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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1003720 |
異議申立番号 | 異議1998-70780 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-06-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-02-20 |
確定日 | 1999-06-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2641980号「減圧CVD装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2641980号の特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2641980号に係る発明についての出願は、平成2年11月8日に特許出願され、平成9年5月2日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人高橋学より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年10月13日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由通知に対して手続補正書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正請求に対する補正の適否について 特許権者は、訂正請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の「網状かつ円錐状」を「網状かつ断面が三角形」とする補正を求めるものである。 しかし、円錐は断面が三角形になるが、断面が三角形になるものは、円錐に限らず三角錐、四角錐等も含まれるから、上記補正は、特許請求の範囲を実質上拡張するものであることから、訂正請求書の要旨を変更するものと認められ、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用できない。 イ.訂正請求の適否について 本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲および発明の詳細な説明の欄の「コイル状又は網状」を「網状かつ円錐状」と訂正するものである。 しかしながら、「網状かつ円錐状」は、願書に添付した明細書に記載されておらず、図面の図2の網状の断面形状は三角形であり、この三角形の断面形状からみて、図2の網状の冷却管の形状は円錐状の場合もあるが、四角錐、三角錐、さらに三角形の板状の場合もあり、冷却管の形状が円錐状である点は図面から直接的かつ一義的に導き出せる事項でもない。 したがって、上記訂正は特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.特許異議申立てについて ア.本件発明 特許第2641980号の請求項1に係る発明(以下本件発明という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「反応炉と、この反応炉に接続する真空ポンプとを有する減圧CVD装置において、前記反応炉と真空ポンプとを接続する排気ラインに反応生成物を付着させるための冷媒を流すコイル状又は網状の冷却管を内部に配置した冷却槽を設けたことを特徴とする減圧CVD装置。」 イ.引用刊行物に記載の発明 当審が平成10年7月28日に通知した取消理由において引用した刊行物1(甲第1号証:特開昭61-177370号公報)には、「第1図はSiN(窒化シリコン)CVD(気相成長)を行うための減圧CVD装置を示しており、この装置では、ヒーター1で加熱される減圧反応炉2内にSiウェハ3を多数配置し、SiH2C12、NH3等の反応ガス4を送り込むことに依って、ウェハ3上に気相成長膜を形成する。この場合、反応炉2内を所定の減圧状態に減圧しながら、反応生成ガス及び未反応ガスを排出する必要がある。このため、反応炉2の排気管5に設けた圧力ゲージ6に依って作業圧力を測定しながら、次のような真空排気系により排ガスの排出を行っている。 すなわち、本発明の要旨として、排気管5の排 気経路に複数の、例えば3つのメカニカル・ブースタ・ポンプ13A,13B,13Cと、水封ポンプ17とを順次配設し、・・・・さらに、第1図において、圧力ゲージ6とバルブ9との間には、冷却機8によって冷却される冷却トラップ7が設けられており、この冷却トラップ7により反応炉2からの排ガスを冷却し、排ガス中の未反応ガスを液化して除去するとともに、NH4C1等の固形反応生成物の吸着性あるいは粘着性を低下させている。」(第2頁左下欄第7行〜右下欄第15行)、「本発明の実施例においては、冷却トラップ7によって未反応ガスや固形反応生成物をある程度除去するとともに・・・・ポンプのメンテナンスが大幅に軽減される。・・・・」(第3頁左下欄第18行〜右下欄第8行)と記載されている。 