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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1411989
総通号数 31 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-05-12 
確定日 2024-06-05 
事件の表示 特願2020−215296「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月 4日出願公開、特開2022− 99203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)12月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年12月22日、台湾、2019年12月31日、米国)(以下、本願の最先の優先権主張の日である2019年12月31日を「優先日」という。)を出願日とする外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和 3年 4月20日 :翻訳文の提出
令和 4年 3月22日付け:拒絶理由通知書
同年10月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 1月 4日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月17日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月12日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続補正書でした補正を「本件補正」という。)の提出

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものである。本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 第1の基板、
前記第1の基板に対向して配置された第2の基板、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置された電池ユニット、
前記電池ユニットと前記第1の基板の間に配置された第1の熱硬化性樹脂層、
前記電池ユニットと前記第1の熱硬化性樹脂層の間に配置された第1の熱可塑性樹脂層、
前記電池ユニットと前記第2の基板の間に配置された第2の熱硬化性樹脂層、および
前記電池ユニットと前記第2の熱硬化性樹脂層の間に配置された第2の熱可塑性樹脂層を含む太陽電池モジュールであって、
前記第1の熱可塑性樹脂層および前記第2の熱可塑性樹脂層は、それぞれ、220μm以上、320μm以下の厚さを有する、太陽電池モジュール。」

(2) 本件補正後の請求項1
「 第1の基板、
前記第1の基板に対向して配置された第2の基板、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置された電池ユニット、
前記電池ユニットと前記第1の基板の間に配置された第1の熱硬化性樹脂層、
前記電池ユニットと前記第1の熱硬化性樹脂層の間に配置された第1の熱可塑性樹脂層、
前記電池ユニットと前記第2の基板の間に配置された第2の熱硬化性樹脂層、および
前記電池ユニットと前記第2の熱硬化性樹脂層の間に配置された第2の熱可塑性樹脂層を含む太陽電池モジュールであって、
前記第1の熱可塑性樹脂層および前記第2の熱可塑性樹脂層は、それぞれ、220μm以上、250μm以下の厚さを有する、太陽電池モジュール。」

2 本件補正の適否
(1) 本件補正の目的
ア 本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の熱可塑性樹脂層および前記第2の熱可塑性樹脂層」の「厚さ」を「220μm以上、320μm以下」から「220μm以上、250μm以下」に限定するものである。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。
ウ したがって、本件補正のうちの請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2) 独立特許要件について
本件補正のうち請求項1についての補正は、前記(1)のとおり、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載した事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討を行う。

ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載した事項(前記1(2)参照)により特定されるとおりのものであると認める。

イ 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 特開2013−007045号公報(以下「引用文献1」という。)の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1は、本願の優先日前に頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であり、次の記載がある。下線は、当合議体において付したものであり、引用発明の認定に直接用いるところに付した。
a 段落【0001】、【0010】
「【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物およびその用途に関する。
より詳しくは、本発明(第1の発明)は、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する成形品、および熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する各種物品に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた機械的性質を示し、かつ常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れる熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する成形品、および熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する各種物品に関する。」
「【0010】
また、より詳しくは、本発明(第10の発明)は、各種電気電子素子、特に太陽電池を封止するのに適した電気電子素子用封止シート、該封止シートの各種用途(太陽電池用封止シート、太陽電池モジュール、発電設備など)に関する。」

