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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) F25C
管理番号 1054556
審判番号 無効2000-35526  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-07-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-29 
確定日 2001-06-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第2540790号発明「氷成形装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2540790号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件特許発明
本件特許第2540790号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成5年1月22日に特許出願され、平成8年7月25日にその発明について設定の登録がなされたもので、その請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 雌型と、前記雌型に対向する雄型と、前記雌型の底部に形成された貫通孔と、前記貫通孔に設けられ昇降駆動装置により昇降自在に設けられた押出し体と、前記雌型の上方側部に排出口を臨んだ氷片排出用のシュートと、前記雌型の上方に設けられる氷成形品の搬出装置とを具備し、前記シュートは進退自在に設けられると共に、該シュートの排出口が前記雌型の斜め上方に臨んで設けられることを特徴とする氷成形装置。」

2.当事者の主張
(2-1)請求人の主張
これに対し、請求人は、「特許第2540790号の請求項1に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて、甲第1号証及び甲第3号証〜甲第9号証並びに甲第16号証〜甲第18号証に記載された発明に基づいて(審判請求書の「(3)本件特許を無効とすべき理由」の欄参照)、又は甲第2号証及び甲第3号証〜甲第9号証並びに甲第16号証〜甲第18号証に記載された発明に基づいて(審判請求書の「(3)本件特許を無効とすべき理由」の欄参照)、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである、と主張し、証拠方法として下記甲第1号証乃至甲第20号証を提出している。
(1) 甲第1号証 特開平 2-151398号公報
(2) 甲第2号証 特開平 4-296511号公報
(3) 甲第3号証 特開昭60-166130号公報
(4) 甲第4号証 特開昭57-157705号公報
(5) 甲第5号証 特開昭55- 74819号公報
(6) 甲第6号証 特開平 3- 45310号公報
(7) 甲第7号証 特開昭60- 99614号公報
(8) 甲第8号証 特開昭53-125679号公報
(9) 甲第9号証 特開昭53-121277号公報
(10)甲第10号証 特開昭63- 35305号公報
(11)甲第11号証 特開昭60-245518号公報
(12)甲第12号証 特開昭53-139617号公報
(13)甲第13号証 特開昭59-150720号公報
(14)甲第14号証 特開平 2-261567号公報
(15)甲第15号証 特開平 2- 62213号公報
(16)甲第16号証 特開昭51- 55056号公報
(17)甲第17号証 特開昭59-205560号公報
(18)甲第18号証 マイクロフィルムに記載された実願昭63-147556号の明細書及び図面(実開平2-70171号)
(19)甲第19号証 特許第2540790号公報
(20)甲第20号証 本件審判被請求人である本件特許権者が債権者として、本件審判請求人を債務者として東京地方裁判所に申し立てた本件特許権侵害行為差止仮処分命令申立事件(平成10年(ヨ)第22072号)において提出した平成10年11月9日付債権者準備書面

(2-2)被請求人の主張
一方、被請求人に対し、期間を指定して前記請求人の主張に対する答弁書の提出の機会を与えたが、指定した期間内に被請求人からは何らの応答もなかった。

