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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F23G
審判 一部申し立て 2項進歩性  F23G
管理番号 1041162
異議申立番号 異議2000-72542  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-20 
確定日 2001-02-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2996129号「耐高温腐食用空気加熱器」の請求項1、4、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2996129号の請求項1、4、5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2996129号の請求項1乃至8に係る発明は、平成7年3月16日に特許出願され、平成11年10月29日に特許の設定登録がなされ、その後、 中村孝子 より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年12月19日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
平成12年12月19日になされた訂正請求は、特許明細書を訂正明細書のとおりに訂正することを求めるもので、その内容は以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1について
請求項1の「…先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、」の次に、「前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、」を加入する。
b.特許請求の範囲の請求項2について
請求項2の「前記内管に設けられた凸部との係合により、」を、「前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、」と訂正する。
c.発明の詳細な説明の段落番号【0013】について
段落番号【0013】の「…先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、」の次に、「前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、」を加入する。
d.発明の詳細な説明の段落番号【0014】について
段落番号【0014】の「前記内管に設けられた凸部との係合により、」を、「前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、」と訂正する。
e.発明の詳細な説明の段落番号【0020】について
段落番号【0020】の「…金属製伝熱内管と耐火材製外管との間に間隙が設けられていることから、」を、「…金属製伝熱内管と耐火材製外管との間に間隙が設けられ、しかも外管は内管に対して先端の係合部においてのみ支持され、外管は内管に対して自由にスライドできることから、」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
まず、訂正事項a.は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された伝熱管について、「前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、」という限定を加えるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正事項は、特許明細書の、段落番号【0031】に図1について記載された「外管3の下端の封止端面3Aの内面にはアリ穴3aが設けられ、一方、内管1下端の封止端面1Aの外面には、外管3のアリ穴3aと係合可能なアリ状の突起1aが設けられている。外管3は、このアリ穴3aと突起1aとの係合により、内管1に対して支持されている。本実施例において、外管3は、このアリ穴3aと突起1aとの係合によってのみ内管1に対して支持されており、他の支持機能は設けられていない。」なる記載、及び、段落番号【0042】に図5について記載された「伝熱内管1の先端内面部分に雌螺子が刻設され、この雌螺子に支持ボルト16のねじ棒部分がねじ込まれている。この支持ボルト16にリング状の耐火物受け金具21が外嵌され、この耐火物受け金具21を介して外管3が支持されている。」なる記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
次に、訂正事項b.は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された内管に設けられた凸部の設置位置を内管「の先端部」に限定するとともに、該凸部の材質を「金属製の」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正事項は、特許明細書の上記記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項c.及び訂正事項d.は、いずれも上記訂正事項a.及び訂正事項b.に伴うものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、これらの訂正事項は、いずれも特許明細書の上記記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項e.は、訂正事項a.に伴うものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、またこの訂正事項は、特許明細書の段落番号【0035】の「外管3は、内管1に対して下端の係合部においてのみ支持され、外管3は内管1に対して自由にスライドできるため、熱膨張差に起因する外管3の損傷、剥離、脱落等はより一層確実に防止される。」なる記載に基づくものであるから、この訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.独立特許要件の判断
