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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07F
管理番号 1056585
異議申立番号 異議2000-73297  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-28 
確定日 2002-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3014129号「IDカード発行システム」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3014129号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3014129号(以下、「本件特許」という。)の請求項1乃至10に係る発明についての出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成2年8月16日(優先日:平成1年8月23日、出願番号:特願平1-217117号)の特許出願であって、平成11年12月17日に設定登録され、その後、坂本陽より特許異議申立がなされ、取消理由が通知された後、平成13年4月24日付けで指定期間内に訂正請求がなされ、再度取消理由が通知された後、平成13年4月24日付けの訂正請求が取り下げられ、平成13年11月6日付けで指定期間内に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲請求項1の「顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」を、「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」と訂正する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲請求項1の「カード基材上に」を「依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに」と訂正する。

(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲請求項2を削除する。

(エ)訂正事項4
特許請求の範囲請求項5に記載の「磁気情報読み取り装置、または」を削除する。

(オ)訂正事項5
発明の詳細な説明の「課題を解決するための手段」において、
「顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」を、「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」と、
「カード基材上に」を「依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1は、「顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」を、「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙」から読取るように限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項2は、「カード」を、「依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カード」に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項3は、請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項4は、請求項3の「磁気情報読み取り装置、または光学情報読み取り装置」の択一的記載を「光学情報読み取り装置」に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮に伴い訂正するために、訂正後の請求項1に記載された事項を、「課題を解決するための手段」に記載したもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1乃至5は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)特許異議の申立ての概要
特許異議申立人坂本陽は、下記の甲第1号証乃至甲第4号証を提出して、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、請求項2乃至10に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものであるので、特許を取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:特開昭63-295296号公報
甲第2号証:特開平1-206098号公報
甲第3号証:特開平1-116877号公報
甲第4号証:特開昭62-220395号公報

(2)本件発明
本件特許の請求項1乃至9に係る発明(以下、「本件第1発明乃至本件第9発明」という。)は、平成13年11月6日付けの訂正請求書により訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された次のとおりのものと認める。
「請求項1
カード基材上に複数の異なる情報を形成するシステムであって、依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報を読み取る読取手段と、前記対応付けコード化情報が割りつけられた個人属性情報を入力する入力手段と、顔写真と個人属性情報間の対応付けを行う対応付け手段と、対応付けした顔写真と個人属性情報の配置を決定するためのレイアウト手段と、レイアウトされた顔写真と個人属性情報を依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに出力する出力手段とを備えたことを特徴とするIDカード発行システム。
請求項2
前記読取手段は、平面走査型画像読取手段またはカメラであることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
請求項3
前記読取手段は、必要な領域をクロッピングする機能を有することを特徴とする請求項2記載のIDカード発行システム。
請求項4
前記読取手段は、光学情報読み取り装置であることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
請求項5
前記対応付け情報がバーコードであり、画像情報とともに同時に入力されることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
請求項6
前記出力手段は、昇華転写及び/または溶融転写プリンタからなることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
請求項7
カード基材上に形成された情報上の一部または全部に保護層を転写する保護層転写手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
請求項8
保護層の転写は、サーマルヘッドを用いて行うことを特徴とする請求項7記載のIDカード発行システム。
請求項9
さらにエンボス/エンコード手段を備え、対応付けコード化情報に基づき情報間のマッチングをとってエンボス/エンコード加工することを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。」

