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審決分類 |
審判 全部無効 その他 無効としない H01L 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない H01L |
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管理番号 | 1089042 |
審判番号 | 無効2003-35232 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-04-14 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-06-03 |
確定日 | 2003-12-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3052131号発明「半導体装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 (1)本件特許第3052131号の発明(以下、「本件特許発明」という。)についての出願は、特願昭57-146561号の出願において、昭和58年8月8日付手続補正が補正却下(平成6年9月27日発送)されたことにより、昭和60年改正前特許法第53条第4項の規定に基づく新たな特許出願として出願された特願平6-287257号(以下、「原出願」という。)の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成9年7月18日に分割して新たな特許出願(特願平9-193968号)としたものである。 これに対して、平成12年4月7日に特許の設定登録がなされたところ、平成15年6月3日に本件特許を無効にするための審判が請求されたものである。 (2)そして、本件特許発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。 「絶縁基板上に形成された半導体装置の中に、高純度の珪化物気体を用いた気相法または精製器によって精製された珪化物気体を用いた気相法によって形成された真性または実質的に真性な非単結晶シリコン半導体薄膜を含み、 前記非単結晶シリコン半導体薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下またはSIMSの検出限界以下に、且つ前記非単結晶シリコン半導体薄膜中の炭素濃度を4×1018cm-3以下にまたはSIMSの検出限界以下に減じてあることを特徴とする半導体装置。」 2.請求人の主張 これに対して、請求人は、証拠方法として甲第1号証(特開平7-169985号公報)、甲第2号証(特許第2733471号公報)及び甲第3号証(平成9年審判第11690号の審決書)を提出して、以下のように主張している。 (1)本件特許発明は、原出願の分割出願に係る上記甲第2号証に記載された特許発明と同一であるから、特許法39条第2項の規定に違反している。(以下、「無効理由1」という。) (2)本件特許発明は、原出願(特願平6-287257号)の発明と同一であるから、特許法第44条第2項の規定の適用を受けることができず、その出願日は平成9年7月18日とされるべきであり、その結果、前記出願日以前に頒布された甲第1号証(特開平7-169985号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項の規定に違反している。(以下、「無効理由2」という。) 3.無効理由1について そこで、上記無効理由1について以下に検討する。 (1)甲第2号証 甲第2号証(特許第2733471号公報)の特許請求の範囲第1項には、以下の特許発明(以下、「471号発明」という。)が記載されている。 「絶縁基板上に形成された半導体装置の中に、高純度の反応性ガスを用いた気相法あるいは精製器によって精製された反応ガスを用いた気相法によって、形成された真性または実質的に真性な非単結晶半導体薄膜を含み、該薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下あるいは炭素濃度を4×1018cm-3以下に減じてあることを特徴とする半導体装置。」 また、その実施態様である特許請求の範囲第2項には、以下の事項が記載されている。 「反応ガスとしてシランを含み、非単結晶半導体薄膜として珪素あるいは珪素化合物が形成されたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。」 (2)対比・判断 本件特許発明と471号発明とを比較すると、471号発明の実施態様項には「反応ガスとしてシランを含」むこと、「非単結晶半導体薄膜として珪素あるいは珪素化合物が形成されたこと」が記載されており、また、シランガスが珪化物気体であること、及び珪素の非単結晶半導体薄膜が非単結晶シリコン半導体薄膜であることは明らかであるから、471号発明の「反応性ガス」ないしは「反応ガス」は、本件特許発明の「珪化物気体」に相当し、同様に「非単結晶半導体薄膜」は、「非単結晶シリコン半導体薄膜」に相当するから、両者は、 「絶縁基板上に形成された半導体装置の中に、高純度の珪化物気体を用いた気相法または精製器によって精製された珪化物気体を用いた気相法によって形成された真性または実質的に真性な非単結晶シリコン半導体薄膜を含む半導体装置。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点]本件特許発明の「非単結晶シリコン半導体薄膜」は、さらに「非単結晶シリコン半導体薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下またはSIMSの検出限界以下に、且つ前記非単結晶シリコン半導体薄膜中の炭素濃度を4×1018cm-3以下にまたはSIMSの検出限界以下に減じてある」のに対し、471号発明の上記薄膜は、「該薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下あるいは炭素濃度を4×1018cm-3以下に減じてある」と規定するのみである点。 