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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1411370
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-03-11 
確定日 2024-06-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第7366538号発明「中空パッケージおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7366538号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許7366538号の請求項1〜5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年12月27日に出願され、令和5年10月13日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月23日に特許公報が発行された。その後、本件特許の請求項1〜5に係る特許に対し、令和6年3月11日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。その後、令和6年3月29日付けでこの特許異議申立手続についての手続補正指令書(方式)が異議申立人に送付され、令和6年4月10日に手続補正書(方式)が提出された。

第2 本件発明
特許7366538号の請求項1〜5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板上に、少なくとも1種の有機材料により構成された隔壁と天板とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部を設ける工程により得られた基板を、封止用樹脂組成物を0.1MPa以上、5.0MPa未満の圧力で圧縮成形し、前記基板、前記隔壁および前記天板を樹脂封止する工程
を含む、中空パッケージの製造方法であって、
半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子が前記中空部内に配置されるように前記素子が前記基板上に搭載されており、
前記封止用樹脂組成物が、
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂、および
(B)無機充填材
を含み、
前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含み、
前記封止用樹脂組成物中の成分(A)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して2質量%以上40質量%以下であり、
前記封止用樹脂組成物中の成分(B)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して50質量%以上95質量%以下であり、
前記成分(B)を目開き20μmの篩を通したときの篩下画分の含有量が、前記成分(B)全体に対して80質量%以上100質量%以下であり、
前記有機材料が、光酸発生剤とエポキシ樹脂とを含有するネガ型感光性ドライフィルムレジストである、中空パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記成分(B)がシリカを含む、請求項1に記載の中空パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記封止用樹脂組成物が、フェノール樹脂硬化剤をさらに含む、請求項1または2に記載の中空パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記封止用樹脂組成物が、硬化促進剤をさらに含む、請求項1乃至3いずれか1項に記載の中空パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記天板の厚さが10μm以上50μm以下であり、
前記隔壁の厚さが5μm以上30μm以下であり、前記隔壁の幅が5μm以上200μm以下であり、
前記基板の素子搭載面に垂直な断面における前記中空部の最長幅が60μm以上1000μm以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の中空パッケージの製造方法。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証〜甲第4号証を提出し、令和6年4月10日提出の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載された以下の申立理由により、請求項1〜5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

1 申立理由
本件発明1〜5は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2015/151514号
甲第2号証:特開2016−74920号公報
甲第3号証:国際公開第2018/194154号
甲第4号証:特開2014−106326号公報

以下、甲第1号証〜甲第4号証を、それぞれ「甲1」〜「甲4」という。

第4 甲各号証
1 甲1の記載と甲1に記載された発明
(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。(下線は当審において付した。以下、同じ。)
「[0001] 本発明は、回路部材および実装構造体に関し、内部に中空部(空間)を有する回路部材および実装構造体に関する。」

「発明が解決しようとする課題
[0005] 特許文献1および2の方法では、蓋部と、圧電体上の電極との間に、電極を取り囲むようにリブパターンを設けて、回路部材が製造される。図7に示すように、この回路部材200は、複数のバンプ230を介して配線基板220に実装される。リブ213内には、導体215が貫通しており、この導体215とバンプ230とにより、回路部材200の電極212と配線基板220とが導通される。
[0006] 配線基板220に実装された回路部材200は、樹脂封止材240で封止される。例えば、トランスファー成型では、液状化または軟化した熱硬化性樹脂を含むモールド材が金型に圧入される。
[0007] バンプ230の高さは、通常、50〜60μmである。液状化または軟化したモールド材は、バンプ230の間を通り抜けて、電子部品200の蓋部214と配線基板220との間にも充填される。このとき、モールド材は、蓋部214を強く押し上げる。その結果、蓋部214は変形し、図7に示すように、電極212と蓋部214との間の空間216が狭くなる。この状態でモールド材が硬化して、樹脂封止材240が形成されると、回路部材の作用が妨げられる。液状化または軟化したモールド材による圧力が大きい場合には、蓋部214が破損することも懸念される。蓋部214が破損すると、空間216内に液状化または軟化したモールド材が侵入し、空間216を十分に確保することが難しくなる。
[0008] 携帯電話やデジタルカメラをはじめとする各種電子機器の小型化により、回路部材200自体の薄型化も求められている。そのため、蓋部214の厚みはもとより、空間216の高さも小さくする必要がある。この場合、蓋部214の変形が回路部材の性能に与える影響は、さらに大きくなる。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明は、蓋部と機能領域との間に十分な空間を確保することのできる回路部材および実装構造体を提供することを目的とする。
[0010] すなわち、本発明の一局面は、機能領域を備える素子と、前記機能領域に対向するように配置された平板状の蓋部と、前記機能領域と前記蓋部との間に空間を形成するために、前記機能領域を取り囲むように形成されたリブと、を備え、前記蓋部は、厚さが100μm以下であるシートSを含み、前記シートSの175℃における引張り弾性率Esが10GPa以上である、回路部材に関する。」

