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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1024638
異議申立番号 異議1998-72813  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-11-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-06-04 
確定日 2000-09-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2690676号「信号処理方法及び信号処理装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2690676号の請求項1ないし11に係る特許を取り消す。 
理由 2.理由
(1)手続の経緯
本件特許第2690676号の発明は、特願昭63-508077号の分割出願として昭和63年9月8日に出願され、平成9年8月29日に設定登録され、その後、異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成11年4月30日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成11年12月27日に手続補正されている。
(2)訂正の適否
(A)補正された訂正明細書の各請求項に係る発明:
補正された訂正明細書の各請求項に係る発明は、その特許請求の範囲に記載されたとおりの以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
放送番組の出力装置とコンピュータとを備え、上記コンピュータが複数のメモリを有する受信局で、受信した放送番組と上記コンピュータで作成した画像、音声、文字の少なくとも1つによる表現を含む重畳情報との合成を制御する信号処理方法において、上記放送番組、作成指示制御信号及び重畳表示制御信号を含む放送信号を受信する段階と:上記出力装置に、受信した上記放送番組を出力する段階と;上記作成指示制御信号を受信して、上記作成指示制御信号を上記コンピュータへ伝える段階と;上記作成指示制御信号に対応して、上記コンピュータが上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第1のメモリに記憶されているメモリ記憶情報を処理して上記重畳情報を作成する重畳情報作成段階と;上記重畳情報を上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第2のメモリに記憶する段階と;上記受信局で上記重畳情報の完成を確認する段階と:上記重畳表示制御信号を受信して、上記確認する段階で上記重畳情報の完成が確認されたときに上証コンピュータが上記重畳表示制御信号に対応して上記重畳情報を上記第2のメモリから上記出力装置へ伝え、上記出力装置に、上記重畳情報の完成が確認されたときに上記放送番組と上記重畳情報との合成出力を出力し、上記重畳情報の完成が確認されないときに上記放迭番組のみを出力する段階と;上記重畳情報を上記第2のメモリから消去する段階と、よりなることを特徴とする信号処理方法。
【請求項2】上記出力装置として、印刷機、音響発生機、ビデオ表示装置の中から一つ以上が選択されていることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項3】上記重畳情報の合成を制御する方法が,更に、上記受信局が重畳表示終了制御信号を受信したとき、上記コンピュータが上記重畳情報を上記第2のメモリから上記出力装置へ伝えるのを止め、上記出力装置が上記重畳表示終了制御信号に基づいて上記重畳情報の出力を止める段階を含むことを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項4】上記重畳情報を上記第2のメモリから消去する段階を含む請求項1記載の信号処理方法に更に付加して:上記作成指示制御信号および上記重畳表示制御信号を受信した後に、メモリ消去指示制御信号を受信する段階と;上記メモリ消去指示制御信号の受信に対応して、上記第2のメモリから上記重畳情報の情報内容を消去して、上記出力装置が上記重畳情報の出力を止め、上記合成出力の出力を止める段階とを含んでいることを特徴とする信号処理方法。
【請求項5】上記重畳情報作成段階は、上記メモリ記憶情報を処理するために、上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第3のメモリに記憶されたコンピュータ・プログラムを上記コンピュータが上記作成指示制御信号に対応して実行し、上記重畳情報を作成する段階を含んでおり、上記作成指示制御信号を上記コンピュータへ伝える段階よりも前に上記コンピュータ・プログラムが記憶されていることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項6】上記放送信号がさらにコンピュータ・プログラムを含み、上記重畳情報作成段階は:上記コンピュータ・プログラムを上記コンピュータへ伝える段階と、上記作成指示制御信号に対応して上記コンピュータ・プログラムを上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第3のメモリに格納する段階と;上記コンピュータ・プログラムの格納を済ませた後、上記メモリ記憶情報を処理するために、上記コンピュータが上記コンピュータ・プログラムを実行して、上記作成指示制御信号に対応して上記重畳情報を作成する段階とを含んでいることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項7】上記作成指示制御信号および上記重畳表示制御信号は上記放送信号に埋め込まれていることを特徴とする請求頭1記載の信号処理方法。
【請求項8】受信したテレビジョン番組と受信局のコンピュータが作成した重畳情報との合成表示を制御する上記受信局の機器は:(1)上記テレビジョン番組と一つ以上の埋め込まれた制御信号とよりなる情報送信を受信する段階と:(2)上記情報送信の中から作成指示制御信号および重畳表示制御信号を含む上記制御信号を検出する段階と;(3)上記制御信号を上記コンピュータへ送る段階とを実行するデコーダと:上記テレビジョン番組を受信して表示するテレビジョン受信機と;上記テレビジョン受信機と上記デコーダとに結合され、複数のメモリを有する上記コンピュータとを備えており、上記コンピュータは:上記デコーダから上記制御信号を受信する段階と:上記作成指示制御信号の受信に対応して上記重畳情報を作成するために上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第1のメモリに記憶されているメモリ記憶情報を処理する段階と;上記重畳情報を上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第2のメモリに記憶する段階と;上記受信局で上記重畳情報の完成を確認する段階と;上記確認する段階で上記重畳情報の完成が確証されたときに上記重畳表示制御信号に対応して上記重畳情報を上記第2のメモリから上記テレビジョン受信機へ伝えて、上記テレビジョン受信機に、上記重畳情報の完成が確認されたときに受信した上記テレビジョン番組と上記重畳情報とよりなる上記合成表示を行なわせ、上記重畳情報の完成が確認されないときに上記テレビジョン番組のみを出力する段階と:その後上記重畳情報を上記第2のメモリから消去する段階とを実行するようにプログラムされていることを特徴とする信号処理装置。
【請求項9】上記コンピュータは更に、上記デコーダが上記情報送信から検出した上記制御信号に含まれる修正指示制御信号に対応して上記重畳情報を修正する段階を実行するようにプログラムされていることを特徴とする請求項8記載の信号処理装置。
【請求項10】上記受信局は複数の別々の受信局の中の一つであって、各受信局は、上記デコーダ、上記コンピュータ、及び上記テレビジョン受信機を有することを特徴とする請求項8記載の信号処理装置。」
