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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項1号公知  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1409160
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-11-24 
確定日 2024-03-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第7282155号発明「頭皮用外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7282155号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7282155号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成28年3月25日に出願した特許出願(特願2016−61606号)の一部を、平成28年8月9日に新たな特許出願(特願2016−156351号)としたものの一部を、平成28年12月14日に新たな特許出願(特願2016−242318号)としたものの一部を、令和2年9月2日に新たな特許出願(特願2020−147497号)としたものの一部を、令和3年12月24日に新たな特許出願(特願2021−210974号)としたものであって、令和5年5月18日に設定の登録(請求項の数:6)がなされ、同年5月26日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和5年11月24日に、本件特許の請求項1〜6に係る特許に対して、特許異議申立人である細川 桂司(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
(以下、請求項番号に対応して、それぞれの請求項に係る発明を「本件発明1」、・・・「本件発明6」といい、本件発明1〜6をまとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】
低級アルコールと、
ステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有し、
前記低級アルコールの含有量が、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%であり、
軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器(但し、薬液を毛髪や頭皮に塗布する塗布部と、前記塗布部に供給する薬液を貯留する薬液貯蔵部を有する薬液塗布用具であり、前記塗布部は、前記薬液貯蔵部に連通し薬液を吐出させる吐出通路と、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させる導き機能を有する中棒部材と、前記中棒部材を前記吐出通路を閉じ方向に付勢し、押し上げ力に対して負荷を与える付勢手段と、を有し、前記中棒部材は、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させ、押し上げによる前記中棒部材の移動に応じて薬液の吐出量を変化させることを特徴とする薬液塗布用具を除く。)に収容されてなる頭皮用外用組成物(但し、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びデキサメタゾン酢酸エステルを含有する外用組成物を除く。)。
【請求項2】
発毛部位に対して用いられる、請求項1に記載の頭皮用外用組成物。
【請求項3】
頭皮における湿疹、皮膚炎、抜け毛、薄毛、フケ、痒み、乾燥及びバリア機能低下からなる群より選択される少なくとも1つの症状の予防、治療、及び/又は改善用である、請求項1又は2に記載の頭皮用外用組成物。
【請求項4】
前記低級アルコールが、エタノールである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の頭皮用外用組成物。
【請求項5】
可溶化系の組成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の頭皮用外用組成物。
【請求項6】
増粘剤を更に含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の頭皮用外用組成物。」

第3 異議申立ての理由の概要及び証拠方法
1 特許異議申立書に記載した申立理由
本件特許の請求項1〜6に係る特許は、下記(1)〜(4)の点により、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものであると主張している。そして、証拠方法として、後記2の甲第1号証〜甲第10号証(以下、順に「甲1」等という。)を提出している。

(1)申立理由1及び2(新規性欠如及び進歩性欠如)について
本件発明1〜6は、甲1(及び出願時の技術常識を示す甲1−1〜甲1−24、甲2〜甲8、甲8−1、甲8−2、甲9、甲9−1)に記載された発明又は日本国内において公然知られた発明であり、甲1、甲1−1〜甲1−24、甲2〜甲8、甲8−1、甲8−2、甲9、甲9−1から当業者が容易に想到し得るものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同項第1号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許は、特許法第113条第2号に該当するとして、取り消されるべきものである。

(2)申立理由3(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、下記の理由により当業者が本件発明1〜6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
また、本件発明1〜6が、下記の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件特許は、特許法第113条第4号に該当するとして、取り消されるべきものである。


本件発明1〜6の頭皮外用組成物が、リニメント剤や軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤のような剤型である場合に、軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器を介して、如何にして外用組成物を頭皮に適用すればよいのかを当業者は本件明細書の記載から理解することができないし、当業者は本件特許明細書に記載の課題を解決できると理解することもできない。(異議申立書の58頁下から7行〜59頁5行)

(3)申立理由4(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、下記の理由により当業者が本件発明1〜6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
また、本件発明1〜6が、下記の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件特許は、特許法第113条第4号に該当するとして、取り消されるべきものである。


本件明細書の実施例において、その効果が確認されているといえるのは、ステロイドとしてプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルを、モノテルペンとしてメントールを、抗ヒスタミン成分として塩酸ジフェンヒドラミンを用いた場合についてのみであり、これら以外のステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分を用いた場合に、上記特定の成分と同様の結果が得られることは示されていないので、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、メントール、塩酸ジフェンヒドラミン以外に、如何なるステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分を用いることができるのかを当業者は容易に予測することができない。さらに、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、メントール、塩酸ジフェンヒドラミン以外のステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分を用いた場合にも、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、メントール及び塩酸ジフェンヒドラミンを用いた場合と同様の結果が得られると当業者は理解することができない。(異議申立書の59頁8行〜60頁8行)

(4)申立理由5(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、下記の理由により当業者が本件発明6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
また、本件発明1〜6が、下記の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載(請求項6)は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件特許は、特許法第113条第4号に該当するとして、取り消されるべきものである。


本件明細書の実施例において、粘性がやや高まっても頭皮の毛包への浸透量が顕著に増加したことが示されているのは、増粘剤として0.1w/w%の疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた場合についてのみであるところ、本件明細書には、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の増粘剤を用いた場合にも同様の特性が得られることは全く示されていないので、疎水化ヒドロキシプロビルメチルセルロース以外に、如何なる増粘剤を用いることができるのかを当業者は理解することができない。
また、本件明細書の段落【0095】の記載に照らせば、増粘剤は頭皮の毛包には浸透し難いものであることが理解されるので、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の増粘剤を用いた場合にも、頭皮における毛包への浸透量を増大させることができると当業者は理解することができない。
さらに、増粘剤はその含有割合が増えると液剤の粘性が高まり、毛包への浸透性が大きく低下していくことが予想されるので、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを如何なる濃度で用いれば、「頭皮の毛包への浸透量(毛髪あり)が顕著に増加」するとの効果を奏すると当業者は理解することができない。(異議申立書の60頁11行〜61頁15行)

