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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1409200
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-01-19 
確定日 2024-04-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第7316061号発明「発泡シート及び粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7316061号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7316061号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成31年2月28日に出願されたものであって、令和5年7月19日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年1月19日に特許異議申立人 石井 豪(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
MD方向の平均気泡径とTD方向の平均気泡径の平均値である平均気泡径が40〜200μmであり、圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPaであり、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン樹脂を含有する発泡シート。
【請求項2】
下記式(1)で表される気泡扁平率が50〜1000%である、請求項1に記載の発泡シート。
100×MD方向の平均気泡径×TD方向の平均気泡径/(ZD方向の平均気泡径)2・・・(1)
【請求項3】
50%圧縮強度Aが50〜800kPaである、請求項1又は2に記載の発泡シート。
【請求項4】
光沢度が20〜80%である、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項5】
接触角が80〜120°である、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項6】
ゲル分率が30〜70質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項7】
独立気泡率が70%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項8】
発泡倍率が2〜20cc/gである、請求項1〜7のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項9】
発泡シートに含有される樹脂100質量部に対して、0.7〜3質量部の滑剤を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項10】
厚みが0.03〜1.5mmである、請求項1〜9のいずれかに記載の発泡シート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の発泡シートと、該発泡シートの少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層とを備える粘着テープ。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和6年1月19日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性
本件特許発明1ないし3、7、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、7、8、10及び11に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性
本件特許発明1ないし3、6及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、6及び8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性進歩性
本件特許発明1、3、5及び8ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1、3、5及び7ないし11は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5及び7ないし11に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 申立理由4(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)圧縮強度B
本件特許発明1〜11は、圧縮強度Bに関して、25〜800kPaのものに対して権利主張するものである。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に開示されているのは、圧縮強度Bが30〜130kPaのもののみである。
また、発明の詳細な説明の【0009】には、「50%圧縮強度Bは、後述する発泡シートの平均気泡径、気泡扁平率、発泡倍率などを調整することにより、所望の範囲に調節することができる。」と形式的には記載されている。しかしながら、発泡シートの平均気泡径、気泡扁平率、発泡倍率などを具体的にどのように調整すれば、例えば、圧縮強度Bが800kPaのものを製造できるかについて何ら記載も示唆もないし、そのような本件特許出願当時の技術常識があったとも到底認められない。
そうすると、本件明細書は、例えば、圧縮強度Bが800kPaのものを製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、圧縮強度Bに関して25〜800kPaなる広範な範囲を規定している点で、実施可能要件を満足しない。

(2)ポリオレフィン樹脂
本件特許発明1〜11は、「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン樹脂を含有する」と規定されるものである。
かかる規定は、発泡シートに対する配合量を問わず、ポリオレフィン樹脂を含有するもの全てに対して権利主張するものである。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に開示されているのは、発泡シートのほぼ全て(98%程度)が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂のもののみである。
そして、樹脂の種類や配合割合が異なれば、奏する物性も異なるのが当分野の技術常識であることからすれば(この点は、出願人も、令和5年3月17日付け意見書にて認めている。)、例えば、“高密度”ボリエチレン樹脂を98%程度用いた場合、ポリプロピレン樹脂を98%程度用いた場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体を98%程度用いた場合のそれぞれについて何らの情報も開示されていない本件明細書の記載に基づき、圧縮強度Bの規定を満足するためには、一体どのような配合(発泡剤の量、滑剤の量)を用いて、どのような製造条件(電子線照射条件、MD方向の延伸倍率、TD方向の延伸倍率など)を採用すれば良いのかについて、当業者といえども皆目見当もつかず、相当の試行錯誤を要する。
さらに、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を用いた場合であっても、例えば、これを50%程度用い、他の樹脂を50%程度用いた場合に、一体どのような製造条件を採用すれば、本件特許発明が規定する発泡シートを製造できるのかについて、当業者といえども見当がつかない。まして、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体を50%程度用いる場合ではなおさらである。
よって、ポリオレフィン樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に限定していない点及びその配合量を98%程度に限定していない点の2点において、実施可能要件を満足しない。

(3)気泡扁平率
本件特許発明1に従属する本件特許発明2は、「気泡扁平率が50〜1000%である」と規定する。
発明の詳細な説明には、気泡扁平率が216〜711%のものについては、本件特許発明1の規定を満足するものが具体的に記載されている。
しかしながら、気泡扁平率が216%未満であって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものについては具体的に記載されていない。例えば、(50%圧縮強度に大きな影響を与えると推認される)気泡扁平率が50%であって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものを如何なる方法で製造するのかについて、何ら具体的に記載されていない。
そうすると、本件明細書は、例えば、気泡扁平率が50%の本件特許発明を製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、気泡扁平率に関して50〜1000%なる広範な範囲を規定している点で、実施可能要件を満足しない。