「発明の効果
[0014] 本発明によれば、回路部材を樹脂封止した場合であっても、蓋部と機能領域との間に十分な空間を確保することができる。」

「[0016][回路部材]
本発明に係る回路部材は、機能領域を備える素子と、機能領域に対向するように配置された平板状の蓋部と、機能領域と蓋部との間に空間を形成するために、機能領域を取り囲むように形成されたリブと、を備える。回路部材は、素子と導通する導体を備えていてもよい。蓋部は、厚さが100μm以下であるシートSを含む。シートSの175℃における引張り弾性率Esは、10GPa以上である。
[0017] 回路部材は、例えば、内部に空間を有する電子部品である。回路部材としては、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)チップ、BAW(Bulk Acoustic Wave)チップ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、CMOSセンサーやCCDセンサーなどに代表されるイメージセンサー等が挙げられる。
[0018] 以下、回路部材について、SAWチップを例に挙げ、図1Aおよび1Bを参照しながら具体的に説明する。図1Bは、図1Aの変形例であり、接着層2の有無、素子1に対する蓋部4の大きさ、および、素子1とリブ3との位置関係が異なること以外、図1Aと同様である。
[0019] 回路部材(SAWチップ)10は、機能領域FA(圧電体1a上に形成された、少なくとも一対の櫛形電極1bを備える領域)を備える素子(SAWフィルタ)1と、機能領域FAに対向するように配置された平板状の蓋部4と、機能領域FAと蓋部4との間に空間6を形成するために、機能領域FAを取り囲むように形成されたリブ3を備える。回路部材は、さらに、素子1(ここでは、素子1を構成する櫛形電極1b)と導通する導体5(5aおよび5b)を備えている。
[0020] 回路部材がBAWチップである場合、素子1は、薄膜状の圧電体(圧電薄膜)の上下面を2つの電極で挟み込んだ構造のBAWフィルタであり、機能領域FAは、一方の面のうち電極を備えた領域である。回路部材がMEMSである場合、その機能領域FAは、カンチレバー(ハンマー)を備えた領域や可動電極を備えた領域などであり得る。」

「[0089] 実装構造体の一実施形態を図4Aおよび4Bに示す。図4Aでは、第二回路部材(回路部材10)は、蓋部4と第一回路部材20とが、リブ3を貫通する導体5bと導通するバンプ30を介して接合することにより、第一回路部材20に実装されている。図4Bは、図4Aの変形例であり、接着層2の有無、素子1に対する蓋部4の大きさ、および、素子1とリブ3との位置関係が異なること以外、図4Aと同様である。
[0090] 実装構造体100は、回路部材10を封止するとともに、蓋部4と第一回路部材20との間に充填される樹脂封止材8Bを有していてもよい。樹脂封止材8Bとしては、樹脂封止材8Aと同様のものが例示される。樹脂封止材8Aにより封止された回路部材10を第一回路部材20に実装した後、さらに樹脂封止材8Bにより、回路部材10を封止しても良い。」

「[0100][実装構造体の製造方法]
実装構造体の製造方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、図4Aに示す実装構造体を製造する方法を示している。実装構造体の構成および製造方法はこれに限定されない。
[0101] まず、第二回路部材を準備する(図6(a))。第二回路部材は、例えば、回路部材10である。回路部材10が、樹脂封止材8Aにより封止されている場合(図2Cおよび2D参照)、圧電体1aの主面上および/または蓋部4の主面上に存在する樹脂封止材8Aを、各主面に沿って削りとり、圧電体1aおよび/または蓋部4を露出させておいても良い。
[0102] 次に、蓋部4の導体5と導通する位置に、バンプ30を設置するための導通パッド(図示せず)、および、バンプ30を形成する(図6(b))。バンプ30は、インクジェット法やスクリーン印刷、転写法、メッキ法などにより、蓋部4または第一回路部材20の所定の位置に形成することができる。
[0103] 次いで、第一回路部材20に、第二回路部材10をバンプ30を介して搭載し、加熱工程および冷却工程を経て、第二回路部材10を第一回路部材20に実装する。回路部材10が、図2A〜2Dに示すように、テープ材7に保持されている場合、テープ材7を回路部材10から剥離した後、回路部材10を第一回路部材20に実装する。テープ材7の剥離は、バンプ30を形成する前であっても良いし、バンプ30を形成した後、第一回路部材20に搭載する前であっても良いし、第一回路部材20に搭載した後であっても良い。
[0104] 第一回路部材20に第二回路部材10が複数実装されている場合、第二回路部材10同士の間、および、蓋部4と第一回路部材20との間に、モールド材(未硬化または半硬化状態の樹脂封止材8B)を充填した後、硬化させて、第二回路部材10を封止しても良い(図6(c))。
[0105] 封止方法は特に限定されず、上記の方法が例示できる。なかでも、寸法精度の点で、トランスファー成型法を用いることが好ましい。トランスファー成型法では、モールド材が金型に圧入される際、蓋部4にモールド材による圧力がかかり、空間6が変形し易い。蓋部4は、高い引張り弾性率をもつシートSを含むため、高い圧力(例えば、0.1MPa以上、生産性等の観点からは1MPa以上、さらには5MPa以上である。上限は、例えば、20MPa以下、さらには15MPa以下であって良い。)がかかる場合であっても、蓋部4の変形が小さくなる。
[0106] モールド材の硬化は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは100〜175℃で、1〜15分間行う。必要に応じて、100〜200℃、30分〜24時間のポストキュアを行っても良い。」