(3)刊行物
これに対して、当審が平成13年8月27日付けで通知した取消理由に引用され、本件特許出願の優先権主張の日前の昭和63年12月1日に頒布された刊行物である特開昭63-295296号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証。以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「本発明を用いて作成されたIDカードの一例を示す第5図において、IDカード2は厚手のシート材からなる台紙3と、この台紙3と一体にラミネートされた表示シート4とからなる。表示シート4としては、100〜160μ程度の薄手のカラー印画紙が用いられ、そのプリント面に人物画像5と、氏名や生年月日、社員番号等の個人データを表す文字画像6と、装飾枠、社標、罫線等の図形画像7とがプリントされている。これらの画像5,6,7は、コンピュータによって合成(レイアウト)され、プリント用CRTに表示された合成画像を三色面順次露光によりカラー印画紙に焼き付け、これを現像処理して作成される。」(第2頁右下欄12〜第3頁左上欄4行)
(イ)「フロッピィディスク29の個人データは、IDカード2の作成対象となる人物の社員リスト票などに基づき、予めキーボードなどを用いて書き込まれ、この書き込み時には個人ごとに割り当てれられた識別コード14のデータも付与される。」(第3頁左下欄6〜11行)
(ウ)「上記のように構成された画像合成装置の作用とともに、IDカード2の作成手順について説明する。
まず、第2図に示したようにIDカード作成対象者の顔写真を、表示器11及びグレイチャート15とともに順次に撮影する。キーボード13は、撮影対象となる人物が変わるごとに操作され、その人物特有の識別コード14が表示器11に表示される。撮影後のフィルムを現像処理することによって、第3図のように顔写真、識別コード14、グレイチャート15が同一コマ内に撮影されたフィルム10が得られる。そして、フィルム10をオートネガキャリア20にセットし、キーボード50からスタート入力を行うことによって画像合成が開始される。
オートネガキャリア20のアパーチュア位置に位置決めされたフィルムコマの画像は、TVカメラ21で撮像され、TVカメラ21からの出力信号は画像処理部22でデジタル信号に変換される。また、ディスク装置26はフロッピィディスク28に記録されている図形画像7のデータを読み取り、これをコントローラ24に入力する。コントローラ24はディスク装置26からのデータを画像合成部23に人力する。画像合成部23は人物画像5’と図形画像7のそれぞれを予め決められたフォーマットにしたがって合成し、合成された画像はモニタ用CRT33に表示される。こうしてモニタ用CRT33に表示される画像は、人物画像5’と図形画像7とが組み合わされた合成画像となる。
また、TVカメラ21からの信号は、画像信号処理部22によりデジタル化された後、パターン識別部37によって識別コード14を表すコード信号に変換され、これがディスク装置27に出力される。ディスク装置27はこのコード信号をインデックスとし、多人数の個人データを各々の識別コードとともに記録したフロッピィディスク29内から、該当する個人データを検索する。
識別コード14に基づいて検索された個人データは、コントローラ24によって文字画像6の表示信号として画像合成部23に供給される。そして画像合成部23は、前述した人物画像5’、図形画像7に加え、この個人データに関する文字画像6もモニタ用CRT33に表示し、第4図に示した表示画像が得られる。また、グレイチャート判定部38及び補正部39は、グレイチャ一ト15の画像が基準濃度、基準のグレイ色相になるようにCRTコントローラ30を制御する。したがって人物画像5’は、ほぼ一定の条件で表示されるようになる。
こうして個人データの文字画像6も含めた画像合成が行われると、コントローラ24はCRTコントローラ30にプリント信号を出力する。これによりCRTコントローラ30は、プリント用CRT32を表示駆動する。プリント用CRT32は、青色合成画像、緑色合成画像、赤色合成画像の各々の画像を順次モノクロで表示してゆく。この表示過程で、コントローラ24からプリント装置40に制御信号が出力される。そして、青色フィルタ42、緑色フィルタ43、赤色フィルタ44、さらにシャッタ45が、プリント用CRT32の表示に同期して順次にプリント光路内に挿脱され、カラー印画紙46には三色面順次露光によってカラープリントが行われる。
なお、プリント用CRT32に表示される人物画像は、マスク処理を施すによって第4図の人物画像5’の中の破線部より下の部分は削除される。したがってカラー印画紙46には、第5図に示した表示シート4の画像に対応した潜像が形成されることになる。」(第4頁右上欄3行〜第5頁左上欄12行)
(エ)「以後は、上述した処理を繰り返してゆくことによって、フィルム10に撮影された顔写真をもとに、人物画像5、文字画像6、図形画像7からなる画像を、カラー印画紙46に自動的に焼き付けてゆくことができる。
こうして焼き付けが終了した力ラー印画紙46を現像処理すれば、第5図に示した表示シート4が得られる。なお、プリント装置40の代わりに、プリント部と現像処理部とをもったプリンタプロセサーを使用することによって、TVカメラ21の撮像以降、人為的に手を加えることなく表示シート4を作成してゆくことができる。そして、作成された表示シート4を台紙3と重ね合わせ、これらを一体にラミネートすることによって、IDカード2が完成するものである。」(第5頁右上欄1〜15行)
そして、前記(ア)乃至(エ)の記載、及び図面からみて、刊行物1には、次のものが記載されていると認められる。
「IDカードの台紙上に複数の異なる情報を形成するシステムであって、顔写真と顔写真に割りつけられた識別コードが形成されたフィルムから顔写真と顔写真に割りつけられた識別コードを読み取るTVカメラと、前記識別コードが割りつけられた個人データを入力するキーボードと、顔写真と個人データ間の対応付けを行うパターン識別部及びディスク装置と、対応付けした顔写真と個人データの配置を決定するための画像合成部と、レイアウトされた顔写真と個人データを表示シート上に出力するプリンタプロセサーとを備えたIDカード発行システム。」

また、同じく、当審が平成13年8月27日付けで通知した取消理由に引用され、本件特許出願の優先権主張の日前の平成1年5月9日に頒布された刊行物である特開平1-116877号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証。以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(オ)「次に、申請者から送付されてきた申請書に基づき処理される場合の免許証の発行について説明する。すなわち、まず、免許証用写真が添付された申請書が送られてくると、係員は申請書をOCRスキャナ11にセットし、読取りを行なわせる。
これにより、OCRスキャナ11はその申請書のイメージデータ(2値画像)を読取るとともに、申請書上の免許証番号を解読(判読)し、システムコントローラ18に出力する。システムコントローラ18は、供給されるイメージデータを一旦磁気ディスク21aに記憶保存し、免許証番号を図示しないメモリに記憶する。
次に、照合について説明する。すなわち、まず上記免許証番号を検索キーとして光ディスクオートチェンジャ22内の光ディスク1、…から対応する顔写真の画像データを読出し、伸長処理等の画像処理を施した後、漢字入力端末機12のCRTディスプレイ12bで表示される。
これにより、係員は、CRTディスプレイ12bで表示される顔写真と申請書上の顔写真が一致するか否かの照合を行なう。この照合により、一致しなかった場合、発行処理を行なわず、一致した場合、キーボード12aにより、一致を指示する。
この一致の指示は、システムコントローラ18に供給される。すると、システムコントローラ18は、関連データの要求信号と免許証番号とをホストCPU23に出力する。これにより、ホストCPU23は、免許証番号に対応する関連データたとえば住所、氏名、免許の種類等を図示しないメモリから読出し、システムコントローラ18へ出力する。システムコントローラ18はその受信データを漢字入力端末機12のCRTディスプレイ12bで表示する.
これにより、係員は、CRTディスプレイ12bで表示される表示データと申請書の記憶内容とが一致するかの照合を行なう。すなわち、住所、氏名、免許の種類等の照合を行なう。この照合により、一致しなかった場合、つまり記憶内容に間違いがあれば電話等で本人の確認をとって、キーボード12aで修正し、一致した場合、キーボード12aにより、免許証の作成を指示する。
この免許証の作成の指示は、システムコントローラ18に供給される。すると、システムコントローラ18は、上記関連データ(修正済み)に対応する文字パターン等を用いて免許データつまり住所、氏名、免許の種類等からなる印刷データを作成し、合成部30に出力する。
このとき、システムコントローラ18は、属性情報発生部31から発生される固定の画像パターン等を合成部30に出力している。
また、係員は上記申請書上の写真を静止画像としてCCDカメラ14で撮影する。すると、CCDカメラ14はその撮影した顔写真に対応するカラーの画像信号を合成部30へ出力する。これにより、合成部30は上記各パターンデータ、および画像信号を対応する位置に合成し、この合成した結果を電子プリンタ32で免許証の用紙上にプリントアウトする。このプリントアウトした免許証をシール処理した後、申請者に渡される。」(第5頁左上欄16行〜同右下欄15行)