3.甲各号証記載の事項
甲第1号証には、
「成形装置1のテーブル2上に所要の型体3を固設し、その型孔3'内には、支持枠4内に流体シリンダ5により昇降自在に垂設したホーン6の下端の上ポンチ7を挿入自在とする一方、前記テーブル2の下方に配設した流体シリンダ8により昇降自在とした下ポンチ9をもこの型孔3'に挿入自在とし、さらに、可撓管10を経由し、ホッパー11よりの加工粉末を、ノズル12から投入自在とし、このノズル12をソレノイド13によって退避自在とするものであって、制御器14からの信号で開閉されるバルブ15により可撓管10内を経由して給送された粉体Pは、ソレノイド13によりノズル12が前進されて型孔3'上に臨んでいる際にその中に投入され、ソレノイド13が復帰してノズル12が退避した際には、その供給が停止されるようにされている。」(第2頁右上欄1行〜17行)こと、
「図中、18は、ソレノイド19により往復駆動されるプッシャ-であって、上ポンチ7とノズル12が退避した後、下ポンチ9が上昇して、成型品Gが型体3から露出されると、これを次行程へと移送させる手段、20は流体ポンプであって、バルブV1V2に流体を供給できるもの」(第2頁左下欄4行〜10行)であること、
「次に、その加工法について述べる。
第1図の状態において、制御器14によりバルブ15を開閉して所要量の粉体Pをホッパー11からノズル12に給送させ、型孔3'内に投入する。
次で、ソレノイド13によりノズル12を退避させた後、超音波発信器16を始動して、変換器17、ホーン6を介して上ポンチ7に超音波振動を誘起させる。
さらに、支持枠4内の流体シリンダ5を流体ポンプ20にて作動させて付勢して防振ユニット24を介して上ポンチ7を下降させ、粉体Pに接触させる(第2図仮想線で示す)。この状態で粉体Pに超音波振動が与えられ、その表面は、この超音波振動により自動的に平坦に整される。
ひき続いて上ポンチ7は下降され、粉体Pを超音波振動させつつ下ポンチ9との間で圧縮してこれを成型加工する。
次で、上ポンチ7は超音波振動が中止され、上方に退避され、下ポンチ9が成型品Gを押し上げる。
最後に、プッシャ-18により成型品Gが次行程へ給送され、下ポンチ9も初期位置に復帰するものである。」(第2頁左下欄13行〜右下欄17行)こと、
「すなわち、成型加工処理される粉体Pを型孔3'に供給した後、下ポンチ9上にたとえば第2図に象徴的に描いたように表面が格別平坦状でないこの粉体Pに上ポンチ7で加圧力を加えて成型し、これを型孔3'から取り出すようにしたもの」(第3頁右上欄1行〜6行)であること、が図面とともに記載されている。
してみると、甲第1号証には、
「テーブル2上に固設され、型孔3'を有する型体3と、型体3の上方に対向して配置され、流体シリンダ5により昇降自在で、型体3の型孔3'内に挿入自在な上ポンチ7と、型体3の型孔3'の底部に形成された貫通孔と、上記貫通孔に設けられ流体シリンダ8により昇降自在に設けられた下ポンチ9と、型体3の型孔3'の上側側部に臨んだ排出口を有し、ホッパー11からの成形材料を型孔3'に投入するノズル12と、ソレノイド19により往復駆動されて、下ポンチ9の上昇により型体3から押し出された成形品Gを移送させるプッシャ-18とを備え、前記ノズル12はソレノイド13により進退自在に設けられると共に、該ノズル12の排出口が前記型体3の型孔3'の斜め上方に臨んで設けられている粉体の成形装置」が記載されている。
甲第16号証には、
「本発明は夏場の料理に盛器として使用する氷細工、特に氷塊を粉砕して粒状のかき氷とし、このかき氷を型枠内に詰め込んで氷結することにより構成した氷細工の製造方法に関するものである。」(第1頁左下欄11行〜15行)こと、
「立法体型の主型枠1の上面中央にかまくら模型Aの外形に対応する凹部2を穿設し、……凹部2の底部に方形の凹窪部5を穿設してこの凹窪部5より主型枠1の底面に貫通する軸孔6を穿設し、この軸孔6に軸杆7を上下動自在に挿着して上端には押し出し盤8を一体に固着して凹部2の下部に設けた凹窪部5に嵌合自在せしめ、……氷塊を粉砕して粒状のかき氷として主型枠1の凹部2内に密度を濃く詰め込んで固めた後、主型枠1より取り出す方法により構成する。」(第1頁左下欄18行〜右下欄14行)こと、
「本発明は上記のような方法によるものであるから、押し出し盤8を凹窪部5に嵌合位置せしめた状態に於て、通常市販されている氷塊を粉雪状のかき氷とし、このかき氷を主型枠1の凹部2内に所定量の3分の1から半分程度を詰め込んだ後に副型枠9をその凸面部11で主型枠1の切欠部3に装着し、この副型枠9によって限界される主型枠1の凹部2の空間にかき氷を詰め込んで十分の密度に固める。そこで主型枠1より副型枠9を取り外し、主型枠1を逆さにし、押し出し盤8を押圧すれば、所望のかまくら模型に固められた氷細工が主型枠1から取り出される。」(第2頁左上欄1行〜13行)こと、が図面とともに記載されている。
甲第17号証には、
「本発明は……標的の材料として氷片を用いてプレス成形するものである。」(第2頁左上欄6行〜9行)こと、
「先ず別位置(必要に応じて本発明装置に隣接して設けてもよい)に設置した製氷機(又は製氷された小塊状の氷のストッカーでもよい)から送り出された氷片を小型のクラッシャーでもって細氷片に破砕し、これを搬送管によって本発明装置まで搬送し、シュート(32)からプレスシリンダ(10)内に所要量投入する。この細氷片(a)の投入量は予めシュート(32)の手前に設けた計量器(たとえば回転式の計量升)によって所定量づつ計量してシュート(32)を介しシリンダ(10)に投入する」(第4頁左上欄16行〜右上欄5行)こと、
「細氷片(a)を受入れたプレスシリンダ(10)は1ピッチ回動変位する間に支持体(5)側の上型操作用パワーシリンダ(15)の作動で上型(14)が下降し、第8図に示す如く上型(14)はシリンダ(10)内に挿入され、また下型(11)も上昇方向にカム(4)によりカムローラ(13)を介して押上げられる。次いで次の1ピッチ回動する間にパワーシリンダ(15)による上型(14)とカム(4)によるカムローラ(13)を介しての下型(11)の押し上げで、プレスシリンダ(10)内に投入された細氷片(a)は上型(14)と下型(11)とによって上下両方が挟圧され、両型の圧縮力でもってその所要ストロークに見合った間隔寸法で所定の形状に成形される(第9図参照)。」(第4頁右上欄8行〜20行)こと、
「この作動時細氷片(a)は強力に圧縮されるにつれてその細片が結合する際加圧に伴なう摩擦と圧縮液化作用とにより一部溶融して、各細片が相互に結合して成形される」(第4頁右上欄20行〜左下欄3行)こと、が図面とともに記載されている。

