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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1072961
審判番号 不服2001-3236  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-05 
確定日 2003-03-03 
事件の表示 平成11年特許願第167032号「プリンタシステム及びプリント方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年12月26日出願公開、特開2000-355137]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年6月14日の出願であって、平成13年1月29日付けで拒絶の査定がされ、これを不服として同年3月5日付けで審判請求がされ、同年4月2日付けで特許法17条の2第1項3号の規定による手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正却下の決定
1.補正却下の決定の結論
平成13年4月2日付けの手続補正を却下する。

2.理由
(1)補正の目的
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「一面にインクが塗布されたインクリボン及び当該インクリボンが巻回されたサプライスプールを有するリボンカートリッジと、供給される印画情報に基づいて、装填された上記リボンカートリッジの上記インクリボンの上記インクを印画媒体に転写するようにして印画を行う印画手段を有するプリンタ装置とを有するプリンタシステムにおいて、
上記リボンカートリッジは、
上記サプライスプールにおける上記インクリボンが巻回される筒部の端部に形成されたつば部に、当該つば部と一体に設けられた第1のアンテナと、
上記サプライスプールと一体に設けられ、当該インクリボンに適した上記印画を行うための所定の制御データを記憶する記憶手段と、
上記サプライスプールと一体に設けられ、上記第1のアンテナを介して外部と通信し、外部からの要求に応じて上記制御データを上記記憶手段から読み出して上記第1のアンテナを介して外部に送信する第1の通信手段とを具え、
上記プリンタ装置は、
装填された上記リボンカートリッジの上記第1のアンテナと対向する位置に配設された第2のアンテナと、
上記第2のアンテナを介して上記第1の通信手段と非接触で通信する第2の通信手段と、
上記第2及び第1の通信手段を介して上記記憶手段から上記制御データを読み出し、当該読み出した上記制御データに基づいて、装填された上記インクリボンカートリッジのインクリボンに適した上記印画を行うように、上記印画手段を制御する制御手段とを具える
ことを特徴とするプリンタシステム。」(以下、これによって特定される発明を「補正発明」という。)と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1(平成12年8月22日付け手続補正書の請求項1)に記載した発明を特定するために必要な事項(以下では、「発明を特定するために必要な事項」を「構成」ということにする。)である「第1のアンテナ」を一体に設ける位置を「サプライスプールにおける上記インクリボンが巻回される筒部の端部に形成されたつば部」と限定し、「第1の記憶手段」及び「第1の通信手段」を「サプライスプールと一体に設け」る旨限定し、並びに、「第2のアンテナ」の配設位置を「装填された上記リボンカートリッジの上記第1のアンテナと対向する位置」と限定するものであるから、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。なお、本件補正前後の請求項1の記載を比較すると、補正前の「第1の記憶手段」及び「第1の制御データ」が「記憶手段」及び「制御データ」と補正されているが、補正前の請求項1には「第1の記憶手段」及び「第1の制御データ」以外の「記憶手段」及び「制御データ」が存する旨の記載はないから、「第1の」との修飾語に意味を見出すことができず、単に表現を改めたものと解されるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるとの上記認定の障害とはならない。