(B)引用刊行物記載発明:
訂正明細書の各請求項に係る発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した各刊行物には以下の事項が記載されている。
【刊行物】
(1)刊行物1:米国特許第4,694,490号明細書・・(異議申立02の甲第1号証)
(3)刊行物3:TELESOFTWARE:HOME COMPUTING VIA BROADCAST TELETEXT、IEEE Transaction on Consumer Electronics、Vol.CEー25、 No.3, pp279-287, J.Hedger, July 1979 ・・(異議申立02の甲第5号証)
(4)刊行物4:TELESOFTWAREーーVALUE ADDED TELETEXT、IEEE Transaction on Consumer Electronics、Vol.CEー26、No.3, pp555-567, J.Hedger, August 1979・・(異議申立02の甲第6号証)
(5)特開昭59-154886号公報
(6)特開昭57-199377号公報

【刊行物記載発明】
刊行物1には、受信機または加入者局において、放送番組と重畳情報の合成を制御する信号処理方法および手段が開示されている。この手段には、プログラミング出力装置、デコーダ、コンピュータが備えられている。以下、記載内容で説明する。
「本発明の目的は、テレビ受信機及びラジオ受信機の外部にある機器(特に、コンピュータ及びプリンタのようなコンピュータ周辺機器)と通信するプログラミングを可能とする手段及び方法を開発することによって前記の潜在性に門戸を開放することである。本発明の他の目的は、個々の受信機場所でそのような送信と表示を処理及び監視し、送信されたプログラミングの使用と関連機器の動作を、ある種の方法で制御する手段と方法を提供することである。」(刊行物1のコラム1第36行〜第47行)、
「装置は、永久的な動作指示及び他の情報を記録するための読取専用メモリ、及び動作パターン及び指示の改訂を許すプログラム可能ランダムアクセスメモリコントローラ(PRAMコントローラ)を有する。PRAMコントローラは動作の全面的な柔軟性のためにすべての内部動作ユニットへ接続されてよい」(刊行物1のコラム5第16行〜第22行)、
「信号処理装置はプログラム可能ランダムアクセスメモリコントローラ20・・を含むコントローラ装置を有する」(刊行物1のコラム8第20行〜第25行)、
「コントローラ20は装置のいかなる要素をも全面的又は部分的に遮断することができる。それは電話接続22を介して外部ソースと交信し、そのような遠隔ソースから再プログラムすることができる」(刊行物1の第9カラム20〜23行)、
「本件特許に特に関連しているものは、選択情報の受信とマルチメディア表示の調整である」(刊行物1のコラム18第43行〜コラム20第10行等)、
「マイクロコンピュータ205は、「ウオールストリートウイーク」プログラミング送信に埋め込まれた指示信号に所定の様式で応答するように前もってプログラムされている。」(刊行物1のコラム19第42〜44行)、
「図6Cを参照すると、TV信号デコーダ203、マイクロコンピュータ205、テレビ202を含む信号処理装置が示されている。テレビはテレビ番組を受信して表示することができる」(刊行物1のコラム19第50行〜第52行等)、
1つの実施形態では、コンピュータ205が最終株価を受信して、ユーザによりコンピュータのメモリ中に記憶させてあるポートフォリオに対応するこれらの株価を記憶する(刊行物1のコラム19第35行〜第41行等)、
「マイクロコンピュータ205は、「ウォール・ストリート・ウィーク」プログラミング送信に埋め込まれた指示信号に所定の様式で応答するように前もってプログラムされている。「ウォール・ストリート・ウィーク」送信が金曜日の夜8:30PMに始まったとき、いくつかの指示信号がデコーダ203によって識別され、マイクロコンピュータ205へ転送される。これらの信号は、いくつかのグラフィックビデオオーバーレイの発生をマイクロコンピュータ205に指示する。マイクロコンピュータ205はグラフィックビデオオーバーレイを発生し送信する手段を有し、TVセット202は、コマンドに基づいてそれらのオーバーレイを受信して表示し、TVセット202へ送信する手段を有する。
続いてプログラムの中で、司会者が「ダウジョーンズ工業の今週の実績は次のとおりです」と放送し、スタジオ発生グラフィックが放映される。次に司会者は「今週の大商いのナスダック指数は次のとおりです」と放送し、スタジオ発生グラフィックオーバーレイが最初のグラフィックの上部に表示される。次に司会者は「あなたのポートフオリオの実績は次のとおりです」と放送する。この時点で、プログラミングを作り出しているテレビスタジオで1つの指示信号が発生され、プログラミング送信の中で送られる。この信号はデコーダ203によって識別され、プロセッサ204を介してマイクロコンピュータ205へ転送される。この信号は、マイクロコンピュータ205がプロセッサ204から同じ指示信号を受信している間、最初のオーバーレイをTVセット202へ送信することをマイクロコンピュータ205へ指示する。次に視聴者は、スタジオ発生グラフィックに重ねて自己所有株式の実績のマイクロコンピュータ発生グラフィックを見る。2つのスタジオ発生グラフィックがもはや放映されなくなったとき、スタジオは指示信号の送信を停止し、マイクロコンピュータ205はTVセット202へのそれ自身のグラフィック送信を取り止め、発生スタジオからの指示に基づいて次のローカル発生グラフィックオーバーレイの送信を準備する。」(刊行物1のコラム19第42行〜コラム20第7行)、
と記載されている。
刊行物3には、「テレテキスト・デコーダ」に関し、「少しの他のコンポーネントを付け加えれば、TVセットに格納できる全く強力な独立型コンピュータとなる。そのような端末のためにプログラムを放送するためにテレテキスト・システムを利用することによって、ユーザは所望のプログラムを含むテレテキスト・ページを選択するだけでよい。これが一度読み込まれると、それは、高価な記憶周辺装置、電話回線、又はユーザの特別の知識を必要としないで端末マイクロプロセッサによってロードされ実行されてよい。」(第279頁左カラム 「1.INNTRODUCTION」)、「プロセッサカードには、マイクロプロセッサ、スクラッチパッドメモリ、2次メモリが含まれている」(第281頁)、「電源投入後またはキーパッドのコマンドに応答して、マイクロプロセッサは制御プログラムを実行し、このプログラムは特別な識別文字シーケンス(例えば$%$%$%)を探すためにマイクロプロセッサにページ記憶装置をスキャンさせ、マイクロプロセッサはこれをテレソフトウェアとして認識する」(第281頁)、「有効なテレソフトウェアベージが位置付けられると、スクラッチパッドメモリにロードされ、ここでデータのエラーチェックが行われ、その後確認されたデータは2次メモリの正しい位置に組み込まれる」(第281頁)、「この処理は完全なプログラムを形成するすべてのページが受信されて2次メモリにロードされるまで繰り返される」(第281頁)、「エラーが検出されると、それらの位置は記録され、誤りのあるバイトはその後にそのページが再度読まれた時に再度テストされる」(第282頁)、「テレソフトウエアの驚異的な強さは、その情報交信能力である。議会の予算によって税金査定プログラムに課される変更を考慮してみると、テレソフトウエアでは、プログラムの放送バージョンだけを変更すればよい。一度これがなされると、それは家庭のすべての端末をプログラムの正しいバージョンで効果的に更新し、新しいプログラムの放送と同時にそれを行うことができる。」(第285頁左カラム 「6.1.SELF-ASSESSMENT」)と記載されている。
刊行物4には、「テレソフトウエアのこれらのアプリケーションを考慮している間でも、心に固く留めて置かなければならないことは、視聴者はその単一の受信機を使用して広範で多様なアプリケーションに完全に無料でアクセスできることであり、新しいアプリケーションは、視聴者に追加のコストを負担させないで、放送サービスによって継続的に付け加えることができる点である。」(第563頁左カラム 「Applications」)、
