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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23N
管理番号 1052800
審判番号 審判1999-3426  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-04 
確定日 2002-01-09 
事件の表示 平成 1年特許願第335625号「燃焼器」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 8月26日出願公開、特開平 3-194316]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1、手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成元年12月25日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年6月1日付けおよび平成11年3月4日付け手続補正の内容からみて、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
なお、本件請求人が行った平成13年4月24日付け手続補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書または図面の要旨を変更するものであるとして、平成13年7月18日付け補正却下の決定により却下され、既に同決定は確定している。
「ガスあるいは気化手段によって気化された気化油等の燃料を燃焼させるバーナと、前記バーナへ燃焼用空気を送る送風機と、前記バーナへ燃焼量に応じて燃料を送る送燃料手段と、燃焼量に応じたD/A出力を行う制御部と、この制御部からのD/A出力によって送風機の回転数制御を行う送風機駆動部と、前記送風機の回転数に応じた電圧に変換するF/V変換部と、前記制御部からのD/A出力を増幅するD/A増幅部と、前記D/A増幅部の出力とF/V変換部の出力を比較する回転不良検出部を備え、前記D/A増幅部の出力は正常回転時におけるF/V変換部の出力を所定の割合分だけ増幅した値とし、このD/A増幅部の出力よりF/V変換部の出力が下回ったとき、前記回転不良検出部は異常判定信号を出力するとともに、前記制御部はその異常判定信号が入力されたとき送燃料手段への出力を停止し、機器の燃焼を停止するようにした燃焼器。」
2、引用刊行物
これに対し、当審で通知した平成13年2月13日付け拒絶理由通知書において、引用刊行物として引用された特開昭61-15018号公報には、同公報記載の「燃焼制御装置用フアン・モータ異常検出方法」について、次の事項が記載されている。
(1)従来の技術および発明が解決しようとする問題点として、
「既存のものとしては、単に最大燃焼量の時のファン・モータ最大回転数許容上限と最小燃焼量の時に対応するファン・モータが最低回転数許容下限の二点を固定的に設定して起き、ファン・モータの回転数がこれら二点のいづれかを上または下に越えた時にのみ、“異常”と判断するものがあったに過ぎない。・・・(中略)・・・しかし実際には、上記した従来の方法では例え“異常”とは判断されない範囲内であっても、その時の燃焼量にしてみれば望ましくない、寧ろ異常と言って良い回転数である、ということが十分に起こり得る。」(同公報第2頁右上欄第4〜16行)こと、
「こうしたことから先づ、その時々の使用条件に応じて燃焼量が変動し、これに伴って理論計算的に求められるファン・モータの最適設定回転数もその時々に応じて異なった値を採るという現実の下では、その時々に定められた最適設定回転数に対して所要の範囲の回転最変動許容範囲を設定し、その各許容範囲に対して実際のファン・モータ回転数がこの中に入っているか否かをその都度、弁別できるようにしなければならないことが理解される。例えば設定回転数が1500rpmの場合は最小1400rpmから最大1600rpmまで、1900rpmの場合は1800rpmから2000rpmまで、というように、その時々の設定回転数に応じて最小、最大の各臨界値も変えるようにし、その時点で設定されている許容範囲を基準として実際のファン・モータ回転数を監視するように図るのである。但し上述の±100rpmは例示であって、設定回転数の絶対値によって幅の異なる%規定であっても良い。」(同第2頁右下欄第6行〜第3頁左上欄第3行)こと
