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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1065840
異議申立番号 異議2001-71422  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-08-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-10 
確定日 2002-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3115339号「浄化槽の遠隔管理方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3115339号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3115339号の請求項1に係る発明についての出願は、平成3年1月12日に特許出願され、平成12年9月29日にその発明についての特許の設定登録がなされたものである。
その後、その特許について、異議申立人 菊間靖郎、鈴木敏及び野中恵よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年12月21日付けで訂正請求書が提出されたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
請求項1の「各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して管理することを特徴とする浄化槽の遠隔管理方法」とある記載を、「各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理することを特徴とする浄化槽の遠隔管理方法」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0004】の記載について「すなわち、各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して管理することとする。」とあるのを、「すなわち、各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理することとする。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、「管理する」を技術的に限定して「所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。そして、いずれの訂正事項も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記訂正は、上記2.で示したように認めることができるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2.(1)ア.訂正事項a参照)
(2)引用刊行物の記載内容
当審が平成13年10月15日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1〜4には、それぞれ以下の事項が記載されている。
刊行物1:「公害と対策」Vol.22 No4(1986)第69頁〜第75頁「排水処理における小型コンピューターの利用」(第4講)(昭和61年4月15日発行)
(a)「複数個所の下・排水処理施設からの情報は電話回線か専用回線によって中央の管理センターに送られ、そこで一括監視する・・・・機器の異常などを警報として中央に送信し、簡単な異常はマイコンを通して処置させる・・・人件費の節約に役立つであろう。」(第73頁右欄23〜34行)
(b)「図21に複数ヶ所の下・排水処理施設の遠隔自動監視システムの概念を示した。各処理施設はコンピューターを含んだ自動制御機器で定常的に自動運転されており、そこから得られる排水量、ポンプなどの機器の作動状態あるいはセンサーから得られる水質(pH,DO、ORP、UVあるいはCODなど)などの刻々の情報をCPU集約処理し、MODEMあるいは音響カプラーを介して電話あるいは専用回線で一ヶ所(監視センター)に設けたホストコンピューター(複数のマイコンを支配するコンピューター)に送り、各施設ごとのデータを出力させることになる。こうして各施設の運転状況を・・・トラブルの原因となっている機器とその種類を確認し、予備の機器があればマイコンにそれへの切り換えを指示させる。必要があれば巡回管理員を派遣させることになる。」(第73頁右欄下から6行〜第74頁左欄11行)
(c)「各施設に置かれたコンピューター(CPU)は、施設の運転制御のために使われるが、同時に時々刻々のデータを集約して電話回線を閉じておくとともに、ホストコンピューターの負担を軽くするのに役立つ。」(第74頁左欄16〜19行)、
(d)「たとえば、施設の規模が非常に小さくなれば、施設自体にゆとりを持たせ、またメンテナンスフリーの機器を使用するなどして、監視は冠水とかポンプの故障などを警報として送信させる程度の簡単なものですむであろう。」(第74頁右欄4〜8行)
