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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1014569
異議申立番号 異議1998-74632  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-24 
確定日 2000-02-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2730610号「水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2730610号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2730610号発明は、平成4年11月10日に特許出願され、平成9年12月19日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、その後特許異議申立人宮原章より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年2月2日付けで訂正請求がなされたが、この訂正請求に対し訂正拒絶理由通知がなされ、平成11年8月30日付けで手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
この補正は、特許請求の範囲の減縮とその減縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正請求の要旨を変更するものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(2)訂正事項
特許権者が求めている訂正事項は、手続補正書によって補正された全文訂正明細書のとおりに、すなわち次の(イ)及び(ロ)のとおりである。
(イ)特許請求の範囲
特許請求の範囲については、特許時の請求項2の削除とそれに伴い請求項3を請求項2に、請求項4を請求項3にそれぞれ繰り上げると共に、特許請求の箱囲の減縮を目的として、「少なくとも水酸化有機第四アンモニウムを含有する廃液」を「少なくとも水酸化有機アンモニウムを1、000〜5、000ppmの範囲で含有すると共にレジスト剥離物を10〜100ppmの範囲で含有する廃液」に、「再処理して」を「酸でpH7以下に調整して」に、「交換体」を「交換樹脂」にそれぞれ訂正して次のとおりに訂正請求されている。
「【請求項1】レジスト剥離物を含有する現像液及び/又は洗浄液に由来し、少なくとも水酸化有機第四アンモニウムを1、000〜5、000ppmの範囲で含有すると共にレジスト剥離物を10〜100ppmの範囲で含有する廃液を処理するに際し、この廃液を陽イオン交換樹脂と接触させて有機第四アンモニウムイオンを陽イオン交換樹脂に吸着させ、次いで得られた陽イオン交換処理水を酸でpH7以下に調整してレジスト剥離物を分離除去することを特徴とする水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。
【請求項2】陽イオン交換樹脂が弱酸性陽イオン交換樹脂である請求項1に記載の水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。
【請求項3】陽イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂である請求項1に記載の水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。」
(ロ)発明の詳細な説明
特許請求の範囲の滅縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的として、次の▲1▼〜▲8▼のとおりに訂正請求されている。
▲1▼明細書段落番号【0007】の「少なくとも水酸化有機第四アンモニウムを含有する廃液」(本件特許公報第3頁第5欄第11行〜12行)を「少なくとも水酸化有機アンモニウムを1、000〜5、000ppmの範囲で含有すると共にレジスト剥離物を10〜100ppmの範囲で含有する廃液」と訂正請求されている。
▲2▼明細書段落番号【0007】の「再処理して」(本件特許公報第3頁第5欄第14行〜15行)を「酸でpH7以下に調整して」と訂正請求されている。
▲3▼明細書段落番号【0007】の「また、本発明は、・・・処理方法である」(本件特許公報第3頁第5欄第16行〜20行)を削除する。
▲4▼明細書段落番号【0010】の「このイオン交換体の基体については、・・・その形状についても、」(本件特許公報第3頁第6欄第13行〜17行)を「この陽イオン交換樹脂の形状については、」と訂正請求されている。
▲5▼明細書段落番号【0010】の「弱酸性陽イオン交換体・・・陽イオン交換体の組合せ等、」(本件特許公報第3頁第6欄第19行〜22行)を「弱酸性陽イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂との組合せ、異なる形状を有する複数の陽イオン交換樹脂の組合せ等、」と訂正請求されている。
▲6▼明細書段落番号【0012】の「陽イオン交換樹脂や、・・・交換体が挙げられる。」(本件特許公報第4頁第7欄第27行〜28行)を「陽イオン交換樹脂が挙げられる。」と訂正請求されている。