「[0108][実施例]
次に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
[0109]<実施例1>
SAWフィルタ(厚み200μm、大きさ1.4×1.1mm)と、リブ(Rh:10μm、Rw:10μm)と、SAWフィルタ上の櫛形電極と導通する導体と、を備えたSAWチップを準備した。なお、リブの材質は感光性ポリイミド樹脂であり、リブで囲まれた部分の面積Sは、1mm2であった。
[0110] ついで、蓋部の材料(シート材料)として、GFRP基板1(シートSP)およびGFRP基板2(シートSP)の積層体を準備した。GFRP基板1およびGFRP基板2に含まれる樹脂は半硬化状態であった。GFRP基板1がリブと接するよう、積層体をリブの端部に載置した。次いで、70℃に加熱しながら加圧して、GFRP基板1およびGFRP基板2の積層体とリブの端部とを接着した。その後、180℃に加熱してGFRP基板1およびGFRP基板2に含まれる樹脂を硬化させ、蓋部(厚み45μm、大きさ1.0×1.0mm)を形成した。
[0111] GFRP基板1は、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂シートであり、厚み20μm、硬化後の引張り弾性率Esは21GPa、使用されたエポキシ樹脂組成物の硬化後のガラス転移点Tgsは188℃であった。
[0112] GFRP基板2は、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂シートであり、厚み25μm、硬化後の引張り弾性率Esは21GPa、使用されたエポキシ樹脂組成物の硬化後のガラス転移点Tgsは188℃であった。
[0113] GFRP基板1およびGFRP基板2で使用されたエポキシ樹脂組成物の組成は、いずれもビスフェノールA型エポキシ樹脂60質量部、ノボラック型エポキシ樹脂40質量部、溶融シリカ28質量部、ジシアンジアミド系硬化剤8質量部であった。
[0114] SAWチップの蓋部の外周近傍の導体と導通する位置に、6点の半田ボール(バンプ)を、スクリーン印刷により均等に配置した。各バンプが配置されたSAWチップを、直径5インチ、厚み650μmのシリコンウエハ上に複数搭載し、加熱および冷却し、実装構造体を得た。
[0115] 得られた実装構造体を金型にセットした後、モールド材(エポキシ樹脂組成物)を、温度175℃、圧力2MPaの条件で同金型に圧入し、トランスファー成型による封止を行った。封止された実装構造体を、SAWチップの断面がわかる位置で切断し、蓋部の変位量を電子顕微鏡(1000倍)により観察した。
[0116] 変位量の観察では、SAWチップ内部の空間が確保されているかどうかを、次の三段階で評価した。
◎:蓋部の変位がないか、変位があっても小さく、中空部は確保されている。
○:蓋部の変位が多少みられるが、中空部は確保されている。
×:蓋部の変位が大きく、中空部は確保されていない。
[0117] なお、モールド材(エポキシ樹脂組成物)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量部、ノボラック型エポキシ樹脂20質量部、酸無水物46質量部、溶融シリカ50質量部、硬化促進剤1質量部を用いた。」

「[0130]<比較例1>
蓋部の材料(シート材料)として、ポリイミドシート1(厚み25μm、硬化後の引張り弾性率Es:3.9GPa、硬化後のガラス転移点:Tgs:270℃、半硬化状態)と、ポリイミドシート2(厚み20μm、硬化後の引張り弾性率Es:3.9GPa、硬化後のガラス転移点Tgs:270℃)との積層体を用い、ポリイミドシート1がリブと接するように積層体をリブの端部に配置したこと以外は、実施例1と同様にして実装構造体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
[0131][表1]

[0132] 表1によれば、蓋部が、175℃における引張り弾性率Esが10GPa以上であるシートSを含む場合、回路部材内部の空間を確保することができることがわかる。」

「[図1A]



「[図4A]