b 段落【0050】〜【0061】、【0072】
「【0050】
また、従来、ガラス、プラスチック等の板状物またはシート状物からなる表裏面材間に太陽電池を封止するためのシート(太陽電池封止用シート)として、有機過酸化物を含有したエチレン・酢酸ビニル共重合体(本明細書において、EVAともいう。)は、樹脂特性として、柔軟で透明性が高く、また、適切な耐候安定剤、接着促進剤などの添加剤を配合することで長期的耐久性が得られるため、一般的に使用されてきている。
【0051】
しかしながら、EVAは融点が低く、太陽電池モジュールが使用される環境温度では、熱変形を起こすなど耐熱性に問題がある。このため、有機過酸化物の配合によって、架橋構造を形成させることで耐熱性を発現させている。
【0052】
太陽電池封止用シートの作製には、ポリオレフィンを成形できる公知のシート成形法が用いられるが、上述の有機過酸化物を配合すると、有機過酸化物の分解を防止するため、低温での成形を余儀なくされ、高速生産性が阻害されるという問題があった。
【0053】
また、(ガラス、プラスチック)/(太陽電池封止用シート)/(太陽電池セル)/(太陽電池封止用シート)/(バックシート)構成を有する太陽電池モジュールの作製工程においては、真空熱ラミネートによる仮接着工程、および高温オーブンによる架橋工程の二工程が一般的に行われる。こうした有機過酸化物による架橋工程には数十分を有するために、架橋工程の時間短縮および廃止が強く求められている。
【0054】
また、長期間使用の際には、EVA材料の分解ガス(酢酸ガス)またはEVA自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子に悪影響を与えて発電効率が低下するという懸念がある。
【0055】
これに対して、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた太陽電池封止シートが提案されている(特許文献23参照)。これらの材料により太陽電池素子への悪影響は低減されると考えられるが、これらの材料は耐熱性および柔軟性のバランスが充分ではない。また、非架橋では良好な耐熱性を発現しないため、架橋工程の省略は困難であった。以上が第9の発明の背景技術である。
【0056】
また、近年の電気電子素子の発達は著しく、社会、産業、生活のあらゆる場面で電気電子素子が広く用いられている。一般に電気電子素子は、湿分、酸化性物質などの影響を受け受けやすいため、その安定動作および長寿命の実現には、これを封止することが広く行われている。
【0057】
今日、各種の素材が、電気電子素子を封止するために製造、供給されているが、中でも有機高分子を用いた封止シートは、比較的広い面積をカバーできること、使用が簡単であることなどから極めて有用である。また、透明性の確保が比較的容易であり、光を利用する電気電子素子、特に太陽電池を封止するため、特に好適に用いられている。
【0058】
太陽電池は、建物の屋根部分などの屋外で使用する場合が多いため、太陽電池を封止した太陽電池モジュールの形で使用することが一般的である。太陽電池モジュールは、通常、多結晶シリコンなどにより形成された太陽電池素子を、軟質透明樹脂からなる太陽電池封止材で挟み積層し、さらに表裏両面を太陽電池モジュール用保護シートでカバーした構造になっている。すなわち、典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)/太陽電池用封止シート/太陽電池素子/太陽電池用封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)という積層構造になっている。この結果、太陽電池モジュールは、耐候性を有し、建物の屋根部分などの屋外での使用にも適する。
【0059】
従来、太陽電池用封止シートを構成する材料(太陽電池封止材)としては、透明性および柔軟性などから、上述のように、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が広く用いられていた(例えば、特許文献24参照)。EVAを太陽電池封止材に使用する場合、充分な耐熱性を付与するために一般的に架橋処理が行われるが、この架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、太陽電池モジュールの生産速度および生産効率を低下させる原因となっていた。また、EVAが分解して発生する酢酸ガスなどの成分が、太陽電池素子に影響を与える可能性が懸念されていた。
【0060】
上記の技術的課題を解決するための方策の1つとして、非架橋の樹脂からなる太陽電池用封止シートを用いることが提案されている(例えば、特許文献25参照)。しかし、太陽電池の生産性、耐環境性および寿命に対する要求がさらに高いレベルに達するにつれ、特許文献25に具体的に提案されるEAA、EMAAなどの樹脂を用いた場合よりもさらに高いレベルで透明性、耐熱性および柔軟性を同時に満足させることが必要であった。この様な要求に応えることは、太陽電池以外の電気電子素子用の封止シートとしての使用においても極めて有用である。
【0061】
また、封止シートを太陽電池モジュールなどの用途において使用する場合、ガラスなどと積層して使用する場合が多く、ガラスなどとの接着性は実用上重要である。一部の従来の封止シートは、ガラスなどとの接着性が不充分な場合があり、その改良が強く望まれていた。以上が第10の発明の技術背景である。」
「【0072】
第十の発明の目的は、上記の課題を解決し、太陽電池をはじめとする各種の電気電子素子の保護に好適であり、優れた透明性、耐熱性および柔軟性を備えた電気電子素子用封止シートを提供することにある。また、第十の発明の目的は、この優れた電気電子素子用封止シートに、実用上重要な優れた接着性をも付与することにある。」