よって、刊行物1には、減圧反応炉2と、この減圧反応炉2に接続するメカニカル・ブースタ・ポンプ13A,13B,13Cとを有する減圧CVD装置において、前記減圧反応炉と前記メカニカル・ブースタ・ポンプとを接続する排気管5に反応生成物を排ガス中より除去するための冷却トラップ7を設けることが記載されているものと認められる。 同じく刊行物2(甲第2号証:特開平1-198476号公報)には、「従来この種の未反応ガス除去に用いられるトラップは、第3図に示すように、ステンレス製メッシュフィルター5を容器1に装填したものや、第4図に示すように、冷却水を導入するステンレス製のスパイラルチューブ6を内蔵したものが用いられており、未反応ガスを冷却等により反応させ固体化して除去する方法が用いられていた。」(第1頁左欄第14行〜右欄第3行)と記載されている。 そして「冷却水を導入するスパイラルチューブ」及び「トラップ」はそれぞれ本件発明の「冷媒を流すコイル状冷却管」及び「冷却槽」に相当し、また「未反応ガスを冷却等により反応させ固体化して除去する」との記載から、未反応ガスの反応生成物をコイル状冷却管に付着させて除去しているものと認められるから、結局、刊行物2には、冷却槽内に反応生成物を付着させるための冷媒を流すコイル状冷却管を配置することが、開示されているものと認める。 同じく刊行物3(甲第3号証:特開平2-25573号公報)には、「被処理体例えば半導体ウエハに高温酸化膜を形成するための装置として減圧CVD装置がある。・・・・プロセスチューブ内でのSiO2の膜付け生成を行った後、反応管や排気管には未反応ガスによる反応生成物が付着する。この反応生成物は前記プロセスチューブの排気経路に接続された真空排気用ポンプのロータリーポンプオイルに混入して、このオイルを劣化させてしまい排気性能を落とすことになる。この対策としてプロセスチューブから真空ポンプに至る排気経路の途中に反応生成物を捕獲する捕獲器を設け、未反応ガス等による反応生成物をこの捕獲器に付着させることにより取り除き、真空ポンプオイルへの反応生成物の混入を軽減させていた。」(第1頁左欄第14行〜右欄第10行)、「この排気ガスは容器(12)内に配設されたフィルター(16)の円筒状ステンレスメッシュ(17)の外周囲から内側へ向け通過排出される。この過程で排気ガス中の未反応方スによる反応生成物等が上記ステンレスメッシュ(17)に付着しやすい。また排気ガス中の未反応ガスは低温例えば100℃以下で反応生成物として上記ステンレスメッシュ(17)に付着し易い。このため、メッシュの周囲または容器(12)外周囲を例えばスパイラル状に水冷配管し冷却したもの等がある。」(第2頁左上欄第18行〜右上欄第8行)と記載され、網(メッシュ)状物を冷却して、CVD装置の排気ガス中の未反応ガスによる反応生成物を付着除去する技術が開示されている。 ウ.対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載の「メカニカル・ブースタ・ポンプ、水封ポンプ」、「排気管」及び「冷却トラップ」は、それぞれ本件発明の「真空ポンプ」、「排気ライン」及び「冷却槽」に相当するから、両者は、反応炉と、この反応炉に接続する真空ポンプとを有する減圧CVD装置において、前記反応炉と真空ポンプとを接続する排気ラインに排ガスより反応生成物を除去するための冷却槽を設けたことを特徴とする減圧CVD装置である点で一致し、排ガスより反応生成物を除去するための冷却槽が、本件発明ではその内部に反応生成物を付着させるための冷媒を流すコイル状又は網状の冷却管を配置しているのに対し、刊行物1に記載の発明ではその内部については具体的に示されていない点で相違している。 しかしながら、刊行物2には、冷却槽内に反応生成物を付着させるための冷媒を流すコイル状冷却管を配置することが開示されている。 また、刊行物3には本件発明の冷却槽に相当する容器(12)の外周囲を水冷配管しステンレスメッシュ(17)を冷却して、未反応ガスの反応生成物を付着除去することが記載されており、上記刊行物2に示すように反応生成物を付着させるためのコイルを直接冷却できるように冷却管で形成することが周知であることからみて、冷却槽内の網状物を直接冷却できるように冷媒を流す冷却管で形成することは、当業者が適宜なしうる単なる設計変更にすぎない。 よって、刊行物1記載の発明において反応生成物を付着するために冷却槽内に冷媒を流すコイル状又は網状の冷却管を配置することは、刊行物2,3から当業者が容易になし得ることである。 したがって、本件発明は刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ.むすび 以上のとおりであるから、本件発明についての特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-04-20 |
出願番号 | 特願平2-303483 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(H01L)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
今野 朗 |
特許庁審判官 |
左村 義弘 小田 裕 |
登録日 | 1997-05-02 |
登録番号 | 特許第2641980号(P2641980) |
権利者 | 九州日本電気株式会社 |
発明の名称 | 減圧CVD装置 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |