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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない F22B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない F22B
管理番号 1059049
審判番号 無効2000-35107  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-02-24 
確定日 2002-05-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第2942080号発明「ボイラ燃焼量制御装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件特許発明
(1)特許第2942080号(以下、「本件特許」という。)の請求項1乃至4に係る発明についての出願(以下、「本件特許出願」という。)は、平成4年11月5日に出願され、平成11年6月18日に設定登録されたものである。

(2)本件特許発明
本件特許の請求項1乃至請求項4に係る発明は、それぞれ、願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ボイラ本体1内の燃焼室3へ燃料油を噴射し得るようにした略等容量の3個のバーナノズル6,37,7と、各バーナノズル6,37,7に燃料油を送給する燃料油管18,39,19に接続された電磁弁20,38,21と、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした、前記バーナノズル6,37,7と等しい数量の圧力スイッチ24,40,25と、前記蒸気の圧力PがP<P2となり前記圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に全ての電磁弁20,38,21を開く開指令V5,V11,V6を電磁弁20,38,21に出力し、前記蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、前記圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に電磁弁20,38を開く開指令V5,V11を電磁弁20,38に出力すると共に電磁弁21には開指令V6を出力せず、前記蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に電磁弁20を開く開指令V5を電磁弁20に出力すると共に電磁弁38,21には開指令V11,V6を出力せず、前記蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に全ての電磁弁20,38,21へ開指令V5,V11,V6を出力しないようにした燃焼制御装置26を備えてなることを特徴とするボイラ燃焼量制御装置。
【請求項2】一方のバーナノズル7又は6の容量が他方のバーナノズル6又は7の容量の略2倍で且つボイラ本体1内の燃焼室3へ燃料油を噴射し得るようにした2個のバーナノズル6,7と、各バーナノズル6,7に燃料油を送給する燃料油管18,19に接続された電磁弁20,21と、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25と、前記蒸気の圧力PがP<P2となり前記圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に2個の電磁弁20,21を開く開指令V5,V6を電磁弁20,21へ出力し、前記蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、前記圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に電磁弁20,21のうち容量が他の電磁弁20又は21に対して略2倍の電磁弁21又は20を開く開指令V6又はV5を電磁弁21又は20へ出力すると共に電磁弁20又は21へは開指令V5又はV6を出力せず、前記蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に容量が電磁弁21又は20に対して略1/2の電磁弁20又は21を開く開指令V5又はV6を電磁弁20又は21へ出力すると共に電磁弁21又は20へは開指令V6又はV5を出力せず、前記蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に2個の電磁弁20,21へ開指令V5,V6を出力しないようにした燃焼制御装置26を備えてなることを特徴とするボイラ燃焼量制御装置。
【請求項3】ボイラ本体1内の燃焼室3へ燃料ガスを噴射し得るようにしたバーナガン27と、該バーナガン27へ燃料ガスを送給する燃料ガス管30に接続された電磁弁33と、前記バーナガン27へ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管30に対して並列配置された燃料ガス管29に接続されたオリイフイス42付きの電磁弁41と、燃料ガス管29,30へ燃料ガスを送給する燃料ガス管31に接続された少くとも1個の遮断弁34,35と、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25と、前記蒸気の圧力PがP<P2となり、前記圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に前記遮断弁34,35及び電磁弁33,41を開く開指令V8,V9,V7,V12を遮断弁34,35及び電磁弁33,41へ出力し、前記蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、前記圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に前記遮断弁34,35及び電磁弁41を開く開指令V8,V9,V12を遮断弁34,35及び電磁弁41へ出力すると共に電磁弁33へは開指令V7を出力せず、前記蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に遮断弁34,35を開く開指令V8,V9を遮断弁34,35に出力すると共に電磁弁33,41には開指令V7,V12を出力せず、前記蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に遮断弁34,35及び電磁弁33,41に開指令V8,V9,V7,V12を出力しないようにした燃焼制御装置26を備えてなることを特徴とするボイラ燃焼量制御装置。
【請求項4】 ボイラ本体1内の燃焼室3へ燃料ガスを噴射し得るようにしたバーナガン27と、該バーナガン27へ燃料ガスを送給する燃料ガス管30に接続された電磁弁33と、前記バーナガン27へ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管30に対して並列配置された燃料ガス管29に接続されたオリイフイスなしの電磁弁43と、前記バーナガン27へ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管30,29に対して並列配置された燃料ガス管44に接続されたオリイフイス45と、電磁弁33,43の接続された燃料ガス管30,29及びオリイフイス45の接続された燃料ガス管44へ燃料ガスを送給する燃料ガス管31に接続された少くとも1個の遮断弁34,35と、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25と、前記蒸気の圧力PがP<P2となり、前記圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に前記遮断弁34,35及び電磁弁33,43を開く開指令V8,V9,V7,V12を遮断弁34,35及び電磁弁33,43へ出力し、前記蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、前記圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に前記遮断弁34,35及び電磁弁43を開く開指令V8,V9,V12を遮断弁34,35及び電磁弁43へ出力すると共に電磁弁33へは開指令V7を出力せず、前記蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に遮断弁34,35を開く開指令V8,V9を遮断弁34,35に出力すると共に電磁弁33,43には開指令V7,V12を出力せず、前記蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ25,40,24から作動指令V2,V10,V1が与えられなくなった場合に遮断弁34,35及び電磁弁33,43に開指令V8,V9,V7,V12を出力しないようにした燃焼制御装置26を備えてなることを特徴とするボイラ燃焼量制御装置。」

2.請求人の主張の概要
請求人は、
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、または甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、
(2)本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、
(3)本件特許の請求項3及び請求項4に係る発明は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、
本件特許の請求項1乃至請求項4に係る特許発明は、無効とすべきである旨主張し、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第4号証を提出している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開平2ー130312号公報
甲第2号証:特開平2ー302515号公報
甲第3号証:実願平1ー38689号(実開平2ー133542号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭55ー10704号(実開昭56ー112450号)のマイクロフィルム
なお、請求人は、審判請求書の「7.証拠方法(2)証拠の表示」の項において、甲第3号証、甲第4号証について、それぞれ、実開平2-133542号公報、実開昭56-112450号公報として表記しているが、審判請求書における主張及び審判請求書に添付した書類からみて、甲第3号証、甲第4号証は、それぞれ、実願平1ー38689号(実開平2ー133542号)のマイクロフィルム、実願昭55ー10704号(実開昭56ー112450号)のマイクロフィルムをいうものと認められる。また、被請求人も、答弁書において、実願平1ー38689号(実開平2ー133542号)のマイクロフィルム、実願昭55ー10704号(実開昭56ー112450号)のマイクロフィルムに記載された事項に基づいて反論しており、この点に争いはないものと認める。