上記訂正事項a.及び訂正事項b.による請求項1及び2についての訂正は、特許異議の申立てがされていない請求項2についての訂正であるとともに、同じく特許異議の申立てがされていない請求項3、6、7及び8を実質的に訂正するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するから、訂正明細書の請求項2、3、6、7及び8に係る発明の独立特許要件について検討する。
訂正明細書の請求項2、3、6、7及び8に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2、3、6、7及び8に記載された次のとおりのものである。
「【請求項2】 請求項1の加熱器において、前記外管は、その内面に設けられた凹部と、前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、該内管に支持されていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項3】 請求項2の加熱器において、該外管の凹部は、該外管の封止端面内面に設けられたアリ穴であり、前記内管の凸部は、該内管の封止端面に設けられた先太のアリ状突起であることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項6】 請求項3の加熱器において、前記突起は前記内管に螺着されたボルトであり、該ボルトには、該伝熱管の内部に連通した通気孔が設けられていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか1項の加熱器において、前記耐火材製外管は、耐火物の気孔を埋める封孔処理がなされたものであることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項の加熱器において、前記耐火材製外管の先端面に、付勢部材で付勢された押棒を受け入れる凹陥部が設けられていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。」
なお、請求項7及び8で引用する請求項4及び5は、後に3-2.で記載するとおりである。
即ち、訂正明細書の請求項2、3、6、7及び8に係る発明は、同請求項1に係る発明の構成要件を全て含むものである。
そして、当該請求項1に係る発明が、後に3-3.(1)で記載するとおり、申立人が提出した甲号証に記載された発明であるとも、該甲号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるとも認めることができないので、同様の理由により、訂正明細書の請求項2、3、6、7及び8に係る発明は、申立人が提出した甲号証に記載された発明であるとも、該甲号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるとも認めることができない。
したがって、訂正明細書の請求項2、3、6、7及び8に係る発明は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

2-4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.申立てについての概要
申立人 中村孝子 は、下記の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、請求項1、4及び5に係る発明の特許は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開平1-296088号公報
甲第2号証:「平凡社 大百科事典」昭和60年4月12日に頒布、8-82

3-2.本件発明
特許第2996129号の請求項1、4及び5に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明4」及び「本件発明5」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、4及び5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 高温腐食性ガス雰囲気中に設けられ、該高温腐食性ガスとの熱交換で伝熱管内を流通する空気を加熱する耐高温腐食用空気加熱器において、該伝熱管は、先端が開放された金属製伝熱内管と、該内管を覆うように該内管と同軸的に、かつ、該内管との間に間隙を設けて配置された、先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、被加熱空気は内管を流通した後、内管の開放先端から内管と外管との間の間隙を通過する間に高温腐食性ガスにより加熱されることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかの加熱器において、前記内管の外表面に耐食性被覆膜が形成されていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項5】 請求項4の加熱器において、前記耐食性被覆膜が安定な酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、またはそれらを含むムライト、スピネル等の混合酸化物、であることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。」