また、同じく、当審が平成13年8月27日付けで通知した取消理由に引用され、本件特許出願の優先権主張の日前の昭和62年9月28日に頒布された刊行物である特開昭62-220395号公報(特許異議申立人が提出した甲第4号証。以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(カ)「第1図は本発明のカード類のー実施例を示すものであり、カード基材2の一部に受像層3、筆記性層4、エンボスされた文字5、印刷6、磁気ストライプ7を有しており、図示しないが裏面にも印刷6を有してカード類1を構成している。
第2図〜第4図はカード類1の断面構造を示し、特に、受像層3をカード基材に設ける設け方を示す。第2図においては、受像層3はカード基材2に直接、設けられており、第3図においては接着剤8を介して設けられている。又、第4図においては受像層3は中間層9を介して設けられており、カード基材2と中間層9の間、もしくは中間層9と受像層3の間は図示しないが、必要に応じ、接着剤を介在させてもよい。
カード基材2の材質としては、現行の磁気カード等に使用されているものがそのまま使用でき、例えばポリ塩化ビニル樹脂シートが適しており、この他、ポリスチレン樹脂シート、ポリオレフィン樹脂シート(ポリエチレン樹脂シート、ポリプロピレン樹脂シート等)、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート等のプラスチックシート、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系など)もしくは天然紙、金属シート、又は、これらの任意の2種以上の積層シートが使用できる。
厚みとしては、通常0.5mm〜1mm程度である。受像層3を構成する材質は、熱転写シートから移行する染料、例えは昇華性の分散染料を受容し、受容により形成された画像を維持するためのものである。」(第2頁右上欄8行〜同頁左下欄18行)
(キ)「以上の説明においては、カード基材上の受像層はむき出しにされており、且つ、カード基材から突き出している。しかし、実際の使用上、受像層は画像形成後、更に保護層で被覆することが望ましく、カード全体を見たときに受像層が突き出していない方が好ましい。
1つの好ましい態様としては、所定の厚みのカード基材の一部に受像層を形成し、その後、受像層形成面をプレスすることにより、受像層表面をカード基材の表面と同レベルにして受像層の突き出しを防止することが挙げられる。この態様においては、画像を形成した後、受像層を含むカード基材全面に、あるいは受像層上(受像層より多少大き目でもよい)に保護の目的で透明合成樹脂のフィルムを貼り付けるか、あるいは透明合成樹脂染料を塗布する等するとよい。
別の好ましい態様としては、例えば0.56mm厚のコア(芯)シート上に受像層、筆記性付与層(もしくは印刷性付与層)を設けておき、画像を受像層に形成し、筆記性付与層に筆記もしくは印刷し、その後、表裏両面の全面に例えば0.1mm厚の透明なオーバーシートを重ねて、熱融着法もしくは接着剤を用いたラミネート法によりラミネートすることが挙げられる。表側のオーバーシート、コアシート、裏側のオーバーシートの3枚は予め、一部を接着しておくと、3者が分離せず、又、貼り合わせの際に揃える必要がない。この態様においては、コアシートへの印刷、オーバーシートへの磁気層貼着等は従来の磁気カードの製造工程をほとんどそのまま利用できる利点を有している。
本発明のカード類は、昇華性の分散染料で代表されるような、熱により溶融、昇華もしくは移行する染料を合成樹脂中に溶解あるいは分散してなる転写層をシアン、マゼンタ、イエローの各色を塗り分けてポリエステルフィルム等に設け、反対側にサーマルヘッド走行性を確保するためのスリップ層(滑り層)を設けた熱転写シートと組み合わせてサーマルヘッドで加熱することにより、受像層上に画像を形成することができる。
一例として、所有者の顔写真を受像層に形成するときは、ビデオカメラで撮影して得られた像情報をー旦メモリーに記憶させ、次いでこの記憶された記号をR、G、B信号、更にはC、M、Y信号に変換し、必要に応じ補正を行なった後に、サーマルへッドに出力し、熱転写シートの転写層各色区域毎に対応する分色記号により加熱印字し、各色を重ね合わせることによりカラ写真調の画像を形成することができる。」(第6頁右上欄17行〜第7頁左上欄7行)