(e)図18には、排水処理施設における管理項目(活性汚泥プロセス)に関し、流入下水が前処理、ばっ気槽、沈殿槽を経て減菌後処理水として放出される工程における管理項目として、前処理においては流入下水水量、流入下水水質、ばっ気槽においては溶存酸素、曝気量、滞留時間、返送汚泥量、汚泥の質・量、沈殿槽・減菌においては処理水量、処理水質、溶存酸素、汚泥量、汚泥濃度が記載されている。
(f)図21には、複数ヶ所の下・排水処理施設の遠隔自動監視システムの概念図が示され、そこには排水処理施設からの処理水質、汚泥濃度、流入水量、流入水質の情報をセンサーや測定機器からCPUに入力し、電話回線を介してホストコンピューターに送信し、運転状態を監視することが記載されている。
刊行物2:特開昭61-258176号公報
(a)「水利施設に設置された駆動装置の状態を検知するセンサー部と、該センサー部からの情報を予め設定された基本データと比較して上記駆動装置の故障状態を判断し、その原因、対策を選定する処理部と、該処理部からの出力に基づき上記駆動装置の故障状態とその原因、対策を表示する表示部とからなることを特徴とする水利施設の監視装置」(特許請求の範囲)
(b)「駆動装置は種々の原因で例えば通電、過負荷、過トルク等の故障を生じることがあり、このため、この故障状態を監視する装置が設けられていた。」(公報第1頁右欄12〜15行)
(c)「センサー部として例えば漏電検出センサー、過負荷検出センサー、過トルク検出センサー、温度検出センサー等がある」(公報第2頁右上欄3〜5行)
刊行物3:「Public Works」Vol.106 No.10、88〜89頁、112頁1975年10月号
(a)「前述したすべての問題を解決するための明白な方策は、民間企業で開発された技術を利用して自動化することである。自動化は、以前からポンプ場でのポンプの調整に用いられ、廃水処理装置においては限られた範囲で用いられていたが、現在では、大規模で複雑な廃水処理プロセスでも自動的に調整や制御を行える方法が利用できるようになりつつある。デジタルやアナログのモニター機能を利用するリアルタイムのコンピュータは、流入廃水特性を分析し、処理プロセスを自動的に変更して、流量や生物学負荷などのパラメーターにおける変動を修正する。同様に重要なことは、装置の修正能力を超える条件が生じた場合に人間の援助を求める信号を発するようにコンピュータがプログラムされていることである。(訳文)」(88頁中欄5〜29行)
(b)「廃水施設における故障の警報は、プロセスコンピュータ設備における警報のように、人員が1日24時間配置されていて警報に対して直ちに手配できる遠隔地に信号を送信するように設計されていなければならない。(訳文)」(89頁16〜28行)
(c)「代表的な遠隔警報は、破損や故障を感知または検出して、信号を電話回線により中央の人員が配置されている地点へ送信する。かような地点は、警察署、消防署あついは1日24時間配置されているその他いかなる場所とすることができる。警報は、所望により、いかなる種類の破損や故障の信号でも送信するように設計できる。これらの信号の例としては、電力異常、満水、活性汚泥装置における曝気量低下、過大な濁度、過大なスラッジ蓄積、ポンプまたはモーター破損、一次タンクの故障、高いまたは低い残留塩素、塩素ガスの漏洩などが挙げられよう。これら多数の警報信号の種類は、実際には設計者または設備所有者の要望や常識によってのみ限定される。(訳文)」(89頁左欄38〜57行)
刊行物4:特開平3-1699号公報
(a)「近年、し尿処理場においては運転状態を監視するために・・・・・一部の処理場では、し尿処理場を設計施工したメーカー(以下運転監視者と称する)のコンピュータと、し尿処理場のコンピュータとを公衆回線を介して接続し、運転監視者が遠隔地にあるし尿処理場の運転状態を運転データに基づいて監視する試みがなされている。」(公報第1頁右欄11行〜第2頁左上欄7行)
(b)「以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明・・・し尿処理場1には、運転状態を監視するに要する指標を検出するために、計測器3として処理水などの流量を計測する流量計や酸素要求濃度を計測するDOセンサーやpH濃度を計測するpHセンサーなどが設けられている。そして、各計測器3は処理場用コンピュータ4に接続されており、・・・計測された計測データを処理場用コンピュータ4に運転データとして逐次入力するとともに、処理場用コンピュータ4の記憶回路に記憶する。そして、予め処理場用コンピュータ4に設定した期間ごとに、・・・公衆回線を介して・・・ホストコンピュータ9に処理場用コンピュータ4をアクセスさせる。そして、・・・監視者は任意の時期に・・・公衆回線を介して・・・ホストコンピュータ9に監視用コンピュータ11をアクセスさせる。そして、・・・監視用コンピュータ11で受信した運転データに基づいて遠隔地のし尿処理場1の運転状態を監視する。」(公報第2頁右下欄2行〜第3頁右上欄7行)
(3)対比・判断
刊行物1には、「下・排水処理施設の遠隔自動監視システム」に関し、「複数個所の下・排水処理施設からの情報は電話回線によって中央の管理センターに送られ、一括監視する」と記載されている(記載事項a、図21参照)。その刊行物1の上記(b)の記載や図21によれば、各処理施設はコンピューターを含んだ「自動制御機器」で自動運転され、センサーから得られる水質などの情報をCPUで集約処理し、MODRMを介して電話でホストコンピューターに送信するものであるから、各処理施設には端末装置が設けられていることは明らかである。そして、「各処理施設」は、本件発明の「各浄化槽」に相当するから、刊行物1には、「各浄化槽側に、各種センサーからの出力を設けた端末装置において、端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を一括監視する浄化槽の遠隔自動監視システム」が記載されていると云える。
また、この「監視システム」における「必要な情報」については、「排水量、ポンプなどの機器の作動状態あるいはセンサーから得られる水質(pH,DO、ORP、UVあるいはCODなど)(上記(b)参照)や「処理水質、汚泥濃度、流入水量、流入水質」(図21参照)が例示されており、本件特許明細書の記載によれば、この中の「pH、DO」などは本件発明の「浄化処理条件としての曝気槽情報」に該当し、「流入水量」は本件発明の「流量情報」に該当する。
さらに、刊行物1の上記(a)や(d)の記載によれば、この「遠隔自動監視システム」においては、機器の異常や冠水やポンプの故障などの警報情報を送信(出力)させることも示唆されているから、端末装置には警報情報の送信(出力)手段が設けられていることも明らかである。
そうすると、これら刊行物1の記載を本件発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、
「各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報、流入情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に冠水や機器の異常などの警報出力手段を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を一括監視する浄化槽の遠隔自動監視システム」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると云える。
そこで、本件発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「一括監視する浄化槽の遠隔自動監視システム」は、本件発明の「集中管理する浄化槽の遠隔管理方法」と実質的に差異はないから、両者は、「各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報、流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に警報出力手段を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理する浄化槽の遠隔管理方法」の点で一致するが、以下の点で相違すると云える。
(イ)本件発明では、「端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け」るのに対し、引用発明1では、「端末装置に冠水とかポンプの故障等などの警報出力手段を設け」る点。
(ロ)本件発明では、「所定の時間間隔でもって」必要な情報が自動的に管理装置に伝えられるのに対し、引用発明1では、「所定の時間間隔でもって」情報が伝えられているか明らかでない点。
次に、これら相違点について検討する。
(a)相違点(イ)について
本件発明の「該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け」という構成の「該端末装置に対して、・・・警報出力を設け」の表現振りでは、情報の出力先が特定されていないから、この意味は、端末装置に警報出力手段を設けて(α)警報情報を中央管理装置に出力(送信)すること、(β)警報情報を端末装置でも出力すること、の2通りに解釈することができると云えるところ、上記(α)の場合については、引用発明1も同様であるから、この場合には両者に実質的な差異はない。また、上記(β)の場合について検討すると、例えば引用刊行物2にも記載されるとおり、各浄化処理施設でも、施設内の漏電や過負荷などの機器の異常情報を端末装置の表示部に表示(出力)して管理しているから、警報情報を端末に出力することは周知・慣用手段であると云える。
そうすると、上記相違点(イ)の「該端末装置に対して、・・・警報出力を設け」る点については、引用発明1及び引用刊行物2に記載の周知・慣用手段を参考にすれば当業者が容易に想到することができたことと云える。
次に、「満水、漏電及び過負荷」の警報情報について検討すると、「漏電や過負荷」の情報は、上記引用刊行物2に記載されているとおり、浄化処理施設では周知の警報情報である。また、「満水」情報についても、引用刊行物1では「冠水」情報を警報情報としているが、「冠水」とは、水をかぶること(「広辞苑」(株)岩波書店)であるから、「満水」と「冠水」とは、水が溢れる前の「満水」した状態を警報するか、満水後に水が溢れて「冠水」した状態を警報するかの違いだけであって、水量を警報情報とする点では共通するものである。また、「満水」を警報情報とすることも上記引用刊行物3の(c)に記載されているように周知の事項であるから、「冠水」から「満水」を想起することも当業者であれば容易になし得たことと云うべきである。