c 段落【0616】〜【0688】
「【0616】
10.第十の発明
以下、第十の発明について詳細に説明する。
第十の発明は、ショアーA硬度が50〜90であり、エチレン含量が60〜95mol%であるエチレン系共重合体からなる層(I−10)、および、示差走査熱量計で観測した融点が100℃以上であるプロピレン系重合体(A10)0〜90重量部と、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80であり、示差走査熱量計で観測した融点が100℃未満であるか、または融点が観測されないプロピレン系共重合体(B10)10〜100重量部((A10)と(B10)との合計は100重量部)とからなる熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)を有する、電気電子素子用封止シートである。
【0617】
以下、第十の発明について詳細に説明する。
〈エチレン系共重合体からなる層(I−10)〉
[エチレン系共重合体]
第十の発明に用いられる層(I−10)に用いられるエチレン系共重合体は、エチレンと少なくとも1種のエチレン以外のモノマーとを共重合して得られる共重合体であって、ショアーA硬度が50〜90であり、エチレン由来の構成単位を60〜95mol%含む。
【0618】
ショアーA硬度が上記範囲にあると、太陽電池セルを封入する際にセルの割れを防止できるため好ましい。ショアーA硬度は、好ましくは55〜88、より好ましくは60〜85である。ショアーA硬度は、JIS K 6301の規定に従い測定することができる。
エチレン含有量が上記範囲にあると、ショアーA硬度を上記範囲とすることが容易なため好ましい。エチレン含有量は、好ましくは65〜92mol%、より好ましくは70〜90mol%である。エチレン含有量は、13C−NMRのスペクトルの解析により各モノマーの量比を定量化することで求められる。
【0619】
層(I−10)に用いられるエチレン系共重合体は、上記の硬度およびエチレン含量の条件を満たしていればよく、エチレン以外のモノマーの種類には特に制限はない。従って、エチレンと共重合が可能である各種のモノマーを適宜使用することができるが、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、およびオクテン−1からなる少なくとも1種類のモノマーを用いることが望ましい。これらのモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を用いる場合の組合せについても、特に制限はない。
【0620】
中でも、酢酸ビニル、プロピレンおよび/または1−ブテンが共重合成分であると、透明性、柔軟性などに優れたエチレン系共重合体が得られるため好ましい。従って、上記エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、または、エチレン−ブテン共重合体であることが特に望ましい。
【0621】
[エチレン−酢酸ビニル共重合体]
第十の発明に好ましく用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)は、酢酸ビニル(VA)由来の構成単位を5〜40wt%、好ましくは10〜35wt%含むことが望ましい。VAの含有率がこの範囲にあると、樹脂の耐候性、柔軟性、透明性、機械的性質、成膜性などのバランスが優れる。
【0622】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR2.16)(ASTM D 1238に従い、190℃、荷重2.16kgで測定)は0.1〜50g/10min、好ましくは1〜30g/10minの範囲内であることが望ましい。
層(I−10)においては、1種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体のみを用いてもよく、組成、分子量などの異なる2種類以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いてもよい。
…(中略)…
【0629】
[シランカップリング剤(Y10)]
第十の発明においては、層(I−10)は、さらに、上記エチレン系共重合体100重量部に対して、シランカップリング剤(Y10)を0.1〜5重量部、有機過酸化物(Z10)を0〜5重量部、および、耐候安定剤を0〜5重量部有することが望ましい。
【0630】
カップリング剤(Y10)は、通常ガラス、プラスチックなどに対する接着性を向上させることを主たる目的として配合される。
カップリング剤(Y10)としては、第十の発明の層(I−10)と、ガラス、ポリエステル樹脂などの他の層との接着性を向上できるものであれば特に制限されないが、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられる。特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。シランカップリング剤については公知のものが使用でき、特に制限はないが、具体的には、第九の発明に用いられるシランカップリング剤と同様のものが挙げられる。
【0631】
シランカップリング剤は、エチレン系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部配合することが好ましい。カップリング剤の配合量が上記範囲にあると、接着性を充分に改善できるとともに、フィルムの透明性、柔軟性などに悪影響を与えないため好ましい。
【0632】
[ラジカル開始剤]
また、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤は、ラジカル開始剤を用いることにより、上記エチレン系共重合体とグラフト反応して、ガラスとのより強固な接着力を発現することが可能となる。第十の発明で好ましく用いられるラジカル開始剤は、上記エチレン系共重合体をカップリング剤でグラフトすることが可能なものであればよく、その種類には特に制限はない。中でも、有機過酸化物(Z10)は、ラジカル開始剤として特に好ましい。
【0633】
この場合、有機過酸化物(Z10)は、上記エチレン系共重合体100重量部に対して0〜5重量部の量含まれることが好ましい。有機過酸化物(Z10)が含まれる場合には上記エチレン系共重合体100重量部に対して好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜3重量部である。
有機過酸化物(Z10)としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、好ましい具体例としては、第八の発明に用いられる有機過酸化物(Z8)と同様のものが挙げられる。
…(中略)…
【0637】
[層(I−10)の構成および成形方法]
層(I−10)の厚みは通常10μm〜1000μm、好ましくは20〜600μmである。厚みがこの範囲内であると、充分なガラスとの接着強度を有するとともに、充分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。
【0638】
層(I−10)の成形方法としては特に制限されないが、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)、圧縮成形、カレンダー成形などを採用することが可能である。第十の発明においては、キャスト成形機、押出しシート成形機、インフレーション成形機、射出成形機などの公知の溶融押出機を用いて、後述の熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)と共押出して積層体を得る方法、または、あらかじめ成形された熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)上に層(I−10)を溶融または加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。
…(中略)…
【0640】
〈熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)〉
[熱可塑性樹脂組成物(X10)]
第十の発明に用いられる層(II−10)は、下記に詳述するプロピレン系重合体(A10)およびプロピレン系共重合体(B10)が下記量で配合された熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる。
【0641】
すなわち、熱可塑性樹脂組成物(X10)は、プロピレン系重合体(A10)が0〜90重量部、好ましくは0〜70重量部、より好ましくは10〜50重量部と、プロピレン系共重合体(B10)が10〜100重量部、好ましくは30〜100重量部、より好ましくは50〜90重量部とからなる。ここで、(A10)および(B10)の合計量は100重量部である。なお、層(II−10)に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X10)は、第十の発明の目的を損なわない範囲で、上記(A10)および(B10)以外の成分、例えば(A10)および(B10)以外の樹脂、ゴム、無機充填剤などを含有することができる。
…(中略)…
【0658】
プロピレン系共重合体(B10)の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B10−1)を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B10−1)を用いることで、柔軟性、耐熱性、機械強度、素子封止性および透明性が良好な電気電子素子用シートとなる。ここで、素子封止性とは、良好な柔軟性により、電気電子素子を充填する際の素子の割れ率を低減できることをいう。
【0659】
プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B10−1)は、プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%、より好ましくは61〜86モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、好ましくは5〜14モル%、より好ましくは8〜14モル%、および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは6〜25モル%の量含んでいる。α−オレフィンに関しては、1−ブテンが特に好ましい。
…(中略)…
【0663】
[層(II−10)の構成および成形方法]
層(II−10)の厚みは通常0.1mm〜5mm、好ましくは0.1〜1mmである。厚みがこの範囲内であると、ラミネート工程における、ガラスおよび太陽電池セルの破損が抑制できるとともに、充分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。
【0664】
層(II−10)の成形方法としては特に制限はないが、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)、圧縮成形、カレンダー成形などが挙げられる。また、上記シートにはエンボス加工を施すことが可能であり、エンボス加工によりシートの表面を装飾することで、シート同士のブロッキングを防止し、さらに、エンボスが、ラミネート時の太陽電池素子などに対するクッションとなって、これらの破損を防止するため好ましい。
…(中略)…
【0666】
〈電気電子素子用封止シート〉
第十の発明の電気電子素子用封止シートは、上記エチレン系共重合体からなる層(I−10)を少なくとも1層と、熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)を少なくとも1層とを有していればよい電気電子素子封止シート(シート状電気電子素子封止材ともいう。)である。
…(中略)…
【0676】
[太陽電池用封止シート]
第十の発明の電気電子素子用封止シートは、耐熱性、透明性および柔軟性に優れるため、強い光を利用する電気電子素子、特に、太陽電池用の封止シート(太陽電池封止シート、シート状太陽電池封止材)としての利用に適している。太陽電池封止シートとして使用する場合は、上記電気電子素子用封止シートをそのまま使用してもよく、他の層をさらに追加するなどの加工を行ってから使用してもよい。
【0677】
[太陽電池モジュール]
太陽電池モジュールは、通常、多結晶シリコンなどにより形成された太陽電池素子を太陽電池用封止シートで挟み積層し、さらに表裏両面を保護シートでカバーした構造になっている。すなわち、典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)/太陽電池用封止シート/太陽電池素子/太陽電池用封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)という構成である。もっとも、第十の発明の好ましい実施態様の1つである太陽電池モジュールは、上記の構成には限定されず、第十の発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の層を適宜設けることができる。典型的には、接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、光拡散層などを設けることができるが、これらに限定されない。これらの層を設ける位置には特に限定はなく、そのような層を設ける目的およびそのような層の特性を考慮して、適切な位置に設けることができる。
【0678】
[太陽電池モジュール用表面保護シート]
上記太陽電池モジュールに用いられる太陽電池モジュール用表面保護シートには特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめ、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能を具備することが好ましい。また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスが小さく、透明性の高いシートであることが好ましい。
【0679】
上記太陽電池モジュール用表面保護シートの材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等からなる樹脂フィルム、ガラス基板などが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、透明性、強度、コストなどの点で優れたポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート樹脂が好適に用いられる。
…(中略)…
【0682】
上述のように、ポリエステル樹脂およびガラスは、表面保護シートとして優れた特性を有しているが、その一方で接着が比較的困難なことで知られている。第十の発明の太陽電池用封止シートの層(I−10)は、接着性に優れた特定のエチレン系共重合体からなり、かつ、好ましくはシランカップリング剤を含有しているため、ポリエステル樹脂およびガラスとの接着性に優れている。従って、第十の発明の太陽電池モジュールにおいては、上記太陽電池用封止シートが、その層(I−10)において表面保護シートと接合されていることが望ましい。
【0683】
[太陽電池モジュール用裏面保護シート]
上記太陽電池モジュールに用いられる太陽電池モジュール用裏面保護シートには特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の表面保護シートと同様に、耐候性、機械強度などの諸特性が求められる。従って、表面保護シートと同様の材質で太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成してもよい。すなわち、ポリエステル樹脂およびガラスを好ましく用いることができる。
【0684】
第十の発明の太陽電池用封止シートの層(I−10)は、接着性に優れた特定のエチレン系共重合体からなり、かつ、好ましくはシランカップリング剤を含有しているため、ポリエステル樹脂およびガラスとの接着性に優れている。従って、第十の発明太陽電池モジュールにおいては、上記太陽電池用封止シートが、その層(I−10)において裏面保護シートと接合されていることが望ましい。
…(中略)…
【0686】
[太陽電池素子]
第十の発明の太陽電池素子は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に制限はなく、例えば、シリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)太陽電池、化合物半導体(3−5族、2−6族、そのほか)太陽電池、湿式太陽電池、有機半導体太陽電池などを用いることができる。この中では発電性能とコストとのバランスなどの観点から、多結晶シリコン太陽電池が好ましい。
【0687】
シリコンおよび化合物半導体ともに、太陽素子として優れた特性を有しているが、外部からの応力、衝撃などにより破損しやすいことで知られている。第十の発明の太陽電池用封止シートの層(II−10)は、柔軟性に優れた特定の熱可塑性樹脂組成物(X10)からなるため、太陽電池素子への応力および衝撃などを吸収して、太陽電池素子の破損を防ぐ効果が大きい。従って、上記太陽電池モジュールにおいては、第十の発明の太陽電池用封止シートが、その層(II−10)において太陽電池素子と接合されていることが望ましい。
【0688】
また、層(II−10)が熱可塑性樹脂組成物(X10)からなるため、一旦太陽電池モジュールを作製した後であっても、比較的容易に太陽電池素子を取り出すことが可能であり、リサイクル性に優れている点でも好ましい。」

