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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16F
管理番号 1060892
審判番号 不服2001-11381  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-04 
確定日 2002-07-24 
事件の表示 平成10年特許願第299157号「免震装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成12年 3月 7日出願公開、特開2000- 74139、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明

本願は、平成10年10月6日の出願であって、その請求項1乃至11に係る発明(以下、「本願発明1」乃至「本願発明11」という。そして、それらを総称して「本願発明」という。)は、平成12年7月4日付け、平成13年4月23日付け及び平成14年4月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 支持体と被支持体間に介在して装着され、前記支持体に固設され中央部が最低部分をなす凹状の下部レールと、前記下部レールに係合する一対の下部車輪と該下部車輪を直接又は軸受けを介して回動可能に軸支する一対の下部車軸と、前記被支持体に固設され中央部が最高部分をなし前記下部レール上方に向合わせの向きに配設された凹状の上部レールと、前記上部レールに係合する一対の上部車輪と該上部車輪を直接又は軸受けを介して回動可能に軸支し前記下部車軸と平行する一対の上部車軸と、前記下部車軸及び上部車軸を互いに固着する一対の支持材をもったハウジングとを備え、前記各レールは前記各車輪が同じ一方向に転動可能におかれ、地震動により前記各車輪がそれぞれ独立に各車軸回りに回動しつつ前記各レールに沿って前記一方向に転動し、前記被支持体の最低レベル位置からの変位に応じて受ける復元力と、前記被支持体の重量の経由による前記各車軸回りの摩擦による減衰力によって前記被支持体を免震可能としたことを特徴とする免震装置。
【請求項2】 下部車輪及び下部車軸の組合せと上部車輪及び上部車軸の組合せのうちの一方の組合せを各一対とし、他方の組合せを各一としたことを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】 各車輪及び車軸の軸芯が実質的に三角形の頂点部に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】 各車輪及び車軸の軸芯が実質的に方形又は台形のいずれかの頂点部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項5】 各車輪及び車軸の軸芯が実質的に平行四辺形の頂点部に配設され、地震動非作動時の基準状態において水平方向にみて下部レール中部の最低部分位置と上部レール中部の最高部分位置とが両端部側に隣接する下部車輪及び上部車輪の軸心間距離と実質的に同じずれを有していることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項6】 一対の支持材間に跨がって各車輪を避けた位置に連結材が固着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の免震装置。
【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の免震装置において、支持材間に複数の下部車輪及び上部車輪を間隔をおいて直列に配設したことを特徴とする免震装置。
【請求項8】 請求項7に記載の免震装置において、隣接する下部車輪及び上部車輪間に下部車軸及び上部車軸を貫通して嵌着した隣接する各車輪間隔より僅かに小さい幅を有する補強材を配設したことを特徴とする免震装置。
【請求項9】 請求項7又は8に記載の免震装置において、下部レールのレール面下方両端部に該レール面に平行して刻設された下部案内面と、上部レールのレール面上方両端部に該レール面に平行して刻設された上部案内面と、上下長手に延びる支持材をもったハウジングと、前記支持材の上下端部に固着された軸の内側端部に回動自在なローラ状のカムフォロアとを備え、地震動による各車輪の転動に連動して前記カムフォロアが前記下部案内面及び上部案内面に沿って転動可能とされていることを特徴とする免震装置。
【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載の免震装置において、各車輪に各車軸をそれぞれ固着し該各車軸をハウジングに穿設された開口部に直接又は軸受けを介して回動可能に支持せしめたことを特徴とする免震装置。
【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の免震装置の少なくとも一対を下部レール及び上部レールの車輪転動方向を互いに直角になるよう支持体上に二段重ねして固着し、直交する二方向成分を含む地震動により各車輪がそれぞれ各車軸回りに回動しつつ各レールに沿って前記二方向に転動し被支持体を免震可能としたことを特徴とする免震装置。」


2.第36条違反について
当審における平成14年3月6日付けの拒絶理由において、平成14年4月23日付けの手続補正書による補正前の本願の請求項7に係る発明が、「なぜ従来のころタイプにおけるデッドロック等の問題を回避できるのか不明瞭」であるため、「本願の発明の詳細な説明は、」当該補正前の「請求項7に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない」としている。
しかしながら、平成14年4月23日付けの手続補正書による補正で、当該補正前の請求項7は削除されたため、特許法第36条第4項に規定する要件を満足することとなった。また、他に、本願明細書及び図面の記載に不備な点は見当らない。


3.第29条違反について

3.1 当審及び原査定において通知した拒絶理由に引用した刊行物に記載された発明

刊行物1:特開平4-107339号公報
刊行物2:特開平10-61250号公報
刊行物3:実願昭57-201039号(実願昭59-101033号)のマイクロフィルム
刊行物4:特開昭48-308号公報
刊行物5:実願昭56-56590号(実開昭57-169717号)のマイクロフィルム
刊行物6:特開平9-303481号公報

上記刊行物1には、「防振装置」に関して、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「複数のローラを凸曲面状となるように並列させて軸支した一対のローラセグメントを、その凸曲面を上下側に向けて背向させ、且つ、各ローラセグメントの相互のローラを直交させた状態で相互に傾動可能に上下配置し、各ローラセグメントのローラを受ける凹曲面状の転動面を有するレールを各ローラセグメントの上下に配置した」(第2頁左下欄第1〜7行)
(b)「振動入力を受けた場合、防振床(3)の下部にある上部レール(5)が静止状態で、スラブ(2)の上部にある下部レール(6)がXY平面内で移動する」(第3頁右下欄第7〜10行)

