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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 発明同一 A61K 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1079685 |
異議申立番号 | 異議2003-70852 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-09-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-04-06 |
確定日 | 2003-07-05 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3330961号「皮膚改善剤」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3330961号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 特許第3330961号(平成3年2月22日出願,平成14年7月19日設定登録)の請求項1〜3に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものである。 2.申立ての理由の概要 (1) 申立人上坂陽子 申立人上坂陽子は,請求項1及び2に係る発明は下記甲第2号証〜甲第4号証を参酌すれば甲第1号証に記載された発明であるか,甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,また,請求項3に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,請求項1〜3に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであると主張している。 甲第1号証:高須克弥著「改訂新版 米ぬか美容法 スリムな素肌美人になれる本」株式会社早稲田出版(1991年2月11日第1刷/1992年4月8日第6刷発行)表紙,裏表紙,24〜27頁,170〜179頁,190〜203頁,206〜209頁及び奥付 甲第2号証:厚生省生活衛生局食品化学課「化学的合成品以外の食品添加物リスト 第一版」(1989年)43頁 甲第3号証:外山章夫編纂「天然物便覧 <第10版>」株式会社食品と科学社(平成元年10月5日発行)表紙,285頁及び奥付 甲第4号証:Bienvenido O. Juliano編「Rice: Chemistry and Technology」The American Association of Cereal Chemists, Inc.(1972年発行/第2版1985年)表紙,奥付及び48〜49頁 (2) 申立人柿沼芳之 申立人柿沼芳之は,以下の主張をしている。 請求項1〜3に係る発明は下記甲第1号証,甲第3号証〜甲第6号証に記載された発明であるか,下記甲第1号証,甲第3号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,請求項1〜3に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。 本件特許出願前に出願された先の出願であって,本件特許出願後に出願公開された先の出願の明細書に記載された発明である甲第8号証,甲第9号証に係る発明と同一であるから,請求項1〜3に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 本件特許に係る出願の審査及び審判においてなされた補正は要旨を変更するものであるので,本件特許の出願日はその補正書提出日(平成14年6月11日)とみなされるから,請求項1〜3に係る発明は本件特許の公開公報に記載の発明と同一であり,請求項1〜3に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。 本件明細書の記載には不備があり,本件特許は,特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 甲第1号証:特開昭61-68404号公報(昭和61年4月8日公開) 甲第2号証:Agric. Biol. Chem., 41巻9号(1977年)1721〜1725頁 甲第3号証:特開昭64-13016号公報(平成元年1月17日公開) 甲第4号証:特開平2-229102号公報(平成2年9月11日公開) 甲第5号証:特開昭62-19510号公報(昭和62年1月28日公開) 甲第6号証:特開昭62-36305号公報(昭和62年2月17日公開) 甲第7号証:特公昭47-1480号公報(昭和47年1月14日公告) 甲第8号証:特願平2-112312号の明細書(平成2年4月27日出願)〔特開平4-9317号公報(平成4年1月14日公開)〕 甲第9号証:特願平2-224996号の明細書(平成2年8月27日出願)〔特開平4-108735号公報(平成4年4月9日公開)〕 参考資料1:吉藤幸朔著,熊谷健一補訂「特許法概説〔第11版〕」株式会社有斐閣(1996年5月30日発行)81〜83頁及び150〜154頁 参考資料2:「化学大辞典3 縮刷版」共立出版株式会社(昭和56年10月15日第26刷発行)51頁左欄「クマルさん -酸」の項 参考資料3:「化学大辞典7 縮刷版」共立出版株式会社(昭和56年10月15日第26刷発行)748頁右欄〜749頁左欄「フェルラさん -酸」の項 3.