(2)実施例として
「主制御回路1は、給水路中に設けてある水量センサ6から水量信号S6を受け取ると、使用者が望みの出湯温度を指令する設定温信号Ss、給水路中に設けてある給水温センサ7からの給水温信号S7、そして出湯路中に設けてある実際の出湯温度を検出するための出湯温センサ8からの出湯温信号S8の各信号を夫々取り込み、これらからガス・バーナ等の燃焼部3へ与えるべき燃焼量を演算する。そして、その結果に応じ、ガス比例弁制御信号S4をガス比例弁4に送って燃料ガス供給量を制御すると共に、当該燃焼量に応じた空気送給量乃至フアン・モータ設定回転数データに基き、ファン・モータ5へファン・モータ回転制御信号Scを送出する。フアン・モータ5からはこれに適当なセンサを付す等して実際の回転数を示すファン・モータ回転数信号Frpmが主制御回路へフイード・バックされ、この信号の持つ実際の回転数データと先の設定回転数データとの偏差に応じ、帰還制御が図られる。」(同第4頁右上欄第8行〜左下欄第8行)こと、
「先づ、主制御回路1から送り出されるその時々のファン・モータ設定回転数電圧信号Vsoに基き当該その時々の設定回転数に相応しい回転数変動許容範囲の上限、下限を各示す上限、下限臨界値を作り出すが、これは例えば上限臨界電圧値Vupr形成用の第一ポテンショ・メータP1と下限臨界電圧値Vlwr形成用の第二ポテンショ・メータP2の採用で簡単にできる。従って勿論、上下に均等な許容幅とすれば、上限臨界電圧値Vuprと下限臨界電圧値Vlwrとの中間の電圧値Vctr=(Vupr+Vlwr)/2が設定回転数時の電圧値に対応する。こうして作られた上限臨界電圧値(以下単に上限値)Vuprは上限値比較器CMP1の正相入力に加えられ、下限値Vlwrは下限値比較器CMP2の逆相入力に加えられる。一方、両比較器CMP1,CMP2の他入力には、F/Vコンバータ12からのファン・モータ回転数電圧信号Vrpmを入力するが、設定回転数信号Vsoに対してファン・モータが正しくこれに応じた設定回転数で回っている時の当該回転数電圧信号Vrpmの値が既述した許容範囲中間値Vctrになるように調整する。この調整は既述の第一、第二の各ポテンショ・メータP1,P2でできるし、・・・(中略)・・・両比較器CMP1,CMP2の出力は共にナンド・ゲート15の各入力に接続され、当該ナンド・ゲート15の出力はスイッチング素子16を介してこの場合、抵抗RとキャパシタCで簡単に構成されたタイマ回路17を選択的に起動する。また、スイッチング素子18はやはりこの場合、npn型トランジスタで構成され、従ってナンド・ゲート15でナンド論理が採れるとターン・オンし、キャパシタCの蓄積電荷を時定数RCに応じて放電する。但し、当該トランジスタ16がオフにある時、乃至オフ状態となった時にはキャパシタCは電源電位Vccにより充電された状態にあるか、または速やかに充電される。」(同第5頁左上欄第2行〜左下欄第2行)こと、
「然し、主制御回路1からの設定回転数信号Vsoが変化し、この変化にファン・モータ5 の実際の回転がまだ追い付かない帰還制御応答過渡期とか、或いは他の何等かの外乱等により、ファン・モータ5のその時の実際の回転数Vrpmがその時の許容範囲の上限値Vuprを上回るか、或いは下限値Vlwrを下回ると、上記第1表に示されるようにナンド・ゲート15の出力は論理“H”に反転する。するとタイマ回路17が起動し、具体的にはこの場合、キャパシタCの放電が開始し、その両端電位としての異常判定信号Saの電位はそれ迄の電源電位Vccに伴う最大充電電位Emaxから接地電位に向けて定められた時定数RCで低下を始める。異常の判定乃至検出は,予定の閾値のEthoをこの低下していく判定信号電位が横切った時点でなすが、逆に言えばそれまでに要する時間を異常判定までの余裕時間Txとして設計する。」(同第5頁右下欄第10行〜第6頁左上欄第6行)こと、
「然し一方、外乱、故障、その他の何等かの要因によりフアン・モータ回転数Vrpmが許容範囲から外れたとすると、第2図中、“許容範囲逸脱(2)”領域に示すように、一旦許容範囲を外れたフアン・モータ回転数はその後、再び自ら許容範囲に入ってくるとは先ず考えられない。従って、“許容範囲逸脱(2)”領域の時刻t1から低下し始めた異常判定信号Saは、いづれ予定の閾値Ethoを下回る結果となる。即ちクイマ回路17として考えると設定時間Txを経過してタイム・アップすることになり、この時点をして“ファン・モータの回転異常”と同定することができる。」(同第6頁右上欄第7〜18行)こと、
