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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03F |
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管理番号 | 1067129 |
審判番号 | 不服2001-15115 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-27 |
確定日 | 2002-11-05 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第 41923号「広帯域出力回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 8月27日出願公開、特開平 5-218755]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年2月1日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年9月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「集積回路を有する広帯域出力回路において、 上記集積回路内に形成されるギルバート型の演算増幅回路と、 上記演算増幅回路の出力がベースに供給され、エミツタが温度依存性のない電流を供給する電流源に接続された第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段と、 上記集積回路の外部に設けられ、ベースが直流電源端子に接続されると共に、エミツタが上記集積回路の出力端子を介して上記第1のトランジスタのコレクタと接続される第3のトランジスタと、 上記第3のトランジスタのコレクタに接続され、上記直流電源端子を介して供給される直流電圧に基づいて、当該コレクタから上記出力端子を介して上記第1のトランジスタに供給されるコレクタ電流を出力電圧に変換する上記集積回路の外部に設けられた外部負荷抵抗と、 ベースが上記外部負荷抵抗及び上記第3のトランジスタのコレクタ間に接続され、当該ベースに供給される上記出力電圧に基づいて、エミツタから増幅電圧を出力する第4のトランジスタと を具えることを特徴とする広帯域出力回路。」 2.引用例 (1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開昭63-1211号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 イ.送信側の出力回路(1)を高出力インピーダンスの電流駆動回路(1A)で構成し、受信側の入力回路(2)をベース接地回路で構成し、ベース接地回路を構成するトランジスタ(2A)のエミッタと前記出力回路(1)とを信号線(100)を介して接続し、ベース接地回路用トランジスタ(2A)の負荷抵抗(23)を接続したコレクタを出力としてなることを特徴とするインタフェイス回路。(特許請求の範囲、請求項1) ロ.前記電流駆動回路(1A)を差動オープンコレクタ回路とし、該差動オープンコレクタ回路のコレクタ出力毎に前記ベース接地回路を設けたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のインタフェイス回路。(特許請求の範囲、請求項2) ハ.第3図には、本発明の他の実施例の構成が示されている。 本実施例は送信側の出力回路1をトランジスタ11,12による高出力インピーダンスの電流駆動回路で構成し、受信側の入力回路をトランジスタ21,22、直流電源25、負荷抵抗23,24からなるベース接地回路で構成したものである。即ち、トランジスタ11,12の差動増幅回路によって高出力インピーダンスの電流駆動回路を構成し、トランジスタ21,22のベースを交流的に接地したベース接地回路で構成し、送信側から受信側へ差動信号を伝送するようにしたものである。 本実施例においても、送信側の出力回路が高出力インピーダンスで構成され、受信側の入力回路でベース接地回路で構成されているため、信号線100,102に浮遊容量Cが付加されても、浮遊容量Cによって周波数特性が劣化し、信号の伝送特性を劣化させてしまうのを防止することができる。 又、本実施例によれば、本実施例におけるインタフェイス回路を、ボンディングパッドの浮遊容量や基板のパターン容量の大きな集積回路間のインタフェイス回路として用いたり、配線パターン容量の大きい集積回路内部の各回路間のインタフェイス回路として用いれば、より高速な信号処理装置を構成することができる。(3頁右上欄末行〜右下欄6行目) 上記記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「インタフェイス回路」は「集積回路間のインタフェイス回路として用いる」ものであるから、上記「送信側の出力回路」は「集積回路内に設けられる出力回路」であり、上記「ベース接地回路のコレクタ出力」を含めた「インタフェイス回路」は「集積回路を有する出力回路」である。 したがって、上記第3図の実施例におけるトランジスタ11,12,21を第1、第2、第3のトランジスタと呼称すると、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「集積回路を有する出力回路において、 上記集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段と、 上記集積回路の外部に設けられ、ベースが直流電源端子に接続されると共に、エミツタが上記集積回路の出力端子を介して上記第1のトランジスタのコレクタと接続される第3のトランジスタと、 上記第3のトランジスタのコレクタに接続され、上記直流電源端子を介して供給される直流電圧に基づいて、当該コレクタから上記出力端子を介して上記第1のトランジスタに供給されるコレクタ電流を出力電圧に変換する上記集積回路の外部に設けられた外部負荷抵抗と、 上記外部負荷抵抗及び上記第3のトランジスタのコレクタ間に接続される出力と を具えることを特徴とする出力回路。」 (2)また、原審の拒絶理由に引用された特開平2-500238号公報(以下、「引用例2」という。)のFig.28〜Fig.37に記載されているようにベース接地回路のコレクタ出力と次段回路の間にエミッタフォロワ回路を挿入することは単なる慣用手段である。 (3)また、例えば特開平1-314406号公報または特開平3-45084号公報(以下、「周知例」という。)