(4)光沢度
本件特許発明1に従属する本件特許発明4は、「光沢度が20〜80%である」と規定する。
発明の詳細な説明には、光沢度が23.0〜49.0%のものについては、本件特許発明1の規定を満足するものが具体的に記載されている。
しかしながら、光沢度が49.0%を超え、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものについては具体的に記載されていない。例えば、光沢度が80%であって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものを如何なる方法で製造するのかについて、何ら具体的に記載されていない。さらにいうと、光沢度が63.4%の比較例4は本件特許発明1の規定を満足しない。
そうすると、本件明細書は、例えば、光沢度が80%の本件特許発明を製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、光沢度に関して20〜80%なる広範な範囲を規定している点で、実施可能要件を満足しない。

(5)接触角
本件特許発明1に従属する本件特許発明5は、「接触角が80〜120゜である」と規定する。
発明の詳細な説明には、接触角が92.2〜97゜のものについては、本件特許発明1の規定を満足するものが具体的に記載されている。
しかしながら、接触角が92.2°未満又は97゜を超え、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものについては具体的に記載されていない。例えば、接触角が80°又は120°であって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものを如何なる方法で製造するのかについて、何ら具体的に記載されていない。さらにいうと、接触角が80°付近の比較例1及び2は本件特許発明1の規定を満足しない。
そうすると、本件明細書は、例えば、接触角が80°又は120°の本件特許発明を製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、接触角に関して80〜120°なる広範な範囲を規定している点で、実施可能要件を満足しない。

(6)ゲル分率
本件特許発明1に従属する本件特許発明6は、「ゲル分率が30〜70質量%である」と規定する。
発明の詳細な説明には、ゲル分率が30〜40質量%のものについては、本件特許発明1の規定を満足するものが具体的に記載されている。
しかしながら、ゲル分率が40質量%を超え、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものについては具体的に記載されていない。例えば、(50%圧縮強度に大きな影響を与えると推認される)ゲル分率が70質量%であって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものを如何なる方法で製造するのかについて、何ら具体的に記載されていない。
そうすると、本件明細書は、例えば、ゲル分率が70質量%の本件特許発明を製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、ゲル分率に関して30〜70質量%なる広範な範囲を規定している点で、実施可能要件を満足しない。

(7)独立気泡率
本件特許発明1に従属する本件特許発明7は、「独立気泡率が70%以上である」と規定する。
しかしながら、発明の詳細な説明には、独立気泡率が70%以上のものについては何ら具体的に記載されていないし(実施例が存在しない)、当然に、独立気泡率が70%以上であって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものも具体的に記載されていない。
そうすると、例えば、独立気泡率が70%のものに対して、本件特許発明1の規定を満足させるためには、どのような条件で製造すればよいのかについて、当業者は何らの手がかりさえないことになる。
そうすると、本件明細書は、例えば、独立気泡率が70%の本件特許発明7で規定するものを製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、独立気泡率に関する規定がある点で、実施可能要件を満足しない。

(8)発泡倍率
本件特許発明1に従属する本件特許発明8は、「発泡倍率が2〜20cc/gである」と規定する。
発明の詳細な説明には、発泡倍率4.0〜10cc/gのものについては、本件特許発明1の規定を満足するものが具体的に記載されている。
しかしながら、発泡倍率が4.0cc/g未満又は10cc/gを超え、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものについては具体的に記載されていない。例えば、発泡倍率2cc/g又は20cc/gであって、かつ、本件特許発明1の規定を満足するものを如何なる方法で製造するのかについて、何ら具体的に記載されていない。
ここで、発泡倍率は密度の逆数であり、密度は50%圧縮強度に著しく大きな影響を与えると推認されるため、当然に、発泡倍率も50%圧縮強度に著しく大きな影響を与えると推認される。
そうすると、本件明細書は、例えば、発泡倍率2cc/g又は20cc/gの本件特許発明を製造しようとする当業者に、相当の試行錯誤を強いるものというほかない。
よって、発泡倍率に関して2〜20cc/gなる広範な範囲を規定している点で、実施可能要件を満足しない。

5 申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

上記4で述べたとおり、本件明細書に、当業者に過度の負担を強いることなく製造可能に開示されているもの(すなわち、複数の最判で説示された発明として開示されているもの)は、以下の条件を全て満足するもののみであって、これらの限定がない又はこれらを拡張乃至一般化した本件特許発明ではない。
「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが30〜130kPa程度」
「直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を98%程度含有する」
「気泡扁平率が216〜711%程度」
「光沢度が23.0〜49.0%程度」
「接触角が92.2〜97°程度」
「ゲル分率が30〜40質量%程度」
「発泡倍率4.0〜l0cc/g程度」
よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

6 証拠方法
甲第1号証:特開2017−66403号公報
甲第2号証:国際公開第99/67323号
甲第3号証:特開2016−88977号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。

・「【0006】
しかし、従来のポリオレフィン系樹脂発泡シートでは、断熱性を高く維持しつつも、柔軟性及び衝撃吸収性を十分に良好にすることが難しい。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、断熱性を高くしつつ、厚さ方向における柔軟性、及び衝撃吸収性を良好にするポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供することである。」

