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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1420099
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2025-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-03-14 
確定日 2025-03-18 
事件の表示 特願2022−511772「画像生成装置、画像表示方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月 7日国際公開、WO2021/200041、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)3月12日(優先権主張 令和2年4月3日)を国際出願日とする特許出願であって、令和5年9月29日付けの拒絶理由通知に対し、同年12月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和6年2月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月4日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年12月6日に提出された手続補正書により手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1〜9に係る発明は、以下の引用文献A〜Eに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特許第6514820号公報
B.特開2002−304572号公報
C.特開2016−168380号公報
D.特開2000−124867号公報
E.特開2017−216501号公報

第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

本願請求項1、8、9に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特許第6514820号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.視聴率至上主義からの脱却 テレビCM効果分析の新指標 PART04 ビューアビリティ分析をテレビで実現 本当に見られたCMが分かる,日経XTREND,日経BP社,2019年1月14日,第010巻,第20−21頁(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1〜8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明8」という。)は、令和6年12月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
コマーシャルメッセージの作案対象の番組が放送される時間帯である作案対象時間帯に対応する過去の同じ時間帯である参考時間帯の番組枠で放送された番組の視聴率と、前記参考時間帯において放送された前記番組の視聴質とを取得する取得手段と、
複数の前記番組枠ごとに前記視聴率および前記視聴質が表示される番組枠画像を生成する表示情報生成手段と、
前記表示情報生成手段によって生成された前記番組枠画像を表示装置の画面に表示させる出力手段と、を備え、
前記表示情報生成手段は、
予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像を生成し、
前記出力手段は、
前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させ、
前記視聴質は、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に視聴者が滞在していた割合を示す滞在度と、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に滞在していた視聴者のうち前記番組を注視していた視聴者の割合を示す注視度とのうち少なくともいずれかに相当する数値である画像生成装置。
【請求項2】
前記表示情報生成手段は、
前記視聴率の数値を前記視聴質の数値で除した値の大きさに応じて、前記番組の前記番組枠画像を異なる表示形式に変更し、
前記出力手段は、
表示形式が変更された前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させる請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記タイムテーブル画像に含まれる前記番組枠への前記コマーシャルメッセージの挿入を受け付ける受付手段を備え、
前記表示情報生成手段は、
前記タイムテーブル画像において、前記コマーシャルメッセージが挿入された前記番組枠に、前記コマーシャルメッセージが挿入されたことを示す目印を追加し、
前記出力手段は、
前記目印が追加された前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させる請求項1または2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記表示情報生成手段は、
視聴者の属性ごとの前記視聴率および前記視聴質の選択を受け付ける複数のタグを、前記タイムテーブル画像に追加し、
前記出力手段は、
前記複数のタグが追加された前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させ、
前記受付手段は、
前記表示装置の画面に表示された前記タイムテーブル画像に含まれる前記複数のタグのうちいずれかに対する操作に応じて、前記複数のタグのうちいずれかの選択を受け付け、
前記表示情報生成手段は、
選択された前記タグに対応する前記属性の視聴者に関する前記視聴率および前記視聴質が追加された前記タイムテーブル画像を生成し、
前記出力手段は、
生成された前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させる請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項5】
挿入可能な前記コマーシャルメッセージの本数を前記番組枠ごとに計算する計算手段と、を備え、
前記受付手段は、
前記作案対象時間帯に挿入される前記コマーシャルメッセージの本数を受け付け、
前記計算手段は、
前記作案対象時間帯に予め設定された挿入可能な前記コマーシャルメッセージの本数から、前記受付手段によって受け付けられた前記作案対象時間帯に挿入される前記コマーシャルメッセージの本数を引いて、前記作案対象時間帯に挿入可能な前記コマーシャルメッセージの本数を計算し、
前記表示情報生成手段は、
算出された前記作案対象時間帯に挿入可能な前記コマーシャルメッセージの本数が前記作案対象時間帯に追加された前記タイムテーブル画像を生成し、
前記出力手段は、
生成された前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させる請求項3または4に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記受付手段は、
前記コマーシャルメッセージの配信に関する契約内容として、前記コマーシャルメッセージの本数に応じた契約金額を含む引合データを取得し、
前記計算手段は、
挿入された前記コマーシャルメッセージの本数に応じた前記契約金額を計算し、
前記表示情報生成手段は、
前記引合データに含まれる前記契約内容を含む契約情報画像と、挿入された前記コマーシャルメッセージの本数に応じた前記契約金額を含む作案結果画像とを生成し、
前記タイムテーブル画像、前記契約情報画像、および前記作案結果画像のうち少なくともいずれかを含む画像を前記表示装置の画面に表示させる請求項5に記載の画像生成装置。
【請求項7】
コンピュータが、
コマーシャルメッセージの作案対象の番組が放送される時間帯である作案対象時間帯に対応する過去の同じ時間帯である参考時間帯の番組枠で放送された番組の視聴率と、前記参考時間帯において放送された前記番組の視聴質とを取得し、
複数の前記番組枠ごとに前記視聴率および前記視聴質が表示される番組枠画像を生成し、
生成された前記番組枠画像を表示装置の画面に表示させ、
前記生成において、
予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像を生成し、
前記表示において、
前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させ、
