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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60R
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B60R
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B60R
審判 一部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  B60R
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:857  B60R
審判 一部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  B60R
審判 一部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B60R
管理番号 1411304
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-06-08 
確定日 2024-03-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7187614号発明「シートベルト用アンカー装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7187614号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11、12、13、14、15、16について、訂正することを認める。 特許第7187614号の請求項11〜16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7187614号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜13に係る特許についての出願は、平成30年5月21日に出願した特願2018−96967号の一部を令和3年6月11日に新たな特許出願としたものであって、令和4年12月2日にその特許権の設定登録がされ、同年12月12日に特許掲載公報が発行された。
この請求項11〜13に係る特許について、令和5年6月8日付けで特許異議申立人 古川 慎二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがあり、令和5年9月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月27日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされた。
なお、合議体は申立人に対し、令和5年11月9日付けで期間を指定して、特許法第120条の5第5項に規定される通知をしたが、令和5年10月27日付けの訂正請求に対する申立人からの意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年10月27日付けの訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11〜16について、訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項11に「前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含む、シートベルト用アンカー装置。」と記載されているのを、「前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、前記スタッドの頭部に前記ストッパーが係合した状態における前記スタッドの頭部を前記車体と反対側から視認可能な範囲に設けられる、シートベルト用アンカー装置。」に訂正する。

(2)訂正事項2
ア 訂正事項2−1
特許請求の範囲の請求項12に
「前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有する、請求項2または請求項11に記載のシートベルト用アンカー装置。」
とあるうち、請求項2を引用するものについて、
「前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有する、請求項2に記載のシートベルト用アンカー装置。」
に訂正する。

イ 訂正事項2−2
特許請求の範囲の請求項12に
「前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有する、請求項2または請求項11に記載のシートベルト用アンカー装置。」
とあるうち、請求項11を引用するものについて、独立形式に改め、
「車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有し、
前記ストッパーの一部を覆う部分と前記カバー部は一体である、シートベルト用アンカー装置。」
と記載し、新たに請求項14とする。

(3)訂正事項3
ア 訂正事項3−1
特許請求の範囲の請求項13に
「前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、請求項1〜12の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。」
とあるうち、請求項1〜10を引用するものについて、
「前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。」
に訂正する。

イ 訂正事項3−2
特許請求の範囲の請求項13に
「前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、請求項1〜12の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。」
とあるうち、請求項11を引用するものについて、独立形式に改め、
「車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、シートベルト用アンカー装置。」
と記載し、新たに請求項15とする。

ウ 訂正事項3−3
特許請求の範囲の請求項13に
「前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、請求項1〜12の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。」
とあるうち、請求項12を引用するものについて、独立形式に改め、
「車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有し、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、シートベルト用アンカー装置。」
と記載し、新たに請求項16とする。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項11〜13について、請求項12、13は、請求項11を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項11〜13に対応する訂正後の請求項11〜16は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項11〜16についてされたものである。
また、訂正後の請求項11〜16について、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれの請求項について別の訂正単位として扱われることを求めている。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項11の発明特定事項について限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書の段落【0037】、図1、図7(a)及び(b)の記載等に基づくものであって新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2−1について
訂正事項2−1は、訂正前の請求項12が請求項2又は11の記載を引用する記載であるところ、請求項11を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書の記載等に基づくものであって新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2−2について
訂正事項2−2のうち、訂正前の請求項12が請求項2又は11の記載を引用する記載であるところ、請求項11を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、訂正前の請求項12が引用する請求項11の「プロテクター」に含まれる「ストッパーの一部を覆う部分」及び「カバ一部」について、それらの関係を「前記ストッパーの一部を覆う部分と前記カバ一部は一体である」と限定する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、これらの訂正は、実質的な内容の変更を伴わないもの又は願書に添付した明細書の段落【0040】及び図1〜4の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書の記載等に基づくものであって新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項2についての小括
上記ア及びイより、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3−1〜3−3はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書の記載等に基づくものであって新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)小括
上記のとおり、訂正事項1〜3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11、12、13、14、15、16について、訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項11〜16に係る発明(以下「本件発明11」〜「本件発明16」という。)は、特許請求の範囲の請求項11〜16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項11】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、前記スタッドの頭部に前記ストッパーが係合した状態における前記スタッドの頭部を前記車体と反対側から視認可能な範囲に設けられる、シートベルト用アンカー装置。
【請求項12】
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有する、請求項2に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項13】
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項14】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有し、
前記ストッパーの一部を覆う部分と前記カバー部は一体である、シートベルト用アンカー装置。
【請求項15】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、シートベルト用アンカー装置。
【請求項16】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有し、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、シートベルト用アンカー装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要について
訂正前の請求項11、12に係る特許に対して、当審が令和5年9月12日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「理由(進歩性
本件特許の請求項11及び12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項11及び12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。



