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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1075723
審判番号 不服2001-7312  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-07-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-07 
確定日 2003-04-14 
事件の表示 平成 4年特許願第354541号「光磁気デイスク装置及び光磁気デイスク」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 7月 8日出願公開、特開平 6-187732]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年12月15日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、平成13年5月7日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであって、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。なお、本願についての平成12年11月27日付け手続補正は、平成12年12月21付けの補正の却下の決定により却下された。

「スライド可能なリブによつて開閉状態を切り換えることにより書込禁止か否かを判別するための第1の識別孔と、
記録可能なデイスクが収納されているか否かを判別するための第2の識別孔と、
収納されているデイスクがオーデイオデイスクかデータデイスクかを判別するための第3の識別孔と、
上記第1の識別孔、上記第2の識別孔及び上記第3の識別孔が筐体表面に設けられ、当該筐体表面の内部に上記デイスクを収納するカートリツジと
を具えることを特徴とする光磁気デイスク。」

2.引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平2-267788号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
(i) 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、光・光磁気ディスク等のディスク状記録媒体を記録及び又は再生可能なように収納するディスクカートリッジに関する。
〔発明の概要〕
本発明は、ディスク状記録媒体を記録及び又は再生可能なように収納するディスクカートリッジであって、カートリッジ本体に使用状態で切換え操作可能な識別手段と、切換え不可能な識別手段を備えることにより、この両識別手段の切換え組合せで収納するディスク状記録媒体を多種類にわたって識別できるようにしたものである。」(第1頁左下欄第13行〜同頁右下欄第6行)
(ii)「近年、90mm光ディスクとしては光磁気ディスク(以下MOディスクという)及び読み出し専用ディスク(以下、O-ROMディスクという)が使用可能となっており、これらの光ディスクはディスクカートリッジに収納され、この収納された状態のまま記録及び又は再生が行えるようになされている。
このISO準拠の90mm光ディスクを収納するディスクカートリッジは第4図〜第6図に示すようにカートリッジ本体(1)の一方の隅部の上ハーフ(1a)側に窓孔を(2)を設け、下ハーフ(1b)側に窓孔(2)に対して長さ方向に略2倍、即ち窓孔(2)と対応する部分(3a)と対応しない部分(3b)とから成る長窓孔(3)を設けて、この長窓孔(3)に、その半分の大きさの閉塞片(4)を前述した対応部分としての一半部(3a)と非対応部分としての他半部(3b)との間において移動可能に嵌合して外部から切換え操作できるように構成した識別手段が備えられている。
そして、このディスクカートリッジに収納されるディスクの識別は長窓孔(3)に対する閉塞片(4)の移動切換え位置を検出することにより行うもので、この閉塞片(4)の位置検出は機械的及び光学的に行われる。
即ち、機械的には第5図Aに示す如く記録/再生装置側にカートリッジ本体(1)の長窓孔(3)の一半部(3a)と他半部(3b)に対応する操作子(5a)と(5b)を有するプッシュ式スイッチ(5)を配設して、カートリッジが装置に装填された状態で閉塞片(4)が何れか一方の操作子(5a)又は(5b)(図示の場合は(5b))を押すことになって閉塞片(4)の位置が検出される。また、光学的には同図Bに示す如く記録/再生装置側にカートリッジ本体(1)の上ハーフ(1a)側の窓孔(2)に対応してLED又はランプ等の光源(6)を配設すると共に後面(1b)側の長窓孔(3)の一半部(3a)と他半部(3b)に夫々対応してフォトディテクター(7a)と(7b)を配設して、カートリッジが装填された状態で閉塞片(4)が対向することになるフォトディテクタ(7a)又は(7b)(図示の場合は(7b))は光源(6)からの光は受光されず閉塞片(4)の位置が検出されることになる。
