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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D03D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D03D
管理番号 1007512
異議申立番号 異議1999-73239  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-11-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-23 
確定日 2000-01-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第2870938号「プリント基板用ガラスクロス」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2870938号の特許を維持する。 
理由 I.本件発明
本件特許第2870938号(平成2年2月28日出願、平成11年1月8日設定登録。)の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ガラスクロスを構成する経糸、緯糸が複数本に分割されたストランドからなる0.5〜2/25mmの撚りがかけられた単糸の分割ヤ-ンであることを特徴とするプリント基板用ガラスクロス。」
II.申立ての理由の概要
特許異議申立人旭シュエ-ベル株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭63一318196号公報)および甲第2号証(特開昭55一7418号公報)を提出し、
(1)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、この特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであるか、
(2)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証および甲第2号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、この特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許を取り消すべきである旨主張している。
III.特許異議申立人が提出した甲各号証刊行物の記載事項
甲第1号証の刊行物には、ガラス繊維織物補強印刷配線板が記載されており、特許請求の範囲の項には、「熱硬化性樹脂を結合剤として複数のガラス繊維織物を積層成形してなる積層板において、ガラス繊維織物が通常ななこ織であることを特徴とするガラス繊維織物補強印刷配線板。」と記載されている。また、第2頁右上欄13〜16行には、ななこ織は、経糸,緯糸とも2本以上を同時に浮沈させ、平織りを拡大させたように組織させたものである旨、記載されている。さらに、実施例には、組織を構成する経糸、緯糸がECG 75 1/0で構成され、織組織が経,緯とも2本づつ、あるいは、3本づつが同時に浮沈する通常ななこ織からなるガラス繊維織物を用いることが、記載されている。
甲第2号証の刊行物には、積層板が記載されており、特許請求の範囲の第1項には、「ガラス布を基材とする熱硬化性樹脂積層板において、ガラス布を構成するガラス糸の撚り度が、糸の長さ25mm当たり0.5〜0.7回の糸を用いたことを特徴とする積層板。」と記載されている。また、第2頁左上欄2〜4行には、「従来のガラス布は全て糸の撚りが糸の25mm長さ当たり、糸を1回転させた撚り程度のものがほとんどであった。」と記載されている。さらに、第2頁左上欄16〜19行には、「恐らく撚りがゆるいために樹脂の含浸がガラス糸の中にまで行き届き、かつ積層成形の際、糸が圧し潰されて、偏平状になり、層間接着がより完全になるからであると思われる。」と記載されている。
IV.対比・判断
本件請求項1に係る発明における、複数本に分割されたストランドからなる撚りがかけられた単糸について、明細書(特許公報引用)の3欄47行〜4欄9行には、「本願のガラスクロスに使用されるガラスヤ-ンは、紡糸する場合に複数本に分割して夫々集束し、複数のストランド群を通常の綾振り装置により綾振りしながら巻取る。このような状態で巻取チューブ上に巻取られたガラスストランドは、分割されたストランド同志が互に接しているか、又は、若干の間隔をおいて並んだ状態で巻取られている。このような状態で巻取られたストランドを巻返し機に於て、0.5〜2t/25mm程度の撚りをかけながら巻返し単糸(片撚り糸)のガラスヤ-ンとする。このようにして得られたガラスヤ-ンは、撚りをかけられ、且つ、その撚数が小さいため分割ストランド同志が並列しているような状態にあり、従って糸の断面形状が通常のガラスヤ-ンと比較して偏平である。」と記載されている。
本件請求項1に係る発明と甲第1号証の刊行物に記載された発明とを対比すると、両者は、プリント基板用ガラスクロスである点で一致するが、前者は、ガラスクロスを構成する経糸、緯糸が、上記のとおりの複数本に分割されたストランドからなる0.5〜2/25mmの撚りがかけられた単糸の分割ヤ-ンであるのに対して、後者は、通常のストランドから得られたガラスヤ-ンからなり、かつ、その撚り数も不明である点で相違する。
上記の相違点についてさらに検討すると、従来のガラス布は全て糸の撚りが糸の25mm長さ当たり、糸を1回転させた程度のものであることが、甲第2号証の刊行物に記載されており、前者の0.5〜2/25mmの撚りは、ガラスヤ-ンの通常の撚り数であることが分かるが、同刊行物には、複数本に分割されたストランドからなる撚りがかけられた単糸を用いることについては、何も示唆されていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、複数本に分割されたストランドからなる撚りがかけられた単糸を用いることにより、明細書に記載されたとおりの、脱油工程における集束剤除去性がよくなり、ガラスクロスの表面処理工程における表面処理剤が内部に浸透しやすくなり、プリント基板のマトリックス樹脂の親和性が均一となり、プリプレグ含浸工程における樹脂ワニス含浸性がよくなるという優れた効果を奏すると認めることができる。
それゆえ、前者、すなわち、本件請求項1に係る発明は、後者、すなわち、甲第1号証の刊行物に記載された発明ではないし、また、甲第1号証および甲第2号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
V.むすび
したがって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-11-30 
出願番号 特願平2-45622
審決分類 P 1 651・ 113- Y (D03D)
P 1 651・ 121- Y (D03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山崎 豊  
特許庁審判長 石橋 和美
特許庁審判官 仁木 由美子
蔵野 雅昭
登録日 1999-01-08 
登録番号 特許第2870938号(P2870938)
権利者 日東紡績株式会社
発明の名称 プリント基板用ガラスクロス  
代理人 清水 猛  
代理人 伊藤 穣  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 武井 英夫  
代理人 飯田 房雄  

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