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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1022134
審判番号 審判1998-15488  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-10-01 
確定日 2000-05-10 
事件の表示 平成2年特許願第69004号「自動走行装置」拒絶査定に対する審判事件[平成3年11月28日出願公開、特開平3-268108号、請求項の数(1)]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年3月19日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「車両に取り付けられた撮像装置により車両の進行方向の領域を撮像し、その撮像画像をサンプリングすることによって得られるドット画像のデータにもとづいて、現在の車両の進行方向をX軸方向としたときのX-Y座標上における車両の走行可能領域を認識し、その認識された走行可能領域内にドット点列による目標経路を設定したうえで、X軸方向における所定の距離にしたがう車両の先方の目標経路上の位置に目標点を設定して、その目標点に車両を合流させる車両の走行制御を行わせるようにした自動走行装置において、ドット点列による不連続な目標経路を連続した曲線によって近似してその曲線の関数を求める手段をとり、その曲線の関数を用いた演算処理によって前記目標点の位置を求めるようにしたことを特徴とする自動走行装置。」

【2】引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平2-48704号公報(平成2年2月19日公開。以下、「引用例」という。)には、「本発明による自動走行装置にあっては、第1図に示すように、車両の進行方向の領域を撮像することができるように車両に取り付けられたビデオカメラ1と、 ・・・(中略)・・・ その求められた制御目標量にしたがって車両の操舵を行わせるステアリング制御部8およびステアリング駆動部9とによって構成されている。」(第2頁右上欄第20行乃至左下欄第20行)、「ここでは、CPU211またはCPU212の制御下において、ビデオカメラ1から順次送られてくる各1画像分の入力画像が、画像入力部22を通していったんバッファメモリ231又は232に交互に蓄積される。しかるのち、そのバッファメモリ231または232に蓄積された各1画像分の入力画像が逐次読み出されて、画像処理部24において後述するような例えば道路エッジを抽出して車両の走行可能領域を認識するための画像処理が行われる。」(第2頁右下欄第8乃至17行)、「次に、走行可能領域認識部2において車両の進行方向の走行可能領域となる道路が認識されると、目標経路設定部3において、その認識された道路内における車両の最適な走行経路となる目標経路が設定される。」(第4頁左上欄第15乃至19行)、「そしてその設定された目標経路のX-Y座標上の位置が、目標経路設定部3の内部メモリに、車両の走行が進むにしたがって逐次更新されながら記憶される。その際、X-Y座標上の尺度は、ビデオカメラ1の倍率によって決定される。」(第4頁右上欄第16乃至20行)、「図中、P点からお点に至るまでの軌跡は、後述するように、制御部4の制御下において車両の操舵制御がなされることにより、P点にいる車両が目標経路OCに合流するまでの走行経路を示している。O点は、そのときの車両の目標経路OCへの合流位置となる。」(第4頁左下欄第5乃至10行)及び「次に、道路上における目標経路が設定されたら、制御部4において、車両をその目標経路に合流させるための制御目標量が、以下のように演算処理によって求められる。 いま、例えば第7図に示すように、P点にある車両13を目標経路OCに合流させる場合を考えてみる。 まず、車速センサ5によって検出された車両の現在車速v(m/s)にもとづいて、P点にある車両のT秒後におけるX軸上の距離L(m)(L=v*T)が求められ、そのX軸上におけるP点から距離Lだけ離れたC点と目標経路OCとの間の偏差yl、すなわちT秒後における目標経路OC上の位置に比例した値がわり出される。 ・・・(中略)・・・ そして、ステアリング制御部8は、制御部4から与えられる制御目標量δ’に応じてステアリング駆動部9に駆動指令を出し、それによりステアリング駆動部9がステアリングの駆動を適宜なして車両を目標経路OCへ合流させるような操舵を行なう。 なお、第7図の関係にあって、X軸上の距離L(目標合流距離)を設定する場合、制御部4の制御下において、車速センサ5によって検出される車両の走行速度vに応じてその設定距離Lを可変にすることができる。」(第4頁右下欄第7行乃至第5頁右上欄第13行)との記載並びに第1図乃至第7図の記載がされている。
そして、これらの記載によれば、引用例には、「車両に取り付けられた撮像装置により車両の進行方向の領域を撮像し、撮像装置から順次送られてバッファメモリに蓄積された後に順次読み出される各1画像分の入力画像のデータにもとづいて、現在の車両の進行方向をX軸方向としたときのX-Y座標上における車両の走行可能領域を認識し、その認識された走行可能領域内にX-Y座標上の位置が目標経路設定部の内部メモリに記憶される目標経路を設定したうえで、現在車速にもとづいて現在位置にある車両のT秒後におけるX軸上の距離を求め、その距離にしたがってT秒後における目標経路上の位置に比例した値をわり出して、この値と同様に車両のヨーレートにもとづいてわり出した予測経路から求めたT秒後における予測経路上の位置に比例した値との差に応じて車両の修正すべきヨーレートを求め、このヨーレートと現在位置における車両のタイヤ角度からタイヤ角度の制御目標量を決定し、この制御目標量に応じてステアリングの駆動をすることで、T秒後における目標経路上の位置に車両を合流させるようにした自動走行装置。」が開示されているものと認められる。

