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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1411303 |
総通号数 | 30 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2024-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-06-08 |
確定日 | 2024-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第7186249号発明「光学フィルム、これを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7186249号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜11〕、12について訂正することを認める。 特許第7186249号の請求項1〜12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続等の経緯 特許第7186249号の請求項1〜12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2021−6475号)は、令和3年1月19日を出願日とする特許出願であって、令和4年11月30日にその特許権の設定の登録がされ、令和4年12月8日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。 令和5年 6月 8日 :特許異議申立人(以下「異議申立人」という。)による請求項1〜12に係る特許に対する特許異議の申立て(異議申立人が証拠として提出した甲第1号証を「甲1」と略し、甲第2号証等も同様とする。) 令和5年 9月15日付け:取消理由通知書 令和5年11月17日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和5年11月17日 :意見書(特許権者)の提出 令和6年 2月16日 :意見書(異議申立人)の提出 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨及び訂正の内容 (1)請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第7186249号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜11及び請求項12について訂正することを求める、というものである。 (2)訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 請求項1に、「前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜11も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 請求項3に、「前記着色層が、過酸化物分解剤、一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする」と記載されているのを、「前記着色層が、過酸化物分解剤を含有することを特徴とする」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求6〜11も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 請求項5に、「請求項3に記載の光学フィルム」と記載されているのを、「請求項1に記載の光学フィルム」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6〜11も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0010】に、「着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する。 オ 訂正事項5 請求項12に、「前記添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、前記添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する。 カ 訂正事項6 請求項12に、「着色活性エネルギー線硬化性樹脂」と記載されているのを、「活性エネルギー線硬化性樹脂」に訂正する。 キ 訂正事項7 願書に添付した明細書の段落【0012】に、「添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正請求は、一群の請求項〔1〜11〕及び12に対して請求されたものである。 3 訂正の要件の判断 (1)一群の請求項1〜11について ア 訂正事項1について (ア) 訂正の目的 訂正事項1に係る訂正は、「第1の色材」が、「ピロメテンコバルト錯体染料」であるものに限定し、「着色層」が、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有」するものであったものを、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有」するものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 「第1の色材」を「ピロメテンコバルト錯体染料」とすること、及び、「着色層」を「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有」するものとすることは、本件特許明細書の【0072】〜【0073】(第1色材、添加剤)、【0076】(着色層3、着色層6)に記載されている。 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜11も同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。 イ 訂正事項2について (ア) 訂正の目的 訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1による訂正に伴い、請求項1の「一重項酸素クエンチャー」と重複する「一重項酸素クエンチャー」を、請求項3から削除してその記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求6〜11も同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たす。 ウ 訂正事項3について (ア) 訂正の目的 訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1による訂正に伴い、請求項5において、引用する請求項を請求項1としてその記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6〜11も同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項3に係る訂正は、訂正要件を満たす。 エ 訂正事項4について (ア) 訂正の目的 訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1により請求項1の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0010】の記載を請求項1の記載に整合させる訂正である。そうすると、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記ア(イ)及び上記(ア)に照らせば、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項4に係る訂正は、訂正要件を満たす。 (2)一群の請求項12について ア 訂正事項5について (ア) 訂正の目的 訂正事項5に係る訂正は、「第1の色材」が、「ピロメテンコバルト錯体染料」であるものに限定し、「添加剤」が、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有」するものであったものを、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有」するものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(1)ア(イ)に照らせば、訂正事項5に係る訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項5に係る訂正は、訂正要件を満たす。 イ 訂正事項6について (ア) 訂正の目的 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項12の「着色活性エネルギー線硬化性樹脂」との記載が、本来、明細書の【0012】及び【0054】に記載の「活性エネルギー線硬化性樹脂」とすべきところ、「着色」が誤って付されて記載されていたものを、誤記を正して「活性エネルギー線硬化性樹脂」とする訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 (イ) 新規事項の追加の有無 訂正事項6に係る訂正は、当業者によって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項6に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項6に係る訂正は、訂正要件を満たす。 エ 訂正事項7について (ア) 訂正の目的 訂正事項7に係る訂正は、訂正事項5により請求項12の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0012】の記載を請求項12の記載に整合させる訂正である。そうすると、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(1)ア(イ)及び上記(ア)に照らせば、訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項7に係る訂正は、訂正要件を満たす。 4 まとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許第7186249号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜11〕、12について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1〜12に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」という。請求項2以降についても同様。