前記視聴質が、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に視聴者が滞在していた割合を示す滞在度と、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に滞在していた視聴者のうち前記番組を注視していた視聴者の割合を示す注視度とのうち少なくともいずれかに相当する数値である画像表示方法。
【請求項8】
コマーシャルメッセージの作案対象の番組が放送される時間帯である作案対象時間帯に対応する過去の同じ時間帯である参考時間帯の番組枠で放送された番組の視聴率と、前記参考時間帯において放送された前記番組の視聴質とを取得する処理と、
複数の前記番組枠ごとに前記視聴率および前記視聴質が表示される番組枠画像を生成する処理と、
生成された前記番組枠画像を表示装置の画面に表示させる処理と、
前記生成する処理において、予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像を生成する処理と、
前記表示させる処理において、前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させる処理と、をコンピュータに実行させ、
前記視聴質が、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に視聴者が滞在していた割合を示す滞在度と、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に滞在していた視聴者のうち前記番組を注視していた視聴者の割合を示す注視度とのうち少なくともいずれかに相当する数値であるプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
令和6年10月4日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1(特許第6514820号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の広告枠取引支援装置は、放送局及び放送日時が決められた広告枠の取引を支援する広告枠取引支援装置であって、広告枠提供者によって既に提供済みの広告枠である提供枠を、記憶する提供枠記憶部と、広告枠利用者が指定する条件を満たす広告枠である指定枠を、過去に放送された広告及び番組、並びに条件として指定された放送時間に放送された過去の放送情報のうち、少なくとも一つへの接触度合いに関するデータに基づいて分析する分析部と、分析部による分析結果を、広告枠提供者及び広告枠利用者のうちの少なくとも一方の者に対して提示するための提示処理を実行する提示処理実行部と、未だ提供されていない広告枠である未提供枠のうち、指定枠と放送局及び放送日時が一致する未提供枠を、広告枠提供者及び広告枠利用者のうち、分析結果が提示された者の要求に応じて提供枠に切り替えて提供枠記憶部に記憶させる未提供枠切り替え部と、を有することを特徴とする。」
「【0030】
ここで、「広告枠」は、商品またはサービス等の広告を放送することができる権利である。各広告枠には、少なくとも放送日時(厳密には、放送時点)及び放送局が決められている。広告枠利用者Dは、取引にて入手した広告枠にて広告を放送させることができる。
なお、以下では、広告枠は、テレビコマーシャル用の広告枠であることとする。すなわち、以下に示す実施形態において、広告枠を利用して放送される広告は、テレビコマーシャルであることとする。また、テレビコマーシャルには、スポットCMとタイムCMが含まれ、スポットCMには、番組と番組の間に放送される広告(ステブレーションブレイク)、及び、番組内で放送されるタイムCM以外の広告(パーティシペーション)が含まれる。ここで、番組とは、テレビ番組を意味する。
なお、広告及び番組については、「テレビコマーシャル及びテレビ番組」に限定されるものではなく、「ラジオコマーシャル及びラジオ番組」であってもよく、あるいは、「インターネットを通じて配信されるデジタル広告、及びインターネット配信の番組(コンテンツ)」であってもよい。」
「【0034】
提供枠の購入手順について大まかに説明すると、広告会社(厳密には、広告会社の従業員)が、自己が保有する端末にてブラウザを起動して所定の操作を行う。これにより、ブラウザ画面(WEB画面)に、図2に示すような提供枠に関する情報が表示され、広告会社は、その表示画面を通じて提供枠を確認する。表示画面には、図2に示すように、各提供枠に関する情報(以下、提供枠情報という。)が表示される。図2は、提供枠情報表示画面の一例を示す図である。
【0035】
提供枠情報は、提供枠の放送時点、放送時間(秒数)、放送局、放送地域、放送期間、Daypart等の時間帯、広告種類(タイムCM、ステーションブレイク又はパーティシペーション等)、並びに提供枠の価格(購入額)等を示す情報であり、各提供枠に対して、例えば、その提供元である放送局によって付与される。
【0036】
そして、広告会社は、各提供枠の提供枠情報を参照しながら、利用対象として希望する提供枠を選択するための操作をブラウザ画面上で行い、最終的に選択した提供枠の購入を決定し、当該提供枠を注文(発注)する。提供枠の注文は、広告枠取引支援システム10を通じて、注文先の放送局に送られる。なお、提供枠の注文については、メール、電話若しくはFAX等にて行われてもよい。
【0037】
放送局は、注文を受領すると、注文に係る提供枠の販売を許可するかどうかを検討し、販売を許可する場合には、その旨を発注元の広告会社に通知する。この通知については、広告枠取引支援システム10によるデータ通信を介して行われてもよく、放送局がメール、電話若しくはFAX等にて発注元の広告会社に直接連絡することで行われてもよい。
【0038】
広告会社が上記の通知を受領した時点で広告枠の売買取引(厳密には、広告会社が発注した提供枠の売買取引)が完了する。売買取引が完了すると、取引の内容を示す情報が不図示の作表システムに送信することができる。同システムは、売買取引が成立した提供枠の提供枠情報、及び当該提供枠にて放送される広告に関する情報(例えば、スポンサー名及び広告対象商品等)を反映させたタイムテーブル及びCMスケジュール表を作成(作案)する。」
「【0067】
指定枠情報取得部25は、指定枠情報を、外部通信ネットワークNを通じて利用者側端末13から取得する。指定枠情報とは、広告枠利用者Dが指定する条件を満たす広告枠である(指定枠)を特定するための情報であり、利用者側端末13にて生成される。」
「【0072】
分析部26は、調査データ記憶部24に記憶された調査データに基づいて、広告枠分析を行う。具体的に説明すると、分析部26は、指定枠情報取得部25が取得した指定枠情報に基づいて指定枠を特定し、厳密には、広告枠利用者Dが条件指定画面P1にて指定した条件を特定する。そして、分析部26は、過去に放送されたテレビコマーシャルの視聴状況及び視聴率に関する調査データに基づいて指定枠を分析する。
【0073】
より詳しく説明すると、分析部26は、過去に指定枠と一致する放送局及び放送日時にて放送されたテレビコマーシャルの視聴状況及び視聴率に関する調査データに基づいて指定枠を分析する。この結果、指定枠におけるテレビコマーシャルへの接触度合い、具体的には視聴状況及び視聴率が求められる。「視聴状況」としては、例えば、接触者数(リーチ)、接触率(リーチ率)、接触回数(フリクエンシー)、接触回数別のリーチ率、視聴質(例えば、テレビ視聴中の集中度を示す数値)、及び視聴ログ数等が挙げられる。また、「視聴率」としては、例えば、世帯視聴率、個人視聴率、ターゲット別の視聴率(属性毎の接触度合いに相当)、延べ視聴率(GRP)、接触回数別の延べ視聴率等が挙げられる。」
「【0080】
提示処理実行部27は、分析部26による分析結果を、広告枠提供者S及び広告枠利用者Dのうちの少なくとも一方に対して提示するための提示処理を実行する。提示処理としては、分析部26による分析結果を提供者側端末12及び利用者側端末13側で画面表示又は音声再生するためのデータを生成して当該データを送信する処理、あるいは、分析部26による分析結果をプリンタ等によって印字する処理等が該当する。
【0081】
分析部26による分析結果は、例えば図8に図示の形式にて提示される。図8は、指定枠についての分析結果の提示例を示す図である。分析結果について説明すると、図8に示すように、指定枠(すなわち、広告枠利用者Dが指定した条件を満たす利用済み広告枠)がリストアップされている。また、指定枠に該当する各利用済み広告枠について、放送年月日、号数、放送時間、Daypart、放送局、指定枠を利用して放送されたテレビコマーシャルに接触したターゲット、並びに、そのテレビコマーシャルについて分析部26が求めた視聴状況及び視聴率の実績値等が提示される。なお、提示項目については、上記の項目に限定されるものではなく、広告枠利用者Dが指定した条件、及び分析部26による分析結果の内容に応じて好適な項目に設定されるのが望ましい。」
「【図8】



