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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1051543
異議申立番号 異議2001-71495  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-21 
確定日 2001-12-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第3110974号「メタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3110974号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3110974号の請求項1〜6に係る発明は、平成7年5月16日に出願され、平成12年9月14日にその特許の設定登録がなされ、その後、平成13年5月21日に特許異議申立人京セラ株式会社により、請求項1〜6に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、「本件発明1〜6」という。)は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 メタライズ発熱層をアルミナ質基体に接合させたアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記メタライズ発熱層の主成分がW又はMoのうち少なくとも1種、該メタライズ発熱層の中に含まれるNaが0.2重量%以下、及び該メタライズ発熱層の中に含まれるアルミナ質成分が1〜20重量%であり、且つ前記メタライズ発熱層中の導体粒子からなる導体部分の占有容積率が60%以上であることを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。

【請求項2】 前記請求項1記載のメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記メタライズ発熱層中に、更に、
Oを6重量%以下含むとともに、
Al;0.1〜3重量%、Si;0.1〜3重量%、Mg;0.05〜1重量%、及びCa;0.05〜1重量%のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。

【請求項3】 前記請求項1記載のメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記メタライズ発熱層中に、更に、
O;6重量%以下、Al;0.1〜3重量%、Si;0.1〜3重量%、Mg;0.05〜1重量%、及びCa;0.05〜1重量%を含むとともに、
3A、4A、5A、及び(W,Moを除く)6A族の元素のうち、少なくとも1種を0.1〜10重量%含むことを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。

【請求項4】 前記請求項1〜3のいずれか記載のメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記メタライズ発熱層中の導体部分を構成する導体粒子の平均粒子径が、0.8〜5μmであることを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。

【請求項5】 前記請求項1〜4のいずれか記載のメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記アルミナ質基体の緻密度が、相対密度で90%以上であることを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。

【請求項6】 前記請求項1〜5のいずれか記載のメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記アルミナ質基体のアルミナ粒子の平均粒子径が、1.0〜5μmであることを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。」

3.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人京セラ株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭63-96884号公報)、甲第2号証(特開平5-51275号公報)、甲第3号証(特開昭63-123886号公報)、を提出し、本件発明1〜6は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1〜6に係る特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべき旨主張している。

4.甲各号証記載の発明
特許異議申立人京セラ株式会社が提出した甲第1号証には、
「本発明のセラミックヒーターに用いられるセラミックス支持体の成分は、特に限定されず、例えば、アルミナ、ムライト、コージェライト、フォルステライト、ベリリア、窒化珪素等が用いられるが、α-Al2O3を85%以上含有するセラミックスであることが好ましい。」(第3頁左上欄4〜9行)、
「発熱抵抗体は、白金、ロジウム、モリブデン、タングステン、タンタル等の高融点金属を主成分とし、抵抗値調整のために所望により上記セラミックス支持体と同質又は異質のセラミックスから成ることができる。」(第3頁左上欄19行〜同頁右上欄3行)、
「イオン化成分抑留導体の材質は、発熱抵抗体の材質と同様であれば良いが、それのみに限定されず、用いられる発熱抵抗体の材質に応じ発熱抵抗体にマイグレーションをおこさせないものを適宜選択すればよい。」(第3頁右上欄9〜13行)、
「第1図は本発明のセラミックヒーターの中間製品の斜視図、第2図は構成図を示す。1はアルミナ、ムライト、コージェライト、フォルステライト、ベリリア、窒化珪素等のセラミックスを主成分とするセラミックグリーンシートである。2は発熱抵抗体を示しタングステン、モリブデン、タンタル、白金、ロジウム等の高融点金属粉末を主成分とし、抵抗値調整のために所望により上記グリーンシート1と同質又は異質のセラミック粉末を添加してペースト状とし、これをグリーンシート1の表面に厚膜印刷したものである。」(第3頁右下欄13行〜第4頁左上欄3行)、
「かくして表面に発熱抵抗体2、リード部3、3′およびイオン化成分抑留導体5、5′が印刷されたグリーンシート1はそのまま焼成してもセラミックヒータとなるが、印刷配線を保護するために印刷された表面上にさらにもう一枚のグリーンシートを圧着するかまたは絶縁ペーストを塗布した後に焼成するのが望ましい。」(第4頁左上欄末行〜同頁右上欄7行)、及び、
「Ptペーストは、Ptブラック粉末とPtスポンヂ粉末を2:1にて混合しAl2O3を約10wt%添加後、ブチルカルビドールを溶剤として加え製造した。」(第4頁左下欄9行〜12行)ことが図面とともに記載されている。

同じく甲第2号証には、
「【請求項1】 セラミックスからなるヒータ基板と、導電材料及びセラミックス添加剤からなるヒータ電極と、を同時に焼成するセラミックスヒータにおいて、
前記ヒータ電極のセラミックス添加剤として、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が0.07重量%以下の酸化物を用いたことを特徴とするセラミックスヒータ。」(請求項1)、
「【0012】ここで、前記セラミックス添加物の酸化物としては、α-アルミナや、5〜5.5mol%Y2O3部分安定化ジルコニア(PSZ)等を使用することができる。また、その添加量は添加物の種類によって異なるが、例えば3.5〜10重量%の範囲であれば、導電性を損なうことなく密着強度を高めることができるので好適である。
【0013】前記ヒータ電極のセラミックス添加剤中に含まれるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とは、主としてNa,Mg,Caである。」(発明の詳細な説明の段落【0012】、〜【0013】)ことが図面とともに記載されている。