また、総称して、「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 透明基材と、 前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と、 前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え、 前記色素は、 極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、 極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有し、 前記透明基材のJIS L 1925に準拠した紫外線遮薇率が85%以上であり、 前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、 前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、 温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を120時間照射する耐光性試験の前後の色差である△Eabが3.3以下であることを特徴とする光学フィルム。 【請求項2】 表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項3】 前記着色層が、過酸化物分解剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。 【請求項4】 前記耐光性試験の前後の色差ΔEabが2.0〜3.3であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項5】 前記着色層に含まれる、一重項酸素クエンチャーがジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項6】 前記着色層が、前記色素として、極大吸収波長が650〜800nmの範囲内にある第3の色材を更に含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項7】 前記着色層に含まれる色素が、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含むことを特徴とする、諸求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項8】 前記透明基材と前記着色層との間、または、前記透明基材の前記他方面側に、酸素透過度が10cc/m2・day・atm以下の酸素バリア層を更に備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項9】 前記機能層が、高屈折率層及び低屈折率層を含む反射防止層、または、防眩層を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項10】 帯電防止層または防汚層を更に含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルムを備える表示装置。 【請求項12】 透明基材の一方面側に着色層が積層された光学フィルムを形成するために用いられ、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、添加剤と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物であって、 前記色素が、 極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、 極大吸収波長が560〜620nmの範囲肉にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有し、 前記第1の色材がビロメテンコバルト錯体染料であり、 前記添加剤が、分子量2000以上のダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、 温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を前記光学フィルムに対して120時間照射する、耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下であることを特徴とする、着色層形成用組成物。」 第4 取消理由通知書に記載した取消しの理由 特許請求の範囲の請求項1〜12に係る特許に対して、令和5年9月15日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消しの理由の概要は、次のとおりである。 「●理由1(進歩性) 本件特許の請求項1〜12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (引用例等一覧) 甲1:特開2019−56865号公報 甲2:特開2013−75978号公報 甲3:特開2019−191507号公報 甲4:特開2017−138534号公報 甲5:「Tinuvin944」,[online],ChemBK,1−6葉,インターネット<URL:https://www.chembk.com/en/chem/Tinuvin%20944> 甲6:「Technical Information Plastic Additives」,「Chimassorb(R)944」(当合議体注:登録商標であることを示す丸付きRを、括弧付きの(R)で代用して表記している。以下同様。),2019年8月,BASF,p.1−3 甲7:「Technical Information Plastic Additives」,「Tinuvin(R)622」,2011年3月,BASF,p.1−2 甲8:「プラスチック用添加剤 アデカスタブ 製品一覧」,株式会社ADEKA,1−3葉(特に、第2葉)(「プラスチック用添加剤 アデカスタブ 製品一覧」,[online],作成日2017/07/04,更新日2018/06/01,株式会社ADEKA,1−16頁(特に、10頁の「アデカスタブ ヒンダードアミン系光安定剤」)[2023年8月16日検索],インターネット<URL:https://www.adeka.co.jp/chemical/catalog/pdf/J05-0617B%20No.10-9.pdf>としても同内容のものが入手可能) 甲9:山下 賢治,「●総説特集 ゴム用劣化防止剤 光安定剤による高分子劣化制御」,日本ゴム協会誌,第91巻,第12号,2018,一般社団法人日本ゴム協会,p.454−459 甲10:国際公開第2018/164052号 甲11:特開2019−8294号公報 (当合議体注:甲1は、主引用例であり、甲2〜甲9は、技術常識あるいは周知技術を示すための文献であり、甲10及び甲11は、副引用例である。) ●理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」 第5 当合議体の判断 1 理由1(進歩性)についての合議体の判断 (1) 甲1に記載された発明 ア 甲1の請求項1、【0001】、【0013】、【0025】、【0062】〜【0063】、【0077】〜【0078】及び【0087】等の記載によれば、甲1には、「ディスプレイ用光学フィルタ」に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「視認部最表面に設けられ、粘着層/透光性基材/光学機能層からなる構成を有するディスプレイ用光学フィルタであって、(【0025】、【0077】〜【0078】、【0087】) 粘着層として、酸価が0mgKOH/g〜20mgKOH/gである粘着性樹脂と、 480nm〜510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1と、 580nm〜610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2とを少なくとも有する粘着層を備え、 該粘着層の、該色素1の吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、該粘着層の、該色素1の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm〜40nmであり、 該粘着層の、該色素2の吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、該粘着層の、該色素2の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm〜30nmであり、 該粘着層の、該色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、550nm〜570nmにおける吸光度が、0.25以下であり、(請求項1) 透光性基材が、紫外線吸収フィルムである、(【0063】) ディスプレイ用光学フィルタ。」 (当合議体注:引用発明の認定根拠箇所を括弧により示す。) イ 甲1の請求項1、【0025】、【0026】〜【0028】、【0042】、【0061】、【0062】〜【0063】、【0067】及び【0071】〜【0072】等の記載によれば、甲1には、「塗工液」に係る発明として、次の発明(以下「引用塗工液発明」という。)が記載されていると認められる。 「粘着層/紫外線吸収フィルムからなる構成(【0025】、【0062】〜【0063】、【0071】〜【0072】)のディスプレイ用光学フィルタを形成するために用いられる、粘着層用粘着剤組成物と溶剤とを含有した塗工液であって、(【0061】、【0067】) 粘着層用粘着剤組成物は、酸価が0mgKOH/g〜20mgKOH/gである粘着性樹脂と、480nm〜510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1と、580nm〜610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2とを少なくとも有し、(【0026】) 色素1の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm〜40nmであり、 色素2の吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、粘着層の、色素2の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm〜30nmであり、 色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、550nm〜570nmにおける吸光度は、少なくとも0.25以下である、(請求項1、【0027】〜【0028】、【0042】) 塗工液。」 (当合議体注:「粘着層用粘着剤組成物」及び「粘着剤組成物」については、「粘着層用粘着剤組成物」に記載を統一した。引用塗工液発明の認定根拠箇所を括弧により示す。) (2) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と、引用発明とを対比する。 (ア) 透明基材、機能層 引用発明の「透光性基材」及び「光学機能層」は、その文言からみて、本件特許発明1の「透明基材」及び「機能層」に相当する。 (イ) 第1の色材、第2の色材、色素及び着色層 a 引用発明の「粘着層」の「色素1」及び「色素2」は、ディスプレイからの白色光に対し、その吸収波長域の光を吸収し、色を変換するから、着色機能を有するといえる。 してみると、引用発明の「粘着層」は、本件特許発明1の「着色層」に相当する。 