上記摘記事項より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「放送局及び放送日時が決められた広告枠の取引を支援する広告枠取引支援装置であって(【0009】)、
広告枠利用者が指定する条件を満たす広告枠である指定枠を、過去に放送された広告及び番組、並びに条件として指定された放送時間に放送された過去の放送情報のうち、少なくとも一つへの接触度合いに関するデータに基づいて分析する分析部と(【0009】)、
分析部による分析結果を、広告枠提供者及び広告枠利用者のうちの少なくとも一方の者に対して提示するための提示処理を実行する提示処理実行部と(【0009】)、
を備え、
前記広告枠には放送日時及び放送局が決められており、前記広告枠はテレビコマーシャル用の広告枠であり、前記テレビコマーシャルには、番組と番組の間に放送される広告等であるスポットCMと番組内で放送されるタイムCMが含まれ、前記番組はテレビ番組であり(【0030】)、
広告会社は、提供枠を購入する際に、ブラウザ画面を通じて提供枠を確認し、利用対象として希望する提供枠を選択して決定し、当該提供枠を注文(発注)し、前記提供枠の注文が注文先の放送局に送られ(【0034】、【0036】)、
放送局は、注文を受領すると、注文に係る提供枠の販売を許可する場合には、その旨を発注元の広告会社に通知して売買取引を完了させ、取引の内容を示す情報を作表システムに送信し、前記作表システムは、売買取引が成立した提供枠の提供枠情報等を反映させたタイムテーブル及びCMスケジュール表を作成(作案)し(【0037】〜【0038】)、
前記分析部は、指定枠情報取得部が取得した指定枠情報(広告枠利用者が指定する条件を満たす広告枠である(指定枠)を特定するための情報であり、利用者側端末にて生成されるもの)に基づいて指定枠を特定し、調査データ記憶部に記憶された、過去に指定枠と一致する放送局及び放送日時にて放送されたテレビコマーシャルの視聴状況及び視聴率に関する調査データに基づいて指定枠を分析し、指定枠におけるテレビコマーシャルへの接触度合い、具体的には視聴状況(視聴質(例えば、テレビ視聴中の集中度を示す数値))及び視聴率を求め(【0067】、【0072】〜【0073】)、
前記提示処理実行部は、前記分析部による分析結果を、広告枠提供者及び広告枠利用者のうちの少なくとも一方に対して提示するための提示処理として、前記分析部による分析結果を提供者側端末及び利用者側端末側で画面表示するためのデータを生成して当該データを送信する処理を実行し、前記分析結果は、リストアップされた指定枠に該当する各利用済み広告枠について、放送年月日、放送時間、放送局、そのテレビコマーシャルについて分析部が求めた視聴状況及び視聴率の実績値等が提示されるものである(【0080】〜【0081】、【図8】)、
広告枠取引支援装置。」