そして、請求項4で引用する請求項2及び3は、上記2-3.に記載したとおりである。

3-3.判断
(1)本件発明1について
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(この刊行物1は、甲第1号証に対応するものである。)には、
「1 一端が管板に支持され他端が閉鎖されたセラミツクス製外管と、一端が他の管板に支持されて前記外管内に挿入され他端が開放された内管とで構成され、内管の管板側の一端より低温流体を流入させ他方の開放端から内管と外管の間へ導き、外管の管板に支持された側から流出させるバイヨネツト式熱交換器において、前記外管の閉鎖された端面と前記内管の開放端部との距離Lが次式で示す範囲内にあることを特徴とするセラミツクス製バイヨネツト式熱交換器。
3d≦L こゝでdは内管の内径を示す。」(特許請求の範囲 請求項1)、
「3 一端が管板に支持され他端が閉鎖されたセラミツクス製外管と、一端が他の管板に支持され前記外管内に挿入され他端が開放された内管とで構成され、内管の管板側の一端より低温流体を流入させ他方の開放端部から内管と外管の間へ導き、外管の管板に支持された側から流出させるバイヨネツト式熱交換器において、前記外管の閉鎖された端部側の前記内管の開放端部に低温流体を反転させるガイドキヤツプを設けたことを特徴とするセラミツクス製バイヨネツト式熱交換器。」(特許請求の範囲 請求項3)、
「4 一端が管板に支持され他端が閉鎖されたセラミツクス製外管と、一端が他の管板に支持され前記外管内に挿入され他端が開放された内管とで構成されたバイヨネツト式熱交換器において、前記内管の外管内に挿入されていない部分に伸縮継手を設けたことを特徴とするセラミツクス製バイヨネツト式熱交換器。」(特許請求の範囲 請求項4)、及び
「5 特許請求の範囲第3項記載のセラミツクス製バイヨネツト式熱交換器において内管の外管への挿入部分と開放端部近傍の外側にスペーサを設けてなるセラミツクス製バイヨネツト式熱交換器。」(特許請求の範囲 請求項5)、が図面とともに記載されており、また、
「本発明は、高温ガス、特に高温で腐食性を有するガスから熱エネルギーを回収する空気予熱器として好適なセラミツクス製バイヨネツト式熱交換器に関するものである。」(第2頁左上欄7〜10行)こと、
「第1図は、セラミツクス製バイヨネツト式熱交換器の縦断面図を示す。第1図において、符号1はセラミツクス製外管を示し、2は金属製の内管を示す。・・・高温側ガスは外管の外側を流れており、低温側ガスは内管入口から矢印の方向に流入し、内管外側のガスと熱交換されながら、内管出口(開放端)に達し、こゝで流れは反転され、さらに高温側ガスと熱交換をしながら内管と外管の間を通つて流出する。」(第3頁右上欄12行〜同頁左下欄4行)こと、
「セラミツクス製外管に熱衝撃破壊を起こさせないためには、直接高温側ガスと温度差のある低温側ガスを外管の閉鎖された面に直接衝突させないことが重要である。具体的には、外管の閉鎖された面と内管の開放端部の距離をLとし、内管の内径をdとした場合L≧3dであることが重要であ」(第3頁右下欄2〜8行)ること、
「内管の出口部に金属製の流れを反転させるためのガイドキヤツプ13を設けて、低温ガスが直接外管1の閉鎖された面に高速で衝突しない構造にすることによつてセラミツクス製外管の熱衝撃による破壊を防止できる」(第4頁左上欄19行〜同頁右上欄4行)こと、
「伸縮継手15を内管2の外管1に挿入されていない部分に設けることによつて、外管1と内管とが接触しても外管に無理な力が加わることがないので製作が容易になることを見いだした。
このような構造にすることによって、特に外管1と内管2との組合せが複数組となる大型の熱交換器や、内管と外管を垂直に対してある角度を持って設置する場合にも熱交換器を容易に製作することができることとなった。
さらに、第4図に示す如くスペーサ16,17を内管上に設置することによって、外管1と内管2の間隔をほぼ一定に保つことが可能となる。」(第4頁左下欄2〜14行)こと、
「外管1と内管2との中心の位置ずれが生じても内管2は、スペーサ16を介して押えリング3により押つけられ、伸縮継手15によって、矯正される。」(第4頁左下欄19行〜同頁右下欄3頁)こと、
「第7図に、都市ごみ焼却炉の燃焼排ガスから熱回収を行う場合の実施例を示す。
高温側ガスとして都市ごみ焼却排ガス、低温側ガスとして常温空気を用いている。
低温ガスは内管2の一方端である低温側ガス入口ノズル18より流入し、もう一方の端である内管2の出口を出たあと流れが反転し、内管と外管の間を高温側ガスと熱交換しながら反対方向に流れ、低温側ガス出口ノズル19より加熱され流出する。一方高温側ガスは外管1の外部を流れている。」(第5頁左上欄1〜11行)こと、及び、
「内管2は内径(d)が42.6mmのステンレスパイプにより構成されている。」(第5頁左上欄13,14行)ことが記載されている。
さらに、図面、特に第1図及び第7図の記載からみて、内管と外管が同軸的に、かつ、間隔を設けて配置されていることが窺える。

本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、後者における「内管」、「外管」は、各々、前者における「伝熱内管」、「伝熱外管」に相当するとともに、これらの両者で前者における「伝熱管」を構成するものである。また、後者において外管を構成する「セラミツクス」は、前者において伝熱外管を構成する「耐火材」に相当するものであり、後者における「バイヨネツト式熱交換器」は、高温で腐食性を有するガスから熱エネルギーを回収する空気予熱器として好適なものであることからみて、耐高温腐食用空気加熱器といえるものであるから、
両者は、