「テレソフトウェアの能力の1つは、受信された株式情報と視聴者の株式ポートフォリオに関係する記憶情報の両方を処理して、視聴者の株式ポートフォリオの価値の上昇または下降についての情報を発生させて表示するテレソフトウェアシステムの能力である」(第564頁)、
「視聴者の株式ポートフォリオに関係する情報を発生させ表示する際に、テレソフトウェアシステムは、送信されたテレソフトウェアプログラムからの制御信号を使用して、視聴者の株式ポートフォリオ情報に対してある計算を実行させる。一旦計算が終了すると、視聴者の株式情報は、放送により送信されたタイミング制御信号の制御のもと、サブタイトルとしてテレビに表示される。」、と記載されている。
刊行物5には、表示メモリのアクセス方法の改善を目的とし、文字抜取回路でテレビジョン映像信号から文字信号だけが抜き取られ、この文字信号が表示メモリ内のバッファメモリに書き込まれ、表示メモリ内のバッファメモリに一旦取り込まれた文字信号がマイクロコンピュータにより処理された後、表示形式のデータに変換されて表示メモリ内のパターンメモリおよびカラーメモリに書き込まれる。上記の処理動作と同時に、表示メモリ内のデータが順次読み出され、表示装置の画面上に表示される、事項より成る発明が記載されている。
刊行物6には、文字放送受信機の性能および操作性を大幅に向上することを目的・効果として、信号抜取回路によりビデオ信号から文字信号が抜き取られ、ヘッダ行のパターンデータあるいは時刻に関するパターンデータがメモり15に記憶され、時刻表示の要求があったときには、メモリ読出し回路により、メモリ15に記憶された時刻に関するパターンデータが読出され、アドレス設定回路により書き込み先のアドレスが設定された上で、表示メモリ7へ書き込まれ、表示モード判別回路の出力により、テレビ画面と文字放送画面の切換あるいはスーパー表示等の表示モードが実現される、事項より成る発明、および文字放送受信機ではマイクロコンピュータを備え、不揮発性メモリに記録された処理プログラムに従って処理を行うものが多く、かかる受信機では、メモリ読出し回路等は処理プログラム化して、マイクロコンピュータにより処理を行うことも可能である、この場合、メモリ15も特に設ける必要はなく、マイクロコンピュータのワーキング用のメモリの一部で十分事足りる、とする事項が記載されている。
(C)対比・判断
(訂正明細書の請求項1に係る発明について)
上記重畳表示制御信号を受信して、上記コンピュータが上記重畳表示制御信号に対応して上記重畳情報を上記出力装置へ伝え、上記出力装置に上記放送番組と上記重畳情報との合成出力を出力する段階と;
上記重畳表示制御信号を受信しないとき、コンピュータは重畳情報を出力しない段階、とよりなる信号処理方法」が示されている。
そこで、刊行物1記載発明と訂正明細書の請求項1に係る発明とを対比するに、両者は、
上記重畳表示制御信号を受信して、上記コンピュータが上記重畳表示制御信号に対応して上記重畳情報を上記出力装置へ伝え、上記出力装置に上記放送番組と上記重畳情報との合成出力を出力する段階;とよりなる信号処理方法」である点で一致し、
(1)訂正明細書の請求項1に係る発明が、「コンピュータが複数のメモリを有し、その内の第1のメモリに重畳情報を作成するために処理する情報を記憶し、その内の第2のメモリに重畳情報を記憶し、重畳情報を第2のメモリから出力装置へ伝え、重畳情報を第2のメモリから消去する」段階を有するのに対し、刊行物1記載発明はそれらの段階を有しない点、
(2)訂正明細書の請求項1に係る発明が、「受信局で重畳情報の完成を確認する段階と、上記確認段階で上記重畳情報の完成が確認されたときに、コンピュータが重畳表示制御信号に応答して上記重畳情報を出力装置へ伝え、上記出力装置に、上記重畳情報の完成が確認されたときに上記放送番組と上記重畳情報との合成出力を出力し、上記重畳情報の完成が確認されないときに上記放送番組のみを出力する段階と」を有するのに対し、刊行物1記載発明はそれらの段階を有しない点、で相違する。
上記相違点について審究する。
相違点(1)について:
上記刊行物5における表示メモリ内のパターンメモリおよびカラーメモリに書き込まれた表示形式のデータおよび上記刊行物6における表示メモリ7に書き込まれたパターンデータは、訂正明細書の請求項1に係る発明における上記重畳情報に相当し、上記刊行物5における表示メモリ内のパターンメモリとカラーメモリおよび上記刊行物6における表示メモリ7は、訂正明細書の請求項1に係る発明における上記第2のメモリに相当し、上記刊行物5における表示装置は、訂正明細書の請求項1に係る発明における上記出力装置に相当する。このように情報に応じて異なるメモリに読み出し可能に記憶することは周知事項である。また、メモリの利用態様として、不用になった情報をメモリから消去すること、およびその消去をメモリ消去指示制御信号により行うことは、いずれも周知事項である。
してみれば、上記相違点(1)は、同じ信号処理分野の技術に関する上記刊行物5,6に記載されるような周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものといえる。
相違点(2)について:
重畳情報を放送番組情報に重畳して表示する時、重畳情報の完成を確認してから重畳することは、両情報の内容の対応関係および表示タイミング等を考慮すれば、当業者が当然に行う常套手段といえる。
してみれば、上記相違点(2)は、刊行物1記載発明の信号処理方法において、当業者が当然に考慮する常套手段の単なる適用にすぎないものであってみれば、当業者が容易に成し得たものといえる。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(訂正明細書の請求項2に係る発明について)
刊行物1記載発明と訂正明細書の請求項2に係る発明とを対比するに、両者は、上記(A)の点で一致し、上記(1)、(2)の点および(3)「出力装置として、印刷機、音響発生器、ビデオ表示装置の中から1つ以上を選択する」点で相違する。
相違点について審究するに、上記相違点(1)(2)は上述したとおりである。また、 画像、音声等の情報の形態に応じて出力装置を考慮することは常套手段であってみれば、上記相違点(3)は、単なる常套手段の適用により容易に成し得たものである。
してみれば、訂正明細書の請求項2に係る発明は、刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項3に係る発明について)
上記刊行物1の「2つのスタジオ発生グラフィックがもはや放映されなくなったとき、スタジオは指示信号の送信を停止し、マイクロコンピュータ205はTVセット202へのそれ自身のグラフィック送信を取り止め、発生スタジオからの指示に基づいて次のローカル発生グラフィックオーバーレイの送信を準備する」は、訂正明細書の請求項3の構成に則して換言すると、(B)「受信局が重畳表示終了制御信号を受信したとき、コンピュータが重畳情報を出力装置へ伝えるのを止め、出力装置が重畳表示終了制御信号に基づいて重畳情報の出力を止める段階」に相当する。対比するに、上記刊行物1には、上記(A)構成のほかに(B)構成も記載されていたものといえる。また、訂正明細書の請求項3に係る発明と上記刊行物1または2記載発明との相違点(1)、(2)については上で述べたとおりである。
してみれば、訂正明細書の請求項3に係る発明は、刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項4に係る発明について)
訂正明細書の請求項4に係る発明と上記刊行物1記載発明とを対比するに、両発明は上記(A)で一致し、上記(1)、(2)、(4)訂正明細書の請求項4に係る発明が「メモリ消去指示制御信号を受信する段階と;上記メモリ消去指示制御信号の受信に対応して、上記第2のメモリから上記重畳情報の情報内容を消去して、上記出力装置が上記垂畳情報の出力を止め、上記合成出力の出力を止める段階」を有するのに対し、上記刊行物1記載発明はそのような構成を有しない点、で相違する。