(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載から、甲1には、実施例1(段落0109〜0117)に関して、次の事項が記載されているといえる。
ア 段落0019に「回路部材(SAWチップ)10は、機能領域FA(圧電体1a上に形成された、少なくとも一対の櫛形電極1bを備える領域)を備える素子(SAWフィルタ)1と、機能領域FAに対向するように配置された平板状の蓋部4と、機能領域FAと蓋部4との間に空間6を形成するために、機能領域FAを取り囲むように形成されたリブ3を備える。」と記載され、また、図1Aから、素子(SAWフィルタ)1は、圧電体1aと、圧電体1a上に形成された櫛形電極1bを含むことが看取できることから、段落0109に記載されたSAWチップ10は、圧電体1aと圧電体1a上に形成された櫛形電極1bを備え、機能領域FA(圧電体1a上に形成された、少なくとも一対の櫛形電極1bを備える領域)を備えるSAWフィルタ1と、機能領域FAに対向するように配置された平板状の蓋部4と、機能領域FAと蓋部4との間に空間6を形成するために、機能領域FAを取り囲むように形成されたリブ3を備えるものといえる。
イ また、[図1A]及び[図4A]によれば、段落0115のモールド材(エポキシ樹脂組成物)を圧入して行うトランスファー成型は、モールド材により圧電体1a、リブ3及び蓋部4を封止することといえる。
ウ 実施例1は、段落0100及び[図4A]の実装構造体100の製造方法の実施例であるといえる。
エ 以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「SAWフィルタ1と、リブ3と、SAWフィルタ1上の櫛形電極1bと導通する導体5と、を備えたSAWチップ10を準備し、(段落0109)
蓋部4の材料(シート材料)として、GFRP基板1(シートSP)およびGFRP基板2(シートSP)の積層体を準備し、GFRP基板1がリブ3と接するよう、積層体をリブの端部に載置し、次いで、70℃に加熱しながら加圧して、GFRP基板1およびGFRP基板2の積層体とリブ3の端部とを接着し、その後、180℃に加熱してGFRP基板1およびGFRP基板2に含まれる樹脂を硬化させ、蓋部4を形成し、(段落0110)
SAWチップ10の蓋部4の外周近傍の導体5と導通する位置に、6点の半田ボール(バンプ)を、スクリーン印刷により均等に配置し、各バンプが配置されたSAWチップ10を、直径5インチ、厚み650μmのシリコンウエハ上に複数搭載し、加熱および冷却して得た実装構造体100(段落0114)を、金型にセットした後、モールド材(エポキシ樹脂組成物)を、温度175℃、圧力2MPaの条件で同金型に圧入し、トランスファー成型による封止を行ない(段落0115)、モールド材により圧電体1a、リブ3及び蓋部4を封止する、(上記イ)
実装構造体100の製造方法であって、(上記ウ)
リブ3の材質は感光性ポリイミド樹脂であり、(段落0109)
GFRP基板1は、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂シートであり、硬化後の引張り弾性率Esは21GPaであり、(段落0111)
GFRP基板2は、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂シートであり、硬化後の引張り弾性率Esは21GPaであり、(段落0112)
SAWチップ10は、圧電体1aと圧電体1a上に形成された櫛形電極1bを備え、機能領域FA(圧電体1a上に形成された、少なくとも一対の櫛形電極1bを備える領域)を備えるSAWフィルタ1と、機能領域FAに対向するように配置された平板状の蓋部4と、機能領域FAと蓋部4との間に空間6を形成するために、機能領域FAを取り囲むように形成されたリブ3を備え、(上記ア)
モールド材(エポキシ樹脂組成物)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量部、ノボラック型エポキシ樹脂20質量部、酸無水物46質量部、溶融シリカ50質量部、硬化促進剤1質量部を用い、(段落0117)
蓋部4が、175℃における引張り弾性率Esが10GPa以上であるシートSを含む場合、回路部材内部の空間を確保することができる、(段落0132)
実装構造体100の製造方法。」

2 甲2の記載
甲2には以下の記載がある。
「【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を少なくとも含み、
前記(A)エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び硫黄原子含有エポキシ樹脂の少なくとも1種を含み、前記(A)エポキシ樹脂の全量に対するビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び硫黄原子含有エポキシ樹脂の合計量の割合が50質量%以上であり、
前記(C)無機充填剤は、質量平均粒子径が10μm以下で且つ比表面積が3.0m2/g以上である、封止用エポキシ樹脂成形材料。」

「【請求項8】
前記(B)硬化剤が、ビフェニル型フェノール樹脂及びアラルキル型フェノール樹脂の少なくとも1種を含有する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。」

「【0001】
本発明は、封止用エポキシ樹脂成形材料及び半導体装置に関する。さらに詳しくは、フリップチップ実装用のアンダーフィル材として好適な充填性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止された、ボイド等の成形不良が抑制されたフリップチップ実装型の半導体装置に関する。」

「【0010】
本発明によれば、充填性に優れボイド発生を抑制することのできる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びそれを用いた半導体装置を提供することができる。」

「【0100】
<半導体装置>
続いて本発明の半導体装置について説明する。また、かかる半導体装置の説明を介して本発明のエポキシ樹脂成形材料の好適な用途及び使用方法について説明する。
本発明の半導体装置は、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備える半導体装置である。本発明によれば、ファインピッチなバンプを有し、入出力数(バンプ数)の多いフリップチップ実装型半導体装置を提供することができる。
本発明の半導体装置としては、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス等の支持部材や実装基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したフリップチップ実装型の半導体装置などが挙げられる。(以下省略)」

