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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1046050
審判番号 審判1999-16617  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-12-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-14 
確定日 2001-09-17 
事件の表示 平成2年特許願第90709号「薄膜半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成3年12月19日出願公開、特開平3-289129]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I. 手続の経緯及び本願発明

本願は、平成2年4月5日の出願であって、
その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成9年4月7日付けの手続補正、平成11年4月1日付けの手続補正及び平成11年11月15日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、当該請求項1に記載されたとおりの、
「チェンバー内で基板をプラズマ処理した後に、連続して前記基板上にEB蒸着法、スパッタ法、CVD法、光CVD法、及びプラズマCVD法のいずれかにより非晶質半導体薄膜を成膜し、前記非晶質半導体薄膜を大気にさらすことなく、前記チェンバー内の基板ホルダーを700℃を上限とする温度で加熱して前記非晶質半導体薄膜を結晶成長させて結晶成長膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。」
にあるものと認める(以下、当該請求項1に係る発明を「本願第1発明」という。)。

II. 引用例

(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭64-49214号公報(以下「引用例」という。)には、
「高次シランガス(11)を620℃以下の温度で化学気相成長させてアモルファスシリコン膜(12)を形成する工程と、上記形成されたアモルファスシリコン膜(12)に熱処理を施して結晶化させる工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法」が記載されており(第1頁左下欄第5〜10行)、
また、「第1図(a)に示す如く、……ヒータ22上に載置したウエハ21を450℃程度の低温加熱で、減圧CVD法を使ってアモルファスシリコン膜の成長を行った。…… 次に第1図(b)は、形成されたアモルファスシリコン膜12に高温熱処理を行い、単結晶シリコンを形成する工程である。これを第2図で見ると、先の高次シランガス11を炉26内からメカニカルブースターポンプ23、ロータリーポンプ24で排出後、不活性なN2ガス25を炉26内に入れ1100℃のアニールを行う。これにより第1図(c)に見られるように、SiO2膜14に被われていない部分から単結晶化して単結晶シリコン15が形成される。」と記載されている(第2頁左下欄第15行〜第3頁左上欄第2行)。
また、図面第2図には、「炉26」の中に「ヒータ22」が設置されていて、この「ヒータ22」に接して「ウエハ21」が載置されている様子が描かれている。
ここに、上記図面第2図において、「ヒータ22」上に「ウエハ21」が載置されているように描かれてはいても、「ヒータ22」上に直接「ウエハ21」が載置されるとなると、「ヒータ22」上面に直接「ウエハ21」を保持することはできないので、実際には、「ヒータ22」と「ウエハ21」の間に、ウエハを保持するためのウエハのホルダーないし「サセプタ」(ウエハを高周波誘導やヒータなどで加熱するために、ウエハを保持するものの総称)が存在していて、このウエハのホルダーないしサセプタに「ウエハ21」が載置されており、そして、「ウエハ21」の加熱ないしアニールはこのウエハのホルダーないしサセプタを「ヒータ22」で加熱することによりなされるものであることが、この種技術分野における技術常識(必要ならば、特開昭60-206018号公報、特開昭61-13616号公報、特開平1-223719号公報を参照)から、認められる。すなわち、上記技術常識を参酌すれば、上記図面第2図から、「ウエハ21」はウエハのホルダーないしサセプタを介して「ヒータ22」上に載置されているものであることを読み取ることができる。

(2)以上からすると、引用例には、
「炉26内で高次シランガス11を分解させてシリコン基板上に、化学気相成長法によりアモルファスシリコン膜の成長を行い、前記高次シランガス11を炉26内から排出後、不活性なN2ガス25を炉26内に入れ、ヒータ22によりウエハ21のホルダーないしサセプタを加熱して1100℃のアニールを行い、前記アモルファスシリコン膜を結晶成長させて単結晶膜を形成する半導体装置の製造方法」
が記載されているものと認められる。