<引用文献等一覧>
甲第2号証:米国特許第5427412号明細書
当審引用文献:特開平6−239199号公報

<理由について>
・本件発明11、12
・引用文献 甲2、当審引用文献」

第5 当審の判断
1 甲号証
申立人が提出した甲第1号証〜甲第5号証は以下のとおりである。

[甲号証]
甲第1号証:国際公開第01/42063号及びその引用箇所の翻訳文
甲第2号証:米国特許第5427412号明細書及びその引用箇所の翻訳文
甲第3号証:米国特許第5215332号明細書及びその引用箇所の翻訳文
甲第4号証:米国特許第3437349号明細書及びその引用箇所の翻訳文
甲第5号証:特公昭50−13527号公報

以下では、「甲第1号証」〜「甲第5号証」を、それぞれ、「甲1」〜「甲5」という。

2 甲2の記載事項及び甲2発明
(1)甲2の記載
甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている({ }内は、令和5年6月8日の特許異議申立書に添付された甲2の翻訳文である。なお、下線は当審が付加した。)。

ア 記載事項
(ア)「A typical seat belt or safety restraint system includes a retractor mounted to a vehicle seat or to a vehicle body part and a length of webbing extending therefrom, a buckle and tongue. In a three-point restraint system, a portion of the webbing extends through a web guide or D-ring (used interchangeably herein) typically located at or above the height of the occupant's shoulder and mounted to the vehicle typically at the: B-pillar or to the seat. The D-ring is most usually rotatably mounted, permanently affixed to the B-pillar by a fastener.」{典型的なシートベルトまたは安全拘束システムは、車両シートまたは車両本体部分に取り付けられたリトラクタと、そこから延びる所定長さのウェビング、バックルおよびタングを含む。3点拘束システムでは、ウェビングの一部は、通常は乗員の肩の高さ以上に配置され、通常はBピラーまたはシートに取り付けられたウェブガイドまたはDリング(本明細書では同義的に使用)を通って延びる。Dリングは通常、回転可能に取り付けられ、留め具によってBピラーに恒久的に固定される。}(明細書第1欄第10〜19行)