高温腐食性ガス雰囲気中に設けられ、該高温腐食性ガスとの熱交換で伝熱管内を流通する空気を加熱する耐高温腐食用空気加熱器において、該伝熱管は、先端が開放された金属製伝熱内管と、該内管を覆うように該内管と同軸的に、かつ、該内管との間に間隙を設けて配置された、先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、被加熱空気は内管を流通した後、内管の開放先端から内管と外管との間の間隙を通過する間に高温腐食性ガスにより加熱される耐高温腐食用空気加熱器。
で一致し、
前者は、伝熱外管はその内面部分を伝熱内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該伝熱内管に支持されてなるものであるのに対し、後者は、かかる特定がない点において相違する。
かかる相違点がある以上、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証である刊行物1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

さらに、本件発明1が、異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討すると、
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(前述の通り、甲第1号証に対応。)には、上記一致点で挙げた「高温腐食用空気加熱器」において、伝熱外管に熱衝撃破壊を起こさせないようにするため、伝熱外管の閉鎖された端面と伝熱内管の開放端部との距離Lと伝熱内管の内径dとを所定の関係にすること、及び伝熱外管の閉鎖された端部側の伝熱内管の開放端部に低温流体を反転させるガイドキヤツプを設けることが記載されており、また、大型の耐高温腐食用空気加熱器や、伝熱管を垂直に対してある角度を持って設置する場合にも耐高温腐食用空気加熱器を容易に製作するために、伝熱内管の伝熱外管内に挿入されていない部分に伸縮継手を設けること、及び伝熱内管の伝熱外管への挿入部分と開放端部近傍の外側にスペーサを設けることが記載されている。
しかし、これら、伝熱外管の閉鎖された端面と伝熱内管の開放端部との距離Lと伝熱内管の内径dとを所定の関係にすること、ガイドキャップを設けること、伸縮継手を設けること、及びスペーサを設けることから、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者といえども容易に為したことであるとはいえない。
また、甲第2号証には、ステンレス鋼について、耐食性が優れていること、及びこの耐食性はステンレス鋼表面に形成されている不働態皮膜と呼ばれる酸化膜のためであることが記載されているだけであって、かかる甲第2号証に記載の事項を勘案しても、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者といえども容易に為したことであるとはいえない。
そして、本件発明1は、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたことにより、伝熱外管は伝熱内管に対して自由にスライドできるため、熱膨張差に起因する伝熱外管の損傷、剥離、脱落等はより一層確実に防止されるという、明細書に記載された格別な作用、効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記3-3.(1)において本件発明1について記載した理由と同じ理由により、甲第1号証である刊行物1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
また、上記3-3.(1)において本件発明1について記載した理由と同じ理由により、本件発明4は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記3-3.(1)において本件発明1について記載した理由と同じ理由により、甲第1号証である刊行物1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
また、上記3-3.(1)において本件発明1について記載した理由と同じ理由により、本件発明5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1、本件発明4、及び本件発明5についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、本件発明4、及び本件発明5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1、本件発明4、及び本件発明5についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
耐高温腐食用空気加熱器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 高温腐食性ガス雰囲気中に設けられ、該高温腐食性ガスとの熱交換で伝熱管内を流通する空気を加熱する耐高温腐食用空気加熱器において、該伝熱管は、先端が開放された金属製伝熱内管と、該内管を覆うように該内管と同軸的に、かつ、該内管との間に間隙を設けて配置された、先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、被加熱空気は内管を流通した後、内管の開放先端から内管と外管との間の間隙を通過する間に高温腐食性ガスにより加熱されることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項2】 請求項1の加熱器において、前記外管は、その内面に設けられた凹部と、前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、該内管に支持されていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項3】 