(2)独立特許要件の判断
そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。
(ア)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-221938号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。
・「画像形成装置の装置本体に着脱可能に装着されてこの画像形成装置に新規トナーを供給するカートリッジ本体と、このカートリッジ本体に取り付けられ、前記画像形成装置本体側に配設されたカートリッジ管理装置からの信号に応じて非接触状態で信号やデータのやりとりを行なう非接触対話部材と、を備えていることを特徴とするトナーカートリッジ。」(【請求項1】)
・「非接触対話部材は、アンテナと、このアンテナと接続された記憶素子とを備えた非接触データキャリアであることを特徴とする請求項1に記載のトナーカートリッジ。」(【請求項2】)
・「半導体チップに記憶されるデータは、カートリッジの種類、充填しているトナーの種類、カートリッジの交換履歴、トナーの交換履歴、カートリッジの寿命、トナーの寿命、トナーのロット、製造日、充填量、コピー可能な枚数、カートリッジ内のトナーの残量、カートリッジを構成する部品の交換時期、トナーの詰め替え場所、及び詰め替えカートリッジの出荷前テスト結果に関する情報からなる群から選択される1又は2以上のデータである、請求項3又は4に記載のトナーカートリッジ。」(【請求項5】)
・「本発明は、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等の画像形成装置に用いられるトナーカートリッジに関するものである」(段落【0001】)
・「この非接触対話部材の例としては、カートリッジ管理装置からの信号を受け取り、予め読み出し専用のために記憶されたデータをカートリッジ管理装置へ送り出す機能を有するものが挙げられる。例えば、「無線電子タグ」として一般に知られた、アンテナと記憶素子とからなる非接触データキャリアであって、記憶素子としていわゆる読み出し専用の「ROM」型半導体チップを用いたものや、LC共振回路である。・・・また、カートリッジ管理装置から送られてきた信号やデータを受け取り、予め記憶していたデータに対して新たなデータを追加したり、記憶データを新たなデータに書き替えたりするものも含まれる。」(段落【0025】〜段落【0026】)
・「複写機3の装置本体側にはカートリッジ管理装置(図示せず)とその送信アンテナと受信アンテナとが配設されており、これらの送受信アンテナは複写機3に装着されたカートリッジに取り付けられた非接触データキャリア2と送受信可能な位置に配設されている。」(段落【0041】)

(イ)引用例記載の発明
引用例の特許請求の範囲に記載された発明は「トナーカートリッジ」についての発明であるが、引用例にはこの「トナーカートリッジ」と「装置本体」とを組み合わせたシステムも記載されており、「装置本体」は「プリンタ装置」といえるものであるから、このシステムは「プリンタシステム」と称し得るものである。そして、引用例に記載された「プリンタシステム」としての発明(以下「引用例発明」という。)は次のとおりのものと認める。
「トナーカートリッジと、トナーカートリッジが装着されるプリンタ装置とを有し、
トナーカートリッジには、アンテナと、このアンテナと接続された記憶素子とを備えた非接触対話部材が設けられており、
プリンタ装置には、装着された上記トナーカートリッジの上記非接触対話部材と送受信可能な位置に配設されている送受信アンテナとカートリッジ管理装置が設けられており、
非接触対話部材は、カートリッジ管理装置からの信号を受け取り、記憶されたデータをカートリッジ管理装置へ送り出すものであり、
カートリッジ管理装置は、プリンタ装置側の送受信アンテナを介して非接触対話部材と非接触で対話する、プリンタシステム。」
(ウ)補正発明と引用例発明との一致点
引用例記載の「対話」は「通信」といえるものであり、引用例発明の「装着」、「アンテナ」(トナーカートリッジ側)、「記憶素子」、「非接触対話部材」、「送受信アンテナ」(プリンタ本体側)及び「カートリッジ管理装置」は、補正発明の「装填」、「第1のアンテナ」、「記憶手段」、「第1の通信手段」、「第2のアンテナ」及び「第2の通信手段」にそれぞれ相当する。 引用例発明の「トナーカートリッジ」と補正発明の「リボンカートリッジ」とは「カートリッジ」である点で一致し、引用例発明の「記憶データ」と補正発明の「インクリボンに適した上記印画を行うための所定の制御データ」とは、カートリッジ固有のデータである点で一致する。
補正発明では、「第2のアンテナ」が「第1のアンテナ」に対向する位置に配設されているが、これは「送受信可能な位置に配設されている」ことの一形態である。
補正発明の「外部」とは、「第1のアンテナを介して」通信される相手側のことであるから、引用例発明の「カートリッジ管理装置」がこれに相当する。
引用例発明において「非接触対話部材は、カートリッジ管理装置からの信号を受け取り、記憶されたデータをカートリッジ管理装置へ送り出す」に当たり、「受け取り」及び「送り出す」がトナーカートリッジ側の「アンテナ」を介することは自明であるから、引用例発明の上記構成と、補正発明において「第1のアンテナを介して外部と通信し、外部からの要求に応じて上記制御データを上記記憶手段から読み出して上記第1のアンテナを介して外部に送信する」こと及び「第2及び第1の通信手段を介して上記記憶手段から上記制御データを読み出」すことは異ならない。
したがって、補正発明と引用例発明とは、
「カートリッジと、プリンタ装置とを有するプリンタシステムにおいて、
上記カートリッジは、第1のアンテナと、カートリッジ固有のデータを記憶する記憶手段と、上記第1のアンテナを介して外部と通信し、外部からの要求に応じて上記データを上記記憶手段から読み出して上記第1のアンテナを介して外部に送信する第1の通信手段とを具え、
上記プリンタ装置は、装填された上記カートリッジの上記第1のアンテナと送受信可能な位置に配設された第2のアンテナと、上記第2のアンテナを介して上記第1の通信手段と非接触で通信する第2の通信手段とを具え、
上記第2及び第1の通信手段を介して上記記憶手段から上記データを読み出すプリンタシステム。」である点で一致する。