(イ)「With reference to the drawings there is shown a removable web guide or D-ring, generally shown as 10. The web guide is adapted to be secured to and removed from a post or fastener 12 having a narrow or shaft portion 14 and a head 16. A surface of the head 16, typically a bottom 18, or groove is spaced from a cooperating support surface 20, such as the B-pillar or other portion of the vehicle or similar mounting surface on a seat. The web guide 10 includes a, preferably metal, support frame 30 which is shown in isolation in FIG. 3. A first end 32 of the frame 30 includes an oblong opening 34 comprising a wide diameter portion 36 and a narrower diameter portion 38. The wide diameter portion 36 is larger than the diameter of the head of the post or fastener, while the narrower diameter portion 38 is narrower than the head, but wider then the fastener or post shaft 14. The other end 50 of the frame includes a slit 52. The end 50 is covered by a synthetic material 56 such as plastic molded thereon, which narrows the slit 52 to a height slightly greater than the thickness of the seat belt webbing 58. A surface 60 of the material 56 provides a structural support surface having a relatively low friction coefficient, to permit the webbing to easily slide thereon. The frame may be generally flat or as shown in FIGS. 3 and 5, the frame may be bent along a line generally shown as 54. In this way, the upper portion of the frame can lie generally flat against the support surface, while the end 50, which supports the webbing, is bent outwardly to present the seat belt webbing in a preferred orientation relative to the occupant.
The middle portion 62 of the frame includes a first and a second opening 64 and 68 and a stamped upraised boss 70, the purpose of which will be described below. The frame 30 is enclosed by a two-part cover 80. The cover includes a upper cover portion 82 having a domed profile, that is, it is higher along the central portion, generally shown as 84, then at it sides 86. The covering includes a lower cover portion 90 that matingly engages the upper portion cover with the coated end 50 extending therefrom. The two cover portions are connected by a plurality if fasteners 94. The cover portions may be attached together by other means such as by ultrasonic welding or interfitting members that snap together. The covert portions 82 and 90 include interfitting projections 83 and 91 to provide for proper alignment of the cover portions. The upper cover portion has an oval opening 96 which as described receives a button.
Fitted to the frame is a pivoting lever generally shown as 100. The lever includes a blocking end 102, that is movable from a first position, laying parallel to the frame to a second position (see phantom line) upwardly raise therefrom. The motion of the blocking end of the lever is generally shown by arrow 104. As can be seen from FIG. 5, the tip 106 of the blocking end 102 of the lever 100 is essentially flat and the blocking end has a central opening 110 therein. The portion of the blocking end opposite, the tip 106 includes an integrally formed rod or bar 112. Extending from the rod is another portion 122 of the lever 100 that includes a button portion generally shown as 120. The button portion is formed in a hollowed out part of lever portion 122. The lower surface 124 of lever portion 122 is tapered. A compression spring 126 is fit over the boss 70 and contacts the underside 130 of the button 120 to provide an upward bias force thereto. A surface 132 of the frame, proximate the intersection of the lower surface 124 and the rod 112 provides a fulcrum 134 about which the blocking end is rotated to its blocking position in response to the spring bias force. The lever is maintained in position by a bent metal bracket generally shown as 150 in FIGS. 6, 7, and 8. The bracket includes a U-shaped portion 152, the bottom 154 of which fits flat against the frame and within opening 110. An end 153 of the bracket is slightly spaced from the blocking end 102 to permit it to be rotated over the tip of the end 153. Extending from the U-shaped portion is a curved member 160 having an elongated end or tab 162. The bottom of the U-shaped portion includes an opening 156. As can be seen, the curved portion 160 entraps the bar or rod 112 and the extending tab 162 is fitted in opening 68. The bracket is further positioned in place by use of a fastener such as a rivet 170 received through opening 64. As can be seen, the lower cover portion is provided with a recess 172 to receive an end of the rivet.