b 引用発明の「粘着層」は、「色素1」及び「色素2」を含有するから、本件特許発明1の「着色層」の、「色素を含有する」との要件を具備する。 c 引用発明の「粘着層」が有する「色素1」及び「色素2」の「極大吸収波長」及び「半値全幅」は、本件特許発明1の「極大吸収波長」及び「半値幅」に対応する。 引用発明の「色素1」の「極大吸収波長」及び「半値全幅」からみて、引用発明の「色素1」及び「色素2」は、それぞれ本件特許発明1の、「極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである」とされる、「第1の色材」、及び、「極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである」とされる、「第2の色材」に相当する。 また、上記bより、引用発明は、本件特許発明1の、「前記色素は」、「第1の色材と」、「第2の色材とを含有し」との要件を具備する。 (ウ) 光学フィルム a 上記(ア)と(イ)より、引用発明の「ディスプレイ用光学フィルタ」は、本件特許発明1の「光学フィルム」に相当する。 b 引用発明は、「粘着層/透光性基材/光学機能層からなる構成を有する」。 そうすると、引用発明の「ディスプレイ用光学フィルタ」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の、「透明基材と」、「前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と」、「前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え」との要件を具備する。 イ 一致点及び相違点 本件特許発明1と、引用発明は、 「 透明基材と、 前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と、 前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え、 前記色素は、 極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、 極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有する、光学フィルム。」である点において一致し、以下の点で相違、又は、一応相違する。 (相違点1−1) 本件特許発明1においては、「前記透明基材のJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であ」るのに対して、引用発明においては、「紫外線吸収フィルム」の「JIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率」が明らかでない点。 (相違点1−2) 「第1の色材」が、本件特許発明1においては、「ピロメテンコバルト錯体染料」であるのに対して、引用発明においては、材料が特定されていない点。 (相違点1−3) 本件特許発明1においては、「前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」ているのに対して、引用発明においては、「粘着層」(「着色層」)が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤及び一重項酸素クエンチャーとを含有していない点。 (相違点1−4) 本件特許発明1においては、「温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を120時間照射する耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下である」のに対して、引用発明は、そのようなものであるかどうか不明である点。 ウ 進歩性についての判断 事案に鑑み、相違点1−2について検討する。 (ア) 甲1及びその他の証拠を検討しても、甲1発明において、「色素1」として、特定の染料である、相違点1−2に係る「ピロメテンコバルト錯体染料」を採用することの記載ないし示唆はない。より詳細には以下のとおりである。 a 甲1における発明が解決しようとする課題は、「本発明は、耐久性は勿論のこと、波長550nm〜570nmにおける光吸収(吸光度)が低く、ディスプレイに用いた際の色再現性も良好なディスプレイ用光学フィルタを提供する」(【0011】)ことであるところ、 引用発明の「粘着層」は、「480nm〜510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1」に加えて「580nm〜610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2とを少なくとも有」し、「粘着層」の「色素1」の「480nm〜510nm」の「吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき」、「色素1の吸収極大波長での吸光度の」「半値全幅が10nm〜40nmであり」、「粘着層」の「色素2」の「580nm〜610nm」の「吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき」、「色素2の吸収極大波長での吸光度の」「半値全幅が」「10nm〜30nmであり」、「粘着層」の、「色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、550nm〜570nmにおける吸光度が」「0.25以下であ」るものである。 b 甲1には、引用発明の「色素1」について、「アゾ系化合物、シアニン系化合物、ピラゾールスクアリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物、ジピロメテン金属キレート系化合物、ピロメテン系化合物、ローダミン系化合物等を用いることができるが、本発明においては、他の色素との組み合わせ、粘着層における色素の半値全幅、光吸収(吸光度)、耐久性等を考慮し、ポルフィリン系化合物を用いることが好ましい。」(【0043】)と記載されている(下線は合議体が付した。以下同じ。)。 c そして、甲1の【0102】〜【0105】には、甲1の発明を具体化した、粘着層を備えたディスプレイ用光学フィルタの実施例として、ポリフィリン系化合物(【0105】【化2】)からなる色素1が具体的に開示されている。 d 甲1の上記a〜cの記載に接した当業者であれば、引用発明の色素1を具体化するにあたり、他の色素との組み合わせ、粘着層における色素の半値全幅、光吸収(吸光度)、耐久性等の観点から好ましく(上記b参照)、かつ、実施例で具体的に開示されたポルフィリン系化合物を採用することをまず考える。 仮に、「480nm〜510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1」として、ポルフィリン系化合物以外の材料の採用を検討するとしても、吸収極大波長条件だけでなく、上記aで述べたように、「580nm〜610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2」と共に用いられて、色素1の吸収極大波長での吸光度及び色素2の吸収極大波長での吸光度における所定の半値全幅となり、かつ、(色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1として)550nm〜570nmにおける吸光度が0.25以下となる(条件(I))の色素1を、上記bで述べた、アゾ系化合物、シアニン系化合物、ピラゾールスクアリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物、ジピロメテン金属キレート系化合物、ピロメテン系化合物、ローダミン系化合物の中から選択しなければならない(条件(II))ところ、甲1には、これらの条件を満足する色素1材料として、ピロメテンコバルト錯体染料は記載も示唆もされていない。 e また、上記の吸収極大波長条件、条件(I)及び(II)を満たす色素1材料として、ピロメテンコバルト錯体染料があることは、取消理由通知で引用した甲2〜甲11のいずれにも記載も示唆もされておらず、さらに、本件特許出願時に周知技術であるとも、当業者の技術常識であるともいえない。 してみると、引用発明において、相違点1−2に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者に容易に想到し得たことであるということはできない。 (イ) 令和6年2月16日付け意見書における異議申立人の主張について a 同意見書1頁下から5行〜2頁17行において、異議申立人は、 新たに提出した甲12(特開2020−76046号公報)の【0115】〜【0118】には、着色剤としてのジピロメテン金属錯体化合物が記載され、またこの錯体を形成可能な金属原子として、分光特性等の観点からCoが最も好ましい旨が記載され、さらに、甲12の【0119】には、ジピロメテン系染料が広く知られていることが記載されているから、甲1に記載されているジピロメテン金属キレート系化合物やピロメテン系化合物からピロメテンコバルト錯体染料を選択することに何ら困難性はなく、設計事項である旨と主張する。 b しかしながら、甲12に記載の発明が解決しようとする課題は、「粘度安定性に優れた着色組成物および感光性着色組成物の提供、また、それらを用いることにより、異物が少なく、さらには耐溶剤性に優れた高品質なカラーフィルタおよびカラー液晶表示装置を提供する」(甲12の【0012】)であり、また、同【0115】〜【0120】に記載の「ジピロメテン系染料」は、甲12でいう本発明の着色組成物の必須の構成である着色剤(A)(請求項1、【0035】〜【0063】)と、「色度を調整するため」、「カラーフィルタとして要求される光学特性を満たすため」に併用される染料(a)(同【0064】、【0086】)として、他の多数の染料とともに例示された染料のうちの1つにすぎない。 そうすると、引用発明の課題(上記(ア)a)と、甲12の記載の発明の上記課題は異なり、色素1と甲12の「ジピロメテン系染料」それぞれの作用、機能も異なる。 具体的には、甲12の「ジピロメテン系染料」は、「着色剤におけるジピロメテン系染料としては、カラーフィルタの明度およびコントラスト比を向上させる観点から、500〜600nm付近に吸収極大を有するジピロメテン系染料が好ましく、525〜575nm付近に吸収極大を有するジピロメテン系染料がより好ましく、540〜560nm付近に吸収極大を有するジピロメテン系染料が特に好ましい。」(甲12の【0120】)とされるところ、引用発明の色素1には、波長550nm〜570nmにおける光吸収(吸光度)が低いこと、480nm〜510nmの波長領域に吸収極大波長を有することが求められるから、染料において求められる吸収特性が大きく異なる。 そうすると、甲1の記載に接した当業者が、引用発明の色素1の具体化にあたり、甲12を参考にしようとは考えない。 