2 引用文献2について
令和6年10月4日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2(視聴率至上主義からの脱却 テレビCM効果分析の新指標 PART04 ビューアビリティ分析をテレビで実現 本当に見られたCMが分かる,日経XTREND,日経BP社,2019年1月14日,第010巻,第20−21頁)には、次の事項が記載されている。
「ネット広告でも重要度を増す「ビューアビリティ」。広告がきちんと見られたかどうかを示す指標だ。ベンチャー企業のTVISION INSIGHTS(東京・千代田)はこれをテレビ視聴分析に持ち込んだ。視聴率が高くても、実際は見られていない。そんな番組もデータで分かる。」(第20頁左欄第1〜9行)
「テレビCMが放送されたが、本当にターゲット層は目にしたのか。いわゆる「視聴質」が分からなかった。これを明らかにする指標をTVISION INSIGHTSは提供する。」(第20頁右欄下から第2行〜第21頁左欄第4行)
「これらのデータを統合的に分析し、2つの値として算出して利用企業に提供する。1つ目の値が「VI(ビューアビリティ・インデックス)値」だ。滞在度とも呼べる。テレビの電源のオン・オフ、テレビの前にいる人の人数から割り合いを指標化し、滞在度として算出する。
2つ目が「AI(アテンション・インデックス)値」だ。こちらはテレビの注視度を表している。テレビの前の人数とテレビに向いている人の割り合いを指標化して算出する。このAI値が高いほど、より注視される番組ということになる。」(第21頁中央欄第3〜17行)