3.被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張はいずれも理由がなく、失当であり、本件審判請求は成り立たない旨主張している。

4.甲各号証に記載の事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、液体燃料燃焼装置に関し、図面とともに、「第1図中、1は複数の燃料噴射ノズル10aないし10xを備えた燃焼部、2aないし2xは上記各バーナへの燃料供給管3aないし3x上にそれぞれ設けられた電磁弁、4は・・・上記各ノズルへ燃料を送る油ポンプ、5は送風機、6は上記送風機5の風量を増減するよう送風機の送風口内に設けられたダンパ、7は例えばボイラ圧力、炉の温度等の外部からの制御信号により上記ダンパの開度を駆動制御するダンパコントロールモータ、8は上記ダンパ6と共にダンパコントロールモータ7により駆動され、上記複数の電磁弁2aないし2xを選択的に開閉制御するステップコントローラである。」(第2頁右下欄18行〜第3頁左上欄10行)こと、「このとき、ダンパコントロールモータ7にはボイラ圧力、炉の温度等に関する外部からの信号或いは出力切換スイッチからの信号等が入力され、ダンパコントロールモータ7はこれらの信号に基づき駆動制御する。」(第3頁右上欄10〜14行)こと、「而して、上記電磁弁2aないし2xの開閉動作は、上記ダンパコントロールモータ7によって作動せしめられる上記ステップコントローラ8によって制御されるようになっている。即ち、ステップコントローラ8に内蔵されたカムスイッチの信号により電磁弁2aないし2xが選択的に開閉せしめられるようになっており、電磁弁を一つだけ開いたときに最小燃焼量が得られ、すべての電磁弁を開いたときに最大燃焼量が得られるようになっている。従って、すべての電磁弁が同一容量であるときは、ターンダウン率はx:1となる。こゝで、xは燃料噴射ノズルの本数であり、これを少なくとも3本以上設けることにより、燃料圧力を増減することなく3:1以上のターンダウン率を得ることができる。」(第3頁右上欄19行〜同頁左下欄13行)こと、「即ち例えば、各ノズルの噴射量は同一としてもよいが、これには限定されものではなく例えば大小2種類のノズルを混用してもよく、又、1:1:3、1:1:1:1:5、1:2:4等の如く噴出量の異なるものを複数本併用するようにしてもよい。」(第4頁右上欄5〜10行)ことが記載されている。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、 ボイラーの燃焼制御方法に関し、図面とともに、「前記バーナ(3)には燃料供給ライン(8)を接続し、このラインに挿設した燃料ポンプ(9)の下流側を高燃焼用ラインと低燃焼用ラインに分岐して、それぞれの分岐ラインに高燃焼用電磁弁(10)、低燃焼用電磁弁(11)を各別に挿入している。高燃焼時には高燃焼用電磁弁(10)と低燃焼用電磁弁(11)側の両方を開、低燃焼時には低燃焼用電磁弁(11)のみ開とし、高燃焼と低燃焼の切替えは、高燃焼用電磁弁(10)の開閉動作に従うようにする。」(第2頁右上欄6〜14行)こと、「高燃焼、低燃焼、停止の各運転状態のうちどの運転状態を選択するかは、ボイラー缶内圧を検出する圧力検出器(13)の信号に基づいて燃焼制御回路(2)により制御する。前記圧力検出器としては、例えば高設定圧力値と低設定圧力値の2つの設定圧力値を有する圧力スイッチPSを用い、低設定圧力値以下の圧力においては高燃焼、低設定圧力値と高設定圧力値の間の圧力においては低燃焼、高設定圧力値以下の圧力においては停止の状態になるように制御する。」(第2頁右上欄16行〜同頁左下欄5行)こと、「以上、三位置燃焼制御方式のボイラーにこの発明を適用した実施例について説明したが、この発明は、四位置或いは五位置以上の多段階で燃焼量を制御するものにも用いることができる。」(第2頁右下欄10〜13行)ことが記載されている。

(3)甲第3号証
甲第3号証には、ガス焚きボイラーの燃焼制御機構に関し、図面とともに、「従来のガス焚ボイラー、特に中容量のガス焚貫流ボイラーにおいては、第3図に示すように、略同一径を有する2本のパイプ(30),(31)を並列接続し、一方の接続部をボイラーのガス供給源(32)に接続し、他方の接続部をボイラ-のバーナ部(33)に接続することによって2系統のガス供給ラインが形成されている。また、前記2本のパイプ(30),(31)には、それぞれ電磁弁(34),(35)が取付けられ、かつ電磁弁(34),(35)とバーナ部(33)の間にオリフィス(36),(37)が形成されている。前記オリフィス(36),(37)は、それぞれパイプ(30),(31)のガス流量を常時同量に維持するために設けられたものである。 さらに、ボイラー缶(38)には缶内圧を検出する圧力スイッチ(39),(40)が備えられておりこの圧力スイッチ(39),(40)からの信号をうけて、前記2つの電磁弁(34),(35)がそれぞれ独立に開閉するようになっている。」(明細書第2頁6行〜同第3頁3行)こと、「第1図において、略同一径を有する2本のパイプ(1),(2)が並列接続され、一方の接続部がガス供給源(5)に、他方の接続部がボイラーのバーナ部(6)に接続されることにより、ガス供給ライン(ガス供給流路系)が形成されている。さらに、2本のパイプ(1),(2)には、それぞれ電磁弁(3),(4)が取付けられており、また、ボイラー缶(7)の内部圧力を検出する圧力検出手段(8)、および同圧力検出手段(8)からの信号を受けて前記電磁弁(3),(4)を独立に開閉することができる制御手段(9)が設けられている。 なお、この実施例においては、2本のパイプを並列接続してガス供給ラインを形成したが、前記2本のパイプをそれぞれ独立にガス供給源およびバーナ部の間に配置することによってガス供給ラインを形成することもできる。 さらに、2本のパイプ(1),(2)には、それぞれ電磁弁(3),(4)とバーナ部(6)の間においてオリフィス(10),(11)が形成されており、ガス供給源(5)から供給されるガス流量を10としたとき、パイプ(1)のガス流量が3、パイプ(2)のガス流量が7となるようにしてある。」(明細書第6頁9行〜同第7頁10行)こと、「したがって、第2a図に示すように、2つの電磁弁(3),(4)が共に閉鎖されたときには、バーナ部(6)はガスの供給を受けることなく、停止状態にある。次に、第2b図に示すように、電磁弁(3)が開放され電磁弁(4)が閉鎖されたときには、バーナ部(6)には3のガス流量が供給され、バーナ部(6)は低燃焼状態にある。次に、第2c図に示すように、電磁弁(3)が閉鎖され電磁弁(4)が開放されたときには、バーナ部(6)には7のガス流量が供給され、バーナ部(6)は中燃焼状態にある。また、第2d図に示すように、2つの電磁弁(3),(4)が共に開放されたときには、バーナ部(6)には10のガス流量が供給され、バーナ部(6)は高燃焼状態にある。」(明細書第7頁11行〜同第8頁4行)こと、「圧力検出手段(8)として蒸気流路に2個の圧力センサを配置し、そして前記制御手段(9)は、これらの圧力センサの信号を受け、2つの圧力センサの圧力差から蒸気流量を計算したのち、前記電磁弁を最適の組み合わせで開閉する。 こうして、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼の4段階の燃焼制御、すなわち4位置燃焼制御が達成される。」(明細書第8頁5〜12行)こと、「また、圧力検出手段(8)として、ボイラー缶(7)に圧力センサを付設し、これによって缶内圧を検出し、この缶内圧および圧力変化率(圧力ー時間微分値)をモニタすることによって4位置燃焼制御を行うこともできる。」(明細書第8頁13〜17行)ことが記載されている。