請求項2の加熱器において、該外管の凹部は、該外管の封止端面内面に設けられたアリ穴であり、前記内管の凸部は、該内管の封止端面に設けられた先太のアリ状突起であることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかの加熱器において、前記内管の外表面に耐食性被覆膜が形成されていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項5】 請求項4の加熱器において、前記耐食性被覆膜が安定な酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、またはそれらを含むムライト、スピネル等の混合酸化物、であることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項6】 請求項3の加熱器において、前記突起は前記内管に螺着されたボルトであり、該ボルトには、該伝熱管の内部に連通した通気孔が設けられていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか1項の加熱器において、前記耐火材製外管は、耐火物の気孔を埋める封孔処理がなされたものであることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項の加熱器において、前記耐火材製外管の先端面に、付勢部材で付勢された押棒を受け入れる凹陥部が設けられていることを特徴とする耐高温腐食用空気加熱器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は耐高温腐食用空気加熱器に係り、特に、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉において、ごみや廃棄物焼却処理で発生する高温の燃焼ガスの熱エネルギーを低温空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図るための耐高温腐食用空気加熱器に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉において、ごみや廃棄物の焼却処理で発生する高温の燃焼ガスの熱エネルギーを回収して有効利用するために、空気加熱器が設けられている。
【0003】
空気加熱器は、金属製伝熱管内に低温空気を流通させて、高温の燃焼ガスとの熱交換でこれを高温に加熱して熱回収するものであって、二酸化炭素の排出など地球環境に悪影響を及ぼすことのない、高効率のエネルギー資源回収システムである。しかして、回収された熱エネルギーは、ごみの熱分解、発電、その他の施設に有効利用されている。
【0004】
従来の空気加熱器の伝熱管は、焼却炉内に直接挿入配置されている。
【0005】
ところで、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉で発生する燃焼ガスは、ごみや廃棄物に起因する塩素や塩化水素などの、高温における金属との反応で生成した生成物が短時間で蒸発損失してしまうような、著しく腐食性の高い腐食性物質を含む高腐食性のガスである。従って、これらの焼却炉内に設置され、高温、高腐食性ガス雰囲気中にさらされる空気加熱器の伝熱管にあっては、その材質の面からも、構造の面からも、このような高温の腐食性ガスに対して十分な耐食性を有することが要求される。
【0006】
従来、各種耐食性合金についての開発は進められているが、このような焼却炉の高温、高腐食性ガスに対して十分な耐食性を示す耐食性合金は見出されていない。
【0007】
このため、従来、空気加熱器の耐食性向上のための手段として、
▲1▼金属製伝熱管にスタッドピンを溶接し、その周囲に不定形耐火物を設置する。
▲2▼金属製伝熱管に直方体を基本とする耐火物れんがを縦横の目地で繋いで設置する。
などの方式が考えられている。
【0008】
これらの方式においては、耐火物が腐食性ガス相における対流や相互拡散の物理的な障壁として働き、酸素、塩素等の腐食性ガスの伝熱管表面への到達や反応生成物のガス相内での輸送を抑止するといった作用で、伝熱管の腐食をある程度は防止する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼、▲2▼の耐火物配設方式においては、次のような問題があった。
【0010】
即ち、前記▲1▼の場合には、伝熱管端部や管寄部において、スタッドピンの損傷、不定形耐火物の割れや局所的な剥離、脱落がある。また、前記▲2▼の場合にも、耐火物れんがの局所的な剥離、脱落がある。また、いずれの場合においても、金属製伝熱管の損傷などの深刻な腐食現象があり、空気加熱器寿命が極めて短いという問題がある。
【0011】
これらは、耐火物と金属製伝熱管との熱膨張差により、耐火物にクラックを生じ、耐火物を固定するための金具が腐食損傷し、また、耐火物の損傷・剥離を起こし、耐火物の耐食効果が失われることが大きな要因と考えられる。
【0012】
本発明は上記従来の問題点を解決し、伝熱管を耐火物で保護した空気加熱器において、耐火物の剥離、損傷等の問題がなく、焼却炉の高温、高腐食性ガス雰囲気における耐食性、耐久性に著しく優れた耐高温腐食用空気加熱器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の耐高温腐食用空気加熱器は、高温腐食性ガス雰囲気中に設けられ、該高温腐食性ガスとの熱交換で伝熱管内を流通する空気を加熱する耐高温腐食用空気加熱器において、該伝熱管は、先端が開放された金属製伝熱内管と、該内管を覆うように該内管と同軸的に、かつ、該内管との間に間隙を設けて配置された、先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、被加熱空気は内管を流通した後、内管の開放先端から内管と外管との間の間隙を通過する間に高温腐食性ガスにより加熱されることを特徴とする。