(エ)補正発明と引用例発明との相違点
補正発明と引用例発明は、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉:補正発明の「カートリッジ」が「一面にインクが塗布されたインクリボン及び当該インクリボンが巻回されたサプライスプールを有するリボンカートリッジ」であり、同じく「プリンタ装置」が「供給される印画情報に基づいて、装填された上記リボンカートリッジの上記インクリボンの上記インクを印画媒体に転写するようにして印画を行う印画手段を有する」ものであり、補正発明では、「第1のアンテナ」が「サプライスプールにおける上記インクリボンが巻回される筒部の端部に形成されたつば部に、当該つば部と一体に設けられ」ており、「記憶手段」及び「第1の通信手段」が「サプライスプールと一体に設けられ」ているのに対し、引用例発明の「カートリッジ」は「トナーカートリッジ」であり、必然的に「プリンタ装置」は「供給される印画情報に基づいて、装填された上記リボンカートリッジの上記インクリボンの上記インクを印画媒体に転写するようにして印画を行う印画手段を有する」ものではなく、引用例発明には「サプライスプール」がそもそも存在しない結果、「第1のアンテナ」、「記憶手段」及び「第1の通信手段」の配置位置・配置形態が補正発明と異なる点。
〈相違点2〉:「第1のアンテナ」と「第2のアンテナ」の位置関係について、補正発明では「装填された上記リボンカートリッジの上記第1のアンテナと対向する位置に配設された第2のアンテナ」としているのに対し、引用例発明では対向しているかどうか定かでない点。
〈相違点3〉:補正発明の「カートリッジ固有のデータ」は「インクリボンに適した上記印画を行うための所定の制御データ」であり、補正発明では「読み出した上記制御データに基づいて、装填された上記インクリボンカートリッジのインクリボンに適した上記印画を行うように、上記印画手段を制御する制御手段とを具える」のに対し、引用例発明の「カートリッジ固有のデータ」としては、「カートリッジの種類、充填しているトナーの種類、カートリッジの交換履歴、トナーの交換履歴、カートリッジの寿命、トナーの寿命、トナーのロット、製造日、充填量、コピー可能な枚数、カートリッジ内のトナーの残量、カートリッジを構成する部品の交換時期、トナーの詰め替え場所、及び詰め替えカートリッジの出荷前テスト結果に関する情報」が例示されているだけであり、「印画を行うための所定の制御データ」とは必ずしもいえず、その結果、読み出したデータに基づいて印画を行うように、印画手段を制御する制御手段を具えるともいえない点。