2 証拠方法
異議申立書とともに提出された証拠方法は、以下のとおりである。(当審注:登録商標を表す○の中にRの文字を、(R)と表記する。以下同様。)
甲1:日本医薬品集 一般薬 2016−2017,株式会社じほう,平成27年8月25日,p.701-746,v
甲1−1:ウインブルダンPCローションの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成25年7月5日
※甲1−24の「ウインブルダンPCローション」の情報によれば、甲1−1の公知日は平成25年7月5日である。
甲1−2:ウナコーワエースLの添付文書,興和株式会社,平成26年5月10日
※甲1−24の「ウナコーワエースL」の情報によれば、甲1−2の公知日は平成26年5月10日である。
甲1−3:液体ムヒアルファ(R)EXの添付文書,株式会社池田模範堂,平成26年5月3日
※甲1−24の「液体ムヒアルファ(R)EX」の情報によれば、甲1−3の公知日は平成26年5月3日である。
甲1−4:エコルデEX液の添付文書,グロー薬品工業株式会社/前田薬品工業株式会社,平成26年5月16日
※甲1−24の「エコルデEX液」の情報によれば、甲1−4の公知日は平成26年5月16日である。
甲1−5:エプールEX液の添付文書,日邦薬品工業株式会社/万協製薬株式会社,平成26年7月17日
※甲1−24の「エプールEX液」の情報によれば、甲1−5の公知日は平成26年7月17日である。
甲1−6:オブラチルEX液の添付文書,奥田製薬株式会社/前田薬品工業株式会社,平成26年5月16日
※甲1−24の「オブラチルEX液」の情報によれば、甲1−6の公知日は平成26年5月16日である。
甲1−7:カンピオーネEX液の添付文書,奥田製薬株式会社/前田薬品工業株式会社,平成23年7月2日
※甲1−24の「カンピオーネEX液」の情報によれば、甲1−7の公知日は平成23年7月2日である。
甲1−8:コンプラックPCローションの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成25年7月5日
※甲1−24の「コンプラックPCローション」の情報によれば、甲1−8の公知日は平成25年7月5日である。
甲1−9:コンプラックPCローションXの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成27年4月11日
※甲1−24の「コンプラックPCローションX」の情報によれば、甲1−9の公知日は平成27年4月11日である。
甲1−10:新液体エミリエントEXの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成25年6月21日
※甲1−24の「新液体エミリエントEX」の情報によれば、甲1−10の公知日は平成25年6月21日である。
甲1−11:スクミントEX液の添付文書,協和薬品工業株式会社,平成26年11月8日
※甲1−24の「スクミントEX液」の情報によれば、甲1−11の公知日は平成26年11月8日である。
甲1−12:ハイセデPCローションの添付文書,グレートアンドグランド株式会社/ジャパンメディック株式会社,平成27年4月3日
※甲1−24の「ハイセデPCローション」の情報によれば、甲1−12の公知日は平成27年4月3日である。
甲1−13:バルクロン(R)EX液の添付文書,株式会社プロダクト・イノベーション/前田薬品工業株式会社,平成26年5月16日
※甲1−24の「バルクロン(R)」の情報によれば、甲1−13の公知日は平成26年5月16日である。
甲1−14:ヒフールEX液の添付文書,小林薬品工業株式会社/万協製薬株式会社,平成26年7月17日
※甲1−24の「ヒフールEX液」の情報によれば、甲1−14の公知日は平成26年7月17日である。
甲1−15:プオリナート(R)EX液の添付文書,グレートアンドグランド株式会社/前田薬品工業株式会社,平成24年9月4日
※甲1−24の「プオリナート(R)EX」の情報によれば、甲1−15の公知日は平成24年9月4日である。
甲1−16:プレアデスPCローションの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成27年2月28日
※甲1−24の「プレアデスPCローション」の情報によれば、甲1−16の公知日は平成27年2月28日である。
甲1−17:プロテジェPCローションの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成26年11月7日
※甲1−24の「プロテジェPCローション」の情報によれば、甲1−17の公知日は平成26年11月7日である。
甲1−18:ムルコス(R)EX液アルファの添付文書,グレートアンドグランド株式会社/前田薬品工業株式会社,平成26年5月16日
※甲1−24の「ムルコス(R)EX液アルファ」の情報によれば、甲1−18の公知日は平成26年5月16日である。
甲1−19:ラクピオンEXローションαの添付文書,ラクール薬品販売株式会社/東光薬品工業株式会社,平成26年7月3日
※甲1−24の「ラクピオンEXローションα」の情報によれば、甲1−19の公知日は平成26年7月3日である。
甲1−20:ラホヤPVA9液の添付文書,万協製薬株式会社,平成27年5月8日
※甲1−24の「ラホヤPVA9液」の情報によれば、甲1−20の公知日は平成27年5月8日である。
甲1−21:リドベートQ液の添付文書,協和薬品工業株式会社,平成26年11月8日
※甲1−24の「リドベートQ液」の情報によれば、甲1−21の公知日は平成26年11月8日である。
甲1−22:リファットPCローションの添付文書,ジャパンメディック株式会社,平成25年9月22日
※甲1−24の「リファットPCローション」の情報によれば、甲1−22の公知日は平成25年9月22日である。
甲1−23:ルメジEX液の添付文書,奥田製薬株式会社/前田薬品工業株式会社,平成26年5月16日
※甲1−24の「ルメジEX液」の情報によれば、甲1−23の公知日は平成26年5月16日である。
甲1−24:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構の一般医薬品・要指導医薬品 情報検索サイトの甲1−1号証〜甲1−23号証の医薬品に関する検索結果のページ,独立行政法人 医薬品医療機器総合機構,
URL(当審注:下記URLは、甲1−1〜甲1−23の医薬品に関する検索結果のページの下部に記載されたURLを参考のために当審が記載した。):
甲1−1:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_J0901000519_02_02
甲1−2:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/270072_J1401000086_01_01
甲1−3:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/130034_K0705000044_03_01
甲1−4:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J1301000047_01_01
甲1−5:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/630357_J1001000226_02_01
甲1−6:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J1101000214_02_01
甲1−7:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J1101000216_02_01
甲1−8:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_J0901000370_02_02
甲1−9:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_K1504000042_01_01
甲1−10:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_K1306000002_01_02
甲1−11:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/230128_J1401000361_01_01
甲1−12:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_J1501000055_01_01
甲1−13:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J1101000218_02_01
甲1−14:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/630357_J1001000232_02_01
甲1−15:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J1201000262_01_01
甲1−16:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_K1502000022_01_01
甲1−17:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_K1411000009_01_01
甲1−18:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J0901000071_02_01
甲1−19:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/480114_K1004000011_02_01
甲1−20:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/630357_J1501000079_01_01
甲1−21:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/230128_J1401000365_01_01
甲1−22:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730011_K1309000007_01_02
甲1−23:
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/730012_J1101000222_02_01
甲2:第十六改正日本薬局方解説書,廣川書店,平成23年,p.A−128〜A−134
甲3:再公表特許第2007/072923
甲4:特開2009−280511号公報
甲5:特開2005−343891号公報
甲6:特開2005−126336号公報
甲7:医薬品添加物事典,薬事日報社,平成28年2月18日,p.(3)、(4)、55、56
甲8:虫さされ|よくあるご質問|池田模範堂(平成28年3月24日のアーカイブ),インターネット・アーカイブ,平成28年3月24日,URL:https://web.archive.org/web/20160324022615/http://ikedamohando.co.jp/qa/qa_insect_bite.html
甲8−1:液体ムヒ(R)S2aの添付文書,株式会社池田模範堂,平成24年7月
甲8−2:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構の一般医薬品・要指導医薬品 情報検索サイトの甲8号証の医薬品に関する検索結果のページ,独立行政法人 医薬品医療機器総合機構,URL:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/130034_J0801000168_03_01
甲9:頭皮湿疹や炎症などのトラブル対策・ケア方法(平成24年6月16日のアーカイブ),インターネット・アーカイブ,平成24年6月16日,URL:https://web.archive.org/web/20120616073004/http://touhi.kagu7.com/article/224425026.html
甲9−1:液体ムヒ(R)Sの添付文書,株式会社池田模範堂,平成19年9月
甲10:本件特許の出願(特願2021−210974)の審査段階において、令和5年3月2日付けで提出した意見書