してみると、同意見書における異議委申立人の主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2〜12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3) 本件特許発明2〜11について 本件特許発明2〜11は、本件特許発明1の構成を全て具備する発明であるから、上記(2)ウで述べた理由と同様な理由により、甲1に記載された発明及び甲2〜甲12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (4) 本件特許発明12について 本件特許発明12と引用塗工液発明とを対比すると、両者は、上記(2)イで抽出した相違点1−2と同じ点で少なくとも相違する。 そうすると、本件特許発明12は、上記(2)ウで述べた理由と同様な理由により、甲1に記載された発明及び甲2〜甲12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 理由2(サポート要件)についての合議体の判断 (1) 異議申立人の主張 異議申立人は、特許異議申立書において、 本件特許明細書の実施例において、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤として効果が確認されているのは、Chimasorb944のみであり、他の分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合、あるいは分子量が3100を超えるヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合について、本件特許発明の効果を奏するか不明であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明における実施例からは、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1〜12まで拡張ないし一般化することはできるものではなく、本件特許発明1〜12は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものである、 (2) サポート要件についての判断 本件特許明細書の【0055】の「ラジカル捕捉剤は、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉し、自動酸化を抑制する働きを持ち、色素劣化(退色)を抑制する。ラジカル捕捉剤として、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いると、高い退色抑制効果が得られる。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色層内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimasorb2020FDL、Chimasorb944FDL、Tinuvin622、ADEKA社製LA−63Pなどが挙げられる。」との、ラジカル捕捉剤として、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いることによって色素劣化(退色)を抑制できる作用・機序の説明や、【0067】〜【0097】(特に、【0076】【表3】の着色層2、3、6、【0069】【表1】の実施例3〜7、実施例9、【0096】【表6】の実施例3〜7、実施例9の「着色層耐光性」)の記載から、ラジカル捕捉剤の分子量が高いほど、着色層内へ留まる分子が多く、退色抑制効果が得られことが理解でき、Chimasorb944FDL以外の他の分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合、あるいは分子量が3100を超えるヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合であっても、高い退色抑制効果(ΔEabが3.3以下)が得られると当業者は理解できる。 してみると、本件特許発明1〜12は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものであるということはできない。 してみると、異議申立人の異議申立書における上記主張を採用することはできない。 第6 むすび 本件特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】光学フィルム、これを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物 【技術分野】 【0001】 本発明は、光学フィルム及びこれを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 表示装置は、室内外を問わず、外光が入射する環境下で使用されることが多い。表示装置に入射した外光は、表示装置の表面で反射され、外光の反射像が表示画像と混合することにより、表示品質の低下を引き起こす。したがって、表示装置に反射防止機能を付与することが必須であり、表示品質を向上させるため、反射防止機能の高性能化が求められている。 【0003】 一般に、反射防止機能は、表示装置の表面に低屈折率層を形成することにより付与することができる。また、反射防止機能をより高性能化させるために、高屈折率層、または、中屈折率層及び高屈折率層の両方を設け、最表面に低屈折率層を形成する手法も知られている。 【0004】 また、表示装置に入射した外光が、表示装置内部の部材(例えば、電極や蛍光体、カラーフィルタ)で反射され、反射光が表示面から再射出されることによって、表示品質が低下するという問題もある。この問題に対しては、円偏光板を表示面側に設けることにより、表示装置内部への入射光と内部における反射光とを低減する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。 【0005】 また、一般に表示装置は高い色純度が求められる。色純度とは表示装置の表示可能な色の広さを示し、色再現範囲とも呼ばれる。よって、高い色純度であることは色再現範囲が広く、色再現性が良いことを意味する。色再現性の向上は、表示パネルの白色光源に対し、カラーフィルタを用いた色分離、もしくは単色光源をカラーフィルタで補正し、狭半値化させる手法が知られている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2013−251376号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 反射防止機能を付与するために円偏光板を使用した表示装置では、表示パネルから発せられる光も円偏光板により吸収される。円偏光板以外のフィルム等による吸収を加味すると、表示パネルから発せられた光の透過率は50%未満となり、輝度低下が顕著となる。輝度低下を補うためには表示パネルの発光強度を高くする必要があるが、発光素子の寿命低下を引き起こす可能性がある。更に、円偏光板を用いる場合、円偏光板自体の厚みにより薄型化が困難であるという問題もある。 【0008】 また、表示装置の色再現性を向上させる場合には、カラーフィルタの厚膜化や色材の高濃度化が必要となり、画素形状や視野角特性の悪化など表示品位を低下させる問題があった。 【0009】 それ故に、本発明は、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄型化、及び色再現性の向上を図ることができる光学フィルム及びこれを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明に係る光学フィルムは、透明基材と、透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と、透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え、色素は、極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有し、透明基材のJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であり、第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を120時間照射する耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下であることを特徴とするものである。 【0011】 また、本発明に係る表示装置は、上記の光学フィルムを備えるものである。 【0012】 また、本発明に係る着色層形成用組成物は、透明基材の一方面側に着色層が積層された光学フィルムを形成するために用いられ、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、添加剤と、溶剤とを含有し、色素が、極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有し、第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を光学フィルムに対して120時間照射する、耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下であることを特徴とする。 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄型化、及び色再現性向上を図ることができる光学フィルム及びこれを用いた表示装置及び、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物を提供できる。 【図面の簡単な説明】 【0014】 【図1】第1の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図 【図2】第2の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図 【図3】第3の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図 【図4】第4の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図 【図5】第5の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図 【図6】透過特性の評価に用いた光源のスペクトル 【図7】色再現性の評価に用いた光源のスペクトル 【発明を実施するための形態】 【0015】 図1〜図5は、それぞれ第1〜第5の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。図1〜図5における上側が、表示装置の表示画像を観察するときの観察側に相当する。 【0016】 詳細は後述するが、図1〜図5に示す光学フィルム11〜15は、特定の波長域の光を吸収する色素を含有する着色層21を備える。着色層21は、光学フィルム11〜15に入射した外光の一部及び表示パネル10で反射された外光の一部を吸収することにより、外光の反射光を低減する機能を有する。ただし、着色層21に含まれる色素は、耐光性が低く、外光に含まれる紫外線により光酸化されると、光吸収性が低下してしまう。そこで、本発明では、着色層21より観察側にある透明基材20を紫外線吸収性のある紫外線吸収層とすることにより、入射した紫外線による着色層21の劣化(退色)を抑制する。 【0017】 図1に示す表示装置1は、表示パネル10と、表示パネル10の表示面側に設けられる光学フィルム11とを備える。