When it is desired to mount the web guide 10 to the post or fastener 12, the post head 16 is positioned within the larger diameter portion 36 of the opening 34, and the web guide is laid against support surface 36. In this orientation, the top of the head is below the blocking end of the lever, and urges the lever away from the frame. Further, in this position, the side 176 of the frame 30 is below surface 18 of the post 12. Thereafter, the web guide is slid downwardly, such that the narrow portion 14 of the post enters the narrowed diameter portion 38 of the opening 34. In this position, the blocking end 102 returns to its flat orientation against the frame and is positioned near or gently touching a side of the head 16. As can be seen, in this configuration, the web guide 10 is blockingly or lockingly mated with the post or fastener. In addition, the web guide, because of the orientation of the blocking end to the fastener and because the frame is positioned below the head of the post or fastener, can be rotated freely about the narrow portion 14 of the post or fastener.」{図面を参照すると、概して10として示される、取り外し可能なウェブガイドまたはDリングが示される。ウェブガイドは、細い又はシャフト部分14及びヘッド16を有するポスト又は締結具12に固定され、そこから取り外されるように適合される。ヘッド16の表面、典型的には底部18、または溝は、車両のBピラーまたは他の部分などの協働する支持面20、または座席上の同様の取り付け面から離間される。ウェブガイド10は、図3に単独で示されている、好ましくは金属製のサポートフレーム30を含む。フレーム30の第1の端部32は、幅広の直径部分36およびより狭い直径部分38を含む長円形の開口部34を含む。幅広の直径部分36は支柱または締結具の頭部の直径よりも大きく、一方、幅狭の直径部分38は頭部よりも狭いが、締結具または支柱シャフト14よりも広い。フレームの他端50は、スリット52を含む。端部50は、その上に成形されたプラスチックなどの合成材料56によって覆われ、スリット52をシートベルトウェビング58の厚さよりもわずかに大きい高さに狭める。材料56の表面60は比較的低い摩擦係数を有する構造支持表面を提供し、ウェビングがその上を容易に摺動することを可能にする。フレームは概して平坦であってもよく、または図3および図5に示されるように、フレームは、概して54として示される線に沿って曲げられてもよい。このようにして、フレームの上部は支持面に対してほぼ平坦に位置することができ、一方、ウェビングを支持する端部50は、乗員に対して好ましい向きでシートベルトウェビングを提示するように外側に曲げられる。
フレームの中央部分62は第1および第2の開口64および68と、打ち抜かれた隆起ボス70とを含み、その目的は以下に説明される。フレーム30は、2つの部分からなるカバー80によって囲まれている。カバーはドーム状の外形を有する上部カバー部分82を含み、すなわち、全体的に84として示される中央部分に沿って高く、その後、側面86となる。カバーは、コーティングされた端部50がそこから延在する状態で、上側部分カバーと嵌合係合する下側カバー部分90を含む。2つのカバー部分は、複数の締結具94によって接続される。カバー部分は、超音波溶接または互いにスナップ嵌めする相互嵌合部材などの他の手段によって互いに取り付けられてもよい。隠れ部分82および90はカバー部分の適切な位置合わせを提供するために、嵌合突起83および91を含む。上部カバー部分は、説明したようにボタンを受け入れる楕円形の開口部96を有する。
フレームに取り付けられているのは、全体的に100として示されている旋回レバーである。レバーはフレームに平行に配置された第1の位置から、フレームから上方に上昇する第2の位置(仮想線を参照)まで移動可能なブロック端部102を含む。レバーのブロック端部の動きは、概して矢印104によって示される。図5から分かるように、レバー100のブロック端部102の先端部106は本質的に平坦であり、ブロック端部は、その中に中央開口部110を有する。先端部106の反対側のブロック端部の部分は、一体的に形成されたロッドまたはバー112を含む。ロッドから延びるのは、概して120として示されるボタン部分を含むレバー100の別の部分122である。ボタン部は、レバー部122の空洞部に形成されている。レバー部分122の下面124はテーパ状である。圧縮バネ126は、ボス70の上に嵌合され、ボタン120の下側130に接触して、上向きの付勢力を提供する。下面124とロッド112との交差部に近接するフレームの面132は支点134を提供し、その周りで、ブロック端部は、ばね付勢力に応答してその阻止位置まで回転される。レバーは、図6、図7、および図8に全体的に150として示される曲げられた金属ブラケットによって、所定の位置に維持される。ブラケットはU字形部分152を含み、その底部154は、開口部110内でフレームに対して平坦に嵌合する。ブラケットの端部153はブロック端部102からわずかに離間されており、端部153の先端の上で回転することを可能にする。U字形部分から伸びているのは、細長い端部またはタブ162を有する湾曲部材160である。U字形部分の底部は、開口156を含む。図から分かるように、湾曲部分160はバーまたはロッド112を捕捉し、延長タブ162は、開口部68に嵌合される。ブラケットは、開口部64を通って受容されるリベット170などの締結具の使用によって、適所にさらに配置される。図から分かるように、下側カバー部分には、リベットの端部を受け入れるための凹部172が設けられている。
ウェブガイド10をポスト又は締結具12に取り付けることが望まれる場合、ポストヘッド16は開口部34のより大きな直径部分36内に配置され、ウェブガイドは支持面36に当接して置かれる。この位置づけでは、ヘッドの頂部がレバーのブロック端部の下にあり、レバーをフレームから離れるように付勢する。さらに、この位置では、フレーム30の側面176がポスト12の表面18の下にある。その後、ウェブガイドはポストの狭い部分14が開口部34の狭い直径部分38に入るように、下方にスライドされる。この位置では、ブロック端部102がフレームに対してその平坦な向きに戻り、ヘッド16の側部の近くに、またはそれに穏やかに接触するように位置決めされる。見て分かるように、この構成では、ウェブガイド10がポストまたは締結具とブロック状にまたはロック式に嵌合される。加えて、ウェブガイドは、締結具に対するブロック端部の位置づけにより、およびフレームが支柱または締結具の頭部の下に位置付けられるため、支柱または締結具の狭い部分14の周りで自由に回転することができる。}(明細書第2欄第19行〜第3欄第57行)

