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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1041324
異議申立番号 異議2001-70625  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-28 
確定日 2001-06-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3080501号「シリコンウェーハの製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3080501号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3080501号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年3月1日に特許出願され、平成12年6月23日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人村中祥世より特許異議の申立てがなされたものである。
2.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許第3080501号の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、その特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものである。
「チョクラルスキー法により引き上げられたシリコン単結晶から切り出されたシリコンウェーハを、水素雰囲気または水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、少なくとも1000℃以上の温度領域において昇温レートを3.5℃/min以下として昇温し、1100℃以上の温度領域においてウェーハを30分以上滞留させて熱処理することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。」
(2)特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、本件発明は、本件出願前に頒布された、下記の甲第1号証乃至第5号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第1項第2号の規定によって取り消されるべきものである旨主張している。

甲第1号証…白井宏ほか5名、「Siウエーハの水素アニール(2)表面の酸素濃度変化とBMD密度」、第39回応用物理学関係連合講演会、講演予稿集NO.1、 29p-ZD-4、p277,1992年(平成4年)3月28日
甲第2号証…特公平5-61240号公報
甲第3号証…特開昭60-3130号公報
甲第4号証…特開昭58-87833号公報
甲第5号証…特開昭59-39033号公報

(3)甲号各証に記載された発明
(A)甲第1号証
甲第1号証には、CZウエーハを水素アニールすることによってBMD析出が抑制され、ウエーハ表面層のBMD密度が減少することが記載されている。
(B)甲第2号証
甲第2号証の公告公報の公告日は、平成5年9月3日であり、本件出願時には、未公知であるから、特許法第29条第2項の証拠としては採用できない。
(C)甲第3号証
甲第3号証は、シリコンウエーハを還元雰囲気中で所定時間高温に加熱し、ウエーハ表面に酸素析出物のない層をつくり出すことを特徴としていることが記載されている(特許請求の範囲)。高温加熱の条件は、1000-1200℃の温度領域で、ウエーハを1〜4時間滞留させることが開示されている(4頁、左上欄9〜12行)。高温加熱の雰囲気としては、「純水素」であるか、またはヘリウムや、アルゴンなどの不活性ガスを混合した水素でもよいことが例示されている(4頁、右下欄9〜14行)。
(D) 甲第4号証の記載
甲第4号証は、「半導体基体の内部に結晶欠陥核を成長させる方法」に関する発明であって、450〜950℃の範囲内の開始温度から高温度へ半導体基体を昇温させながら熱処理することが特徴である(請求項1)。さらに、半導体基体の昇温速度を5℃/min以下にすること(請求項2)、450〜950℃の開始温度から結晶欠陥を充分に生ぜしめる1000℃以上の高温度まで半導体基体を連続的に昇温し、この高温度に保持することが記載されている(請求項7)。
昇温速度の上限は5℃/minとするのがよく、速度範囲としては1〜3℃/minとするのが好適である(2頁、左下欄18行から右下欄1行)。と記載している。
(E) 甲第5号証の記載
甲第5号証は、「表面に無欠陥層、内部に高密度微小欠陥層を有するシリコンウエーハ」の処理方法に関する発明であって、650〜800℃の温度範囲で第1熱処理を施した後、1050〜1150℃で第2熱処理を行う際に、第1熱処理から第2熱処理までの昇温レートを400℃/Hr(=6.7℃/min)以下にすることが開示されている(特許請求の範囲)。

(4)異議申立人の主張
「チョクラルスキ一法により引き上げられたシリコン単結晶から切り出されたシリコンウエーハ(以下、「CZウエーハ」という)を」対象に、「無欠陥層の形成」を行うこと、および「BMDの析出」を行うことはいずれも周知の技術事項であって、これらを組み合わせることに何らの困難性もない。したがって、本件発明は、これらの周知技術を単に組み合わせたに過ぎないものであるから、甲第1号証から甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であり、特許を受けることができない旨主張している。

(5)判断
異議申立人の提出した甲第1号証、甲第3号証には、水素雰囲気中で熱処理を行う点は記載されているが、水素雰囲気または水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、1000℃以上の温度領域において3.5℃/min以下の昇温レートで昇温する点に関する記載がない(なお、甲第2号証においてもこの点の記載はない)。また、甲第4号証及び甲第5号証には、昇温レートは記載されているが、水素雰囲気中または水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、昇温する点の記載がない。しかも、製造工程における多くの組み合わせ条件の中から、甲第1号証、甲第3号証に記載の発明と、甲第4号証、甲第5号証に記載の発明とを組み合わせる直接的な動機付けもなく、甲第1号証、甲第3号証に記載の水素又は不活性雰囲気中での熱処理を行う発明と甲第4号証、甲第5号証に記載の昇温レートの発明とを組み合わせることへの予測性も認められない。そして、本件発明は、水素雰囲気または水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、1000℃以上の温度領域において3.5℃/min以下の昇温レートで昇温することにより、金属汚染の影響を十分に除去することができ、信頼性の高い半導体デバイスを製造することができるシリコンウエハを提供できるという格別の効果を有すると認められる。よって、本件発明は、甲第1号証、甲第3号証〜甲第5号証に記載された発明から容易に成し得るとは認められない。
3.むすび
以上のとおりであるから特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-05 
出願番号 特願平5-40177
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 小田 裕
岡 和久
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3080501号(P3080501)
権利者 東芝セラミックス株式会社
発明の名称 シリコンウェーハの製造方法  

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