しかしながら、メモリの利用態様として、不用になった情報をメモリから消去すること、消去した情報の出力を止めること、その消去および出力止めをメモリ消去指示制御信号の受信に対応して行うことは、いずれも常套手段である。そうとすれば、上記相違点(4)の訂正明細書の請求項4の「メモリ消去指示制御信号を受信する段階と;上記メモリ消去指示制御信号の受信に対応して、上記第2のメモリから上記重畳情報の情報内容を消去して、上記出力装置が上記垂畳情報の出力を止め、上記合成出力の出力を止める段階」は、刊行物1または2記載発明に単に上記常套手段を適用したものにすぎないものといえる。してみれば、訂正明細書の請求項4に係る発明は、刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項5に係る発明について)
刊行物1には、
「装置は、永久的な動作指示及び他の情報を記録するための読取専用メモリ、及び動作パターン及び指示の改訂を許すプログラム可能ランダムアクセスメモリコントロール(PRAMコントローラ)を有する。PRAMコントローラは動作の全面的な柔軟性のためにすべての内部動作ユニットへ接続されてよい。」(刊行物1の第5コラム16〜22行)、
「コントローラ20は装置のいかなる要素をも全面的又は部分的に遮断することができる。それは電話接続22を介して外部ソースと交信し、そのような遠隔ソースから再プログラムすることができる」(刊行物1の第9コラム20〜23行)、
「マイクロコンピュータ205は、「ウオールストリートウイーク」プログラミング送信に埋め込まれた指示信号に所定の様式で応答するように前もってプログラムされている。」(刊行物1のコラム19,第42〜44行)と記載されている。刊行物2にも前記内容と同趣旨の記載がある。
これら記載事項を換言すると、上記刊行物1には、(C)「重畳情報を作成するためのコンピュータ・プログラムを必要に応じてメモリに記憶すること、コンピュータ・プログラムを重畳情報作成処理の前にメモリに記憶すること」、が示されている。(なお、上記刊行物3,4にも上記(C)の点が示されている。)
そこで、訂正明細書の請求項5に係る発明と刊行物1記載発明とを対比するに、訂正明細書の請求項5に係る発明と刊行物1記載発明とは、上記(A)の点で一致し、相違点(1)、(2)および
(5)訂正明細書の請求項5記載発明は、(P)「複数のメモリのうちの第3のメモリに記憶されたコンピュータ・プログラムを上記コンピュータが作成指示制御信号に対応して実行し、重畳情報を作成する段階を含んでおり、作成指示制御信号をコンピュータへ伝える段階よりも前にコンピュータ・プログラムが記憶されていること」を構成要件としているのに対し、刊行物1記載発明は、「重畳情報を作成するためのコンピュータ・プログラムを必要に応じてメモリに記憶すること、コンピュータ・プログラムを重畳情報作成処理の前にメモリに記憶すること」を構成要件としている点、
で相違する。
相違点について審究するに、相違点(1)および(2)については上で述べたとおりである。また、情報の内容、種類等に応じて異なるメモリに記憶することは設計的事項である。そうとすると、上記刊行物記載発明においても、そのコンピュータ・プログラムを記憶するメモリを、メモリ記憶情報および重畳情報を記憶するメモリとは別の第3のメモリとすることは、当業者が設計的に成し得ることといえる。このことを考慮すると、上記刊行物記載発明の(C)の点は実質的に訂正明細書の請求項5記載発明の上記(P)の点に相当するものといえ、上記相違点(5)は実質的に刊行物1記載発明に示されていたものとなり、相違しない。
してみれば、訂正明細書の請求項5に係る発明は、刊行物1,3,4,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項6に係る発明について)
上記刊行物1,3,4には、(D)「放送信号にコンピュータプログラムが含まれ、このコンピュータプログラムがコンピュータのメモリに記憶されること、記憶されたコンピュータプログラムを実行して重畳情報を作成すること」が示されている。
そこで、訂正明細書の請求項6に係る発明と刊行物1記載発明とを対比するに、訂正明細書の請求項6に係る発明と刊行物1記載発明とは、上記(A)の点で一致し、相違点(1)、(2)および
(6)訂正明細書の請求項6記載発明は「放送信号がさらにコンピュータ・プログラムを含み、重畳情報作成段階は:コンピュータ・プログラムをコンピュータへ伝える段階と、作成指示制御信号に対応してコンピュータ・プログラムをコンピュータの複数のメモリのうちの第3のメモリに格納する段階と;コンピュータ・プログラムの格納を済ませた後、メモリ記憶情報を処理するために、コンピュータがコンピュータ・プログラムを実行して、作成指示制御信号に対応して重畳情報を作成する段階」を構成要件としているのに対し、上記刊行物1記載発明は、「「放送信号がさらにコンピュータ・プログラムを含み、重畳情報作成段階は:コンピュータ・プログラムをコンピュータへ伝える段階と、作成指示制御信号に対応してコンピュータ・プログラムをコンピュータの複数のメモリのうちの」「メモリに格納する段階と;コンピュータ・プログラムの格納を済ませた後、メモリ記憶情報を処理するために、コンピュータがコンピュータ・プログラムを実行して、作成指示制御信号に対応して重畳情報を作成する段階」」を構成要件としている点、で相違する。
相違点について審究するに、相違点(1)および(2)については上で述べたとおりである。また、情報の内容、種類等に応じて異なるメモリに記憶することは設計的事項である。そうとすると、上記刊行物記載発明においても、そのコンピュータ・プログラムを記憶するメモリを、メモリ記憶情報および重畳情報を記憶するメモリとは別の第3のメモリとすることは、当業者が設計的に成し得ることといえる。このことを考慮すると、上記刊行物記載発明の(D)の点は実質的に訂正明細書の請求項5記載発明の上記(P)の点に相当するものといえ、上記相違点(6)は実質的に刊行物1記載発明に示されていたものとなり、相違しない。
してみれば、訂正明細書の請求項6に係る発明は、刊行物1,3,4,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項7に係る発明について)
刊行物1には、(E)[作成指示制御信号および重畳表示制御信号を放送信号に埋め込むこと」が示されている。
そこで、訂正明細書の請求項7に係る発明と刊行物1記載発明を対比するに、上記(E)は訂正明細書の請求項7記載発明の「作成指示制御信号および重畳表示制御信号は放送信号に埋め込まれている」に相当するものといえる。
そうとすれば、両発明は、上記上記(A)および(E)の点で一致し、上記相違点(1)、(2)で相違する。しかし、相違点(1)、(2)については上で述べたとおりである。
してみれば、訂正明細書の請求項7に係る発明は、刊行物1,2,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項8に係る発明について)
上記刊行物1記載発明を本件請求項8記載発明に則して換言するに、両発明の「受信局」、「デコーダ」、「コンピュータ」、「テレビジョン受信機」および「信号処理装置」は、相互に相当するので、結局、上記刊行物1記載発明には、
(F)「受信したテレビジョン番組と受信局のコンピュータが作成した重畳情報との合成表示を制御する上記受信局の機器は:
(1)上記テレビジョン番組と一つ以上の埋め込まれた制御信号とよりなる送信情報を受信する段階と:(2)上記送信情報の中から作成指示制御信号および重畳表示制御信号を含む上記制御信号を検出する段階と;(3)上記制御信号を上記コンピュータへ送る段階とを実行するデコーダと:
上記テレビジョン番組を受信して表示するテレビジョン受信機と;上記テレビジョン受信機と上記デコーダとに結合され、複数のメモリを有する上記コンピュータとを備えており、
上記コンピュータは:
上記デコーダから上記制御信号を受信する段階と:
上記作成指示制御信号の受信に対応して上記重畳情報を作成するために上記コンピュータの上記複数のメモリのうちの第1のメモリに記憶されているメモリ記憶情報を処理する段階と;