・「【実施例】
【0044】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
[測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
<見掛け倍率>
実施例及び比較例で得られた発泡シートの見掛け密度を、JIS K7222に準拠して測定して、その逆数を見掛け倍率とした。
<架橋度(ゲル分率)>
実施例及び比較例で得られた発泡シートから約50mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を105℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式によりゲル分率(質量%)を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×(B/A)
<独立気泡率>
ASTM D2856(1998)に準拠して測定した。
【0046】
<平均気泡径>
測定用の発泡体サンプルは50mm四方にカットして液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃でMD及びZDに平行な面に沿って切断した。その後、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製、製品名VHX−900)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MDにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD、ZDの気泡径を測定した。その操作を5回繰り返し、全てのMDの気泡径の平均値をMDの平均気泡径とした。
発泡体サンプルをTD及びZDに平行な面に沿って切断したこと以外は上記と同様にして、200倍の拡大写真を撮り、TDにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてTDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。その後、全てのTDの気泡径の平均値をTDの平均気泡径とした。
ZDの平均気泡径は、計10断面分、全てのZDの気泡径の平均値をZDの平均気泡径とした。
<平均気泡間距離>
また、平均気泡径の測定時と同様にして得た、MD及びZDに沿う平面に沿って切断した切断断面の1000倍拡大写真において、MDに沿って隣接する気泡間の最短距離を3点測定する。同じ操作を5回繰り返し、計15点の平均値をMDにおける気泡間距離とする。同様に、TD及びZDに沿う平面に沿って切断した切断面の1000倍拡大写真において、TDに沿って隣接する気泡間の最短距離を3点測定する。同じ操作を5回繰り返し、計15点の平均値をTDにおける気泡間距離とする。そして、MDにおける気泡間距離と、TDにおける気泡間距離の平均値を平均気泡間距離とした。
【0047】
<熱伝導率>
発泡体シートから直径40mmの円柱を切り出し、試験片を作製した。ホットディスク法物性測定装置(京都電子工業株式会社製「TPS」)を使用して、この試験片の熱伝導率を測定した。
<伸び率及び引張強度>
発泡体シートをJIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、測定温度23℃で、JIS K6767に準拠して、MD及びTDの伸び率、及び引張強度を測定した。
<50%圧縮強度>
50%圧縮強度は、発泡シートをJIS K6767に準拠して測定した。」

・「【0048】
[実施例1]
ポリオレフィン系樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製「カーネルKF370」、密度:0.905g/cm3、融点(DSC法)Tm:97℃)100質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド10質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1.0質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を押出した。
次に、上記長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を、その両面に加速電圧500kVの電子線を5.0Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を3.0倍、TDの延伸倍率を2.0倍として延伸させることにより、厚さ0.22mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの評価結果を表1に示す。」

・「【0052】
[比較例1]
熱分解型発泡剤の配合量を4質量部に、電子線の照射量を4.5Mradに、MD,TDの延伸倍率を2.0倍、1.5倍と変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0053】
[比較例2]
熱分解型発泡剤の配合量を4質量部に、電子線の照射量を4.5Mradに、MD,TDの延伸倍率を1.8倍、1.2倍と変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。」

・「【0055】
【表1】



イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に比較例1及び2に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1比較例1発明」及び「甲1比較例2発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1比較例1発明>
「ポリオレフィン系樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製「カーネルKF370」、密度:0.905g/cm3、融点(DSC法)Tm:97℃)100質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド4質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1.0質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を押出し、次に、上記長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を、その両面に加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を2.0倍、TDの延伸倍率を1.5倍として延伸させることにより得た、以下に示す評価結果の発泡シート。
平均気泡径((MD+TD)/2):175μm
50%圧縮強度:206kPa
独立気泡率:95%
見掛け倍率:5.4cm3/g
厚さ:0.21mm」

<甲1比較例2発明>
「ポリオレフィン系樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製「カーネルKF370」、密度:0.905g/cm3、融点(DSC法)Tm:97℃)100質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド4質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1.0質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を押出し、次に、上記長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を、その両面に加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を1.8倍、TDの延伸倍率を1.2倍として延伸させることにより得た、以下に示す評価結果の発泡シート。
平均気泡径((MD+TD)/2):165μm
50%圧縮強度:258kPa
独立気泡率:95%
見掛け倍率:5.2cm3/g
厚さ:0.32mm」

(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「表面加飾したゴム状オレフィン系樹脂架橋発泡状表皮」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決したものであって、新規な発泡体素材自体が加飾されて内装用として適用できる材料を提供することが目的である。この材料は耐熱性を有し、かつ柔軟なソフト感およびゴム弾性を有しながら、発泡体表面の熱処理加工性に優れる表面加飾したゴム状オレフィン系軟質樹脂架橋発泡体状表皮を提供することを目的としている。」(第3ページ第17ないし22行)

