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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R |
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管理番号 | 1411975 |
総通号数 | 31 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-05-02 |
確定日 | 2024-06-06 |
事件の表示 | 特願2018−210794「プローブピン、検査治具、検査ユニットおよび検査装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月21日出願公開、特開2020− 76664〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)11月8日を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年 9月27日付け:拒絶理由通知書 同年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 1月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 2月 7日 :原査定の謄本の送達) 同年 5月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年5月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年5月2日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和5年5月2日にされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、次の(1)に示す本件補正前(令和4年11月4日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである。下線は、補正箇所を示す。 (1) 本件補正前の請求項1 「【請求項1】 一対の検査治具を備え、 前記一対の検査治具の各々が、 プローブピンと、 前記プローブピンが内部に収容されたハウジングと を備え、 前記プローブピンが、 第1方向に沿って弾性変形可能な第1弾性部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の一端に設けられ、前記第1弾性部に対して前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な第1接触部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の他端に設けられた第2接触部と を備え、 前記第1接触部が、 前記第1弾性部の前記一端から前記第1方向に沿って延びていると共に、前記第2方向から接触可能な接点部を有する第1腕部と、 前記第1腕部から前記第2方向に延びていると共に、前記第1腕部に対して前記接点部と同じ側に配置された第2腕部と を有し、 前記第2腕部に外力を加えることにより、前記第1腕部が、前記第1弾性部との接続部分を支点として回転して前記第1弾性部に対して前記第2方向に移動するように構成され、 前記ハウジングが、 前記第2腕部に外力を加えたときに前記第1腕部が前記第2方向に移動して前記第1腕部の前記接点部が外部に露出するように構成され、 前記第2腕部が、 前記第1腕部から前記第2方向に延びている本体部と、 前記本体部から前記第1方向でかつ前記第1弾性部から離れる方向に突出していると共に、前記第1方向でかつ前記第1弾性部から遠い方の先端が前記ハウジングの外部に配置されている突出部と を有し、 前記一対の検査治具の各々が、 前記接点部が相互に対向しかつ前記第2方向に第1隙間を空けて配置されていると共に、前記突出部が前記第1隙間にそれぞれ配置されている、検査ユニット。」 (2) 本件補正後の請求項1 「【請求項1】 第1検査治具および第2検査治具を備え、 前記第1検査治具および前記第2検査治具の各々が、 プローブピンと、 前記プローブピンが内部に収容されたハウジングと を備え、 前記プローブピンが、 第1方向に沿って弾性変形可能な第1弾性部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の一端に設けられ、前記第1弾性部に対して前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な第1接触部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の他端に設けられた第2接触部と を備え、 前記第1接触部が、 前記第1弾性部の前記一端から前記第1方向に沿って延びていると共に、前記第2方向から接触可能な接点部を有する第1腕部と、 前記第1腕部から前記第2方向に延びていると共に、前記第1腕部に対して前記接点部と同じ側に配置された第2腕部と を有し、 前記第2腕部に外力を加えることにより、前記第1腕部が、前記第1弾性部との接続部分を支点として回転して前記第1弾性部に対して前記第2方向に移動するように構成され、 前記ハウジングが、 前記第2腕部に外力を加えたときに前記第1腕部が前記第2方向に移動して前記第1腕部の前記接点部が外部に露出するように構成され、 前記第2腕部が、 前記第1腕部から前記第2方向に延びている本体部と、 前記本体部から前記第1方向でかつ前記第1弾性部から離れる方向に突出していると共に、前記第1方向でかつ前記第1弾性部から遠い方の先端が前記ハウジングの外部に配置されている突出部と を有し、 前記第1検査治具の前記接点部および前記第2検査治具の前記接点部が前記第2方向において相互に対向しかつ前記第2方向に前記第1腕部が回転可能な第1隙間を空けて位置し、 前記第2腕部の前記突出部が前記第1隙間にそれぞれ位置している、検査ユニット。」 