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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) G10K
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) G10K
管理番号 1086190
審判番号 審判1997-19468  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-05-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-11-14 
確定日 2003-10-31 
事件の表示 上記当事者間の特許第2508394号「電子音楽再生装置」の特許無効審判事件についてされた平成11年 6月 1日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11(行ケ)年第0226号平成14年 3月14日判決言渡)があり、最高裁判所において該判決に対する上告の棄却及び上告審として受理しない旨の決定(平成14年(行ツ)第128号、平成14年(行ヒ)年第156号、平成14年9月10日決定)があつたので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第2508394号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願 平成 2年10月 2日
特許権設定登録 平成 8年 4月16日
特許異議の申立て4件 平成 8年12月17日他
特許異議決定 訂正認容、維持決定
平成 9年 7月25日
特許無効審判請求 平成 9年11月14日
特許権維持審決 平成11年 6月 1日
審決書送達 平成11年 6月24日
審決取消し訴訟提起 平成11年(行ケ)第226号
審決取消しの判決言渡し 平成14年 3月14日
上告及び上告受理申立て 平成14年(行ツ)第128号
平成14年(行ヒ)年第156号
訂正審判請求 平成14年 6月10日
上告の棄却及び上告審として受理しない旨の決定、判決確定
平成14年 9月10日
訂正審決確定 請求不成立 平成15年 7月14日

第2 本件特許発明
本件特許発明は、平成9年6月6日付けで訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】楽曲のデジタル楽音情報を格納した楽音情報記憶部と、背景情報を格納した映像記憶部と、記憶された前記各情報を読み出し伴奏音の再生と共に背景映像並びに歌詞の画像表示を行うように装置の動作制御を行う制御部とを備える電子音楽再生装置において、 前記楽音情報記憶部に格納されるデジタル楽音情報は、種々の楽器の演奏情報と歌詞表示指示情報と、を有し、前記歌詞表示指示情報は、歌詞の表示・消去指示情報と、前記演奏情報の主旋律の進行に適合した歌詞文字表示の色変化を行わせる色変え指示情報と、色変えを行う文字が所定の幅ずつ色変えが行われるように、前記演奏情報の主旋律の進行に適合する異なった色変えの幅を指示する色変え幅情報と、を含むよう構成され、 制御部は、前記各指示情報に基づき歌詞の画像表示制御を行うと共に、色変え幅情報に基づいて、現在色が変わっている位置から指定された幅だけ色変えを行うよう制御することを特徴とする電子音楽再生装置。」

第3 甲第1号証刊行物の認定及び本件特許との対比
無効審判請求人が提示した甲第1号証刊行物である特開平2―242294号公報に記載されている事項は、東京高等裁判所における審決取消し訴訟の確定判決で詳細な認定がなされ、以下のとおり判示された。
この判示事項は、審判合議体を拘束する。

