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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1086206
審判番号 不服2002-3749  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-04 
確定日 2003-11-04 
事件の表示 平成 5年特許願第346324号「文字放送受信装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 7月21日出願公開、特開平 7-184136]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 【手続きの経緯、本願発明】
本願は、平成5年12月21日の出願であって、平成14年4月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲(請求項の数9)に記載された「文字放送受信装置」に関するものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
文字信号が多重して伝送されるテレビジヨン信号から上記文字信号を分離復号し、当該文字信号から得られた情報をテレビジヨン受像機の画面上に表示する文字放送受信装置において、
複数のテレビジヨンチヤンネルそれぞれについて、各テレビジヨンチヤンネルを介して伝送される上記テレビジヨン信号の番組情報を上記文字信号から抜き出す番組情報抽出手段と、
上記番組情報抽出手段によつて抜き出された上記番組情報を記憶する番組情報記憶手段と、
上記番組情報記憶手段から読み出した上記各テレビジヨンチヤンネルの上記番組情報を合成して番組一覧表を作成する番組表作成手段と、
上記番組一覧表の一部又は全部を画面上に表示する表示制御手段と、
上記画面上に表示された上記番組一覧表のうちの任意の番組を選択するポインテイング手段と、
上記ポインテイング手段により選択された番組に対応する位置データに基づき上記番組情報記憶手段から上記番組情報を読み出し、当該番組情報から得られるチヤンネルに受信チヤンネルを切り替える選局制御手段と
を具えることを特徴とする文字放送受信装置。」

第2 【引用例】
1 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平5-83688号公報(以下「引用例1」という。)には、「文字放送受信装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次の(1)ないし(3)のとおりの記載がある。
(1)「【0007】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、複数の放送局から送信される文字放送のうち、番組に関する番組情報を取り込み、複数の放送局の番組情報を同時に見ることのできる番組表を作成する文字放送受信装置を提供する。更に作成した番組表を基にタイマー予約を行う、またはVTR等の周辺機器を制御することの可能な文字放送受信装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る手段は、テレビジョン放送局から送信されるテレビジョン信号を受信し、このテレビジョン信号から映像信号と文字信号とを取り出す手段と、前記文字信号を画面に表示する表示手段と、全チャンネルの文字信号の中から番組情報信号を選択し、記憶する選択手段と、番組情報信号から番組表を作成する作成手段とを具備し、前記番組表を前記表示手段を介して画面に表示する、または番組予約に使用することで文字放送受信装置で番組表より番組情報を得ることができるほか、番組予約が簡単に行える。
【0009】
【作用】文字信号の中から番組情報を選択し、この番組情報を全チャンネルについて記憶し、番組表を作成する。これにより一度に全チャンネルの番組情報を得ることができるほか、番組表を基に予約を行うことで簡単に番組予約を行うことができる。
【0010】
【実施例】以下、図面を参照して実施例の構成を説明する。まず、第1実施例より説明する。図1は第1実施例の構成を示すブロック図であり、図2は図1の動作を説明するフローチャートである。
【0011】図1において、アンテナ10で受信されたテレビジョン信号は選局部11に供給され、希望する放送局の信号が選局される。ここで選局されたテレビジョン信号のうち、映像信号は切替混合部12を介して受像管13に供給され、映像が表示される。