してみると、上記相違点(イ)は引用発明1及び引用刊行物2及び3に記載の周知・慣用手段を参考にすれば当業者が容易に想到することができたことと云うべきである。
(b)相違点(ロ)について
情報の送信の仕方として、「所定の時間間隔でもって」伝達することは周知のいわば技術常識というべき事項である。すなわち、例えば引用刊行物4にも「計測された計測データを処理場用コンピュータの記憶回路に記憶し、予め処理場用コンピュータに設定した期間ごとにホストコンピュータにアクセスさせる」(上記(b)参照)や「運転データを任意の時期に送受信でき、利便性が向上する。」(第3頁右上欄第13行乃至第14行)と記載されているとおり、一般に情報をある一定の間隔で送信するのが技術的に普通のことである。そして、このことは、引用刊行物1の上記(b)の「刻々の情報をCPUで集約処理し、・・・ホストコンピューターに送り」という記載からも窺い知ることができる。何故なら、「刻々の情報を集約処理」して送信するとは、時間的にみれば「データを集約」する時間の間隔をもって送信することを意味することが明らかであるからである。
してみると、上記相違点(ロ)も、情報送信に関する上記周知事項を参考にすれば当業者が容易に想到することができたことと云うべきである。
したがって、本件発明は、刊行物1に記載の発明と引用刊行物2〜4に記載の周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとするのが相当である。
4.むすび
以上のとおり、訂正後の本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
浄化槽の遠隔管理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサから出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理することを特徴とする浄化槽の遠隔管理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、コンピュータ及び電話回線を利用して、各地に分散設置されている複数の浄化槽を集中的に遠隔管理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、分散設置された複数の浄化槽の管理は、作業員が各浄化槽の設置場所へ出向いて、サンプリング又はその一部を現場分析をし、そのデータに基づいて、流量調整、曝気量調整、消毒剤の補充、ブロワ、ポンプ等の各種機器の保守点検等の作業をして帰り、集中管理を行っていた。そのため、保守点検用の作業員を多数必要としていた。また、分析者によるデータのバラツキ、更にデータ分析に対する熟練度を要するなど多くの問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来頻繁に行われている現地へ出向いての維持管理を大幅に削減し、かつ、常時管理と迅速な処置により、安定した正常運転ができるようにすることを目的に開発したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理することとする。ここでセンサ出力は、少なくとも曝気槽又は接触曝気槽のDO、及び放流水のpHと残留塩素濃度であることを主体とする。
【0005】
【作用】
各種センサからの出力が自動的に端末機に記憶され、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられる。異常の場合は、警報出力装置が働く。警報がない場合は、定期的に、例えば1ヶ月に1度、センサ等の点検をするのみでよい。正常な場合は、その必要もない。場合により半年又は1年に1度位でもよく、複数の浄化槽を中央で遠隔管理可能となる。
【0006】
【実施例】
図1は本発明方法に用いるシステムの全体構成ブロック図である。
本発明では複数の浄化槽を集中管理するために、図2に詳細を示したが中央管理装置1としてセンターへコンピュータが設置されている。センターコンピュータはモデムを介して電話回線と接続可能で外部からのデータが入力され、また、必要に応じて出力データが送られる。中央管理装置1におけるコンピュータには必要に応じてホストコンピュータも使用される。
【0007】
一方、各浄化槽側には、曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサが備えられ、これらのデータは、図3にみられるようにA/D変換されて端末装置2のCPUからモデムを介して電話回線により、図2に示す中央管理装置1のセンターコンピュータへ送られる。センサ出力としては、曝気槽又は接触曝気槽の水温、pH、MLSS、DO、亜硝酸濃度、放流水のpH、SS、COD、残留塩素、アンモニアイオン濃度、流量として流入量、汚泥返送量、曝気量等を挙げることができる。
【0008】
各浄化槽側の端末装置2のCPUには、図3にもみられるように、満水警報、漏電警報、過負荷警報及び停電警報等の警報出力回路が設けられている。満水警報は汚水槽、調整槽、中継槽及び放流槽の各槽における満水状態を監視して異常時にセンターへ送信される。漏電警報及び過負荷警報はポンプとブロワに関するものであり、停電警報は総合的になされるものである。