同じく甲第3号証には、
「アルミナ1〜16重量%、シリカ0.01〜1.5重量%カルシア及び/又はマグネシア0.01〜0.8重量%残部タングステンよりなることを特長とするメタライズ組成物」(特許請求の範囲)、及び、
「タングステン粉末(市販品、平均粒径0.5μm)所定量」(第2頁左下欄12行)ことが図面とともに記載されている。

5.当審の判断
〔本件発明1について〕
本件発明1と特許異議申立人京セラ株式会社が提出した甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載の「支持体」、「発熱抵抗体」、「Al2O3」は本願発明の「基体」、「メタライズ発熱層」、「アルミナ質成分」に相当し、また、甲第1号証のセラミック支持体の成分はα-Al2O3 を85%以上含有するセラミックスであるのが好ましい、及び、Ptペーストには、Al2O3 を約10wt%添加する旨の記載より、支持体はアルミナ質であり、また、メタライズ発熱層中に含まれるアルミナ質成分は1〜20重量%の範囲内であることが記載されているといえるから、両者は、
「メタライズ発熱層をアルミナ質基体に接合させたアルミナ質セラミックヒータにおいて、
前記メタライズ発熱層の主成分がW又はMoのうち少なくとも1種、及び該メタライズ発熱層の中に含まれるアルミナ質成分が1〜20重量%であることを特徴とするメタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ。」である点で一致し、

(相違点)本件発明1では、メタライズ発熱層の中に含まれるNaが0.2重量%以下であり、且つメタライズ発熱層中の導体粒子からなる導体部分の占有容積率が60%以上であるのに対して、甲第1号証には、メタライズ発熱層の中にNaを含有しているのか、あるいは含有していないのか明記されておらず、また、導体部分の占有容積率についても記載されていない点で相違する。

そこで、上記相違点について検討すると、甲第2号証にはヒータ電極(本件発明の「メタライズ発熱層」に相当)のセラミックス添加剤として、Na,Mg,Ca等のアルカリ金属及び/アルカリ土類金属の含有量が0.07重量%以下の酸化物を用いることが記載されいる。
しかしながら、メタライズ発熱層中の導体粒子からなる導体部分の占有容積率については、特許異議申立人が提出した甲各号証のいずれにも記載されておらず、また、示唆もされていない。
特許異議申立人は、メタライズ発熱層中にポアが存在して導体部分の占有率が低下すると、マイグレーションの発生以前に発熱層の抵抗値が低下して所定の値が得られなくなるから、発熱層中にポアを存在させず緻密に焼成する程度のことはセラミックヒータとして当たり前のことである旨主張している。
そこで、検討するに、甲第1号証には、上記したように、タングステン、モリブデン等の高融点金属粉末を主成分とする発熱抵抗体は、抵抗値調整のために所望によりグリーンシートと同質又は異質のセラミック粉末を添加してペースト状とする旨記載されており、このことは、メタライズ発熱層中にセラミック粉末を添加して導体部分の占有容積率を調整して所定の抵抗値を得るということであるから、特許異議申立人の、導体部分の占有率が低下すると発熱層の抵抗値が低下して所定の抵抗値が得られなくなるから導体部分の占有率を所定以上とすることが当たり前であるという主張は、必ずしもそうであるとはいえない。
そして、本件発明1のメタライズ発熱層の成分やその導体部分の割合の設定理由については、本件特許明細書に次のとおり記載されている。
「メタライズ発熱層中のNaが0.2重量%を超えると粒界の耐熱性が悪くなり、ヒータ耐久性が低下する。また、アルミナ質成分が1重量%を下回るとメタライズ発熱層とアルミナ質基体との密着性が悪くなり、20重量%を上回るとヒータ耐久性が低下する。更にメタライズ発熱層中の(WやMoの導体粒子からなる)導体部分の占有容積率が60%を下回ると、即ち導体部分の緻密度が悪いとメタライズ発熱層中に残留ポアが多くなり、アルミナ質基体との密着性が悪くなる。また、この残留ポアが多いと、通電時にメタライズ成分(W,Mo)の移動も生じ易くなって(即ちマイグレーションが発生し易くなって)、ヒータ耐久性が低下する。」(本件特許公報第3頁5欄33〜45行)
この記載に徴すれば、本件発明1において、「Naが0.2重量%以下」、「アルミナ質成分が1〜20重量%」、及び「導体粒子からなる導体部分の占有容積率が60%以上」と限定する技術的な意味は、特許明細書に記載された「Na、アルミナ質成分、及び導体部分の容積占有率を所定値に設定することにより、ヒータ耐久性及びアルミナ質基体との密着性が共に向上するという顕著な効果を奏する。」(本件特許公報第3頁5欄46〜49行)ことをねらいとするものであり、しかもこのねらいは、上記構成が相俟って実現されるものであるから、甲第1〜3号証以外の証拠もなく本件発明1の進歩性を否定する特許異議申立人の上記主張は、採用することはできない。
したがって、本件発明1は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔本件発明2〜6について〕
本件発明2及び3は、請求項1を、本件発明4は請求項1〜3を、本件発明5は請求項1〜4を、また、本件発明6は請求項1〜5をそれぞれ引用し、さらに構成を限定したものであるから、上記と同様な理由により、本件発明2〜6は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-11-06 
出願番号 特願平7-117352
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 長浜 義憲
原 慧
登録日 2000-09-14 
登録番号 特許第3110974号(P3110974)
権利者 日本特殊陶業株式会社
発明の名称 メタライズ発熱層を有するアルミナ質セラミックヒータ  

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