第4 当審の判断
当審は、申立人がした申立理由1〜5のいずれによっても、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立理由1及び2(新規性欠如及び進歩性欠如)について
(1)甲1−1〜1−23に記載された発明
ア 甲1−1に記載された又は公然知られた発明
甲1−1には、ウインブルダンPCローションについて記載されており、虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられること、使用する際は、以下の【図】のように、スポンジ部分をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布されること、下記[成分・分量]からなることが記載されている。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量に関する注意」の4、「成分・分量」の項)
【図】



ここで、上記図より、「ウインブルダンPCローション」は、薬液が格納された容器のスポンジ部分を患部に押し当てて使用されるものである。
そうすると、甲1−1には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−1発明」。)。
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、ウインブルダンPCローション。
【図】


【成分・分量】

」(以下「甲1−1発明」という。)

イ 甲1−2に記載された又は公然知られた発明
甲1−2には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−2発明」。)。(タイトル、1頁「成分・分量(1mL中)」の項、2頁「用法・用量」の項、「効能・効果」の項)
「虫さされ、かゆみ、湿疹、かぶれ、皮膚炎、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器を逆さに持って、ムラなく塗れるようスポンジ面を軽く患部に押しつけ、液を十分に浸透させて塗布される、以下の【成分・分量(1mL中)】からなる、ウナコーワエースL。
【図】


【成分・分量(1mL中)】

」(以下「甲1−2発明」という。)

ウ 甲1−3に記載された又は公然知られた発明
甲1−3には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−3発明」。)。(タイトル、1頁「効能」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分とそのはたらき 有効成分(100mL中)」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように、塗布部を患部に押し当て、容器のスポンジ部分に薬液を十分にしみ込ませて塗布される、以下の【成分とそのはたらき 有効成分(100mL中)】からなる、液体ムヒアルファ(R)EX。
【図】


【成分とそのはたらき 有効成分(100mL中)】

」(以下「甲1−3発明」という。)

エ 甲1−4に記載された又は公然知られた発明
甲1−4には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−4発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」、「用法・用量」の項、「成分・分量(100mL中)」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分・分量(100mL中)】からなる、エコルデEX液。
【図】

【成分・分量(100mL中)】

」(以下「甲1−4発明」という。)

オ 甲1−5に記載された又は公然知られた発明
甲1−5には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−5発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、キャップをとりはずし、スポンジ部分を肌に1〜2回軽く押し当てて、スポンジに薬液をしみ込ませて塗布される、以下の【成分・分量】からなる、エプールEX液。
【成分・分量】

」(以下「甲1−5発明」という。)

カ 甲1−6に記載された又は公然知られた発明
甲1−6には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−6発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分・分量(100mL中)」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分・分量(100mL中)】からなる、オブラチルEX液。
【図】

【成分・分量(100mL中)】

」(以下「甲1−6発明」という。)

キ 甲1−7に記載された又は公然知られた発明
甲1−7には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−7発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分・分量(100mL中)」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分・分量(100mL中)】からなる、カンピオーネEX液。
【図】

【成分・分量(100mL中)】

」(以下「甲1−7発明」という。)

ク 甲1−8に記載された又は公然知られた発明
甲1−8には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−8発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、コンプラックPCローション。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−8発明」という。)

ケ 甲1−9に記載された又は公然知られた発明
甲1−9には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−9発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、湿疹、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、コンプラックPCローションX。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−9発明」という。)

コ 甲1−10に記載された又は公然知られた発明
甲1−10には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−10発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、新液体エミリエントEX。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−10発明」という。)

サ 甲1−11に記載された又は公然知られた発明
甲1−11には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−11発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、湿疹、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、キャップをとりはずし、スポンジ部分を肌に1〜2回軽く押し当てて、スポンジに薬液をしみ込ませて塗布される、以下の【成分・分量】からなる、スクミントEX液。
【成分・分量】

」(以下「甲1−11発明」という。)

シ 甲1−12に記載された又は公然知られた発明
甲1−12には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−12発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、ハイセデPCローション。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−12発明」という。)

ス 甲1−13に記載された又は公然知られた発明
甲1−2には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−13発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分・分量(100mL中)」の項)
「湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、虫さされ、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分・分量(100mL中)】からなる、バルクロン(R)EX液。
【図】

【成分・分量(100mL中)】

」(以下「甲1−13発明」という。)

セ 甲1−14に記載された又は公然知られた発明
甲1−14には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−14発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、キャップをとりはずし、スポンジ部分を肌に1〜2回軽く押し当てて、スポンジに薬液をしみ込ませて塗布される、以下の【成分・分量】からなる、ヒフールEX液。
【成分・分量】

」(以下「甲1−14発明」という。)

ソ 甲1−15に記載された又は公然知られた発明
甲1−15には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−15発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分(100mL中)」の項)
「湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、虫さされ、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分(100mL中)】からなる、プリオナート(R)EX液。
【図】

【成分(100mL中)】

」(以下「甲1−15発明」という。)