表示パネル10は、光源を備えた表示パネルであって、特に、有機ELパネルやマイクロLEDパネル等の自発光型の表示パネルの場合には、金属電極等や反射部材が設けられる。光学フィルム11は、紫外線吸収性を有する透明基材20と、透明基材20の一方面側に積層される着色層21と、透明基材20の他方面側に積層されるハードコート層22及び低屈折率層23とを備える。光学フィルム11は、低屈折率層23が表示装置1の観察側の最表面となり、着色層21が表示パネル10の表示面側を向くように表示パネル10に重ねられている。低屈折率層23の屈折率は、ハードコート層22の屈折率より低く、ハードコート層22と低屈折率層23とで反射防止層を構成する。ハードコート層22と低屈折率層23は、光学フィルム11に入射した外光と光学フィルム11内の層間で反射した反射光とを干渉で打ち消すことにより、外光の反射を低減する。 【0018】 図2に示す表示装置2は、表示パネル10と、表示パネル10の表示面側に設けられる光学フィルム12とを備える。光学フィルム12は、紫外線吸収性を有する透明基材20と、透明基材20の一方面側に積層される着色層21と、透明基材20の他方面側に積層されるハードコート層22及び防眩層24とを備える。光学フィルム12は、防眩層24が表示装置2の観察側の最表面となり、着色層21が表示パネル10の表示面側を向くように表示パネル10に重ねられている。防眩層24は、外光の反射を制御するための光学機能層であり、表面に形成された微細な凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する。図2に示す層構成から、ハードコート層22を省略して、透明基材20上に防眩層24を積層しても良い。 【0019】 図3に示す表示装置3は、表示パネル10と、表示パネル10の表示面側に設けられる光学フィルム13とを備える。光学フィルム13は、紫外線吸収性を有する透明基材20と、透明基材20の一方面側に積層される着色層21と、透明基材20の他方面側に積層される防眩層24及び低屈折率層23とを備える。光学フィルム13は、低屈折率層23が表示装置1の観察側の最表面となり、着色層21が表示パネル10の表示面側を向くように表示パネル10に重ねられている。防眩層24は、外光の反射を制御するための光学機能層であり、表面に形成された微細な凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する。また、低屈折率層23の屈折率は、防眩層24の屈折率より低く、防眩層24と低屈折率層23とで反射防止層を構成する。 【0020】 本発明に係る光学フィルムは、着色層21より視認側に酸素バリア性を有する酸素バリア層を更に備えることが好ましい。酸素バリア層を更に設けた層構成の例を図4及び図5に示す。 【0021】 図4に示す表示装置4は、表示パネル10と、表示パネル10の表示面側に設けられる光学フィルム14とを備える。光学フィルム14は、紫外線吸収性を有する透明基材20と、透明基材20の一方面側に積層される酸素バリア層25及び着色層21と、透明基材20の他方面側に積層される機能層30とを備える。機能層30は、光学フィルム14にハードコート性等の機能を付与したり、入射光の反射や映り込みを制御したりするために設けられる層であり、例えば、ハードコート層、ハードコート層(高屈折率層)及び低屈折率層からなる反射防止層、防眩層、防眩層及び低屈折率層からなる防眩性反射防止層等である。光学フィルム14は、機能層30が表示装置4の観察側の最表面となり、着色層21が表示パネル10の表示面側を向くように表示パネル10に重ねられている。酸素バリア層25は、透明基材20と着色層21との間であって、着色層21より観察側に設けられており、着色層21への酸素の侵入を遮断することにより着色層21に含まれる色素の酸化による劣化を抑制する。酸素バリア層25の詳細については後述する。 【0022】 図5に示す表示装置5は、表示パネル10と、表示パネル10の表示面側に設けられる光学フィルム15とを備える。光学フィルム15は、紫外線吸収性を有する透明基材20と、透明基材20の一方面側に積層される着色層21と、透明基材20の他方面側に積層される酸素バリア層25及び機能層30とを備える。光学フィルム15は、機能層30が表示装置5の観察側の最表面となり、着色層21が表示パネル10の表示面側を向くように表示パネル10に重ねられている。酸素バリア層25は、透明基材20よりも観察側に設けられており、着色層21への酸素の侵入を遮断することにより着色層21に含まれる色素の酸化による劣化を抑制する。 【0023】 光学フィルム11〜15の500g加重における鉛筆硬度は、H以上である。鉛筆硬度がH未満の場合、表示装置の表面に設ける反射制御フィルムとしての用途に適さなくなる。 【0024】 尚、光学フィルム11〜15は、例えば、図示しない粘着層を介して表示パネル10の表示面に貼り合わされる。 【0025】 〈透明基材〉 透明基材20は、光学フィルム11〜15の基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れる材料により形成される。透明基材20の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを好適に利用できる。透明基材20の厚みは、特に限定されないが、10〜100μmとすることが好ましい。 【0026】 本実施形態に係る透明基材20は、紫外線吸収性を有しており、着色層21に含まれる色素を紫外線から保護するための紫外線吸収層として機能する。具体的には、透明基材20の紫外線遮蔽率は、85%以上であることが好ましい。ここで、紫外線遮蔽率は、JIS L 1925に準拠して測定される値であり、以下の式により算出される。 紫外線遮蔽率(%)=100−波長290〜400nmの紫外線の平均透過率(%) 【0027】 透明基材20の紫外線吸収性は、例えば、透明基材20を形成するための樹脂材料に紫外線吸収剤を配合することによって付与することができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、しゅう酸アニリド系、シアノアクリレート系の化合物を使用できる。 【0028】 〈着色層〉 着色層21は、光学フィルム11〜15を透過する光、及び、表示パネル10の表面に存在する金属電極等や反射部材によって反射されて再射出される反射光を低減するための層であり、可視光線を吸収するための色素を含有する。本実施形態に係る着色層21は、色素として、第1の色材及び第2の色材を含有する。第1の色材は、極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmであるものであり、第2の色材は、極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmであるものである。着色層21に含有させる第1の色材及び第2の色材として、上記の吸収特性を有するものを使用することにより、表示パネル10が発光する可視光線のうち、相対的に発光強度が低い波長域の可視光線を着色層21に吸収させることができる。 【0029】 表示装置1〜5に貼り合わされた光学フィルム11〜15の表面側には、反射防止層や防眩層の光学機能層が設けられているが、表示装置1〜5に入射した外光の一部は、光学機能層を透過して表示パネル10にまで達し、表示パネル10の表面に存在する金属電極や反射部材によって反射される。この表示装置1〜5の内部で反射した光は、表示パネル10の表示画像のコントラスト及び視認性を損なう原因となるため、従来、円偏光板を用いて表示パネル10の表面における反射光の低減が図られてきた。本実施形態に係る光学フィルム11〜15は、円偏光板によって反射光を低減する代わりに、色素を含有する着色層21によって、光学機能層を透過した入射光の一部を吸収する。着色層21によって吸収されなかった残りの入射光のうちの一部は、表示パネル10によって反射されるが、着色層21は、反射光の一部を吸収する。これにより、外光の内部反射率は大幅に低減される。着色層21に含まれる2種類の色素の吸収波長域は、表示パネル10が発する光の極大波長とは重ならないため、表示パネル10から発せられた光の強度の低下は抑制される。 【0030】 着色層21の厚みは、特に限定されないが、0.5〜10μmとすることが好ましい。着色層21の厚みが0.5μm未満の場合、着色層21に含有させる色素濃度が十分でなく、光吸収性が不十分となる可能性がある。着色層21の厚みが0.5μm未満の場合に、光吸収性を確保するため、色素濃度を高くすると、外観に異常が発生するため好ましくない。一方、着色層21の厚みが10μmを超える場合、光学フィルム11〜15の薄型化に不利となるため好ましくない。 【0031】 着色層21に含有させる色素としては、染料、顔料やナノ金属等を使用することができるが、分子内にポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含む色材を用いることが好ましい。特に、分子内にポルフィリン構造やピロメテン構造、フタロシアニン構造を持つ金属錯体を用いることがより好ましい。 【0032】 また、着色層21は、上記の2種類の色材に加え、極大吸収波長が650〜800nmの範囲内にある第3の色材を更に含有しても良い。ただし、第3の色材には、極大吸収波長が表示パネル10の極大発光波長と異なる色素を使用する。着色層21に第3の色材を含有させることにより、外光の反射をより低減することができる。 【0033】 〈ハードコート層〉 ハードコート層22は、光学フィルム11及び12に硬度を付与するための層であり、活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤を少なくとも含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させることによって形成することができる。また、着色層21より上層にハードコート層22を積層することにより、酸素バリア性を向上させることもできる。ハードコート層22によって酸素バリア性を付与される場合、着色層21に含まれる色素の劣化を抑制できる。ハードコート層22の厚みは、特に限定されないが、2〜10μmであることが好ましい。ハードコート層22の厚みが2μm未満の場合、ハードコート層26の硬度が不足する可能性がある。ハードコート層22の厚みが10μmを超える場合、光学フィルム11及び12の薄型化に不利となるため好ましくない。ただし、ハードコート層22の膜厚は、光学フィルムに求められる表面硬度及び全体の厚みに応じて適宜設定することができる。また、ハードコート層22は、屈折率調整や硬度付与を目的として、金属酸化物微粒子を含有しても良い。ハードコート層22に金属酸化物微粒子を配合して高屈折率化することにより、後述する低屈折率層23と共に反射防止層を構成することができる。 【0034】 活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂であり、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。 