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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1038565
審判番号 審判1999-10024  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-23 
確定日 2001-05-01 
事件の表示 平成 6年特許願第205779号「発泡樹脂ブロックによる水平地盤構築方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 3月12日出願公開、特開平 8- 68054]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成6年8月30日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成11年1月8日付け手続補正書により補正された明細書および出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
【請求項1】 傾斜地盤に発泡樹脂ブロックの層を水平に積み重ねて水平地盤を構築する方法において、前記発泡樹脂ブロック層と対向する前記傾斜地盤の表面に水平方向から下向きに傾斜させてアンカー孔を穿ち、前記アンカー孔内にアンカーの一端を定着させ、前記アンカーのアンカー孔外側部分を水平に保持して前記発泡樹脂ブロック層内へ延ばし、前記発泡樹脂ブロック層の前記傾斜地盤と反対側に密着させて垂直支持壁を設け、前記発泡樹脂ブロック層を水平に貫通した前記アンカーの他端を前記垂直支持壁へ固定し、前記アンカーを緊張させて前記垂直支持壁を水平方向に引張ることにより前記発泡樹脂ブロック層を前記傾斜地盤に密着させてなる発泡樹脂ブロックによる水平地盤構築方法。
なお、平成11年7月22日付けでされた手続補正は、却下された。

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、特開平5-311660号公報(以下、「引用例1」という。)には、特許請求の範囲の請求項1、第3頁第3欄段落【0010】〜【0012】および図2の記載を参照すると、「地山に水平方向から下向きに傾斜させて掘削孔を掘削し、掘削孔内にアンカーの端部を配置して定着させ、アンカーの地山からの突出部分は屈曲させて水平にしてあり、地山面から所定間隔離した位置に土留めパネルを立設して、アンカーの先端に土留めパネルをくさびによって固定し、地山と土留めパネル間に土砂を埋める土留め構造物の施工方法」が記載されている。
また、同特開平6-101232号公報(以下、「引用例2」という。)には、第3頁第4欄段落【0033】「発泡樹脂ブロックを積み重ねて自立壁を構築する場合に、発泡樹脂ブロック相互が金具、補助材或いは拘束材などで緊結されていれば、その自立性からその壁面を外側から押さえるプレキャストコンクリートブロックのような構造施設は基本的に不要である。しかし、・・・プレキャストコンクリートブロックや波板鉄板による被覆を行えば、発泡樹脂ブロックの固定により強固となる。」、同段落【0037】「図13はこのプレキャストコンクリートブロック50を発泡樹脂ブロック層30に設置した状態を示している。即ち、プレキャストコンクリートブロック50を地盤33上に据え、透水性の良い砂質土を敷いて埋戻し部35を作る。」、第4頁第6欄段落【0054】「図13において、上床板コンクリート打設後、上部プレキャストコンクリートブロック110を設置し、上部及び下部プレキャストコンクリートブロック110、50のボルト孔52によって波板68を定着する。」、第8頁特許請求の範囲請求項1「発泡樹脂ブロックを積み重ねて自立壁や盛土などの構築物を構築する方法において、前記構築物を構築する発泡樹脂ブロック相互を固定するとともに、鋼棒、帯鉄などのアンカー装置を前記構築物内に配置し、このアンカー装置の一端を当該発泡樹脂ブロック構造物背後の地盤若しくは堅固な構築物に定着させて、前記構築物を背後より水平状に引張するようにしたことを特徴とする発泡樹脂ブロック構築物の構築方法。」、第9頁左欄段落【0014】「本発明の構築方法における該発泡樹脂ブロック構築物の安定化を目的とした当該構築物内へのアンカー装置・・・」、第9頁右欄段落【0015】「このアンカー装置の構造物23内への配置は、ブロック11の固定時、固定後のいずれでもよく、・・・」、同段落【0016】「・・図15・・に示すものは、アンカー装置として鋼棒24を用いたものであり、緊結用金具20によって発泡樹脂ブロック11相互を固定した構築物23内の奥行き方向に一定間隔で鋼棒24を当該構築物23の背面へ突出するように水平状に配置し、これを緊結用金具20によってブロック11に取付け、この鋼棒24の壁面27側の一端を壁面27を被覆する波板31にボルト32によって締め付け、もう一方の端を構築物23背後の地盤28に定着したものである。・・・鋼棒24の端部をボーリング孔29にモルタルを充填して定着させた・・」、第10頁左欄段落【0019】「・・・アンカー装置を当該構築物内に配置し、このアンカー装置の一端を当該構築物背後の地盤などに定着させるようにしたことから、発泡樹脂ブロックのはらみ出し飛び出しを防止し、かつ構築物全体の移動を防止して構築物の安定化を計ることができ、発泡樹脂ブロック構築物背後の地山の勾配、軟硬、排水等の条件によって、あるいは地震や流入水などの外力によっても、当該構築物全体が移動することがない。・・」および第7頁図13、第11頁図15の記載を参照すると、「傾斜地盤に発泡樹脂ブロックを水平に積み重ねて盛土などの構築物を構築する方法において、発泡樹脂ブロック構築物の壁面を、傾斜地盤上に据付けた下部プレキャストコンクリートブロックと発泡樹脂ブロック構築物の上端に配置した上部プレキャストコンクリートブロック及び両プレキャストコンクリートブロック間に定着された波板により被覆し、鋼棒などのアンカーを発泡樹脂ブロック構築物内に水平に配置し、このアンカーの一端を発泡樹脂ブロック構造物背後の傾斜地盤のボーリング孔にモルタルを充填して定着させ、壁面側の他端を波板にボルトによって締め付け、発泡樹脂ブロック構築物を水平状に引張するようにしたことで、自立する発泡樹脂ブロック構築物の移動を防止し、発泡樹脂ブロックの固定をより強固とする発泡樹脂ブロックによる盛土などの構築物構築方法」が記載されている。