また、同じく、当審が平成13年8月27日付けで通知した取消理由に引用され、本件特許出願の優先権主張の日前の平成1年8月18日に頒布された刊行物である特開平1-206098号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証。以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ク)「本発明は、IDカード作成システムに関し、更に詳しくは、各種免許証等のIDカードを作成するIDカード作成システムに関する。」(第1頁左下欄20行〜同右下欄2行)
(ケ)「免許証番号と対応するバーコードを記録しておき、これをOCR装置に代わるバーコードリーダで読み取っても良い。」(第4頁左下欄13〜15行)

また、同じく、当審が平成13年8月27日付けで通知した取消理由に引用され、本件特許出願の優先権主張の日前の平成1年5月19日に頒布された刊行物である特開平1-127379号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(コ)「この熱転写型のプリンターには、熱昇華性の染料を色材として用いる昇華型と、熱溶融性の結着剤及び色材として顔料を用いた溶融型がある。」(第1頁右下欄7〜9行)
(サ)「第2図は、第1図に示す転写シートの特に保護層部(4)の断面図を示す。図中、(6)は離型層、(7)は保護層を示し、保護層(7)は転写シート基体面上の離型層(6)の上に塗布形成されている。」(第3頁左上欄9〜13行)
(シ)「保護層部(4)を形成する保護層(7)は、被転写シート上で記録された画像からの昇華性染料の再昇華を妨げ、かつ、耐光性に対して効果のある樹脂及び添加剤から成る。樹脂としては、サーマルヘッドにて熱エネルギーを基体の反対面より与えられたとき、軟化溶融して速やかに離型層(6)から層状のまま剥離し、そして被転写シート上にサーマルヘッドとプラテンの間の押圧と該熱エネルギーによって転写し、接着するものが選ばれる。」(第3頁右上欄19行〜同左下欄8行)
(ス)「本発明の熱転写シートは、サーマルヘッド熱転写プリンタによって、まず(1)のイエロー画像を転写され、順次(2)マゼンタ、(3)シアンと重ねて転写されてカラー画像が記録される。以上のような画像記録に続けて、熱転写シートの保護層(4)が被転写シート上に転写されて、記録画像の保護層(4)を形成する。」(第3頁右下欄17行〜第4頁左上欄3行)

(4)本件第1発明について
そこで、本件第1発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「IDカードの台紙」、「識別コード」、「TVカメラ」、「個人データ」、「キーボード」、「パターン識別部及びディスク装置」、「画像合成部」は、それぞれ請求項1に係る発明の「カード基材」、「対応付けコード化情報」、「読取手段」、「個人属性情報」、「入力手段」、「対応付け手段」、「レイアウト手段」に相当すると認められるから、両者は、
「カード基材上に複数の異なる情報を形成するシステムであって、顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報を読み取る読取手段と、前記対応付けコード化情報が割りつけられた個人属性情報を入力する入力手段と、顔写真と個人属性情報間の対応付けを行う対応付け手段と、対応付けした顔写真と個人属性情報の配置を決定するためのレイアウト手段とを備えたIDカード発行システム。」で一致し、次の点で相違する。

・相違点1
本件第1発明は、「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙」から、顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報を読み取るのに対し、刊行物1に記載されたものは、顔写真と顔写真に割りつけられた識別コードが形成されたフィルムから顔写真と顔写真に割りつけられた識別コードを読み取る点。

・相違点2
本件第1発明は、レイアウトされた顔写真と個人属性情報を依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに出力する出力手段を有するのに対して、刊行物1に記載された発明は、顔写真と個人属性情報を表示シート上に出力した後、作成された表示シートを台紙と重ね合わせ、これらを一体にラミネートすることによって、IDカードが完成するものである点。

そこで、上記相違点1及び2について検討する。
前記3.(3)(オ)で示したように、刊行物2には、申請書に添付した顔写真を、CCDカメラにより読み取り、その静止画像を免許証の発行に利用することが記載されているものの、刊行物2には、依頼主からのファイルを基にして顔写真と対応づけるためのコードを取り出した上、そのコードを台紙に印字し、その台紙から、添付された顔写真とコードを読みとることが記載されているとは認められず、また示唆もされていない。
よって、「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙」から、添付された顔写真と対応付けコード化情報を読み取ることは、刊行物2に記載されておらず、またこの構成が刊行物2の記載から容易に想到できるとも認められない。
さらに、上記3.(3)に示すように、刊行物3乃至5にも、上記構成が記載されておらず、またこの構成が刊行物3乃至5の記載から容易に想到できるとも認められない。
したがって、他の相違点2について検討するまでもなく、本件第1発明が、刊行物1乃至5、すなわち甲第1号証乃至甲第4号証並びに刊行物5に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