甲号証に記載の発明 (1) 申立人上坂陽子 甲第1号証には,昔の女性は肌そのものにツヤがあり美しかったこと,すべすべした滑らかな肌をしていた昔の日本人女性が,米ぬかを利用して肌の手入れをしてきたことが記載されている。また,米ぬかがシミ,シワに劇的な効果を及ぼすことが記載されている。さらに,シミ,シワの改善に効果的な米ぬかを,「米ぬかパック」,「米ぬか石けん」,「米ぬか風呂」,「米ぬか袋によるボディシャンプー」,「米ぬかボディーローション」,「米ぬか洗顔ローション」等として利用することが記載されている。 甲第2号証及び甲第3号証には,米ぬか油抽出物の成分がフェルラ酸等であることが記載されている。 甲第4号証には,米ぬか1g当たり,20μgの遊離フェノール類と,10μgの脂質フェノール類と,40μgの糖質フェノール類が含まれており,遊離フェノール類は,主に,13%のフェルラ酸と,0.5%のp-クマル酸と,0.5%のシナピン酸を含むことが記載されている。 (2) 申立人柿沼芳之 甲第1号証には,「米からの化粧品の製造法」に関する発明が開示されており,以下の記載がある。 「玄米を精米機にかけ,赤糠部分を除去した後,さらに精白を上げて米白糠を分離採取し,この米白糠に加水し,麹または澱粉分解酵素を作用させた後,そのまま乾燥,粉末化するか,あるいは粗濾過または圧搾濾過して,クリーム状または液状物を得ることを特徴とする米からの化粧品の製造法。」(特許請求の範囲) 「前記の官能評価の結果から明らかなように,本発明製品を用いると,肌がしっとりして,すべすべした感じとなる優れた効果が得られる。」(3頁右下欄5〜7行) 甲第2号証には以下の記載がある。 「これらのフェノールはフェルラ酸及びp-クマル酸の熱脱カルボキシル化により形成されたと報告されてきた。このように,これらのフェノールは,GC分析の間の熱分解によって生じた可能性がある。しかしながら,フェノール分画のTLCの結果から,これらのフェノールが水蒸気蒸留から得られた揮発性凝縮物に生じ,二次的な熱分解生成物でないことが確認された。 2つのフェノールの前駆体であると考えられるフェルラ酸及びp-クマル酸の双方は,維管束植物中にエステルとして広く存在する。2つのヒドロキシケイ皮酸は,米ぬか,米粒,米わら中に遊離状態として既に報告されており,また本文でも認められた。」(1725頁左欄18〜34行) 甲第3号証には,皮膚外用剤に関する発明が記載されており,以下の記載がある。 「フェルラ酸および(または)その塩と有機酸および(または)その塩とを配合することを特徴とする皮膚外用剤。」(特許請求の範囲) 「本発明はフェルラ酸および(または)その塩と有機酸および(または)その塩とを配合することにより,優れた紫外線防御効果ならびに美白効果と,優れた品質をもつ皮膚外用剤を提供するものである。」(1頁左下欄10〜14行) 甲第4号証には,皮膚外用剤が開示されており,以下の記載がある。 「(A)L-アスコルビン酸及びその誘導体,コウジ酸及びその誘導体並びにフェルラ酸及びその誘導体の中から選ばれた少なくとも1種の抗酸化剤と,(B)一般式〔式省略〕で示されるエラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩の中から選ばれた少なくとも1種とを含有して成る皮膚外用剤。」(特許請求の範囲) 「本発明は新規な皮膚外用剤,さらに詳しくは,皮膚美白効果に優れ,かつ安全性の高い皮膚外用剤に関するものである。」(1頁右下欄下から3〜1行) 甲第5号証には,化粧料に関するものであり,以下の記載がある。 「4-ヒドロキシケイ皮酸を0.1〜20重量%及びシクロデキストリンを配合したことを特徴とする化粧料。」(特許請求の範囲第1項) 「4-ヒドロキシケイ皮酸をシクロデキストリンと共に配合した本発明化粧料は,メラニン抑制作用を有する4-ヒドロキシケイ皮酸が大量かつ安定に配合されているため,優れた美白効果を有する。」(3頁左上欄16行〜末行) 甲第6号証には,以下の記載がある。 「4-ヒドロキシケイ皮酸0.1〜20重量%と,弱塩基性無機塩又は弱塩基性有機酸塩を配合したことを特徴とする化粧料。」(特許請求の範囲) 「本発明化粧料は,メラニン抑制作用を有する4-ヒドロキシケイ皮酸が大量かつ安定に配合されているため,優れた美白効果を有し,更に日焼け防止効果をも発揮できるものである。」(3頁左下欄10〜14行) 甲第7号証は,育毛促進化粧料に関するものであり,以下の記載がある。 「ヘヤークリーム型,ヘヤトニック型,セットローション型,ポマード型その他の毛髪用化粧料の基剤にフェルラ酸〔式省略〕又はその塩,塩基,或はその誘導体を配合することを特徴とする育毛促進化粧料の製造方法。」(特許請求の範囲) 「ここに出願人はフェルラ酸,又その塩,塩基,或はその誘導体を毛髪化粧料に使用して殺菌防腐の作用のみでなく,これが皮膚に吸収された場合細胞の働きを活発にし毛嚢の発育を良好にするために毛髪を美化するとともに脱毛,フケ,カユミを防止,且つ発毛を促進する育毛効果をもつことを見出したものである。」(1欄21〜27行) 甲第8号証には,以下の記載がある。 「(a)マンネンタケ菌糸体培養物および/またはその抽出エキス,および(b)トラネキサム酸およびその誘導体,感光素ならびに4-ヒドロキシケイ皮酸からなる群より選ばれた1種または2種以上の成分を活性成分として配合したことを特徴とする美白化粧料。」(特許請求の範囲) 甲9号証は,皮膚外用剤に関するものであり,明細書中に以下の記載がある。 