【0035】 単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 【0036】 2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 【0037】 3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。 【0038】 また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。 【0039】 ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレードヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。 【0040】 上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂、ハードコート層形成用組成物中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。 【0041】 ハードコート層形成用組成物に用いる光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用して良い。 【0042】 また、ハードコート層形成用組成物に用いる溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。 【0043】 また、ハードコート層形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を含有してもいい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。 【0044】 その他の添加剤として、ハードコート層形成用組成物に、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光増感剤、導電材料等を加えても良い。 【0045】 〈低屈折率層〉 低屈折率層23は、活性エネルギー線硬化性樹脂を少なくとも含有する低屈折率層形成用組成物を透明基材に塗布し硬化させることによって形成することができる。低屈折率層形成用組成物に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層22で説明したものを使用することができる。低屈折率層形成用組成物には、屈折率調整のために、LiF、MgF、3NaF・AlF、AlF、Na3AlF6等の微粒子やシリカ微粒子を配合しても良い。また、シリカ微粒子として、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子等の粒子内部に空隙を有するものを用いることが、低屈折率層の低屈折率化に有効である。また、低屈折率層形成用組成物には、ハードコート層22で説明した光重合開始剤や溶剤、その他の添加剤を適宜配合しても良い。低屈折率層23の屈折率は、1.20〜1.55とすることが好ましい。また、低屈折率層23の膜厚は、特に限定されないが、40nm〜1μmとすることが好ましい。 【0046】 低屈折率層23は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。これらの材料は、低屈折率層23に撥水性及び/または撥油性を付与することにより、防汚性を高めることができる。 【0047】 〈防眩層〉 防眩層24は、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する層である。防眩層24は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、必要に応じて有機微粒子及び/または無機微粒子とを含有する防眩層形成用組成物を塗布し硬化させることによって形成することができる。防眩層形成用組成物に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層22で説明したものを使用することができる。防眩層24の膜厚は、特に限定されないが、1〜10μmであることが好ましい。 【0048】 防眩層形成用組成物に用いる有機微粒子は、主として防眩層24の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。 【0049】 防眩層形成用組成物に用いる無機微粒子は、主として防眩層24中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するための材料である。無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであっても良く、両者の混合物を使用しても良い。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。 【0050】 防眩層形成用組成物は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。これらの材料は、防眩層24に撥水性及び/または撥油性を付与することにより、防汚性を高めることができる。 【0051】 防眩層24は、材料を偏在させることにより、透明基材20側から順に、相対的に屈折率が高い層と、相対的に屈折率が低い層とが積層された層として形成しても良い。材料を偏在させた防眩層24は、例えば、表面修飾したシリカ微粒子または中空シリカ微粒子を含有する低屈折率材料と、高屈折率材料とを含有する組成物を塗工し、両者の表面自由エネルギーの差を利用して相分離させることにより形成することができる。防眩層24をそう分離した2層で構成する場合、着色層21側の相対的に屈折率が高い層の屈折率を1.50〜2.40とし、光学フィルム12の表面側の相対的に屈折率が低い層の屈折率を1.20〜1.55とすることが好ましい。 【0052】 〈酸素バリア層〉 酸素バリア層25の酸素透過度は、10cc/(m2・day・atm)以下であり、5cc/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、1cc/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましい。酸素バリア層25の酸素バリア性により、着色層21に含まれる色材の酸化劣化(退色)を抑制することができる。酸素バリア層25の形成材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビリニデン、シロキサン樹脂等を含有するのが好ましく、三菱ガス化学社製のマクシーブ(登録商標)、株式会社クラレ製のエバール、旭化成株式会社のサランラテックス、サランレジン等を用いることができる。また、酸素バリア層25の厚さは特に限定されず、所望の酸素バリア性が得られる厚さとすればよい。 【0053】 また、酸素バリア層25には、無機物粒子(無機化合物からなる粒子)が分散していてもよい。無機物粒子により、酸素透過度をより低くでき、着色層21の酸化劣化(退色)をより抑制することができる。無機物粒子の大きさや含有量は、特に限定されず、酸素バリア層25の厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。酸素バリア層25に分散させる無機物粒子の大きさ(最大長)は、酸素バリア層25の厚さ未満であるのが好ましく、小さいほど有利である。なお、酸素バリア層25に分散させる無機物粒子の大きさは、均一でも不均一でもよい。酸素バリア層25に分散する無機物粒子としては、具体的には、シリカ粒子、アルミナ粒子、銀粒子、銅粒子、チタン粒子、ジルコニア粒子、スズ粒子等が挙げられる。 【0054】 〈着色層形成用組成物〉 上述した着色層21は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、溶剤と、必要に応じて配合される添加剤とを含有する着色層形成用組成物を透明基材20に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成することができる。着色層形成用組成物に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤は、ハードコート層22で説明したものを使用することができる。また、色素としては、上述した吸収特性を有する第1の色材及び第2の色材を使用し、必要に応じて上述した吸収特性を有する第3の色材を更に配合しても良い。添加剤としては、ラジカル捕捉剤、一重項酸素クエンチャー及び過酸化物分解剤の少なくとも1種類を使用することができる。 【0055】 ラジカル捕捉剤は、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉し、自動酸化を抑制する働きを持ち、色素劣化(退色)を抑制する。ラジカル捕捉剤として、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いると、高い退色抑制効果が得られる。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色層内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimasorb2020FDL、Chimasorb944FDL、T.inuvin622、ADEKA社製LA−63Pなどが挙げられる。 【0056】 一重項酸素クエンチャーは、色素を酸化劣化(退色)させやすい性質を持つ反応性の高い一重項酸素を不活性化し、色素の酸化劣化(退色)を抑制する働きがある。一重項酸素クエンチャーとしては遷移金属錯体、色素類、アミン類、フェノール類、スルフィド類が挙げられるが、特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体で、中心金属としてはニッケル、銅またはコバルトが好適に用いられる。 【0057】 過酸化物分解剤としては、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を分解し、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制する働きがある。過酸化物分解剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を用いることができる。 【0058】 リン系酸化防止剤としては、例えば2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、および6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。 【0059】 イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイルービス[3−(ドデシルチオ)プロピオネート]、2−メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。 【0060】 以上説明したように、本発明に係る光学フィルム11〜15は、紫外線吸収性を有する透明基材20の一方面側に、可視光線吸収性を有する色素を含有する着色層21を備える。光学フィルム11〜15に入射した外光の一部は、表示パネル10に入射する過程と、表示パネル10で反射されて光学フィルム11〜13から再射出される過程とにおいて、着色層21によって吸収され、外光の反射光の強度が低減される。