そして、カートリッジ本体(1)の長窓孔(3)から閉塞片(4)を取り外すことにより、長窓孔(3)は開放状態となって、機械的にも、また光学的にも検出は行われない。
このように、このディスクカートリッジにおいては閉塞片(4)の位置、即ち第6図A、B、Cに示すようにカートリッジ本体(1)の長窓孔(3)に対する閉塞片(4)の3態様により別個の所定の情報が得られ、収納ディスクの識別が行われる。この識別はMOディスクのライトプロテクトの有無の識別と、O-ROMディスクかMOディスクかの3種類について行われるものである。」(第1頁右下欄第8行〜第2頁右上欄第20行)
(iii)「〔発明が解決しようとする課題〕
このように従来のディスクカートリッジにおいてはカートリッジの外観からMOディスクのライトプロテクトの有無及びO-ROMディスクかMOディスクかの3種類の識別が可能であるが、光ディスクの使用に当たってのその他の必要な識別項目としてのO-ROMディスクの場合は反射層としてアルミ膜等を用いた高反射率のものか、MOディスク相当の低反射率のものかの識別、1セクタ当たりのバイト数として512Byte/Sectorか1024Byte/Sectorからの識別等は行えない。
・・・(中略)・・・
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的とするところは収納されるディスク状記録媒体の種類、機能等のほとんど全ての情報をカートリッジの外観から得られるようにしたディスクカートリッジを提供するものである。」(第2頁左下欄第1行〜同頁右下欄第第9行)
(iv)「〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を第1図〜第3図を参照して説明するに、前述した第4図〜第6図に示す従来例と同種部材には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
本例においてもカートリッジ本体(1)の一方の隅部には前述した従来例と同様に、上ハーフ(1a)側に窓孔(2)を設け、下ハーフ(1b)側に対して長さ方向に略2倍の長窓孔(3)を設けて、この長窓孔(3)に閉塞片(4)を移動可能に嵌挿して外部操作により長窓孔(3)の一半部(3a)と他半部(3b)との間を移動させることができるように構成した識別手段(本例では第1の識別手段)が備えられている。
そして、本例は、カートリッジ本体(1)の他方の隅部、即ち前述した第1の識別手段と対称位置に第2の識別手段を備えたものである。
この第2の識別手段は上ハーフ(1a)側に窓孔(12)を設け、下ハーフ(1b)側には窓孔(12)に対して長さ方向に略2倍、即ち、窓孔(2)と対応する部分としての一半部(13a)と対応しない部分としての他半部(13b)とからなる長窓孔(13)を設けて、この長窓孔(13)を各半部位ずつ、即ち前述した対応部分としての一半部(13a)と対応しない部分としての他半部(13b)をそれぞれ閉塞できる閉塞駒片(14)を長窓孔(13)の内面側に半固定状に嵌合して構成される。
この閉塞片(14)の長窓孔(13)の内面側に対する半固定状の嵌合は下ハーフ(1b)の内面に長窓孔(13)の周縁を所要の間隔をおいて囲撓する枠壁(15)を形成すると共にこの枠壁(15)の長手方向の両側中央部に係止突部(16a)、(16b)を突設し、この枠壁(15)と係止突部(16a)、(16b)とにより囲撓される半部位空間部にそれぞれ閉塞駒片(14)を圧入状に嵌合する。
このように枠壁(15)の半部位に閉塞駒片(14)を嵌合することにより長窓孔(13)の一半部(13a)と他半部(13b)はそれぞれ閉塞されることになる。
このように構成されるカートリッジ本体(1)の第2の識別手段に対しても記録/再生装置側に検出手段が配設される。この検出手段は前述したものと同様に機械的手段光学的手段が用いられる。」(第3頁左上欄第12行〜同頁左下欄第14行)(v) 「以上のように構成される本例のディスクカートリッジは従来のディスクカートリッジの識別手段に加えて第2の識別手段を備えたことにより、この両識別手段を組合せて操作することにより多種の情報が示されることになり、このディスクカートリッジに収納するディスク状記録媒体を光・光磁気ディスクとした場合はMOディスクのライトプロテクトの有無の識別、O-ROMディスクかMOディスクかの識別に加えて、O-ROMディスクの反射率の高低の識別、1セクタ当たりのバイト数の識別等が可能となる。
即ち、第3図Aにおいてカートリッジ本体(1)の第1の識別手段としての長窓孔(3)の一半部(3a)をa、他半部(3b)をb、第2の識別手段としての長窓孔(13)の一半部(13a)をc、他半部(13b)をdとしてそれぞれ閉塞片(14)を移動或いは取り外すことにより閉塞組合せによる情報は同図Bに示すビットパターンの如く多種得られることになる。」(第3頁左下欄第15行〜同頁右下欄第13行)