【3】対比・判断
本願発明と引用例に記載されたものとを対比するに、引用例に記載のものにおける「撮像装置から順次送られてバッファメモリに蓄積された後に順次読み出される各1画像分の入力画像のデータ」については、撮像装置が撮像した連続的な画像データは離散的な各1画像分の入力画像データに変換されているのであるから、撮像画像をサンプリングしていること及びサンプリングによりドット画像のデータが得られることは明らかであり、本願発明の「その撮像画像をサンプリングすることによって得られるドット画像のデータ」に相当するものと認められる。
また、引用例に記載のものにおける「X-Y座標上の位置が目標経路設定部の内部メモリに記憶される目標経路」については、X-Y座標上の位置がメモリに記憶されることにより目標経路がドット点列で表されることになるから、本願発明の「ドット点列による目標経路」に相当するものと認められる。
さらに、引用例に記載のものにおける「現在車速にもとづいて現在位置にある車両のT秒後におけるX軸上の距離を求め、その距離にしたがってT秒後における目標経路上の位置に比例した値をわり出して、この値と同様に車両のヨーレートにもとづいてわり出した予測経路から求めたT秒後における予測経路上の位置に比例した値との差に応じて車両の修正すべきヨーレートを求め、このヨーレートと現在位置における車両のタイヤ角度からタイヤ角度の制御目標量を決定し、この制御目標量に応じてステアリングの駆動をすることで、T秒後における目標経路上の位置に車両を合流させるようにした」ことについては、T秒後における目標経路上の位置に比例した値をわり出すことが車両の目標経路上の位置に演算処理によって目標点を求める(設定する)ことになるのは明らかであるから、本願発明の「X軸方向における所定の距離にしたがう車両の先方の目標経路上の位置に目標点を設定して、その目標点に車両を合流させる車両の走行制御を行わせるようにした」こと及び「演算処理によって前記目標点の位置を求めるようにした」ことに相当するものと認められる。
そうすると、両者は「車両に取り付けられた撮像装置により車両の進行方向の領域を撮像し、その撮像画像をサンプリングすることによって得られるドット画像のデータにもとづいて、現在の車両の進行方向をX軸方向としたときのX-Y座標上における車両の走行可能領域を認識し、その認識された走行可能領域内にドット点列による目標経路を設定したうえで、X軸方向における所定の距離にしたがう車両の先方の目標経路上の位置に目標点を設定して、その目標点に車両を合流させる車両の走行制御を行わせるようにした自動走行装置において、演算処理によって前記目標点の位置を求めるようにした自動走行装置。」で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
<相違点>
演算処理によって目標点の位置を求めるのに、本願発明が「ドット点列による不連続な目標経路を連続した曲線によって近似してその曲線の関数を求める手段をとり、その曲線の関数を用い」ているのに対して、引用例に記載のものはそのような曲線の関数を用いているか否か不明である点。
上記相違点について検討する。
本願発明の上記相違点に係る構成は、目標経路を制御データとして、引用例に記載のものに「ドット点列による不連続な制御データを連続した曲線によって近似してその曲線の関数を求め、その曲線の関数を制御データとして用いる」という技術的事項を適用することにより構成し得るものと認められるところ、そのような技術的事項は、制御の一般的な技術として周知の事項(データ補間としてよく知られており、必要であれば、特開昭61-286908号公報、特開昭61-193787号公報、特開昭64-81012号公報、特開平1-217608号公報及び特開昭64-7110号公報等を参照。)である。
また、引用例の「また、目標経路OCに車両を合流させる際のP点からO点に至るまでの走行経路の曲線モデルを用いて、 ・・・(中略)・・・ そのわり出された走行経路のパターンをもって目標経路OCへの合流をスムーズに行わせるようにすることも可能である。 なお、走行経路の曲線モデルとしては、例えば関数y=x-sinxまたは関数y=X^3などが用いられる。 第8図に関数y=x-sinxによる走行経路の曲線モデルを用いたときの走行経路のパターンを示している。」(第5頁左下欄第6乃至19行)との記載及び第8図の記載によれば、設定されたドット点列を曲線によって近似して、その曲線の関数を走行経路として用いることが示されており、これを併せて考慮すると、本願発明の前記相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものと認められる。
なお、審判請求人は、本願発明はドット点列を補間演算によって曲線に近似する手法を利用することにより、目標経路上における目標点の位置決めを精度良く行わせることができるようにした点で進歩性がある旨を主張している。
そこで検討すると、ドット点列を補間演算によって曲線に近似する手法は、ドット点列の離散的なデータでは所望の目的を達成するのにデータ量として不足している場合にそれを補うためデータ補間して連続データを得るものであると認められるところ、ドット点列を補間演算によって曲線に近似する手法である上記周知の事項を引用例に記載のものに適用すれば、目標経路は連続データで表されることになり、目標経路上における目標点の位置決めを精度良く行わせることができることは当業者であれば予測しうることと認められ、当該審判請求人の主張は採用することができない。
そして、本願発明が奏する「目標経路上に位置精度良く目標点を設定することができ、目標経路に対する車両走行の追従性を向上させて、車両走行を安定して行わせることができる」(本願明細書第20頁第8乃至12行)という作用効果については、上述したとおりであるから、引用例に記載の事項及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例に記載の事項及び前記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

【4】むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-02-23 
結審通知日 2000-03-07 
審決日 2000-03-21 
出願番号 特願平2-69004
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 幸雄長崎 洋一  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 槙原 進
西川 一
発明の名称 自動走行装置  
代理人 鳥井 清  

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