「[A]艾葉エキスと[B]米ぬかエキス,黒砂糖エキス,ももエキス,ヘチマエキスからなる群より選ばれる1種又は2種以上とを混合してなる植物抽出エキス配合物を含む皮膚外用薬。」(特許請求の範囲) 「皮膚外用薬がいかなる創傷,かゆみ,かぶれ,熱傷,肌あれ,化膿等の皮膚炎症にすぐれた効果示す事を見出し発明を完成した。」(1頁右下欄6〜13行) 4.対比・判断 (1) 申立人上坂陽子 本件特許の請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)と甲第1号証に記載の発明をと対比すると,前者はフェルラ酸及び/又はp-クマル酸を有効成分とするものであるが,後者は米ぬかを使用するもので,フェルラ酸やp-クマル酸については何ら記載されていない点で相違する。 申立人は,フェルラ酸及びp-クマル酸が米に含まれていることは従来周知の事項であり,甲第2号証〜甲第4号証を参酌すれば,米ぬか又は米ぬか油抽出物にフェルラ酸及びp-クマル酸が含まれていることは明らかであると主張する。 しかし,そもそも米ぬかには様々な成分が含まれているものであって,甲第1号証に記載された米ぬかの効果がフェルラ酸又はp-クマル酸によるものであることは甲第1号証〜甲第4号証には何ら記載も示唆もされていないものである。 一方,本件発明は,特許明細書中の効果の確認(段落0008〜0025)及び実施例(段落0028〜0033)の記載においてもフェルラ酸及びp-クマル酸そのものを使用しており,米ぬかをそのまま使用するものではない。 そうすると,米ぬかにフェルラ酸及びp-クマル酸が含まれるものであったとしても,これらの成分を精製し,その効果を確認した本件発明は,甲第1号証に記載された発明であるとすることはできないし,甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることもできない。 そして,請求項2及び3は,請求項1に係る発明の構成の一部を限定するものであって,上記したとおり,請求項1に係る発明に新規性及び進歩性があるのであるから,これらの請求項に係る発明にも新規性及び進歩性が存在するものである。 なお,請求項2には,米を原料とする点が記載されているが,これは特許明細書中の実施例2〜4の記載からすれば,米を原料としてフェルラ酸やp-クマル酸を抽出精製して使用するものであって,米から米ぬかを製造し,その米ぬかのまま使用するものではないことは明らかである。 (2) 申立人柿沼芳之 (a) 新規性及び進歩性について 本件発明と甲第1号証に記載の発明をと対比すると,前者はフェルラ酸及び/又はp-クマル酸を有効成分とするものであるが,後者は米白糠抽出物(米白糠酵素分解物)を使用するもので,フェルラ酸やp-クマル酸については何ら記載されていない点で相違する。 申立人は,米糠抽出物にフェルラ酸及びp-クマル酸が含まれることは甲第2号証にも示されているように公知の事実であると主張する。 しかし,そもそも米糠抽出物には様々な成分が含まれているものであって,甲第1号証に記載された米白糠抽出物(米白糠酵素分解物)の効果がフェルラ酸又はp-クマル酸によるものであることは甲第1号証,甲第2号証には何ら記載も示唆もされていないものである。 一方,本件発明は,特許明細書中の効果の確認(段落0008〜0025)及び実施例(段落0028〜0033)の記載においてもフェルラ酸及びp-クマル酸そのものを使用しており,米糠又は米糠抽出物をそのまま使用するものではない。 そうすると,米糠又は米糠抽出物にフェルラ酸及びp-クマル酸が含まれるものであったとしても,これらの成分を精製して得られたフェルラ酸及びp-クマル酸を皮膚改善剤に配合し,その効果を確認した本件発明は,甲第1号証に記載された発明であるとすることはできないし,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることもできない。 甲第3号証〜甲6号証には「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」について記載されていない。 申立人は,発明の構成が同一である以上,甲第3号証〜甲第6号証に本件明細書に記載の効果の記載が有る無しに拘わらず,本件発明は,甲第3号証〜甲第6号証に記載の発明と同一である旨主張する。しかし,甲第3号証〜甲第6号証には,皮膚外用剤あるいはその下位概念である皮膚美白については記載されているとしても,上記したとおり「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」の用途について全く記載されていないのである。 それに加えて,甲第3号証及び甲第4号証では,紫外線防御効果あるいは美白効果を得るために,フェルラ酸単独ではなく有機酸(甲第3号証)やエラグ酸(甲第4号証)を併用することを必須とするものであるし,甲第5号証及び甲第6号証では,美白作用を得るために多量(0.1〜20重量%)のヒドロキシケイ皮酸(すなわち,p-クマル酸)を安定に化粧料中に配合しようとするものである。これに対し,本件発明はフェルラ酸及び/又はp-クマル酸のみの使用で足り,配合量も特許請求の範囲には記載されていないが明細書の記載からみて0.05〜0.1%という低濃度で所期の効果を得ており,多量に含有させる必要性のないものである。 そうすると,構成が同一であるとする申立人の主張自体失当であり,「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」について記載も示唆もない甲第3号証〜甲第6号証をもっては当業者が本件発明を容易に発明することができたものということもできない。 