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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1086545 |
異議申立番号 | 異議2001-70075 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-11-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-09 |
確定日 | 2003-10-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3062283号「毛髪化粧料」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3062283号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
理 由 1.手続の経緯 本件特許第3062283号の発明については、平成3年5月14日に特許出願され、平成12年4月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、菅原洋子より特許異議の申し立てがなされたものである。 2.特許異議の申立てについて ア.本件発明 特許第3062283号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】(a)次の一般式(1) (式及び式中の置換基の定義略) で表わされるアミノ変性シリコーン誘導体、及び (b)紫外線吸収剤 を含有することを特徴とする、すすがないで使用するタイプの毛髪化粧料。」 イ.申立の理由の概要 特許異議申立人菅原洋子(以下、「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証(特開平2-184614号公報)、甲第2号証(昭和60年1月25日発行「フレグランスジャーナル」、No.70(1985)第112〜115頁)及び甲第3号証(昭和55年7月25日発行「フレグランスジャーナル」、No.43(1980)第24〜30頁)を提出し、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し特許されたものであるので、特許を取り消すべき旨主張する。 ウ.申立人が提出した甲1〜3号証に記載の発明 申立人の提出した甲第1号証には、シリコーンゴム、デンプン脂肪酸エステル等を含む泡状無水化粧料が記載され、その実施例4には、シリコーンゴム(TSB200A)、レオパールKL、イソステアリン酸アルミニウム、ジメチルポリシロキサン(50cs)、エタノール、コラーゲン加水分解物、オキシベンゾン、エスカロール507、低沸点イソパラフィンからなる整髪料が記載され、この整髪料は毛髪に塗布しやすく、塗布後の毛髪につやを与え、なめらかにし、毛髪を保護することが記載され、さらに、上記シリコーンゴム(TSB200A)は平均分子量40〜60万のジメチルポリシロキサンであることが記載(第2頁左下欄第17行〜同右下欄第9行)されている。(なお、上記オキシベンゾン、エスカロール507は、本件明細書の段落番号[0015]にも記載されているように紫外線吸収剤である。) また、同じく申立人の提出した甲第2号証には、「頭髪用ムース剤原料としてのシリコーンの開発と課題」との表題のもとに、アミノ変性シリコーンについて、「アミノ変性シリコーンの特長は、分子内にアミノ基を有することから毛髪表面のタンパク質と親和性があり化学吸着することである。・・・毛髪表面で持続性のある皮膜を形成する。この性質から従来のシリコーンオイルに比べ耐水、耐洗髪性に優れたコンディショニング効果が付与される。」と記載(第114頁右欄)され、さらに、「アミノ変性シリコーンは乳化が比較的容易であり、従来のシリコーンオイルに比べ配合の許容範囲が広い」とも記載(第114頁右欄〜第115頁左欄)されている。 甲第3号証には、「サンスクリーン剤の化粧品への利用とその問題点」という表題のもとに、皮膚を紫外線から保護するためのサンスクリーン剤が記載され、その適用部位として、「顔、口唇、頭髪、全身」と記載(第26頁左欄)されている。 エ.判断 本件発明と、甲第1号証に記載された発明、とくに実施例4に記載された整髪料とを対比すると、両者は、シリコーンと紫外線吸収剤とを含有するすすがないで使用するタイプの毛髪化粧料である点で一致し、一方、使用するシリコーンが、前者においては特定のアミノ変性シリコーン誘導体であるのに対して、後者はシリコーンゴムである点で相違する。 そこで、この相違点について検討すると、後者で用いられるシリコーンゴムは合成ゴムの一種(大木道則ほか編、「化学大辞典」、株式会社東京化学同人、1989年発行、第1143頁参照)であり、シリコーンオイルとは、その物性を著しく異にするものであるうえ、後者においては、シリコーン油(=シリコーンオイル)に代えてシリコーンゴムを用いることを特徴とするものであることから、甲第2号証によりヘアケア製品において、しばしば配合されてきたシリコーンオイルよりもアミノ変性シリコーンが多くの点で優れていることが知られていても、甲第1号証の実施例4において、シリコーンオイルとはその性質を全く異にするシリコーンゴムを甲第2号証に記載されているアミノ変性シリコーンに置換することは、当業者が容易に想到し得ないものである。 甲第3号証は、皮膚を紫外線から保護するためのサンスクリーン剤に関するものであるから、甲第2号証に記載の実施例4における紫外線吸収剤を説明、補強するものではあっても、シリコーンの配合については何も記載するところがない。 したがって、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が特定のアミノ変性シリコーン誘導体及び紫外線吸収剤を毛髪化粧料に配合することを容易に想到し得たものであるとする申立人の主張は妥当でない。 なお、申立人は、紫外線吸収剤としてオキシベンゾンを用いる場合についてのみ効果を確認しているにすぎず、すべての紫外線吸収剤と組み合わせても同様な効果を奏することが示されていない、とも主張するが、その理由としては、単に化粧品に配合される紫外線吸収剤は種々様々な化学構造を有している、というのみであり、その根拠に乏しいうえ、特許権者が平成13年10月22日付で提出した意見書に添付された実験成績証明書によれば、オキシベンゾン以外の3種類の紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料について、いずれも光沢、くし通り性、髪の感触が優れていることが示されていることから、この点についての請求人の主張も妥当でない。 以上のとおりであるから、本件特許は、申立人の特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-10-07 |
出願番号 | 特願平3-109195 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61K)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 竹林 則幸、塚中 直子 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
深津 弘 小柳 正之 |
登録日 | 2000-04-28 |
登録番号 | 特許第3062283号(P3062283) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 毛髪化粧料 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 中島 俊夫 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 浅野 康隆 |
代理人 | 村田 正樹 |