2 本件補正の目的 本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の「一対の検査治具」を、本件補正後の「第1検査治具および第2検査治具」に書き表わすとともに、本件補正前の 「前記一対の検査治具の各々が、 前記接点部が相互に対向しかつ前記第2方向に第1隙間を空けて配置されていると共に、前記突出部が前記第1隙間にそれぞれ配置されている」こと について、本件補正後における、 「前記第1検査治具の前記接点部および前記第2検査治具の前記接点部が前記第2方向において相互に対向しかつ前記第2方向に前記第1腕部が回転可能な第1隙間を空けて位置し、 前記第2腕部の前記突出部が前記第1隙間にそれぞれ位置している」とすることで、当該「第1検査治具および第2検査治具」の(第1接触部の第1腕部が有する)「接点部」が「第2方向に」「第1隙間を空けて位置[する]」ことについて、更に「第1隙間」が「第1検査治具および第2検査治具」の(第1接触部の)「第1腕部が回転可能」なものと限定することを含むものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件についての当審の判断 本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)の「本件補正後の請求項1」に示した記載により特定されるとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された実願昭60−57314号(実開昭61−172487号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、次に摘記する事項が記載されている(下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。)。 a 第1図及び第2図 「第1図 」 「第2図 」 b 4頁2行(「実施例」)〜6頁16行(「4.図面の簡単な説明」末尾) 「実施例 以下、第1図及び第2図に示した一実施例に基づき上記従来例と同一の部材には同一符号を付して本考案を詳細に説明すれば、10は概略箱状のソケット本体、11はソケット本体10の内底部に貫通固定された複数対のコンタクトピン(作図の都合上一対しか示していない)であって、コンタクトピン11は内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されていると共に、コンタクトピン11の先端部は試験時ICチップ1のモールド部2により押し下げられる内側腕部11aと該内側腕部11aが押し下げられた時ICチップ1のリード3の側面に先端突部11b’が圧接する外側腕部11bとに分岐せしめられている。12はICチップを押圧しつつソケット本体10に固定される蓋である。尚、本考案の場合、ICチップ1はリード3の先端部が上方を向いた状態でソケット本体10内に挿入されるようになっている。 本考案によるICチップ試験用ソケットは上述の如く構成されているから、第1図に示した如くコンタクトピン11、11の内側腕部11a、11a上にICチップ1を載せ、更にICチップ1の上に蓋12を載せた状態で蓋12を押し下げて行くと、コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形し、これにより外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接する。そして、蓋12がソケット本体10に固定されて上記圧接状態が保持され、ICチップ1の種々の性能試験が行われる。 考案の効果 上述の如く、本考案によるICチップ試験用ソケットによれば、ICチップ1のリード3の実装時に半田付けされる部分即ち先端部以外の部分にコンタクトピン11が接触するようになっているので、該先端部に傷が付いたりゴミが付着したりすることが無い。従って、リード3のプリント回路基板の回路部分への半田付けの不良を発生させることなくICチップ1の性能試験が行われる。なお、本案ソケットによれば、本体上の所定位置にICチップを載置した状態では該チップは浮き上がった状態に保持されるから、この種従来構造のソケットに較べてICチップの装脱が容易であると云う利点もある。 4.図面の簡単な説明 第1図は本考案によるICチップ試験用ソケットの一実施例にICチップを挿入した状態を示す断面図、第2図は上記実施例の蓋によりICチップを押し下げて装填した状態を示す断面図、第3図はICチップの実装状態を示す断面図、第4図は従来の試験状態を示す断面図である。 1‥‥ICチップ、2‥‥モールド部、3‥‥リード、10‥‥ソケット本体、11‥‥コンタクトピン、11a‥‥内側腕部、11b‥‥外側腕部、12‥‥蓋。」 (イ) 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定 前記(ア)に示した摘記事項を踏まえると、前記第1図及び第2図から以下の事項が読み取れる。なお、認定に際し、第1図の上部に示されている黒矢印の示す方向をZ方向、当該矢印と直交して紙面と平行な方向をX方向とした。 a 認定事項1 「内側腕部11aは、Z方向に押し下げられること。」 b 認定事項2 「外側腕部11b、11bが移動する方向は、Z方向に交差するX方向であること。」 c 認定事項3 「内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bの先端突部11b’、11b’とは、外側腕部11b、11bに対して、共にX方向の同じ側にあること。」 d 認定事項4 「コンタクトピン11、11は、ICチップ1のリード3、3の側面に圧接する先端突部11b’、11b’とは異なる接触端を更に備えること。」 e 認定事項5 「外側腕部11b、11bの先端突部11b’、11b’は、ICチップ1のリード3、3の側面に圧接するために、相互に対向すること。」 f 認定事項6 次の(a)〜(c)に示す認定事項について、それぞれ、「認定事項6A」〜「認定事項6C」とし、またこれらを総称して「認定事項6」という。 (a) [認定事項6A] 「コンタクトピン11、11のうち内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位と、コンタクトピン11、11のうち内底部に貫通固定される部位とは、Z方向において離間すること。」 (b) [認定事項6B] 「内側腕部11a、11aのうち外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部分は、X方向に延びること。」 (c) [認定事項6C] 「内側腕部11a、11aのうちICチップ1が載せられる部分は、Z方向とは逆の方向に突出していること。」 