• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
管理番号 1032063
異議申立番号 異議2000-70817  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-25 
確定日 2000-12-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第2940911号「GPSとCAD利用の深浅測量システム」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2940911号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第2940911号の出願は、平成9年9月9日に出願したものであって、平成11年6月18日に設定登録され、その後、請求項1ないし請求項5に係る特許について特許異議申立人株式会社ソキアにより特許異議の申立てがなされたものである。
そして請求項1ないし請求項5に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】既知位置の固定GPSアンテナに接続した固定GPS受信器と該固定GPS受信器に接続した転送GPS信号送/受信器とを有する固定局;鉛直方向に位置合せした移動GPSアンテナ及び自動測深器、前記移動GPSアンテナに接続した移動GPS受信器、前記移動GPS受信器に接続した転送GPS信号受/送信器、前記自動測深器及び移動GPS受信器に接続したデータ送/受信器、並びに前記固定GPSアンテナ及び移動GPSアンテナ併用のGPS相対測位法による移動GPSアンテナの位置測量と前記自動測深器による深浅測量とを同期させる同期装置を有する測量船;並びに前記データ送/受信器に結合されて、同期した移動GPSアンテナの位置測量及び深浅測量によって定まる位置における深さを深浅図に描くCAD装置を備えてなるGPSとCAD利用の深浅測量システム。
【請求項2】請求項1の測量システムにおいて、前記固定局の転送GPS信号送/受信器を転送GPS信号送信器とし且つ前記測量船の転送GPS信号受/送信器を転送GPS信号受信器とし、前記測量船のデータ送/受信器をデータ送信器とし、前記固定局にデータ送信器から受信するデータ受信器及びCADパソコンを設け、前記CADパソコンを前記CAD装置として前記データ送信器からの受信に基づき前記深浅図を描いてなるGPSとCAD利用の深浅測量システム。
【請求項3】請求項1の測量システムにおいて、前記固定局の転送GPS信号送/受信器を転送GPS信号送信器とし且つ前記測量船の転送GPS信号受/送信器を転送GPS信号受信器とし、前記測量船にデータ送/受信器へ接続したCADパソコンを設け、前記CADパソコンを前記CAD装置として前記深浅図を描いてなるGPSとCAD利用の深浅測量システム。
【請求項4】請求項1の測量システムにおいて、前記測量船の転送GPS信号受/送信器を転送GPS信号送信器とし且つ前記固定局の転送GPS信号送/受信器を転送GPS信号受信器とし、前記測量船の同期装置をして転送GPS信号送信器による転送GPS信号の送信と前記自動測深器による深浅測量とを同期させ、前記固定局の固定GPS受信器において該固定GPS受信器での受信GPS信号と前記測量船の深浅測量に同期して送信された転送GPS信号とに基づき前記同期された深浅測量時の移動GPSアンテナの位置を測量し、前記測量船のデータ送/受信器をデータ送信器とし、前記固定局にデータ送信器から受信するデータ受信器及びCADパソコンを設け、前記CADパソコンを前記CAD装置として前記データ送信器からの受信と前記固定局の固定GPS受信器における移動GPSアンテナ位置の測量とに基づき前記深浅図を描いてなるGPSとCAD利用の深浅測量システム。
【請求項5】請求項1-4の何れかの測量システムにおいて、前記測量船のデータ送/受信器を固定局へのデータ送信及び固定局からのデータ受信が可能なデータ送受信器とし、前記測量船のデータ送受信器に監視用パソコンを接続し測量船の位置を監視用パソコンに表示してなるGPSとCAD利用の深浅測量システム。」
(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人株式会社ソキアは、本件発明1ないし5は、下記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべき旨主張している。

甲第1号証:測量、43[12](1993)、p.36-37
甲第2号証:実願平2-126452号(実開平4-85181号)のマイクロフィルム

3.特許異議申立人が提出した各甲号証記載の発明
甲第1号証には、GPS活用による深浅測量に関し、次のことが図面とともに記載されている。
「GPS活用による深浅測量の予備実験観測のうち、海上での事例を紹介します。」(36頁、右欄10行〜11行)、
「将来の展望
まだまだ実用化には解決しなければならない諸問題が山積していますが、・・・図-3のようなシステムにより、現場から図化までが、少人数、短時間さらに高精度で実用化される日を目指して、さらに検討を重ねていきたい」(37頁、右欄10行〜11行)
図-2には、鉛直方向に設置標高を測定して配置したアンテナ及び送受波器の配置関係が記載されており、また船上でGPS観測に用いるアンテナと水中で深浅測量に用いる送受波器が鉛直方向に位置合わせして配置されていること、船上に受信機と測深機が配置され、受信機はアンテナに、測深機は送受波器に接続されていることがみてとれる。また図-2には次の説明がある。
「h1:送受波器先端を零としたアンテナ高
h2:受信時における測深記録から読み取った実効発振位置からの水深
PH:GPS観測によるアンテナ標高
とすると海底標高GHは
GH=PH-(h1+h2)となる。」
図-3には、GPS観測による深浅測量フローが記載されており、船上GPS観測と音響測深器による深浅測量とを時刻を同期させること、船上GPS観測の結果と深浅測量から得られる水深データとから標高処理して海底標高を求めること、この海底標高のデータをCAD処理して図化することがみてとれる。

甲第2号証には、船舶性能計測装置に関し、次のことが図面とともに記載されている。
「GPS人工衛星から送出される信号を受信して測位を行うGPS受信装置を被試験船舶に設置し、該GPS受信装置からの出力信号に基づいて、前記船舶の操縦性能を表わす種々の表示を発生するようにした船舶性能計測装置」(1頁5行〜9行、実用新案登録請求の範囲)、
「なお、上記実施例では、GPS受信装置1台を船上に配置して試験を行ういわゆるシングルポジショニング方式相対測位により行うものを示したが、GPS受信装置2台を使用し、1台を陸上に配置しもう1台を船上に配置して、いわゆるディファレンシャル方式相対測位により船舶の位置を行うようにすることもできる。」(17頁8行〜14行)