【0014】
請求項2の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項1の加熱器において、前記外管は、その内面に設けられた凹部と、前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、該内管に支持されていることを特徴とする。請求項3の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項2の加熱器において、該外管の凹部は、該外管の封止端面内面に設けられたアリ穴であり、前記内管の凸部は、該内管の封止端面に設けられた先太のアリ状突起であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項1ないし3のいずれかの加熱器において、前記内管の外表面に耐食性被覆膜が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項4の加熱器において、前記耐食性被覆膜が安定な酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、またはそれらを含むムライト、スピネル等の混合酸化物、であることを特徴とする。
【0017】
請求項6の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項3の加熱器において、前記突起は前記内管に螺着されたボルトであり、該ボルトには、該伝熱管の内部に連通した通気孔が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項7の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項1ないし6のいずれか1項の加熱器において、前記耐火材製外管は、耐火物の気孔を埋める封孔処理がなされたものであることを特徴とする。
【0019】
請求項8の耐高温腐食用空気加熱器は、請求項1ないし7のいずれか1項の加熱器において、前記耐火材製外管の先端面に、付勢部材で付勢された押棒を受け入れる凹陥部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
【作用】
請求項1の耐高温腐食用空気加熱器にあっては、金属製伝熱内管と耐火材製外管との間に間隙が設けられ、しかも外管は内管に対して先端の係合部においてのみ支持され、外管は内管に対して自由にスライドできることから、内管を構成する金属と、外管を構成する耐火材との熱膨張差が生じても、熱膨張による変化が互いに伝播されにくいために、外管の損傷、剥離、脱落等が防止される。
【0021】
また、内管から内管と外管との間の間隙に空気が流出されることにより、外管の外側から外管を通過して外管内へ流れる腐食性ガス量の低減を図ることができ、これにより、内管の腐食をより一層確実に防止することができる。
【0022】
請求項2,3の耐高温腐食用空気加熱器によれば、外管は内管に対して比較的自由にスライドできるため、熱膨張差に起因する外管の損傷、剥離、脱落等はより一層確実に防止される。また、外管と内管との支持構造が簡素化される上に、支持部が極小化され、外管の耐火材の目地部の比率が低減されることによっても、外管や内管の損傷は防止されるようになる。
【0023】
請求項4の耐高温腐食用空気加熱器によれば、内管の外表面に形成した耐食性被覆膜により、内管を更に確実に腐食から保護することができる。
【0024】
請求項5の耐高温腐食用空気加熱器によれば、特に優れた腐食防止効果を得ることができる。
【0025】
請求項6の耐高温腐食用空気加熱器によれば、外管が伝熱管に対ししっかりと保持されると共に、この保持のためのボルト表面が空気層で保護され、該ボルトの劣化が防止される。
【0026】
請求項7の耐高温腐食用空気加熱器によれば、耐火材製外管を拡散透過するガス量が低減される。
【0027】
請求項8の耐高温腐食用空気加熱器によれば、耐火材製外管をその管軸方向に押圧して保持することができる。
【0028】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の耐高温腐食用空気加熱器の実施例について詳細に説明する。
【0029】
図1(a),図2は本発明の実施例に係る耐高温腐食用空気加熱器を示す縦断面図、図1(b)は内管の下端部分の斜視図、図3は本発明の耐高温腐食用空気加熱器の設置形態を示す横断面図である。
【0030】
図1に示す耐高温腐食用空気加熱器10は、先端が開放された金属製伝熱内管1と、この内管1を覆うように内管1と同軸的に、かつ、内管1との間に間隙2を設けて配置された、先端が封止された耐火材製伝熱外管3とからなる伝熱管4を備えている。
【0031】
この耐高温腐食用空気加熱器10は、伝熱管4が、その軸方向が鉛直方向となるように配置されており、外管3の下端の封止端面3Aの内面にはアリ穴3aが設けられ、一方、内管1下端の封止端面1Aの外面には、外管3のアリ穴3aと係合可能なアリ状の突起1aが設けられている。外管3は、このアリ穴3aと突起1aとの係合により、内管1に対して支持されている。本実施例において、外管3は、このアリ穴3aと突起1aとの係合によってのみ内管1に対して支持されており、他の支持機能は設けられていない。
【0032】
本実施例の耐高温腐食用空気加熱器10は、焼却炉の高温、高腐食性ガス流(矢印B)内に配置される。被加熱空気は、伝熱内管1内を下降した後、内管1の開放先端1Aから内管と外管との間隙2を上昇し(矢印A)、その間に、外部の高温、高腐食性ガス流Bにより加熱される。