d 段落【0862】〜【0869】
「【0862】
〈第十の発明〉
[測定方法]
以下の実施例および比較例においては、電気電子素子用封止シートの特性を以下の測定方法に従って評価した。
・ 柔軟性
実施例におけるJIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した(実施例についてはシートの層(II−10)を形成する組成物を、比較例については単層シートを形成する組成物を、190℃で加熱後約40℃/minで冷却して得られた2mm厚みのプレスシートを用いて測定した。)。
・ 透明性(内部ヘイズ)
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−2000」を用い、シクロヘキサノール溶液中でシートの拡散透過光量および全透過光量を測定し、下式により内部ヘイズを計算した。
内部ヘイズ(%)=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
【0863】
・ 透明性(光線透過率)
フィルム表面の凹凸による影響を除去するために、PET(東レ(株)製 ルミラー)で保護しながら160℃で加熱加圧(160℃、2気圧、10min)後、空冷で放置した後、PETフィルムを剥がしてサンプル(厚み0.4mm)を得た。得られたサンプルを、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−2000」を用いて、下式により光線透過率を測定した。
光線透過率(%)=100×(全透過光量)/(入射光量)
・ 耐熱性(TMA)
JIS K7196に準拠して、実施例についてはシートの層(II−10)に対して、比較例については単層シートに対して、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cm2の圧力をかけ、TMA曲線を測定し、これより針進入温度(℃)を求めた。
・ ガラスとの接着強度、外観
実施例についてはシートの層(I−10)を、比較例については単層シートを、ガラス板(4mm厚)に加熱圧着(条件1:150℃、2気圧、10min、条件2:160℃、2気圧、10min)させたときの剥離強度(室温)を評価した。結果を以下の基準に従い分類した。
A:強度に接着し剥離困難
B:接着しているが剥離可能
C:接着せず
・ 圧縮永久歪
JIS K6301に従い、厚み2mmtプレスシートを6枚重ね合わせて25%圧縮し、所定の温度(23℃、または70℃)で24時間保持した後解放し、試験後厚みを測定した。この結果より、下式に従って残留歪み(圧縮永久歪)を算出した。
残留歪(%)=100×(試験前厚み−試験後厚み)/(試験前厚み−圧縮時の厚み)
【0864】
[原材料]
以下の実施例および比較例において、サンプルの作製に使用した樹脂の種類、物性などは、以下のとおりである。
(A10)アイソタクティックポリプロピレン(rPP):
融点(Tm)=140℃、
メルトフローレート(MFR)(230℃)=7g/10min、
アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)=0.96、
分子量分布(Mw/Mn)=4.8、エチレン含量=2.0モル%、1−ブテン含量=1.5モル%のプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体を使用した。
(B10)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(PEBR)
国際公開2004/87775号パンフレットの実施例に記載と同様の方法で製造した、
エチレン含量=14.0モル%、1−ブテン含量=20モル%、
メルトフローレート(MFR)(230℃)=8.5g/10min、
融点(Tm)=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、
mm値=92%、
分子量分布(Mw/Mn)=2.0、
ショアーA硬度=38のプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体を使用した。
【0865】
具体的には以下のように製造した。すなわち、充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.79MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.79MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0866】
(C10)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
エチレン含量=89mol%(FT−IR法)、
ショアーA硬度=79
メルトフローレート(MFR)(190℃)=15g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用した。
(D10)エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)
メルトフローレート(MFR)(190℃)=15g/10min、
密度=870kg/m3、
エチレン含量=85mol%、
ショアA硬度=72のエチレン・1−ブテンランダム共重合体を使用した。
(E10)エチレン・メタクリル酸共重合体(E(M)AA)
メタクリル酸含量=12wt%(FT−IR法)、
メルトフローレート(MFR)(190℃)=14g/10minのエチレン−メタクリル酸共重合体を使用した。
(Y10)シランカップリング剤
東レ・ダウコーニング製の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用した。
(Z10)過酸化物
アルケマ吉富株式会社のDCP(ジクミルパーオキサイド)を使用した。
【0867】
[上記原料の物性測定方法]
(1)コモノマー(エチレン、1−ブテン)含量
13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
(2)MFR
ASTM D−1238に準拠し、190℃または230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
(3)融点
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、とした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
(6) ショア−A硬度
硬度硬度は、JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0868】
[実施例10−1]
アイソタクティックポリプロピレン(A10)(rPP)20重量部と、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B10)(PEBR)80重量部とからなる熱可塑性組成物(23℃での圧縮永久歪:20%、70℃での圧縮永久歪:61%)を用いて層(II−10)を構成し(厚さ:300μm、押出し温度:190℃)、エチレン酢酸ビニル共重合体(C10)(EVA)100重量部、シランカップリング剤(Y10)1.5重量部、および過酸化物(Z10)1.0重量部を用いて層(I−10)を構成し(厚さ:100μm、押出し温度:120℃)、これらからなる多層シート(電気電子素子用封止シート)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を行った。結果を表10−1に示す。
【0869】
[実施例10−2]
アイソタクティックポリプロピレン(A10)(rPP)20重量部と、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B10)(PEBR)80重量部とからなる熱可塑性組成物(23℃での圧縮永久歪:20%、70℃での圧縮永久歪:61%)を用いて層(II−10)を構成し(厚さ:300μm、押出し温度:190℃)、エチレン・1−ブテン共重合体(D10)(EBR)100重量部、シランカップリング剤(Y10)1.5重量部部、および過酸化物(Z10)1.0重量部を用いて層(I−10)を構成し(厚さ:100μm、押出し温度130℃)、これらからなる多層シート(電気電子素子用封止シート)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を行った。結果を表10−1に示す。」