g 認定事項7 「コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形し、これにより外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接する際には、内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位を中心として回転する移動を伴うこと。」 (ウ) 引用発明の認定 前記(ア)に示した摘記事項及び前記(イ)に示した認定事項を総合すると、引用文献1には、次に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「概略箱状のソケット本体10、ソケット本体10の内底部に貫通固定された複数対のコンタクトピン11を備えたICチップ試験用ソケットであって、 コンタクトピン11は内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されていると共に、コンタクトピン11の先端部は試験時ICチップ1のモールド部2により押し下げられる内側腕部11aと該内側腕部11aが押し下げられた時ICチップ1のリード3の側面に先端突部11b’が圧接する外側腕部11bとに分岐せしめられており、(4頁5行〜同頁15行) 内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bの先端突部11b’、11b’とは、外側腕部11b、11bに対して、共にX方向の同じ側にあり、(前記[認定事項3]) コンタクトピン11、11は、ICチップ1のリード3、3の側面に圧接する先端突部11b’、11b’とは異なる接触端を更に備え、(前記[認定事項4]) 外側腕部11b、11bの先端突部11b’、11b’は、ICチップ1のリード3、3の側面に圧接するために、相互に対向するものにおいて、(前記[認定事項5]) コンタクトピン11、11の内側腕部11a、11a上にICチップ1を載せ、更にICチップ1の上に蓋12を載せた状態で蓋12を押し下げて行くと、コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形し、これにより外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接し、この際内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位を中心として回転する移動を伴って、ICチップ1の種々の性能試験が行われ、(5頁2行〜同頁11行、前記[認定事項7]) 外側腕部11b、11bが移動する方向は、Z方向に交差するX方向であり、(前記[認定事項2]) コンタクトピン11、11のうち内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位と、コンタクトピン11、11のうち内底部に貫通固定される部位とは、Z方向において離間しており、(前記[認定事項6A]) 内側腕部11a、11aのうち外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部分は、X方向に延びており、(前記[認定事項6B]) 内側腕部11a、11aのうちICチップ1が載せられる部分は、Z方向とは逆の方向に突出している、(前記[認定事項6C]) ICチップ試験用ソケット。」 イ 引用文献3及び4の記載事項並びに周知技術の認定 (ア) 引用文献3の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された特開2010−8388号公報(以下「引用文献3」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体装置の電気的試験を行う際に用いられる、検査装置の端子と半導体装置の端子とをプローブを介して電気的に接続するICソケットに関するものであり、特に、プローブを交換して長期間使用する場合において、より長期間に亘り使用することのできるICソケットに関するものである。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 以下に、本発明に係るICソケットの一実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態にかかるICソケットの全体斜視図であり、図2は本実施形態にかかるメインブロックの概略図であって、図2(a)は全体斜視図、図2(b)はその断面図であり、図3は本実施形態にかかるプローブのメインブロック及びサイドブロックへの取り付け方法を説明するための図であり、図4は本実施形態にかかるICソケットの側断面図であり、図5はメインブロックの突片の厚さを変更して、プローブをメインブロックの突片とサイドブロックの当接面とによって挟持するように構成した場合のICソケットの側断面図である。 【0019】 図1に示すように、本実施形態にかかるICソケット1は、半導体装置を載置するためのメインブロック10と、当該メインブロック10の外周に対峙して配置した四つのサイドブロック20と、メインブロック10とサイドブロック20との間に介設した複数のプローブ30とを有しており、さらに、これらメインブロック10、サイドブロック20及びプローブ30の底部以外を覆うとともに半導体装置を載置するスペースとなる載置部11及びプローブ30の先端のみを露出させるための窓部を設けたガイドブロック(図示せず)を設けて構成される。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【0040】 メインブロック10、サイドブロック20及びプローブ30は以上のように構成されており、これらを一体的に組み付ける際は、サイドブロック20のプローブガイド部24に形成された各収納空間25内にプローブ30を差し入れた後に、メインブロック10の突片12をサイドブロック20に取り付けられたプローブ30の湾曲部31内に差し入れて、メインブロック10とサイドブロック20との間にプローブ30が介設された状態とする。 【0041】 そして、メインブロック10のネジ穴15にネジSをサイドブロック20のネジ穴28を介して貫装することによって、メインブロック10、サイドブロック20及びプローブ30を一体的に組み付けた状態とする(図1参照。)。 【0042】 ここで、かかる状態において、プローブ30の凸部32は、図4(a)に示すように、サイドブロック20の凹部23に嵌入した状態となっており、また、メインブロック10の突片12によってプローブ30の湾曲部31が押圧された状態となっている。 