(4)甲第4号証
甲第4号証には、ガス燃焼制御装置に関し、図面とともに、「第1図において、1は本考案によるガス燃焼制御装置、2はガス供給源、3はガス供給管4によりガス供給源に接続されたガスバーナ、5は元栓、7はガスの種類により設定される流量固定絞り、7はガスに空気を混入させるガス空気混入弁である。 ガス供給管4に流量固定絞り6とガス空気混入弁7との間に複数の電磁弁8(本実施例では8a 、8bおよび 8cの3個)と種火用固定絞り9とが並列に配設されている。 10はガスバーナ3の燃焼温度を検出する温度センサ、11は温度センサ10から送られてくるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログーデジタル変換器、12は制御装置でそれらは直列に接続され制御装置増幅器12に各電磁弁8のソレノイドが接続されている。」(明細書第3頁4〜19行)こと、「複数の電磁弁8のうち電磁弁8aはV0*20m2/hすなわちV0m2/hだけ流すことができ、8bはV0*21m2/hすなわち2V0m2/hだけ流すことができ、更に8cはV0*22m2/hすなわち4V0m2/hだけ流すことができるように設定されている。なおここではV0は必要カロリー数から予め割り出された流量である。」(明細書第3頁20行〜同第4頁6行)こと、「上記構成の燃焼制御装置において、温度センサ10から送られて来るアナログ信号をアナログーデジタル変換器11で、2進法のデジタル信号に変換し、この信号を公知の制御装置12に入力させ、この制御装置により増幅して各電磁弁8のソレノイドに選択的に送り、電磁弁8( 8a、8b、8c )を選択的に開閉動作させ、それによってガスバーナ3に供給するガスの流量を段階的に変化させ、ガスバーナの燃焼温度を御御する。」(明細書第4頁7〜15行)こと、「この実施例により選択変更できる流量は次の第1表に示されるように8通りになり、必要な燃焼温度に応じて、いずれかの流量を選択できる。」(明細書第4頁16〜18行)こと、「入口室22と出口室23とは更に種火用固定絞りすなわちオリフィス29を介して連通され、全ての弁体26が弁座25と係合していても種火点火に必要なガスだけ流せれるようになつている。」(明細書第6頁9〜13行)こと、「しかも電磁弁2個で4段階、電磁弁3個で8段階、4個で16段階と、少ない電磁弁の数で多段の段階制御ができ精度を向上させることができる。」(明細書第7頁10〜13行)ことが記載されている。

5.当審の判断
5-1 本件特許の請求項1に係る発明について
(1)対比
(a)甲第1号証には、上記4.(1)で指摘した事項からみて、ボイラ本体の燃焼部1へ液状燃料を噴射し得るようにした同一容量の3本以上の燃料噴射ノズル10aないし10xと、各燃料噴射ノズル10aないし10xに液状燃料を送る燃料供給管3aないし3x上に設けられた電磁弁2aないし2xと、ボイラ圧力等の外部の信号に基づいてダンパ6の開度を駆動制御するダンパコントロールモータ7によって作動されるステップコントローラ8に内蔵されたカムスイッチの信号により電磁弁2aないし2xが開閉制御し、電磁弁を一つだけ開いたときに最小燃焼量が得られ、すべての電磁弁を開いたときに最大燃焼量が得られるようにした燃焼制御装置を備えた液状燃料燃焼装置が記載されている。
(b)そこで、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された「ボイラ本体の燃焼部1へ液状燃料を噴射し得るようにした同一容量の3本以上の燃料噴射ノズル10aないし10x」、「各燃料噴射ノズル10aないし10xに液状燃料を送る燃料供給管3aないし3x上に設けられた電磁弁2aないし2x」、「ボイラ圧力」、「液状燃料燃焼装置」は、それぞれ、本件特許発明1の「ボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした略等容量の3個のバーナノズル」、「各バーナノズルに燃料油を送給する燃料油管に接続された電磁弁」、「ボイラ本体で生成された蒸気の圧力」、「ボイラ燃焼量制御装置」に相当し、また、両者はともにボイラ本体で生成された蒸気の圧力を検出し、その検出結果に基づいて複数の電磁弁を開閉するようにして燃焼を制御するものといえるから、両者は、ボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした略等容量の3個のバーナノズルと、各バーナノズルに燃料油を送給する燃料油管に接続された電磁弁と、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力を検出し、その検出結果に基づいて複数の電磁弁を開閉する燃焼制御装置を備えてなるボイラ燃焼量制御装置の点で一致し、次の点で相違する。
本件特許発明1は、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした、バーナノズルと等しい数量の圧力スイッチ24,40,25と、蒸気の圧力PがP<P2となり圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に全ての電磁弁20,38,21を開く開指令V5,V11,V6を電磁弁20,38,21に出力し、蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に電磁弁20,38を開く開指令V5,V11を電磁弁20,38に出力すると共に電磁弁21には開指令V6を出力せず、蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に電磁弁20を開く開指令V5を電磁弁20に出力すると共に電磁弁38,21には開指令V11,V6を出力せず、蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に全ての電磁弁20,38,21へ開指令V5,V11,V6を出力しないようにした燃焼制御装置を備えているのに対し、甲第1号証に記載された発明は、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の信号に基づいてダンパの開度を駆動制御するダンパコントロールモータによって作動されるステップコントローラに内蔵されたカムスイッチの信号により電磁弁を開閉制御し、電磁弁を一つだけ開いたときに最小燃焼量が得られ、すべての電磁弁を開いたときに最大燃焼量が得られるようにするものである点。

