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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1072672 |
審判番号 | 不服2002-1485 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-01-28 |
確定日 | 2003-02-17 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第136743号「デイスク装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年11月25日出願公開、特開平 6-325476]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年5月14日の出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成13年11月27日付及び平成14年2月27日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。 「デイスク状記録媒体に所望のデータを記録再生するデイスク装置において、 ホストコンピユータから出力される制御コマンドに応じて全体の動作モードを切り換える第1の制御手段と、 上記第1の制御手段より出力された制御コードに基づいて上記記録再生を制御する第2の制御手段と、 動作状況を表すステータス情報を発生するステータス情報発生手段と、 動作異状を検出して異状検出信号を出力する異状検出手段と、 上記異状検出信号を基準にして上記ステータス情報をラツチするラツチ手段と を具え、 上記第1の制御手段が上記異状検出信号に基づいて動作異状を検出すると、上記ラツチ手段にラツチしたステータス情報に基づいて、第2の制御手段に動作モードを切り換えるための所定の制御コードを出力することにより記録動作を中止した後、上記記録動作を再び繰り返すようになされたことを特徴とするデイスク装置。」(以下、「本願発明」という) 2.引用刊行物 これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-103079号公報(以下「引用刊行物」という。)には、次の事項からなる発明が記載されている。 (1)「請求項(1)記載の円盤状記録媒体を線速度一定の状態で回転駆動する手段と、 入力デジタル情報をデータ圧縮するデータ圧縮手段と、 この圧縮したデータにエラー訂正エンコード処理及び記録に適した変調を行なう記録エンコード手段と、 このエンコードしたデータを前記円盤状記録媒体に記録する手段と、 前記データ圧縮手段と前記記録エンコード手段との間に設けられ、前記円盤状記録媒体上の記録位置がトラックジャンプしてから正しいトラック位置に復帰するまでの間に相当する記録時間分のデータ圧縮手段からのデータを少なくとも蓄積可能なデータ容量を有するバッファメモリと を有する円盤状記録媒体の記録装置。」(特許請求の範囲の請求項2) (2)「先ず、光磁気ディスクへの記録時について説明する。なお、記録時と再生時とでは、システムコントローラ20からのモード切替信号R/Pにより、各回路部がモード切り換えなされるようにされている。システムコントローラ20には、キー入力操作部(図示せず)が接続されており、このキー入力操作部における入力操作により動作モードが指定される。」(第5頁右下欄第2〜9行) (3)「また、記録中にトラックジャンプが生じたことを検出したときには、回路26へのデータ転送を停止し、処理回路23からの圧縮データdaをバッファメモリ25に蓄積する。そして、記録位置が修正されたとき、バッファメモリ25からの回路26へのデータ転送を再開するようにする制御を行う。 トラックジャンプが生じたか否かの検出は、例えば振動計を装置に設け、振動の大きさがトラックジャンプが生じるようなものであるか否かを検出することにより行うことができる。また、この例のディスク1には、前述したように、プリグルーブを形成する際に、トラッキング制御用のウォブリング信号に重畳して絶対時間コードが記録されている。そこで、このプリグルーブからの絶対時間コードを記録時に読取り、そのデコード出力からトラックジャンプを検出するようにすることもできる。また、……。 なお、トラックジャンプが生じたときには、光磁気記録のためのレーザ光のパワーを下げる、あるいはパワーを零とするようにしておくものである。 そして、トラックジャンプが生じたときの記録位置の修正は、前記の絶対時間コードを用いて行うことができる。」(第6頁右上欄第13行目〜左下欄第18行目) (4)「なお、この記録時において、光学ヘッド30の出力がRF回路31を介して絶対時間デコード回路34に供給されて、ディスク1のプリグルーブからの絶対時間コードが抽出されると共に、デコードされる。そして、そのデコードされた絶対時間情報が記録エンコード回路27に供給されて、記録データ中に絶対時間情報として挿入されて、ディスクに記録される。