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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1056351
審判番号 不服2000-4810  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-06 
確定日 2002-04-12 
事件の表示 平成10年特許願第185450号「局所清浄型空気清浄機」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 1月18日出願公開、特開2000- 18657]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成10年6月30日に特許出願したものであり、本願の請求項1乃至請求項9に係る発明は、明細書の特許請求の範囲請求項1乃至請求項9に記載された通りのものと認め、特に請求項1に係る発明は次の通りである。
「【請求項1】空気吸入口(1a)から吸入した空気を清浄化して空気吹き出し口(1b)から吐出する空気清浄機であって、空気吹き出し口(1b)から空気吹き出し方向に30cm以上、かつ150cm以下の所定距離だけ離れた位置を含む平面内における、吹き出し空気流の中心部分の汚れ度合いを吹き出し空気流の外部の汚れ度合いの1/7以下に設定することを特徴とする局所清浄型空気清浄機。」

なお、平成12年5月8日付けの手続補正は、当審において、本審決の起案と同日に、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものとして、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下された。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-42980号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、次の記載がある。
(1)従来技術及びその技術的課題として、図面と共に、次の記載がある。
a)「最近、小児喘息、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状の子供が増加している。文献等によるとこれらのアレルギー症状を引き起こす原因の8〜9割がダニによるとされており、乾燥して細かく粉砕されたダニの糞やダニの死骸(ダニアレルゲン)が空中に浮遊し、それらを体内に吸い込むことによって抗原抗体反応が起こり、アレルギー症状が引き起こされると考えられている。そしてダニは特に布団やじゅうたん等に繁殖し易いものであるので、ベッドや布団等の周辺局所の空気を清浄すればアレルギー症状を緩和することができると考えられる。そこでベッドや布団等の周辺局所に空気清浄器を設置することが行われている。」(段落【0002】参照)
b)「従来よりある空気清浄器は局所の空気のみを清浄化するように形成されておらず部屋全体の空気を清浄化するようになっていたので、汚染空気を吸引する吸込口と清浄空気を吐出する吐出口の位置関係、吸込口と吐出口の各開口面積の大きさ、吸引する汚染空気の風速や吐出する清浄空気の風速等は局所の空気のみを清浄化するようには形成されていなかった。」(段落【0003】参照)
c)「特に吸引する汚染空気の風速や吐出する清浄空気の風速は大きく設定されているので、人体への風当たりが強くなると共に雑音も大きくなり、非常に眠りにくいものであった。」(段落【0003】参照)

(2)空気清浄器の前提構成として、図面と共に、次の記載がある。
d)「空気清浄器Aは、吸込口1と吐出口2と粉塵を除去する集塵フィルター3を具備し、吸込口1から汚染空気4を吸引し、この汚染空気4を集塵フィルター3で清浄化し、清浄空気5を吐出口2から吐出して送風する手段を備えた空気清浄器」(段落【0005】参照)

(3)清浄範囲及び局所清浄に関し、図面と共に、次の記載がある。
e)「ベッド10の頭部付近に清浄空気5の空間を形成することができる。」(段落【0027】参照)
f)「図1に示すように空気清浄器Aの前方に人が寝ることによって、人の周辺に清浄空気5が吹き出されることになってきれいな空気の空間をつくり出すことができるものである。」(段落【0032】参照)
g)「就寝後は空気清浄器Aや空気清浄装置Bの風量を最小に運転してベッドや布団等の周辺局所の空気を清浄することができる。」(段落【0030】参照)
h)「ベッドの頭部付近に清浄空気の空間を形成することができるものである。(中略)空気清浄器と送風器との設置間隔に形成される清浄空気の空間をベッドの頭側端部から足側端部にまで広げることができるものである。」(段落【0079】【0080】参照)

3.対比
(1)本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)と刊行物1記載のものとを対比すると、刊行物1記載のものの「吸込口1」と「吐出口2」は、本願発明の「空気吸入口(1a)」と「空気吹き出し口(1b)」に相当すると共に、当該刊行物1の前提構成たる上記d)の記載は、本願発明の前提構成たる「空気吸入口(1a)から吸入した空気を清浄化して空気吹き出し口(lb)から吐出する空気清浄機」に相当するものと認められる。

(2)また、審判請求人は、その請求の理由において、本願発明は局所の空気を清浄化する局所清浄型空気清浄機に関するものであり、単に室内の空気を清浄化する空気清浄器に関する刊行物1とは異なる旨(平成12年5月8日付け手続補正書(方式)第2頁25〜27行)の主張をしているが、先にb)、e)〜h)で引用したように、「局所の空気の清浄化」との技術思想は、当該刊行物1に明示或いは明確に示唆されている。
したがって、かかる審判請求人の主張は採用できず、当該刊行物1記載のものも、本願発明と同様、空気吹き出し口の前方(空気吹き出し方向)所定範囲の空気の清浄度を高める「局所清浄型空気清浄機」であると認められる。