(5)本件第2発明乃至本件第9発明について
請求項2,4-7,9は、それぞれ請求項1を引用する請求項であり、また、請求項3,8も、請求項1を引用する請求項2,7をそれぞれ引用する請求項であるから、本件第2発明乃至本件第9発明は、本件第1発明に係る各構成を備えるから、本件第2発明乃至本件第9発明は、それぞれ刊行物1に記載された発明と対比すると、少なくとも上記相違点1及び2で相違する。そのうち上記相違点1については、上記3.(4)で検討したように、刊行物1乃至5に記載されておらず、又これらの刊行物から容易に想到することができるとも認められない。
したがって、本件第2発明乃至本件第9発明は、刊行物1乃至5、すなわち甲第1号証乃至甲第4号証並びに刊行物5に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件第1発明乃至本件第9発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件第1発明乃至本件第9発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件第1発明乃至本件第9発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願にされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
IDカード発行システム
(57)【特許請求の範囲】
(1)カード基材上に複数の異なる情報を形成するシステムであって、依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報を読み取る読取手段と、前記対応付けコード化情報が割りつけられた個人属性情報を入力する入力手段と、顔写真と個人属性情報間の対応付けを行う対応付け手段と、対応付けした顔写真と個人属性情報の配置を決定するためのレイアウト手段と、レイアウトされた顔写真と個人属性情報を依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに出力する出力手段とを備えたことを特徴とするIDカード発行システム。
(2)前記読取手段は、平面走査型画像読取手段またはカメラであることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
(3)前記読取手段は、必要な領域をクロッピングする機能を有することを特徴とする請求項2記載のIDカード発行システム。
(4)前記読取手段は、光学情報読み取り装置であることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
(5)前記対応付け情報がバーコードであり、画像情報とともに同時に入力されることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
(6)前記出力手段は、昇華転写及び/または溶融転写プリンタからなることを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
(7)カード基材上に形成された情報上の一部または全部に保護層を転写する保護層転写手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
(8)保護層の転写は、サーマルヘッドを用いて行うことを特徴とする請求項7記載のIDカード発行システム。
(9)さらにエンボス/エンコード手段を備え、対応付けコード化情報に基づき情報間のマッチングをとってエンボス/エンコード加工することを特徴とする請求項1記載のIDカード発行システム。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明はフルカラー画像も印刷することができ、スムーズなカード発行を行うことが可能なIDカード発行システムに関するものである。
〔従来の技術〕
従来、さまざまなIDカードが発行されて各方面で利用されているが、カード類は金銭の処理と密接な関係があるために、カード使用における安全性の向上が不可欠である。そのため、種々な対策、例えばユーザ本人確認のための暗証番号システムの採用、指紋の確認、顔写真の導入等が考えられている。これらの中で顔写真の導入がヒューマンインターフェースやコストの点で優れており、顔写真を埋め込んだIDカードが作成されているが、手作業を伴って作成に時間がかかると言う問題があった。
この対策として、従来、以下のような提案がなされている。
▲1▼ビデオカメラで人物画像を撮影し、さらに名前等の記号を撮影し、これらを画像合成してビデオプリンタで記録することにより人物画像と名前等を記録したIDカードを作成する(特開昭63-71399号公報)。
▲2▼カードの一部にポリエステル樹脂と熱硬化性樹脂とを含む1層構成の染料記録層を設け、この染料記録層に対して複数色の熱移行性染料を順次塗布して形成した染料層を有するインクフィルムをサーマルヘッドで加熱圧着することによりフルカラー画像をカードに記録する(特開昭64-4368号公報)。
▲3▼転写フィルムが昇華転写フィルムか溶融転写フィルムかを判別し、転写フィルムの種類に応じてサーマルヘッドによるエネルギ印加量を制御して1台の記録装置で昇華染料と溶融インクとによる記録が行えるようにする(特開昭63-296966号公報)。
〔発明が解決すべき課題〕
しかしながら、▲1▼では白黒画像を対象としており、近年高まっている顔写真をフルカラーにしたいという要請には応えられなかった。また、▲2▼ではカラー化は可能であるが、単にカラー化を行うことを開示しているのみで、IDカードをカラー化する場合、顔写真はフルカラー、名前等の記号は白黒画像というように、IDカード作成に際しての極め細かい対応はできなかった。さらに▲3▼では、1台の記録装置を用いて階調表現に適した昇華転写と、白黒表現に適した溶融転写を行うことを開示しているのみで、IDカードのような1つの対象物への具体的適用方法は開示されておらず、その実現は困難であった。
さらに、顔写真のような画像データと、各個人の属性データとが大量に存在する場合に、これらを各個人毎に正確にドッキングさせ、かつ能率的にプリントアウトしてIDカードを発行できることが望ましいが、現状においてはそのような技術は開発されていない。
本発明は上記課題を解決するためのもので、複数の異なる情報を互いに対応付け可能にして入力し、対応付けした情報をレイアウト処理することにより、正確に複数の情報をマッチングさせ、かつ量産性よく、フルカラーの画像も記録できるIDカード発行システムを提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
そのために、本発明のIDカード発行システムは、カード基材上に複数の異なる情報を形成するシステムであって、依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報を読み取る読取手段と、前記対応付けコード化情報が割りつけられた個人属性情報を入力する入力手段と、顔写真と個人属性情報間の対応付けを行う対応付け手段と、対応付けした顔写真と個人属性情報の配置を決定するためのレイアウト手段と、レイアウトされた顔写真と個人属性情報を依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
〔作用〕
本発明は、複数の異なる情報、例えばフルカラー写真画像情報や、名前、生年月日等の属性情報をそれぞれバーコードのような対応付け情報を割り付けて入力し、入力したそれぞれの情報を対応付け情報を参照してマッチングをとり、対応付けした情報を、別途作製したレイアウト情報を参照してその配置を決定し、カード基材上にプリントアウトすることにより、正確に、かつ能率良くスムーズに品質のよいIDカードを作製することができる。
〔実施例〕
以下、実施例を図面を参照して説明する。