イ 図面
(ア)図1




(イ)図2




(ウ)図3




(エ)図4




(オ)図5




(2)甲2の認定事項
ア 明細書第2欄第21〜27行の「ウェブガイドは、細い又はシャフト部分14及びヘッド16を有するポスト又は締結具12に固定され、そこから取り外されるように適合される。ヘッド16の表面、典型的には底部18、または溝は、車両のBピラーまたは他の部分などの協働する支持面20、または座席上の同様の取り付け面から離間される。」との記載及び図4より、「締結具12は、車両のBピラー又は座席に取り付けられているとともに、シャフト部分14及びシャフト部分14よりも大径のヘッド16を有する」ものと認められる。

イ 明細書第2欄第27〜42行の「ウェブガイド10は、図3に単独で示されている、好ましくは金属製のサポートフレーム30を含む。フレーム30の第1の端部32は、幅広の直径部分36およびより狭い直径部分38を含む長円形の開口部34を含む。幅広の直径部分36は支柱または締結具の頭部の直径よりも大きく、一方、幅狭の直径部分38は頭部よりも狭いが、締結具または支柱シャフト14よりも広い。フレームの他端50は、スリット52を含む。端部50は、その上に成形されたプラスチックなどの合成材料56によって覆われ、スリット52をシートベルトウェビング58の厚さよりもわずかに大きい高さに狭める。材料56の表面60は比較的低い摩擦係数を有する構造支持表面を提供し、ウェビングがその上を容易に摺動することを可能にする。」との記載及び図1〜5より、「サポートフレーム30は、シートベルトウェビング58が挿通されるスリット52を含む端部50と、締結具の頭部の直径よりも大きい幅広の直径部分36及び幅広の直径部分36からスリット52と反対方向に延びるとともに、締結具の頭部よりも狭いが、締結具のシャフト14よりも広い幅狭の直径部分38を有する開口部34とを含む」ものと認められる。

ウ 明細書第2欄第52〜58行の「フレーム30は、2つの部分からなるカバー80によって囲まれている。カバーはドーム状の外形を有する上部カバー部分82を含み、すなわち、全体的に84として示される中央部分に沿って高く、その後、側面86となる。カバーは、コーティングされた端部50がそこから延在する状態で、上側部分カバーと嵌合係合する下側カバー部分90を含む。」との記載及び図1、4、5より、「上部カバー部分82は、サポートフレーム30の車両のBピラー又は座席と反対側の表面に取り付けられており、レバー100のブロック端部102を覆っている」と認められる。

エ 明細書第2欄第35〜39行の「フレームの他端50は、スリット52を含む。端部50は、その上に成形されたプラスチックなどの合成材料56によって覆われ、スリット52をシートベルトウェビング58の厚さよりもわずかに大きい高さに狭める。」との記載及び図4より、「合成材料56は、サポートフレーム30の他端50における車両のBピラー又は座席側及びその反対側の表面並びにスリット52の内側の縁を覆っている」と認められる。

オ 明細書第2欄第67行〜第3欄第11行の「フレームに取り付けられているのは、全体的に100として示されている旋回レバーである。レバーはフレームに平行に配置された第1の位置から、フレームから上方に上昇する第2の位置(仮想線を参照)まで移動可能なブロック端部102を含む。レバーのブロック端部の動きは、概して矢印104によって示される。図5から分かるように、レバー100のブロック端部102の先端部106は本質的に平坦であり、ブロック端部は、その中に中央開口部110を有する。先端部106の反対側のブロック端部の部分は、一体的に形成されたロッドまたはバー112を含む。ロッドから延びるのは、概して120として示されるボタン部分を含むレバー100の別の部分122である。」との記載及び第3欄第38〜51行の「ウェブガイド10をポスト又は締結具12に取り付けることが望まれる場合、ポストヘッド16は開口部34のより大きな直径部分36内に配置され、ウェブガイドは支持面36に当接して置かれる。この位置づけでは、ヘッドの頂部がレバーのブロック端部の下にあり、レバーをフレームから離れるように付勢する。さらに、この位置では、フレーム30の側面176がポスト12の表面18の下にある。その後、ウェブガイドはポストの狭い部分14が開口部34の狭い直径部分38に入るように、下方にスライドされる。この位置では、ブロック端部102がフレームに対してその平坦な向きに戻り、ヘッド16の側部の近くに、またはそれに穏やかに接触するように位置決めされる。」との記載並びに図4、5より、「レバー100のブロック端部102は、サポートフレーム30の車両のBピラー又は座席と反対側の表面に取り付けられており、締結具の狭い部分14が開口部34の狭い直径部分38に入った位置でヘッド16に穏やかに接触する」ものであると認められる。

(3)甲2発明
上記(1)及び(2)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両のBピラー又は座席に取り付けられた、シャフト部分14及びシャフト部分14よりも大径のヘッド16を有する締結具12に固定されるウェブガイド10であって、
シートベルトウェビング58が挿通されるスリット52を含む端部50と、締結具の頭部の直径よりも大きい幅広の直径部分36及び幅広の直径部分36からスリット52と反対方向に延びるとともに、締結具の頭部よりも狭いが、締結具のシャフト14よりも広い幅狭の直径部分38を有する開口部34とを含むサポートフレーム30と、
サポートフレーム30の車両のBピラー又は座席と反対側の表面に取り付けられており、レバー100のブロック端部102を覆っている上部カバー部分82と、
サポートフレーム30の他端50における車両のBピラー又は座席側及びその反対側の表面並びにスリット52の内側の縁を覆っている合成材料56と、
サポートフレーム30の車両のBピラー又は座席と反対側の表面に取り付けられており、締結具の狭い部分14が開口部34の狭い直径部分38に入った位置でヘッド16に穏やかに接触するレバー100のブロック端部102と、
を備えるウェブガイド10。」

