」をラミネートした後に形成されているため、本件発明7のように「金めっき層33」の上に「ドライフィルム76」を形成していない。
オ 引用発明4’の「ニッケルめっき層32」は、本件発明7の「第2導電体層」に相当する。
カ 引用発明4’の「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」は、いずれも電解めっきにより形成されているため、両層の粒界密度が異なるとは言えない。
キ 引用発明4’の「電極パッド」は複数形成されているので、隣り合う「電極パッド」の間に空隙が形成されることは明らかである。
ク 引用発明4’の「金めっき層33」は、予め分離した状体で形成されているため、本件発明7のようにドライフィルム76を除去した後にエッチングしていない。
ケ 引用発明4’の「端子パッド30」の外側面には、本件発明7のようなくびれは形成されておらず、「端子パッド30」を構成する「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の境界部分に対応する領域にもくびれは形成されていない。
コ 引用発明4’の「樹脂絶縁層46」は、本件発明7の「絶縁層」に相当する。
サ 引用発明4’の「端子パッド30」は、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」とを有し、[樹脂絶縁層46]で被覆されている。
シ 引用発明4’の「多層配線基板11の製造方法」は、本件発明7の「配線基板の製造方法」に相当する。

したがって、本件発明7と引用発明4’との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
ベース基板上に第1導電体層を形成する工程と、
複数の開口を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の各開口において露出する前記第1導電体層上に第2導電体層を形成する工程と、
前記レジスト層を除去して、隣り合う前記第2導電体層の間に空隙を形成する工程と、
前記第1導電体層と前記第2導電体層とを有する電極パッドを形成する工程と、
少なくとも一部が絶縁性樹脂からなり前記電極パッドを被覆する絶縁層を形成する工程と、
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【相違点12A】
本件発明7は、「エッチストップ層」を有するのに対し、
引用発明4’は、エッチストップ層を有していない点。
【相違点12B】
本件発明7は、「第1導電体層上に、複数の開口を有するレジスト層を形成」し、「第1導電体層をエッチングして」いるのに対し、
引用発明4’は「金めっき層33」の上に複数の「開口77」を有する「ドライフィルム76」を形成しておらず、「金めっき層33」をエッチングしていない点。
【相違点12C】
本件発明7では、「第1導電体層」と「第2導電体層」とで「粒界密度が異なる」のに対し、
引用発明4’では、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の粒界密度が異なるとは言えない点。
【相違点12D】
本件発明7は、「前記第1導電体層のエッチングと並行して、前記空隙の幅方向に前記第1導電体層と前記第2導電体層との境界部分をエッチングして、前記電極パッドの外側面のうち、前記境界部分に対応する領域にくびれを形成する工程」を有するのに対し、
引用発明4’は、くびれを形成する工程を有していない点。

上記相違点12A〜12Dについて検討する。
(相違点12A)例えば、引用例10に記載されているとおり、導電膜をエッチング除去する際に配線層のダメージを防ぐため、基板表面にエッチングバリア層を設けることは周知技術である。
(相違点12B)また、シード層をレジスト形成前に設けること、レジスト形成後に設けることは、いずれも周知技術であり、どの段階でシード層を設けるかは当業者が適宜選択することである。
(相違点12C)しかし、上記(1)で述べたとおり、配線基板において、電極パッドを構成する複数の金属層の境界部分にくびれを設けることは、周知技術ではない。
また、仮に、ウェットエッチングにより複数の金属層の境界部分にくびれを設けることが周知技術であったとしても、引用発明4’の電極層に、当該周知技術を採用する動機付けはない。
(相違点12D)また、上記(1)で述べたとおり、引用例4には、「金めっき層33」と「ニッケルめっき層32」の粒界密度を異ならせることを示唆する記載はなく、両層のめっき方法をあえて互いに異ならせる動機付けもない。
よって、本件発明7は、引用発明4’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明8、9について
請求項8、9は請求項7を引用するものであり、本件発明8、9は、本件発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
また、引用例9には、一方の基板の電極と他方の基板の電極を接着性の部材を介して接続するという周知技術が記載されているものの、係る周知技術を踏まえても、上記相違点12A〜12Dに係る構成を導き出すことはできない。
よって、上記(5)に示した本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明8、9は、引用発明4’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし6は、引用発明4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明7ないし9は、引用発明4’及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


8 申立理由8(サポート要件)について
(1)絶縁層の厚みについて
特許異議申立人は、本件発明は、絶縁層の厚みを特定していないため、発明の課題(絶縁層に対する電極パッドの固定強度を向上することができる配線基板、積層型配線基板、及び配線基板の製造方法を提供すること)を達成しえない態様までをも包含している旨を主張している。
しかし、本件特許明細書に、「絶縁層の絶縁性樹脂の厚さが十分に確保されない場合、絶縁性樹脂と電極パッドとの接触面積が小さくなり、絶縁層に対する電極パッドの固定強度が低下するという問題がある。」(段落【0004】参照)、「電極パッド40の外側面40bに第1配線構造体10の絶縁性樹脂に接するくびれ40aが形成される。これにより、第1配線構造体10の絶縁性樹脂が電極パッド40のくびれ40aに充填されて電極パッド40と絶縁性樹脂との密着性が確保される。その結果、第1配線構造体10に対する電極パッド40の固定強度を向上することができる。」(段落【0042】参照)と記載されていることから、本件発明は、電極パッドの外側面にくびれを形成することにより、絶縁性樹脂と電極パッドとの接触面積を増大させ、これにより両者の固定強度を向上させる発明であると解される。
しれみれば、絶縁層の厚みが特定されていなくても、くびれを形成すれば、その分だけ接触面積が増加することは明らかであるから、絶縁層の厚みは、本件発明における課題解決のための必須構成ではない。
よって、特許異議申立人のサポート要件についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし9が発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。