には差動増幅器からなる出力バッファを有するギルバート型演算増幅器の基本的な構成が開示されている。 3.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明の「広帯域出力回路」と引用発明の「出力回路」はいずれも「出力回路」であるという点で一致している。 また、本願発明の「集積回路内に形成されるギルバート型の演算増幅回路と、上記演算増幅回路の出力がベースに供給され、エミツタが温度依存性のない電流を供給する電流源に接続された第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段」と引用発明の「集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段」はいずれも「集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段を含む回路」であるという点で一致している。 また、本願発明の「ベースが外部負荷抵抗及び第3のトランジスタのコレクタ間に接続され、当該ベースに供給される出力電圧に基づいて、エミツタから増幅電圧を出力する第4のトランジスタ」からなる回路と引用発明の「外部負荷抵抗及び第3のトランジスタのコレクタ間に接続される出力」はいずれも「最終出力回路」であるという点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明は、 「集積回路を有する出力回路において、 上記集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段を含む回路と、 上記集積回路の外部に設けられ、ベースが直流電源端子に接続されると共に、エミツタが上記集積回路の出力端子を介して上記第1のトランジスタのコレクタと接続される第3のトランジスタと、 上記第3のトランジスタのコレクタに接続され、上記直流電源端子を介して供給される直流電圧に基づいて、当該コレクタから上記出力端子を介して上記第1のトランジスタに供給されるコレクタ電流を出力電圧に変換する上記集積回路の外部に設けられた外部負荷抵抗と、 最終出力回路と を具えることを特徴とする出力回路。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> (1)「出力回路」に関し、本願発明は「広帯域出力回路」であるのに対し、引用発明は単に「出力回路」である点。 (2)「集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段を含む回路」に関し、本願発明は「ギルバート型の演算増幅回路と、上記演算増幅回路の出力がベースに供給され、エミツタが温度依存性のない電流を供給する電流源に接続された第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段」からなるのに対し、引用発明は「第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段」からなる点。 (3)「最終出力回路」に関し、本願発明は「ベースが外部負荷抵抗及び第3のトランジスタのコレクタ間に接続され、当該ベースに供給される出力電圧に基づいて、エミツタから増幅電圧を出力する第4のトランジスタ」からなるのに対し、引用発明は単に「外部負荷抵抗及び第3のトランジスタのコレクタ間に接続される出力」である点。 4.当審の判断 そこで、上記相違点(1)の「出力回路」について検討するに、引用発明の「出力回路」は「浮遊容量Cによって周波数特性が劣化し、信号の伝送特性を劣化させてしまうのを防止することができる」ものであるから、このような回路を「広帯域出力回路」とすることは容易なことである。 ついで、上記相違点(2)の「集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段を含む回路」について検討するに、集積回路内に形成される回路としてどのようなものを特定しても、それらの出力は、「差動増幅手段」を介して出力されるのであるから、「差動増幅手段」よりも前段の回路の種類は発明の作用効果に影響を与えない、単なる設計的事項である。また、「差動増幅手段」の電流源を「温度依存性のない」ものとする点は単に「誰もが望む理想的な差動増幅手段」の構成であるから、「差動増幅手段」をこのようなものに限定することは普通の人が普通に考える程度のことである。また、「差動増幅器からなる出力バッファを有するギルバート型演算増幅器」自体は例えば上記2.(3)で説明したように、従来から周知である。 したがって、引用発明の「集積回路内に形成される第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段を含む回路」である「第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段」を本願発明のような「ギルバート型の演算増幅回路と、上記演算増幅回路の出力がベースに供給され、エミツタが温度依存性のない電流を供給する電流源に接続された第1及び第2のトランジスタから構成される差動増幅手段」に変更することは容易なことである。 また、上記相違点(3)の「最終出力回路」について検討するに、上記2.(2)で指摘したように、ベース接地回路のコレクタ出力と次段回路の間にエミッタフォロワ回路を挿入することは単なる慣用手段であるから、引用発明のベース接地回路のコレクタ出力に「ベースが外部負荷抵抗及び第3のトランジスタのコレクタ間に接続され、当該ベースに供給される出力電圧に基づいて、エミツタから増幅電圧を出力する第4のトランジスタ」からなるエミッタフォロワ回路を付加するように変更する程度のことは当業者であれば容易に成しえることである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された慣用手段ないし周知例に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-08-30 |
結審通知日 | 2002-09-06 |
審決日 | 2002-09-24 |
出願番号 | 特願平4-41923 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長島 孝志、板橋 通孝 |
特許庁審判長 |
武井 袈裟彦 |
特許庁審判官 |
矢頭 尚之 浜野 友茂 |
発明の名称 | 広帯域出力回路 |
代理人 | 田辺 恵基 |