上記記載事項(i)〜(v)及び図面の記載を総合勘案すると、結局、上記引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。

移動可能な閉塞片(4)によって開閉状態を切り換えることによりMOディスクのライトプロテクトの有無又はO-ROMディスクかMOディスクかを識別するための長窓孔(3)と、
O-ROMディスクの反射率の高低、1セクタ当たりのバイト数等を識別するための長窓孔(13)と、
上記長窓孔(3)、上記長窓孔(13)がカートリッジ本体(1)表面に設けられ、当該本体表面の内部に上記ディスクを収納するカートリッジと
を具える光磁気ディスク。

また、同じく引用された特開平3-207051号公報(以下、「引用例2」という。)には、明細書及び図面の記載を参酌すると、次の発明が記載されているものと認める。

装着されたディスクがオーディオディスクかデータディスクかを判別し、各ディスクの種類に応じて信号処理系を切り換えて再生する装置。

3.対 比
本願発明と上記引用例1に記載された発明とを対比する。引用例1に記載された発明における「移動可能な閉塞片(4)」は、本願発明における「スライド可能なリブ」に相当する。引用例1に記載された発明における「ライトプロテクトの有無」は、本願発明における「書込禁止か否か」ということであるから、引用例1に記載された発明における「長窓孔(3)」は、本願発明における「第1の識別孔」に相当する。引用例1に記載された発明における「長窓孔(13)」は、収納されているディスクの種類を識別する識別孔である点で、本願発明における「第2の識別孔」と共通する。引用例1に記載された発明における「カートリッジ本体(1)」は、本願発明における「筐体」に相当する。そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
スライド可能なリブによつて開閉状態を切り換えることにより書込禁止か否かを判別するための第1の識別孔と、
収納されているディスクの種類を判別するための第2の識別孔と、
上記第1の識別孔、上記第2の識別孔が筐体表面に設けられ、当該筐体表面の内部に上記デイスクを収納するカートリツジと
を具えることを特徴とする光磁気デイスク。
そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a) 収納されているディスクの種類を判別するための第2の識別孔に関し、本願発明においては、記録可能なディスクが収納されているか否かを判別するものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、このことが明示されていない点(以下、「相違点a」という。)。
(b) 本願発明においては、収納されているデイスクがオーデイオデイスクかデータデイスクかを判別するための第3の識別孔をさらに設けるものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、第3の識別孔については示されていない点(以下、「相違点b」という。)。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について検討する。
相違点aについて
ディスクとして、記録可能なディスク及び読出し専用ディスクの何れも本願出願前に周知のものであるから、ディスクの種類を判別するための第2の識別孔を用いて収納されているディスクが記録可能なものであるか否かを判別する程度のことは当業者が適宜なし得た事項である。
相違点bについて
上記引用例2には、装着されたディスクがオーディオディスクかデータディスクかを判別し、各ディスクの種類に応じて信号処理系を切り換えて再生する装置が記載されている。また、ディスクカートリッジの筐体表面に3個以上の識別子又は識別孔を設け、これらの識別子又は識別孔を検出することにより収納されているディスクの種別、特性、機能等を識別することは本願出願前に周知の技術である(必要があれば、特開昭64-62883号公報、特開昭64-86326号公報、実願昭61-99759号(実開昭63-6585号公報)のマイクロフィルムを参照されたい。)から、引用例1に記載された発明においても、引用例2に記載された発明のように収納されているディスクがオーディオディスクかデータディスクかを判別しディスクの種類に応じて記録/再生しようとする場合、ディスクカートリッジの筐体表面に第1、第2の識別孔に加えさらに3個目の識別孔すなわち第3の識別孔を設けてオーディオディスクかデータディスクかを判別することは当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願発明の奏する効果は、上記引用例1及び引用例2に記載された発明から十分に予測できた範囲のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、上記引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-12-24 
結審通知日 2002-12-27 
審決日 2003-03-03 
出願番号 特願平4-354541
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 正岩崎 伸二高野 美帆子  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 田良島 潔
犬飼 宏
発明の名称 光磁気デイスク装置及び光磁気デイスク  
代理人 田辺 恵基  

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