タ 甲1−16に記載された又は公然知られた発明
甲1−16には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−16発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、プレアデスPCローション。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−16発明」という。)

チ 甲1−17に記載された又は公然知られた発明
甲1−17には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−17発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項の4.、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、プロテジェPCローション。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−17発明」という。)

ツ 甲1−18に記載された又は公然知られた発明
甲1−18には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−18発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分(100mL中)」の項)
「湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、かゆみ、虫さされ、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分(100mL中)】からなる、ムルコス(R)EX液アルファ。
【図】

【成分(100mL中)】

」(以下「甲1−18発明」という。)

テ 甲1−19に記載された又は公然知られた発明
甲1−19には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−19発明」。)。(商品名、「効能・効果」の項、「保管及び取扱い上の注意」の項、「成分・分量(100mL中)」の項)
「虫さされ、かゆみ、湿疹、かぶれ、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、薬液を十分に浸透させて塗布される、以下の【図】のように容器に収容されている、以下の【成分・分量(100mL中)】からなる、ラクピオンEXローションα。
【図】

【成分・分量(100mL中)】

」(以下「甲1−19発明」という。)

ト 甲1−20に記載された又は公然知られた発明
甲1−20には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−20発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、湿疹、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、キャップをとりはずし、スポンジ部分を肌に数回軽く押し当てて、スポンジに薬液をしみ込ませて塗布される、以下の【成分・分量】からなる、ラホヤPVA9液。
【成分・分量】

」(以下「甲1−20発明」という。)

ナ 甲1−21に記載された又は公然知られた発明
甲1−21には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−21発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、湿疹、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、キャップをとりはずし、スポンジ部分を肌に1〜2回軽く押し当てて、スポンジに薬液をしみ込ませて塗布される、以下の【成分・分量】からなる、リドベードQ液。
【成分・分量】

」(以下「甲1−21発明」という。)

ニ 甲1−22に記載された又は公然知られた発明
甲1−22には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−22発明」。)。(タイトル、1頁「効能・効果」の項、2頁「用法・用量」の項の(4)、「成分・分量」の項)
「虫さされ、かゆみ、皮膚炎、かぶれ、湿疹、あせも、じんましんの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のように容器のスポンジ面をゆっくり患部に数回押し当て、スポンジに薬液を十分にしみ込ませてから塗布される、以下の【成分・分量】からなる、リファットPCローション。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−22発明」という。)

ヌ 甲1−23に記載された又は公然知られた発明
甲1−23には以下の発明が記載されているといえるし、以下の発明が公然に知られていたといえる(いずれも、以下の「甲1−23発明」。)。(タイトル、2頁「効能・効果」の項、「用法・用量」の項、「成分(100mL中)」の項)
「虫さされ、かゆみ、しっしん、皮膚炎、かぶれ、じんましん、あせもの治療に用いられ、使用する際は、以下の【図】のようにあらかじめ容器を上に向けて、スポンジ中央部を手の指等で押すなどして中の空気を抜いた後に、容器を下向き又は斜めにして患部に軽く押しあてて塗布される、以下の【成分・分量(100mL中)】からなる、ルメジEX液。
【図】

【成分・分量】

」(以下「甲1−23発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 甲1−1発明に基づく申立理由1及び2
(ア)対比
甲1−1発明の、「プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル」、「ジフェンヒドラミン塩酸塩」及び「エタノール」は、それぞれ本件発明1の「ステロイド」、「抗ヒスタミン成分」及び「低級アルコール」に相当し、甲1−1発明の「dl−カンフル」及び「l−メントール」は、本件発明1の「テルペン」に相当する。
次に、甲1−1発明の「スポンジ面」は、この部分が患部に押し当てられて塗布が行われることから塗布部であり、薬液の塗布に用いられる「スポンジ」が柔らかい多孔性の材料であることも自明であるので、本件発明1の「軟質多孔性材料で形成された塗布部」に相当する。そして、甲1−1発明の「容器」は「スポンジ」を備えるものであるので、本件発明1の「軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器」に相当する。
さらに、甲1−1発明の「ウインブルダンPCローション」は、「ローション」が外用液剤であるので(要すれば、甲2のA−129頁の「11.2.外用液剤」の項)、本件発明1の「外用組成物」に相当する。

そうすると、本願発明1と甲1−1発明との一致点及び相違点は下記のとおりである。
<一致点>
「低級アルコールと、
ステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有し、
軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器に収容されてなる外用組成物。」

<相違点1>
本件発明1は、「低級アルコール」の「含有量が、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」であることが特定されているのに対し、甲1−1発明は、エタノールの含有量についての特定がない点。

<相違点2>
本件発明1は、「薬液を毛髪や頭皮に塗布する塗布部と、前記塗布部に供給する薬液を貯留する薬液貯蔵部を有する薬液塗布用具であり、前記塗布部は、前記薬液貯蔵部に連通し薬液を吐出させる吐出通路と、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させる導き機能を有する中棒部材と、前記中棒部材を前記吐出通路を閉じ方向に付勢し、押し上げ力に対して負荷を与える付勢手段と、を有し、前記中棒部材は、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させ、押し上げによる前記中棒部材の移動に応じて薬液の吐出量を変化させることを特徴とする薬液塗布用具を除く」ことが特定されているのに対し、甲1−1発明には、そのような特定がない点。

<相違点3>
本件発明1は、「外用組成物」について「頭皮用」であることが特定されているのに対し、甲1−1発明は、そのような特定がない点。

<相違点4>
本件発明1は、「ジフェンヒドラミン塩酸塩及びデキサメタゾン酢酸エステルを含有する外用組成物を除く」ことが特定されているのに対し、甲1−1発明には、そのような特定がない点。