【0012】一方、文字信号は選局部11でテレビジョン信号から分離され、文字信号処理部14に供給される。文字信号処理部14では文字データが復号され、パターンデータ及び図形データ等の映像信号に変換された後、表示メモリ16に書き込まれる。そして表示メモリ16からデータが読み出され、切替混合部12を介して受像管13で表示される。
【0013】ところで文字信号処理部14で処理される信号のうち、テレビ番組に関する情報は選別され、番組情報メモリ15に書き込まれる。これが全チャンネルについて行われる。全チャンネルの番組に関する情報は番組表提示部17に供給され、番組表が作成される。この番組表が表示メモリ16、切替混合部12を介して受像管に表示される。
【0014】ここで、図2を参照して第1実施例の動作を説明する。まずS10で受信が開始され、選局部11で選局が行われ(S11)、文字信号処理部14で信号処理が行われる(S12)。処理された信号のうち番組情報は選択され(S13)、番組情報メモリ15に書き込まれる(S14)。以上のS11〜S14までの動作が全チャンネルについて行われ、全チャンネルについて行われた場合はS16へ進み、終了していない場合はS11へと戻る。S16では番組表提示部17で番組表が作成され、表示メモリ16へ書き込まれる(S17)。S18で表示メモリ16からデータが読み出され、S19で番組表が受像管13に表示される。これにより全チャンネルの番組情報を画面上で知ることができる。」(公報2欄12行ないし3欄23行)
(2)「【0020】また図3に示すような番組表において、カーソルを操作して予約録画する番組を指定し、録画制御部18を介して外部のVTRを制御することも可能である。この場合は指定された番組を番組表提示部17で識別し、指定されたチャンネル、放送時間帯等の情報を録画制御部18に送り、外部VTRを制御するものである。以下、第3実施例の動作を図6を参照して説明する。
【0021】図6は番組表を基に番組予約もしくは予約録画を行う動作を説明するフローチャートである。まず、受信が開始され(S10)、番組表が作成される(S31)。この番組表上のカーソルを移動させる、もしくは放送局及び時間が指定されることで番組が選択される(S32)。S33では番組予約を行う場合、S40へ進み、予約処理を行い、S36へと進む。また番組予約を行わない場合はS34へと進む。S34で詳細な番組情報を表示したい場合にはS41へと進み、番組情報メモリ15から詳細情報を読み出し、S42で詳細情報を表示し、S36へと進む。そして詳細な番組情報を必要としない場合にはS35へと進む。S35ではVTR等で予約録画を行う場合はS43に進み、録画制御処理を行い、予約録画を行わない場合にはS36に進む。S36では番組表の表示を終了させるかどうかを確認し、終了させない場合はS32へ戻り、終了させる場合はS37に進み、他の番組を表示させる。
【0022】このような構成及び動作にすることで番組予約及び予約録画を簡単に行えるだけでなく、放送時間や番組内容の変更に対応した番組予約及び予約録画を行うことができる。」(公報4欄11行ないし39行)
(3)「【0027】更に、選局部を映像信号用と文字信号用とに分割したことで、受像管13で通常の番組を表示しながらも全チャンネルの文字信号を受信することが可能となることから、常に新しい番組表を作成することができる。そしてタイマー部19が番組予約に関し、選局部A11′を制御することで、見たい番組を見逃すことがなくなる。
【0028】以上記述したように、文字放送受信装置において、全チャンネルについて番組に関する情報だけを選択し、番組表を作成する。この番組表を基に番組予約や外部VTR等の予約録画を制御することで、予約を簡単に行うことができるほか、常時もしくは一定時間毎に番組表を作成し直すことで放送時間や番組内容の変更に対応した番組表の作成及び予約を行うことができる。また文字放送専用の選局部を設けることで、通常の番組を表示中でも全チャンネルの文字放送が受信でき、番組表を作成することができる。」(公報5欄19行ないし35行)
2 同じく引用された特開昭62-60370号公報(以下「引用例2」という。)には、「テレビジョン受像機」(発明の名称)に関し、図面と共に次の(1)、(2)のとおりの記載がある。
(1)「[発明の目的]
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、現在放送中の番組一覧表をテレビ画面に表示し、その表示の上から所望の番組を指定操作することにより、自動的にその番組を選局して受信することができるテレビジョン受像機を提供することを目的とする。
[発明の要点]