第1図は本発明のIDカード発行システムの構成を示す図、第2図はデータ構造を示す図、第3図は貼り込み台紙の作成を説明するための図、第4図はレイアウト処理を説明するための図、第5図、第6図は転写フィルムの構成を示す図、第7図はプリンタの構成を説明するための図である。図中、1はCCDスキャナ、2はカメラ、3は画像処理制御装置、4は磁気テープ、5は画像用メモリ、6はフロッピーディスク、7は駆動装置、8はプリンタ、11、14はIDカード、12はエンボスエンコーダ、13は磁気テープ、21は転写フィルム、31〜35はヘッド、36はカード、37は搬送台である。
第1図において、例えば個人の名前、社員番号、住所、電話番号等の属性データをキーボードにより直接入力するか、或いは属性データがフロッピー、磁気テープ等に記憶されている場合は記憶データを読み込むことにより入力するとともに、各個人毎のデータにはそれぞれ対応付け情報(個人を特定する番号)を割り付けて第2図(a)に示すような属性データからなるファイルを作成し、必要に応じて磁気テープ4、画像用メモリ5、フロッピーディスク6に記憶させておく。画像用メモリ5は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどの大容量記憶装置からなるものである。このようにすれば必要に応じて再利用することが可能である。
一方、例えば熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ等を用い、第3図(a)に示すように各個人に割り付けた前述の対応付け情報をバーコード化して普通紙にバーコード16を印字し、写真貼付領域を形成した写真貼り込み台紙15を作成する。
なお、上記対応付け情報に対応するパターンは、上記バーコードに限られるものではなく、OCR(Optical Character Reader)、OMR(Optical Mark Reader)等の機械読み取り可能なパターンであればなんでもよい。
次に、第3図(b)に示すように写真18を貼った台紙15を第1図の平面走査型画像入力装置であるCCDスキャナ1、或いはテレビカメラ、電子スチルカメラ等のカメラ2で撮影して印字してあるバーコードとともに写真情報を入力する。この場合、写真の特定範囲を撮影して取り込むようにするが、写真情報のうち人物像の中心線を求める機能、人物像の最頂点を求める機能、添付された人物像の下縁を求める機能等が備えられ、人物の中心線より左右のクロッピング位置を求めることで自動的にクロッピング位置を決定することができるようにしてもよい。また、バーコードは写真撮影とともに読み込まずに、別途専用のバーコード読み取り装置により読み込むようにしてもよい。読み込んだイメージデータ及びバーコードは、第2図(b)に示すように、属性データと同様にデータファイル化して記憶させ、再利用可能にしておく。
なお、手書きのサインは筆圧によって濃度が異なるので階調を有する画像であり、必要に応じて写真画像と同様にイメージデータとして取り込むようにしてもよい。さらに、ロゴマークなどもイメージデータとして取り込んでもよい。
また、写真画像データの取り込みは、写真台紙に貼付されたものに限らず、直接本人を撮影したデータをそのまま取り込むようにすることも可能であり、もちろん複数の撮影装置を通してデータを取り込むことも可能である。さらに写真画像撮影装置をシステムから切り離し、遠隔地で撮影して光ディスク等にイメージデータを格納し、ディスクからシステムへ読み込むようにすることも可能である。
そして、第2図(a)に示す属性データファイルから各個人の名前、社員番号等のコード情報を読み出し、また第2図(b)に示す写真画像データファイルから写真情報を読み出すとともに、属性データと写真画像データに割り付けられた対応付け情報を突き合わせることによりコード情報と写真情報とをマッチングさせて両者の対応付けを行う。
この対応付けは同じ対応付け情報の属性データとイメージデータとを読み出して結合すればよいので、対応付けは任意の順序で行うことができ、また一人であっても、複数であっても柔軟に対応することができるとともに、同一対応付け情報のデータを結合するので、正確に、かつ大量のデータであっても能率よく処理することが可能である。対応付けしたイメージデータと属性データのセットは、適宜光ディスク等に記憶させてデータファイル化し、再利用可能にしておく。
次に、どのような配置によって文字や写真をカードへプリントアウトするかのレイアウト処理を行う。
このレイアウト処理は、例えば第4図(a)に示すようなレイアウト情報を参照して行われる。すなわち、項目A、項目Bが文字であり、項目aが手書きのサイン、項目bが写真画像であるとすると、それぞれ位置情報(X,Y)、サイズ(たて,よこ)がそれぞれ設定され、また文字データについては文字種、文字サイズ、文字間隔が設定され、これらの設定値に基づいて、例えば第4図(b)に示すようなレイアウトが決定される。
レイアウトが決まると、次に、写真画像データと属性データとを、別途用意した生カードにプリントアウトするが、この際、写真や手書きのサインのような階調画像は昇華転写方式とし、名前、バーコード等の非階調画像は溶融転写方式とすれば、それぞれの転写方式の特性を活かしたプリントアウトを行うことができる。すなわち、バーコードリーダやOCR装置は赤外線を用いて情報の検出を行うので、バーコードや文字情報は赤外線吸収を生ずることが必要であり、階調画像の記録には熱エネルギに応じて濃度が滑らかに変化する昇華転写方式が適しているが、染料を用いるので赤外線吸収特性が小さく、溶融転写方式は2値表現であるが、顔料を使用するので赤外線吸収特性が得られる。そこで、写真のような階調画像は昇華転写方式とすることにより目視に適した記録を行い、名前、バーコード等の非階調画像は溶融転写方式とすることにより機械読取りに適した記録を行うことができる。なお、バーコードリーダやOCR装置が染料に対しても感度を有するものであれば昇華転写方式のみでプリントアウトすれば、装置を簡素化することができる。また、昇華染料層中に赤外線吸収染料を添加することより、OCRセンサの検出感度を向上させることやOCRセンサの波長域の選択範囲を広げることが可能である。前記赤外線吸収染料としては、例えばアゾ系、ノナシアニン系、スタアリン系の染料が挙げられる。もちろん、必要に応じて溶融転写方式のみでプリントアウトするようにしてもよい。
なお、大量にカード発行するような場合には、複数のプリンタを設置してプリントアウトするようにしてもよく、その場合、すべて昇華転写方式のプリンタ、あるいはイメージ情報に対しては昇華転写方式、コード情報に対しては溶融転写方式を採用したプリンタというような構成にしてもよい。
また、画像処理により写真情報の拡大、縮小等を行って記録することも可能である。
本発明において使用する転写フィルムは、例えば第5図に示すように昇華転写用インク領域Y、M、Cと溶融転写用インク領域Bkをもつ面順次構成の転写フィルム21である。ただし、第5図では転写フィルムの溶融インク領域に層状にオーバープリント(OP)層を設けており、これを用いてコード情報記録部に保護膜を設ける例を示しているが、第6図に示すように、別途OP層を単独に設けてカード全面、或いはイメージ情報(写真)領域、コード情報領域等、適宜必要な領域に保護膜を形成するようにしてもよい。イメージ情報もコード情報も昇華転写方式で転写する場合には、溶融転写用Bkの代わりに昇華転写用Bkを使用することになる。
記録は量産型の場合には、第7図(a)に示すように、搬送台37上を搬送されてくるカード36を4ヘッド或いは5ヘッドのマルチヘッド構成により昇華転写方式、或いは溶融転写方式で記録する。この場合、転写フィルムはY、M、C、Bk、OPの各独立したヘッド31〜35で行う。スピードは4秒/枚程度であり、ヘッドは12本/mmである。なお、OPは別のプリンタで記録するようにしてもよい。
また、簡易型の場合、第7図(b)に示すように、1本のヘッド41でY、M、C、Bkを印字し、他のヘッド42でOPを転写する。スピードは8〜12秒/枚、ヘッドは12本/mmで搬送台37が往復することによりY、M、C、Bkを順次印字する。この場合も、OPは別のプリンタで転写するようにしてもよい。