(2)判断
(a)上記相違点について検討する。
(aー1)甲第2号証には、上記4.(2)で指摘した事項からみて、バーナ(3)と、バーナに燃料を供給する高燃焼用ラインと低燃焼用ラインにそれぞれ挿入された高燃焼用電磁弁(10)と低燃焼用電磁弁(11)と、ボイラー缶内圧を検出する高設定圧力値と低設定圧力値の2つの設定圧力値を有する圧力スイッチPSを用い、低設定圧力値以下の圧力においては高燃焼用電磁弁(10)と低燃焼用電磁弁(11)の両方を開として高燃焼の状態、低設定圧力値と高設定圧力値の間の圧力においては低燃焼用電磁弁のみを開として低燃焼の状態、高設定圧力値以上の圧力においては両電磁弁を閉として停止の状態になるように三位置で制御する燃焼制御装置を備えたボイラ燃焼量制御装置が記載され、また、甲第2号証に記載されたボイラ燃焼量制御装置は四位置或いは五位置以上の多段階で燃焼を制御するものにも用いることが記載されている。
そして、甲第2号証に記載された「ボイラー缶内圧」は、本件特許発明1の「ボイラ本体で生成された蒸気の圧力」に相当し、また、甲第2号証に記載されたボイラ燃焼量制御装置は四位置或いは五位置以上の多段階で燃焼を制御するものにも用いることができるものであるから、甲第2号証には、ボイラ燃焼量制御装置において、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の検出手段として圧力スイッチを用いること、多位置制御の多位置の数に応じた設定圧力を用いることが示唆されているといえる。
しかしながら、甲第2号証には、バーナノズルの本数については何ら記載されておらず、しかも、甲第2号証に記載された圧力スイッチPSは、複数の設定圧力値を有する一つの圧力スイッチから構成されており、本件特許発明1の圧力スイッチのように、「夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2以下の場合に夫々別個に作動し且つかつ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした、バーナノズルと等しい数量の圧力スイッチを設けた」構成を備えたものではない。
したがって、ボイラ燃焼量制御装置において、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の検出手段として圧力スイッチを用いる構成及び多位置制御の多位置の数に応じた設定圧力を用いる構成が、甲第2号証に示されるように従来周知の技術であるとしても、「夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした、バーナノズルと等しい数量の圧力スイッチを設けた」本件特許発明1の構成が、甲第2号証に記載されているように、周知の技術的事項であるとすることはできない。
また、本件特許発明1の燃焼制御装置は、上記相違点であげたように、「蒸気の圧力PがP<P2となり圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に全ての電磁弁20,38,21を開く開指令V5,V11,V6を電磁弁20,38,21に出力し、蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に電磁弁20,38を開く開指令V5,V11を電磁弁20,38に出力すると共に電磁弁21には開指令V6を出力せず、蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に電磁弁20を開く開指令V5を電磁弁20に出力すると共に電磁弁38,21には開指令V11,V6を出力せず、蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に全ての電磁弁20,38,21へ開指令V5,V11,V6を出力しないように」に作動するものであり、甲第2号証に記載された燃焼制御装置とは、その構成及び作用が相違しており、甲第2号証に記載された事項をもって、上記相違点であげた本件特許発明1の構成が単なる設計的事項であるとも、あるいは、甲第2号証に記載された事項から当業者が容易に想到し得たとすることもできない。
なお、請求人は、審判請求書第10頁末行〜同第11頁5行において、「ボイラの多位置制御方式において、「ボイラ缶内の圧力の検出手段として圧力スイッチを用いる構成」、「多位置制御の多位置の数に応じた設定圧力を用いる構成」、「設定圧力の数に応じた個数の圧力スイッチを用いる構成」は、本件特許発明の明細書に従来技術として記載されているように、周知の技術である」旨主張しているが、本件特許明細書には、本件特許発明の従来技術として記載されたものが、本件出願前に知られた技術であることを示す記載はないから、上記請求人の主張は理由がない。
(aー2)また、甲第3号証には、ガス焚きボイラーの燃焼制御機構において、ガス流量が3に設定されたパイプ(1)及びガス流量が7に設定されたパイプ(2)からバーナ(6)にガスを供給するガス供給ラインを形成し、パイプ(1),(2)にそれぞれ電磁弁(3),(4)を取付けるとともに、ボイラの蒸気流路に圧力検出手段(8)を配置し、圧力検出手段からの信号により電磁弁を最適の組み合わせで開閉して、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼の4位置燃焼制御を行うようにした点が記載されている。
しかしながら、甲第3号証に記載された圧力検出手段(8)は、蒸気通路に配置した2個の圧力センサからなり、制御手段(9)は、これらの圧力センサの信号を受け、2つの圧力センサの圧力差から蒸気流量を計算したのち、前記電磁弁を最適の組み合わせで開閉するか、あるいは、ボイラ缶(7)に圧力センサを付設し、これによって缶内圧を検出し、この缶内圧および圧力変化率(圧力ー時間微分値)をモニタすることによって、4位置燃焼制御を行うものであり、甲第3号証に記載された圧力検出手段(8)は、本件特許発明1のように、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25とは、その構成が相違しており、また、甲第3号証に記載された燃焼制御装置である制御手段(9)は、本件特許発明1の燃焼制御装置のように作動するものではない。
(a-3)さらに、甲第4号証に記載されたガス燃焼制御装置は、温度センサ10から送られて来るアナログ信号をアナログーデジタル変換器11で、2進法のデジタル信号に変換し、この信号を公知の制御装置12に入力させ、この制御装置により増幅して各電磁弁8のソレノイドに選択的に送り、電磁弁8( 8a、8b、8c )を選択的に開閉動作させ、それによってガスバーナ3に供給するガスの流量を段階的に変化させ、ガスバーナの燃焼温度を制御するものであり、甲第4号証には、本件特許発明1のように、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25の信号により、ガス燃焼を制御することは何ら記載も示唆もなく、甲第4号証には、上記相違点であげた本件特許発明1の構成が記載されていない。
(b)そうすると、甲第1号証乃至甲第4号証に記載されたものから上記相違点であげた本件特許発明1の構成を当業者が当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(c)そして、本件特許発明1は、上記相違点であげた構成を採用することにより、本件特許明細書に記載された「プリパージやポストパージにより外部へ排出される熱エネルギーが減少するため省エネルギーを図ることができ、又ボイラ停止時やポストパージ、プリパージ時に蒸気消費量が増大しても蒸気の圧力が極端に低下することがなく、所定の圧力の蒸気が得られるようになるまでの時間が短くてすむため蒸気の生産性が向上し、更に熱応力の繰返し回数、補機類の発停回数が減少するため貫流ボイラの寿命の長期化が可能になる」(段落【0085】)という効果を奏するものである。
(d)したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、または仮に同一でないとしても、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする請求人の主張は採用できない。