上記重畳表示制御信号に対応して上記重畳情報を上記テレビジョン受信機へ伝えて、上記テレビジョン受信機に、受信した上記テレビジョン番細と上記重畳情報とよりなる上記合成表示を行なわせ、上記重畳情報のないときに上記テレビジョン番組のみを出力する段階と:を実行するようにプログラムされていることを特徴とする信号処理装置。」が記載されている。
そこで、本件請求項8記載発明と刊行物1記載発明とを対比するに、両発明は上記(F)の点で一致し、
(1)訂正明細書の請求項8に係る発明は、「コンピュータが複数のメモリを有し、その内の第1のメモリに重畳情報を作成するために処理する情報を記憶し、その内の第2のメモリに重畳情報を記憶し、重畳表示制御信号に対応して重畳情報を第2のメモリからテレビジョン受信機へ伝えて、テレビジョン受信機にテレビジョン番組と重畳情報とよりなる合成表示を行わせ、その後重畳情報を第2のメモリから消去する」段階を有するのに対し、刊行物1記載発明はそのようなコンピュータを有しない点、
(2)訂正明細書の請求項8に係る発明は、コンピュータが「受信局で重畳情報の完成を確認する段階と、上記確認段階で上記重畳情報の完成が確認されたときに、コンピュータが重畳表示制御信号に応答して上記重畳情報を出力装置へ伝え、上記出力装置に、上記重畳情報の完成が確認されたときに上記放送番組と上記重畳情報との合成出力を出力し、上記重畳情報の完成が確認されないときに上記放送番組のみを出力する段階」を有するのに対し、刊行物1記載発明はそのようなコンピュータを有しない点、で相違する。
上記相違点(1)(2)について審究する。
相違点(1)について:
上記刊行物5における表示メモリ内のパターンメモリおよびカラーメモリに書き込まれた表示形式のデータおよび上記刊行物6における表示メモリ7に書き込まれたパターンデータは、訂正明細書の請求項1に係る発明における上記重畳情報に相当し、上記刊行物5における表示メモリ内のパターンメモリとカラーメモリおよび上記刊行物6における表示メモリ7は、訂正明細書の請求項8に係る発明における上記第2のメモリに相当し、上記刊行物5における表示装置は、訂正明細書の請求項8に係る発明における上記出力装置に相当する。しかも、このように情報に応じて異なるメモリに読み出し可能に記憶することは周知事項である。また、メモリの利用態様として、不用になった情報をメモリから消去すること、およびその消去をメモリ消去指示制御信号により行うことは、いずれも常套手段である。
してみれば、上記相違点(1)は、同じ信号処理分野の技術に関する上記刊行物5,6に記載されるような周知事項および常套手段に基づいて当業者が容易に発明できたものと認める。
相違点(2)について:
重畳情報を放送番組情報に重畳して表示する時、重畳情報の完成を確認してから重畳することは、両情報の内容の対応関係および表示タイミング等を考慮すれば、当業者が当然に行う常套手段といえる。
してみれば、上記相違点(2)は、刊行物1記載発明の信号処理方法において、当業者が当然に行う常套手段であってみれば、当業者が容易に成し得たものである。
したがって、訂正明細書の請求項8に係る発明は、刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(訂正明細書の請求項9に係る発明について)
上記刊行物1記載発明のものは、制御対象であるデコーダが指示制御信号に対応して重畳情報を発生するように、コンピュータにプログラムするものであり、重畳情報は更新する情報を排除するものとはなっていないことから、コンピュータに、デコーダが送信情報から検出した制御信号に含まれる修正指示制御信号に対応して重畳情報を修正する段階を実行するようにプログラムすることは、当業者が容易に成し得たものといえる。
してみれば、訂正明細書の請求項9に係る発明は、刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(j訂正明細書の請求項10に係る発明について)
受信局が複数ある点は、実質的に刊行物1に示されている。そうとすれば、本件請求項10記載発明の「受信局は複数の別々の受信局の中の1つであって」は、実質的に刊行物1に示されている。
してみれば、訂正明細書の請求項10に係る発明は、刊行物1,5,6記載発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認める。
(k)むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1乃至10に係る発明は、上記刊行物1、3ないし6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、この訂正は特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3)特許異議申立についての判断
(本件発明)
本件請求項1ないし11に係る発明は、特許明細書または図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された構成によって特定される下記のとおりのものと認められる。なお、請求項は分節表示する。
「【請求項1】
A.放送番組の出力装置とコンピュータと備えた受信局で、受信した放送番組と上記コンピュータで作成した画像、音声、文字の少なくとも1つによる表現を含む重量情報との合成を制御する信号処理方法において、
B.上記放送番組、作成指示制御信号及び重畳表示制御信号を含む放送信号を受信する段階と;
C.上記出力装置に、受信した上記放送番組を出力する段階と;
D.上記作成指示制御信号を受信して、上記作成指示制御信号を上記コンピュータへ伝える段階と;
E.上記作成指示制御信号に対応して、上記コンピュータが上記コンピュータのメモリに記憶されているメモリ記憶情報を処理して上記重畳情報を作成する重量情報作成段階と;
F.上記重畳表示制御信号を受信して、上記コンピュータが上記重畳表示制御信号に対応して上記重畳情報を土記出力装置へ伝え、上記出力装置に、上記放送番組と上記重畳情報との合成出力を出力する段階と、よりなることを特徴とする信号処理方法。
【請求項2】
G.上記出力装置として、印刷機、音響発生機、ビデオ表示装置の中から一つ以上が選択されていることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項3】
H.上記重畳情報の合成を制御する方法が、更に、上記受信局が重畳表示終了制御信号を受信したとき、上記出力装置が上記重畳表示終了制御信号に基づいて上記重畳情報の出力を止める段階を含むことを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項4】
I.上記コンピュータは出力メモリを持ち、上記出力メモリは上記出力装置と結合されており、上記重畳情報作成段階は、上記重畳情報を上記出力メモリに記憶する段階を含んでいることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項5】
J.請求項4記載の信号処理方法に更に付加して:上記作成指示制御信号および上記重畳表示制御信号を受信した後に、メモリ消去指示制御信号を受信する段階と、
K.上記メモリ消去指示制御信号の受信に対応して、上記出力メモリから上記重畳情報の情報内容を消去して、上記出力装置が上記重畳情報の出力を止める段階とを含んでいることを特徴とする信号処理方法。
【請求項6】
L.上記重畳情報作成段階は、上記メモリ記憶情報を処理するために、上記コンピュータの上記メモリに記憶されたコンピュータ・プログラムを上記コンピュータが上記作成指示制御信号に対応して実行し、上記重畳情報を作成する段階を含んでいることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項7】
M.上記重畳情報作成段階は:上記作成指示制御信号に対応して受信したコンピュータ・プログラムを上記コンピュータの上記メモリに格納する段階と;
N.上記コンピュータ・プログラムの格納を済ませた後、上記メモリ記憶情報を処理するために、上記コンピュータが上記コンピュータ・プログラムを実行して、上記作成指示制御信号に対応して上記重畳情報を作成する段階とを含んでいることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項8】