(イ)判断
a 上記相違点1について、実質的な相違点であるかについて検討する。
甲3には、ステロイドを含有する外用製剤の低級アルコールの配合量について、通常0.1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%であることや、0.1質量%以下では皮膚に充分な冷却感を与えることができず、70質量%より多いと皮膚への刺激性が強くなることが記載され、具体的にエタノールを30w/v%含む酢酸プレドニゾロンを含む液剤が記載されている(段落【0001】、【0021】、【0022】及び【0038】参照)。
さらに、皮膚外用かゆみ止め剤について記載された甲4には、エタノールには、抗ヒスタミン剤等の成分を溶解する作用や、薬剤及び水分を皮膚から吸収し易くする作用を有することが記載され、皮膚外用かゆみ止め剤の代表例として、低級アルコールを30〜50w/v%含有する抗ヒスタミン剤を含む液剤が記載されている(段落【0001】、【0017】及び【0026】参照)。
甲5には、ステロイドである酪酸クロベタゾンや抗ヒスタミン成分であるジフェンヒドラミンを含む液剤について、エタノールが35%となる量で配合されることが(段落【0001】及び【0067】参照)、甲6には、ステロイドである酢酸プレドニゾロンやテルペンであるL−メントールを含む液剤において、エタノールが40重量%となる量で配合されることが(段落【0001】、【0027】及び【0049】の実施例3参照)、それぞれ記載されている。
甲7には、一般外用剤のエタノールの最大使用量が0.83mL/mLであることが記載されている(55頁)。そして、エタノールの比重は0.809〜0.816であることも記載されるので(55頁)、ここから算出される外用液剤に使用できるエタノールの最大濃度は約67.1〜約67.7w/w程度であるといえる。
そうすると、甲3〜7の記載等に照らせば、本件発明1の「外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」という低級アルコールの含有量は、外用液剤における低級アルコールの一般的な配合量であることが周知であったといえる。
しかし、甲3には、「低級アルコールの配合量として、通常0.1〜70質量%・・・であること」との記載があるように、外用液剤において、低級アルコールの配合量の下限は必ずしも5w/w%ではないので、「ウインブルダンPCローション」という特定の商品に関するエタノール含有量の記載が無くても必ず「外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」の範囲内の含有量であるということはできない。さらに、「ウインブルダンPCローション」という特定の商品のエタノール含有量が「外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」の範囲内であることを示す証拠も提出されていない。
また、エタノールを外用液に添加する場合に、特定の目的のための好適な含有量が本件の範囲内である場合であっても、甲1には、甲1−1発明のエタノールが添加剤として記載されるのみで、添加目的についての記載は無いから、その点でも、甲1−1発明のエタノールの含有量が本件の程度であると認めることはできない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点である。

b 上記相違点2について、甲1−1発明の「容器」は「薬液を毛髪や頭皮に塗布する塗布部と、前記塗布部に供給する薬液を貯留する薬液貯蔵部を有する薬液塗布用具であり、前記塗布部は、前記薬液貯蔵部に連通し薬液を吐出させる吐出通路と、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させる導き機能を有する中棒部材と、前記中棒部材を前記吐出通路を閉じ方向に付勢し、押し上げ力に対して負荷を与える付勢手段と、を有し、前記中棒部材は、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させ、押し上げによる前記中棒部材の移動に応じて薬液の吐出量を変化させることを特徴とする薬液塗布用具」ではないので、相違点2は実質的には相違点ではない。

c 上記相違点3について、ローションのような外用液の投与部位に頭皮が含まれ得ることは技術常識(甲2)であり、甲1−1発明のローションも頭皮に使用することは可能であると認められるが、甲1には、甲1−1発明のローションの適用患部として「頭皮」は記載されておらず、甲1−1発明のローションを、単なる外用用途ではなく、頭皮用に特化したものとした発明が記載されているとはいえないし、甲1−1発明のローションが、頭皮に特化して使用されるものであることが技術常識から自明であるともいえないから、相違点3は実質的な相違点である。

d 上記相違点4について、甲1−1発明の「ウインブルダンPCローション」は「ジフェンヒドラミン塩酸塩及びデキサメタゾン酢酸エステルを含有する外用組成物」ではないので、相違点4は実質的には相違点ではない。

e そうすると、上記相違点1及び3は実質的な相違点であるので、本件発明1は甲1−1に記載された発明ではないし、甲1−1より公然に知られた発明でもない。

f 次に、本件発明1が相違点1及び3について、甲1−1発明及び甲2〜9に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
(a)上記相違点1について、検討する。
上述のとおり、本件発明1の「外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」という低級アルコールの含有量は、外用液剤における低級アルコールの一般的な配合量であることは周知であり、製剤化に際して添加剤の配合量を調節することは当業者が適宜行うことである点に鑑みれば、甲1−1発明のウインブルダンPCローションについて、エタノールの配合量を甲3〜7に記載される程度の量に調節することは当業者が容易になし得たことである。

(b)次に、上記相違点3について検討する。
ローションを含む外用液剤は、「皮膚(頭皮を含む)又は爪に塗布する液状の製剤」であり(甲2のA−129頁の「11.2.外用液剤」の項)、ステロイド、モノテルペン、及び/又は抗ヒスタミン成分を含む外用液剤は、スポンジ状の容器に充填されていても(甲8−1、甲9−1)、頭皮に使用できると当業者に理解され(甲8)、実際に頭皮に使用されていた例がある(甲9)としても、甲1−1発明について、頭皮への適用を検討することが示唆されているにとどまる。そして、本件発明1は、「外用組成物」を「軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器」を用いて「頭皮」に適用することによって、頭皮の毛包への浸透量が顕著に増加するという効果を奏する、頭皮への適用に特化された外用組成物であり、このような効果は当業者といえども、甲1−1発明及び甲2〜9からは予想不可能な顕著な効果である。
すなわち、本件明細書の段落【0003】及び【0004】によれば、頭皮はそれ以外の腹部等の皮膚とは異なり毛包の密度が高く、毛包も深くて皮膚表面から下に向かって比較的まっすぐ長い構造であることが知られているところ、本件は段落【0009】のとおり、軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器に収容されている外用組成物とすることで、頭皮の毛包深部への送達効率が向上するとの知見を見出してなされた発明である。
そして、実施例には、毛包付き頭皮モデルを使用した試験系において、本件発明1の特定の組成からなり、軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器に収容されている、相違点1及び3に係る構成を備えた本件発明1の外用組成物が、毛髪がある場合もない場合も、ヒト頭皮毛包における毛の深さに相当する5mmの貫通孔を通過することができ、その通過量は液体用細口容器に収容されている場合に比べて顕著に高いことが示されている。
よって、実施例の記載及び従来技術の記載から、本件発明1の特定の組成からなる軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器に収容された外用組成物は、腹部等の皮膚に比べて格段に多くの毛包が存在する頭皮に適用するものとすることで、頭皮以外の他の皮膚に適用した場合に比べて皮膚への浸透効果が顕著に優れることが理解でできる。そして、この効果は甲1−1発明及び甲2〜9−1からは予測できない顕著な効果である。