e 段落【0883】、【図9】
「1: 太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)
2: 太陽電池モジュール用護シート(裏面保護シート)
3: 太陽電池用封止シート
4: 太陽電池用封止シート
31: 層(I−10)
41: 層(I−10)
32: 層(II−10)
42: 層(II−10)
5: 太陽電池素子





(イ) 引用文献1から読み取れる事項
前記(ア)において摘記した事項によれば、引用文献1には、【図9】(なお、当該図は、【0138】及び【図9】では、「図10−1」と称されている。)に係る第十の発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールについて、次の事項が記載されていると認められる(認定に用いた段落番号等を括弧内に付してある。以下同じ。)。
a 認定事項1
「太陽電池モジュールは、表面保護シート1/太陽電池用封止シート3/太陽電池素子5/太陽電池用封止シート4/裏面保護シート2という構成であること。(【0677】)」

b 認定事項2
「前記太陽電池モジュールに含まれる太陽電池用封止シート3は、
エチレン系共重合体からなる層(I−10)31、および熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32を有し、(【0616】)
エチレン系共重合体からなる層(I−10)31において表面保護シート1と接合されており、(【0682】)
熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32において太陽電池素子5と接合されていること。(【0687】)」

c 認定事項3
「前記太陽電池モジュールに含まれる太陽電池用封止シート4は、
エチレン系共重合体からなる層(I−10)41、および熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42を有し、(【0616】)
エチレン系共重合体からなる層(I−10)41において裏面保護シート2と接合されており、(【0684】)
熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42において太陽電池素子5と接合されていること。(【0687】)」