「一般に主制御回路1として用いられているマイクロ・コンピュータ」(同第6頁左下欄第7〜8行)および、
「尚、本発明によりファン・モータの異常が検出された場合には、一般には主制御回路において燃焼を止めるのが最も普通の安全対策である。」(同第6頁左下欄第16〜18行)こと
(3)発明の効果として
「本発明によればフアン・モータの焼損や故障、回路系の故障に伴う明かに異常と認められる回転停止や暴走は勿論、正しく回っているようでもその時の燃焼量からすれば相応しくない回転数にあることを各燃焼量毎に対応的に検出することができ、燃焼効率を挙げ、不完全燃焼の虞れ等も略く完全に回避できる。」(同公報第6頁左下欄第20行〜右下欄第6行)こと
したがって、上記記載及び図面の記載からみて、引用例には、次の発明が記載されていると云える。
「ガスの燃料を燃焼させるガスバーナ3と、前記ガスバーナ3へ燃焼用空気を送るファンと、前記ガスバーナ3へ供給するガス供給量を燃焼量に応じて制御するガス比例弁4と、燃焼量に応じたファン・モータ設定回転数電圧信号Vsoを出力する主制御回路1と、この主制御回路1からのファン・モータ設定回転数電圧信号Vsoによってファン・モータ5の回転数制御を行うファン・モータ駆動回路11と、前記フアン・モータ5の回転数に応じた電圧に変換するF/Vコンバータ12と、前記主制御回路1から出力されたファン・モータ設定回転数電圧信号Vsoに基づいて上限臨界電圧値Vuprを形成する第一ポテンショメータP1及び下限臨界電圧値Vlwrを形成する第二ポテンショメータP2と、前記上限臨界電圧値VuprとF/Vコンバータ12の出力Vrpmとを比較する上限値比較器CMP1、前記下限臨界電圧値VlwrとF/Vコンバータ12の出力Vrpmとを比較する下限値比較器CMP2、ナンド・ゲート15、スイッチング素子16及びタイマ回路17とを備え、前記上限臨界電圧値VuprよりF/Vコンバータ12の出力が上回ったとき或いは前記下限臨界電圧 値VlwrよりF/Vコンバータ12の出力Vrpmが下回ったとき、前記上限値比較器CMP1、下限値比較器CMP2、ナンド・ゲート15、スイッチング素子16及びタイマ回路17はファン・モータ異常判定信号Saを出力するとともに、前記主制御回路1はその異常判定信号Saが入力され、設定時間Txを経過して異常判定信号Saが閾値Ethoを下回るとき燃焼を停止するようにした燃焼装置。」
そして、さらに、前記第一ポテンショメータP1及び第二ポテンショメータP2については、第1図に記載されているように、それぞれ2つの抵抗が記載されており、それらの抵抗値の割合により前記電圧信号Vsoから分圧して、その前記電圧信号Vsoの電圧レベルより低い所定の電圧レベルの前記上限臨界電圧値Vupr及び下限臨界電圧値Vlwrを出力するものであり、しかも、引用例には、F/Vコンバータ12の出力である回転数電圧信号Vrpmの値が、設定回転数信号Vsoに対してファン・モータが正しくこれに応じた設定回転数で回っているときの前記上限臨界電圧値Vuprと下限臨界電圧値Vlwrとの中間値に調整されていることが記載されている。
3、対比・判断
上記引用例に記載のものと本願の請求項1に係る発明とを比較すると、引用例に記載のガスの燃料は、ガス或いは気化手段によって気化された気化油等の燃料の中に含まれるから、引用例に記載の「ガスの燃料を燃焼させるガスバーナ3」は、請求項1に係る発明の「ガスあるいは気化手段によって気化された気化油等の燃料を燃焼させるバーナ」に対応し、また、引用例に記載の主制御回路1にはマイクロ・コンピュータが用いられ、前記電圧信号Vsoが、その記載内容からみてアナログ信号であることから、前記電圧信号Vsoは、請求項1に係る発明の「D/A出力」に相当している。
また、その電圧信号Vso(D/A出力)に基づいて上限臨界電圧値Vupr 及び下限臨界電圧値Vlwrを出力する第一ポテンショメータP1及び第二ポテンショメータP2は、2つの抵抗の抵抗値の割合により前記電圧信号Vsoの電圧レベルより低い所定の電圧レベルの値として前記上限臨界電圧値Vupr及び下限臨界電圧値Vlwrを出力するもの、即ち、電圧信号Vsoより低いレベルの方へ増幅して出力するものであるが、これに対して、本願の明細書の第7頁第4〜10行目及び図面の記載によると、抵抗17,18,19は第1図中のD/A増幅部4に相当している旨記載されており、このD/A増幅部4もD/A出力をD/A出力より低いレベルの値を出力しているから、引用例に記載の「第一ポテンショメータP1及び第二ポテンショメータP2」は、請求項1に係る発明の「D/A出力を増幅するD/A増幅部」に相当し、その結果、増幅して出力される前記上限臨界電圧値Vupr及び下限臨界電圧値Vlwrは、請求項1に係る発明の「D/A増幅部の出力」に相当している。