(c)そうすると、甲1−1発明において、相違点3の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものではない。

g したがって、本件発明1は、甲1−1発明及び甲2〜9−1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)異議申立書における申立人の主張の検討
a 申立人の主張
異議申立書において、申立人は、甲1には、「エタノールと、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルと、l−メントールと、ジフェンヒドラミン塩酸塩と、を含有する、スポンジで形成された塗布部を備える容器に収容されてなる外用液剤(頭皮を含む皮膚に塗布する液状の製剤)(但し、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びデキサメタゾン酢酸エステルを含有する外用液剤を除く。)」(以下「甲1発明」という。)
の発明が記載されているとした上で、概略下記(a)〜(c)のとおり主張する。
(a)主張1
エタノールは、5〜70w/w%程度の量で、ステロイド等を含む外用液剤に広く使用されており(甲3〜6)、医薬品添加物事典(甲7)の開示(一般外用剤のエタノールの最大使用量が0.83mL/mLであって、エタノールの比重は0.809〜0.816)から算出される外用液剤に使用できるエタノールの最大濃度が約67.1〜約67.7w/w%であることを勘案すれば、エタノールを5〜70w/w%程度の量で用いることは本件特許出願時の技術常識である。そして、本件発明1で規定する低級アルコールの含有量の範囲は5〜70w/w%と非常に広く、甲1−1発明についてもエタノールがこの範囲に含まれていると考えるのが自然であり、上記相違点1は実質的な相違点ではない。(42頁下から12行〜下から6行、46頁4行〜49頁9行)

(b)主張2
外用液剤は、日本薬局方解説書に照らせば「頭皮」を含む皮膚に塗布する薬剤であること(甲2)、ステロイド、モノテルペン、及び/又は抗ヒスタミン成分を含む外用液剤は、スポンジ状の容器に充填されていても(甲8−1号証、甲9−1号証)頭皮に使用できると当業者に理解されており(甲8号証)、実際に頭皮に使用されていた(甲9号証)こと、甲1発明の外用液剤の添付文書(甲1−1〜1−23)には、外用液剤を適用できない皮膚の部位として頭皮が挙げられていないこと、外用液剤であるローション剤は毛髪のある部位に適用するのに便利であると認識されていたこと(甲2)、特許権者も、ステロイド、モノテルペン、抗ヒスタミン成分を含み、スポンジ状の容器に充填された外用液剤の1種である液体ムヒ2aが頭皮に使用できるとことを認めていること(甲10)、などの理由により、甲1発明の外用液剤は、頭皮にも使用されるものであり、本件発明1の「頭皮用」との構成は相違点とならない。(49頁下から5行〜53頁下から11行)

(c)主張3
甲2の「外用液剤は、皮膚(頭皮を含む)又は爪に塗布する液状の製剤である」なる記載や、甲8号証の「液体ムヒS2aは頭の毛髪部のかゆみに使ってよいですか?」という質問に対して「お使いいただけます。」という回答が記載されていることを基に、スポンジ状の容器内に充填させた甲1−1発明の外用液剤を頭皮に適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。(53頁下から10行〜最終行)

b 申立人の主張の検討
請求人は、甲1に記載された発明を、「エタノールと、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルと、l−メントールと、ジフェンヒドラミン塩酸塩と、を含有する、スポンジで形成された塗布部を備える容器に収容されてなる外用液剤(頭皮を含む皮膚に塗布する液状の製剤)(但し、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びデキサメタゾン酢酸エステルを含有する外用液剤を除く。)」と、認定している。
しかし、甲1には、甲1−1〜1−23の添付文書で示される薬剤の名称や、剤型・有効成分、効能・効果等の情報についての記載があるにとどまり、「スポンジで形成された塗布部を備える容器」に収容されていることについては記載がない。
そうすると、甲1には申立人の主張する「甲1発明」が記載されていたということはできない。
よって、上記申立人の主張1〜3の検討においては、「甲1発明」に関する主張を、当審で認定した甲1−1〜1−23に対する主張と読み替えて検討を行う。

(a)主張1について
上記イで述べたとおり、「ウインブルダンPCローション」という特定の商品のエタノール含有量が「外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」の範囲内であることを示す証拠も提出されていないし、甲3には、「低級アルコールの配合量として、通常0.1〜70質量%・・・であること」との記載があるように、外用液剤において、低級アルコールの配合量の下限は必ずしも5w/w%ではないので、「ウインブルダンPCローション」という特定の商品に関するエタノール含有量の記載が無くても必ず「外用組成物全量を基準として5〜70w/w%」の範囲内の含有量であるということはできない。
そうすると、甲3〜7の記載から、甲1発明の外用液剤が、外用液剤全量を基準として5〜70w/w%のエタノールを含有するものであると認めることができない。

(b)上記主張2について
上記(イ)で述べたとおり、甲1には、甲1−1発明のローションの適用患部として「頭皮」は記載されておらず、甲1−1発明のローションを、単なる外用用途ではなく、頭皮用に特化したものとした発明が記載されているとはいえないし、頭皮に特化して使用されるものであることが技術常識から自明であるともいえない。
そうすると、甲2及び8〜9−1の記載のみから、甲1−1発明の外用液剤が頭皮用として用いられていたと認めることができない。

(c)上記主張3について
上記(イ)で述べたとおり、甲1−1発明について、頭皮への適用を検討することが示唆されているにとどまる。そして、本件発明は、「外用組成物」を「軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器」を用いて「頭皮」に適用することによって、頭皮の毛包への浸透量が顕著に増加するという効果を奏するものであり、このような効果は当業者といえども、甲1−1発明及び甲2〜10からは予想不可能な顕著な効果であるから、スポンジ状の容器内に充填させた甲1−1発明の外用液剤を頭皮に適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことではない。

よって、上記請求人の主張1〜3はいずれも採用することができない。

(エ)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1−1に記載された発明、又は、甲1−1より公然知られた発明ではなく、また、甲1−1に記載された発明及び甲2〜9−1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明でもない。

イ 甲1−2〜1−23発明に基づく申立理由1及び2
本件発明1と甲1−2〜1−23発明との一致点及び相違点は、本件発明1と甲1−1発明との一致点及び相違点と同様である。そして、本件発明1は、上記ア(イ)及び(ウ)で述べたのと同様の判断により、甲1−2〜1−23に記載された発明、又は、甲1−2〜1−23より公然知られた発明ではなく、また、甲1−2〜1−23発明及び甲2〜9−1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明でもない。