▲7▼明細書段落番号【0030】の「含有する廃液を処理する際に、・・・大量の廃液を性能を処理することができる。)(本件特許公報第7頁第14欄第10行〜18行)を「1、000〜5、000ppmの範囲で含有すると共にレジスト剥離物を10〜100ppmの範囲で含有する廃液を処理する際に、効率良くかつ確実に水酸化有機第四アンモニウムを除去することができ、また、廃液中に存在する高分子物質のレジスト剥離物が陽イオン交換樹脂に付着してこの陽イオン交換樹脂の性能を劣化させることがなく、少量の陽イオン交換樹脂を用いて大量の廃液を処理することができるほか、レジスト剥離物も陽イオン交換処理水を酸でpH7以下に調整するだけで容易に分離除去することができるので、廃液処理を効率良くしかも安価に行うことができる。」と訂正請求されている。
▲8▼明細書段落番号【0006】,【0007】,【0008】,【0010】,【0011】,【0012】,【0013】,【0014】,【0016】,【0017】,【0018】,【0019】,【0021】,【0025】,【0029】の「交換体」を「交換樹脂」と訂正請求されている。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(2)(イ)の訂正事項は、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、上記(2)(ロ)▲1▼〜▲8▼の訂正事項は、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明に該当するものであって、これら訂正事項は、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また、当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4)独立特許要件について
(イ)本件訂正発明
本件訂正明細書の請求項1乃至3に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1乃至3」という)は、平成11年8月30日付けで補正された訂正明細書の上記(2)(イ)で示す請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(ロ)引用刊行物の記載内容
当審が訂正拒絶理由通知において引用した刊行物1乃至7には,それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:半導体基盤技術研究会編「超純水の科学」株式会社リアライズ社発行、平成2年9月11日、第163頁乃至第190頁
▲1▼「2.3排水を出す工程とその回収処理の方法」の項には、「VLSI製造工場の、超純水を使用して洗浄排水等を排出する製造工程は、大きく以下の4つの工程に分けられる。
(1)テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)やコリン等の現像液を使用するフォトリソグラフィー工程」(第166頁第16行〜19行)
▲2▼「(1)フォトリソグラフィー工程排水」の項には「ウエハ上にレジストを塗布し、ステッパーにより回路パターンを焼き付ける。次に現像液を使用して露光したレジストを固定化して、不要部分のレジストを除去し回路パターンを作る工程である。この工程より出る廃液は、数千ppmほどのTMAHやコリン等の有機系現像廃液を含み、またレジストも混入してくる。」(第166頁第33行〜第167頁第4行)
▲3▼「尚、濃度の低い洗浄排水が大量に排出される場合は、これらの薬品が強酸性のカチオン交換樹脂で吸着できることより、イオン交換樹脂で吸着濃縮させて、その再生廃液を廃棄物の処理業者による取引処分とする方法が有力となる。」(第167頁第10行〜12行)
引用例2:特公平3-17557号公報
▲1▼「本発明は半導体製造工程、プリント基板製造工程等から排出されるフォトレジスト含有廃液の処理方法に関する。」(第1頁第1欄第9行〜11行)
▲2▼「そして、フォトレジスト含有廃液が、通常、pH13程度のアルカリ性であるので、同廃液中ではフォトレジストは溶解状態で含まれている。しかし、同廃液は、何らかの原因で濃度上昇を起したり、pH低下を起すと、含有フォトレジストが容易に不溶化して固形物を析出する。」(第2頁第3欄第39行〜44行)
引用例3:特公昭62-22978号公報
▲1▼「例えば、フェノール系、ポリスチレンのマクロポーラス系、ポリスチレンゲル系の交換基がスルフォン酸基である強酸性のイオン交換樹脂は、有機アルカリの第4級アンモニウムイオンと、イオン交換し、」(第2頁第4欄第27行〜31行)
▲2▼「ポリアクリルマクロポーラス系で交換基が、カルボキシル基の弱酸性のイオン交換樹脂を使用すると、意外にも第4級アンモニウムイオンは、イオン交換される度合いが減少し、金属が優先的にイオン交換され除去される。」(第2頁第4欄第35行〜40行)
引用例4:電子材料別冊1988年版「超LSI製造・試験装置ガイドブック」株式会社工業調査会発行、昭和62年11月20日、第151頁乃至第158頁
「図5に排水回収を組み込んだ超純水製造装置のブロックフローを示した。排水回収技術において特に重要な問題となるのは有機物の除去分解である。有機物の除去手段としては以下のような方法がある。
▲1▼活性炭▲2▼イオン交換樹脂▲3▼RO▲4▼UV酸化▲5▼脱気
有機物は先にも述べたように、1つの単位操作で完全に除去されるものではなく、上記の方法を回収排水の水質に応じて適切に組み合わせていくことが必要である。」(第156頁第8行〜第20行)
引用例5:特開昭58-30753号公報
「溶解したホトレジストを活性炭へ吸着して液中の固形物をろ過除去した後、」(第1頁右欄第5行〜第6行)
引用例6:「高分子論文集」第46巻、第12号、高分子学会発行、1989年、第753頁乃至第756頁