また、第7図(c)に示すように1本のヘッド43でY、M、C、Bk、OPを転写するようにしてもよい。
第8図(a)は昇華転写方式における転写機構を示している。
転写フィルム21は、耐熱滑性層21a、転写ベース材21b、昇華転写層21cを、塗工材の基材への接着を良くするためにプライマを介在させて積層したものである。なお、易接着処理を施したフィルムでも良い。耐熱滑性層21aとしては、ポリビニールブチラール、ポリイソシアネート、りん酸エステルの混合物、転写ベース材21bとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等、昇華転写層21cとしては、インドアニリン系、ピラゾロン系、アゾ系等の昇華性染料、ポリビニールアセタール、セルロース系等のバインダーからなっている。
また受像紙22は、受像層22b、受像紙ベース材22aをプライマを介在させて積層したもので、受像層22bは飽和ポリエステル、塩化ビニール等、ベース材22aは合成紙、発泡ポリエステル、発泡ポリプロピレン等、裏面層はバインダ、滑剤、塗工剤等からそれぞれなっている。
また、塩化ビニル樹脂自身を受容層としても良い。
プラテンロール23の周囲には受像紙23が巻きつけられ、これに転写フィルム21が密着した状態で重ねられ、サーマルヘッド24を転写フィルム21の背面に当接して加熱することにより、昇華転写染料を加熱移行させ、受像層22bに付着させて染めつける。昇華転写装置は、加えた熱量だけ染料が受像層へ移行するので、各画素ドット毎に熱量に応じた階調の記録ができる。
溶融型感熱転写は、第8図(b)に示すように、ゴムロール23と転写フィルム21間に普通紙22をセットし、サーマルヘッド24で画像データに応じて転写フィルムを加熱すると、転写ベースフィルム21bに塗布されている溶融転写層(ワックス)が、加えられる熱量が所定値以上の場合は溶融して普通紙22に転写され、所定値以下の場合は転写されず、画素ドット単位では2値化されて記録される。この記録方式で階調表現する場合は1画素を構成するドット数に対する記録ドット数の比率で行う。
したがって、写真画像は昇華転写方式、文字情報等は溶融転写方式によって記録する場合には、第1図において、画像処理制御装置3により、顔写真のような階調情報の場合と記号のような非階調情報の場合とで駆動装置7によるヘッドへのエネルギ印加量を異ならせるようにすればよい。
第8図(a)(b)のようなプラテンロールを用いるロールタイプの転写装置によって転写機構の説明を行ったが、第7図(a)(b)に示されるような搬送台37と、端面型サーマルヘッドを用いるフラットタイプであっても転写機構は同様である。
なお後述のPETカードのように可撓性が十分なカードであれば、ロールタイプの転写装置により転写可能であるが、塩ビカードのように可撓性に欠けるカードに対しては、フラットタイプの転写装置が好適である。
第9図は塩ビカード構成を示す図である。
塩ビ基材51の両面に対して模様や会社のマーク等の固定情報をデザイン印刷し、その上にオーバーシート53を積層し、前述のような方法で転写を行う。なお、磁気ストライプやICチップ54を設ける場合にはオーバーシート53に埋め込むようにする。なお、カードの厚みは0.2〜1.0mm程度である。
第10図はPETカードの構成を示す図である。
PET基材61に対して受像層62を積層し、この上に前述の転写を行う。一方の面には、例えば磁気層63、バーコード64を設け、この上を銀隠蔽層65を設けてバーコードの存在を隠すようにして安全性を確保する。勿論、バーコードは機械読み取りできるようになっている。なお、PETカードの厚みは、190〜280μ程度が一般的である。
また、これらプラスチック、ABS、ポリカーボネイトカード以外にも紙、合成紙カードを用いることも可能である。
このようにして、第11図に示すように、顔写真11aをフルカラーとし、バーコード11b、名前、社員番号等のコード情報11cを白黒画像としたIDカードを容易に作成することができる。図では顔写真11aとコード情報11cの記録領域に保護層11dを設けている。なお、11eは磁気ストライプである。
こうして作成したカード11に対して、第12図に示すようにエンボスエンコーダ12により適宜必要な領域にエンボス文字を押捺(エンボス/エンコード加工)してIDカードが完成する。エンボス/エンコード加工を施すためには、写真とエンボス/エンコードデータとが符合しなければならない。そこで、本発明においては第2図(a)に示すように、属性データとしてエンボス/エンコード情報もあらかじめ割り付けるようにしておき、バーコードの対応付けにより写真とエンボス/エンコード情報とをマッチングさせるようにする。なお、エンコード情報はカードに形成された磁気ストライプやカードに埋め込まれたICに書込まれる。
次に、第13図により本発明のIDカード作成工程を説明する。
先ず、依頼主より入手したカードデザイン仕様書により生カードの製造を行う(工程▲1▼)。この工程では模様、会社のマーク等の固定情報をデザイン印刷する。同時に、カードレイアウト指示書を作成して編集工程▲6▼に送付する。また、依頼主からのコード情報ファイル、例えばMT(マグネチックテープ)を基にしてファイル加工を行い、対応付け情報をバーコード化してプリンタで印字出力して貼り込み台紙を作成する(工程▲3▼)。次に、写真貼り込み台紙の指定された箇所に写真を添付し、例えばCCDスキャナにより読み込み、個別バーコードにより文字、コード情報と写真情報をマッチングさせ(工程▲5▼)、写真情報、文字・コード情報、カードレイアウト情報を基に編集を行って(工程▲6▼)生カードに対して記録を行う(工程▲7▼)。記録した生カードは検査工程▲8▼を経て納品されることになる。
なお、工程▲7▼において、前記エンボスエンコードを行うようにしてもよい。
〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば、複数の異なる情報、例えば写真画像情報や、名前、生年月日等の属性情報をそれぞれバーコード等により対応付け可能にして入力し、それぞれの情報を対応付け情報を参照してマッチングをとるようにしたので、正確に、かつ能率良く、品質のよいIDカードを作製することができる。また、顔写真のような階調画像情報は昇華転写方式によりフルカラーで、名前・記号等は溶融転写方式により白黒画像として記録することも可能である。また、基材上に直接加工することができるとともに、後加工の必要がなく、編集処理して記録できるので、個々の顔写真、コード情報、例えば名前、所属、ID番号、磁気ストライプ記録情報、エンボス情報を完全にマッチングさせることができ、またプラスチックカード上に加工した場合、金融取引のカードとして使用できる。さらに、一度入力した像情報は、光ディスク等の記録媒体に蓄積されるので再発行時の処理が簡単化でき、写真の拡大、縮小も容易であり、コード情報と顔写真とは機械的にマッチングできるため、互いの情報がランダムな順序であっても容易に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のIDカード発行システムの構成を示す図、第2図はデータ構造を示す図、第3図は貼り込み台紙の作成を説明するための図、第4図はレイアウト処理を説明するための図、第5図、第6図は転写フィルムの構成を示す図、第7図はプリンタの構成を説明するための図、第8図転写方式を説明するための図、第9図は塩ビカード構成を示す図、第10図はPETカードの構成を示す図、第11図はIDカードを示す図、第12図はエンボス/エンコード加工を説明するための図、第13図はIDカード作成工程を示す図である。
1…CCDスキャナ、2…カメラ、3…画像処理制御装置、4…磁気テープ、5…画像用メモリ、6…フロッピィディスク、7…駆動装置、8…プリンタ、21…転写フィルム、31〜35…ヘッド、36はカード、37…搬送台。
 