III. 対比

本願第1発明と引用例に記載された発明とを対比すると、後者における「炉26」、「ウエハ21」、「ウエハ21のホルダーないしサセプタ」は、それぞれ、前者における「チェンバー」、「基板」、「基板ホルダー」に相当するものと解され、また、後者における、「高次シランガス11を炉26内から排出後、不活性なN2ガス25を炉26内に入れ、ヒータ22によりウエハ21のホルダーないしサセプタを加熱して1100℃のアニールを行う」ということは、前者における、「非晶質半導体薄膜を大気にさらすことなく、チェンバー内の基板ホルダーを加熱する」ということに該当するから、両者は、
「チェンバー内でCVD法により非晶質半導体薄膜を成膜し、前記非晶質半導体薄膜を大気にさらすことなく、前記チェンバー内の基板ホルダーを加熱して前記非晶質半導体薄膜を結晶成長させて結晶成長膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法」
である点で一致しており、
(a)本願第1発明は、「チェンバー内で基板をプラズマ処理した後に、連続して前記基板上に非晶質半導体薄膜を成膜し」ているのに対し、引用例に記載された発明では、上記のようなプラズマ処理は行うことなく、「基板上に非晶質半導体薄膜を成膜し」ている点(以下「相違点1」という。)、
(b)本願第1発明は、「基板ホルダーを700℃を上限とする温度で加熱して非晶質半導体薄膜を結晶成長させて結晶成長膜を形成する」のに対し、引用例に記載された発明では、基板ホルダーを1100℃の温度で加熱して非晶質半導体薄膜を結晶成長させて結晶成長膜を形成する点(以下「相違点2」という。)、
の2点で相違している。

IV. 判断

1.相違点1について

反応炉ないし反応管(チェンバー)内で基板をプラズマ処理した後に、連続して前記基板上にプラズマCVD法等によりシリコン半導体薄膜をエピタキシャル成長させることは、本願出願前、周知である(必要ならば、J. Appl. Phys. Vol.57 No.8 p.2757-2765 (1985) (特に、p.2759 左欄下から第9〜12行),月刊 Semiconductor World, Vol.51 No.3 p.42-49 (1986)、特開昭63-288012号公報を参照)。
そして、基板表面が清浄であることが望ましいことは、基板上に成膜される薄膜の膜質の向上、膜質の均一性、膜質制御の容易性等の見地からして、本願第1発明におけるように基板上に非晶質半導体薄膜を成膜する場合でも、上記周知技術におけるように基板上にシリコン半導体薄膜をエピタキシャル成長させる場合でも、当業者において自明の事項である。
以上からすると、相違点1に係る本願第1発明のようにすることは、当業者がその知見により、格別の創意工夫を要することなくなし得たことである。

2.相違点2について

「非晶質半導体薄膜を結晶成長させて結晶成長膜を形成する」ために非晶質半導体薄膜を550℃,600℃,650℃等の温度で加熱することは、本願出願前、きわめて周知である(本願明細書の「従来の技術」の項に示されている、IEEE Electron Device Letters EDL-8 No.8 August p.361-364 (1987) の他にも、必要ならば、 応用物理 Vol.54 No.12 p.1274-1283 (1985)(特に、p.1275 左欄「2.2 固相成長法」の項)、特開平1-223719号公報、特開平1-283916号公報を参照)。
(なお、基板の上面に成膜された非晶質半導体薄膜を加熱するに当たって基板ホルダーを加熱し、もって熱伝導によりこの基板ホルダーの上に載置された基板及び当該基板の上面に成膜された非晶質半導体薄膜をも加熱するようにすることも、本願出願前、きわめて周知であり(必要ならば、特開昭61-13616号公報を参照)、また、そのような加熱を行った場合、基板及び当該基板の上面に成膜された非晶質半導体薄膜は、基板ホルダーと等しい温度ないし基板ホルダーよりも幾分か低い温度となることも当業者において自明の事項である。)
そうしてみると、非晶質半導体薄膜を加熱して結晶成長膜を形成するに当たって、基板ホルダーを1100℃の温度で加熱することに代えて、基板ホルダーを700℃を上限とする温度で加熱して結晶成長膜を形成することは、当業者であれば、容易になし得たことである。
なお、本願第1発明が生じる効果についても、格別のものは見出せない。

V. 結び

以上のとおりであるから、本願第1発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願出願人は、当該発明について特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-30 
結審通知日 2001-06-12 
審決日 2001-07-10 
出願番号 特願平2-90709
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高木 康晴宮崎 園子  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 石川 正幸
橋本 武
発明の名称 薄膜半導体装置の製造方法  
代理人 上柳 雅誉  

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