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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1081007
審判番号 不服2001-21508  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-03 
確定日 2003-08-01 
事件の表示 平成 9年特許願第188933号「天井直付け照明器具の取付装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年1月29日出願公開、特開平11-25740]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明

本願は、平成9年7月1日の出願であって、その請求項1〜2に係る発明は、平成13年8月6日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「引掛シーリングに引っ掛ける栓刃を円筒形をなすアダプタベースの上面に有するアダプタと、該アダプタと係合する係止受部を有する器具本体とを備え、
前記アダプタベースの径方向に係止部材をそれぞれ摺動自在に設け、前記係止部材に前記器具本体の係止受部に対して着脱可能に係合する各々の下面にテーパ部が設けられると共に上面に平坦な係止段部が設けられる上下2段の係止爪をそれぞれ設けると共に、前記上下の2段の係止爪を前記アダプタベースの周面の両側部からそれぞれ出没可能に配設し、
前記各係止部材に対して前記アダプタベースの側部から前記係止爪を突出した状態に付勢する付勢ばねをそれぞれ設け、
前記付勢ばねの付勢に抗して前記各係止爪をアダプタベースの周面から没入した状態に摺動させる解除突片を前記各係止部材と一体に形成すると共に、前記アダプタベースの下面に露出してそれぞれ設け、
前記器具本体の係止受部は前記アダプタベースの径よりも僅かに大きい円形孔を器具本体に直接設けると共に、その周縁全周に亘ってカーリング部を形成することにより縁部に丸み部を形成したものであることを特徴とする天井直付け照明器具の取付装置。」