本発明は、画面上にタッチスイッチを配置すると共に、放送日時データ、放送局データ、番組名データを含むテレビ番組の情報を記憶する番組情報記憶手段並びに現在の日付及び時刻を計時する時計回路を設け、この時計回路の計時データと番組情報記憶手段の記憶している番組放送日時データとから現在放送中の番組を検出し、その一覧表を上記タッチスイッチに対応付けて上記画面上に表示し、上記タッチスイッチの操作により、操作されたタッチスイッチに対応する番組を自動受信するようにしたものである。」(公報2頁左上欄8行ないし同頁右上欄6行)
(2)「CRT表示部15の画面上には第8図に示すように、そのとき放送されている番組内容が各放送局のチャンネル番号と共に表示される。ユーザーは、CRT表示部15に表示された番組内容を見て、ステップB12に示すように希望する番組のチャンネル番号表示部分、すなわち、タッチスイッチ16をタッチ操作する。このタッチスイッチ16に対するタッチ操作は、キーセンス回路17により検出され、その検出信号がCPU18へ送られる。CPU18は、キーセンス回路17から送られてくるキーセンス信号により、どのチャンネルが指定操作されたかを判断し、ステップB13に示すようにその指定チャンネルに対応するチャンネルコードをチャンネル電圧発生回路25に出力する。このチャンネル電圧発生回路25は、上記CPU18からのチャンネルコードに対応するチャンネル電圧を発生し、オートチャンネル回路12に出力する。このオートチャンネル回路12は、チャンネル電圧発生回路25から与えられるチャンネル電圧に応じてチューナ11の受信周波数を制御し、指定チャンネルの局を選択する。上記のようにしてCRT表示部15に画面表示された番組の一覧表の中から希望する番組をタッチ指定することにより、その番組を放送中のチャンネルが選択されて画像表示される。」(公報5頁右上欄10行ないし同頁左下欄14行)

第3 【当審の判断】
1 [対比]
(1)引用例1には、テレビジョン放送局から送信されるテレビジョン信号を受信し、このテレビジョン信号から映像信号と文字信号とを取り出し、その文字信号を画面に表示する文字放送受信装置が記載されており(引用例1の上記(1)の記載参照)、引用例1に記載の発明も、本願発明と同様の「文字放送受信装置」を対象としているといえる。
(2)引用例1には、アンテナ10で受信されたテレビジョン信号は選局部11に供給され、希望する放送局の信号が選局され、ここで選局されたテレビジョン信号のうち、映像信号は切替混合部12を介して受像管13に供給され、映像が表示されること、そして文字信号は選局部11でテレビジョン信号から分離され、文字信号処理部14に供給され、全チャンネルのテレビ番組に関する情報が選別され、番組情報メモリ15に書き込まれることが記載されており(引用例1の上記(1)の記載参照)、上記番組情報メモリ15が、本願発明でいう「番組情報記憶手段」に相当することは明らかであり、そして上記番組情報メモリ15には、テレビジョン信号から文字信号処理部14にてテレビ番組に関する情報が選別されるものであるから、引用例1に記載のものも本願発明でいう「番組情報抽出手段」を有するものといえる。
(3)引用例1には、番組情報メモリ15に書き込まれた全チャンネルの番組に関する情報は番組表提示部17に供給され、番組表が作成されることが記載されており(引用例1の上記(1)の記載参照)、上記番組表提示部17が、本願発明でいう「番組表作成手段」に相当するといえる。
(4)引用例1には、番組表が表示メモリ16、切替混合部12を介して受像管に表示されることが記載されており(引用例1の上記(1)の記載参照)、引用例1に記載のものも本願発明でいう「表示制御手段」を有することは明らかである。
(5)ポインティング手段とは、画面上の任意の座標位置を入力するための手段で、ウィンドウシステムやゲームなどのGUIで広く利用されており、マウスが代表的な存在だが、他にもペンやトラックボール、トラックパッド、タブレットなどがあることは、当業者に自明の事項である。
引用例1には、受像管に表示される番組表上でカーソルを移動させることで番組が選択され、番組予約を簡単に行えることが記載されており(引用例1の上記(2)の記載参照)、そのようなカーソルの移動による選択指示が、本願発明でいう「ポインテイング手段」といえることも明らかである(このような「ポインテイング手段」自体は、例えば、原査定の拒絶理由で示した引用例5の特開平5-236437公報にも記載されているように周知である。)。