(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)で認定した事項によれば、引用文献1には、【図9】に係る第十の発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「太陽電池モジュールであって、(【0677】)
太陽電池モジュールは、表面保護シート1/太陽電池用封止シート3/太陽電池素子5/太陽電池用封止シート4/裏面保護シート2という構成であり、(前記(イ)a)
表面保護シート1の材料は、ガラス基板であり、(【0679】)
太陽電池用封止シート3は、エチレン系共重合体からなる層(I−10)31、および熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32を有し、エチレン系共重合体からなる層(I−10)31において表面保護シート1と接合されており、熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32において太陽電池素子5と接合されており、(前記(イ)b)
太陽電池素子5は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであり、(【0686】)
太陽電池用封止シート4は、エチレン系共重合体からなる層(I−10)41、および熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42を有し、エチレン系共重合体からなる層(I−10)41において裏面保護シート2と接合されており、熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42において太陽電池素子5と接合されており、(前記(イ)c)
表面保護シート1と同様の材質で裏面保護シート2を構成しており、(【0683】)
層(I−10)に用いられるエチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体であり、(【0619】、【0620】)
層(I−10)は、エチレン系共重合体100重量部に対して、シランカップリング剤(Y10)を0.1〜5重量部、有機過酸化物(Z10)を0〜5重量部有し、(【0629】)
シランカップリング剤は、ラジカル開始剤を用いることにより、エチレン系共重合体とグラフト反応して、ガラスとのより強固な接着力を発現することが可能となるものであり、ラジカル開始剤は、エチレン系共重合体をカップリング剤でグラフトすることが可能なものであり、有機過酸化物(Z10)は、ラジカル開始剤として特に好ましく、(【0632】)
層(I−10)の成形方法としては、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)を採用し、(【0638】)
熱可塑性樹脂組成物(X10)は、プロピレン系重合体(A10)が0〜90重量部と、プロピレン系共重合体(B10)が10〜100重量部とからなり、(【0641】)
プロピレン系共重合体(B10)の好ましい具体例として、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B10−1)を挙げることができ、(【0658】)
層(II−10)の厚みは0.1〜1mmである、(【0663】)
太陽電池モジュール。」

ウ 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。

a 「太陽電池モジュール」の発明である点について
本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」の発明である点で共通する。

b 「第1の基板」及び「第2の基板」について
(a) 以下の対比を行うに先立ち、引用発明の「太陽電池モジュール」の積層構造について整理すると、引用発明では、「太陽電池モジュールは、表面保護シート1/太陽電池用封止シート3/太陽電池素子5/太陽電池用封止シート4/裏面保護シート2という構成であり」、「太陽電池用封止シート3は、エチレン系共重合体からなる層(I−10)31、および熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32を有し、エチレン系共重合体からなる層(I−10)31において表面保護シート1と接合されており、熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32において太陽電池素子5と接合されており」、「太陽電池用封止シート4は、エチレン系共重合体からなる層(I−10)41、および熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42を有し、エチレン系共重合体からなる層(I−10)41において裏面保護シート2と接合されており、熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42において太陽電池素子5と接合されて[いる]」ことから、結局、当該「太陽電池モジュール」は次の積層構造となっていると認められる。
「表面保護シート1/エチレン系共重合体からなる層(I−10)31/熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32/太陽電池素子5/熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42/エチレン系共重合体からなる層(I−10)41/裏面保護シート2」(以下「引用例積層構造」という。)

(b) 引用発明の「表面保護シート1」は、その材料が「ガラス基板」であるから、本件補正発明の「第1の基板」に相当する。そして、引用発明の当該「表面保護シート1」は、引用例積層構造のとおり、本件補正発明でいう「太陽電池モジュール」に含まれている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「第1の基板」を含む点において一致する。

(c) 引用発明の「裏面保護シート2」は、「表面保護シート1と同様の材質で」構成されているから、前記(b)と同様の理由で、本件補正発明の「第2の基板」に相当し、また、本件補正発明でいう「太陽電池モジュール」に含まれている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「前記第1の基板に対向して配置された第2の基板」を含む点において一致する。

c 「電池ユニット」について
引用発明の「太陽電池素子5」は、本件補正発明の「電池ユニット」に相当する。そして、引用発明の当該「太陽電池素子5」は、引用例積層構造によれば、「表面保護シート1」(本件補正発明の「第1の基板」に相当。)と「裏面保護シート2」(本件補正発明の「第2の基板」に相当。)の間に配置されている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置された電池ユニット」を含む点において一致する。

d 「第1の熱硬化性樹脂層」及び「第2の熱硬化性樹脂層」について
(a) 引用発明の「太陽電池用封止シート3」に含まれる「エチレン系共重合体からなる層(I−10)31」は、本件補正発明の「第1の熱硬化性樹脂層」とは、第1の所定の層である点で共通する。そして、引用発明の当該層は、前記のとおり「太陽電池用封止シート3」に含まれているところ、引用例積層構造によれば、「太陽電池素子5」(本件補正発明の「電池ユニット」に相当。)と「表面保護シート1」(本件補正発明の「第1の基板」に相当。)の間に配置されている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「前記電池ユニットと前記第1の基板の間に配置された」第1の所定の層を含む点において一致する。