さらに、引用例に記載の「ファン」、「ガス比例弁4」、「主制御回路1」、「ファン・モータ駆動回路11」、「F/Vコンバータ12」、「出力Vrpm」、「上限値比較器CMP1、下限値比較器CMP2、ナンド・ゲート15、スイッチング素子16及びタイマ回路17」、「ファン・モータ異常判定信号Sa」及び「燃焼装置」についても、その記載内容からみて、請求項1に係る発明の「送風機」、「送燃料手段」、「制御部」、「送風機駆動部」、「F/V変換部」、「F/V変換部の出力」、「回転不良検出部」、「異常判定信号」及び「燃焼器」にそれぞれ相当しているから、両者は、結局、
「ガスあるいは気化手段によって気化された気化油等の燃料を燃焼させるバーナと、前記バーナへ燃焼用空気を送る送風機と、前記バーナへ燃焼量に応じて燃料を送る送燃料手段と、燃焼量に応じたD/A出力を行う制御部と、この制御部からのD/A出力によって送風機の回転数制御を行う送風機駆動部と、前記送風機の回転数に応じた電圧に変換するF/V変換部と、前記制御部からのD/A出力を増幅するD/A増幅部と、前記D/A増幅部の出力とF/V変換部の出力を比較する回転不良検出部を備え、前記D/A増幅部の出力は正常回転時におけるF/V変換部の出力を所定の割合分だけ増幅した値とし、このD/A増幅部の出力よりF/V変換部の出力が外れた値を示すとき、前記回転不良検出部は異常判定信号を出力するとともに、前記制御部はその異常判定信号により送燃料手段への出力を停止し、機器の燃焼を停止するようにした燃焼器。」
である点で一致し、次のa〜bの点で相違している。
a、請求項1に係る発明が、その回転不良検出部が「このD/A増幅部の出力よりF/V変換部の出力が下回ったとき、前記回転不良検出部は異常判定信号を出力」するのに対し、引用例1に記載のものは、回転不良検出部が「前記上限臨界電圧値VuprよりF/Vコンバータ12の出力が上回ったとき或いは前記下限臨界電圧値VlwrよりF/Vコンバータ12の出力Vrpmが下回ったとき、前記回転不良検出部はファン・モータ異常判定信号Saを出力」している。
b、請求項1に係る発明が、その制御部が「その異常判定信号が入力されたとき送燃料手段への出力を停止し、機器の燃焼を停止」しているのに対し、引用例記載のものは、その制御部はその異常判定信号が入力され、「設定時間Txを経過して異常判定信号が閾値Ethoを下回るとき燃焼を停止」している。
そこで、まず相違点aについて検討すると、引用例に記載のものは、前記上限臨界電圧値Vuprを上回ったとき或いは下限臨界電圧値Vlwrを下回ったときに異常判定信号を出力するものであるが、これを、そのうちの下限臨界電圧値Vlwrを下回ったときのみ異常判定信号を出力するように変更することは、当業者が場合に応じて適宜なし得た程度のものである。
また、相違点bについて検討すると、引用例に記載のものは、異常判定信号が入力され、設定時間Txを経過して異常判定信号が閾値Ethoを下回るとき燃焼を停止するものであるが、これを、異常判定信号が入力されたとき燃焼を停止するよう変更することも、当業者が場合に応じて適宜なし得た程度のものである。
なお、機器の燃焼を停止するため、送燃料手段への出力を停止することは、周知の事項に過ぎないものである。
4、むすび
以上のとおりであるから、上記各相違点は、いずれも格別なものではなく、請求項1に係る発明は、結局、前記引用例に記載されたものから当業者が容易に推考できたものであり、その奏する効果も、前記引用例に記載されたものが奏する効果以上のものと認めることができない。
 
審理終結日 2001-10-24 
結審通知日 2001-11-06 
審決日 2001-11-19 
出願番号 特願平1-335625
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 寛豊原 邦雄  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 原 慧
岡本 昌直
発明の名称 燃焼器  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  

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