5-2 本件特許の請求項2に係る発明について
(1)対比
(a)甲第1号証には、上記4.(1)で指摘した事項からみて、ボイラ本体の燃焼部1へ液状燃料を噴射し得るようにした噴射量の異なる複数本の燃料噴射ノズル10aないし10xと、各燃料噴射ノズル10aないし10xに液状燃料を送る燃料供給管3aないし3x上に設けられた電磁弁2aないし2xと、ボイラ圧力等の外部の信号に基づいてダンパ6の開度を駆動制御するダンパコントロールモータ7によって作動されるステップコントローラ8に内蔵されたカムスイッチの信号により電磁弁2aないし2xが開閉制御し、電磁弁を一つだけ開いたときに最小燃焼量が得られ、すべての電磁弁を開いたときに最大燃焼量が得られるようにした燃焼制御装置を備えた液状燃料燃焼装置が記載されている。
(b)そこで、本件特許の請求項2に係る発明(以下、「本件特許発明2」という。)と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された「ボイラ本体の燃焼部1へ液状燃料を噴射し得るようにした噴射量の異なる複数本の燃料噴射ノズル10aないし10x」、「各燃料噴射ノズル10aないし10xに液状燃料を送る燃料供給管3aないし3x上に設けられた電磁弁2aないし2x」、「ボイラ圧力」、「液状燃料燃焼装置」は、それぞれ、本件特許発明2の「ボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした略等容量の3個のバーナノズル」、「各バーナノズルに燃料油を送給する燃料油管に接続された電磁弁」、「ボイラ本体で生成された蒸気の圧力」、「ボイラ燃焼量制御装置」に相当し、また、本件特許発明2の「一方のバーナノズルの容量が他方のバーナノズルの容量の略2倍で且つボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした2個のバーナノズル」と甲第1号証に記載された「ボイラ本体の燃焼部1へ液状燃料を噴射し得るようにした噴射量の異なる複数本の燃料噴射ノズル10aないし10x」は、「ボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした容量の異なる複数のバーナノズル」ということができ、また、両者はともにボイラ本体で生成された蒸気の圧力を検出し、その検出結果に基づいて複数の電磁弁を開閉するようにして燃焼を制御するものといえるから、両者は、ボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした容量の異なる複数のバーナノズルと、各バーナノズルに燃料油を送給する燃料油管に接続された電磁弁と、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力を検出し、その検出結果に基づいて複数の電磁弁を開閉する燃焼制御装置を備えてなるボイラ燃焼量制御装置の点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件特許発明2のバーナノズルは、一方のバーナノズルの容量が他方のバーナノズルの容量の略2倍で且つボイラ本体内の燃焼室へ燃料油を噴射し得るようにした2個のバーナノズルであるのに対し、甲第1号証に記載された発明のバーナノズルは、容量の異なる複数のバーナノズルである点。
ロ.本件特許発明2は、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25と、蒸気の圧力PがP<P2となり圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に2個の電磁弁20,21を開く開指令V5,V6を電磁弁20,21へ出力し、蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に電磁弁20,21のうち容量が他の電磁弁20又は21に対して略2倍の電磁弁21又は20を開く開指令V6又はV5を電磁弁21又は20へ出力すると共に電磁弁20又は21へは開指令V5又はV6を出力せず、蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に容量が電磁弁21又は20に対して略1/2の電磁弁20又は21を開く開指令V5又はV6を電磁弁20又は21へ出力すると共に電磁弁21又は20へは開指令V6又はV5を出力せず、前記蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に2個の電磁弁20,21へ開指令V5,V6を出力しないようにした燃焼制御装置26を備えているのに対し、甲第1号証に記載された発明は、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の信号に基づいてダンパの開度を駆動制御するダンパコントロールモータによって作動されるステップコントローラに内蔵されたカムスイッチの信号により電磁弁を開閉制御し、電磁弁を一つだけ開いたときに最小燃焼量が得られ、すべての電磁弁を開いたときに最大燃焼量が得られるようにしている点。