「【0109】
<封止用エポキシ樹脂成形材料の作製>
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂として、以下を使用した。
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製YSLV−80XY、エポキシ当量192、融点67℃
・エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコートYH−4000H、エポキシ当量196、融点106℃
(中略)
【0110】
(B)硬化剤
硬化剤として、以下を使用した。
・硬化剤1:フェノール系重縮合物、エア・ウォーター株式会社製HE200C−10、水酸基当量199mgKOH/g、軟化点80℃
(中略)
【0111】
(C)無機充填剤
下記の無機充填剤1〜4を用意し、下記の表1に記載の混合比率で混合して、充填剤A〜Dを調製した。
・無機充填剤1:溶融シリカ、電気化学工業社製FB−5SDC、平均粒子径6μm
・無機充填剤2:溶融シリカ、マイクロン社製SP−30、平均粒子径2μm
・無機充填剤3:溶融シリカ、アドマテックス社製SO−25R、平均粒子径0.6μm
(中略)
【0112】
【表1】

【0113】
(D)カップリング剤
(中略)
【0114】
その他の添加物として、硬化促進剤(トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加物)(硬化促進剤1)、ヘキストワックス(クラリアント社製HW−E)及びカーボンブラック(三菱化学株式会社製MA−600MJ−S)を使用した。」

「【0118】
【表2】



3 甲3の記載と甲3に記載された発明
(1)甲3の記載
甲3には以下の記載がある。
「[0001] 本発明は、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ−TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリンター部品、マイクロ反応器部品、導電性層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、MEMSパッケージ部品、半導体パッケージ部品、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びにプリント配線板の製作において有用な解像度に優れたネガ型感光性樹脂組成物に関する。本発明は更に、高温での弾性率が高く、かつ各種基板への密着性に優れた該ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物に関する。」

「[0011] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、解像度に優れると共に現像後残渣の発生を制御する効果も高く、その硬化物は高温時にも高い弾性率を維持すると共に、シリコンウエハ以外の各種の基板への密着性に優れる。そのため、このネガ型感光性樹脂組成物は、MEMS部品、マイクロマシン部品及び半導体パッケージ部品等に好適に用いられる。」

「[0051] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、ベースフィルム上にロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて該組成物を塗布した後、45乃至100℃に設定した乾燥炉で乾燥し、所定量の溶剤を除去することにより、また、必要に応じてカバーフィルム等を積層することによりドライフィルムレジストとすることができる。この際、ベースフィルム上のレジストの厚みは、2乃至100μmに調整することができる。ベースフィルム及びカバーフィルムとしては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、TAC、ポリイミド等のフィルムが使用される。これらフィルムは必要に応じてシリコーン系離型処理剤や非シリコーン系離型処理剤等により離型処理されたフィルムを用いてもよい。このドライフィルムレジストを使用するには、例えばカバーフィルムをはがして、ハンドロール又はラミネーター等により、温度40乃至100℃、圧力0.05乃至2MPaで基板に転写し、前記溶剤に溶解したネガ型感光性樹脂組成物と同様に露光、露光後ベーク、現像、加熱処理をすればよい。」

「[0053] MEMSパッケージ及び半導体パッケージとして用いる場合は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物でMEMS又は半導体デバイスを被覆、又はMEMS又は半導体デバイスに対して中空構造を作製することにより使用できる。MEMS及び半導体パッケージの基板としては種々の形状のシリコンウエハ上に、スパッタリング又は蒸着によりアルミニウム、金、銅、クロム、チタン等の金属薄膜を10乃至5000Åの膜厚で成膜し、エッチング法等によりその金属を微細加工した基板等が用いられる。場合によっては、さらに無機の保護膜としてシリコンオキサイドやシリコンナイトライドが10乃至10000Åの膜厚で成膜されることもある。次いで基板上に、MEMS又は半導体デバイスを作製又は設置し、このデバイスを外気から遮断するために、被覆又は中空構造を作製する必要がある。本発明のネガ型感光性樹脂組成物で被覆する場合は、前記の方法で行なうことができる。また、中空構造を作製する場合は、基板上へ前記の方法で隔壁を形成させ、その上にさらに、前記の方法でドライフィルムをラミネート及び隔壁上の蓋となるようにパターニングを行なうことで、中空パッケージ構造を作製することができる。また、作製後、必要に応じて130乃至200℃で10乃至120分間、加熱処理をすることで諸特性を満足するMEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品が得られる。」

「[0058]実施例1乃至4、比較例1及び比較例2(感光性樹脂組成物の調製)
表1に記載の配合量(単位は質量部)に従い、(A)トリアジン環を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光カチオン重合開始剤および他の成分を、攪拌機付きフラスコで60℃、2時間攪拌混合して本発明及び比較用のネガ型感光性樹脂組成物を得た。」