(6)引用例1には、番組表上のカーソルを移動させ、番組が選択され番組予約が行われること(引用例1の上記(2)の記載参照)、またタイマー部が番組予約に関し、選局部を制御することで、見たい番組を見逃すことがなくなること(引用例1の上記(3)の記載参照)、すなわち受信チャンネルを切り替えることが示されており、これらの記載によれば引用例1に記載の発明も、番組を直接選択するものが現在放送中のものか否かは別として、本願発明と同様「上記ポインテイング手段により選択された番組に対応する位置データに基づき」、「受信チヤンネルを切り替える選局制御手段」を有するものといえる。

2 [一致点]・[相違点]
以上の点(1)ないし(6)を踏まえると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「文字信号が多重して伝送されるテレビジヨン信号から上記文字信号を分離復号し、当該文字信号から得られた情報をテレビジヨン受像機の画面上に表示する文字放送受信装置において、
複数のテレビジヨンチヤンネルそれぞれについて、各テレビジヨンチヤンネルを介して伝送される上記テレビジヨン信号の番組情報を上記文字信号から抜き出す番組情報抽出手段と、
上記番組情報抽出手段によつて抜き出された上記番組情報を記憶する番組情報記憶手段と、
上記番組情報記憶手段から読み出した上記各テレビジヨンチヤンネルの上記番組情報を合成して番組一覧表を作成する番組表作成手段と、
上記番組一覧表の一部又は全部を画面上に表示する表示制御手段と、
上記画面上に表示された上記番組一覧表のうちの任意の番組を選択するポインテイング手段と、
上記ポインテイング手段により選択された番組に対応する位置データに基づき受信チヤンネルを切り替える選局制御手段と
を具えることを特徴とする文字放送受信装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
選局制御手段が、本願発明では、ポインテイング手段により選択された番組に対応する位置データに基づき「上記番組情報記憶手段から上記番組情報を読み出し、当該番組情報から得られるチヤンネルに」受信チヤンネルを切り替えるものであるのに対して、引用例1に記載の発明では、番組表上のカーソル移動に基づいて、タイマー部を介して選局部を制御するものであり、現在放送中の番組を直接選択するものではなく、またカーソルの移動に基づいて番組情報メモリから番組情報を読み出し、番組情報から得られるチャンネルに受信チャンネルを切り替えることは明記されていない点。

3 [相違点の検討]
引用例2には、テレビジョン受像機において、現在放送中の番組一覧表をテレビ画面上に表示し、その表示の上からタッチスイッチ(本願発明の「ポインテイング手段」に相当)を用いて所望の番組をタッチ指定することにより、自動的にその番組のチャンネルを直接選局して受信することが記載されており(引用例2の上記(1)、(2)の記載参照)、引用例1に記載の文字放送受信装置において、番組表上のカーソル移動に基づいて、タイマー部を介して選局部を制御する代わりに、引用例2に記載のように番組一覧表からタッチスイッチ(ポインテイング手段)により所望の番組をタッチ指定することにより、指定した番組のチャンネルを直接選局するように受信チャンネルを切り替える程度のことは当業者が適宜になし得ることである。
そして、その際、受信チャンネルを切り替えるためのチャンネルを、選択された番組に対応する位置データに基づき番組情報メモリから番組情報を読み出し、当該番組情報から得るようになすことも、番組情報メモリ自体が、チャンネルなどの番組情報を記憶していることは明らかであるから格別のものとはいえない。
すなわち、引用例1に記載の文字放送受信装置において、選局制御手段が、本願発明のように、ポインテイング手段により選択された番組に対応する位置データに基づき「上記番組情報記憶手段から上記番組情報を読み出し、当該番組情報から得られるチヤンネルに」受信チヤンネルを切り替えるようになす程度のことは、引用例2の技術を参酌すれば、当業者が適宜になし得ることといえる。
そして、本願発明の構成に基づく効果についてみても格別顕著なものがあるとはいえない。

第4 【むすび】
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項2ないし9に係る発明について、検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-01 
結審通知日 2003-09-05 
審決日 2003-09-19 
出願番号 特願平5-346324
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 橋本 恵一
小松 正
発明の名称 文字放送受信装置  
代理人 田辺 恵基  

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