3.対比・判断
本願発明1と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「地山」、「掘削孔」、「アンカーの地山からの突出部分」、「土留めパネル」および「土留め構造物の施工方法」は、それぞれの機能に照らし、各々本願発明1の「傾斜地盤」、「アンカー孔」、「アンカーのアンカー孔外側部分」、「垂直支持壁」および「水平地盤構築方法」に相当し、引用例1に記載された発明の「土砂」と、本願発明1の「発泡樹脂ブロック」は共に「地盤構築材」である点で共通しているから、両者は、傾斜地盤に地盤構築材を用いて水平地盤を構築する方法において、傾斜地盤の表面に水平方向から下向きに傾斜させてアンカー孔を穿ち、アンカー孔内にアンカーの一端を定着させ、アンカーのアンカー孔外側部分を水平に保持し、垂直支持壁を傾斜地盤と反対側に立ち上げ、アンカーの他端を垂直支持壁へ固定してなる水平地盤構築方法の点で一致し、下記の点で相違している。
a.地盤構築材が、本願発明1では発泡樹脂ブロックで、それを水平に積み重ねてアンカーは、発泡樹脂ブロック層内に延ばされているのに対し、引用例1に記載された発明では土砂であって、アンカー装置を設置後埋めている点。
b.本願発明1では垂直支持壁側からアンカーを緊張させて水平方向に引張ることにより発泡樹脂ブロック層を傾斜地盤に密着させているのに対し、引用例1に記載された発明ではそのような構成を有していない点。
引用例2をみると、引用例2に記載された発明の「盛土などの構築物」、「発泡樹脂ブロック構築物」及び「ボーリング孔」は、それらの機能に照らし、各々本願発明1の「水平地盤」、「発泡樹脂ブロック層」及び「アンカー孔」に相当し、引用例2に記載された発明の「発泡樹脂ブロック構築物の壁面を被覆する、傾斜地盤上に据付けた下部プレキャストコンクリートブロックと発泡樹脂ブロック構築物の上端に配置した上部プレキャストコンクリートブロック及び両プレキャストコンクリートブロック間に定着された波板」と、本願発明1の「垂直支持壁」は共に「発泡樹脂ブロック層の傾斜地盤と反対側に設けられる壁」である点で共通しているから、引用例2には、上記相違点aにおける本願発明1と同じ構成が記載されており、この構成を、引用例1に記載された発明に採用して本願発明1のようにすることは、当業者が容易になし得ることにすぎない。
また、引用例2に記載された発明においても、発泡樹脂ブロック構築物内に水平に配置されたアンカーの壁面側の他端を波板にボルトによって締め付けているが、当該技術分野においてアンカーを緊張させることは周知技術にすぎず、かつ、引用例2に記載された発明においても、「本発明の構築方法における該発泡樹脂ブロック構築物の安定化を目的とした当該構築物内へのアンカー装置・・・」、「・・・アンカー装置を当該構築物内に配置し、このアンカー装置の一端を当該構築物背後の地盤などに定着させるようにしたことから、発泡樹脂ブロックのはらみ出し飛び出しを防止し、かつ構築物全体の移動を防止して構築物の安定化を計ることができ、発泡樹脂ブロック構築物背後の地山の勾配、軟硬、排水等の条件によって、あるいは地震や流入水などの外力によっても、当該構築物全体が移動することがない。・・」とあるように、アンカーを緊張させれば、当然の結果として、上記相違点bにおける本願発明1と同様に、発泡樹脂ブロック層を傾斜地盤に密着させることになる。
そして、本願発明1によってもたらされる効果も、引用例1、2に記載された発明及び周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-02-16 
結審通知日 2001-02-27 
審決日 2001-03-13 
出願番号 特願平6-205779
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江塚 政弘深田 高義池谷 香次郎  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
発明の名称 発泡樹脂ブロックによる水平地盤構築方法  
代理人 市東 禮次郎  
代理人 市東 禮次郎  

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