「ポジ型フォトレジストのパターン形成機構をFig.1に示す。露光部(exposed part)では,キノンジアド化合物が光により分解されケテンを経てインデンカルボン酸になる。これはアルカリ性の現像液に可溶であるためノボラック樹脂とともに溶解する。」(第753頁左欄第21行〜第25行)
引用例7:特開平4-228587号公報
▲1▼「代表的なポジ型レジストは、o-ジアゾナフトキノン等の感光性物質を含有したノボラック樹脂が用いられている。エステル化したo‐ジアゾナフトキノンスルホン酸エステルとm‐クレゾール型ノボラック樹脂とを混合したものの一例を下記[化1]に示す。」(【0004】)
▲2▼「ノボラック樹脂と結合したo-ジアゾナフトキノンスルホニル基は、ノボラック樹脂の溶解性を減ずる作用を果たしているが、o‐ジアゾナフトキノンに紫外線などの光が照射されると、下記[化2]のようにケテンとなり、更に水の存在下で3-インデンカルボン酸が生じる。」(【0006】)
▲3▼「その結果、ノボラック樹脂の溶解禁止剤としての作用を果たす作用がなくなるばかりでなく、酸が生じたためにアルカリに対する溶解性が増大することとなる。」(【0008】)
(ハ)当審の判断
(i)訂正発明1について
訂正発明1と引用例1に記載された発明(以下、「引用例1発明」という)とを対比すると、両者は、半導体製造工程の現像液又は洗浄液に由来する「廃液の処理方法」に関する点で軌を一にするものである。また「レジスト剥離物」は「レジスト」に、「水酸化有機第四アンモニウム」は「テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)」に、「陽イオン交換樹脂に吸着させる」は「カチオン交換樹脂で吸着できる」ことにそれぞれ相当するから、両者は、「レジスト剥離物を含有する現像液及び/又は洗浄液に由来し、少なくとも水酸化有機第四アンモニウムを含有すると共にレジスト剥離物を含有する廃液を処理するに際し、この廃液を陽イオン交換樹脂と接触させて有機第四アンモニウムイオンを陽イオン交換樹脂に吸着させる水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法」である点で一致し、以下の(a)及び(b)の点で相違していると云える。
(a)訂正発明1は有機第四アンモニウムイオンとレジスト剥離物の濃度をそれぞれ「1、000〜5、000ppm」と「10〜100ppm」に限定しているのに対して、引用例1発明は「数千ppmほどのTMAHやコリン等の有機系現像廃液」であると限定している点
(b)訂正発明1は「得られた陽イオン交換処理水を酸でpH7以下に調整してレジスト剥離物を分離除去する」のに対して、引用例1発明はこれを分離除去していない点
そこで、これら相違点について検討する。
相違点(a)について、
水酸化有機第四アンモニウムイオンとレジスト剥離物の上記濃度範囲については、本件特許明細書に「半導体製造装置の現像工程から排出される代表的な廃液について説明すると」(本件特許公報第3頁第5欄第43〜44行)として、「・・・現像工程で使用された現像液は通常5〜10倍に希釈されて廃液となる。このため、この現像工程で排出される廃液の組成は、水酸化有機第四アンモニウムが1、000〜5、000ppm程度であり、レジスト剥離物が10〜100ppm程度であり」(本件特許公報第3頁第5欄第49行〜第6欄第3行)と記載されているから、上記相違点(a)は、半導体製造装置の現像工程から排出される「代表的な廃液」の「通常の」濃度範囲を明示しただけのものであり、この点に格別の創意・工夫があるとは云えない。
相違点(b)について、
上記引用例2▲1▼及び▲2▼の記載によれば、半導体製造工程の現像液又は洗浄液に由来するフォトレジスト含有廃液について、そのpHを低下させればフォトレジストが容易に不溶化して固形物として析出する事実がすでに知られている。また、フォトレジスト含有廃液からフォトレジストを除去することも上記引用例4及び5にみられる如く周知・慣用技術であるから、上記引用例2に記載の事実を利用して廃液からフォトレジストを分離除去することも当業者であれば必要に応じて容易になし得ることと云える。そして、その際のpH値についても、上記引用例2には通常のpH13程度からpH低下を起すと容易に不溶化すると明示されているのであるから、pH7以下という数値範囲も引用例2の記載に照らし自明の事項であると云える。
したがって、訂正発明1は、引用例1及び引用例2に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、特許権者は、引用例1発明の「廃液」に関し、引用例1には「尚、濃度の低い洗浄排水が大量に排出される場合は・・・カチオン交換樹脂で吸着できることより」と記載されており、この廃液はレジストを含まない廃液と解するのが相当であるから、訂正発明1の廃液と別異のものであると主張している。そして、特許権者のこの主張は、引用例1の「濃度の低い洗浄排水」という記載を根拠に、濃度が低ければpHが低く、pHが低ければ引用例2の第3欄第39行〜44行に記載される如く「レジスト剥離物は不溶化して」沈殿するものであるから廃液中にはレジストは含まれないというものである。
しかしながら、廃液の濃度が低ければ一義的にpHが低いと解することはできないし、上記引用例1には、廃液中にレジストが存在していないとする明示的な記載や示唆も見当たらないから、廃液の濃度とpHとの関係を一義的に解釈する特許権者の上記主張は採用することができない。
(ii)訂正発明2及び3について