上記相違点について検討すると、471号発明は、「酸素濃度を5×1018cm-3以下あるいは炭素濃度を4×1018cm-3以下」と規定していることから、酸素あるいは炭素濃度の一方の要件のみを規定するものであるのに対し、本件特許発明の「酸素濃度を5×1018cm-3以下・・・に、且つ前記非単結晶シリコン半導体薄膜中の炭素濃度を4×1018cm-3以下に」との規定は、471号発明の一つの要件(例えば、酸素濃度を5×1018cm-3以下)のみを規定したものに加えて、別の要件(例えば、炭素濃度を4×1018cm-3以下)をさらに限定したものとみることができる。 そして、特許法第39条第2項における同一性の判断基準(特許庁編「特許・実用新案審査基準」第II部第4章3・4(1)及び(2))は、同日に出願された二発明が同一であるのは、一方の発明を先願とし、他方を後願と仮定した場合と、他方の発明を先願とし、一方を後願と仮定した場合の両者において、二つの発明が同一であるとき、同日に出願された二発明を同一の発明であると認定しているから、これに照らせば、ある発明と、それをさらに限定した別の発明が、同一の発明であるといえないことは明らかである。 なお、請求人は、471号発明と本件特許発明とは、上位概念、下位概念の関係に相当すると主張するが、上記判断基準を上位概念、下位概念の関係にある同日出願の二つの発明に適用したとしても、両者が同一の発明であるといえないことは明らかである。 してみると、本件特許発明と471号発明とは同日出願の同一発明であるとはいえないから、本件特許発明は、原出願の分割に係る上記甲第2号証に記載された特許発明(471号発明)と同一であるから、特許法39条第2項の規定に違反しているとの請求人の主張には、理由がない。 4.無効理由2について 次に、無効理由2について以下に検討する。 (1)原出願(特願平6-287257号)の発明 原出願の発明は、平成9年8月7付手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のものである。(以下、「原出願発明」という。) 「絶縁基板上に形成された少なくともPI接合又はNI接合を有する半導体装置の中に、高純度の珪化物気体を用いた気相法あるいは精製器によって精製された珪化物気体を用いた気相法によって形成された真性又は実質的に真性な非単結晶シリコン半導体薄膜を含み、該薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下又はSIMSの検出限界以下、あるいは炭素濃度を4×1018cm-3以下又はSIMS検出限界以下に減じてあることを特徴とする半導体装置。」 (2)対比・判断 本件特許発明と原出願発明とを比較すると、原出願発明の「絶縁基板上に形成された少なくともPI接合又はNI接合を有する半導体装置」が、本件特許発明の「絶縁基板上に形成された半導体装置」に包含される概念であることは明らかであるから、両者は、 「絶縁基板上に形成された半導体装置の中に、高純度の珪化物気体を用いた気相法または精製器によって精製された珪化物気体を用いた気相法によって形成された真性または実質的に真性な非単結晶シリコン半導体薄膜を含む半導体装置。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点]本件特許発明の「非単結晶シリコン半導体薄膜」は、さらに「非単結晶シリコン半導体薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下またはSIMSの検出限界以下に、且つ前記非単結晶シリコン半導体薄膜中の炭素濃度を4×1018cm-3以下にまたはSIMSの検出限界以下に減じてある」のに対し、原出願発明の上記薄膜は、「該薄膜中の酸素濃度を5×1018cm-3以下又はSIMSの検出限界以下、あるいは炭素濃度を4×1018cm-3以下又はSIMS検出限界以下に減じてある」点。 そこで、上記相違点について検討すると、原出願の分割出願である本件特許発明と、拒絶査定が既に確定した原出願の最終的な明細書及び図面の記載から認定された原出願発明との間の同一性の判断は、特許法第39条第2項の規定が適用されるから、上記3.(2)における判断とまったく同様であり、その結果、上記相違点を解消することはできない。 したがって、本件特許発明と原出願発明とが同一であるとはいえないから、本件特許発明は、原出願発明と同一であるから、特許法第44条第2項の規定の適用を受けることができず、その出願日は平成9年7月18日とされるべきであり、その結果、前記出願日以前に頒布された甲第1号証(特開平7-169985号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項の規定に違反しているとの請求人の主張には、理由がないといわざるを得ない。 5.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-10 |
結審通知日 | 2003-09-16 |
審決日 | 2003-11-04 |
出願番号 | 特願平9-193968 |
審決分類 |
P
1
112・
5-
Y
(H01L)
P 1 112・ 113- Y (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 国敞、朽名 一夫、近藤 幸浩 |
特許庁審判長 |
向後 晋一 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 平井 良憲 |
登録日 | 2000-04-07 |
登録番号 | 特許第3052131号(P3052131) |
発明の名称 | 半導体装置 |
代理人 | 加茂 裕邦 |
代理人 | 小野寺 良文 |
代理人 | 高野 昌俊 |
代理人 | 末吉 亙 |
代理人 | 飯塚 卓也 |