【0043】 そして、このICソケット1を検査装置に取り付けるとともに、メインブロック10の載置部11に半導体装置Pを載置すると、プローブ30の一端および他端は、図4(b)に示すように、それぞれ湾曲部31内方側へと押圧されて、上部収納空間16及び下部収納空間17内に収納された状態となる。このように、弾性力を有するプローブ30の一端及び他端を当該弾性力に抗して押圧して検査装置の端子T及び半導体装置Pの端子と接触させることにより、これら端子とプローブ30とをより確実に接触させることができる。 【0044】 このように、本実施形態にかかるICソケット1は、メインブロック10或いはサイドブロック20にプローブ30を埋め込むことなく当該プローブ30を固定することができるため、プローブ30の交換によるメインブロック10やサイドブロック20の劣化を可及的になくすことができ、より長期間に亘って使用することが可能となる。」 「【図4】 」 (イ) 引用文献4の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された特開平7−254468号公報(以下「引用文献4」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、IC(半導体集積回路)の測定試験装置に係わり、特にICを搭載するIC受け台とその周囲のリード端子に接触して導通する測定子とを備えたIC測定用ソケットに関するものである。」 「【0007】 【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係わるIC測定用ソケットの一実施例を説明する図であり、図中(a)はその分解斜視図、(b)はその側断面図である。図1に示すように本実施例のIC測定用ソケット1は、大きくは、ソケット本体2、IC受け台3および測定子ホルダ4によって構成される。」 「【図1】 」 「【0010】測定子ホルダ4は、測定すべきIC8のリード端子15に対応して配列された複数の測定子16を有しており、測定子16相互の間隔はリード端子15の配列ピッチに対応して設定されている。すなわち、測定すべきIC8がQFP(Quad Flat Package)タイプでそのピン数が64ピンの場合は、一個の測定子ホルダ4に16本の測定子16が組み込まれ、同じQFPタイプでもピン数が100ピンの場合は一個の測定子16に25本の測定子16が組み込まれることになる。 【0011】この測定子ホルダ4の外形寸法は、ソケット本体2に対して測定子ホルダ4自体が着脱可能となるように、ソケット本体2に形成された装着部7の大きさとおよそ同じか、若しくは僅かながら小さめに設定されている。さらに装着部7と測定子ホルダ4との結合部分にはソケット本体2に対する測定子ホルダ4の装着位置を規制するガイド機構が備えられている。すなわち、測定子ホルダ4の両端面にはそれぞれ突条ガイド17が形成され、これに対して装着部7の内壁面には上記突条ガイド17と係合可能な凹溝18が形成されている。そして、互いに係合可能な突条ガイド17と凹溝18とは、それぞれソケット本体2に対する測定子ホルダ4の装着方向(図中上下方向)に沿って形成されている。 【0012】ここで、突条ガイド17と凹溝18とを係合しつつ装着部7に測定子ホルダ4を装着し、これによってソケット本体2と測定子ホルダ4とを結合した状態では、IC受け台3の周縁部(矩形4辺)に隣接して各々の測定子ホルダ4が配置される。このとき、ソケット本体2の装着部7に対して測定子ホルダ4は固定部5の底部から延出したホルダ受け19に突き当たるまで押し込まれる。さらに、こうした結合状態においては、リード端子15との接触部分となる各測定子16の先端部がIC受け台3の各ガイド片11の隙間にそれぞれ挿入配置される。」 (ウ) 周知技術1の認定 前記(ア)及び(イ)に示したように、引用文献3及び4には、本体に対して着脱可能な第1及び第2の検査治具(サイドブロック20及びプローブ30、測定子ホルダ4及び測定子16)から構成されるソケットの構成が例示されており、次に示す技術事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。 [周知技術1] 「試験用のICソケットを、第1及び第2の検査治具から構成すること。」 (3) 対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア)a 引用発明の「コンタクトピン11」は本件補正発明の「プローブピン」に相当し、引用発明の「ソケット本体10」は本件補正発明の「ハウジング」に相当する。 b また、引用発明の「コンタクトピン11」及び「ソケット本体10」は、本件補正発明の「検査治具」に相当する。 c そして、引用発明の「ICチップ試験用ソケット」は「ソケット本体10」及び「コンタクトピン11」を備えるところ、「検査ユニット」の発明である本件補正発明と「ICチップ試験用ソケット」の発明である引用発明は、共に「検査ユニット」の発明である点において一致する。 (イ)a 引用発明の「ICチップ試験用ソケット」において、「コンタクトピン11」は「ソケット本体10の内底部に貫通固定され[る]」から、前記(ア)aを踏まえると、本件補正発明の「ハウジング」と引用発明の「ソケット本体10」は、共に「プローブピンが内部に収容されたハウジング」である点で一致する。 b 以上をまとめると、共に「検査ユニット」の発明である本件補正発明と引用発明は、次の点で共通する。 「検査治具を備え、 検査治具が、 プローブピンと、 前記プローブピンが内部に収容されたハウジングと を備え[る]」点。 (ウ)a 前記(ア)aに示したとおり、引用発明の「コンタクトピン11」は、本件補正発明の「プローブピン」に相当する。 b(a) 後記の(エ)で更に検討するとおり、引用発明の「外側腕部11b」は本件補正発明の「第1腕部」に相当し、引用発明の「内側腕部11a」は本件補正発明の「第2腕部」に相当する。 (b) また、引用発明の「Z方向」は本件補正発明の「第1方向」に相当し、「X方向」は本件補正発明の「第2方向」に相当する。 c 前記aを踏まえると、引用発明の「コンタクトピン11は内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されている」から、本件補正発明の「プローブピン」と引用発明の「コンタクトピン11」は、共に「弾性変形可能な第1弾性部」を備える点で一致する。 d(a) 前記b(a)を踏まえると、引用発明の「内側腕部11a」及び「外側腕部11b」は、本件補正発明の「第1接触部」に相当する。 (b) また、引用発明においては、「外側腕部11b、11bが移動する方向は、Z方向に交差するX方向であ[る]」ものである。 (c) してみると、本件補正発明の「プローブピン」と引用発明の「コンタクトピン11」は、共に「前記第1弾性部に対して前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な第1接触部を備える」点で一致する。 e(a) 引用発明は「ICチップ1の種々の性能試験を行[う]」「ICチップ試験用ソケット」の発明であり、「コンタクトピン11、11」の接触端のうち片方の「外側腕部11b、11b」の「先端突部11b’、11b’」が「ICチップ1」の「リード3、3の側面に圧接[する]」から、引用発明の「コンタクトピン11」における、前記「先端突部11b’、11b’とは異なる接触端」は、本件補正発明の「第2接触部」に相当する。 (b) してみると、本件補正発明の「プローブピン」と引用発明の「コンタクトピン11」は、共に「第2接触部」を備える点で一致する。 f(a)i 引用発明の「コンタクトピン11」は後記のii及びiiiに示すものとして特定されるから、「コンタクトピン11」のうち「内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されている」部分は、「内側腕部11a」と「外側腕部11bとに分岐せしめられ[た]」部位をその一端とし、また「ソケット本体10の内底部に貫通固定された」部位をその他端としてその両端が画定される部分であることが明らかである。 ii 「コンタクトピン11は内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されていると共に、コンタクトピン11の先端部は試験時ICチップ1のモールド部2により押し下げられる内側腕部11aと該内側腕部11aが押し下げられた時ICチップ1のリード3の側面に先端突部11b’が圧接する外側腕部11bとに分岐せしめられ[た]」ものであること。 iii 「コンタクトピン11」は「ソケット本体10の内底部に貫通固定された」ものであること。 (b) 前記(a)を踏まえると、引用発明の「コンタクトピン11」の「先端部」であって、「内側腕部11a」と「外側腕部11bとに分岐せしめられ[た]」部位が、「コンタクトピン11」のうち「内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されている」部分の端部に相当することは明らかである。 (c) また、上記(b)で検討したことと同様に、前記(a)を踏まえると、引用発明における「先端突部11b’、11b’とは異なる接触端」(前記e(a)参照)が、「コンタクトピン11」のうち「内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されている」部分の他端である「ソケット本体10の内底部に貫通固定された」部位から設けられたものであることも明らかである。 (d) そして、引用発明においては、「コンタクトピン11、11のうち内側腕部11a、11aの幅細部分が外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部位と、コンタクトピン11、11のうち内底部に貫通固定される部位とは、Z方向において離間して[いる]」から、(引用発明の「Z方向」が本件補正発明の「第1方向」に相当する点(前記b(b)参照)に留意しつつ、)前記d及びeを踏まえると、本件補正発明の「プローブピン」と引用発明の「コンタクトピン11」は、共に次の点で一致する。 「第1接触部」が「前記第1弾性部の前記第1方向の一端に設けられ[た]」ものである点、及び、 「第2接触部」が「前記第1弾性部の前記第1方向の他端に設けられた」ものである点。 g 以上をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点で一致する。 「前記プローブピンが、 弾性変形可能な第1弾性部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の一端に設けられ、前記第1弾性部に対して前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な第1接触部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の他端に設けられた第2接触部と を備え[る]」点。 (エ)a 引用発明の「外側腕部11b」が本件補正発明の「第1腕部」に相当し、引用発明の「内側腕部11a」が本件補正発明の「第2腕部」に相当し、引用発明の「内側腕部11a」及び「外側腕部11b」が本件補正発明の「第1接触部」に相当する。 b(a) 前記(ウ)f(a)を踏まえると、本件補正発明の「第1腕部」と引用発明の「外側腕部11b」は、共に「記第1弾性部の前記一端から延びている」点で共通する。 (b) 引用発明の「外側腕部11b」における「先端突部11b’」は本件補正発明の「接点部」に相当するから、本件補正発明の「第1腕部」と引用発明の「外側腕部11b」は、共に「接点部を有する第1腕部」である点で一致する。 (c) 引用発明においては、「外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接[する]」ものであるから、本件補正発明の「第1腕部」と引用発明の「外側腕部11b」は、共に「前記第2方向から接触可能な接点部を有する」点で一致する。 (d) 前記(a)〜(c)をまとめると、本件補正発明の「第1腕部」と引用発明の「外側腕部11b」は、共に「前記第1弾性部の前記一端から延びていると共に、前記第2方向から接触可能な接点部を有する第1腕部」である点で一致する。 c 引用発明において、「内側腕部11a、11aのうち外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部分は、X方向に延びており」、また「内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bの先端突部11b’、11b’とは、外側腕部11b、11bに対して、共にX方向の同じ側にあ[る]」から、本件補正発明の「第2腕部」と引用発明の「内側腕部11a」は、共に「前記第1腕部から前記第2方向に延びていると共に、前記第1腕部に対して前記接点部と同じ側に配置された第2腕部」である点で一致する。 