【0009】
図4に実施例における制御系統図を示した。汚水はスクリーンユニット4を通して汚水槽5へ導き、ここで一時貯留する。場合によりポンプアップして、汚水槽5から調整槽6へ移す。調整槽6へはブロワ室3の調整ブロワ3aにより空気をバブリングさせて底に汚泥が堆積するのを防ぐ。汚泥水の流量を流入量センサ8で感知して一定量に調整し、曝気槽7へ移す。
【0010】
曝気槽にはブロワ室3の曝気ブロワ3bから送気して好気性に保つ、ここにも曝気量センサ9が設けられ、更に、DOセンサ10とMLSSセンサ11により条件コントロールをする。曝気された処理水と活性汚泥とは沈殿槽12へ移され、沈殿分離してエアリフトブロワ3cで作動するエアリフトポンプ14により活性汚泥を再び曝気槽7へ返送する。この量を汚泥返送量センサ13でチェックする。
【0011】
上記のように浄化槽は曝気のための空気を送るブロワ室3があるが、これより調整槽6、曝気槽7へエアレーションが行われる。この曝気量が流量としてデータ化される。測定はリング付オリフィス流量計である。曝気槽7には前記DOセンサ10、MLSSセンサ11等以外に、測温抵抗体の温度計、ガラス電極法デジタル表示のpHセンサ、ダブル散乱光比較方式の濁度計等を設けることができる。
そして、沈殿槽12から消毒槽15を経た後の放流水は、放流槽16内にあるpHセンサ17、濁度計としての表面散乱型SSセンサ18、残留塩素濃度測定のための遊離塩素センサ19等によって計測される。
【0012】
本発明では、この浄化処理条件としての曝気槽情報、放流水情報又は流量情報を感知をする各種センサからの出力、及び満水、漏電、過負荷等の警報出力は端末装置2から中央管理装置1へ電話回線で連絡され、これにより管理する。
【0013】
【発明の効果】
本発明によると下記のような効果が得られる。
▲1▼高精度のセンサを介して測定した水質管理データを遠隔で収集できるため、現地での点検、測定にともなう稼働削減(すなわち、端末稼働の省力化)が可能である。
▲2▼リアルタイムな情報をいつでも測定できるため、システムを介して浄化槽の水質状況を常に把握できる(水質管理の充実)。
▲3▼端末設備機器等の異常発生時に、その個所を明確に速報するため、迅速な対応が図れる(警報監視の充実)。
▲4▼水質管理及び警報監視を充実させることにより、浄化槽管理の信頼性向上に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明方法に用いるシステムの全体構成ブロック図である。
【図2】
本発明方法に用いるシステムの中央管理装置ブロック図である。
【図3】
本発明方法に用いるシステムの端末装置ブロック図である。
【図4】
本発明方法における制御系統図である。
【符号の説明】
1 中央管理装置
2 端末装置
3 ブロワ室
4 スクリーンユニット
5 汚水槽
6 調整槽
7 曝気槽
8 流入量センサ
9 曝気量センサ
10 DOセンサ
11 MLSSセンサ
12 沈殿槽
13 汚泥返送量センサ
14 エアリフトポンプ
15 消毒槽
16 放流槽
17 pHセンサ
18 SSセンサ
19 遊離塩素センサ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第3115339号発明の明細書を平成13年12月21日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、次の訂正事項a及びbのとおり訂正するものである。
訂正事項a:「各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して管理することを特徴とする浄化槽の遠隔管理方法」とある特許請求の範囲の請求項1の記載を、「各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理することを特徴とする浄化槽の遠隔管理方法」と訂正する。
訂正事項b:明細書の段落【0004】の記載について「すなわち、各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して管理することとする。」とあるのを、「すなわち、各浄化槽側に、浄化処理条件としての曝気槽情報又は接触曝気槽情報、放流水情報又は流量情報の感知をする各種センサからの出力を設けた端末装置において、該端末装置に対して、満水、漏電及び過負荷の警報出力を設け、これら各端末装置と、中央管理装置とを電話回線で連絡して、所定の時間間隔でもって必要な情報が自動的に管理装置に伝えられ複数の浄化槽を集中管理することとする。」と訂正する。
異議決定日 2002-05-07 
出願番号 特願平3-41376
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 沼沢 幸雄
山田 充
登録日 2000-09-29 
登録番号 特許第3115339号(P3115339)
権利者 株式会社アールエコ
発明の名称 浄化槽の遠隔管理方法  
代理人 森 廣三郎  
代理人 森 廣三郎  

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