「[0063](ネガ型感光性樹脂組成物の耐熱性評価)
前記のネガ型感光性樹脂組成物の感度評価で得られた最適露光量でネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を作製し、DMA測定装置(TAインスツルメント社製 RSA−G2)を用いて、引張モード、1Hz、Ramp rate 3℃/secの条件で、175℃での弾性率を測定した。結果を下記表1に示した。

[0064][表1]

[0065] 尚、表1における(A−1)乃至(G)はそれぞれ以下のとおりである。
(中略)
(B−1):商品名 KM−N−LCL 日本化薬株式会社製、エポキシ当量210g/eq.、軟化点85℃、重量平均分子量8000、平均繰り返し数k=4(式(2)で表わされるエポキシ樹脂)
(B−2):商品名 NC−3000H、日本化薬社株式会製、エポキシ当量285g/eq.、軟化点65℃、重量平均分子量700、平均繰り返し数p=2(式(3)で表わされるエポキシ樹脂)
(B−3):商品名 NER−7604、日本化薬株式会社製、エポキシ当量347g/eq.、軟化点71℃、重量平均分子量9000、平均繰り返し数n=4、m≦1(式(4)で表わされるエポキシ樹脂)
(B−4):商品名 jER−1007 三菱化学株式会社製、エポキシ当量2000g/eq.、重量平均分子量2900
(C−1):光酸発生剤(トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)ボレート、商品名 PAG290、BASF社製)
(以下省略)
[0066] 表1の結果から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物(実施例1乃至4)は比較例1及び2のネガ型感光性樹脂組成物に比べて175℃での弾性率が高く、かつSi及びSiNへの密着性も高い(少なくとも匹敵する)ことは明らかである。」

「[0074] 本発明にかかる感光性樹脂組成物は、様々な基板に対して密着性の高いパターン形成が可能であり、かつ現像後残渣の発生を制御する効果も高いことから、MEMSパッケージ部品や半導体パッケージ等の分野に適している。特にSAW/BAWフィルタなどのポリマーキャッピングにおいて、本発明の感光性樹脂組成物は、高温での弾性率と様々な材質への密着性を併有することから、モールディング時におけるキャビティ形成に有利であり、最終的な製品をより薄くすることが可能であり、デザインの自由度を広げることが期待できる。」

(2)甲3に記載された発明
ア 上記(1)の段落0053によれば、甲3には、ネガ型感光性樹脂組成物で、基板上に隔壁と蓋を形成する中空パッケージ構造の製造方法が記載されている。
イ 同段落0058の記載、同段落0064の表1によれば、ネガ型感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤を含むといえ、光カチオン重合開始剤は、同段落0065によれば、光酸発生剤であるといえる。
ウ 前記表1に示された実施例1〜4の弾性率は、同段落0063によれば、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の175℃における引張モードの弾性率であるといえる。そして、該表1によれば、実施例1〜4の弾性率は、1.3〜1.5Gpaであるといえる。
エ 以上によれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
[甲3発明]
ネガ型感光性樹脂組成物で、基板上に隔壁と蓋を形成する中空パッケージ構造の製造方法であって、ネガ型感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と光酸発生剤を含み、その硬化物の175℃における引張モードの弾性率は、1.3〜1.5Gpaである中空パッケージ構造の製造方法。

4 甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、感光性樹脂シートおよびそれを用いた中空構造体の製造方法ならびに得られた中空構造体を有する電子部品に関する。」

「【0007】
本発明によれば、感光性樹脂組成物を用いた中空構造を形成する工程において、屋根落ちが無く、安定した中空構造を得ることができる。」

「【0009】
本発明の感光性樹脂シートは、中空構造形成に適した感光性樹脂シートに関するものであり、具体的には少なくとも1層の基材フィルム上に感光性樹脂層を設けてある感光性樹脂シートであって、露光後における基材フィルムと感光性樹脂層の剥離力が、5mN/cm以上、100mN/cm以下であることを特徴とする感光性樹脂シートである。
【0010】
本発明の感光性樹脂シートの感光性樹脂層は、その組成に特に制限はないが、熱可塑性樹脂や光重合性化合物、熱架橋剤などが含まれるのが好ましい。また必要に応じて、他の成分が含まれていても良く、光重合開始剤、重合禁止剤、熱硬化性樹脂、接着改良剤、無機フィラー、界面活性剤などが挙げられる。」

「【0054】
<中空構造形成性>
まず、得られた感光性樹脂シートの保護フィルムを剥離し、感光性樹脂層をシリコンウェハへラミネートした。ロール式真空ラミネート装置を用い、ステージ温度80℃、ロール温度80℃、貼り付け速度5mm/秒、貼り付け圧力0.2MPa、到達真空度150Paにて実施し、シリコンウェハ上に感光性樹脂シートを積層した。次に基材フィルムを剥離し、超高圧水銀灯を用いて400mJ/cm2(i線測定)の露光量で、図2に示す通り、開口部500μm角、壁厚み80μmの壁材形状を形成できるフォトマスクで露光し、引き続き120℃3分間ホットプレートで加熱処理をした。続いて、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で現像し、更に窒素雰囲気で200℃1時間熱硬化させ、壁材形成が完了した。」