2.刊行物記載の発明

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-159615号公報(以下、「刊行物1」という。)には次の事項が記載されている。
(イ)「天井に設置されたシーリングローゼットに取り付ける天井直付け形照明器具の取付け装置において、上記シーリングローゼットに係止接続する係止爪と、該係止爪と電気的に接続されたプラグ受口とを有し、照明器具に設けた係止穴を挿通したとき、弾性により側方に突出して上記係止穴を係止し、上記照明器具の荷重を支持できる複数の係止突起と、該係止突起を弾性に抗して後退させる係止解除ボタンとを設けたことを特徴とする天井直付け形照明器具の取付け装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(ロ)「図1において、1は天井直付け形照明器具の取付け装置の一例を示し、天井に設置されたシーリングローゼット17に係止して、上記取付け装置1の保持と電気的接続を行うことができる係止爪2と、該係止爪2と電気的に接続されたプラグ受口10とを有し、弾性により前進後退して照明器具の器具本体15に設けた係止穴15aの縁を係止する複数個の係止突起3と、該係止突起3を後退させて器具本体15の係止状態を解除する係止解除ボタン5とを備えている。なお、1aは上記器具本体15を挿通する際の位置決め用の切欠き15cに対応する突条である。上記取付け装置1は図2の上面図および図3と図4の断面図に示すように、シーリングローゼットに係止する係止爪2を上面に対向して取り付け、金具11を介して取り付けたプラグ受口10との間を電線9によって電気的に接続している。上記取付け装置1の内部には、照明器具の器具本体15の係止穴15aの縁を係止するために、スライドしながら前進後退する複数個の係止突起3、および上記係止突起3を絶えず外側方に押している弾性ばね4を収納するとともに、上記係止突起3が円滑にスライドする空隙をそれぞれ設けている。また上記係止突起3は、突出部に上記器具本体15を挿入する際に係止穴15aの縁が滑動する傾斜面を有するとともに、内部に係止解除ボタン5に設けたスライドピン5aの傾斜面に当接してスライドする傾斜面をもつ溝穴3aと、上記ばね4の反力による脱出を防止するための突起3bとを設けている。上記係止突起3とばね4とは、上記係止解除ボタン5のスライドピン5aを挿通する角穴を設けた円板状金具7をねじ14で取り付けることにより装着されている。
上記係止解除ボタン5には、上記スライドピン5aとともにフランジ5bを設け、上記フランジ5bをねじ13で固定したカバー6により取り付けているが、上記フランジ5bはカバー6の内側に沿って上下に移動できるようにしてある。取付け装置1の側壁には、プラグ受口10と器具本体15に取り付けたプラグ16との位置合わせをするための突条1aを縦方向に設けている。
一方、照明器具の器具本体15は図5に示すように、ほぼ中央部に上記取付け装置1に挿通係止する係止穴15aを設け、プラグ16を係止するための角穴15bと、上記取付け装置1の突条1aに対応する位置決め用の切欠き15cを設けている。上記プラグ16は、接続ピン16aと照明器具の点灯装置に接続された電線16cとともに、上記角穴15bに係止する係止部を一体に成形している。」(段落【0009】〜【0011】)
(ハ)「天井直付け形照明器具の器具本体15を取外す際には、まずプラグ16をプラグ受口10から引抜いて電源を遮断したのち、器具本体15を支持しながら上記器具本体15の中央に露出している取付け装置1の係止解除ボタン5を図6に示す矢印のように押し上げると、取付け装置1の中に組み込まれた係止突起3の溝穴3aの傾斜面を、上記係止解除ボタン5のスライドピン5aが押圧することにより、上記係止突起3はばね4の弾力に抗して点線矢印の方向に後退し、器具本体15に対する係止が外れるため、上記器具本体15は自重によって取付け装置1から自然に離脱することができる。」(段落【0013】)
(ニ)「上記のように本発明による天井直付け形照明器具の取付け装置は、天井に設置されたシーリングローゼットに取り付ける天井直付け形照明器具の取付け装置において、上記シーリングローゼットに係止接続する係止爪と、該係止爪と電気的に接続されたプラグ受口とを有し、照明器具に設けた係止穴を挿通したとき、弾性により側方に突出して上記係止穴を係止し、上記照明器具の荷重を支持できる複数の係止突起と、該係止突起を弾性に抗して後退させる係止解除ボタンとを設けたことにより、上記取付け装置をシーリングローゼットに装着し、照明器具の器具本体を押し上げるだけで、工具を使用することなく、電気的接続と照明器具の取付けとを同時に行えるだけでなく、上記取り付けられた照明器具を取外す際にも、上記取付け装置の係止解除ボタンを押すだけで、工具を全く使用することなく照明器具を容易に取外すことができるという効果を有する。」(段落【0014】【発明の効果】)
(ホ)図3及び図6には、係止突起3の先端部の下面に傾斜面を設けると共に上面に平坦面を設け、器具本体15の係止穴15aの周縁に傾斜する縁を形成すること、及び、係止突起3の先端部を取付け装置1の側壁の両側部からそれぞれ突出した状態及び没入した状態、及び、係止解除ボタン5が取付け装置1の下面に露出して設けられること、そして、図1には円筒形をなす取付け装置1がそれぞれ記載されている。
そして、上記記載事項及び図面の記載内容を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が、記載されていると認められる。
「シーリングクローゼット17に係止する係止爪2を円筒形をなす取付け装置1の上面に有する取付け装置1及びカバー6と、取付け装置1及びカバー6と挿通係止する係止穴15a及び周縁の縁を有する器具本体15とを備え、
取付け装置1に複数個の係止突起3をスライドしながら前進後退するよう設け、係止突起3に器具本体の係止穴15a及び係止穴15aの縁に取り付け及び取外し係止する下面に傾斜面が設けられると共に上面に平坦面が設けられる係止突起3の先端部を設けると共に、係止突起3の先端部を取付け装置1の側壁の両側部からそれぞれ突出した状態及び没入した状態にスライドしながら前進後退するよう設け、
各係止突起3に対して取付け装置1の側部から係止突起3を絶えず外側方に押している弾性ばね4をそれぞれ設け、
ばね4の弾力に抗して係止突起3の先端部を側壁から没入した状態にスライドしながら後退させるために係止突起3の溝穴3aの傾斜面を押圧するスライドピン5aを有する係止解除ボタン5を取付け装置1の下面に露出して設け、
器具本体の係止穴15a及び係止穴15aの縁は、取付け装置1に挿通係止する係止穴15aを器具本体のほぼ中央部に設けると共に、その周縁に傾斜する縁と取付け装置1の突条1aに対応する位置決め用の切欠き15cとを形成した天井直付け形照明器具の取付け装置。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-111111号公報(以下、「刊行物2」という。)には天井直付け照明器具の取付装置について次の事項が記載されている。
(ヘ)「本発明は、天井直付け照明器具の取付装置に関する。」(段落【0001】【産業上の利用分野】)
(ト)「また、係止爪10の内周面の上部及び下部にそれぞれ段部係止部23a,23a′が2段に重なるように形成されている。 ・・・ そして、シーリングコンセント2が埋め込み型の場合は、図11に示すように、器具本体8を押し上げて上アダプター4を下アダプター9aの円形孔20内に挿入し、上アダプター4の段部17が係止爪10aの上の段部係止部23aに係合した位置で停止させる。また、シーリングコンセント2が露出型の場合は、図12に示すように、器具本体8を押し上げて上アダプター4を下アダプター9aの円形孔20内に挿入し、上アダプター4の段部17が係止爪10aの上の段部係止部23aに係合した後さらに器具本体8を上昇させ、係止爪10aの下の段部係止部23a´を段部17に係合させる。」(段落【0020】〜【0021】参照。)
(チ)「係止爪10は ・・・ 下面に突設されたレバー11とを有する。 ・・・ そして、レバー11を摘んで外周方向に動かすことにより係止爪10がバネ22の付勢力に抗して奥側に摺動し、この結果、段部係止部23が下アダプター9の内部に退去するようになっている。」(段落【0015】参照。)
(リ)図7及び図10には、係止爪10、10aの下面にレバー11を突設し一体化していることが記載されている。
そして、上記記載事項及び図面の記載内容を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が、記載されていると認められる。
「係止爪の上部及び下部にそれぞれ段部係止部23a,23a′を2段に重なるように形成し、係止爪の下面にレバー11を突設し一体化している天井直付け照明器具の取付装置。」