(b) 引用発明の「太陽電池用封止シート4」に含まれる「エチレン系共重合体からなる層(I−10)41」は、本件補正発明の「第2の熱硬化性樹脂層」とは、第2の所定の層である点で共通する。そして、引用発明の当該層は、前記のとおり「太陽電池用封止シート4」に含まれているところ、引用例積層構造によれば、「太陽電池素子5」(本件補正発明の「電池ユニット」に相当。)と「裏面保護シート2」(本件補正発明の「第2の基板」に相当。)の間に配置されている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「前記電池ユニットと前記第2の基板の間に配置された」第2の所定の層を含む点において一致する。

e 「第1の熱可塑性樹脂層」及び「第2の熱可塑性樹脂層」について
(a) 引用発明の「太陽電池用封止シート3」に含まれる「熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)32」は、本件補正発明の「第1の熱可塑性樹脂層」に相当する。そして、引用発明の当該層は、前記のとおり「太陽電池用封止シート3」に含まれているところ、引用例積層構造によれば、「太陽電池素子5」(本件補正発明の「電池ユニット」に相当。)と「エチレン系共重合体からなる層(I−10)31」(第1の所定の層)の間に配置されている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「前記電池ユニットと」前記第1の所定の層「の間に配置された第1の熱可塑性樹脂層」を含む点において一致する。

(b) 引用発明の「太陽電池用封止シート4」に含まれる「熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)42」は、本件補正発明の「第2の熱可塑性樹脂層」に相当する。そして、引用発明の当該層は、前記のとおり「太陽電池用封止シート4」に含まれているところ、引用例積層構造によれば、「太陽電池素子5」(本件補正発明の「電池ユニット」に相当。)と「エチレン系共重合体からなる層(I−10)41」(第2の所定の層)の間に配置されている。
したがって、本件補正発明と引用発明は「太陽電池モジュール」が「前記電池ユニットと」前記第2の所定の層「の間に配置された第2の熱可塑性樹脂層」を含む点において一致する。

(c) 前記(a)及び(b)にも照らせば、本件補正発明と引用発明は、「前記第1の熱可塑性樹脂層および前記第2の熱可塑性樹脂層」は、所定の厚さを有する点で一致する。

(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び(一応の)相違点は、次のとおりである。
a 一致点
「 第1の基板、
前記第1の基板に対向して配置された第2の基板、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置された電池ユニット、
前記電池ユニットと前記第1の基板の間に配置された第1の所定の層、
前記電池ユニットと前記第1の所定の層の間に配置された第1の熱可塑性樹脂層、
前記電池ユニットと前記第2の基板の間に配置された第2の所定の層、および
前記電池ユニットと前記第2の所定の層の間に配置された第2の熱可塑性樹脂層を含む太陽電池モジュールであって、
前記第1の熱可塑性樹脂層および前記第2の熱可塑性樹脂層は、所定の厚さを有する、太陽電池モジュール。」

b 相違点
(a) 相違点1
第1の所定の層及び第2の所定の層が、本件補正発明は、いずれも「熱硬化性樹脂層」であるのに対し、引用発明は、いずれも「エチレン系共重合体からなる層(I−10)」であって、層(I−10)に用いられるエチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体であり、層(I−10)は、エチレン系共重合体100重量部に対して、シランカップリング剤(Y10)を0.1〜5重量部、有機過酸化物(Z10)を0〜5重量部有し、シランカップリング剤は、ラジカル開始剤を用いることにより、エチレン系共重合体とグラフト反応して、ガラスとのより強固な接着力を発現することが可能となるものであり、ラジカル開始剤は、エチレン系共重合体をカップリング剤でグラフトすることが可能なものであり、有機過酸化物(Z10)は、ラジカル開始剤として特に好ましく、層(I−10)の成形方法としては、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)を採用したものである点。

(b) 相違点2
「前記第1の熱可塑性樹脂層および前記第2の熱可塑性樹脂層」の所定の厚さが、本件補正発明においては、「それぞれ、220μm以上、250μm以下の厚さを有する」のに対し、引用発明においては、「0.1〜1mmである」点。

エ 判断
(ア) 相違点1について
以下のとおり、引用発明の「エチレン系共重合体からなる層(I−10)」は、本件補正発明の「熱硬化性樹脂層」に相当するといえるので、相違点1は実質的なものではないし、仮に実質的なものであったとしても、格別なものではない。
a 引用発明の当該「層(I−10)」は、「エチレン系共重合体100重量部に対して、シランカップリング剤(Y10)を0.1〜5重量部、有機過酸化物(Z10)を0〜5重量部有し」、「有機過酸化物(Z10)は、ラジカル開始剤として特に好まし[い]」ものであるところ、「シランカップリング剤は、ラジカル開始剤を用いることにより、エチレン系共重合体とグラフト反応[する]」ことから、当該「層(I−10)」においては、グラフト重合が、「シランカップリング剤」及び「エチレン系共重合体」の間のみならず、「エチレン系共重合体」同士の間においても形成されていると解される。
そして、引用発明では、このようなグラフト反応が加熱環境下で生じているのが一般的であると解される。すなわち、引用発明に係る実施例に対応する実施例10−1(【0868】)では、当該「層(I−10)」が、エチレン酢酸ビニル共重合体(C10)(EVA)100重量部、シランカップリング剤(Y10)1.5重量部、及び過酸化物(Z10)1.0重量部を用いて構成されているところ、その厚さは100μmであって、押出し温度は120℃であるとされている。また、ここでの過酸化物(Z10)は、アルケマ吉富株式会社のDCP(ジクミルパーオキサイド)が用いられる(【0866】)とされており、この過酸化物は、引用発明で認定されたとおり、ラジカル開始剤として機能するものである。このように、当該実施例においては、EVA、シランカップリング剤及びDCP(ラジカル開始剤)を含む原料を120℃で押出し成形しているところ、これらの原料は、当該押出し成形前に加熱して混ぜ合わせるのが一般的であるといえる上、押出し成形時にも加熱されているのであり、しかも、DCPが含まれていることから、加熱環境下において、DCPによるEVA同士のグラフト重合が生じて、EVA同士が架橋していると解される。