(3)更に、刊行物1の清浄空気の風速に関する上記i)〜j)の記載から、当該刊行物1には、人体への風当たりや雑音を小さくすべく、「吹き出し空気流の平均流速」を小さくするとの技術思想が記載されている。

(4)してみれば、上記刊行物1には、本願発明に照らして表現すると、「空気吸入口から吸入した空気を清浄化して空気吹き出し口から吐出する空気清浄機であって、空気吹き出し口から空気吹き出し方向の所定範囲における、吹き出し空気流の汚れ度合いを吹き出し空気流の外部の汚れ度合いより低くする局所清浄型空気清浄機」が記載されていると認められ、この点で本願発明と一致し、下記の点で本願発明と相違すると認められる。

相違点1:空気吹き出し方向の所定範囲に関し、本願発明が「空気吹き出し方向に30cm以上、かつ150cm以下の所定距離だけ離れた位置を含む平面内」とするのに対し、上記刊行物1には、文言上こうした具体的な記載がない点。

相違点2:空気清浄機としての空気浄化能力を、本願発明が「吹き出し空気流の中心部分の汚れ度合いを吹き出し空気流の外部の汚れ度合いの1/7以下に設定する」とするのに対し、上記刊行物1には、かかる空気浄化能力に関する具体的な数値の記載がない点。

4.判断
上記各相違点について、以下に検討する。
(1)相違点1について
本願発明が、空気吹き出し方向の所定範囲に関し、「空気吹き出し方向に30cm以上、かつ150cm以下の所定距離だけ離れた位置を含む平面内」とする根拠は、使用者に圧迫感を与えず、かつ、ベッドのほぼ全範囲をカバーすることをその根拠としている。
一方、当該刊行物1の図面(例えば第1図)における使用者の頭部端部が位置するところを見るに、本願発明と同様、使用者に圧迫感を与えない位置に空気清浄機が置かれ、加えて、上記b)、e)〜h)の「ベッドの頭部付近に清浄空気の空間を形成する」や「清浄空気の空間をベッドの頭側端部から足側端部にまで広げる」等の記載から、その清浄範囲は、頭部を中心にベッドのほぼ全範囲をカバーするものであり、これらの刊行物1の記載は、前段に示す相違点1における本願発明の根拠と同様のものと認められる。
このように、上記刊行物1に、相違点1における本願発明の根拠と同様の記載がある以上、上記刊行物1における空気清浄の所定範囲を、上記相違点1におけるように限定することに、格別の困難性を見いだせない。

(2)相違点2について
本願発明が前提とする空気清浄機技術分野において、かかる空気清浄機の空気浄化能力、即ち審判請求人の言葉を借りれば「除去効率」(平成12年5月8日付け手続補正書(方式)参照)は、既に本願出願時には99%を越えるものが一般的であると共に(要すれば、特開平8-24538号公報、特開平7-208779号公報、特開平8-296876号公報等参照)、機能上、その除去効率は高ければ高いほど有効であることは明らかである。
一方、本願発明が、その除去効率を「1/7以下に設定」(発明の詳細な説明によれば、「好ましくは1/1O」)するのは、単に「リビングルームの空気の汚れ度合い程度まで清浄化」することを、その数値根拠としているのであるが、かかる根拠はアレルギー患者にとって間接的な指標に過ぎず、アレルギー患者によっては、リビングルーム程度の汚れ度合いでは不十分であり、一層の除去効率が求められる場合も十分に予想されるところである。
このように、より高い数値が効果的であることが明らかな除去効率に関し、相違点2における本願発明以上の効率を達成する空気清浄機が既に一般的であることに加え、かかる本願発明の相違点2における数値限定が、単にリビングルームの空気の汚れ度合いを根拠とした間接的な指標に過ぎないことをも考慮すれば、かかる数値限定に何らの臨界的意義も認められない。
よって、かかる相違点2における本願発明を成すことに、格別の困難性が存したとは認められない。

(3)また、上記相違点1と相違点2とを総合して、本願発明を成した点にも、格別の点を見いだすことはできない。

5.むすび
以上の通り、本願発明は、出願時の技術常識を参酌すれば、上記刊行物1に記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-28 
結審通知日 2001-09-04 
審決日 2002-02-19 
出願番号 特願平10-185450
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水谷 万司小菅 一弘  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 岡本 昌直
井上 茂夫
発明の名称 局所清浄型空気清浄機  
代理人 津川 友士  

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