3.対比・判断

本願発明と引用発明1とを対比すると、後者における「シーリングクローゼット17」はその作用・機能からみて前者の「引掛シーリング2」に相当し、以下同様に「係止爪2」は「栓刃3」に、「取付け装置1」は「アダプタベース14」に、「取付け装置1及びカバー6」は「アダプタ4」に、「係止穴15a及び係止穴15aの縁」は「係止受部6」に、「係止突起3」は「係止部材21」に、「スライドしながら前進後退する」は「摺動自在」に、「取り付け及び取外し係止する」は「着脱可能に係合する」に、「傾斜面」は「テーパ部」に、「平坦面」は「平坦な係止段部」に、「係止突起3の先端部」は「係止爪」に、「周壁」は「周面」に、「突出した状態及び没入した状態にスライドしながら前進後退するよう設け」は「出没可能に配設し」に、「絶えず外側方に押している」は「突出した状態に付勢する」に、「弾性ばね4」は「付勢ばね」に、「弾力に抗して」は「付勢に抗して」に、「係止解除ボタン5」は「解除突片28」に、「スライドしながら後退させる」は「摺動させる」に、「係止穴15a」は「円形孔38」に、「天井直付け形照明器具の取付け装置」は「天井直付け照明器具の取付装置」にそれぞれ相当するものと認められる。
これより、両者は
「引掛シーリングに引っ掛ける栓刃を円筒形をなすアダプタベースの上面に有するアダプタと、該アダプタと係合する係止受部を有する器具本体とを備え、
前記アダプタベースの径方向に係止部材をそれぞれ摺動自在に設け、前記係止部材に前記器具本体の係止受部に対して着脱可能に係合する各々の下面にテーパ部が設けられると共に上面に平坦な係止段部が設けられる係止爪を設けると共に、前記係止爪を前記アダプタベースの周面の両側部からそれぞれ出没可能に配設し、
前記各係止部材に対して前記アダプタベースの側部から前記係止爪を突出した状態に付勢する付勢ばねをそれぞれ設け、
前記付勢ばねの付勢に抗して前記各係止爪をアダプタベースの周面から没入した状態に摺動させる解除突片を前記アダプタベースの下面に露出して設け、
前記器具本体の係止受部は円形孔を器具本体に設ける天井直付け照明器具の取付装置。」で一致し、次の点で相違するものと認められる。