上記摘記事項を踏まえると、「視聴率が高くても実際は見られていないような番組もデータで分かるようにするために、広告がきちんと見られたかどうかを示す指標である「ビューアビリティ」をテレビ視聴分析に持ち込み、放送されたテレビCMをターゲット層が本当に目にしたのかを示す「視聴質」を明らかにするために、テレビの前にいる人の人数から割り合いを指標化した「滞在度」(VI(ビューアビリティ・インデックス)値)を算出すること、及び、テレビの前の人数とテレビに向いている人の割り合いを指標化した「注視度」(AI(アテンション・インデックス)値)を算出すること。」との技術事項が本願出願前において、すでに周知の技術事項であったと認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「広告枠取引支援装置」は、広告会社から希望する提供枠を購入する注文を受けた放送局が、取引の内容を示す情報を作表システムに送信して、前記提供枠の情報を反映させたタイムテーブル及びCMスケジュール表を作案するためのものであるから、引用発明における「分析部」が特定する「指定枠情報取得部が取得した指定枠情報(広告枠利用者が指定する条件を満たす広告枠である(指定枠)を特定するための情報であり、利用者側端末にて生成されるもの)に基づい」た「指定枠」に係る時間帯は、本願発明1の「コマーシャルメッセージの作案対象の番組が放送される時間帯である作案対象時間帯」と、「コマーシャルメッセージの作案対象の放送内容が放送される時間帯である作案対象時間帯」である点で共通し、前記「放送内容」が、本願発明1では「番組」であるのに対し、引用発明では「テレビコマーシャル」である点で両者は相違する。

イ 引用発明の「分析部」は、「調査データ記憶部に記憶された、過去に指定枠と一致する放送局及び放送日時にて放送されたテレビコマーシャルの視聴状況及び視聴率に関する調査データに基づいて指定枠を分析し、指定枠におけるテレビコマーシャルへの接触度合い、具体的には視聴状況(視聴質(例えば、テレビ視聴中の集中度を示す数値))及び視聴率を求め」ており、これは、「分析部」が当該「視聴率」及び「視聴質」を取得することにほかならないから、引用発明と本願発明1とは、「作案対象時間帯に対応する過去の同じ時間帯である参考時間帯の放送枠で放送された放送内容の視聴率と、前記参考時間帯において放送された前記放送内容の視聴質とを取得する取得手段」を備える点で共通し、前記「放送枠」及び「放送内容」が、それぞれ、本願発明1では「番組枠」及び「番組」であるのに対し、引用発明では「指定枠」及び「テレビコマーシャル」である点で両者は相違する。

ウ 引用発明の「提示処理実行部」は、分析部による分析結果である、指定枠におけるテレビコマーシャルへの視聴率及び視聴質を、提供者側端末及び利用者側端末側で画面表示するためのデータを生成しており、前記「画面表示するためのデータ」は「指定枠画像」と呼べる「表示情報」であるから、引用発明と本願発明1とは、「複数の前記放送枠ごとに前記視聴率および前記視聴質が表示される放送枠画像を生成する表示情報生成手段」を備える点で共通し、前記「放送枠」及び「放送枠画像」が、それぞれ、本願発明1では「番組枠」及び「番組枠画像」であるのに対し、引用発明では「指定枠」及び「指定枠画像」である点で両者は相違する。