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 本件発明1の「基板」は、「半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子が前記中空部内に配置されるように前記素子が前記基板上に搭載され」るものであるところ、本件特許についての出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)には、「素子111は、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上であればよく、具体的には中空構造が設けられたパッケージに適用される素子である。かかる素子111の具体例として、BAWフィルタ、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタ等の高周波フィルタが挙げられる。」(段落0013)、及び「素子111が高周波フィルタであるとき、基板109の材料として、好ましくはタンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)等の圧電体が挙げられる。」(段落0014)と記載されている。そして、SAWフィルタは、圧電体である基板上に電極が形成された素子であることは技術常識である。
そうすると、甲1発明の「SAWチップ10は、圧電体1aと圧電体1a上に形成された櫛形電極1bを備え、機能領域FA(圧電体1a上に形成された、少なくとも一対の櫛形電極1bを備える領域)を備えるSAWフィルタ1と、機能領域FAに対向するように配置された平板状の蓋部4と、機能領域FAと蓋部4との間に空間6を形成するために、機能領域FAを取り囲むように形成されたリブ3を備え」るところ、SAWフィルタ1が備える「圧電体1a」は、本件発明1の「基板」に相当し、甲1発明の圧電体1aに形成された「櫛形電極1b」は、圧電体1aとともにSAWフィルタ1を構成するから、本件発明1の「半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子」に相当するといえる。
さらに、甲1発明の機能領域FA(圧電体1a上に形成された、少なくとも一対の櫛形電極1bを備える領域)と蓋部4との間に形成された「空間6」は、本件発明1の「一つ以上の閉じられた中空部」に相当するから、両者は、「中空部内に配置されるように前記素子が前記基板上に搭載されて」いる点で共通する。

イ 甲1発明のSAWチップ10が備える「リブ3」と「蓋部4」は、それぞれ本件発明1の「隔壁」及び「天板」に相当する。
また、甲1発明の「SAWフィルタ1と、リブ3と、SAWフィルタ1上の櫛形電極1bと導通する導体5と、を備えたSAWチップ10を準備」することは、圧電体1a上にリブ3を形成することを含むことは明らかである。
さらに、甲1発明の「蓋部の材料(シート材料)として、GFRP基板1(シートSP)およびGFRP基板2(シートSP)の積層体を準備し、GFRP基板1がリブと接するよう、積層体をリブ3の端部に載置し、次いで、70℃に加熱しながら加圧して、GFRP基板1およびGFRP基板2の積層体とリブ3の端部とを接着し、その後、180℃に加熱してGFRP基板1およびGFRP基板2に含まれる樹脂を硬化させ、蓋部4を形成」することは、圧電体1a上に蓋部4を形成することで上記アの「空間6」を形成するものであることは明らかである。
以上によれば、甲1発明の上記「圧電体1a」と本件発明1の「基板上に、少なくとも1種の有機材料により構成された隔壁と天板とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部を設ける工程により得られた基板」とは、「基板上に、」「隔壁と天板とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部を設ける工程により得られた基板」である点で共通する。

ウ 甲1発明の「モールド材(エポキシ樹脂組成物)」は、下記相違点2を除き本件発明1の「封止用樹脂組成物」に相当する。
そうすると、甲1発明の「モールド材(エポキシ樹脂組成物)を、温度175℃、圧力2MPaの条件で同金型に圧入し、トランスファー成型による封止を行な」うことは、本件発明1の「封止用樹脂組成物を0.1MPa以上、5.0MPa未満の圧力で圧縮成形」することに相当する。
さらに、甲1発明の「モールド材により圧電体1a、リブ3及び蓋部4を封止する」ことは、本件発明1の「前記基板、前記隔壁および前記天板を樹脂封止する工程」に相当する。

エ 甲1発明の「実装構造体100」は、「SAWチップ10」に上記アの「空間6」が形成されているから、この点で本件発明1の「中空パッケージ」に相当する。
そうすると、甲1発明の「実装構造体100の製造方法」は、以下の相違点を除き、本件発明1の「中空パッケージ」に相当する。

オ 甲1発明の「モールド材(エポキシ樹脂組成物)」として「ビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量部、ノボラック型エポキシ樹脂20質量部、酸無水物46質量部、溶融シリカ50質量部、硬化促進剤1質量部を用い」るところ、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」及び「ノボラック型エポキシ樹脂」は、本件発明1の「(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂」に相当する。
さらに、甲1発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、本件発明1の「前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含み」と択一的に記載されているうちの「ビスフェノール型エポキシ樹脂」に相当する。
また、甲1発明の「溶融シリカ」は、無機材料であることが明らかであり、モールド材(エポキシ樹脂組成物)に充填されたものといえるから、本件発明1の「(B)無機充填材」に相当する。
ここで、甲1発明のモールド材(エポキシ樹脂組成物)は、上述のとおり「ビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量部、ノボラック型エポキシ樹脂20質量部、酸無水物46質量部、溶融シリカ50質量部、硬化促進剤1質量部」からなるところ、モールド材全体の197質量部に対して、エポキシ樹脂を100質量部(50.8質量%)、溶融シリカを50質量部(25.4質量%)含むものといえる。