絶対時間デコード回路34からの絶対時間情報は、また、システムコントローラ20に供給され、前述したように、記録位置の認識及び位置制御に用いられる。」(第7頁左下欄第2〜12行) (5)「また、RF回路31はプリグルーブからの絶対時間コードを抽出して絶対時間デコード回路34に供給する。そして、システムコントローラ20に、このデコード回路34からの絶対時間情報が供給され、必要に応じて再生位置制御のために使用される。また、システムコントローラ20は、再生データ中から抽出されるセクタ単位のアドレス情報も、光学ヘッド30が走査している記録トラック上の位置を管理するために用いることができる。」(第8頁左上欄第14行〜同頁右上欄第3行) 3.対比 本願発明と引用刊行物に記載された発明とを対比すると、本願発明の「動作状況を表すステータス情報」は、本願明細書の段落【0027】に記載されるとおりの「ステータス情報生成回路20は、光磁気デイスク装置1の動作状況を表すステータス情報を生成して出力する。ここで図2に示すように、ステータス情報は、光磁気デイスクのトラツクフオーマツト(図2(A))に対応して、トラツクナンバT及びセクタナンバSを用いて光ビームの走査位置を表すIDS情報IDSと(図2(B))、各セクタの先頭に記録されたID領域とその後に記録されたデータ記録領域との識別データでなるセクタ情報ID0ST〜DATST(図2(C)〜(F))とで形成され、ステータス情報生成回路20は、データ処理回路6で検出されるアドレスデータ等を基準にしてこのステータス情報を生成する。」というものであるから、引用刊行物に記載された「記録位置」に相当するものと認められる。 そして、本願発明の「第2の制御手段」は、第1の制御手段からの制御コードを受けて記録再生を制御し、異状検出時には所定の制御コードを受けて記録動作を中止し、記録動作を再び繰り返すものであることから、引用刊行物に記載された「サーボ制御回路」や「トラックジャンプメモリコントローラ」等システムコントローラにより制御されて記録の制御を行う構成に相当するものと認められる。 また、引用刊行物に記載された「パワーを零とするようにしておく」,「記録位置が修正されたとき、バッファメモリ25からの回路26へのデータ転送を再開するようにする制御を行う」および「円盤状記録媒体の記録装置」は、それぞれ 本願発明の「記録動作を中止」,「上記記録動作を再び繰り返す」および「デイスク装置」に相当するので、両者は、 [一致点] 「デイスク状記録媒体に所望のデータを記録再生するデイスク装置において、 記録再生を制御する制御手段と、 動作状況を表すステータス情報を発生するステータス情報発生手段と、 動作異状を検出して異状検出信号を出力する異状検出手段と、 を具え、 動作異状を検出すると、ステータス情報に基づいて記録動作を中止した後、上記記録動作を再び繰り返すようになされたことを特徴とするデイスク装置。」 である点で一致し、 [相違点] (ア)本願発明では、「ホストコンピユータから出力される制御コマンドに応じて全体の動作モードを切り換える第1の制御手段」と、「上記第1の制御手段より出力された制御コードに基づいて上記記録再生を制御する第2の制御手段」を有するのに対して引用刊行物に記載された発明では、「キー入力操作部が接続されており、このキー入力操作部における入力操作により動作モードが指定され」、「記録時と再生時とでは、システムコントローラ20からのモード切替信号R/Pにより、各回路部がモード切り換えなされるようにされている」点。 (イ)本願発明では、「上記異状検出信号を基準にして上記ステータス情報をラツチするラツチ手段」を有するのに対し、引用刊行物には、ラッチ手段が明記されていない点、 (ウ)本願発明では「上記第1の制御手段が上記異状検出信号に基づいて動作異状を検出すると、上記ラツチ手段にラツチしたステータス情報に基づいて、第2の制御手段に動作モードを切り換えるための所定の制御コードを出力することにより記録動作を中止」しているのに対し、引用刊行物には、動作異状を検出したとき、ステータス情報に基づいて記録動作を中止する動作が記載されているものの、そのための構成が明示されていない点、 で相違している。 4.相違点に対する判断 相違点(ア)について 「〜手段」という表現は、装置の構成のうち「〜」という機能を達成する部分を示すものであることから、引用刊行物に記載された発明においてもシステムコントローラ20には、キー入力操作部が接続されており、このキー入力操作部における入力操作により動作モードが指定されるのでこの構成が、本願発明の「制御コマンドに応じて全体の動作モードを切り換える第1の制御手段」に相当する構成といえる。 そして、システムコントローラからのモード切替信号R/Pによって各回路部をモード切替させており、この構成は、本願発明の「上記第1の制御手段より出力された制御コードに基づいて上記記録再生を制御する第2の制御手段」に相当する構成であるといえる。 少なくとも、引用刊行物に記載された発明において、キー入力操作部とシステムコントローラによって、本願発明の第1の制御部と第2の制御部とを合わせた構成を有することは明らかである。 また、この種の光磁気ディスク装置においては、ホストコンピュータからの制御コマンドにより動作制御がなされることは、本願明細書に従来例として記載されるとおり広く採用されている構成であるから、引用刊行物に記載されたシステムコントローラをホストであるコンピュータからの制御コマンドに対応するように構成すること、システムコントローラから出力される各回路手段制御のための信号を制御コード信号とすることは、いずれも、当業者であれば容易に採用し得る程度のことと認められる。 また、第1の制御手段と第2の制御手段と名付けることも当業者が任意に為し得ることと認められるので、この点の相違は格別のものではない。 相違点(イ)について 「ステータス情報」は、上記3.のとおり、「記録位置」に相当するものであると認められるところ、引用刊行物に記載された発明では、「記録中にトラックジャンプが生じたことを検出したときには、回路26へのデータ転送を停止し、処理回路23からの圧縮データdaをバッファメモリ25に蓄積する。そして、記録位置が修正されたとき、バッファメモリ25からの回路26へのデータ転送を再開するようにする制御を行う」ものであり、「トラックジャンプが生じたときの記録位置の修正は、前記の絶対時間コードを用いて行うことができる」という記載と合わせて判断すれば、引用刊行物に記載された発明においても、明示されていなくてもこのトラックジャンプが生じたときの記録位置に対応する時間コードを記憶していること、すなわち、ステータス情報をラッチしていることは明らかであるから、この点は実質的な相違ではない。 相違点(ウ)について 引用刊行物に記載された発明においては、本願発明のように、全体の動作モードを切り替える第1の制御手段と、第1の制御手段より出力された制御コードに基づいて記録再生を制御する第2の制御手段というような区別がされていないが、「〜手段」という表現は、装置の構成のうち「〜」という機能を達成する部分を示すものであることからみて、引用刊行物に記載された、動作異状を検出したとき、ステータス情報に基づいて記録動作を中止する動作を行う部分は、トラックジャンプという動作異状を検出した検出信号に基づいて記録動作を中止すなわち動作モードが記録から記録動作中止モードに切り替わるものであり、その時点の記録位置データを用いて再び記録動作を繰り返しているので、本願発明と同様の機能を達成する手段を有しているということができる。そして、制御手段を区別してそれらの間の異状検出信号や制御コードの入出力関係を規定することにより格別異なる効果を奏するものとも認めることができない。 したがって、引用刊行物に記載されたようなものにおいて、動作機能毎に制御手段を区別して、異状検出信号や制御コードの入出力関係を規定することにより本願発明の構成とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得たことと認められる。 結局、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものと認められる。 なお、請求人は、審判請求理由において、引用刊行物には「『異状発生時にステータス情報をラツチする』ような構成や、『スターテス情報に応じて第1の制御手段を対応動作させることにより、第2の制御手段による記録中止動作、再記録動作をする』ような構成を開示する記載も、教示する記載も、」ない旨主張するが、本願発明の「ステータス情報」は、前記3.で指摘したとおり本願明細書の段落【0027】に記載されるとおりの位置情報であり、引用刊行物に記載された発明には、上記2.(3)で指摘したように、トラックジャンプが生じたことを検出したときには、光磁気記録のためのレーザ光のパワーを零と(記録中止動作)し、トラックジャンプが生じたときの記録位置の修正は、前記の絶対時間コードを用いて行うことができる旨、記載されているのであるから、引用刊行物に記載された発明が、トラックジャンプが生じたとき(異状発生時)に記録を中止するとともにその絶対時間すなわちトラック上の位置(ステータス情報)が記憶(ラッチ)されて、正しいトラック位置に復帰され、その位置から再記録動作するものであることは明らかである。 また、請求人の、この構成により無駄な消去の作業を省略して処理時間を短縮できるという主張は、請求項3に係る発明に関するものであって、請求項1に係る本願発明の構成に基づくものではない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから本願請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-12-19 |
結審通知日 | 2002-12-20 |
審決日 | 2003-01-07 |
出願番号 | 特願平5-136743 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
張谷 雅人 |
特許庁審判官 |
田良島 潔 川上 美秀 |
発明の名称 | デイスク装置 |
代理人 | 田辺 恵基 |
代理人 | 田辺 恵基 |