ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01V |
---|---|
管理番号 | 1012157 |
異議申立番号 | 異議1999-73392 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-08-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-09-03 |
確定日 | 2000-01-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2866912号「土木掘削推進機械用障害物探知装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2866912号の特許を維持する。 |
理由 |
1 本件発明 特許第2866912号(平成1年12月15日出願、平成10年12月25日設定登録。)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「土中を掘削推進する土木掘削推進機械における推進管の先端部に、推進方向前方に所定の拡がり角度で電磁波を送信し障害物からの反射波を受信する送・受信アンテナを内装してなる土木掘削推進機械用障害物探知装置であって、 前記推進管の前端面及び先端から前記拡がり角度に対応した所定長さ範囲の管部の部分を、所要の機械的強度を有する電波透過材で形成してなることを特徴とする土木掘削推進機械用障害物探知装置。」 2 申立の理由の概要 申立人株式会社光電製作所は、本件発明は、下記の甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきであると主張している。 記 甲第1号証:特開平1-155290号公報 甲第2号証:特開昭60-173294号公報 甲第3号証:新版無線工学ハンドブック」(株)オーム社(昭和39年5月25日発行)17-5〜17-8頁 3 甲各号証記載の発明 [甲第1号証:特開平1-155290号公報] 「土木工事機械用障害物探知装置」に関し、「土中を推進ないしは掘削する土木工事機械の先端部に装着され所要の強度を有する非金属材質製の前面部材と、該前面部材の背面側におけるアンテナ収容部に配設され当該前面部材を通して埋設物探知用の電波を送波及び受波する送信用及び受信用のアンテナと、該アンテナを傾動させて前記電波の送波及び受波方向を可変する駆動手段と、前記送信用及び受信用のアンテナとの間で送信電力の給電及び埋設物からの反射電波に基づく受信電力の受電を行う送信用及び受信用の回路とを有することを要旨とする。」(3頁左上欄12行〜右上欄3行)と記載されている。 [甲第2号証:特開昭60-173294号公報] 「シールド掘進機のシールド外殻の先端部に複数個のアンテナを有するレーダアンテナヘッドを設け、」(2頁左上欄4〜6行)た「シールド工法」に関し、「次にレーダアンテナヘッド8の各アンテナA,B,Cの実際例を第5図に示す。アンテナ素子9は、プリント基板13上に形成したもので、同図(b)に示すように、2つの三角形を対向配置したもので、」「この三角アンテナは広角度の指向性を有する輻射特性をもつもので、レーダによる探索範囲が広くなるように選んだものである。アンテナ素子9の上部には、誘電体部材2に相当する誘電材14を充填してあり、そして、これらの部材はシールド外殻1の先端部6に設けた凹構造の箱状体15内に収納されており、」「その上を例えばエポキシ樹脂材などの絶縁蓋17で被覆し、土壌3との防水接触面を形成している。」(2頁右下欄16行〜3頁左上欄13行)こと、「また各アンテナA,B,Cの指向方向を前方に傾けるよう変形することによって、掘削地点よりなるべく前方の地質を探知できるようにしたり、アンテナ素子9の形状を変形して、パルス電波の指向幅を広く」(3頁左上欄20行〜右上欄4行)することが記載されている。 [甲第3号証:新版無線工学ハンドブック」 「1・2・3アンテナ素子の指向性 第17・9図に、(17・2)式および(17・10)式から計算した微小ダイポール、半波長アンテナおよび1波長アンテナのフィールドパターンを示す。」(17-7〜17-8頁)と記載されている。 4 対比・判断 本件発明と甲第1〜3号証に記載された発明とを対比すると、本件発明の「前記推進管の前端面及び先端から前記拡がり角度に対応した所定長さ範囲の管部の部分を、所要の機械的強度を有する電波透過材で形成してなる」点が、甲各号証には記載も示唆もされていない。 すなわち、甲第1号証は、申立人も認めるように、本件明細書で言及されている従来例が記載されてはいるが、推進管の「先端から前記拡がり角度に対応した所定長さ範囲の管部の部分」を「電波透過材で形成する」点については記載されていない。 また、甲第2号証の「シールド掘進機のシールド外殻の先端部に」設けられた「レーダアンテナヘッド」は、推進管の管部に設けられていると認められるが、このレーダアンテナヘッドは、「シールド外殻1の先端部6に設けた凹構造の箱状体15内に収納されており、」「その上を例えばエポキシ樹脂材などの絶縁蓋17で被覆し、土壌3との防水接触面を形成している」との記載によれば、電磁波はレーダアンテナヘッドの前面の絶縁蓋からのみ送信されるものと認められ、推進管の「先端から前記拡がり角度に対応した所定長さ範囲の管部の部分」を「電波透過材で形成する」点を開示ないし示唆するものではない。 さらに、甲第3号証は、アンテナから送信される電磁波の一般的な形状を開示するのみである。 本件発明は、その構成により、推進管の前端面及び管部先端近傍での電磁波の反射が防止されて推進方向前方に所定の拡がり角度で電磁波が送信され、また、この所定の拡がり角度範囲における障害物からの反射波が確実に捉えられて障害物の探知能力を顕著に高める事ができるという作用効果を奏することが認められる。 したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、申立人は、甲第1号証記載の発明に甲第2、3号証記載の発明を適用して本件発明とすることは容易であると主張するが、先に述べたように、甲第2号証記載のものは前面蓋からのみ電磁波を送受信するもので、「前端部」のみならず「先端から前記拡がり角度に対応した所定長さ範囲の管部の部分」から電磁波を送受信する本件発明を示唆するものではない。したがって、申立人の主張は採用できない。 5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-11-30 |
出願番号 | 特願平1-325723 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G01V)
|
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
伊坪 公一 |
特許庁審判官 |
阿部 綽勝 住田 秀弘 |
登録日 | 1998-12-25 |
登録番号 | 特許第2866912号(P2866912) |
権利者 | 日本電信電話株式会社 |
発明の名称 | 土木掘削推進機械用障害物探知装置 |