[相違点1]
係止爪が、本願発明においては、上下2段であるのに対し、引用発明1においては、一つの係止爪を有するものの2段とする構成を有していない点。
[相違点2]
解除突片が、本願発明においては、係止部材と一体に形成されているのに対し、引用発明1においては、係止部材(係止突起3)の溝穴3aの傾斜面を押圧するスライドピン5aを有し、係止部材と別体である点。
[相違点3]
器具本体の係止受部が、本願発明においては、アダプタベースの径よりも僅かに大きい円形孔を器具本体に直接設けると共に、その周縁全周に亘ってカーリング部を形成することにより縁部に丸み部を形成したものであるのに対し、引用発明1においては、アダプタベース(取付け装置1)に挿通係止する円形孔(係止穴15a)を器具本体のほぼ中央部に設けると共に、その周縁に傾斜する縁とアダプタベース(取付け装置1)の突条1aに対応する位置決め用の切欠き15cとを形成したものである点。

そこでまず、相違点1について検討する。
引用発明1及び引用発明2は共に天井直付け照明器具の取付装置の技術分野に属するものであって、引用発明2の「係止爪の上部及び下部にそれぞれ段部係止部23a,23a′が2段に重なるように形成し」た係止手段は、引用発明1の係止爪と同じ係止機能を働かせるものであるから、引用発明1の一つの係止爪に代えて、引用発明2の上下2段の係止爪とする点を採用することは当業者が容易になし得ることである。

なお、平成14年3月13日付け審判請求書の補正書において請求人は、
「(B)しかしながら、引用文献2に記載の上下2段の「係止爪」は引用文献1に記載の発明や本願発明のようにアダプタベース側でなく、器具本体8の天板に設けられる下アダプター9側であり、係止受部は同じく器具本体でなくシーリングコンセント2に取り付けられる上アダプター4側である。(C)ところで、本願発明において係止受部が円形孔38として器具本体に直接設けられることは、引用文献2記載の発明のように下アダプタを介して器具本体を上アダプタに取り付けるものに比して、下アダプタを不要とし、引掛シーリングに取り付けたアダプタに対して直接器具本体を取り付けることができ、構造の簡素化及び装置のスリム化を図る効果を招来するものであり、この構成要件は本願発明を構成する上で必要不可欠な前提事項である。」(「3-2-3 判断」の項)
との主張をしているが、互いに係止関係の2部材である器具本体とアダプタのどちらか一方に係止爪をそして残りの他方に係止受部をそれぞれ配することは、技術の具体化の際に当業者が適宜選択する程度の事項であるし、さらに引用発明1はアダプタ側に係止爪を配するものであり、この係止爪に引用発明2の係止爪を上下2段とすることを単に採用すれば、相違点1における本願発明の構成に想到するのであるから、上記請求人の主張する「構造の簡素化及び装置のスリム化」なる効果についても引用発明1乃至2から当業者が予測し得ることのできるものである。したがって、上記請求人の主張は採用できない。