エ 引用発明の「提示処理実行部」は、上記ウで論じた「指定枠画像」を提供者側端末及び利用者側端末側で画面表示するために、生成したデータを出力するものであるから、引用発明と本願発明1とは、「前記表示情報生成手段によって生成された前記放送枠画像を表示装置の画面に表示させる出力手段」を備える点で共通し、前記「放送枠画像」が、本願発明1では「番組枠画像」であるのに対し、引用発明では「指定枠画像」である点で両者は相違する。

オ 上記ウで論じたとおり、引用発明の「分析部」は、「指定枠画像」と呼べる画像を生成するものであるから、引用発明の「広告枠取引支援装置」は「画像生成装置」と呼べるものである。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コマーシャルメッセージの作案対象の放送内容が放送される時間帯である作案対象時間帯に対応する過去の同じ時間帯である参考時間帯の放送枠で放送された放送内容の視聴率と、前記参考時間帯において放送された前記放送内容の視聴質とを取得する取得手段と、
複数の前記放送枠ごとに前記視聴率および前記視聴質が表示される放送枠画像を生成する表示情報生成手段と、
前記表示情報生成手段によって生成された前記放送枠画像を表示装置の画面に表示させる出力手段と、を備える画像生成装置。」

[相違点]
(相違点1)
「取得手段」における「放送内容」、「放送枠」が、それぞれ、本願発明1では「番組」、「番組枠」であるのに対し、引用発明1では「テレビコマーシャル」、「(テレビコマーシャルの)指定枠」であり、「表示情報生成手段」における「放送枠」、「放送枠画像」が、それぞれ、本願発明1では「番組枠」、「番組枠画像」であるのに対し、引用発明では「(テレビコマーシャルの)指定枠」、「(テレビコマーシャルの)指定枠画像」であり、「出力手段」における「放送枠画像」が、本願発明1では「番組枠画像」であるのに対し、引用発明では「(テレビコマーシャルの)指定枠画像」である点。

(相違点2)
本願発明1では、「画像生成装置」の「表示情報生成手段」が「予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像を生成し」、「画像生成装置」の「出力手段」が「前記タイムテーブル画像を前記表示装置の画面に表示させ」るのに対し、引用発明では、タイムテーブルを作案して表示するのは「広告枠取引支援装置」の「提示処理実行部」ではなく、取引の内容を示す情報を送信された「作表システム」であり、また、引用文献1には、前記タイムテーブルがどのような内容のものであるのかが記載されていない点。

(相違点3)
「視聴質」が、本願発明1では「前記番組が放送されていたテレビジョンの前に視聴者が滞在していた割合を示す滞在度と、前記番組が放送されていたテレビジョンの前に滞在していた視聴者のうち前記番組を注視していた視聴者の割合を示す注視度とのうち少なくともいずれかに相当する数値」であると特定されているのに対し、引用発明では「例えば、テレビ視聴中の集中度を示す数値」と特定されている点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、まず相違点2について検討すると、相違点2に係る本願発明1の「予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像」を生成して表示させる構成は、上記引用文献1及び2には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る構成を採用することにより、本願明細書の段落【0011】に記載された、「番組枠に挿入されるコマーシャルメッセージの価値を正確に評価することを可能とする画像を生成できる画像生成装置等を提供することが可能になる」という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、上記相違点1及び3について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2〜8について
本願発明2〜8も、本願発明1の「予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像」を生成して表示させる構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和6年12月6日付けの補正により、補正後の請求項1〜8は、「予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像」を生成して表示させるという技術的事項を有するものとなった。当該「予め設定された一週間分のタイムスケジュールである版下データに含まれる複数の時間帯の各々に、複数の時間帯の各々に対応する前記番組枠画像が割り当てられたタイムテーブル画像」を生成して表示させるという技術的事項は、原査定における引用文献A〜Eには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1〜8は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Eに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2025-03-13 
出願番号 P2022-511772
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 伏本 正典
特許庁審判官 間野 裕一
岡北 有平
発明の名称 画像生成装置、画像表示方法、およびプログラム  
代理人 北嶋 啓至  
代理人 浜野 絢子  

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