O.上記作成指示制御信号および上記重畳表示制御信号は上記放送信号に埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載の信号処理方法。
【請求項9】
P.受信したテレビジョン番組と受信局のコンピュータが作成した重量情報との合成表示を制御する上記受信局の機器は:
Q.(1)上記テレビジョン番組と一つ以上の埋め込まれた制御信号とよりなる情報送信を受信する段階と;(2)上記情報送信の中から作成指示制御信号および重量表示制御信号を含む上記制御信号を検出する段階と;(3)上記制御信号を土記コンピュータへ送る段階とを実行するデコーダと;
R.上記テレビジョン番組を受信して表示するテレビジョン受信機と;
S.上記テレビジョン受信機と上記デコーダとに結合された上記コンピュータとを備えており、
T.上記コンピュータは:上記デコーダから上記制御信号を受信する段階と;上記作成指示制御信号の受信に対応して上記重畳情報を作成するために上記コンピュータのメモリに記憶されているメモリ記憶情報を処理する段階と;上記重畳表示制御信号に対応して
上記重畳情報を上記テレビジョン受信機へ伝えて、上記テレビジョン受信機に、受信した上記テレビジョン番組と上記重畳情報とよりなる上記合成表示を行なわせる段階とを実行するようにプログラムされていることを特徴とする信号処理装置。
【請求項10】
U.上記コンピュータは更に、上記デコーダが検出した上記制御信号に含まれる修正指示制御信号に対応して上記重畳情報を修正する段階を実行するようにプログラムされていることを特徴とする請求項9記載の信号処理装置。
【請求項11】
V.上記受信局は複数の別々の受信局の中の一つであって、各受信局は、上記デコーダ、上記コンピュータ、及び上記テレビジョン受信機を有することを特徴とする請求項9記載の信号処理装置。」
2.証拠
(1)刊行物1:米国特許第4,694,490号明細書・・(異議申立02:甲第1号証)
(3)刊行物3:TELESOFTWARE:HOME COMPUTING VIA BROADCAST TELETEXT、IEEE Transaction on Consumer Electronics、Vol.CEー25、 No.3, pp279-287, J.Hedger, July 1979 ・・(異議申立02:甲第5号証)
(4)刊行物4:TELESOFTWAREーーVALUE ADDED TELETEXT、IEEE Transaction on Consumer Electronics、Vol.CEー26、No.3, pp555-567, J.Hedger, August 1979・・(異議申立02:甲第6号証)
(5)刊行物5:TELEVISION CAPTIONING FOR THE DEAF SIGNAL AND DISPLAY SPECIFICATIONS, PBS ENGINEERING AND TECHNICAL OPERATIONS、Revised May 1980・・(異議申立02:甲第7号証)

3.刊行物記載発明:
刊行物1には、受信機または加入者局において、放送番組と重畳情報の合成を制御する信号処理方法および手段が開示されている。この手段には、プログラミング出力装置、デコーダ、コンピュータが備えられている。以下、記載内容で説明する。
「本発明の目的は、テレビ受信機及びラジオ受信機の外部にある機器(特に、コンピュータ及びプリンタのようなコンピュータ周辺機器)と通信するプログラミングを可能とする手段及び方法を開発することによって前記の潜在性に門戸を開放することである。本発明の他の目的は、個々の受信機場所でそのような送信と表示を処理及び監視し、送信されたプログラミングの使用と関連機器の動作を、ある種の方法で制御する手段と方法を提供することである。」(刊行物1のコラム1第36行〜第47行)、
「装置は、永久的な動作指示及び他の情報を記録するための読取専用メモリ、及び動作パターン及び指示の改訂を許すプログラム可能ランダムアクセスメモリコントローラ(PRAMコントローラ)を有する。PRAMコントローラは動作の全面的な柔軟性のためにすべての内部動作ユニットへ接続されてよい」(刊行物1のコラム5第16行〜第22行)、
「信号処理装置はプログラム可能ランダムアクセスメモリコントローラ20・・を含むコントローラ装置を有する」(刊行物1のコラム8第20行〜第25行)、
「コントローラ20は装置のいかなる要素をも全面的又は部分的に遮断することができる。それは電話接続22を介して外部ソースと交信し、そのような遠隔ソースから再プログラムすることができる」(刊行物1の第9カラム20〜23行)、
「本件特許に特に関連しているものは、選択情報の受信とマルチメディア表示の調整である」(刊行物1のコラム18第43行〜コラム20第10行等)、
「マイクロコンピュータ205は、「ウオールストリートウイーク」プログラミング送信に埋め込まれた指示信号に所定の様式で応答するように前もってプログラムされている。」(刊行物1のコラム19第42〜44行)、
「図6Cを参照すると、TV信号デコーダ203、マイクロコンピュータ205、テレビ202を含む信号処理装置が示されている。テレビはテレビ番組を受信して表示することができる」(刊行物1のコラム19第50行〜第52行等)、
1つの実施形態では、コンピュータ205が最終株価を受信して、ユーザによりコンピュータのメモリ中に記憶させてあるポートフォリオに対応するこれらの株価を記憶する(刊行物1のコラム19第35行〜第41行等)、
「マイクロコンピュータ205は、「ウォール・ストリート・ウィーク」プログラミング送信に埋め込まれた指示信号に所定の様式で応答するように前もってプログラムされている。「ウォール・ストリート・ウィーク」送信が金曜日の夜8:30PMに始まったとき、いくつかの指示信号がデコーダ203によって識別され、マイクロコンピュータ205へ転送される。これらの信号は、いくつかのグラフィックビデオオーバーレイの発生をマイクロコンピュータ205に指示する。マイクロコンピュータ205はグラフィックビデオオーバーレイを発生し送信する手段を有し、TVセット202は、コマンドに基づいてそれらのオーバーレイを受信して表示し、TVセット202へ送信する手段を有する。
続いてプログラムの中で、司会者が「ダウジョーンズ工業の今週の実績は次のとおりです」と放送し、スタジオ発生グラフィックが放映される。次に司会者は「今週の大商いのナスダック指数は次のとおりです」と放送し、スタジオ発生グラフィックオーバーレイが最初のグラフィックの上部に表示される。次に司会者は「あなたのポートフオリオの実績は次のとおりです」と放送する。この時点で、プログラミングを作り出しているテレビスタジオで1つの指示信号が発生され、プログラミング送信の中で送られる。この信号はデコーダ203によって識別され、プロセッサ204を介してマイクロコンピュータ205へ転送される。この信号は、マイクロコンピュータ205がプロセッサ204から同じ指示信号を受信している間、最初のオーバーレイをTVセット202へ送信することをマイクロコンピュータ205へ指示する。次に視聴者は、スタジオ発生グラフィックに重ねて自己所有株式の実績のマイクロコンピュータ発生グラフィックを見る。2つのスタジオ発生グラフィックがもはや放映されなくなったとき、スタジオは指示信号の送信を停止し、マイクロコンピュータ205はTVセット202へのそれ自身のグラフィック送信を取り止め、発生スタジオからの指示に基づいて次のローカル発生グラフィックオーバーレイの送信を準備する。」(刊行物1のコラム19第42行〜コラム20第7行)、
と記載されている。