(2)判断
(a)まず、上記相違点イについて検討する。
甲第1号証に記載された「各ノズルの噴射量は同一としてもよいが、これには限定されものではなく例えば大小2種類のノズルを混用してもよく、又、1:1:3、1:1:1:1:5、1:2:4等の如く噴出量の異なるものを複数本併用するようにしてもよい。」(第4頁右上欄5〜10行)ことからみて、ボイラ燃焼量制御装置の多位置制御方式において、バーナの個数、バーナの噴出量を適宜選択することは当業者が適宜なし得る程度のことにすぎないといえるから、本件特許発明2のように四位置制御方式を採用する際、上記相違点イであげた本件特許発明2の構成のようにすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。
(b)つぎに、上記相違点ロについて検討する。
(b-1)甲第2号証には、上記5-1(2)(a)で検討したように、ボイラ燃焼量制御装置において、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の検出手段として圧力スイッチを用いる構成及び多位置制御の多位置の数に応じた設定圧力を用いる構成が示されているにしても、本件特許発明2の「夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ」の構成が甲第2号証に記載されているとはいえない。
また、本件特許発明2の燃焼制御装置は、上記相違点であげたように、「蒸気の圧力PがP<P2となり圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に2個の電磁弁20,21を開く開指令V5,V6を電磁弁20,21へ出力し、蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に電磁弁20,21のうち容量が他の電磁弁20又は21に対して略2倍の電磁弁21又は20を開く開指令V6又はV5を電磁弁21又は20へ出力すると共に電磁弁20又は21へは開指令V5又はV6を出力せず、蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に容量が電磁弁21又は20に対して略1/2の電磁弁20又は21を開く開指令V5又はV6を電磁弁20又は21へ出力すると共に電磁弁21又は20へは開指令V6又はV5を出力せず、前記蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に2個の電磁弁20,21へ開指令V5,V6を出力しないように」作動するものであり、甲第2号証に記載された燃焼制御装置とは、その構成及び作用が相違しており、甲第2号証に記載された事項をもって、上記相違点ロであげた本件特許発明2の構成が単なる設計的事項であるとも、あるいは、甲第2号証に記載された事項から当業者が容易に想到し得たとすることもできない。
(bー2)甲第3号証には、上記4.(3)で指摘した事項からみて、ガス焚きボイラーの燃焼制御機構において、ガス流量が3に設定されたパイプ(1)及びガス流量が7に設定されたパイプ(2)からバーナ(6)にガスを供給するガス供給ラインを形成し、パイプ(1),(2)にそれぞれ電磁弁(3),(4)を取付けるとともに、ボイラの蒸気流路に圧力検出手段(8)を配置し、圧力検出手段からの信号により電磁弁を最適の組み合わせで開閉して、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼の4位置燃焼制御を行うようにした点が記載されている。
しかしながら、甲第3号証に記載された圧力検出手段(8)は、蒸気通路に配置した2個の圧力センサからなり、制御手段(9)は、これらの圧力センサの信号を受け、2つの圧力センサの圧力差から蒸気流量を計算したのち、前記電磁弁を最適の組み合わせで開閉するか、あるいは、ボイラ缶(7)に圧力センサを付設し、これによって缶内圧を検出し、この缶内圧および圧力変化率(圧力ー時間微分値)をモニタすることによって、4位置燃焼制御を行うものであり、甲第3号証に記載された圧力検出手段(8)は、本件特許発明2のように、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25とは、その構成が相違しており、また、第3号証に記載された燃焼制御装置である制御手段(9)は、本件特許発明2の燃焼制御装置のように作動するものではない。
(b-3)また、甲第4号証に記載されたガス燃焼制御装置は、温度センサ10から送られて来るアナログ信号をアナログーデジタル変換器11で、2進法のデジタル信号に変換し、この信号を公知の制御装置12に入力させ、この制御装置により増幅して各電磁弁8のソレノイドに選択的に送り、電磁弁8( 8a,8b,8c )を選択的に開閉動作させ、それによってガスバーナ3に供給するガスの流量を段階的に変化させ、ガスバーナの燃焼温度を制御するものであり、甲第4号証には、本件特許発明2のように、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25の信号により、ガス燃焼を制御することは何ら記載も示唆もされていない。
(b-4)そうすると、甲第1号証乃至甲第4号証に記載されたものから上記相違点ロであげた本件特許発明2の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(c)そして、本件特許発明2は、上記相違点ロであげた構成を採用することにより、本件特許明細書に記載された「プリパージやポストパージにより外部へ排出される熱エネルギーが減少するため省エネルギーを図ることができ、又ボイラ停止時やポストパージ、プリパージ時に蒸気消費量が増大しても蒸気の圧力が極端に低下することがなく、所定の圧力の蒸気が得られるようになるまでの時間が短くてすむため蒸気の生産性が向上し、更に熱応力の繰返し回数、補機類の発停回数が減少するため貫流ボイラの寿命の長期化が可能になる」(段落【0085】)という効果を奏するものである。
(d)したがって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証または甲第4号証に記載された発明を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるとする請求人の主張は採用できない。

5-3 本件特許の請求項3に係る発明について
(1)対比
(a)甲第3号証には、上記4.(3)で指摘した事項からみて、ボイラーのバーナ部(6)と、バーナ部(6)へガスを送給するパイプ(1)に接続された電磁弁(3)と、バーナ部(6)へガスを送給するようパイプ(1)に対して並列配置されたパイプ(2)に接続された電磁弁(4)と、電磁弁(3),(4)とバーナ部(6)の間に形成されたオリフィス(10),(11)と、パイプ(1),(2)へガスを送給するガス供給源(5)と、ボイラ缶(7)に付設した圧力検出手段(8)と、ボイラ缶(7)内圧に基づいて各電磁弁を選択的に開閉制御する制御手段(9)を備えたガス焚きボイラーの燃焼制御機構に係る発明が記載されている。
(b)そこで、本件特許の請求項3に係る発明(以下、「本件特許発明3」という。)と甲第3号証に記載された発明を対比すると、甲第3号証に記載された「ボイラーのバーナ部(6)」、「バーナ部(6)へガスを送給するパイプ(1)に接続された電磁弁(3)」、「バーナ部(6)へガスを送給するようパイプ(1)に対して並列配置されたパイプ(2)に接続された電磁弁(4)」、「各電磁弁を選択的に開閉制御する制御手段(9)」、「ガス焚きボイラーの燃焼制御機構」は、それぞれ、本件特許発明3の「ボイラ本体内の燃焼室へ燃料ガスを噴射し得るようにしたバーナガン」、「バーナガンへ燃料ガスを送給する燃料ガス管に接続された電磁弁」、「バーナガンへ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管に対して並列配置された燃料ガス管に接続された電磁弁」、「燃焼制御装置」、「ボイラ燃焼量制御装置」に相当するから、両者は、ボイラ本体内の燃焼室へ燃料ガスを噴射し得るようにしたバーナガンと、バーナガンへ燃料ガスを送給する燃料ガス管に接続された電磁弁と、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管に対して並列配置された燃料ガス管に接続された電磁弁と、燃焼制御装置を備えてなるボイラ燃焼量制御装置の点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件特許発明3は、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30に接続された電磁弁33と、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30に対して並列配置された燃料ガス管29に接続されたオリイフイス付きの電磁弁41を備えているのに対し、甲第3号証に記載された発明は、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう2本の燃料ガス管(1),(2)にそれぞれ接続された電磁弁(3),(4)を備え、各電磁弁(3),(4)とバーナ部(6)との間にそれぞれオリフィス(10),(11)が形成されている点。
ロ.本件特許発明3は、燃料ガス管へ燃料ガスを送給する燃料ガス管に接続された少くとも1個の遮断弁を有するのに対し、甲第3号証に記載された発明はその点が明らかでない点。
ハ.本件特許発明3は、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25と、蒸気の圧力PがP<P2となり、前記圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に遮断弁34,35及び電磁弁33,41を開く開指令V8,V9,V7,V12を遮断弁34,35及び電磁弁33,41へ出力し、蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に遮断弁34,35及び電磁弁41を開く開指令V8,V9,V12を遮断弁34,35及び電磁弁41へ出力すると共に電磁弁33へは開指令V7を出力せず、蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に遮断弁34,35を開く開指令V8,V9を遮断弁34,35に出力すると共に電磁弁33,41には開指令V7,V12を出力せず、蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ24,40,25から作動指令V1,V10,V2が与えられなくなった場合に遮断弁34,35及び電磁弁33,41に開指令V8,V9,V7,V12を出力しないようにした燃焼制御装置を備えているのに対し、甲第3号証に記載された発明は、ボイラ缶に付設した圧力検出手段を有し、燃焼制御手段は、ボイラ缶内圧に基づいて各電磁弁を選択的に開閉制御するものである点。