上記刊行物2には、「耐震装置」に関して、下記の技術的事項が記載されている。
(c)「一方向から見て左右対称で中心部が最も深く且つ外側の勾配が大きい断面形状を有する凹状面を備えた支持部材2個を凹状面を向かい合わせにして上下に配置し、上記視方向に沿って水平に配置される1本の円柱状ローラを両凹状面の間に介在させた状態で重ねることにより耐震ユニットを構成し、この耐震ユニットをローラの軸が直交する向きに上下に2段に重ねて配置している。」(第2頁右欄第26〜33行)
(d)「ローラ5,6が正規の位置からずれると所期の機能を発揮できなくなるので、このずれを確実に防止するための構造を付加してもよい。図7はその一案であり、各ローラ5,6の両端部分にそれぞれピニオンギヤ5a,6aを形成し、これに対応して各凹状面3D,3U及び4D,4Uにラック状ギヤ3b,3c及び4b,4cをそれぞれ形成し、これらのギヤを噛み合わせるようにするのである。これによりローラ5,6と各凹状面との間に滑りが生ずることはなくなり、所期の機能を長期間維持することが可能となる。」(第4頁右欄第11〜20行)

上記刊行物3には、「水平動防振装置」に関して、下記の技術的事項が記載されている。
(e)「水平動防振機構が、上記物体の外側および上記固定物の外側にそれぞれ取付けられる一対の凹状受部と、同一対の凹状受部の間に介装されたころがり部材とをそなえて構成されるとともに、上記ころがり部材の転動を許容しながら同ころがり部材に嵌合され、且つ、上記凹状部材に接触するように配設される環状摺動部材を備えて構成された」(第3頁第13行〜第4頁第1行)
(f)「ゴムシール5を施すことによってシリコンオイル4を充填すると、ころがり部材としての球3aのころがり抵抗が増して、振動をより減衰させることができる。」(第11頁第2〜4行)

上記刊行物4には、「ウォーキングビーム加熱炉」に関して、下記の技術的事項が記載されている。
(g)「車輪支持体31の上下に上部車輪32と下部車輪35を設け、ビーム上下動時には双方を同時に回転させ、またビーム水平動時には上部車輪22を回転させ下部車輪を停止させている。」(第2頁右上欄第19行〜左下欄第3行)

上記刊行物5には、「ウォーキングビーム装置」に関して、下記の技術的事項が記載されている。
(h)「ローラ12とローラ14とは相対的に自由に回転できる為、可動ビーム2の水平移動は生じず、垂直方向の移動みのが生じる。」(第6頁第17〜20行)
(i)「このローラー装置10は、第4図に示すように、三角形状のブラケット20の各頂点付近にそれぞれ小さなローラ12a,12b,14aを回動自在に取付けて、下の2個のローラ12a,12bを斜面9上に乗せ、上のローラ14a上に可動ビーム2を直接乗せるようにしても良い。このようにすると、従来のように長い脚7がないので、この部分が曲がることはなく、丈夫である。」(第7頁第18行〜第8頁第5行)

上記刊行物6には、「免震架台」に関して、下記の技術的事項が記載されている。
(j)「断面コの字形状のガイドレール10と、このガイドレール10のうち下ガイドレール10aに沿って転動する複数(少なくとも2個以上)の下ガイドローラ11と、ガイドレール10のうち上ガイドレール10bに沿って転動する複数(少なくとも2個以上)の上ガイドローラ30とからなり、この上下ガイドローラ11、30は第2の架台4の側方4a、4bにそれぞれ立設された軸12に回動自在に支承されている。」(第4頁右欄第6〜13行)
(k)「立て揺れ発生等の要因により、第1の架台3がガイドレール10に対し傾斜しようとしても、第1のスライド手段7を構成する一対の上ガイドローラ30、30が、ガイドレール10の上ガイドレール10bに常時当接しているので、第1の架台3はガイドレール10に対し傾斜せず、このため上下ガイドローラ11、30のスムーズな転動がそのまま維持される。」(第4頁右欄第28〜34行)

3.2 対比・判断

(1)本願発明1について
本願発明1と刊行物1〜6に記載された発明とを対比すると、本願発明1を特定する事項である「凹状の下部レール」、「一対の下部車輪」、「一対の下部車軸」、「凹状の上部レール」、「一対の上部車輪」及び「下部車軸と平行する一対の上部車軸」を組み合わせた構造(以下、「特定構造」という。)が、刊行物1〜6のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。また、特定構造が、従来周知のものであったとも、従来慣用されていたものであったとも認められない。
そして、本願発明1は、特定構造によって、「ころを上下に挟んだ凹状面にデッドロック状態に陥る」(項目【0003】参照)ころタイプの欠点を持たない車輪タイプでありながら、「装置の大きさを従来の車輪タイプより大幅に小さく、ころタイプに近似して小さくとることができる」(項目【0028】参照)という格別顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、上記刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

(2)本願発明2乃至11について
本願の請求項2乃至11は、独立請求項である請求項1の従属請求項であり、本願発明2乃至11は、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する。
そして、本願発明は、上記「(1)本願発明1について」に示した理由により、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められないから、本願発明2乃至11も、同様の理由により、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。


4.むすび
結局、本願については、当審における平成14年3月6日付け拒絶理由通知、及び原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-07-03 
出願番号 特願平10-299157
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 内田 博之
常盤 務
発明の名称 免震装置  
代理人 飯田 房雄  

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