これにより、表示装置1〜3の表示画像のコントラストや視認性を向上することができる。また、着色層21よりも観察側に配置される透明基材20が入射する紫外線を吸収することにより、色素の退色を抑制し、表示装置1〜5の表示性能を維持することが可能となる。 【0061】 また、本発明に係る光学フィルム11〜15を用いた場合、色素の選択や配合量により、光学フィルムの可視光線の透過率を50%以上とすることができるので、表示パネル10の発光強度を増加することなく、円偏光板を用いた従来の構成と比べて表示装置1の輝度を向上できる。また、輝度向上のために表示パネル10の発光強度を増加させる必要がないので、表示パネル10の耐久性を向上させることができる。また、従来の円偏光板による可視光線カットの機能を着色層21の薄膜により実現できるため、円偏光板を用いる場合と比べて、表示装置1〜5の薄型化を図ることもできる。 【0062】 本発明は、色素を含有する着色層を形成するための着色層形成用組成物に適用することもできる。着色層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、色素と、溶剤と、添加剤を含有する。色素としては、上述した2種類の材料、すなわち、極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを配合する。更に650〜800nmの範囲内にある第3の色材を含有することで更に外光のパネル反射を低減することができる。 【0063】 尚、上記の各実施形態に係る光学フィルムの最表面に防汚層を設けても良い。防汚層は、光学積層体に撥水性及び/または撥油性を付与することにより、防汚性を高めるものであり、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤等をドライコーティングまたはウェットコーティングすることにより形成できる。 【0064】 また、上記の各実施形態に係る光学フィルムに帯電防止層を設けても良い。帯電防止層は、ポリエステルアクリレート系モノマー、エポキシアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系モノマー、ポリオールアクリレート系モノマー等の電離放射線硬化性材料と、重合開始剤と、耐電防止剤とを含む塗液を塗布し、重合により硬化させることによって形成できる。帯電防止剤としては、例えば、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物系微粒子、高分子型導電性組成物や、4級アンモニウム塩等を使用できる。帯電防止層は、光学積層体の最表面に設けられても良いし、光学機能層と透明基材の間に設けられても良い。あるいは、上述した光学機能層を構成するいずれかの層に帯電防止剤を配合することにより帯電防止層を形成しても良い。耐電防止層を設ける場合、光学フィルムの表面抵抗値は、1.0×106〜1.0×1012(Ω/cm)であることが好ましい。 【0065】 また、上記の第1及び第3の実施形態に係る光学フィルムにおいて、反射防止層の性能を向上させるために、着色層とハードコート層との間に中屈折率層を更に設けても良い。この場合、透明基材側から順に、中屈折率層、高屈折率層(高屈折率層として機能する層)、低屈折率層の順に各層が積層されていれば良い。中屈折率層は、活性エネルギー線硬化性樹脂を少なくとも含有する中屈折率層形成用組成物を透明基材に塗布し硬化させることによって形成することができる。低屈折率層形成用組成物に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層で説明したものを使用することができる。中屈折率層形成用組成物には、屈折率調整のために、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等の金属微粒子を配合しても良い。また、中屈折率層形成用組成物には、ハードコート層で説明した光重合開始剤や溶剤、その他の添加剤を適宜配合しても良い。 【0066】 また、上記の第2の実施形態に係る光学フィルムにおいて、反射防止性能及び表示品質を向上させるために、防眩層上に、高屈折率層及び低屈折率層を含む反射防止層を更に設けても良い。 【実施例】 【0067】 以下に、実施例を説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。 【0068】 以下の実施例及び比較例では、表1、表2に示す層構成の光学フィルム1〜13を作製し、作製したフィルムの特性を評価した。また、光学フィルム1〜13を用いた有機ELパネルの表示装置特性をシミュレーションにより確認した。 【0069】 【表1】 【0070】 【表2】 【0071】 〈光学フィルムの作製〉 以下、各層の形成方法を説明する。 【0072】 [着色層の形成] (着色層形成用組成物 使用材料) 着色層形成に用いる着色層形成用組成物の使用材料として下記のものを用いた。 なお、色材の最大吸収波長及び半値幅は硬化塗膜での特性値を分光透過率より算出した。 ・第1色材: Dye−1 後述する化学式1で示されるピロメテンコバルト錯体染料(最大吸収波長 493nm、半値幅 26nm) ・第2色材: Dye−2 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山田化学社製 FDG−007、最大吸収波長595nm、半値幅 22nm) Dye−3 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山本化成社製 PD−311S、最大吸収波長 586nm、半値幅 22nm) ・第3色材: Dye−4 フタロシアニン銅錯体染料(山田化学社製 FDN−002、最大吸収波長 800nm) ・添加剤: ヒンダードアミン系光安定剤 Chimassorb944FDL(BASFジャパン社製、分子量 2000〜3100) ヒンダードアミン系光安定剤 Tinuvin249(BASFジャパン社製、分子量 482) 一重項酸素クエンチャー D1781(東京化成工業社製) ・紫外線吸収剤: Tinuvin479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm) LA−36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm) ・活性エネルギー線硬化性樹脂: UA−306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー) DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート) ・開始剤:Omnirad 184(IGM Resing B.V.社製) ・溶剤: MEK(メチルエチルケトン) 酢酸メチル 【0073】 【化1】 (化学式1) 【0074】 (基材) 透明基材としては、下記のものを用いた。 ・TAC:トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 TG60UL、基材厚60μm、紫外線遮蔽率92.9%) ・PMMA:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学社製 W001U80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率93.4%) ・PET1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 SRF、基材厚80μm、紫外線遮蔽率88.3%) ・PET2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(SKC社製 TOR20、基材厚40μm、紫外線遮蔽率88.6%) 【0075】 (着色層形成) 表1、2に示す基材上に、表3に示す着色層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmとなるよう着色層1〜6を形成した。なお、添加量は質量比である。 【0076】 【表3】 【0077】 [機能層の形成] ・酸素バリア層形成組成物: PVA117(クラレ社製)80%水溶液 【0078】 (酸素バリア層形成) 表1に示す実施例8の透明基材上に、上記の酸素バリア層形成用組成物を塗布し、乾燥させ、酸素透過度が1cc/m2・day・atmである表1の酸素バリア層1を形成した。 【0079】 (ハードコート層形成用組成物) ハードコート層形成に用いるハードコート層形成用組成物の使用材料として下記のものを用いた。 ・活性エネルギー線硬化性樹脂: UA−306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー) DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート) ・開始剤: Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm) ・溶剤: MEK(メチルエチルケトン) 酢酸メチル 【0080】 (ハードコート層形成) 表1及び表2に示す透明基材または酸素バリア層上に、表4に示すハードコート層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである表1及び2のハードコート層1を形成した。 【0081】 【表4】 【0082】 (防眩層形成用組成物) 防眩層形成に用いる防眩層形成用組成物の使用材料として下記のものを用いた。 ・活性エネルギー線硬化性樹脂: ライトアクリレートPE−3A(共栄社化学株式会社製、屈折率1.52) ・光重合開始剤: Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm) ・樹脂粒子: スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm) ・無機微粒子1: 合成スメクタイト ・無機微粒子2: アルミナナノ粒子、平均粒径40nm ・溶剤 トルエン イソプロピルアルコール 【0083】 (防眩層の形成) 表5に示す防眩層形成用組成物を表1に示す実施例2の透明基材上に塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである表1の防眩層1を形成した。 【0084】 【表5】 【0085】 (低屈折率層形成用組成物 使用材料) 低屈折率層形成に用いる低屈折層形成用組成物として下記のものを用いた。 ・屈折率調整剤: 多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径75nm、固形分20%、溶剤メチルイソブチルケトン) 8.5質量部 ・防汚性付与剤: オプツールAR−110(ダイキン工業社製、固形分15%、溶剤メチルイソブチルケトン) 5.6質量部 ・活性エネルギー線硬化性樹脂: ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.4質量部 ・開始剤: Omnirad 184(IGM Resins B.V.