3 本件発明11について
(1)対比
甲2発明と本件発明11とを対比すると、次のことがいえる。
ア 甲2発明の「車両のBピラー又は座席」は、車体の一部であるといえるから、本件発明11の「車体」に相当する。
また、前者の「締結具12」は、後者の「スタッド」に相当する。
そして、前者の「ウェブガイド10」と後者の「シートベルト用アンカー装置」とは、シートベルト用の装置である点で共通する。
そうすると、前者の「車両のBピラー又は座席に取り付けられた、シャフト部分14及びシャフト部分14よりも大径のヘッド16を有する締結具12に固定されるウェブガイド10」と後者の「車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置」とは、「車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用装置」という点で共通する。

イ 前者の「端部50」は、そのスリット52にシートベルトウェビング58が挿通されるものであるから、後者の「シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部」と、「シートベルトウエビングが取り付けられる部分」である点で共通する。
また、前者の「幅広の直径部分36」は後者の「拡大領域」に、前者の「幅狭の直径部分38」は後者の「ロック領域」に、それぞれ相当するから、前者の「開口部34」は後者の「開口」に相当する。
そうすると、前者の「シートベルトウェビング58が挿通されるスリット52を含む端部50と、締結具の頭部の直径よりも大きい幅広の直径部分36及び幅広の直径部分36からスリット52と反対方向に延びるとともに、締結具の頭部よりも狭いが、締結具のシャフト14よりも広い幅狭の直径部分38を有する開口部34とを含むサポートフレーム30」は、後者の「シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレート」と、「シートベルトウエビングが取り付けられる部分を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記部分と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレート」という点で共通する。

ウ 前者の「上部カバー部分82」と「合成材料56」とを合わせたものは、車両のBピラー又は座席と反対側の表面に取り付けられており、他の部材を覆うことにより保護しているといえるから、後者の「前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクター」に相当する。

エ 前者の「レバー100のブロック端部102」は、サポートフレーム30の車両のBピラー又は座席と反対側の表面に取り付けられており、締結具の狭い部分14が開口部34の狭い直径部分38に入った位置でヘッド16に穏やかに接触するものであり、「穏やかに接触する」ことは後者の「係合する」ことに相当するから、後者の「前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパー」に相当する。

オ 前者の「上部カバー部分82」は、レバー100のブロック端部102を覆っているから、後者のプロテクターにおける「ストッパーの一部を覆う部分」に相当する。
また、前者の「合成材料56」は、サポートフレーム30の他端50におけるスリット52の内側の縁を覆っているから、後者のプロテクターにおける「前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部」と、「前記シートベルトウエビングが取り付けられる部分の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部」である点で共通する。

カ 上記ア〜オより、本件発明11と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「 車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用装置であって、
シートベルトウエビングが取り付けられる部分を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記部分と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記部分の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含む、シートベルト用装置。」

<相違点11−1>
本件発明11は、シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するシートベルト用アンカー装置であるのに対して、甲2発明は、シートベルトウェビング58が挿通されるスリット52を含む端部50を有するものの、ウェブガイド10である点。

<相違点11−2>
プロテクターについて、本件発明11では、「前記スタッドの頭部に前記ストッパーが係合した状態における前記スタッドの頭部を前記車体と反対側から視認可能な範囲に設けられる」のに対して、甲2発明では、そのような特定はされていない点。

(2)相違点の判断
事案に鑑みて、まず、相違点11−2について検討する。
シートベルト用アンカー装置におけるプロテクターとして、「前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、前記スタッドの頭部に前記ストッパーが係合した状態における前記スタッドの頭部を前記車体と反対側から視認可能な範囲に設けられ」たものは、提出された他のいずれの証拠(甲1、3〜5)及び当審引用文献にも記載されておらず、また、自明のものともいえない。
したがって、甲2発明において、相違点11−2に係る本件発明11の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3)小括
そうすると、相違点11−1について検討するまでもなく、本件発明11は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明12について
(1)対比
甲2発明と本件発明12とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。

<相違点12>
プロテクターについて、本件発明12では、「前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられて前記車体と反対側で前記開口上に配置される橋架部を含む」のに対して、甲2発明では、そのような特定はされていない点。

(2)相違点の判断
相違点12について検討する。
シートベルト用アンカー装置におけるプロテクターとして、「前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられて前記車体と反対側で前記開口上に配置される橋架部を含」み、「前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含む」ものは、提出された他のいずれの証拠(甲1、3〜5)及び当審引用文献にも記載されておらず、また、自明のものともいえない。
したがって、甲2発明において、相違点12に係る本件発明12の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3)小括
そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 本件発明13、15、16について
(1)対比
甲2発明と本件発明13、15、16とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。