(3)本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を引用するものであり、それぞれ本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、甲1−1〜1−23に記載された発明、又は、甲1−1〜1−23より公然知られた発明ではなく、また、甲1−1〜1−23に記載された発明及び甲2〜9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明でもない。

(4)小括
以上のとおり、申立理由1及び2は理由がない。

2 申立理由3〜5(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
(1)申立理由3〜5の概要
申立理由3〜5の概要は、上記第3の1(2)〜(4)に示したとおりである。

(2)判断
ア 特許法第36条第4項第1号について
(ア)特許法第36条第4項第1号の判断手法
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)特許法第36条第4項第1号の判断
a 本件発明1は、
「低級アルコールと、
ステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有し、
前記低級アルコールの含有量が、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%であり、
軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器(但し、薬液を毛髪や頭皮に塗布する塗布部と、前記塗布部に供給する薬液を貯留する薬液貯蔵部を有する薬液塗布用具であり、前記塗布部は、前記薬液貯蔵部に連通し薬液を吐出させる吐出通路と、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させる導き機能を有する中棒部材と、前記中棒部材を前記吐出通路を閉じ方向に付勢し、押し上げ力に対して負荷を与える付勢手段と、を有し、前記中棒部材は、押し上げにより移動して前記吐出通路を開き薬液を吐出させ、押し上げによる前記中棒部材の移動に応じて薬液の吐出量を変化させることを特徴とする薬液塗布用具を除く。)に収容されてなる頭皮用外用組成物(但し、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びデキサメタゾン酢酸エステルを含有する外用組成物を除く。)。」
に係る発明である。
本件明細書の段落【0015】、【0016】、【0018】及び【0019】並びに図1には「塗布部を備える容器」の具体的な態様が、段落【0016】及び【0017】には「軟質多孔質材料」の具体的な態様が、段落【0020】及び【0021】には「低級アルコール」の具体的な態様が、段落【0022】には「低級アルコール」の好ましい配合量が、段落【0023】及び【0050】〜【0069】には「頭皮用外用組成物」に配合しうる成分が、段落【0024】、【0034】、【0042】及び【0049】には「頭皮用外用組成物」が適用される症状が、段落【0025】〜【0033】、【0035】〜【0033】及び【0041】〜【0048】には「ステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分」の具体例や好ましい配合量が、段落【0070】〜【0072】には「頭皮外用組成物」のpHや剤型について、段落【0073】及び【0074】には「頭皮用外用組成物」の適用方法について、それぞれ記載されている。
さらに本件実施例においては、本件発明1の発明特定事項を満たす具体的な「頭皮用外用組成物」が記載され、毛包付き頭皮モデルを用いた実験において頭皮の毛包への浸透量が増加することが確認されている。
そうすると、本件発明1の「頭皮用外用組成物」については、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができ、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

b 本件発明2は、本件発明1の「頭皮用外用組成物」が「発毛部位に対して用いられる」ことを特定するものであるが、「発毛部位」が頭皮の毛がある部分を意味することは自明であるので、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができ、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

c 本件発明3は、本件発明1又は2の「頭皮用外用組成物」が「頭皮における湿疹、皮膚炎、抜け毛、薄毛、フケ、痒み、乾燥及びバリア機能低下からなる群より選択される少なくとも1つの症状の予防、治療、及び/又は改善用である」ことを特定するものであるが、段落【0024】、【0034】、【0042】及び【0049】には、段落【0023】に記載される有効成分又は機能性成分により、頭皮における湿疹、皮膚炎、抜け毛、薄毛、フケ、痒み、乾燥及びバリア機能低下からなる群より選択される少なくとも1つの症状の予防、治療、及び/又は改善用として用いられることが記載されているし、これらの症状に対する有効成分又は機能性成分は周知であることから、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができ、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

d 本件発明4は、本件発明1〜3の「頭皮用外用組成物」に含まれる「低級アルコール」が「エタノール」であることを特定するものであるが、頭皮用外用組成物に含まれる低級アルコールとして、「エタノール」は周知の化合物であるので、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができる程度に明確十分に記載されているといえる。

e 本件発明5は、本件発明1〜4の「頭皮用外用組成物」が「可溶化系の組成物」であることを特定するものであるが、段落【0072】には「可溶化系」について「本明細書において可溶化系とは、水と油とが相分離せずに均一で透明の外観を呈し、熱力学的にも安定な一相系の状態を指す。すなわち、可溶化系とは、乳化系又は粉末分散系を除く状態である。」と記載があり、この記載によれば、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができ、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

f 本件発明6は、本件発明1〜5の「頭皮用外用組成物」が「増粘剤を更に含有する」ことを特定するものであるが、段落【0052】〜【0057】には「増粘剤」の具体例や配合量について説明があり、製剤化に際して増粘剤の種類や配合量を調節することは一般的に行われることであるので、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができ、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

イ 特許法第36条第6項第1号について
(ア)特許法第36条第6項第1号の判断手法
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」 と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)特許法第36条第6項第1号の判断
a 本件発明の課題について 本件発明の課題は、本件明細書の段落【0008】の記載からみて「頭皮そしてその毛包深部への送達効率が向上した頭皮用外用組成物を提供すること」であるといえる。

b 本件明細書の発明の詳細な説明の記載について
本件明細書の段落【0004】には、経皮的に薬物等の有効成分を投与・適用する場合、皮膚を介した有効成分の透過経路としては、表皮の角層を透過するルートと、毛包等の皮膚付属器官を介したルートが知られており、毛包等の皮膚付属器官は皮膚表面積に占める割合自体は低いものの、角層ルートよりも透過抵抗が低い場合が多いというメリットがあることが記載されている。
さらに、段落【0009】には、「低級アルコールを含有する外用組成物を収容する容器として、軟質多孔性材料で形成された塗布部を押し当てて、又は押し当てながら塗り広げて外用組成物を面状に吐出するタイプの容器を採用することで、意外にも頭皮の毛包深部への当該外用組成物の送達効率が向上する」ことが記載され、実施例では、低級アルコール(エタノール)を外用組成物全量を基準として5〜70w/w%含有する頭皮用外用組成物を用いた試験によって頭皮の毛包深部への送達効率の向上を確認している。

c これらの記載に照らせば、当業者は、本件発明は低級アルコールを、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%含有する外用組成物を収容する容器として、軟質多孔性材料で形成された塗布部を押し当てて、又は押し当てながら塗り広げて外用組成物を面状に吐出するタイプの容器を採用することによって、上記aの課題を解決できることを理解できる。
そして、本件発明1〜6の「頭皮用外用組成物」は、「低級アルコール」を含有し、「低級アルコールの含有量が、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%であり」、「軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器に収容されている」との特定を含むことから、本件発明は、いずれも上記aの課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。