次に、相違点2について検討する。
ところで、引用発明2には係止爪の下面にレバー11を突設し一体化することが開示されており、この「レバー11」は本願発明の「解除突片」に対応するものである。してみると、引用発明1の解除突片、及び係止爪を備える係止部材において、引用発明2におけるように両部材を一体化するという設計変更を行うことは当業者が容易になし得るものである。
なお、本願発明及び引用発明1は共に解除突片の作動により係止部材の一部分である係止爪をアダプタベースの周面から没入した状態に摺動させるとした共通の作用を達成することで一致するものであるし、その作用を達成するための引用発明の係止部材(係止突起3)の溝穴3aの傾斜面を押圧するスライドピン5aを有する解除突片といった互いに近接配置されかつ傾斜面を利用した直角方向への2部材による運動方向変換機構を、係合状態を解除する方向への一方向運動を達成するために係止部材と解除突片とを一部材として一体化構造とすることは、当業者が技術の具体化の際に適宜採用する単なる設計変更に過ぎないものである。

最後に、相違点3について検討する。
円形孔の大きさに関する構成については、引用発明1のアダプタベース(取付け装置1)に挿通係止する円形孔(係止穴15a)を器具本体のほぼ中央部に設けることは、その挿通関係を考慮すると円形孔はアダプタベースの径よりも僅かに大きいことは技術的に明らかな事項であり、またその円形孔は器具本体に直接設けられていると認められることから、相違点3における本願発明の「アダプタベースの径よりも僅かに大きい円形孔を器具本体に直接設ける」構成について実質的な差異はない。
次に円形孔の周縁に関する構成については、当該技術分野において、円形孔にカーリング部を形成することは従来より周知技術(例として、実願昭63-86325号(実開平1-164613号)のマイクロフィルムの〔従来の技術〕参照。)である。そして、カーリング部が縁部に丸み部を有することは技術的にみて自明の事項であることから、これは上記した周知技術が実質的に備えるものである。なお、引用発明1の器具本体側の傾斜する縁は、アダプタ側の係止爪(係止突起3の先端部)の下面テーパ部に対応した傾斜方向を有していることから、これは器具本体の円形孔を挿入する際に傾斜する縁と係止爪とが互いに摺動しかつ係合し易くするための傾斜として、もしくはアダプタベース(取付け装置1)に器具本体の円形孔を挿通し易くするための傾斜として、部材の取付作業を安全且つ迅速に行うための広く慣用される部材端部の縁処理として採用されたものであることは当業者であれば容易に理解できることからも、引用発明1の円形孔周縁の傾斜する縁とする縁処理の一手段にかえて上記周知技術を単に選択的に採用することは当業者が容易になし得ることである。
さらに、切欠きと突条からなる位置決め手段をいかなる位置に配するかは当業者が設計に際して適宜選択する事項であることから、あえてこのような位置決め手段を円形孔に採用しない場合にカーリング部を円形孔の周縁全周に亘って配することは当業者が普通に採用する程度の技術的事項である。
したがって、相違点3において指摘した本願発明の構成は当業者が容易に想到し得るものである。

なお、平成14年3月13日付け審判請求書の補正書において請求人は、刊行物1の円形孔(係止穴)の周縁の斜面部(当審では「傾斜する縁」と認定。)に第3図上肉部があるため、これは板金加工でなく樹脂にて整形されたものであり、板金加工を指すカーリング部を形成することを当業者が容易に想到することは困難である旨の主張をしている。(「3-2-3 判断」の項、(D)〜(H)参照。)
しかしながら、本願発明は器具本体の材料を必須の構成要件として規定するものではないから、上記請求人の主張は採用できない。

そして、本願発明の奏する効果も、引用発明1、引用発明2、及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

4.むすび

したがって、本願発明は、上記刊行物1乃至2に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-19 
結審通知日 2003-05-27 
審決日 2003-06-10 
出願番号 特願平9-188933
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 平上 悦司
藤原 直欣
発明の名称 天井直付け照明器具の取付装置  
代理人 神保 欣正  

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