<相違点13>
プロテクターについて、本件発明13、15、16では、「前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する」のに対して、甲2発明では、そのような特定はされていない点。

(2)相違点の判断
相違点13について検討する。
シートベルト用アンカー装置において、「前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する」ものは、提出された他のいずれの証拠(甲1、3〜5)及び当審引用文献にも記載されておらず、また、自明のものともいえない。
したがって、甲2発明において、相違点13に係る本件発明13、15、16の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3)小括
そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件発明13、15、16は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 本件発明14について
(1)対比
甲2発明と本件発明14とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。

<相違点14>
プロテクターについて、本件発明14では、「前記ストッパーの一部を覆う部分と前記カバー部は一体である」のに対して、甲2発明では、そのような特定はされていない点。

(2)相違点の判断
相違点14について検討する。
シートベルト用アンカー装置におけるプロテクターとして、「前記ストッパーの一部を覆う部分と前記カバー部は一体である」ものは、提出された他のいずれの証拠(甲1、3〜5)及び当審引用文献にも記載されておらず、また、自明のものともいえない。
したがって、甲2発明において、相違点14に係る本件発明14の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3)小括
そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張する特許異議申立理由の概要
(1)甲1に記載された発明を主引用発明とする異議申立理由
本件特許の訂正前の請求項11〜13に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正前発明11」〜「本件訂正前発明13」という。)は、甲1に記載された発明と同一である。
また、本件訂正前発明11〜13は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)甲2に記載された発明を主引用発明とする異議申立理由
本件訂正前発明11、12は、甲2に記載された発明と同一である。
また、本件訂正前発明13は甲2及び甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)甲3に記載された発明を主引用発明とする異議申立理由
本件訂正前発明11、12は甲3〜5に記載された発明に基いて、本件訂正前発明13は甲3〜5及び甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 対比・判断
(1)甲1に記載された発明を主引用発明とする場合について
ア 本件発明11について
本件訂正前発明11に対応する本件発明11と甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)とを対比すると、少なくとも上記相違点11−2と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明11は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明12、14について
本件訂正前発明12に対応する本件発明12と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点12と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明12は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件訂正前発明12に対応する本件発明14と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点14と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明14は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 本件発明13、15、16について
本件訂正前発明13に対応する本件発明13、15、16と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点13と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明13、15、16は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)甲2に記載された発明を主引用発明とする場合について
上記第5の3、4、6で示したように、本件訂正前発明11、12に対応する本件発明11、12、14は、甲2発明と相違するので、甲2発明ではない。
また、上記第5の5で示したように、本件訂正前発明13に対応する本件発明13、15、16は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲3に記載された発明を主引用発明とする場合について
ア 本件発明11について
本件訂正前発明11に対応する本件発明11と甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。)とを対比すると、少なくとも上記相違点11−2と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明11は、甲3発明及び甲4、5に記載された発明(以下、それぞれ「甲4発明」、「甲5発明」という。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明12、14について
本件訂正前発明12に対応する本件発明12と甲3発明とを対比すると、少なくとも上記相違点12と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明12は、甲3〜5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正前発明12に対応する本件発明14と甲3発明とを対比すると、少なくとも上記相違点14と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明14は、甲3〜5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 本件発明13、15、16について
本件訂正前発明13に対応する本件発明13、15、16と甲3発明とを対比すると、少なくとも上記相違点13と同じ点で相違し、上記説示したとおりであるから、本件発明13、15、16は、甲3〜5発明及び甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明11〜16に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明11〜16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられて前記車体と反対側で前記開口上に配置される橋架部を含むプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記橋架部は前記ループ固定部との間に間隔を形成して設けられ、前記ループは前記ループ固定部と前記橋架部との間で前記開口に挿入されている、シートベルト用アンカー装置。
【請求項2】
前記プロテクターは、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含む、請求項1に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項3】