・「以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、発泡体の密度〔g/cm3〕、平均気泡径〔mm〕、結晶化度〔%〕はそれぞれ次の測定方法によって求めた。
<測定方法>
(1)密度〔g/cm3〕
厚さt〔cm〕のシート状発泡体から10cm×10cm角の発泡体を切出した後、その重量(W〔g〕)を精秤して、次式で密度〔g/cm3〕を求める。
密度〔g/cm3〕=W/(t×10×10)
(2)平均気泡径
60倍のマイクロスコープにて3.3mm角当りの気泡数(n個)を計測し、次式平均気泡径〔mm〕を求める。
平均気泡径〔mm〕=√(3.3)/π・n
(3)結晶化度
発泡体の結晶化度は、広角X線回折測定(信号強度(CPS)…2θ(3°<2θ<40°))を行い、結晶に帰属する信号面積の総和を、結晶および非結晶に帰属する信号面積の総和で除し、百分率で表した値を結晶化度として求める。
(4)ヒステリシスロス〔%〕
厚さt〔cm〕のシート状発泡体から5cm×5cm角の発泡体を切り出し、切り出した発泡体を重ねて約2.5cmの厚さに調整する。この試料を室温にて圧縮試験機で50mm/分の圧縮速度で室温でのヒステリシスを測定する。圧縮度は試験前の厚さの50%までとした。このような条件で圧縮試験を行った際の記録用紙に記録した図1に示すようなヒステリシスカーブにおいて、次式によりヒステリシスロス〔%〕を求めた。
ヒステリシスロス〔%〕=(S1/S0)×100
S1:曲線Bと曲線Dとで囲まれた面積
S0:曲線Bと曲線AEと直線CEで囲まれた面積
(5)ゲル分率〔%〕
発泡パッド材試料を1mm角に裁断し、ソックスレー抽出機でクロロホルムによる試料中のオイル分の抽出を行う。抽出後の発泡パッド材試料を真空乾燥し、乾燥した試料から約0.2g精秤(W0〔g〕)する。精秤した試料を130℃の500ccの熱キシレン中に6時間浸漬して、試料から熱キシレン溶解分を溶出させた後、不溶分を取り出してアセトンで洗浄する。この不溶分を100℃の真空乾燥器中で1時間乾燥し、その不溶分の重量(W1〔g〕)を精秤して、次式ゲル分率〔%〕を求める。
ゲル分率〔%〕=(W1/W0)×100
(6)50%圧縮硬さ〔kg/cm2〕
JISK−6767の測定方法に準じ、25℃において50%の圧縮硬〔kg/cm2〕を求める。
(7)熱間寸法収縮〔%〕
JISK−6767の測定方法に準じ、90℃においての寸法収縮〔%〕を求める。」(第18ページ第13行ないし第20ページ第8行)

・「実施例1
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム〔EPT;エチレン含量38モル%。ヨウ素価12、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分〕60重量部と、ポリエチレン〔PE;エチレン含有量100モル%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.6g/10分〕20重量部と、ポリプロピレン〔PP;プロピレン含有量100%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0g/10分〕10重量部とから構成される混合物100重量部に対して、アゾジカルボンアミド〔ADCA;発泡剤〕10重量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ジブチルパーオキシ)ヘキシン−3〔過酸化物架橋剤〕1.2重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート〔TMPT;架橋助剤〕0.3重量部でロール混練し、未架橋未発泡の発泡性組成物を得た。
次いで、この樹脂組成物を3mm厚の金型に入れ、210℃、100kg/cm2で加圧架橋発泡させて、密度が0.058g/cm3、厚さが8.7mmである架橋発泡シートを得た。この架橋発泡シートは、平均気泡径が80μmで、結晶化度が8%、ヒステリシスロスが20%、ゲル分率が77.0%、50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮は、それぞれ650g/cm2および3.3%であった。
次いで、この架橋発泡体シートをスライスして3mm厚にし、これに赤外線を照射し、平坦面板とシボ加工を施した面板で冷間プレスを行なったところ、平坦面板でプレスした発泡体表面は、スキン層をもった平滑な表面となり、またシボ付け加工を施した面板で圧縮率50%、90%でプレスした発泡体表面は、シボパターンが明確に転写されたもの(シボ転写率がそれぞれ91%,96%)が得られた。また、これらの表面熱加工を施したところ、平均気泡径結晶化度、ヒステリシスロス及びゲル分率は変わらず、50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮は、それぞれ600g/cm2および1.1%で、耐熱性のある柔軟性も良好な平滑強靱なスキン層およびシボ模様のついたゴム状オレフィン系軟質樹脂架橋発泡状表皮が得られた。」(第20ページ末行ないし第22ページ第8行)