【0033】
なお、伝熱管4の基端(上端)側には図示しない被加熱空気の導入手段と加熱空気の取出手段が設けられており、回収された熱エネルギーの有効利用を図るように構成されている。
【0034】
この耐高温腐食用空気加熱器10において、伝熱管4は、外面が耐火材製外管3で覆われているため、高温、高腐食性ガスによる腐食から保護される。しかも、内管1と耐火材製外管3との間に間隙2が設けられているため、内管1を構成する金属と、外管3を構成する耐火材との間に熱膨張差が生じても、熱膨張による寸法変化が互いに伝播されにくいために、外管3の損傷、剥離、脱落等が防止される。
【0035】
その上、外管3は、内管1に対して下端の係合部においてのみ支持され、外管3は内管1に対して自由にスライドできるため、熱膨張差に起因する外管3の損傷、剥離、脱落等はより一層確実に防止される。
【0036】
また、外管3と内管1との支持構造が簡素で、外管3の耐火材の目地部の比率が低いことによっても、伝熱外管3の損傷は防止されるようになる。
【0037】
図2に示す耐高温腐食用空気加熱器10Aは、伝熱内管1の外表面に耐食性被覆膜8が形成されている点が、図1に示す耐高温腐食用空気加熱器10と異なる。この耐高温腐食用空気加熱器10Aの他の構成は上記耐高温腐食用空気加熱器10と同様であり、同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。耐食性被覆膜の材質としては、アルミナ、シリカ等の単独酸化物またはそれらを含むムライト、スピネル等の複合酸化物が好ましく、その膜厚は、耐食性、耐熱サイクル性等の確保の面から必要な厚さが選ばれる。
【0038】
この耐高温腐食用空気加熱器10Aであれば、内管1の外表面に形成された耐食性被覆膜8により、内管1を更に確実に腐食から保護することができる。
【0039】
図4に示す耐高温腐食用空気加熱器10Bにおいては、伝熱内管1の先端に内管キャップ部11が溶接等により固着されており、この内管キャップ部11に雌螺子穴12が穿設されている。なお、内管1の先端に空気流出口1fが設けられている。
【0040】
外管3の先端には耐火物モルタル13を介して外管キャップ部14が設けられている。この外管キャップ部14の内面にはアリ穴15が凹設されており、アリ状の頭部を有した支持ボルト16の該頭部が該アリ穴15に埋込まれている。この支持ボルト16のねじ棒部分が前記雌螺子穴12に螺じ込まれている。
【0041】
内管キャップ部11及び支持ボルト16には、伝熱管4内の空気を導入して支持ボルト16の表面を保護するための空気孔17,18,19が穿設されている。なお、空気孔17,18は一直線状に連なっており、空気孔19は空気孔18に対し直角に交わっている。その他の符号は図1〜2と同一部分を示している。
【0042】
図5に示す耐高温腐食用空気加熱器10Cにおいては、伝熱内管1の先端内面部分に雌螺子が刻設され、この雌螺子に支持ボルト16のねじ棒部分がねじ込まれている。この支持ボルト16にリング状の耐火物受け金具21が外嵌され、この耐火物受け金具21を介して外管3が支持されている。支持ボルト16には空気孔18から空気を隙間2に流出させるための孔22が設けられている。その他の符号は図5と同一部分を示している。
【0043】
この図4,図5の耐高温腐食用空気加熱器にあっては、支持ボルト16によって外管3がきわめてしっかりと保持される。また、支持ボルト16が空気孔18,19を有し、この空気孔18,19内に内管1内の空気が流入するようになるため、支持ボルト16の表面が保護され、その耐久性が高いものとなる。
【0044】
図6は耐高温腐食用空気加熱器10Dの焼却炉内における支持方式の一例を示す断面図であり、ガス煙道25に耐高温腐食用空気加熱器10Dがガス流Bと直交方向に挿入されている。この耐高温腐食用空気加熱器10Dの耐火材製外管3の先端面に凹陥部26が設けられ、該凹陥部26に押棒27の先端が挿入されている。押棒27は、バネ28によって付勢され、耐高温腐食用空気加熱器10Dを図の右方向に押圧している。29は静止壁を示す。
【0045】
耐高温腐食用空気加熱器10Dの外管3の後端部は、静止壁30に設けられた環状の受座31に嵌合されている。この静止壁31には、ケース32が設置されており、伝熱内管1内に空気が送り込まれ、伝熱外管3と伝熱内管1との間から加熱された空気がこのケース32を介して取り出される。
【0046】
この図6の耐高温腐食用空気加熱器の設置構造によると、外管3に対しバネ28によって管軸心方向の圧縮荷重が加えられるため、外管3に曲げ応力が全く又は殆どかからないようにすることができる。これにより、耐火材製外管3の耐久性が著しく高められる。
【0047】
なお、耐高温腐食用空気加熱器が垂下姿勢にて設置された場合に同様のバネによって管軸心方向に上向きに押圧すると、外管3に引張応力が全く又は殆どかからないようになり、同様に外管3の耐久性が高められる。
【0048】
本発明の耐高温腐食用空気加熱器において、内管を構成する金属としては、耐熱性、耐食性に優れたSUS310等が好ましい。また、内管の肉厚は、強度や耐久性、重量等の面から4〜6mm程度であることが好ましい。
【0049】
空気の流通路となる内管の内径は30〜70mm、外管と内管との間隙の幅(外管の内径と内管の外径との差の1/2)は10〜30mmであることが好ましい。
【0050】
耐火材製外管を構成する耐火材としては、ごみ焼却灰中の成分と反応しても低融点化合物を生成させない耐火物が好適であり、例えば高アルミナ質耐火物やクロミア質耐火物、炭化珪素耐火物などが好ましい。
【0051】
外管の肉厚は、伝熱効率や耐腐食性の確保の面から20〜35mm程度とするのが好ましい。
【0052】