ウ 申立理由3〜5の検討
上記ア及びイで述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件及びサポート要件を満たすと判断できるが、さらに、申立理由3〜5についても検討する。

(ア)申立理由3について
本件明細書の段落【0073】には、頭皮用外用組成物の適用方法について、「軟質多孔性材料で形成された塗布部を毛髪の上から、又は直接頭皮に押し当てる、又は押し当てながら塗り広げることにより、頭皮に適用することができる」ことが説明されているし、甲1−1〜1−23等にも示されるように、軟質多孔質材料で形成された塗布部を備える容器による塗布方法は周知である。
また、外用液剤、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤及びゲル剤は、容器からの排出されやすさが剤型によって相違するものと解されるが、段落【0016】には、軟質多孔性材料について、「皮膚に適用するのに適した軟らかさを有し、多数の細孔を有する多孔質の材料であって、容器内部の外用組成物が容器外部に排出されるもの」であることや、その構造は、「スポンジ構造、バルーン構造、ハニカム構造等のいずれであってもよい」こと、細孔の孔径は、「外用組成物をより効率よく塗布することができるという観点から、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることが更に好ましく、0.3mm以下であることが更により好ましい。また、細孔の孔径は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。」と記載されている。そして、外用組成物の剤形に応じて、容器内部の外用組成物が容器外部に排出されるように、軟質多孔質材料の材料や形状、孔径を変更すればよいことを、当業者は理解できる。さらに、外用組成物の流動性を調節するためにその組成を調節することや、薬剤を排出するために押し出して使う周知の容器を選択することも、製剤分野において通常行うことである。
そうすると、当業者は、本件発明1の「頭皮用外用組成物」がリニメント剤や軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤のような剤型であったとしても、軟質多孔質材料の材料、形状及び孔径変更、並びに、外用組成物の組成の調節及び容器の選択等によって、本件発明1の頭皮用外用組成物を製造し、使用することができる。

さらに、頭皮用外用組成物がリニメント剤や軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤のような剤型であったとしても、軟質多孔性材料で形成された塗布部を毛髪の上から、又は直接頭皮に押し当てる、又は押し当てながら塗り広げることにより、頭皮用外用組成物を面状に吐出すことができるので、当業者は上記イ(イ)aの課題を解決できることを認識できる。

よって、申立理由3は理由がない。

(イ)申立理由4について
本件明細書の段落【0026】〜【0030】、【0035】〜【0039】及び【0043】〜【0045】にはステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分の具体例が記載されているし、製剤化に際して、添加剤の種類や配合量を調節して製剤化することは通常行うことである。
そうすると、当業者は本件発明1の「頭皮用外用組成物」に配合される「ステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分」が、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、メントール、塩酸ジフェンヒドラミン以外であったとしても、頭皮用外用組成物の添加剤の種類や配合量を調節することによって、本件発明1の頭皮用外用組成物を製造し、使用することができる。

さらに、本件発明は、低級アルコールを、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%含有する外用組成物を収容する容器として、軟質多孔性材料で形成された塗布部を頭皮に押し当てて、又は押し当てながら塗り広げて外用組成物を面状に吐出するタイプの容器を用いることによって、上記aの課題を解決するものであり、本件明細書の実施例では、少なくとも構造が大きく異なるプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、メントール及び塩酸ジフェンヒドラミンという3種類の化合物において、同様に頭皮の毛包への浸透量を増加させたことが確認されているので、「頭皮用外用組成物」に配合される「ステロイド、モノテルペン、及び抗ヒスタミン成分」が、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、メントール、塩酸ジフェンヒドラミン以外であったとしても、同様に頭皮の毛包への浸透量を増加できると解される。
そうすると当業者は上記イ(イ)aの課題を解決できることを認識できる。

よって、申立理由4は理由がない。

(ウ)申立理由5について
本件明細書の段落【0053】〜【0057】には、頭皮用外用組成物に配合される増粘剤の具体例や配合量などが説明されており、増粘剤の種類によって配合量を調節することは当業者が通常行うことであるので、当業者は本件発明6の「頭皮用外用組成物」に配合される「増粘剤」が、疎水化ヒドロキシプロビルメチルセルロース以外であったとしても、増粘剤の配合量を調節することによって、本件発明1の頭皮用外用組成物を製造し、使用することができる。
また、上記イ(2)bで述べたとおり、本件発明1は、低級アルコールを、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%含有する外用組成物を収容する容器として、軟質多孔性材料で形成された塗布部を頭皮に押し当てて、又は押し当てながら塗り広げて外用組成物を面状に吐出するタイプの容器を用いることによって、上記aの課題を解決するものであるところ、本件発明6の「頭皮用外用組成物」は、「低級アルコール」を含有し、「低級アルコールの含有量が、外用組成物全量を基準として5〜70w/w%であり」、「軟質多孔性材料で形成された塗布部を備える容器に収容されている」との特定を含むものであるから、本件発明6の組成物の粘度が高い場合であっても、軟質多孔性材料で形成された塗布部を頭皮に押し当てて、又は押し当てながら塗り広げて外用組成物を面状に吐出するタイプの容器を用いることによって、(細口容器での塗布に比べて)頭皮及び毛包深部への送達効率は向上し、本件発明の課題は解決できると解される。
さらに、増粘剤によって溶液の粘性が高まって毛包への浸透性が低下する可能性があるとしても、増粘剤による粘性の増加はその配合量に比例するので、粘性が高ければその配合量を減らすことは当然のことであるので、それが上記aの課題解決を妨げるものと認めることはできない。
そうすると当業者は上記イ(イ)aの課題を解決できることを認識できる。

よって、申立理由5は理由がない。

(3)小括
以上のとおり、申立理由3〜5は理由がない。

第5 むすび
以上のとおり、申立人が主張する異議申立ての理由1〜5及び証拠によっては、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-03-08 
出願番号 P2021-210974
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 111- Y (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 磯部 洋一郎
渕野 留香
登録日 2023-05-18 
登録番号 7282155
権利者 ロート製薬株式会社
発明の名称 頭皮用外用組成物  
代理人 坂西 俊明  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  

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