・「比較例2
実施例1のポリエチレン〔PE〕100重量部に対して、アゾジカルボンアミド〔ADCA;発泡剤〕6重量部、1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン〔過酸化物架橋剤〕0.8重量部およびステアリン酸0.5重量部、酸化亜鉛1.0重量部を、120℃でニーダー混練した後、ロールでシート出し、未架橋未発泡の発泡性組成物を得た。
次いで、この樹脂組成物を3mm厚の金型に入れ、165℃、100kg/cm2で加圧架橋発泡させて、密度が0.045g/cm3、厚さが8.7mmである架橋発泡シートを得た。
この架橋発泡体シートは、平均気泡径が110μmで、結晶化度が55%、ヒステリシスロスが55%、ゲル分率が78.0%、50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮は、それぞれ1500g/cm2および7.3%であった。
次いで、この架橋発泡体シートをスライスして3mm厚にし、これに赤外線を照射し、平坦面板とシボ加工を施した面板で冷間プレスを行なったところ、平坦面板でプレスした発泡体表面は、スキン層をもった平滑な表面となり、またシボ付け加工を施した面板で圧縮率50%、90%でプレスした発泡体表面は、シボパターンが明確に転写された様に見えたものの、シボ転写率は、表面加熱時の収縮や、プレス時の永久歪が大きいことからそれぞれ、65%、35%とであった。
また、これらの表面熱加工を施した発泡体を再度50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮を測定したところ、それぞれ1800g/cm2、5.1%で、柔軟性や耐熱性が損なわれたものとなった。
また、これを表面の加飾側を内側に浅く曲げると、シワが無数に発生し、加飾表面の外観が損なわれるものとなった。」(第27ページ第23行ないし第28ページ末行)

・「比較例4
実施例1のポリエチレン〔PE〕20重量部とポリプロピレン〔PP〕80重量部とから構成される混合物100重量部に対して、アゾジカルボンアミド〔ADCA;発泡剤〕10重量部、1.2重量部およびジビニルベンゼン〔DVB;架橋助剤〕5.0重量部、120℃で2軸混練押出機でシート出し、未架橋未発泡の発泡性組成物を得た。
次いで、この樹脂組成物シートに6Mradの電子線を照射し、220℃で常圧架橋発泡させて、密度が0.07g/cm3、厚さが8.7mmである架橋発泡シートを得た。
この架橋発泡体シートは、平均気泡径が120μmで、結晶化度が78%、ヒステリシスロスが60%、ゲル分率が64.0%、50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮は、それぞれ2100g/cm2および1.3%であった。
次いで、この架橋発泡体シートをスライスして3mm厚にし、これに赤外線を照射し、平坦面板とシボ加工を施した面板で冷間プレスを行なったところ、平坦面板でプレスした発泡体表面は、スキン層をもった平滑な表面となり、またシボ付け加工を施した面板で圧縮率50%、90%でプレスした発泡体表面は、シボパターンが明確に転写された様に見えたものの、シボ転写率は、表面加熱後、プレス時の永久歪が大きいことから、それぞれ64%、43%と低かった。また、これらの表面熱加工を施した発泡体を再度50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮を測定したところ、それぞれ2300g/cm2、0.7%で、耐熱性があるが柔軟性が損なわれたものであった。
以上述べた実施例1〜5及び比較例1〜4に示された各加飾された発泡体の各特性を表1及び表2に示す。」(第30ページ第4行ないし第31ページ第5行)

・「

」(第32ページ)

イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に比較例2及び4のうち、プレス前の架橋発泡体シートに関して整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2比較例2発明」及び「甲2比較例4発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2比較例2発明>
「ポリエチレン〔PE;エチレン含有量100モル%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.6g/10分〕100重量部に対して、アゾジカルボンアミド〔ADCA;発泡剤〕6重量部、1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン〔過酸化物架橋剤〕0.8重量部およびステアリン酸0.5重量部、酸化亜鉛1.0重量部を、120℃でニーダー混練した後、ロールでシート出し、未架橋未発泡の発泡性組成物を得、次いで、この樹脂組成物を3mm厚の金型に入れ、165℃、100kg/cm2で加圧架橋発泡させて、得た密度が0.045g/cm3、厚さが8.7mm、平均気泡径が110μmで、結晶化度が55%、ヒステリシスロスが55%、ゲル分率が78.0%、50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮は、それぞれ1500g/cm2および7.3%である架橋発泡体シートを3mm厚にスライスした架橋発泡体シート。」

<甲2比較例4発明>
「ポリエチレン〔PE;エチレン含有量100モル%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.6g/10分〕20重量部とポリプロピレン〔PP;プロピレン含有量100%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0g/10分〕80重量部とから構成される混合物100重量部に対して、アゾジカルボンアミド〔ADCA;発泡剤〕10重量部、1.2重量部およびジビニルベンゼン〔DVB;架橋助剤〕5.0重量部、120℃で2軸混練押出機でシート出し、未架橋未発泡の発泡性組成物を得、次いで、この樹脂組成物シートに6Mradの電子線を照射し、220℃で常圧架橋発泡させて、得た密度が0.07g/cm3、厚さが8.7mm、平均気泡径が120μmで、結晶化度が78%、ヒステリシスロスが60%、ゲル分率が64.0%、50%の圧縮応力および90℃22時間の熱間寸法収縮は、それぞれ2100g/cm2および1.3%である架橋発泡体シートを3mm厚にスライスした架橋発泡体シート。」