d(a) 引用発明における「コンタクトピン11、11のうち内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位」は、前記f(a)iを踏まえると、本件補正発明の(第1弾性部との)「接続部分」にも相当する。 (b) また、引用発明においては、「コンタクトピン11、11の内側腕部11a、11a上にICチップ1を載せ、更にICチップ1の上に蓋12を載せた状態で蓋12を押し下げて行くと、コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形し、これにより外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接し、この際内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位を中心として回転する移動を伴[う]」ものである。 (c) してみると、本件補正発明の「第1接触部」と引用発明の「内側腕部11a」及び「外側腕部11b」は、共に「前記第2腕部に外力を加えることにより、前記第1腕部が、前記第1弾性部との接続部分を支点として回転して前記第1弾性部に対して前記第2方向に移動するように構成され[た]」点で一致する。 e 以上をまとめると、本件補正発明の「第1接触部」と引用発明の「内側腕部11a」及び「外側腕部11b」は、次の点で一致する。 「前記第1接触部が、 前記第1弾性部の前記一端から延びていると共に、前記第2方向から接触可能な接点部を有する第1腕部と、 前記第1腕部から前記第2方向に延びていると共に、前記第1腕部に対して前記接点部と同じ側に配置された第2腕部と を有し、 前記第2腕部に外力を加えることにより、前記第1腕部が、前記第1弾性部との接続部分を支点として回転して前記第1弾性部に対して前記第2方向に移動するように構成され[た]」点。 (オ)a 引用発明においては、「コンタクトピン11、11の内側腕部11a、11a上にICチップ1を載せ、更にICチップ1の上に蓋12を載せた状態で蓋12を押し下げて行くと、コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形し、これにより外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接[する]」から、(引用発明の「先端突部11b’」が本件補正発明の「接点部」に相当すること(前記(エ)b(a)参照)にも留意すると、)「コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形」する際には、「外側腕部11b」の「先端突部11b’」が「ICチップ1が載せられる」空間へ露出することが明らかである。すると、上記空間は、本件補正発明における(ハウジングの)「外部」に相当する。 b したがって、本件補正発明の「ハウジング」と引用発明の「ソケット本体10」は、次の点で一致する。 「前記ハウジングが、 前記第2腕部に外力を加えたときに前記第1腕部が前記第2方向に移動して前記第1腕部の前記接点部が外部に露出するように構成され[た]」点。 (カ)a 引用発明の「外側腕部11b」が本件補正発明の「第1腕部」に相当し、引用発明の「内側腕部11a」が本件補正発明の「第2腕部」に相当する(前記(エ)参照)。 b(a) 引用発明の「内側腕部11a、11aのうち外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部分」は、本件補正発明の「本体部」に相当する。 (b) すると、引用発明において、「内側腕部11a、11aのうち外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部分」は、「X方向に延びて[いる]」から、本件補正発明の「本体部」と引用発明の「内側腕部11a」「のうち外側腕部11b」「と分岐せしめられている部分」は、共に「前記第1腕部から前記第2方向に延びている本体部」である点で一致する。 c(a) 引用発明の「内側腕部11a」は「外側腕部11b、11bと分岐せしめられている部分」と「ICチップ1が載せられる部分」を有しているところ、このうち「ICチップ1が載せられる部分はZ方向とは逆の方向に突出している」から、当該「ICチップ1が載せられる部分」は本件補正発明の「突出部」に相当し、してみると、本件補正発明の「突出部」と引用発明の「ICチップ1が載せられる部分」は、共に「前記本体部から前記第1方向」「に突出している」点で一致する。 (b) また、前記「内側腕部11a、11aのうちICチップ1が載せられる部分」が、「ソケット本体10」から突出し、また「ICチップ1が載せられる」空間へと露出することは明らかである。すると、前記aで検討した事項と同様にして、当該空間が、本件補正発明における(ハウジングの)「外部」に相当する。 (c) さらに、引用発明において、「内側腕部11a、11aのうちICチップ1が載せられる部分は、Z方向とは逆の方向に突出している」から、本件補正発明の「突出部」と引用発明の「ICチップ1が載せられる部分」は、共に「前記第1弾性部から離れる方向に突出している」点でも一致する。 d 以上をまとめると、本件補正発明の「第2腕部」と引用発明の「内側腕部11a」は、次の点で一致する。 「前記第2腕部が、 前記第1腕部から前記第2方向に延びている本体部と、 前記本体部から前記第1方向でかつ前記第1弾性部から離れる方向に突出していると共に、前記第1方向でかつ前記第1弾性部から遠い方の先端が前記ハウジングの外部に配置されている突出部と を有[する]」点。 (キ)a 引用発明においては、「コンタクトピン11、11の内側腕部11a、11a上にICチップ1を載せ、更にICチップ1の上に蓋12を載せた状態で蓋12を押し下げて行く」から、「ソケット本体10」には「ICチップ1」を格納するための隙間が画定されていることが明らかであり、すると、当該隙間が本件補正発明の「第1隙間」に相当する。 b(a) 引用発明において、「外側腕部11b、11bの先端突部11b’、11b’は、ICチップ1のリード3、3の側面に圧接するために、相互に対向する」から、前記aを踏まえると、本件補正発明の「接点部」と引用発明の「先端突部11b’、11b’」は、共に「相互に対向し」、「第1隙間を空けて位置」する点で一致する。 (b) 引用発明においては、「コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形し、これにより外側腕部11b、11bが内側へ移動してその先端突部11b’、11b’がリード3、3の側面に圧接し、この際内側腕部11a、11aと外側腕部11b、11bとに分岐せしめられている部位を中心として回転する移動を伴[う]」から、前記aを踏まえると、本件補正発明の「第1腕部」と引用発明の「先端突部11b’」を有する「外側腕部11b」は、共に「第1隙間」で「回転可能」である点で一致する。 