甲第7号証は「育毛促進化粧料」に関するものであって,そもそも毛髪に対する効果を目的とするものであり,皮膚(肌)に対する美容的効果を目指すものである「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」については何ら記載されていない。そうすると,本件発明が,請求項3に記載されるようにヘアシャンプーやヘアリンスという毛髪用化粧料の形態のものを含むものであるとしても,「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」については何ら記載も示唆もない甲第7号証に基づいて当業者が本件発明を容易に発明することができたものということもできない。 そして,請求項2及び3は,請求項1に係る発明の構成の一部を限定するものであって,上記したとおり,請求項1に係る発明に新規性及び進歩性があるのであるから,これらの請求項に係る発明にも新規性及び進歩性が存在するものである。 なお,請求項2には,米を原料とする点が記載されているが,これは特許明細書中の実施例2〜4の記載からすれば,米を原料としてフェルラ酸やp-クマル酸を抽出精製して使用するものであって,米から米ぬかを製造し,その米ぬかのまま使用するものではないことは明らかである。 (b) 第29条の2について 甲第8号証は「p-クマル酸配合の美白化粧料」に関するものであり,また甲第9号証は「米ぬかエキスを含む皮膚外用剤」に関するものであるが,いずれにも「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」について何ら記載されていない。また,甲第8号証は4-ヒドロキシケイ皮酸(すなわち,p-クマル酸)とマンネンタケ菌糸体培養物および/またはその抽出エキスとを併用することを必須の構成とするものであり,甲第9号証も艾葉エキスと米ぬかエキスとを併用することを必須の構成とするものである。そうすると,本件発明は甲第8号証及び甲第9号証に係る発明とは,これらの点において相違するものであり,そしてこれらの点は本件特許の出願時における当業者の技術常識とはいえないから,本件発明は甲第8号証または甲第9号証に係る発明と同一ということはできない。 そしてこのことは請求項2及び3に係る発明についても該当する。 (c) 不適法な補正について 本件発明に係る用途は,出願当初の無限定の「皮膚改善剤」から「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化用皮膚改善剤」に補正されている。 そして,この限定された点については,本件に係る特許出願の当初明細書の段落0005,0007〜0024,0026及び0027並びに図1及び図2の記載から明らかである。 したがって,上記点については,出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,本件に係る特許出願における補正について申立人の主張するような違法はない。 (d) 明細書の記載不備について 本件特許発明における「肌のすべすべ化,皺のび,肌理の細やか化,肌のしっとり化」については,明細書の段落0008〜0024に記載されているとおり試験により裏付けられているものである。(これらの試験は,植物抽出物をそのまま用いたものではなく,フェルラ酸及びp-クマル酸自体を使用するものであり,それゆえ申立人の主張するような他の抽出成分であるγ-オリザノール等による効果は排除されているものである。)なお,官能試験による結果は効果(用途)の把握において直ちに受け入れられないというものではない。 また,本件発明は,フェルラ酸及びp-クマル酸の新たな用途を見出したものであり,そうすると,それらの含有量を必ずしも特許請求の範囲において限定する必要のあるものではない。 さらに申立人は抽出方法が詳細に記載されていないと主張するが,抽出方法は実施例2〜5に記載されている。なお,本件特許発明は市販のフェルラ酸及びp-クマル酸の使用も明示しており,そして実施例1は市販のフェルラ酸及びp-クマル酸を使用して皮膚改善剤を製造するものであるから,本件発明は当業者が容易に実施できる程度に明細書に記載されていることは明らかであり,抽出方法の記載の程度について何ら問題とされるべきものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから,いずれの特許異議の申立ての理由及び証拠によっても本件の請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-06-18 |
出願番号 | 特願平3-48697 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61K)
P 1 651・ 534- Y (A61K) P 1 651・ 531- Y (A61K) P 1 651・ 113- Y (A61K) P 1 651・ 161- Y (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 塚中 直子 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 松浦 新司 |
登録日 | 2002-07-19 |
登録番号 | 特許第3330961号(P3330961) |
権利者 | 株式会社創研 |
発明の名称 | 皮膚改善剤 |