(3)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「樹脂発泡体及び発泡部材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0006】
従って、本発明の目的は、厚みが小さく、より微小なクリアランスに適用しても衝撃吸収性に優れる樹脂発泡体を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、厚みが小さく、より微小なクリアランスに適用しても衝撃吸収性に優れる発泡部材を提供することにある。」

・「【実施例】
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。平均セル径、見掛け密度、50%圧縮時の圧縮応力、30%圧縮時の圧縮応力は、以下の方法により求めた。また、独立気泡率は、上記の方法により求めた。
【0101】
(平均セル径)
デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−500」キーエンス株式会社製)により、発泡体気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」三谷商事株式会社製)を用いて、画像解析することにより、平均セル径(μm)を求めた。なお、取り込んだ拡大画像の気泡数は100個程度である。
【0102】
(見掛け密度)
たて100mm、よこ100mmの打抜き刃型にて樹脂発泡体を打抜き、シート状の試験片を得て、この試験片の寸法を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚みを測定する。これらの値から試験片の体積を算出する。次に、試験片の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値より密度(g/cm3)を算出する。
【0103】
(50%圧縮時の圧縮応力(50%の厚みまで圧縮したときの対反発荷重))
JIS K 6767に記載されている発泡体の発泡体の圧縮硬さ測定方法に準じて測定する。
具体的には、直径20mmの円形状に切り出したシート状の試験片を、圧縮速度2.54mm/minで、初期厚みに対して50%の厚みまで圧縮したときの応力(N)を単位面積当たりに換算して、50%圧縮時の圧縮応力(50%の厚みまで圧縮したときの対反発荷重)(N/cm2)とする。」

・「【0106】
(実施例2)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、水酸化マグネシウム:120重量部、カーボン(商品名 「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、及びステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して6重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚みが0.8mmのシート状の樹脂発泡構造体を得た。
この樹脂発泡構造体に対して、プレス機を用いて、120℃の温度条件下、15MPaの圧力で20秒間加圧することにより、加温圧縮を行った。そして、厚みが0.12mmのシート状の樹脂発泡体を得た。」

・「【0113】
【表1】



イ 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

<甲3発明>
「ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR)(230℃):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、水酸化マグネシウム:120重量部、カーボン(商品名 「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、及びステアリン酸モノグリセリド:1重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形し、このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入し、二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して6重量部の割合で注入し、二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚みが0.8mmのシート状の樹脂発泡構造体を得、この樹脂発泡構造体に対して、プレス機を用いて、120℃の温度条件下、15MPaの圧力で20秒間加圧することにより、加温圧縮を行って得た、厚みが0.12mm、平均セル径が40μm、見掛け密度が0.15g/cm3、50%圧縮応力が15N/cm2のシート状の樹脂発泡体。」

2 申立理由1(甲1に基づく新規性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1比較例1発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1比較例1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「MD方向の平均気泡径とTD方向の平均気泡径の平均値である平均気泡径が40〜200μmであり、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン樹脂を含有する発泡シート。」

そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPaであり」と特定されているのに対し、甲1比較例1発明においては、そのようには特定されていない点。

相違点1について検討する。
甲1には、「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」に関する記載はなく、当然、甲1比較例1発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」が「25〜800kPa」の範囲内であることを示す記載はない。
また、他に、甲1比較例1発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」が「25〜800kPa」の範囲内であることを示す証拠や当業者の技術常識もない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1比較例1発明であるとはいえない。

イ 甲1比較例2発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1比較例2発明を対比するに、甲1比較例1発明との対比と同様に判断される。
すなわち、本件特許発明1は甲1比較例2発明であるとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「まず、当然の技術常識として、3時間経過後の50%圧縮強度は初期値よりも低下するといえる。ここで、本件明細書の表1のうち、甲1発明と同水準の50%圧縮強度を示すデータをみると、以下の事実が確認できる。
実施例1:初期値150kPaが3時間経過後に30kPaに低下
実施例2:初期値350kPaが3時間経過後に130kPaに低下
そうすると、甲1発明における初期値「50%圧縮強度206-258kPa」は、3時間経過後に少なくとも30-130kPaの範疇の値を示すと推認できる。
したがって、一応の相違点1は、実質的な相違点ではない。」(第13及び14ページ)旨主張する。
そこで、該主張について検討する。
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)に記載された実施例4から推認すると、実施例4では、3時間経過後の圧縮強度の低下率がさらに大きい(初期値430kPaが3時間経過後に35kPaに低下)から、これを基に概算した場合、甲1比較例1発明及び甲1比較例2発明における3時間経過後の50%圧縮強度は、少なくとも30−130kPaの範疇には入らない。そもそも、甲1の比較例1及び2は、発明の詳細な説明に記載された実施例1ないし4とは、原料及び製造条件等が異なるものであり、また、「ゲル分率(架橋度)」等の値も異なることから、発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2を参考にして、甲1比較例1発明又は甲1比較例2発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」の値を推認することはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