社製) 0.07質量部、 ・レベリング剤: RS−77(DIC社製) 1.7質量部 ・溶剤: メチルイソブチルケトン 83.73質量部 【0086】 (低屈折率層の形成) 表1及び表2で示した構成上に、上記組成の低屈折率層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が100nmである表1及び表2の低屈折率層を形成した。 【0087】 [フィルム特性評価] (着色層上 紫外線遮蔽率) 着色層より上層に基材がくる実施例1〜10と、着色層のない比較例3は、基材を自動分光光度計((株)日立製作所製、U−4100)を用いて透過率を測定した。また、着色層が基材より上層にくる比較例1、2については、JIS−K5600付着性試験準拠のセロハンテープを用いて着色層より上層を剥離し、自動分光光度計((株)日立製作所製、U−4100)を用い、粘着テープをリファレンスとして着色層上層の透過率を測定した。これらの透過率を用いて、紫外域(290〜400nm)の平均透過率を算出し、式(1)に示す紫外線遮蔽率を算出した。 式(1) 紫外線遮蔽率(%)=100−紫外域(290〜400nm)の平均透過率(%) 【0088】 (鉛筆硬度試験) 光学フィルムの表面に、クレメンス型引掻き硬度試験機(テスター産業株式会社製、HA−301)を用いて、JIS−K5400−1990に準拠して、500gの荷重をかけた鉛筆(三菱鉛筆社製 UNI、鉛筆硬度H)を用いて試験を行い、キズによる外観の変化を目視で評価し、キズが観察されない場合を○、キズが観察される場合を×とした。 【0089】 (耐光性試験) 得られた着色層を含む光学フィルムの信頼性試験として、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用い、キセノンランプ照度60W/cm2(300〜400nm)、試験機内温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間試験し、試験前後に自動分光光度計((株)日立製作所製、U−4100)を用いて透過率測定を行い、波長範囲470〜530nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ1での試験前後透過率差ΔTλ1、波長範囲560〜620nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ2での試験前後透過率差ΔTλ2、試験前後でのC光源での色差ΔEabを算出した。透過率差及び色差はゼロに近い方が良好であり、ΔEab≦5となるものが好ましい。 【0090】 [表示装置特性評価] (透過特性) 得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U−4100)を用いて測定し、この透過率を用いて、白表示時に光学フィルムを透過した光の効率を算出し、白表示透過特性として評価した。基準として、図6に示すスペクトルの白色有機EL光源とカラーフィルタを通して出力される白表示時のスペクトルの効率を100とした。 【0091】 (反射特性) 得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U−4100)を用いて測定した。表示パネル反射率を40%とし、光学フィルムに低屈折率層又は防眩層などの反射防止層が観察側最表層に設けられている場合の表面反射率Rを1%、設けられていない場合の表面反射率Rを4%とし、他の各層での界面反射及び表面反射は考慮せず、光学フィルムの無い状態でのD65光源に対する表示装置反射値を100とした際の相対反射値を式(2)に基づいて算出し、表示装置反射特性として評価した。 【数1】 【0092】 (色再現性) 得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U−4100)を用いて測定し、図6に示すスペクトルの白色EL光源とカラーフィルタを通して出力される図7の赤色表示、緑色表示、青色表示スペクトルを測定した。測定した透過率と図7の赤色表示、緑色表示、青色表示スペクトルとを用いて算出されるCIE1931色度値からNTSC比を算出し、NTSC比を色再現性の指標として評価した。 【0093】 光学フィルムでの特性評価として、紫外線吸収層の紫外線遮蔽率、鉛筆硬度、耐光性試験の結果を、表示装置での特性評価として、白表示透過特性、表示装置反射特性、色再現性を表6、7に示した。 【0094】 表6、7の結果より、着色層を備える表示装置の反射特性は大幅に低くなった。また、円偏光板では透過率が半減すると言われているのに対し、白表示透過特性の評価値に示されるように、着色層を備える表示装置は輝度効率にも優れ、さらに色再現性も向上した。 【0095】 また、紫外線吸収機能を比較例2のように着色層内に設けず、紫外線遮蔽率の高い基材を紫外線吸収層として用いることで光学フィルムの硬度が保持され、着色層の耐光性も大幅に改善された。更に酸素バリア層の積層や、着色層内にラジカル捕捉剤として高分子量のヒンダードアミン光安定剤、一重項酸素クエンチャーとしてジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体を含有することで更に耐光性が改善された。 【0096】 【表6】 【0097】 【表7】 【産業上の利用可能性】 【0098】 本発明は、表示装置に用いられる光学フィルムとして利用できる。 【符号の説明】 【0099】 1、2、3 表示装置 5 表示パネル 11、12、13 光学フィルム 20 透明基材 21 着色層 22 ハードコート層 23 低屈折率層 24 防眩層 25 酸素バリア層 30 機能層 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明基材と、 前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と、 前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え、 前記色素は、 極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、 極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有し、 前記透明基材のJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であり、 前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、 前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、 温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を120時間照射する耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下であることを特徴とする光学フィルム。 【請求項2】 表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項3】 前記着色層が、過酸化物分解剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。 【請求項4】 前記耐光性試験の前後の色差ΔEabが2.0〜3.3であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項5】 前記着色層に含まれる、一重項酸素クエンチャーがジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項6】 前記着色層が、前記色素として、極大吸収波長が650〜800nmの範囲内にある第3の色材を更に含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項7】 前記着色層に含まれる色素が、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項8】 前記透明基材と前記着色層との間、または、前記透明基材の前記他方面側に、酸素透過度が10cc/m2・day・atm以下の酸素バリア層を更に備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項9】 前記機能層が、高屈折率層及び低屈折率層を含む反射防止層、または、防眩層を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項10】 帯電防止層または防汚層を更に含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルムを備える表示装置。 【請求項12】 透明基材の一方面側に着色層が積層された光学フィルムを形成するために用いられ、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、添加剤と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物であって、 前記色素が、 極大吸収波長が470〜530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜45nmである第1の色材と、 極大吸収波長が560〜620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15〜55nmである第2の色材とを含有し、 前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、 前記添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、 温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300〜400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を前記光学フィルムに対して120時間照射する、耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下であることを特徴とする、着色層形成用組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2024-03-29 |
出願番号 | P2021-006475 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
河原 正 関根 洋之 |
登録日 | 2022-11-30 |
登録番号 | 7186249 |
権利者 | TOPPANホールディングス株式会社 株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム |
発明の名称 | 光学フィルム、これを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物 |
代理人 | 弁理士法人小笠原特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人小笠原特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人小笠原特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人小笠原特許事務所 |