訂正発明2及び3は、請求項1の記載を引用すると共に請求項1の「陽イオン交換体樹脂」をそれぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂に特定するものであるが、この特定された両樹脂とも上記引用例3に記載の如く、水酸化有機第四アンモニウムの吸着剤として周知であるから、これら発明も、引用例1乃至3に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許権者が求める上記訂正請求は認めることができないから、本件請求項1乃至4に係る発明(以下、それぞれ「本件第1発明乃至第4発明」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】レジスト剥離物を含有する現像液及び/又は洗浄液に由来し、少なくとも水酸化有機第四アンモニウムを含有する廃液を処理するに際し、この廃液を陽イオン交換体と接触させて有機第四アンモニウムイオンを陽イオン交換体に吸着させ、次いで得られた陽イオン交換処理水を再処理してレジスト剥離物を分離除去することを特徴とする水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。
【請求項2】陽イオン交換処理水の再処理が、この陽イオン交換処理水を酸でpH7以下に調整してレジスト剥離物を分離除去する請求項1に記載の水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。
【請求項3】陽イオン交換体が弱酸性陽イオン交換樹脂である請求項1又は2に記載の水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。
【請求項4】陽イオン交換体が強酸性陽イオン交換樹脂である請求項1又は2に記載の水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。」
(2)引用刊行物
当審が平成10年12月4日に通知した取消理由において引用した刊行物1乃至7は、上記2.(4)(ロ)で示す訂正拒絶理由において引用された引用例1乃至7とそれぞれ同一のものである。
(3)当審の判断
(イ)本件第1発明について
本件第1発明と引用例1発明とを対比すると、両者は、「レジスト剥離物を含有する現像液及び/又は洗浄液に由来し、少なくとも水酸化有機第四アンモニウムを含有する廃液を処理するに際し、この廃液を陽イオン交換体と接触させて有機第四アンモニウムイオンを陽イオン交換体に吸着させる水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法。」である点で一致し、次の(a)点で相違するのみである。
(a)本件第1発明は「得られた陽イオン交換処理水を再処理してレジスト剥離物を分離除去する」のに対して、引用例1発明はこれを分離除去していない点。
そこで、この相違点(a)について検討する。引用例1発明においても、水酸化有機第四アンモニウムを陽イオン交換樹脂で除去した処理液にはレジスト剥離物が含まれていることは自明の事実であり、また、フォトレジスト含有廃水からフォトレジストを除去することも上記引用例4、5にみられるように周知・慣用技術であるから、この相違点a.はこの技術分野の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に想到することができるものである。
したがって、本件第1発明は引用例1に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(ロ)本件第2発明について
本件第2発明は、上記請求項1を引用すると共に請求項1の「陽イオン交換処理水の再処理」を「陽イオン交換処理水の再処理が、この陽イオン交換処理水を酸でpH7以下に調整してレジスト剥離物を分離除去する」と特定するものであるが、この特定された構成については、上記2.(4)(ハ)(i)相違点(b)のところで言及したとおりである。
したがって、本件第2発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第2発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(ハ)本件第3発明及び本件第4発明について
本件第3発明及び第4発明は、請求項1又は請求項2の記載を引用すると共に請求項1の「陽イオン交換体」をそれぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂に特定するものであるが、この特定された両樹脂とも上記引用例3に記載の如く、水酸化有機第四アンモニウムの吸着剤として既に知られているから、これら発明も、引用例1乃至3に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件第3発明及び第4発明の特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件請求項1乃至4に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-12-28 
出願番号 特願平4-323814
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (C02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 関 美祝  
特許庁審判長 沼澤 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 1997-12-19 
登録番号 特許第2730610号(P2730610)
権利者 多摩化学工業株式会社
発明の名称 水酸化有機第四アンモニウム含有廃液の処理方法  
代理人 成瀬 勝夫  

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