(2)「すくなくとも一部」について
特許異議申立人は、本件発明1、3の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」、本件発明7の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなり前記電極パッドを被覆する絶縁層」は、ビア等の絶縁層自体以外の機能部材を備えているとも解されるため、発明の詳細な説明等に記載された事項を超えている旨を主張している。
しかし、上記(1)で述べたとおり、本件発明は、電極パッドの外側面にくびれを形成することにより、絶縁性樹脂と電極パッドとの接触面積を増大させ、これにより両者の固定強度を向上させる発明であるから、絶縁層がビア等の絶縁層以外の機能部材を備えていたとしても、くびれを形成すれば、その分だけ接触面積が増加することは明らかであるから、絶縁層以外の機能部材の有無は、本件発明における課題解決のための必須構成ではない。
また、発明の詳細な説明を参酌しても、絶縁層が絶縁性樹脂以外の機能部材を排除する旨の記載はない。
よって、特許異議申立人のサポート要件についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし9が発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。

9 申立理由9(明確性)について
(1)「粒界密度」について
特許異議申立人は、本件発明1、3、7の「粒界密度」は定義が記載されていないため、発明の範囲が不明確である旨を主張している。
しかし、「粒界密度」なる技術用語は、多数の特許公報に記載されている用語であって、文言通り「粒界」の「密度」を意味すると解されているものであり、発明の詳細な説明にその定義が記載されていないからといって不明確であるとまでは言えない。
例えば、特開2002−76553号公報の段落【0009】には、「無電解Niメッキ層のリン含有率が低いと、結晶粒度の小さい膜が成長するため、粒界密度が高くなり、メッキ表面と充填樹脂の密着性が低下する・・・この写真から、横方向10μm当り平均で0.3個所程度の割合でスパイク状の形状が観察された。これは粒界であると考えられる。」と記載されており、「粒界密度」はメッキ層の断面写真から測定できることが分かる。同様に、特開2004−91916号公報の段落【0016】にも「粒界密度」の測定方法と概念について記載されている。
また、本件特許明細書には、「第2導電体層42の粒界密度が第1導電体層41の粒界密度よりも小さいため、くびれ40aは、第1導電体層41と第2導電体層42との境界部分43に対して非対称な形状に形成される。」と記載されていることから(段落【0030】参照)、第1導電体層と第2導電体層における「粒界密度」の差異は、くびれが「非対称な形状に形成される」程度の差異と解することができる。
そうすると、「粒界密度」の厳密な測定条件が定められていなくても、くびれが非対称な形状になるか否かにより「粒界密度」の異同は判別できると考える。
したがって、本件発明は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。
よって、特許異議申立人の明確性についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし9が明確ではないとはいえない。

(2)「すくなくとも一部」について
特許異議申立人は、本件発明1、3の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなる絶縁層」、本件発明7の「少なくとも一部が絶縁性樹脂からなり前記電極パッドを被覆する絶縁層」は、絶縁層自体に絶縁性樹脂以外の材料、添加物等が包含されているのか、絶縁層内、絶縁層間にビア、他の層等の絶縁層自体以外の機能部材が配置されているのか特定できないため、発明の範囲が不明確である旨を主張している。
しかし、上記8(2)で述べたとおり、絶縁層が絶縁性樹脂以外の材料や添加物、絶縁層以外の機能部材を含んでいたとしても、本件発明の課題は達成できるため、絶縁性樹脂以外に何を含んでいるかを特定していなくても、発明の範囲が不明確であるとまではいえない。
よって、特許異議申立人の明確性についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし9が明確ではないとはいえない。

(3)「ビア」について
特許異議申立人は、本件発明1の「ビア」が単なる導体を意味するのか、それ以外のものを意味するのか特定できないため、発明の範囲が不明確である旨を主張している。
しかし、「ビア」なる技術用語は、上層と下層の配線を電気的に接続する導体を意味する用語として一般的に使われており、発明の詳細な説明にその意味が定義されていなくても、当業者はその意味を明確に理解することができる。
よって、特許異議申立人の明確性についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし9が明確ではないとはいえない。

10 申立理由10(実施可能要件)について
特許異議申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、電解めっき法とスパッタ法の条件等が記載されていないため、当業者が「粒界密度が異なる」導電体層を含む本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない旨を主張している。
しかし、結晶成長を伴う電解めっき法と、物理的に粒子を堆積させるスパッタ法とで、「粒界密度が異なる」ことは明らかであるから、発明の詳細な説明に各々の製造条件が記載されていなくても、実施可能要件を満たさないとまでは言えない。
よって、特許異議申立人の実施可能要件についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし9は当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとまでは言えない。


第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2024-02-14 
出願番号 P2019-084696
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H05K)
P 1 651・ 537- Y (H05K)
P 1 651・ 121- Y (H05K)
P 1 651・ 536- Y (H05K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 須原 宏光
小池 秀介
登録日 2023-04-20 
登録番号 7266454
権利者 新光電気工業株式会社
発明の名称 配線基板、積層型配線基板、及び配線基板の製造方法  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

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