4.対比
本件特許発明と、甲第1号証記載のものとを対比すると、甲第1号証記載の「型孔3'を有する型体」、「上ポンチ7」、「貫通孔」、「貫通孔に設けられ流体シリンダ8により昇降自在に設けられた下ポンチ9」は、その機能に照らして本件特許発明の「雌型」、「雄型」、「貫通孔」、「貫通孔に設けられ昇降駆動装置により昇降自在に設けられた押出し体」に相当する。また甲第1号証記載の「下ポンチ9の上昇により型体3から押し出された成形品を移送させるプッシャ-18」は、「成形品の搬出装置」である。してみると、上記両者は、
「雌型と、前記雌型に対向する雄型と、前記雌型の底部に形成された貫通孔と、前記貫通孔に設けられ昇降駆動装置により昇降自在に設けられた押出し体と、前記雌型の上方側部に排出口を臨んだ成形材料供給手段と、成形品の搬出装置とを具備し、前記成形材料供給手段は進退自在に設けられると共に、該成形材料供給手段の排出口が前記雌型の斜め上方に臨んで設けられる成形装置」の点で一致し、下記相違点(1)乃至(3)で相違している。
相違点(1)
本件特許発明では、成形材料供給手段が、シュートであるのに対し、甲第1号証記載のものでは、ノズルである点。
相違点(2)
本件特許発明では、成形品の搬出装置が、雌型の上方に設けられているのに対し、甲第1号証記載のものでは、成形品の搬出装置が「押出し体(下ポンチ9)の上昇により雌型(型体3)から押し出された成形品を搬出する」ものではあるが、該成形品の搬出装置が雌型の上方に設けられているのか否か明確でない点。
相違点(3)
本件特許発明では、成形装置が、氷成形装置であるのに対し、甲第1号証記載のものでは、粉体の成形装置である点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
成形材料供給手段として「シュート」と「ノズル」はいずれも周知のものであり、しかも甲第17号証には、「雌型と、前記雌型に対向する雄型と、プレスシリンダ(10)の上方側部に排出口を臨んだ氷片排出用のシュート(32)とを具備し、氷片排出用のシュート(32)を介しプレスシリンダ(10)内にクラッシャーで破砕した細氷片(a)を供給し、該細氷片(a)を雌型と雄型とで圧縮、成形する氷成形装置」、すなわち「雌型と雄型とで氷片を圧縮、成形して氷成形品を製造する氷成形装置において、成形材料供給手段として氷片排出用の「シュート」を用いること」が記載されており、成形材料供給手段としてシュート(すなわち、氷片排出用のシュート)を用いることは当業者が容易に想到し得ることである。
相違点(2)について
雌型と雄型とを用いて成形加工を行なうと共に押出し体により成形品を雌型内から突き上げ搬出するようにした成形装置において、搬出装置を雌型の上方(又は、上方側部)に設けることは従来周知である(例えば、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証 参照)ことから、甲第1号証の記載において、成形品の搬出装置を雌型の上方に設ける程度のことは当業者が容易に想到し得ることである。
相違点(3)について
甲第16号証記載の、「凹部2を穿設した主型枠1」、「主型枠1の底面に貫通する軸孔6」、「押し出し盤8」は、それぞれ本件特許発明の「雌型」、「雌型の底部に形成された貫通孔」、「押出し体」に相当する。したがって、甲第16号証には、「雌型と、雌型の底部に形成された貫通孔と、前記貫通孔に昇降自在に設けられた押出し体とを具備し、前記雌型に氷塊を粉砕した粒状のかき氷を詰め込んで氷成形品を製造する氷成形装置」が記載されている。
また甲第17号証には、上記したとおり「雌型と、前記雌型に対向する雄型と、プレスシリンダ(10)の上方側部に排出口を臨んだ氷片排出用のシュート(32)とを具備し、氷片排出用のシュート(32)を介しプレスシリンダ(10)内にクラッシャーで破砕した細氷片(a)を供給し、該細氷片(a)を雌型と雄型とで圧縮、成形する氷成形装置」が記載されている。
このように、「氷成形装置」は、本件特許の出願前公知のものであり、甲第1号証記載の「成形装置」を「氷成形装置」として用いることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、上記相違点を総合しても本件特許発明に格別の作用、効果あるものとも認められない。

6.むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第1号証、甲第16号証及び甲第17号証に記載の発明並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-29 
結審通知日 2001-04-13 
審決日 2001-04-24 
出願番号 特願平5-9453
審決分類 P 1 122・ 121- Z (F25C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩崎 晋内藤 真徳  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 原 慧
岡本 昌直
登録日 1996-07-25 
登録番号 特許第2540790号(P2540790)
発明の名称 氷成形装置  
代理人 梅田 明彦  
代理人 梅田 明彦  

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