(オ)相違点についての判断
〈相違点1について〉
「一面にインクが塗布されたインクリボン及び当該インクリボンが巻回されたサプライスプールを有するリボンカートリッジと、供給される印画情報に基づいて、装填された上記リボンカートリッジの上記インクリボンの上記インクを印画媒体に転写するようにして印画を行う印画手段を有するプリンタ装置とを有するプリンタシステム」は、補正発明が前提とするものであるが、これが周知であることは例を挙げるまでもない(以下、このプリンタシステムを「周知リボンシステム」という。)。
そして、周知リボンシステムにおいて、リボンカートリッジ固有のデータをプリンタ装置が認識する必要性があることも周知である(例えば、特開平11-10979号公報、特開平10-272814号公報、特開平5-162405号公報、及び特開平9-123557号公報を参照。)。そのことは、本件補正後の明細書(以下「補正明細書」という。)に、「インクリボンとしては多くの種類があり、しかも各種類ごとに印画条件が異なるため、1台のプリンタ装置で複数種類のインクリボンを使い分ける場合には、その都度プリンタ装置の動作モードを使用するインクリボンの種類に対応したモードに切り換える必要がある。・・・従来では、・・・インクリボン1のサプライスプール2の一端部に回転自在にリング3を設けると共に、当該リング3の外周面にそのインクリボン1の種別コードや印画可能枚数を表すコードなどをホットスタンプによってバーコード状に記録する一方、この種別コード等をプリンタ装置側において安価な反射型センサによって読み取り、当該読み取り結果に基づいて動作モードを対応するモードに自動的に切り換えるようにプリンタ装置を構築する方法が提案されている。」(段落【0004】〜段落【0005】)、及び「インクリボンにおいては、同じ種別であっても製造ロットごとに各色が微妙に変化し易く、同じ種別のインクリボンを用いた場合においても印画された画像の色のバランスや濃度が微妙に異なることがある。・・・このような印画画像の色のバランスや濃度等の変化を防止する方法として、使用するインクリボンの製造ばらつきのデータ(以下、これを製造ばらつき補正用データと呼ぶ)を予めプリンタ装置や、当該プリンタ装置を制御するパーソナルコンピュータに与えておき、当該製造ばらつき補正用データに基づいて画像データを補正した後この画像データに基づいて印画を行う方法が考えられている。」(段落【0008】〜段落【0009】)との記載がある(これら記載は出願当初から存在する。)ことからみて、請求人も認識しているものと考えられる。
そうすると、プリンタシステムとしては、引用例発明のような「トナーカートリッジ」を用いたシステム以外にも、補正発明のような周知リボンシステムが周知であり、いずれのシステムにおいても、プリンタ装置はカートリッジ固有のデータを認識する必要があるのであるから、引用例発明の全体構成を周知リボンシステムに変更するに困難性がないことは明らかである。
そしてその場合、引用例発明の「第1のアンテナ」、「記憶手段」及び「第1の通信手段」の配置位置・配置形態は、「第2のアンテナ」と送受信可能な位置・形態であれば任意でよいことも明らかであり、これらをサプライスプールのつば部に一体に設ける(補正発明は、「記憶手段」及び「第1の通信手段」を「つば部に」に設けることを要件とはしていないが、「つば部に」に一体に設けたものも当然包含する。)ことは、引用例発明を周知リボンシステムに変更した上で、実施するに当たっての軽微な設計事項程度にすぎない。そのことは、補正明細書の、「上述の実施の形態においては、タグ50をサプライスプール21のつば部21Aの後面に貼着するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばテイクアップスプール22のつば部22Aの後面若しくは前面に取り付けたり、サプライスプール21若しくはテイクアップスプール22におけるインクリボン20を巻き付ける部分の表面、サプライスプール21若しくはテイクアップスプール22の内部、リボンカートリッジ11のホルダ23の表面のいずれかの部位、又はホルダ23の内部などにタグ50を配設するようにしても良く、タグ50の配設の場所としてはこの他種々の場所を広く適用することができる。」(段落【0118】)との記載(この記載も出願当初から存在する。)とも符合するものであり、要するに補正発明の「第1のアンテナ」、「記憶手段」及び「第1の通信手段」の配置位置・配置形態に格別の技術的意義はないというべきである。
以上のとおりであるから、相違点1に係る補正発明の構成は、引用例発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

〈相違点2について〉
〈相違点1について〉で述べたように、「第1のアンテナ」と「第2のアンテナ」と送受信可能な位置であれば任意でよい。そして、これらが対向する位置関係にある場合が、送受信可能な位置関係の一例であることは自明である。
したがって、相違点2に係る補正発明の構成も、当業者が容易に想到できたものである。