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記第2板状部は、前記ストッパーが弾性変形することで前記第1表面から離れる方向に変位可能であり、
前記シートベルト用アンカー装置が前記スタッドに固定される前後で、前記アンカープレートから前記プロテクターの上面までの高さは、前記アンカープレートから前記第2板状部の最上部までの高さよりも高く設定されており、
前記シートベルト用アンカー装置が前記スタッドに固定される途中で、前記第2板状部が、前記頭部に押圧されて前記第1表面から離れる方向に変位し、前記第2板状部の少なくとも一部が前記プロテクターの上面を越える、請求項1または2に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項4】
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられた第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部とを含み、
前記プロテクターは、前記アンカープレートの第1表面側から前記第2板状部に当接する矯正部を含む、請求項1〜3の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項5】
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記第2板状部は、前記ストッパーが弾性変形することで前記第1表面から離れる方向に変位可能であり、
前記橋架部には、前記ストッパーの第2板状部と前記橋架部との間に工具を差し込むための凹部が設けられている、請求項1〜4の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項6】
前記ストッパーは、前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに前記スタッドの頭部を挿入方向に案内する案内片を含み、
前記案内片は、前記開口の拡大領域内に位置し、前記ロック領域から前記拡大領域に向かって前記車体に近づくように傾斜する、請求項1〜5の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項7】
前記プロテクターは、前記開口の拡大領域の両側に位置する一対の規制部を含み、これらの規制部は、前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに、前記スタッドの軸部が前記案内片に接触しないように前記スタッドの頭部の移動量を規制する、請求項6に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項8】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体とは反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記第2板状部は、前記ストッパーが弾性変形することで前記第1表面から離れる方向に変位可能であり、
前記シートベルト用アンカー装置が前記スタッドに固定される前後で、前記アンカープレートから前記プロテクターの上面までの高さは、前記アンカープレートから前記第2板状部の最上部までの高さよりも高く設定されており、
前記シートベルト用アンカー装置が前記スタッドに固定される途中で、前記第2板状部が、前記スタッドの頭部に押圧されて前記第1表面から離れる方向に変位し、前記第2板状部の少なくとも一部が前記プロテクターの上面を越える、シートベルト用アンカー装置。
【請求項9】
前記プロテクターは、前記第2板状部の両側に位置する一対の側壁を含み、前記プロテクターの上面は、前記一対の側壁の上面の少なくとも一方である、請求項8に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項10】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体とは反対側の第1表面に取り付けられて前記車体と反対側で前記開口上に配置された橋架部を含むプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記第2板状部は、前記ストッパーが弾性変形することで前記第1表面から離れる方向に変位可能であり、
前記橋架部には、前記ストッパーの第2板状部と前記橋架部との間に工具を差し込むための凹部が設けられている、シートベルト用アンカー装置。
【請求項11】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、前記スタッドの頭部に前記ストッパーが係合した状態における前記スタッドの頭部を前記車体と反対側から視認可能な範囲に設けられる、シートベルト用アンカー装置。
【請求項12】
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有する、請求項2に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項13】
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項14】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有し、
前記ストッパーの一部を覆う部分と前記カバー部は一体である、シートベルト用アンカー装置。
【請求項15】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方向に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、シートベルト用アンカー装置。
【請求項16】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトウエビングの一端に形成したループを固定するループ固定部を有するアンカープレートであって、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記ループ固定部と反対方口に延びるとともに前記スタッドの頭部が前記拡大領域から進入不能でかつ前記スタッドの軸部が進入可能なロック領域とを有する開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートの前記車体と反対側の第1表面に取り付けられるプロテクターと、
前記アンカープレートの第1表面に取り付けられて前記スタッドの軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記スタッドの頭部と係合するストッパーと、を備え、
前記プロテクターは、前記ストッパーの一部を覆う部分と、前記ループ固定部の少なくとも前記開口側の縁を覆うカバー部を含み、
前記カバー部は、前記アンカープレートの前記車体側の第2表面上まで設けられるとともに前記ループ固定部の前記開口側の縁を覆う部分を有し、
前記ストッパーは、前記アンカープレートの第1表面と当接する第1板状部と、前記第1表面と隙間を隔てて前記開口上に設けられる第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結する連結部を含み、
前記プロテクターは、前記第2板状部に対して前記第1表面側に位置する部分を有する、シートベルト用アンカー装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2024-03-12 
出願番号 P2021-098181
審決分類 P 1 652・ 832- YAA (B60R)
P 1 652・ 121- YAA (B60R)
P 1 652・ 855- YAA (B60R)
P 1 652・ 113- YAA (B60R)
P 1 652・ 854- YAA (B60R)
P 1 652・ 857- YAA (B60R)
P 1 652・ 851- YAA (B60R)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 筑波 茂樹
特許庁審判官 沼生 泰伸
中村 則夫
登録日 2022-12-02 
登録番号 7187614
権利者 芦森工業株式会社
発明の名称 シートベルト用アンカー装置  
代理人 弁理士法人有古特許事務所  
代理人 弁理士法人有古特許事務所  

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