刊行物3には、「テレテキスト・デコーダ」に関し、「少しの他のコンポーネントを付け加えれば、TVセットに格納できる全く強力な独立型コンピュータとなる。そのような端末のためにプログラムを放送するためにテレテキスト・システムを利用することによって、ユーザは所望のプログラムを含むテレテキスト・ページを選択するだけでよい。これが一度読み込まれると、それは、高価な記憶周辺装置、電話回線、又はユーザの特別の知識を必要としないで端末マイクロプロセッサによってロードされ実行されてよい。」(第279頁左カラム 「1.INNTRODUCTION」)、「プロセッサカードには、マイクロプロセッサ、スクラッチパッドメモリ、2次メモリが含まれている」(第281頁)、「電源投入後またはキーパッドのコマンドに応答して、マイクロプロセッサは制御プログラムを実行し、このプログラムは特別な識別文字シーケンス(例えば$%$%$%)を探すためにマイクロプロセッサにページ記憶装置をスキャンさせ、マイクロプロセッサはこれをテレソフトウェアとして認識する」(第281頁)、「有効なテレソフトウェアベージが位置付けられると、スクラッチパッドメモリにロードされ、ここでデータのエラーチェックが行われ、その後確認されたデータは2次メモリの正しい位置に組み込まれる」(第281頁)、「この処理は完全なプログラムを形成するすべてのページが受信されて2次メモリにロードされるまで繰り返される」(第281頁)、「エラーが検出されると、それらの位置は記録され、誤りのあるバイトはその後にそのページが再度読まれた時に再度テストされる」(第282頁)、「テレソフトウエアの驚異的な強さは、その情報交信能力である。議会の予算によって税金査定プログラムに課される変更を考慮してみると、テレソフトウエアでは、プログラムの放送バージョンだけを変更すればよい。一度これがなされると、それは家庭のすべての端末をプログラムの正しいバージョンで効果的に更新し、新しいプログラムの放送と同時にそれを行うことができる。」(第285頁左カラム 「6.1.SELF-ASSESSMENT」)と記載されている。
刊行物4には、「テレソフトウエアのこれらのアプリケーションを考慮している間でも、心に固く留めて置かなければならないことは、視聴者はその単一の受信機を使用して広範で多様なアプリケーションに完全に無量でアクセスできることであり、新しいアプリケーションは、視聴者に追加のコストを負担させないで、放送サービスによって継続的に付け加えることができる点である。」(第563頁左カラム 「Applications」)
「テレソフトウェアの能力の1つは、受信された株式情報と視聴者の株式ポートフォリオに関係する記憶情報の両方を処理して、視聴者の株式ポートフォリオの価値の上昇または下降についての情報を発生させて表示するテレソフトウェアシステムの能力である」(第564頁)、
「視聴者の株式ポートフォリオに関係する情報を発生させ表示する際に、テレソフトウェアシステムは、送信されたテレソフトウェアプログラムからの制御信号を使用して、視聴者の株式ポートフォリオ情報に対してある計算を実行させる。一旦計算が終了すると、視聴者の株式情報は、放送により送信されたタイミング制御信号の制御のもと、サブタイトルとしてテレビに表示される。」、と記載されている。
刊行物5には、出力装置がビデオ表示装置であること、標準動作モードではメモリ中の重畳情報が標準文字コマンド信号(すなわち重畳表示終了制御信号)の終了に応答して出力するのを止めること(セクションVIII第2-18頁)、標準動作モードでは、標準字幕コマンド信号の終了に応答して1つのメモリ中の重畳情報が消去されること、この制御コードは、重畳情報が発生されスクリーン上に表示された後に受信されること(セクションVIIIおよび第2-18頁)、標準字幕コマンドの受信は、表示されたメモリ中の情報を消去し、他のメモリに切り換えることにより、2つのメモリのうちの1つにおける重畳情報の表示を出力装置に止めさせること(セクションVIII)、が記載されている

4.対比・判断
(本件請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明と上記刊行物1記載発明を対比するに、
刊行物1に示される「出力装置とコンピュータとを含むシステムにおいて、放送番組と重畳情報を結合する方法および装置」は、本件請求項1に係る発明の構成Aに相当し、
刊行物1に示される「信号処理装置が、“ウォール・ストリート・ウィーク”放送番組を受信するように設計され、この放送番組はそこに埋め込まれた指示信号を含んでおり、この指示信号が重畳情報を発生させて(作成指示制御信号)、TVに送る(重畳表示制御信号)こと」は、本件請求項1に係る発明の構成Bに相当し、
刊行物1に示される「“ウォール・ストリート・ウィーク”放送番組がTV202に出力され、そこに表示されること」は、本件請求項1に係る発明の構成Cに相当し、
刊行物1に示される「“ウォール・ストリート・ウィーク”放送番組中のいくつかの指示信号がデコーダ203により識別され、マイクロコンピュータ205に送られること、これらの指示信号の1つ(作成指示制御信号)がマイクロコンピュータ205に命令して、グラフィックビデオ重畳情報を発生させること」は、本件請求項1に係る発明の構成Dに相当し、
刊行物1に示される「マイクロコンピュータ205により生成された重畳情報の1つが視聴者自身の株式ポートフォリオパフォーマンスのグラフィックであること。マイクロコンピュータ205が株式情報を処理することによりこの重畳情報を生成し、株式情報は前もってマイクロコンピュー夕のメモリに記憶されていること」は、本件請求項1に係る発明の構成Eに相当し、
刊行物1に示される「“ウォール・ストリート・ウィーク”放送番組では、番組のホストが、“これがあなたのポートフォリオが行ったものです”とアナウンスし、その時指示信号(作成指示制御信号)がテレビジョンスタジオで発生されて番組送信信号で視聴者に送られること、この信号がデコーダ203により識別され、プロセッサ204を通してマイクロコンピュータ205に送られること、この信号がマイクロコンピュータ205に命令して、重畳情報をTV202に送らせ、TV202により、ユーザはマイクロコンピュータ作成グラフィック重畳情報と番組中のスタジオ作成グラフィックを見ること」は、本件請求項1に係る発明の構成Fに相当する。
そこで対比判断するに、
上記刊行物1には、それぞれ、本件請求項1に係る特許発明のすべての構成A〜Fを備えた発明が記載されているので、本件請求項1に係る特許発明は、上記刊行物1に記載されている発明と実質的に同一となる。
(本件請求項2に係る発明について)
上記刊行物1には、本件請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fが記載されている。また、画像、音声等の情報の形態に応じて出力装置を考慮することは常套手段である。そうとすれば、本件請求項2に係る発明の構成Gは常套手段といえる。したがって、本件請求項2に係る特許発明は上記刊行物1に記載されている発明と実質的に同一となる。
(本件請求項3に係る発明について)
刊行物1には、請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fが記載されている。また、構成Hは刊行物5に「標準動作モードではメモリ中の重畳情報が標準文字コマンド信号(すなわち重畳表示終了制御信号)の終了に応答して出力するのを止めること」として示されている。そして、本件特許発明、刊行物1および刊行物5に記載されている発明は技術分野を同じくするものである。してみれば、本件請求項3に係る発明は、上記刊行物1記載発明および上記刊行物5記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(本件請求項4に係る発明について)
刊行物1には、請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fが記載されている。また、構成Iは刊行物1に「視聴者の株式ポートフォリオパフォーマンスを計算し、重畳情報を発生させてから、”ウオール・ストリート・ウイーク”番組のホストが”これがあなたのポートフォリオが行ったものです”とちょうどアナウンスした後に重畳情報を表示するようにコンピュータに伝える信号をスタジオが送信するまで、コンピュータ205がコンピュータの記憶部に重畳情報を記憶しなければならないこと」(刊行物1のコラム19第42行〜第67行)として示されている。してみれば、本件請求項4に係る特許発明は上記刊行物1に記載されている発明と実質的に同一と認められる。