1 裁判所の判断
「1 甲第1号証刊行物記載の発明の認定の誤りについて
(1) 甲第1号証によれば,同号証刊行物(特開平2―242294号公報)には,次の記載があることが認められる。
ア〔産業上の利用分野〕
「本発明は,カラオケ情報をデータベースとし,これを音楽再生するカラオケ装置に係り,音楽の進行に対応してディスプレイに歌詞を表示または制御するための歌詞表示装置に関する。」(同刊行物1頁右欄下から4行〜末行)
イ〔従来の技術およびその課題〕
「一般に,カラオケではアンプを通してスピーカから楽曲が流れると共に,CRTなどのディスプレイに楽曲に対応した歌詞が順次表示されるものであるが,現在のところはこれらはコンパクトディスクなどに収容されたPCM信号を独立した装置によって再生しているものがほとんどであり,二進符号化したデジタル情報によって処理しているものはなかった。ところで,本発明では二進符号化された歌詞情報および楽曲情報をデータベースとしてホストコンピュータに保存し,これを公衆回線によってダウンロードする手段も予定しているが,従来のこの種の技術としては,ビデオテックス通信網を用いて視覚情報と聴覚情報とを伝送する手段が知られている。しかし,この手段では一画面中の一部分づつ表示していったり,一部分づつ消去しようとすれば,表示・消去の書き換え速度が遅くなるので,全画面単位で書換えをしなければ,楽曲の進行に適切に対応することができない。従って,一画面単位内で歌詞のみを適当に消去したり,背景色を適当に変更することはできないという欠陥がある。さらに,利用者側の端末の種類によって画面書換えの速度が異なるので,端末一様に所定の速度で同期させることは不可能である。
本発明はこのような従来の課題を解決しようとするもので,二進符号によってカラオケ情報を記憶・処理する構成において,ディスプレイ上に表示された歌詞のうち,音楽再生が終わった歌詞を一文字づつではなく,徐々に消去したり,表示された歌詞の背景色を適宜変更することができ,さらに楽曲と正確に対応した歌詞の進行が可能なカラオケ用ディスプレイの歌詞表示装置を提供することを目的とする。」(同刊行物2頁左上欄1行〜右上欄14行)
ウ〔課題を解決するための手段〕
「本発明は上記目的を達成するために,二進符号化した楽曲情報および歌詞情報からなる複数のカラオケ情報をデータベースとしたカラオケ装置において,特定のカラオケ情報を演算・処理する中央制御装置と,この中央制御装置によって演算・処理された情報によって順次音楽再生を行うと共にディスプレイへの歌詞表示を制御するシーケンサと,常時必要な歌詞情報を記述するグラフィックビデオメモリと,上記シーケンサからの順次命令によってグラフィックビデオメモリを制御するグラフィック制御装置と,予め文字・記号などが図形として記憶され,上記グラフィックビデオメモリの記憶内容に対応した文字などを上記グラフィック制御装置を介して読み出し可能なパターンROMと,ディスプレイを制御するビデオ制御装置とからなり,音楽再生に対応して上記ディスプレイに表示された歌詞を進行させるという手段を用いた。また,楽曲情報に,音楽再生の進行に伴って歌詞表示を進行し,および任意に背景色を変更するトリガ信号を混在させるという手段も用いた。さらに,音楽再生の進行に伴って背景色のカラーコードを適宜変更することにより,背景色の変更を行うという手段も用いた。さらにまた,音楽再生の進行に伴って,再生が終了した部分に対応する歌詞を順次背景色と同一色に変更するという手段も用いた。」(同刊行物2頁右上欄16行〜右下欄2行)
エ〔実施例〕
「第2図は,本実施例の構成に基づいた歌詞表示の詳細な動作を示すフローチャートで,文字や記号を図形として扱い,これを処理する手順を示したものである。・・・先ず音楽の再生が開始されると同時に(21),当初の背景色を決定すると共に,トリガ信号のカウントをゼロに初期設定する(22)。次に再生が開始されると順次歌詞情報のなかの文字コード(コマンド)を読んで,あるいはソースポインタを参照しつつこれをバッファにいれる(23)。続いてトリガ信号に応じてカウントを積算し(24),コマンドのトリガ数値がカウント値と一致もしくはカウント値が大きい場合には(YES)次処理に移行し,そうでない場合にはブロック24に戻る(25)。YESのばあいにはコマンドが文字表示に関するものか否か(26),歌詞の色変更あるいは文字消去に関するものか否か(27),ディスプレイ画面のクリア,即ち音楽再生の終了に関するものか否か(28)をそれぞれ判断し,YESの場合にはそれぞれの分岐に移行し,全てNOの場合にはブロック24に復帰する。
次に,文字表示の場合には文字数,文字の位置や文字パターンの指定によってパターンROM5からG―VRAM7の記憶に対応する文字(図形)を読み出し,文字サイズに応じてドットを拡大・縮小し,背景色のカラーコードと共にG?VRAM7に書き込み(29),続いてビデオ制御装置8を介してディスプレイ9に表示したのちに(30)ブロック23に復帰し,次のコマンドを処理する。文字の色変更あるいは文字消去の場合には色変更の開始位置から終了位置までの指定された色をカラーコードを変更することによって文字の色変更を行い(31),ディスプレイ9に表示する(30)。このとき,変更された文字の色が背景と同一であれば文字が消去されるのと同じ効果を奏し,違うときには文字が徐々に色変わりをするように見える。また,グラフィック処理を行っているので,一文字づつ不連続に変更するのでなく,連続的に徐々に色を変更することが可能である。」(同刊行物3頁右下欄17行〜4頁右上欄17行)
(2) 上記(1)の認定によれば,甲第1号証刊行物には,中央制御装置等によりカラオケ情報を演算・処理し,演算,処理された制御用情報に基づき,制御装置が,音楽再生の進行に伴ってディスプレイ上に歌詞を表示し,表示された歌詞について,歌詞を1文字づつではなく徐々に色変わりさせる等の動作の実行を制御する歌詞表示装置を具備したカラオケ装置が記載されているということができる。
また,上記(1)エで認定したとおり,甲第1号証刊行物の実施例の項には,上記歌詞を徐々に色変わりさせる動作を,「色変更の開始位置から終了位置までの指定された色をカラーコードを変更することによって」(同刊行物4頁右上欄8行〜9行)実行するとの記載がある。
一般に,制御装置において,ある動作を実行させるためには,当該動作に関する制御用情報が具備されるべきことが技術常識であることは,弁論の全趣旨で明らかであるから,甲第1号証刊行物の上記カラオケ装置においても,「色変更の開始位置から終了位置までの指定された色をカラーコードを変更するとによって文字の色変更を行い(31),ディスプレイ9に表示する(30)」(同刊行物4頁右上欄8行〜11行)ために動作を制御する情報が具備されていることは,明らかであるというべきである。この色変更に関する情報には,行われるべき作業の開始位置及び終了位置を指定するだけの,単なる位置に関する情報(以下「位置情報」という。)と,この位置情報によって特定された範囲において行われるべき作業の内容(色変え)を指定する情報(以下「区間情報」という。)が存在することは,甲第1号証刊行物の上記認定の記載と,上記制御の対象となる動作の内容とから明らかである。
上記位置情報は,単に色変更開始及び色変更終了の位置を表すだけのものであるから,本件発明の「色変え指示情報」に,同刊行物記載の発明における上記区間情報は,上記位置情報によって特定された範囲において行われる作業が色変えであることを表すものであるから,本件発明の「色変え幅情報」に相当するものというべきである。
甲第1号証刊行物における中央制御装置などの制御装置は,本件発明と同様に上記各情報を実行処理するものであるから,本件発明と同様の制御を行うこととなることが明らかである。
(3) 被告は,甲第1号証刊行物に記載された発明においては,楽曲情報に混在されるトリガ信号の記録間隔(出現タイミング)を変化させること,あるいは,コマンドのトリガ数値を変化させることにより,文字の色変更処理の実行タイミングを調整して,歌詞の色変えをカラオケ楽曲の主旋律の進行に適合させているとした上で,同刊行物に示された「色変更の開始位置から終了位置までの指定された色をカラーコードを変更することによって文字の色変更を」行う,という情報は,本件発明の「色変え幅情報」に当たらないと主張する。
しかしながら,本件特許の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲において,「色変え幅情報」を規定するのは,「前記歌詞表示指示情報は,歌詞の表示・消去指示情報と,前記演奏情報の主旋律の進行に適合した歌詞文字表示の色変化を行わせる色変え指示情報と,色変えを行う文字が所定の幅ずつ色変えが行われるように,前記演奏情報の主旋律の進行に適合する異なった色変えの幅を指示する色変え幅情報」との文言のみであり,そこでは,「色変え幅情報」の内容を特に限定していない。そうである以上,特許請求の範囲のみに基づいてみる限り,本件発明における「色変え幅情報」には,歌詞の色変えをカラオケ楽曲の主旋律の進行に適合させるためにトリガ信号を用いる場合の情報も含まれると解すべきは当然というべきである。そして,念のために本件明細書(甲第11号証の2)の他の部分の記載を検討してみても,上記認定の妨げとなるものを見いだすことはできない。甲第1号証刊行物記載の発明が,トリガ信号を用いていることは,同号証の「色変更の開始位置から終了位置までの指定された色をカラーコードを変更することによって文字の色変更を」行う,という情報が,本件発明の「色変え幅情報」に当たると解することを何ら妨げるものではない。被告の主張は,採用することができない。
(4) 以上のとおりであるから,甲第1号証刊行物には,本件発明の「色変え指示情報」及び「色変え幅情報」が記載されていないとした,審決の認定判断は誤りであるというべきであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは,明らかである。」