訂正の要旨 (ア)訂正事項1
特許請求の範囲請求項1の
「顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」を、
「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」と訂正する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲請求項1の
「カード基材上に」を、
「依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに」と訂正する。
(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲請求項2を削除する。
(エ)訂正事項4
特許請求の範囲請求項5の記載の「磁気情報読み取り装置、または」を削除する。
(オ)訂正事項5
発明の詳細な説明の「課題を解決するための手段」において、
「顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」を、
「依頼主からのコード情報ファイルを基にして対応付け情報をコード化し印字した貼り込み台紙に添付された顔写真と顔写真に割りつけられた対応付けコード化情報」と、
「カード基材上に」を、
「依頼主から入手したカードデザイン仕様書により作成した生カードに」と訂正する。
異議決定日 2001-12-11 
出願番号 特願平2-216308
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G07F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 元人  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 岡本 昌直
井上 茂夫
登録日 1999-12-17 
登録番号 特許第3014129号(P3014129)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 IDカード発行システム  
代理人 韮澤 弘  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 米澤 明  
代理人 韮澤 弘  
代理人 内田 亘彦  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 菅井 英雄  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 青木 健二  
代理人 白井 博樹  
代理人 白井 博樹  
代理人 内田 亘彦  
代理人 菅井 英雄  

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