この耐火材に対し封孔処理を施すことにより、外管を拡散透過するガス量を著しく少なくすることができると共に、耐火材それ自体の耐食性を高めることもできる。封孔処理を行なうには、耐火材の気孔を閉塞させるためのアルミナゾル、アルミナスラリーなどの液中に該耐火材製外管を浸漬し、その後乾燥、焼成すれば良い。このような封孔処理を施すと、例えば処理前の平均気孔径が10μm程度であったものを平均気孔径が5μm以下にすることができる。
【0053】
このような本発明の耐高温腐食用空気加熱器の焼却炉内での配置形態としては特に制限はなく、一般には、ダストが付着し難い場合には、伝熱有効面を大きくとるために孤立設置とし、ダストが付着し易い場合には、図3(a)(外管3が円管の場合),(b)(外管3が角管の場合)に示す如く、複数集合設置とするのが好ましい。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の耐高温腐食用空気加熱器によれば、外管を構成する耐火物の剥離、損傷等の問題がなく、従って、伝熱管の腐食が著しく低減され、焼却炉の高温、高腐食性ガス雰囲気における耐食性、耐久性に著しく優れた耐高温腐食用空気加熱器が提供される。
【0055】
請求項2,3の耐高温腐食用空気加熱器によれば、外管の損傷、剥離、脱落等はより一層確実に防止される。
【0056】
請求項4の耐高温腐食用空気加熱器によれば、伝熱管の腐食をより一層確実に防止することができる。
【0057】
請求項5の耐高温腐食用空気加熱器によれば、特に優れた腐食防止効果を得ることができる。
【0058】
請求項6の耐高温腐食用空気加熱器は、外管が内管に対し安定して支持されていると共に、耐久性にも優れる。
【0059】
請求項7の耐高温腐食用空気加熱器は、耐火材製外管を拡散透過して外管と内管との間の隙間に達するガス量がきわめて少なくなり、外管の耐食性が高められると共に、耐火材製外管それ自体の耐食性も高いものとなる。
【0060】
請求項8の耐高温腐食用空気加熱器によると、耐火材製外管に加えられる曲げ荷重や引張荷重を著しく小さくすることができ、耐火材製外管の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例に係る耐高温腐食用空気加熱器10を示す縦断面図である。
【図2】
実施例に係る耐高温腐食用空気加熱器10Aを示す縦断面図である。
【図3】
本発明の耐高温腐食用空気加熱器の配置形態を示す横断面図である。
【図4】
実施例に係る耐高温腐食用空気加熱器10Bを示す縦断面図である。
【図5】
実施例に係る耐高温腐食用空気加熱器10Cを示す縦断面図である。
【図6】
実施例に係る耐高温腐食用空気加熱器の設置例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 伝熱内管
1a 突起
2 間隙
3 伝熱外管
3 外管
3a アリ穴
7 貫通孔
8 耐食性被覆膜
10,10A,10B,10C,10D 耐高温腐食用空気加熱器
11 内管キャップ部
14 外管キャップ部
16 支持ボルト
17,18,19 空気孔
26 凹陥部
27 押棒
28 バネ
 
訂正の要旨 本件訂正請求の要旨は、特許第2996129号の明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするもので、その訂正の内容は、下記a.〜e.のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1について
請求項1の「…先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、」の次に、「前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、」を加入する。
b.特許請求の範囲の請求項2について
請求項2の「前記内管に設けられた凸部との係合により、」を、「前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、」と訂正する。
c.発明の詳細な説明の段落番号【0013】について
段落番号【0013】の「…先端が封止された耐火材製伝熱外管とを備え、」の次に、「前記外管はその内面部分を前記内管の先端部に設けた金属部材に係合させて該内管に支持されてなり、」を加入する。
d.発明の詳細な説明の段落番号【0014】について
段落番号【0014】の「前記内管に設けられた凸部との係合により、」を、「前記内管の先端部に設けられた金属製の凸部との係合により、」と訂正する。
e.発明の詳細な説明の段落番号【0020】について
段落番号【0020】の「…金属製伝熱内管と耐火材製外管との間に間隙が設けられていることから、」を、「…金属製伝熱内管と耐火材製外管との間に間隙が設けられ、しかも外管は内管に対して先端の係合部においてのみ支持され、外管は内管に対して自由にスライドできることから、」に訂正する。
異議決定日 2001-01-17 
出願番号 特願平7-57403
審決分類 P 1 652・ 121- YA (F23G)
P 1 652・ 113- YA (F23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蓮井 雅之  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 岡本 昌直
岡田 和加子
登録日 1999-10-29 
登録番号 特許第2996129号(P2996129)
権利者 三井造船株式会社
発明の名称 耐高温腐食用空気加熱器  
代理人 吉岡 宏嗣  
代理人 鵜沼 辰之  
代理人 飯田 房雄  
代理人 吉岡 宏嗣  
代理人 鵜沼 辰之  

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