2 そこで、上記東京高等裁判所の判断事項を基に、本件特許と甲第1号証刊行物記載の発明とを対比すると、次の一致点、相違点が認められる。
【一致点】
楽曲のデジタル楽音情報を格納した楽音情報記憶部と、記憶された前記各情報を読み出し、伴奏音の再生と共に歌詞の画像表示を行うように装置の動作制御を行う制御部とを備える電子音楽再生装置において、 前記楽音情報記憶部に格納されるデジタル楽音情報は、種々の楽器の演奏情報と歌詞表示指示情報と、を有し、前記歌詞表示指示情報は、歌詞の表示・消去指示情報と、前記演奏情報の主旋律の進行に適合した歌詞文字表示の色変化を行わせる色変え指示情報と、色変えを行う文字が所定の幅ずつ色変えが行われるように、前記演奏情報の主旋律の進行に適合する異なった色変えの幅を指示する色変え幅情報と、を含むよう構成され、 制御部は、前記各指示情報に基づき歌詞の画像表示制御を行うと共に、色変え幅情報に基づいて、現在色が変わっている位置から指定された幅だけ色変えを行うよう制御することを特徴とする電子音楽再生装置。」
【相違点】
本件特許が背景映像を格納した映像記憶部を有し、背景映像の表示を行うのに対し、甲第1号証刊行物が背景色の変更を行うことのみ記載されている点。