(2)判断
(a)まず、相違点ロについて検討する。
甲第4号証に記載された元栓5は遮断弁としての機能を有しており、また、ガス燃料燃焼制御装置において、遮断弁を設けることは従来普通に行われており、甲第3号証に記載された燃焼制御装置においてガス遮断弁を設けるようにすることは、格別のことではない。
(b)つぎに、相違点イについて検討する。
(b-1)甲第4号証には、上記4.(4)で指摘した事項からみて、ガスの流量を多段階に変化させるガス燃焼制御装置において、ガスバーナ3と、バーナへガスを供給するガス供給管4に接続された複数の電磁弁8a,8b,8cと、これら電磁弁に対して並列に接続された種火用固定絞りであるオリフィス9と、ガス供給管4に接続された元栓5を設けた点が記載されている。
しかしながら、甲第4号証に記載されたオリフィス9は複数の電磁弁に対して並列に接続されており、甲第4号証に記載された電磁弁は、本件特許発明3のように、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30に対して並列配置された燃料ガス管29に接続されたオリイフイス付きの電磁弁41ということができない。
したがって、甲第3号証に記載された発明に甲第4号証に記載されたオリフィスを採用しても、上記相違点イであげた本件特許発明3の構成を当業者が容易に想到しえるものではない。
(b-2)また、甲第1号証及び甲第2号証には、オリイフイス付き電磁弁について何ら記載するところがない。
(c)さらに、相違点ハについて検討する。
(c-1)甲第3号証に記載された燃焼制御装置は、上記4.(3)で指摘した事項からみて、蒸気通路に2個の圧力センサを配置し、これら圧力センサからの信号を受け、2つの圧力センサの圧力差から上記流量を計算したのち、電磁弁を最適の組み合わせで開閉するか、あるいは、ボイラ缶に圧力センサを付設し、これによって缶内圧を検出し、この缶内圧および圧力変化率(圧力ー時間微分値)をモニタすることによって4位置制御を行うものであり、甲第3号証には、本件特許発明3のように、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25を設けることについては、何ら記載も示唆もなく、また、その燃焼制御装置の動作も本件特許発明3とは、基本的に相違しており、甲第3号証に記載されたものから、上記相違点ハであげた本件特許発明3の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(c-2)また、甲第2号証には、上記5-1(2)(a)で検討したように、ボイラ燃焼量制御装置において、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の検出手段として圧力スイッチを用いること、多位置制御の多位置の数に応じた設定圧力を用いることが示唆されているといえる。
しかしながら、甲第2号証には、本件特許発明3の「夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ」の構成及び「バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30に接続された電磁弁33と、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30に対して並列配置された燃料ガス管29に接続されたオリイフイス付きの電磁弁41を備え」た構成が記載されておらず、甲第2号証に記載された燃焼制御装置は、本件特許発明3の燃焼制御装置とはその作動が相違している。
そうすると、甲第3号証に記載された発明に甲第2号証に記載された燃焼制御装置を採用して、上記相違点ハであげた本件特許発明3の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
なお、請求人は、審判請求書第16頁27行〜同第17頁1行において、「遮断弁の開閉制御によって最も少ない燃焼量を制御する技術的構成は、本件特許発明の明細書に従来技術として記載されているように、周知の技術である」旨主張しているが、本件特許明細書には、本件特許発明の従来技術として記載されたものが、本件出願前に知られた技術であることを示す記載はないから、上記請求人の主張は理由がない。
(cー3)また、甲第1号証及び甲第4号証には、上記相違点ハであげた本件特許発明3の構成は何ら記載も示唆もされていない。
(d)そうすると、甲第1号証乃至甲第4号証に記載されたものから上記相違点イ及び相違点ハであげた本件特許発明3の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(e)そして、本件特許発明3は、上記相違点イ及び相違点ハであげた構成を採用することにより、本件特許明細書に記載された「プリパージやポストパージにより外部へ排出される熱エネルギーが減少するため省エネルギーを図ることができ、又ボイラ停止時やポストパージ、プリパージ時に蒸気消費量が増大しても蒸気の圧力が極端に低下することがなく、所定の圧力の蒸気が得られるようになるまでの時間が短くてすむため蒸気の生産性が向上し、更に熱応力の繰返し回数、補機類の発停回数が減少するため貫流ボイラの寿命の長期化が可能になる」(段落【0085】)という効果を奏するものである。
(f)したがって、本件特許発明3は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする請求人の主張は採用できない。