エ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1比較例1発明又は甲1比較例2発明であるとはいえない。

(2)本件特許発明2、3、7、8及び10について
本件特許発明2、3、7、8及び10は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1比較例1発明又は甲1比較例2発明であるとはいえない。

(3)本件特許発明11について
本件特許発明11は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する「発泡シート」を備える「粘着シート」の発明であるから、本件特許発明1が甲1比較例1発明又は甲1比較例2発明であるといえない以上、本件特許発明11は甲1に記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、7、8、10及び11は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、7、8、10及び11に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由1によっては取り消すことはできない。

3 申立理由2(甲2に基づく新規性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲2比較例2発明との対比・判断
本件特許発明1と甲2比較例2発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン樹脂を含有する発泡シート。」

そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点2−1>
本件特許発明1においては、「MD方向の平均気泡径とTD方向の平均気泡径の平均値である平均気泡径が40〜200μmであり」と特定されているのに対し、甲2比較例2発明においては、「平均気泡径が110μm」と特定されているものの、両者の算出方法が異なる点。

<相違点2−2>
本件特許発明1においては、「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPaであり」と特定されているのに対し、甲2比較例2発明においては、そのようには特定されていない点。

事案に鑑み、相違点2−2について検討する。
甲2には、「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」に関する記載はなく、当然、甲2比較例2発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」が「25〜800kPa」の範囲内であることを示す記載はない。
また、他に、甲2比較例2発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」が「25〜800kPa」の範囲内であることを示す証拠や当業者の技術常識もない。
そうすると、相違点2−2は実質的な相違点であり、相違点2−1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2比較例2発明であるとはいえない。

イ 甲2比較例4発明との対比・判断
本件特許発明1と甲2比較例4発明を対比するに、甲2比較例2発明との対比と同様に判断される。
すなわち、本件特許発明1は甲2比較例4発明であるとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「(4−1−2)での検討と同様に、本件明細書の表1のうち、甲1発明と同水準の50%圧縮強度を示すデータをみると、以下の事実が確認できる。
実施例1:初期値150kPaが3時間経過後に30kPaに低下
実施例2:初期値350kPaが3時間経過後に130kPaに低下
そうすると、甲2発明における初期値「50%圧縮強度147-206kPa」は、3時間経過後に30-130kPa程度の範囲内の値を示すと推認できるので、少なくとも25-130kPaの範疇の値を示すといえる。
したがって、一応の相違点2は、実質的な相違点ではない。」(第19及び20ページ、なお、「甲1発明」は「甲2発明」の誤記と認める。)旨主張する。
そこで、該主張について検討するに、上記2(1)ウと同様に判断される。
すなわち、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

エ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲2比較例2発明又は甲2比較例4発明であるとはいえない。

(2)本件特許発明2、3、6及び8について
本件特許発明2、3、6及び8は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2比較例2発明又は甲2比較例4発明であるとはいえない。

(3)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6及び8は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、6及び8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。

4 申立理由3(甲3に基づく新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン樹脂を含有する発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−1>
本件特許発明1においては、「MD方向の平均気泡径とTD方向の平均気泡径の平均値である平均気泡径が40〜200μmであり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、「平均セル径が40μm」と特定されているものの、両者の算出方法が異なる点。

<相違点3−2>
本件特許発明1においては、「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPaであり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。

事案に鑑み、相違点3−2について検討する。
甲3には、「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」に関する記載はなく、当然、甲3発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」が「25〜800kPa」の範囲内であることを示す記載はない。
また、他に、甲3発明における「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度B」が「25〜800kPa」の範囲内であることを示す証拠や当業者の技術常識もない。
そうすると、相違点3−2は実質的な相違点であり、相違点3−1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。

そして、甲3を含めいずれの証拠にも、甲3発明において、相違点3−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明において、相違点3−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
また、本件特許発明1の奏する「良好な防水性を示す発泡シート」「を提供することができる」(発明の詳細な説明の【0007】)という効果は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、相違点3−1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「(4−1−2)での検討と同様に、本件明細書の表1のうち、甲3発明と同水準の50%圧縮強度を示すデータをみると、以下の事実が確認できる。
実施例1:初期値150kPaが3時間経過後に30kPaに低下
そうすると、甲3発明における初期値「50%圧縮強度150kPa」は、3時間経過後に30kPa程度の範囲内の値を示すと推認できる。
したがって、一応の相違点2は、実質的な相違点ではない。」(第32ページ)旨主張する。
そこで、該主張について検討するに、上記2(1)ウと同様に判断される。
すなわち、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明3、5及び8ないし10について
本件特許発明3、5及び8ないし10は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件特許発明11について
本件特許発明11は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する「発泡シート」を備える「粘着シート」の発明であるから、本件特許発明1が甲3発明であるとも、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明11は甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、5及び8ないし11は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、3、5及び7ないし11は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、5及び7ないし11に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。