(本件請求項5に係る発明について)
メモリの利用形態として、不要になった情報をメモリから消去すること、およびその消去をメモリ消去指示制御信号により行うことは、いずれも周知事項である。さらに、
上記刊行物1には、請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fおよび構成Iを備えた発明が記載されている。構成Jは刊行物5に「標準モードでは、標準字幕の終了コマンド信号に応答して1つのメモリ中の重畳情報が消去されること」および「そのコマンド信号は、重畳情報が発生されスクリーン上に表示された後に受信されること」(セクション8;第2-18頁;図8)として示されており、
構成Kは上記刊行物5に「標準字幕コマンドの受信は、表示されたメモリ中の情報を消去し、他のメモリに切り換えることにより、2つのメモリのうちの1つにおける重畳情報の表示を出力装置に止めさせること」(セクション8)として示されている。そして、本件特許発明、刊行物1記載発明および刊行物5記載発明は技術分野を同じくするものである。してみれば、本件請求項5に係る発明は、上記刊行物1記載発明および上記刊行物5記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(本件請求項6に係る発明について)
上記刊行物1には、請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fが記載されている。また、構成Lは上記刊行物1に「”ウオール・ストリート・ウイーク”番組の送信信号中の指示に予め定められた方法で応答するようにマイクロコンピュータがプログラムされていること、マイクロコンピュータが実行するプログラムの1つは、視聴者の株式ポートフォリオのパフォーマンスを計算させるものであること」(刊行物1のコラム19第42行〜コラム20第7行目)に示されている。してみれば、本件請求項6に係る特許発明は上記刊行物1に記載されている発明と実質的に同一と認められる。
(本件請求項7に係る発明について)
上記刊行物1には、請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fが記載されている。また、構成Mは上記刊行物3に「テレソフトウエアコンピュータプログラムが加入者局に送られること」および「特別な識別文字シーケンス信号(例えば$%$%$%)の検出に応答して、テレソフトウエアコンピュータプログラムがコンピュータのRAMに記憶されること」(特に第282頁コラム2)としてまた上記刊行物4に「テレソフトウエアコンピュータプログラムが加入者局に送られ記憶されること」として示されている。また、構成Nは刊行物4に「株式ポートフォリオプログラムが記憶され、実行される時に、現在の株式市場の情報とともにメモリに記憶されている視聴者の株式情報を処理し、処理されたものがテレテキストページとして送られ、メモリ中に記憶されること」として示されている。そして、本件特許発明、刊行物1、刊行物3および刊行物4に記載されている発明は技術分野を同じくするものである。してみれば、本件請求項7に係る発明は、上記刊行物1記載発明、上記刊行物3記載発明および上記刊行物4記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(請求項8に係る発明について)
上記刊行物1には、請求項1に係る発明のすべての構成A〜Fが記載されている。また、構成Oは上記刊行物1に「指示信号が”ウオール・ストリート・ウイーク”番組送信信号に埋め込まれること」(刊行物1のコラム19第42行〜第44行)として示されている。してみれば、本件請求項8に係る発明は刊行物1に記載されている発明と実質的に同一となる。
(本件請求項9に係る発明について)
上記刊行物1には、
構成Pが「テレビジョン番組とコンピュータにより作成された重畳情報とを組合わせる方法および装置」(刊行物1の図6Cおよびコラム18第43行〜コラム20第11行)として示され、
構成Qが「図6Cに示されている信号処理装置が、(1)テレビジョン番組と埋め込まれた制御信号とを含む送信情報を受信し、(2)コンピュータに重畳情報を発生させて送らせる制御信号を識別(検出)し、(3)制御信号をマイクロコンピュータ205に送るデコーダ203を含んでいること」(刊行物1のコラム19第42行〜第53行)として示され、
構成Rが「図6Cに示されている装置がテレビジョン番組を受信して表示するTV202を含んでいること」(刊行物1のコラム19第48行〜第52行)として示され、
構成Sが「図6Cには、マイクロコンピュータ205がデコーダ203とTV202と接続されていること」として示され、
構成Tが「図6Cのマイクロコンピュータ205がデコーダ203から制御信号を受信でき、コンピュータのメモリ中の株式ポートフォリオ情報を処理してグラフィック重畳情報を作成するようにプログラムされていること、グラフィック重畳情報は制御信号に応答して作成されること、十旦作成されると、重畳情報はTV202に送られ、他の制御信号にしたがってTV202上で表示されること」(刊行物1のコラム19第48行〜コラム第20行)として示されている。
結局、上記刊行物1には、本件請求項9に係る発明のすべての構成P〜Tを備えた発明が記載されているので、本件請求項9に係る発明は、上記刊行物1に記載されている発明と実質的に同一となる。
(本件請求項10に係る発明について)
上記刊行物1には、本件請求項9に係る発明のすべての構成P〜Tが記載されている。また、上記刊行物1記載発明のものは、制御対象であるデコーダが指示制御信号に対応して重畳情報を発生するように、コンピュータにプログラムするものであり、重畳情報は更新する情報を排除するものとはなっていないことから、コンピュータに、デコーダが送信情報から検出した制御信号に含まれる修正指示制御信号に対応して重畳情報を修正する段階を実行するようにプログラムすることは、当業者が容易に成し得たものといえる。そうとすれば、構成Uは上記刊行物1に示されるものから当業者が容易に成し得たものといえる。してみれば、本件請求項10に係る発明は、刊行物1記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(本件請求項11に係る発明について)
上記刊行物1には、請求項9に係る発明のすべての構成P〜Tが記載されている。また、構成Vが「図6Cに記載されている受信局がそのような複数の受信局の内の1つであること」(刊行物1の請求項)として示されている。してみれば、本件請求項11に係る発明は、刊行物1に記載されている発明と実質的に同一と認められる。
5.結び
以上のとおりであるから、本件請求項1、2,4,6,8,9,11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また本件請求項3,5,7、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1ないし11に係る特許は、特許法第113条1項2号に該当する。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-04-07 
出願番号 特願平5-195786
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (H04N)
P 1 651・ 121- ZB (H04N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小曳 満昭山本 章裕  
特許庁審判長 及川 泰嘉
特許庁審判官 江頭 信彦
藤井 浩
登録日 1997-08-29 
登録番号 特許第2690676号(P2690676)
権利者 ジョン シー ハーベイ
発明の名称 信号処理方法及び信号処理装置  
代理人 田辺 恵基  
代理人 外川 英明  
代理人 中村 純之助  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 野河 信久  

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