4.対比・判断
<本件発明1について>
本件発明と異議申立人が提出した甲第1号証に記載されている発明とを対比する。
(1)甲第1号証の「GPSアンテナ」「音響測深器」、「受信機」、「船」が、それぞれ本件発明1の「移動GPSアンテナ」「自動測深器」、「移動GPS受信機」、「測量船」に相当することは明らかである。
(2)甲第1号証には、CAD処理することが記載されており、具体的な装置としては記載されていないが、CAD処理を何らかの装置により行うことは自明のことであるから、甲第1号証のものも、「CAD装置」を有するものである。
(3)甲第1号証に「将来の展望・・・図-3のようなシステムにより、現場から図化までが、少人数、短時間さらに高精度で実用化される日を目指して、さらに検討を重ねていきたいと思います。」(37頁、右欄13行〜25行)と記載されており、図-3のような処理が少人数化、短時間化、高精度化を達成しているとはみることはできないことから、甲第1号証に記載された個々の装置あるいは機器は、全体が互いに結合されたシステムとして構成されているものではない。
(4)甲第1号証には、「5.観測法 キネマティック(既知点スタート法)」(36頁、右欄第6行、第7行)と記載されているものの、甲第1号証において既知点にGPS受信機を配置すると記載されていないことから、甲第1号証記載のGPS活用による深浅測量システムは、GPS相対測位法によって船の位置測定を行っているとはいえず、単にGPS測位を動的に行っているにすぎないものである。
上記(1)〜(4)の考察から、両者は、「鉛直方向に位置合せした移動GPSアンテナ及び自動測深器、前記移動GPSアンテナに接続した移動GPS受信器、前記移動GPSアンテナの位置測量と前記自動測深器による深浅測量とを同期させる測量船;移動GPSアンテナの位置測量及び深浅測量によって定まる位置における深さを深浅図に描くCAD装置を備えてなるGPSとCAD利用の深浅測量システム」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本件発明1のものが、「既知位置の固定GPSアンテナに接続した固定GPS受信器と該固定GPS受信器に接続した転送GPS信号送/受信器とを有する固定局」、「移動GPS受信器に接続した転送GPS信号受/送信器」を有しており、これにより「前記固定GPSアンテナ及び移動GPSアンテナ併用のGPS相対測位法による」移動GPSアンテナの位置測量を行うのに対して、甲第1号証のものは、船上GPS観測器によるGPS単独測量を行っている点。
相違点2:
本件発明1のものが、「固定GPSアンテナ及び移動GPSアンテナ併用のGPS相対測位法による移動GPSアンテナの位置測量と前記自動測深器による深浅測量とを同期させる同期装置を有する」のに対して、甲第1号証のものは、アンテナに接続した船上GPS観測器によるアンテナの位置測量と音響測深器による深浅測量とを同期させる旨の記載はあるものの、同期装置を有するかどうかは不明である点。
相違点3:
本件発明1のものが、「自動測深器及び移動GPS受信器に接続したデータ送/受信器を備え、CAD装置が前記データ送/受信器に結合されている」のに対して、甲第1号証のものは、上記構成を有しない点。

上記相違点について検討する。
甲第2号証において記載されているように、GPS受信装置2台を使用し、1台を陸上に配置しもう1台を船上に配置して、ディファレンシャル方式相対測位により船舶の位置を検出することが、高精度な位置情報が得られる測位方式であるディファレンシャル方式相対測位法として良く知られている方法であり、それを具体的に装置として構成することが容易になし得る事項であるとしても、上記相違点2、相違点3の構成である「固定GPSアンテナ及び移動GPSアンテナ併用のGPS相対測位法による移動GPSアンテナの位置測量と前記自動測深器による深浅測量とを同期させる同期装置を有する」点、「自動測深器及び移動GPS受信器に接続したデータ送/受信器を備え、CAD装置が前記データ送/受信器に結合されている」点については、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにおいても、開示されていない。
すなわち相違点2については、 甲第1号証には、「アンテナに接続した船上GPS観測器によるアンテナの位置測量と音響測深器による深浅測量とを同期させる」との記載はあるものの、これは単独で行う船上GPS観測器と音響測深器の2つの測量装置の動作を同期させることを開示するにすぎず、 固定GPS受信器、移動GPS受信器、及び自動測深器の3つの測量装置の動作を同期させる(または動作関係を制御する)同期装置を開示するものではない。
また相違点3については、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、深浅測量システムにおいて上記のように構成することは開示されていない。

よって、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

<本件発明2ないし本件発明5について>
本件発明2ないし本件発明5は、いずれも請求項1を引用する形式で記載されている発明であることから、上記判断と同様に、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、参考資料として提出された特開平11-64517号は、本件出願前に頒布された文献ではないので、特許法第29条第1項第1号ないし第3号にいう発明に該当しない。

そして、本件発明は、その技術的事項により、明細書記載の作用効果を奏するものである。

5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし請求項5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし請求項5に係る特許についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-14 
出願番号 特願平9-244391
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡部 葉子  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 榮永 雅夫
杉野 裕幸
登録日 1999-06-18 
登録番号 特許第2940911号(P2940911)
権利者 鹿島建設株式会社
発明の名称 GPSとCAD利用の深浅測量システム  
代理人 市東 篤  
代理人 町田 悦夫  
代理人 市東 禮次郎  
代理人 田代 作男  
代理人 北村 欣一  
代理人 打揚 洋次  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