第4 当審の判断
上記相違点である、背景に映像を表示することは、無効審判請求人が提示した甲第2号証刊行物である特開平2-207683号公報には、「カラオケ・ビデオソフト歌詞スーパ方式」と題する発明について、その従来技術の項には、「歌詞の内容に適合した場面の人物や風景などの画面を背景にしてその画面の下端部に、」(公報1頁右下欄11行ないし12行)と記載されている。
本件特許発明は、甲第1号証刊行物に記載された発明において、背景色に代えて甲第2号証刊行物に記載された背景映像を採用したものであり、この程度のことは当業者であれば容易に推考できたものと認められる。

第5 むすび
したがって、本件特許発明は、本願出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-04-22 
結審通知日 1999-05-07 
審決日 1999-06-01 
出願番号 特願平2-265728
審決分類 P 1 112・ 121- Z (G10K)
P 1 112・ 121- Z (G10K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山下 剛史  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 小林秀美
藤内光武
登録日 1996-04-16 
登録番号 特許第2508394号(P2508394)
発明の名称 電子音楽再生装置  
代理人 飯塚 義仁  
代理人 内藤 義三  
代理人 田中 成志  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 山中 郁生  
代理人 中村 稔  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 村社 厚夫  
代理人 佐尾 重久  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 竹内 英人  
代理人 今城 俊夫  
代理人 田倉 整  
代理人 富澤 孝  
代理人 田中 伸一郎  

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