c また、前記a及びbを踏まえると、本件補正発明の「第2腕部」の「突出部」と引用発明の「内側腕部11a」の「ICチップ1が載せられる部分」は、共に「第1隙間に位置する」点で一致することが明らかである。 d 以上をまとめると、共に「検査ユニット」の発明である本件補正発明と引用発明は、次の点で共通する。 「前記検査治具の前記接点部が前記第2方向において相互に対向しかつ前記第2方向に前記第1腕部が回転可能な第1隙間を空けて位置し、 前記第2腕部の前記突出部が前記第1隙間にそれぞれ位置している」点。 イ 一致点及び相違点の認定 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記の(イ)に示す相違点において一応の相違があると認められる。 (ア) 一致点 「検査治具を備え、 検査治具が、 プローブピンと、 前記プローブピンが内部に収容されたハウジングと を備え、 前記プローブピンが、 弾性変形可能な第1弾性部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の一端に設けられ、前記第1弾性部に対して前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な第1接触部と、 前記第1弾性部の前記第1方向の他端に設けられた第2接触部と を備え、 前記第1接触部が、 前記第1弾性部の前記一端から延びていると共に、前記第2方向から接触可能な接点部を有する第1腕部と、 前記第1腕部から前記第2方向に延びていると共に、前記第1腕部に対して前記接点部と同じ側に配置された第2腕部と を有し、 前記第2腕部に外力を加えることにより、前記第1腕部が、前記第1弾性部との接続部分を支点として回転して前記第1弾性部に対して前記第2方向に移動するように構成され、 前記ハウジングが、 前記第2腕部に外力を加えたときに前記第1腕部が前記第2方向に移動して前記第1腕部の前記接点部が外部に露出するように構成され、 前記第2腕部が、 前記第1腕部から前記第2方向に延びている本体部と、 前記本体部から前記第1方向でかつ前記第1弾性部から離れる方向に突出していると共に、前記第1方向でかつ前記第1弾性部から遠い方の先端が前記ハウジングの外部に配置されている突出部と を有し、 前記検査治具の前記接点部が前記第2方向において相互に対向しかつ前記第2方向に前記第1腕部が回転可能な第1隙間を空けて位置し、 前記第2腕部の前記突出部が前記第1隙間にそれぞれ位置している、 検査ユニット」である点。 (イ) 相違点 a 相違点1 本件補正発明においては、「検査治具」が「第1検査治具および第2検査治具」であって、「前記第1検査治具および前記第2検査治具の各々が、」「前記プローブピンが内部に収容されたハウジング」を備えるのに対して、 引用発明においては、全ての「コンタクトピン11」(本件補正発明の「プローブピン」に相当する。)が、「ソケット本体10」(本件補正発明の「ハウジング」に相当する。)に収容される点。 b 相違点2 「弾性変形可能な第1弾性部」について、 本件補正発明においては、「プローブピン」が備える「第1弾性部」は、「第1方向に沿って弾性変形可能」であるのに対して、 引用発明においては、「コンタクトピン11は内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されている」ものの、当該「バネ性が付与されている」部分が「Z方向」(本件補正発明の「第1方向」に相当する。)に沿って弾性変形することは明記されていない点。 c 相違点3 本件補正発明においては、「第1接触部」が有する「第1腕部」は、「前記第1方向に沿って延びている」のに対して、 引用発明においては、「外側腕部11b」が「Z方向」(本件補正発明の「第1方向」に相当する。)に沿って延びていることは明記されていない点。 (4) 判断 前記相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア) 前記(2)イ(ウ)「周知技術1の認定」に示したとおり、 「試験用のICソケットを、第1及び第2の検査治具から構成すること」は周知技術である。 (イ) してみれば、引用発明の「ICチップ試験用ソケット」に前記周知技術1を適用して、「コンタクトピン11」及び「ソケット本体10」を第1及び第2の検査治具に振り分けて構成することは、当業者が容易になし得た事項にすぎず、引用発明に当該周知技術1を適用して当該相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について (ア) 本件補正発明における「第1弾性部」が、「第1方向に沿って弾性変形可能」であることに関して、本願の明細書等には次に示す記載がある。 「【図面の簡単な説明】 【0016】 (中略) 【図15】 図3のプローブピンの第8の変形例を示す斜視図。 (後略)」 「【0048】 また、例えば、第1弾性部20は、図15および図16に示すように構成することができる。図15のプローブピン10では、第1弾性部20は、X方向の第1腕部31に対して第2腕部32と異なる側に突出する湾曲状を有している。(後略)」 「【図15】 」 (イ) 前記(ア)で摘記した事項を踏まえると、本件補正発明は、「第1弾性部20」として、「X方向の第1腕部31に対して第2腕部32と異なる側に突出する湾曲状を」呈しているものを含むと理解できる。 (ウ) ここで、本件補正発明の「第1弾性部20」と引用発明の「コンタクトピン11」のうち「内側に湾曲せしめられてバネ性が付与されている」部分とは、共に「湾曲」形状を呈するものとして共通し、また引用発明においては、「コンタクトピン11、11の内側腕部11a、11a上にICチップ1を載せ、更にICチップ1の上に蓋12を載せた状態で蓋12を押し下げて行くと、コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形[する]」ものである。 (エ) そして、形状の変化により弾性力を与える弾性部材とは、当該部材が呈する形状が変化する方向に対応して弾性力を与える方向を画定するものであるという一般的な理解に鑑みれば、引用発明においてもZ方向(本件補正発明の「第1方向」に相当する。)