b 前記aによれば、引用発明の「エチレン系共重合体からなる層(I−10)」は、「エチレン系共重合体」同士が加熱環境下で架橋構造を形成したものであるのが一般的であることから、当該層は、本件補正発明の「熱硬化性樹脂層」に相当するといえる。また、引用発明の当該層において、「エチレン系共重合体」同士が加熱環境下で架橋構造を形成したものであるとはいえないとしても、「エチレン系共重合体」、「シランカップリング剤」及び「有機過酸化物」を含む原料を混ぜ合わせる際に、前記の架橋構造を形成するような環境下で行うことは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ) 相違点2について
引用発明の「層(II−10)」(本件補正発明の「第1の熱可塑性樹脂層」及び「第2の熱可塑性樹脂層」の双方に相当。)の厚みは「0.1〜1mm」であるところ、そのような厚みにする技術的意味は、引用発明を開示する引用文献1の【0663】の記載によれば、ラミネート工程におけるガラス及び太陽電池セルの破損の抑制と、充分な光線透過率の確保にあるといえる。さらに、引用発明の当該「層(II−10)」は「熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる」ところ、熱可塑性樹脂層組成物を用いる技術的意味は、当該引用文献1の【0688】の記載によれば、太陽電池モジュールから太陽電池素子を取り出す際のリサイクル性にあるといえる。
このように、引用発明の「層(II−10)」は、その厚みが「0.1〜1mm」であるとされているところ、その厚さは、太陽電池モジュールから太陽電池素子を取り出す際のリサイクル性を確保できることが前提となっていると解されることから、引用発明から出発した当業者は、リサイクル性の観点からは、その厚みを「0.1〜1mm」の範囲で適宜設定できるといえるのであり、そうである以上、相違点2に係る本件補正発明の厚さである「220μm以上、250μm以下の厚さ」を設定することに、格別の困難性はない。

(ウ) 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別のものではない。

(エ) 請求人の主張について
これに対し、請求人は、相違点2に係る本件補正発明の構成(熱可塑性樹脂層の厚さの範囲に係るものであり、以下、その範囲を「本件厚さ範囲」という。)が当業者にとって容易に想到し得るものではない旨主張し、その根拠として、(i)引用文献1には、相違点2に係る本件補正発明の厚さの数値範囲(220μm以上、250μm以下の厚さ)の記載も示唆もないこと、(ii)引用文献1の【0868】では、本件補正発明の「熱可塑性樹脂層」に相当する「層(II−10)」の厚さが「300μm」と記載されており、この厚さは、相違点2に係る本件補正発明の厚さとは異なること、(iii)引用文献1には、「層(II−10)」の厚さと本件補正発明が課題とする効率の良い分割及びリサイクルの可能性との関係に係る開示がないこと、(iv)相違点2に係る本件補正発明の構成によって、太陽電池モジュールは、熱分解プロセスで容易に分解されるとともに、高温での信頼性を確保できること、を挙げる。
しかしながら、(i)〜(iii)については、前記(イ)で説示したとおりである。さらにいえば、本件補正後の本願の発明の詳細な説明及び図面(以下「本件補正後明細書等」という。)には、前記課題との関係においては、「熱可塑性樹脂層」を設けること自体(【0023】)や「熱可塑性樹脂層」と「熱硬化性樹脂層」との厚み比を所定の範囲とすること(【0054】)、また、「熱可塑性樹脂層」を設けたとしてもその厚さが30μmや10μmの場合にはクラックが発生することは記載されているものの、本件厚さ範囲が前記課題と関係していることは記載されていないから、請求人の主張は、本件補正後明細書等の記載に基づかないものであるともいえる。
(iv)については、本件厚さ範囲が、請求人の主張する技術的意味をもつことは本件補正後明細書等に記載されていないことから、請求人の主張は、本件補正後明細書等の記載に基づかないものである。なお、令和4年10月5日提出の意見書によれば、「熱可塑性樹脂層」の厚さが、本件厚さ範囲の上限を超える320nmのとき(サンプルII)であっても、クリープ試験に合格しており、請求人が主張するところの高温での信頼性を確保できていることから、(iv)に係る請求人の主張は、この試験結果にも整合しないものである。

(オ) 小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 独立特許要件についての判断のまとめ
前記エによれば、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定の理由のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件発明について
1 本件発明の認定
本件補正は前記第2において示したとおり却下したから、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件補正前の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本件発明についての拒絶の理由のうち、進歩性の欠如を理由とする理由2の概要は、次のとおりである。

進歩性の欠如)本件発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(引用文献1参照)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
引用文献1の記載事項、引用文献1から読み取れる事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。

4 対比・判断
本件発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)アに示した限定を省いたものである。そうすると、本件発明を更に限定した本件補正発明が引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、本願の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 山村 浩
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-12-28 
結審通知日 2024-01-09 
審決日 2024-01-25 
出願番号 P2020-215296
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 佐藤 久則
吉野 三寛
発明の名称 太陽電池モジュール  
代理人 弁理士法人朝日奈特許事務所  

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