5 申立理由4(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件特許発明1ないし11は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明の【0008】ないし【0064】には、本件特許発明1ないし11の各発明特定事項について、その技術的意義を含め具体的に記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明の【0012】には「MD方向の平均気泡径とTD方向の平均気泡径の平均値である平均気泡径が40〜200μm」であることの技術的意義及びその調節方法について、同【0009】には「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPa」であることの技術的意義及びその調節方法について、同【0023】ないし【0030】には「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリオレフィン樹脂」であることの技術的意義について、同【0010】には「50%圧縮強度Aが50〜800kPa」であることの技術的意義について、同【0013】及び【0014】には「気泡扁平率が50〜1000%」であることの技術的意義及びその調節方法について、同【0015】には「ゲル分率が30〜70質量%」であることの技術的意義について、同【0016】には「発泡倍率が2〜20cc/g」であることの技術的意義について、同【0017】及び【0018】には「独立気泡率が70%以上」であることの技術的意義について、同【0019】には「光沢度が20〜80%」であることの技術的意義及びその調節方法について、同【0020】には「接触角が80〜120°」であることの技術的意義及びその調節方法について、同【0022】には「厚みが0.03〜1.5mm」であることの技術的意義について、同【0033】には「発泡シートに含有される樹脂100質量部に対して、0.7〜3質量部の滑剤を含有する」ことの技術的意義について、同【0040】ないし【0064】には「粘着テープ」及びその用途について、それぞれ具体的に記載されている。
また、発明の詳細な説明には、「ゲル分率」、「発泡倍率」及び「独立気泡率」の調整方法についての記載はないものの、「ゲル分率」の調整は、架橋剤の種類及び量並びに架橋条件等を調整して行うこと、「発泡倍率」及び「独立気泡率」の調整は、発泡剤の種類及び量並びに発泡条件等を調整して行うことは、当業者の技術常識である。
発明の詳細な説明の【0036】ないし【0039】には、本件特許発明1ないし11の製造方法について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0065】ないし【0082】には、本件特許発明1ないし11の実施例について、具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし11を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし11に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 4の主張について検討する。
「圧縮強度B」、「ポリオレフィン樹脂」、「気泡扁平率」、「光沢度」、「接触角」、「ゲル分率」、「独立気泡率」及び「発泡倍率」等については上記(2)のとおりである。
そうすると、発明の詳細な説明の記載及び技術常識を踏まえると、実施例以外に本件特許発明1ないし11を実施するのに、発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参照して調整することができ、当業者に過度の試行錯誤を要するものとまではいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(4)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。

6 申立理由5(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。

イ 判断
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0004】によると、本件特許発明1ないし10の解決しようとする課題は「防水性に優れる発泡シートを提供すること」であり、本件特許発明11の解決しようとする課題は「防水性に優れる発泡シートを備える粘着テープを提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
他方、発明の詳細な説明の【0005】には「平均気泡径が40〜200μmであり、圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPaである発泡シート、及び該発泡シートを備える粘着テープにより上記課題が解決することを見出した。」と記載され、同【0006】には、本件特許発明1ないし11に対応する記載がある。
また、発明の詳細な説明の【0009】には「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPa」であることの技術的意義が記載され、同【0012】には「平均気泡径が40〜200μm」であることの技術的意義が記載されている。
さらに、発明の詳細な説明の【0065】ないし【0082】において、「平均気泡径が40〜200μm」であり「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPa」である発泡シートを使用した粘着シートは、「平均気泡径が40〜200μm」であり「圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPa」であるという条件を満たさない発泡シートを使用した粘着シートよりも、防水可能時間が長いことを確認している。
そうすると、発明の詳細な説明の上記記載から、当業者は「平均気泡径が40〜200μmであり、圧縮開始後3時間経過後の50%圧縮強度Bが25〜800kPaである発泡シート」及び「該発泡シートを備える粘着テープ」は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし10は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「発泡シート」をさらに限定したものであり、本件特許発明11は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「粘着テープ」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし11は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし11に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 5の主張について検討する。
特許異議申立人の上記主張は、本件特許発明1ないし11に関して、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足しないことを前提とする主張であるところ、上記5のとおり本件特許発明1ないし11に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
そもそも、サポート要件の判断は上記(1)の判断基準に従って行うものであり、実施可能要件を充足するかどうかはサポート要件の判断に関係がない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(4)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。

第5 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-03-25 
出願番号 P2019-036109
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08J)
P 1 651・ 537- Y (C08J)
P 1 651・ 536- Y (C08J)
P 1 651・ 121- Y (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 磯貝 香苗
特許庁審判官 加藤 友也
植前 充司
登録日 2023-07-19 
登録番号 7316061
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 発泡シート及び粘着テープ  
代理人 田口 昌浩  
代理人 虎山 滋郎  

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