カ 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
基板上に、隔壁と天板とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部を設ける工程により得られた基板を、封止用樹脂組成物を0.1MPa以上、5.0MPa未満の圧力で圧縮成形し、前記基板、前記隔壁および前記天板を樹脂封止する工程
を含む、中空パッケージの製造方法であって、
半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子が前記中空部内に配置されるように前記素子が前記基板上に搭載されており、
前記封止用樹脂組成物が、
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂、および
(B)無機充填材
を含み、
前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、
中空パッケージの製造方法。

[相違点]
相違点1:本件発明1では、隔壁と天板は、「少なくとも1種の有機材料により構成され」、「前記有機材料が、光酸発生剤とエポキシ樹脂とを含有するネガ型感光性ドライフィルムレジストである」のに対し、甲1発明では、リブ3の材質は感光性ポリイミド樹脂であり、蓋部4は、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂シートであり、硬化後の引張り弾性率Esは21GPaであるGFRP基板1と、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂シートであり、硬化後の引張り弾性率Esは21GPaであるGFRP基板2の積層体である点。

相違点2:封止用樹脂組成物について、本件発明1では、「前記封止用樹脂組成物中の成分(A)のエポキシ樹脂の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して2質量%以上40質量%以下であり、前記封止用樹脂組成物中の成分(B)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して50質量%以上95質量%以下であり、前記成分(B)を目開き20μmの篩を通したときの篩下画分の含有量が、前記成分(B)全体に対して80質量%以上100質量%以下」であると特定されているのに対し、甲1発明では、モールド材全体の197質量部に対して、エポキシ樹脂を100質量部(50.8質量%)、溶融シリカを50質量部(25.4質量%)含むものであり、溶融シリカの目開き20μmの篩を通したときの篩下画分の含有量については特定されていない点。

(2)判断
ア 甲1発明は、甲1(上記第4の1(1)の段落0006及び0007)に記載された、配線基板220に実装された回路部材200は、樹脂封止材240で封止され、例えば、トランスファー成型では、液状化または軟化した熱硬化性樹脂を含むモールド材が金型に圧入されるが、電子部品200の蓋部214と配線基板220との間にも充填されたモールド材は、蓋部214を強く押し上げ、その結果、蓋部214は変形し、電極212と蓋部214との間の空間216が狭くなり、液状化または軟化したモールド材による圧力が大きい場合には、蓋部214が破損することも懸念され、蓋部214が破損すると、空間216内に液状化または軟化したモールド材が侵入し、空間216を十分に確保することが難しくなるという課題を解決するために、「蓋部4が、175℃における引張り弾性率Esが10GPa以上であるシートSを含む」(同段落0132)という構成を備えることで、同段落0014に記載された、「回路部材を樹脂封止した場合であっても、蓋部と機能領域との間に十分な空間を確保することができる」という効果を奏するものである。

イ 一方、甲3には、上記第4の3(2)エのとおりの甲3発明、すなわち、「ネガ型感光性樹脂組成物で、基板上に隔壁と蓋を形成する中空パッケージ構造の製造方法であって、ネガ型感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と光酸発生剤を含み、その硬化物の175℃における引張モードの弾性率は、1.3〜1.5Gpaである中空パッケージ構造の製造方法。」について記載されている。

ウ そうすると、甲3発明のネガ型感光性樹脂組成物は、その硬化物の175℃における引張モードの弾性率が1.3〜1.5Gpaであるから、甲1発明の「蓋部4が、175℃における引張り弾性率Esが10GPa以上であるシートSを含む」と特定される蓋部の材料として必要な175℃における引張り弾性率Esが10GPa以上であるという条件を満たしていない。
したがって、甲1発明のリブ3及び蓋部4の材料として、甲3発明のネガ型感光性樹脂組成物を採用することには阻害要件があるから、当業者であっても、甲1発明と甲3発明から、相違点1に係る本件発明1の構成を想到し得るということはできない。
また、甲2及び甲4には、当該構成についての記載はない。

(3)小括
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲3発明並びに甲2及び甲4の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1を減縮した発明であって、上記1で検討した相違点1に係る本件発明1の構成を備える発明であるから、上記1(2)と同様の理由により、甲1発明、甲3発明並びに甲2及び甲4の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、特許7366538号の請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許7366538号の請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-06-05 
出願番号 P2018-246180
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 中野 浩昌
松永 稔
登録日 2023-10-13 
登録番号 7366538
権利者 TOWA株式会社 住友ベークライト株式会社 日本化薬株式会社
発明の名称 中空パッケージおよびその製造方法  
代理人 清水 京  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  
代理人 清水 京  
代理人 清水 京  
代理人 速水 進治  

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