に沿って弾性変形可能であるといえるから、前記相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点3について 引用文献1の第1図及び第2図から、「外側腕部11b、11b」及び「先端突部11b’、11b’」がZ方向成分を含む方向へ延びていることが読み取れる。そして、本件補正発明の「第1腕部」が曲線を含む構造であって「第1方向」のみに延びているものではないことを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「第1接触部」が有する「第1腕部」が「前記第1方向に沿って延びている」点で一致するものであり、前記相違点3は実質的な相違点ではない。 仮にそうでないとしても、本件補正発明における「接点部」及び「第1腕部」を備える「検査ユニット」と、引用発明における「外側腕部11b、11b」及び「先端突部11b’、11b’」を備える「ICチップ試験用ソケット」とは、共に導通検査、動作特性検査等に際して検査対象物の接続端子に接触して行うための構成である点で共通するところ(本願明細書の段落【0002】、【0034】等を参照。)、引用発明の「外側腕部11b、11b」及び「先端突部11b’、11b’」について、どのような傾斜や角度からなる形状と定めるかは、先端突部がICチップのリード側面に圧接して圧力を加える様態、ICチップそのものの大きさ又は形状、及び、ICチップの当該大きさ又は形状とICチップに設けられるリードとの位置関係などを踏まえ、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎないから、引用発明の「外側腕部11b」を「Z方向」(本件補正発明の「第1方向」に相当する。)に沿って延びている形状とすることもまた当業者が適宜なし得たことである。 エ 総合評価 前記ア〜ウの前記相違点1〜3に係る検討を総合してみても、相違点1〜3は、格別のものではなく、引用発明において、相違点1〜3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において次のアに示す主張をしている(以下「請求人の主張」という。)。 当該主張に対する合議体の判断は、後記のイに示すとおりである。 ア 審判請求書における請求人の主張の内容 (ア) 引用発明の外側腕部11bは、引用文献1の第1図及び第2図に示されているように、内側腕部11aに外力が加えられていないときはソケット本体10の外部に位置し、内側腕部11aに外力が加えられたときはソケット本体10の内部に位置し、ソケット本体10の外部に露出していない。 (イ) また、引用発明の内側腕部11aは、引用文献1の第1図及び第2図に示されているように、外力の印加の有無にかかわらず常にソケット本体10の内部に位置し、ソケット本体10の外部に位置していない。 つまり、引用文献1には、本件補正発明の「ハウジング」及び「第2腕部」に相当する構成が開示されていない。 したがって、本件補正発明は、引用文献1〜4を組み合わせても得ることはできず、進歩性を有するものである。 イ 請求人の主張についての当審の判断 (ア) 引用発明の「外側腕部11b」(本件補正発明の「第1腕部」に相当する。)について、前記3(3)ア(オ)で検討したとおり、「外側腕部11b」の「先端突部11b’」は、「コンタクトピン11、11が内側へより湾曲変形」する際には、「ICチップ1が載せられる」空間へ露出するものである。 (イ) 次に、引用発明の「内側腕部11a」(本件補正発明の「第2腕部」に相当する。)について、前記(3)ア(カ)で検討したとおり、本件補正発明の「第2腕部」と引用発明の「内側腕部11a」は、共に「ハウジングの外部に配置されている突出部」を有する点で一致する。 (ウ) また、前記(4)で検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 以上より、請求人の主張は採用できない。 (6) 本件補正についてのむすび 以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1〜6に係る発明は、令和4年11月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に摘記した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由2は、次のとおりである。 理由2(進歩性欠如) 本願発明は、下記の引用文献1、3及び4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:実願昭60−57314号(実開昭61−172487号) のマイクロフィルム 引用文献3:特開2010−8388号公報 引用文献4:特開平7−254468号公報 3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ア)に示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)ア(ウ)で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。 引用文献3及び4には、前記第2の3(2)イ(ア)及び(イ)に示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)イ(ウ)で認定したとおりの周知技術1が例示されていると認められる。 4 対比・判断 本願発明は、「第1隙間」について、本件補正後の「前記第1腕部が回転可能な」とする限定を省いたものである(前記第2の2「本件補正の目的」参照)。 そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 (中略) 〔審決分類〕P18 .575−Z (G01R) 121 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2024-03-28 |
結審通知日 | 2024-04-02 |
審決日 | 2024-04-18 |
出願番号 | P2018-210794 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
九鬼 一慶 田邉 英治 |
発明の名称 | プローブピン、検査治具、検査ユニットおよび検査装置 |
代理人 | 徳山 英浩 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 岩木 宣憲 |