ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
---|---|
管理番号 | 1003856 |
異議申立番号 | 異議1998-75076 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1990-04-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-10-15 |
確定日 | 1999-06-23 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2741386号「半導体製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2741386号の特許を維持する。 |
理由 |
1.本件特許第2741386号は、昭和63年10月17日に特許出願がされたものであって、平成10年1月30日に設定登録がされ、その後安藤純男より特許異議の申立てがされたものである。 2.その請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものと認める。 「Si基板上にSiO2膜を有する半導体ウエハー(2)を、拡散炉(1)によって600〜1200℃で高温処理した後、炉内を密封のままで、ウエハー(2)の表面が外気に触れない状態で、温度を600〜550℃まで低下させた後、半導体ウエハー(2)の取り出しを行う半導体製造方法。」 2.これに対して、特許異議申立人安藤純男は、甲第1号証として特開昭63-116435号公報を、甲第2号証として特開昭59-108315号公報を、及び甲第3号証として特開昭55-22835号公報を提示し、本件特許発明は、甲第1〜3号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、当該特許は取り消されるべき旨主張している 3.甲第1号証には、MOS型半導体装置の製造方法に関し、「従来のMOS型半導体装置の製造方法は、シリコン基板と酸化膜界面で発生する界面準位を抑制するために、全ての熱処理工程の後、熱処理炉にウェハーを入れたまま窒素雰囲気中で室温までウェハーを冷却させた後、ウェハーを大気にさらし熱処理工程を終了していた。(第1頁右下欄2-7行目)」及び、「従ってd熱処理(1200℃)が終了した後窒素雰囲気中でf熱処理と同温の1000℃まで冷却させた後、d熱処理を終了させ、・・・さらにf熱処理では、f熱処理終了後g熱処理温度と同じ800℃まで、窒素雰囲気中で冷却した後ウェハーを大気にさらす。次にg熱処理後は600℃まで炉を冷却させた後ウェハーを大気にさらす。最後にh熱処理後600℃から窒素雰囲気中で室温にまで炉を冷却させてから大気にウェハーをさらして熱処理工程を終了する。(第2頁左上欄19行目-右上欄12行目参照)」と記載されている。 甲第2号証には、半導体ウエハの拡散処理方法に関し、「従来、半導体ウエハの加工工程において不純物拡散方法として用いられてきた方法には、(I)炉昇炉冷方式、(II)SIQ(SlowIn&Out)方式の二つの方法があった。このうち、(I)の炉昇炉冷方式とは、拡散炉内に唯一の均熱領域を設けておき、該均熱領域に装入した半導体ウエハをまず600℃に予熱した後、炉温を1200℃に昇温して該均熱領域の温度を1200℃に保ちながら該半導体ウエハ内に不純物を拡散させ、最後に炉温すなわち該均熱領域の温度を600℃に降温して該半導体ウエハを徐冷してから炉外へ取り出す方法である。(第2頁左上欄1-12行目)」と記載されている。 甲第3号証には、トランジスタの製造方法に関し、「すなわち、エミッタ拡散のための熱処理を非酸化性の雰囲気中で施した場合、エミッタ拡散工程で絶縁被膜(SiO2膜)中へ導入される固定電荷(QSS)を減少させる効果が奏され、また0.5〜5℃の冷却速度に選定された除冷によって格子欠陥の発生を防止する効果が奏される。ところで、固定電荷(QSS)並びに格子欠陥はいずれも表面状態に関係するものであり、これらは小電流領域での表面再結合に寄与する。したがって、上記のように固定電荷のSiO2膜中ヘの導入を減少させるとともに格子欠陥の発生を防止するならば、hFEの劣化を防止することが可能になる。次に、本発明の製造方法を三重拡散型NPNトランジスタを製作する場合を例に詳しく説明する。第1図(a)〜(e)は本発明の製造方法により三重拡散型NPNトランジスタが製造される過程を示す製造工程図であり、先ず、N型シリコン基板1に燐を拡散することによりN+型拡散領域2を形成する。次いでN型シリコン基板1の表面に形成された二酸化シリコン膜にベース拡散用の窓を穿け、この窓を通してボロンを拡散することによりP型のベース領域を形成する。第1図(b)はかかる処理を経たのちの状態を示し、3が二酸化シリコン膜、4がP型ベース領域である。・・・こののち、第1図(c)で示すように燐を蒸着して燐層5を形成する。・・・次いで蒸着した燐を拡散させN型のエミッタ領域を形成するのであるが、ここで、本発明の特徴である2段階の処理が施される。第1の段階は電極分離に必要な厚みの二酸化シリコン膜を形成する段階であり、・・・次いで、雰囲気を非酸化性の窒素雰囲気に変更し、所定の拡散分布を得るため酸化と同じ1100℃の熱処理を施すことによってエミッタ領域を形成する処理と、この後、毎分1℃の冷却速度で750℃程度まで徐冷する処理とからなる第2段階の処理を施す。(第2頁左上欄4-左下欄7行目参照)」と記載されている。 4.そこで、本件特許発明と前記甲第1〜3号証に記載されたものとを対比する。 甲第1号証には、シリコン基板と酸化膜界面で発生する界面準位を抑制することを目的とするものが記載されているが、その手段は、熱処理炉にウェハーを入れたまま窒素雰囲気中で、室温までウェハーを冷却させた後、ウェハーを大気にさらすことにあり、温度が600〜550℃に低下させた後、ウェハーを取り出すことにより界面準位を抑制するものは記載されていない。甲第2号証には、1200℃の温度で不純物を拡散処理した後、炉温を600℃に降温してから炉外へ取り出すものが記載されているが、対象となる半導体ウエハは、「Si基板上にSiO2膜を有する半導体ウエハー」に限定されているものではなく、また、界面電荷密度を減少させるという課題について、何らの言及もない。また、甲第3号証には、本件特許発明と同様、SiO2膜中へ導入される固定電荷を減少させることを目的とするものが記載されているが、1100℃の熱処理の後、750℃まで徐冷することによりこれを達成することが記載されているのみであって、その後シリコン基板の温度が何度のときに取り出すかについては何らの記載もない。 そして、前記甲各号証には、甲各号証にそれぞれ記載された事項の組合せを示唆する記載もない。 そうすると、前記甲第1〜3号証には、本件特許発明の必須の構成である「Si基板上にSiO2膜を有する半導体ウエハー(2)を、高温処理した後、温度を600〜550℃間で低下させた後、半導体ウエハー(2)の取り出しを行う」構成が記載されているとすることもできないし、かつ当該構成が示唆されているとすることもできない。 したがって、本件特許発明は、前記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることは、できない。 なお、本件特許発明は、550〜600℃の範囲においては、酸素雰囲気中で界面電荷密度(QSS)の値が急激に変化することに着目し、この範囲内のある温度に至りQSSが低い値に落ち着いた段階で取り出すことにより、QSSの値が温度の影響を受けないようにしたものであるから(明細書第5頁8-16行目及び第6頁6-13行目参照)、「温度を600〜550℃間で低下させた後、半導体ウエハー(2)の取り出しを行う」の記載が不明瞭というものでもない。 5.したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-06-01 |
出願番号 | 特願昭63-262159 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01L)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
左村 義弘 松田 悠子 |
登録日 | 1998-01-30 |
登録番号 | 特許第2741386号(P2741386) |
権利者 | ローム株式会社 |
発明の名称 | 半導体製造方法 |