〈相違点3について〉
周知リボンシステムにおいて、「リボンカートリッジ」固有のデータをプリンタ装置が認識する必要性があることも周知であることは〈相違点1について〉で述べたとおりであるが、更に周知リボンシステムにおいてプリンタ装置が認識すべきデータが、「インクリボンに適した印画を行うための所定の制御データ」であること、及び当該データを認識するプリンタ装置が「読み出した制御データに基づいて、装填されたインクリボンカートリッジのインクリボンに適した印画を行うように、印画手段を制御する制御手段」を有することも周知である(前掲各周知例を参照。)。〈相違点1について〉で摘記した補正明細書の記載もこれを裏付けるものである。
また、「カートリッジ」に記憶させておくべきデータは、プリンタシステムとしていかなるシステムを採用するかによって異なるのが当然であるから、引用例発明を周知リボンシステムに変更した際には、当然記憶すべきデータも、周知リボンシステムに必要なデータに変更する必要があることは論を待たない。
そして、上記のとおり、周知リボンシステムにおいては、「インクリボンに適した印画を行うための所定の制御データ」を記憶させておく必要があり、他方プリンタ装置には「読み出した制御データに基づいて、装填されたインクリボンカートリッジのインクリボンに適した印画を行うように、印画手段を制御する制御手段」を有する必要性があるのだから、引用例発明の記憶データを「インクリボンに適した印画を行うための所定の制御データ」とし、プリンタ装置に「読み出した制御データに基づいて、装填されたインクリボンカートリッジのインクリボンに適した印画を行うように、印画手段を制御する制御手段」を具えさせることは、引用例発明を周知リボンシステムに変更した際に、付随的に当業者がなさねばならない技術事項にすぎない。
したがって、相違点3に係る補正発明の構成も、当業者が容易に想到できたものである。

〈補正発明の作用効果について〉
各相違点に係る構成を有することによる補正発明の作用効果を検討しても、格別のものと認めることはできない。

(カ)独立特許要件の判断の結論
以上のとおり、補正発明は引用例発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 請求項1に係る発明の進歩性の判断
1.請求項1に係る発明の認定
平成13年4月2日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1〜請求項14に係る発明は、平成12年8月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜請求項14に記載された事項により特定される発明であり、特に請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「一面にインクが塗布されたインクリボン及び当該インクリボンが巻回されたスプールを有するリボンカートリッジと、供給される印画情報に基づいて、装填された上記リボンカートリッジの上記インクリボンの上記インクを印画媒体に転写するようにして印画を行う印画手段を有するプリンタ装置とから形成されるプリンタシステムにおいて、
上記リボンカートリッジは、
上記スプールと一体に設けられた第1のアンテナと、
当該インクリボンに適した印画を行うための所定の第1の制御データを記憶する第1の記憶手段と、
上記第1のアンテナを介して外部と通信し、外部からの要求に応じて上記第1の制御データを上記第1の記憶手段から読み出して上記第1のアンテナを介して外部に送信する第1の通信手段とを具え、
上記プリンタ装置は、
上記インクカートリッジの上記第1のアンテナに対応する所定位置に配設された第2のアンテナと、
上記第2のアンテナを介して上記第1の通信手段と非接触で通信する第2の通信手段と、
上記第2及び第1の通信手段を介して上記第1の記憶手段から上記第1の制御データを読み出し、当該読み出した上記第1の制御データに基づいて、装填された上記リボンカートリッジの上記インクリボンに適した上記印画を行うように、
上記印画手段を制御する制御手段とを具える
ことを特徴とするプリンタシステム。」

2.本願発明の進歩性の有無
補正発明と本願発明を比較した場合、補正発明が本願発明を減縮した発明であることは第2 2.(1)で述べたとおりであり、換言すれば本願発明は補正発明を包含する発明である。
他方、本願発明が引用例発明と同一でないことは自明である。
本願発明を減縮した補正発明が、引用例発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたことは、第2 2.(2)で述べたとおりであり、そうである以上、補正発明を含む本願発明も、引用例発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

第4 むすび
請求項1に係る発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2〜請求項14に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-09 
結審通知日 2003-01-10 
審決日 2003-01-21 
出願番号 特願平11-167032
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹上田 正樹立澤 正樹  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 鈴木 秀幹
津田 俊明
発明の名称 プリンタシステム及びプリント方法  
代理人 田辺 恵基  

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