5-4 本件特許の請求項4に係る発明について
(1)対比
(a)甲第3号証には、上記4.(3)で指摘した事項からみて、ボイラーのバーナ部(6)と、バーナ部(6)へガスを送給するパイプ(1)に接続された電磁弁(3)と、バーナ部(6)へガスを送給するようパイプ(1)に対して並列配置されたパイプ(2)に接続された電磁弁(4)と、電磁弁(3),(4)とバーナ部(6)の間に形成されたオリフィス(10),(11)と、パイプ(1),(2)へガスを送給するガス供給源(5)と、ボイラ缶(7)に付設した圧力検出手段(8)と、ボイラ缶(7)内圧に基づいて各電磁弁を選択的に開閉制御する制御手段(9)を備えたガス焚きボイラーの燃焼制御機構に係る発明が記載されている。
(b)そこで、本件特許の請求項4に係る発明(以下、「本件特許発明4」という。)と甲第3号証に記載された発明を対比すると、甲第3号証に記載された「ボイラーのバーナ部(6)」、「バーナ部(6)へガスを送給するパイプ(1)に接続された電磁弁(3)」、「バーナ部(6)へガスを送給するようパイプ(1)に対して並列配置されたパイプ(2)に接続された電磁弁(4)」、「各電磁弁を選択的に開閉制御する制御手段(9)」、「ガス焚きボイラーの燃焼制御機構」は、それぞれ、本件特許発明4の「ボイラ本体内の燃焼室へ燃料ガスを噴射し得るようにしたバーナガン」、「バーナガンへ燃料ガスを送給する燃料ガス管に接続された電磁弁」、「バーナガンへ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管に対して並列配置された燃料ガス管に接続されたオリイフイスなしの電磁弁」、「燃焼制御装置」、「ボイラ燃焼量制御装置」に相当するから、両者は、ボイラ本体内の燃焼室へ燃料ガスを噴射し得るようにしたバーナガンと、バーナガンへ燃料ガスを送給する燃料ガス管に接続された電磁弁と、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう前記燃料ガス管に対して並列配置された燃料ガス管に接続されたオリイフイスなしの電磁弁と、燃焼制御装置を備えてなるボイラ燃焼量制御装置の点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件特許発明4は、バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30,29に対して並列配置された燃料ガス管44に接続されたオリイフイスと、燃料ガス管30,29及びオリイフイスの接続された燃料ガス管44へ燃料ガスを送給する燃料ガス管31に接続された少くとも1個の遮断弁34,35を備えているのに対し、甲第3号証に記載された発明は、各電磁弁(3),(4)とバーナ部(6)との間にそれぞれオリフィス(10),(11)が形成されている点。
ロ.本件特許発明4は、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25と、蒸気の圧力PがP<P2となり、圧力スイッチ25から作動指令V2を与えられた場合に遮断弁34,35及び電磁弁33,43を開く開指令V8,V9,V7,V12を遮断弁34,35及び電磁弁33,43へ出力し、蒸気の圧力PがP3>P>P2となり、前記圧力スイッチ40から作動指令V10を与えられた場合に遮断弁34,35及び電磁弁43を開く開指令V8,V9,V12を遮断弁34,35及び電磁弁43へ出力すると共に電磁弁33へは開指令V7を出力せず、蒸気の圧力PがP1>P>P3となり前記圧力スイッチ24から作動指令V1を与えられた場合に遮断弁34,35を開く開指令V8,V9を遮断弁34,35に出力すると共に電磁弁33,43には開指令V7,V12を出力せず、蒸気の圧力PがP>P1となり、圧力スイッチ25,40,24から作動指令V2,V10,V1が与えられなくなった場合に遮断弁34,35及び電磁弁33,43に開指令V8,V9,V7,V12を出力しないようにした燃焼制御装置を備えたものであるのに対し、甲第3号証に記載された発明は、ボイラ缶に付設した圧力検出手段を有し、燃焼制御手段は、ボイラ缶内圧に基づいて各電磁弁を選択的に開閉制御するものである点。

(2)判断
(a)まず、相違点イについて検討する。
甲第4号証には、上記4.(4)で指摘した事項からみて、ガスの流量を多段階に変化させるガス燃焼制御装置において、ガスバーナ3と、バーナへガスを供給するガス供給管4に接続された複数の電磁弁8a,8b,8cと、これら電磁弁に対して並列に接続された種火用固定絞りであるオリフィス9と、ガス供給管4に接続された元栓5を設けた点が記載されており、甲第3号証に記載された発明に甲第4号証に記載された事項を適用して、上記相違点イであげた本件特許発明4の構成のようにすることは、当業者であれば容易になし得る程度のことである。
(b)つぎに、相違点ロについて検討する。
(b-1)甲第3号証に記載された燃焼制御装置は、上記4.(3)の記載からみて、蒸気通路に2個の圧力センサを配置し、これら圧力センサからの信号を受け、2つの圧力センサの圧力差から上記流量を計算したのち、電磁弁を最適の組み合わせで開閉するか、あるいは、ボイラ缶に圧力センサを付設し、これによって缶内圧を検出し、この缶内圧および圧力変化率(圧力ー時間微分値)をモニタすることによって4位置制御を行うものであり、甲第3号証には、本件特許発明4のように、ボイラ本体1で生成された蒸気の圧力Pが予め定めた夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2(P1>P3>P2)以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ24,40,25を設けることについては、何ら記載も示唆もなく、また、その燃焼制御装置の動作も本件特許発明4とは、基本的に相違しており、甲第3号証に記載されたものから、上記相違点ロであげた本件特許発明4の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(b-2)また、甲第2号証には、上記5-1(2)(a)で検討したように、ボイラ燃焼量制御装置において、ボイラ本体で生成された蒸気の圧力の検出手段として圧力スイッチを用いること、多位置制御の多位置の数に応じた設定圧力を用いることが示唆されているといえる。
しかしながら、甲第2号証には、本件特許発明4の「夫々異なる所定の圧力P1,P3,P2以下の場合に夫々別個に作動し且つ作動指令V1,V10,V2を出力し得るようにした圧力スイッチ」の構成及び「バーナガンへ燃料ガスを送給するよう燃料ガス管30,29に対して並列配置された燃料ガス管44に接続されたオリフィス」の構成が記載されておらず、甲第2号証に記載された燃焼制御装置は、本件特許発明4の燃焼制御装置とはその作動が相違している。
そうすると、甲第3号証に記載された発明に甲第2号証に記載された燃焼制御装置を採用して、上記相違点ロであげた本件特許発明4の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(bー3)また、甲第1号証及び甲第4号証には、上記相違点ロであげた本件特許発明4の構成は何ら記載も示唆もされていない。
(d)そうすると、甲第1号証乃至甲第4号証に記載されたものから上記相違点ロであげた本件特許発明4の構成を当業者が容易に想到し得たとすることができない。
(e)そして、本件特許発明4は、上記相違点ロであげた構成を採用することにより、本件特許明細書に記載された「プリパージやポストパージにより外部へ排出される熱エネルギーが減少するため省エネルギーを図ることができ、又ボイラ停止時やポストパージ、プリパージ時に蒸気消費量が増大しても蒸気の圧力が極端に低下することがなく、所定の圧力の蒸気が得られるようになるまでの時間が短くてすむため蒸気の生産性が向上し、更に熱応力の繰返し回数、補機類の発停回数が減少するため貫流ボイラの寿命の長期化が可能になる」(段落【0085】)という効果を奏するものである。
(f)したがって、本件特許発明4は、第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1乃至本件特許発明4の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
 
審理終結日 2001-12-12 
結審通知日 2001-12-17 
審決日 2002-03-25 
出願番号 特願平4-321130
審決分類 P 1 112・ 121- Y (F22B)
P 1 112・ 113- Y (F22B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 克彦  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 井上 茂夫
岡本 昌直
登録日 1999-06-18 
登録番号 特許第2942080号(P2942080)
発明の名称 ボイラ燃焼量制御装置  
代理人 大塚 誠一  
代理人 大塚 誠一  
代理人 山田 恒光  
代理人 山田 恒光  

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