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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1092962
審判番号 不服2002-13841  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-19 
確定日 2004-03-10 
事件の表示 平成 5年特許願第338732号「車載用ステレオ画像表示装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 6月 2日出願公開,特開平 7-143524]について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成5年11月19日の出願であって,その発明は,平成14年7月18日付けで補正された明細書及び図面からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりである。

【請求項1】 左,右視点用の各画像を画素単位で交互に並べて合成する画像合成器と,その合成画像を左,右視点用の各画像に分離して表示するステレオ用ディスプレイとからなる車載用ステレオ画像表示装置であって,左視点用画像の右端部および右視点用画像の左端部における画像部分を,人間の左右の目の間隔から決定される所定の各画像の視差に応じた分だけ切り取る画像処理を施す手段をとるようにしたことを特徴とする車載用ステレオ画像表示装置。

2 引用例及び対比
(1)引用例
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,「3次元テレビジョン画像表示装置」と題する特開昭57-97290号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
ア 「本発明の目的は,画像のこのような欠点を生じる相反する深度情報の原因を排除することにある。
本発明表示装置は,画像表示スクリーンに画像を発生させるときに,左目に向けられる第2像の周期的ライン帰線消去を,右目に向けられる第1像の周期的ライン帰線消去に対して,ライン操作方向にシフトさせたことを特徴とするものである。
本発明は,画像の非常な妨害相反深度情報が,特に,表示スクリーンの左側および右側で,すなわちライン走査の開始時および終了時に発生すること,およびこれをシフトされた3次元状態でライン帰線消去を行うことによって防止することができるという認識に基づいてなしたものである。」(公報3頁左下欄5〜17行)
イ 「3次元的にシフトしたライン帰線消去を行うように簡単に適合される投影画像表示装置の形態の画像表示装置では,表示スクリーンを有する投影画像管を具え,表示スクリーンの両側に,ライン走査方向に垂直に配置され且つスクリーンから取りはずしできる細状を設け,細状が,ライン走査のそれぞれ開始時および終了時に,観察者のそれぞれ左目および右目に向けられる情報を伝えないようにするのが好適である。」(公報4頁右下欄10〜18行)
ウ 「期間THB1およびTHB2へのライン帰線消去期間THBの電子的適合を用いる代りに,表示装置19は電子的でない場合を用いる。この適合を,変更の使用に基づく,およびレンチクラール細状の使用に基づく3次元表示装置に非常に簡単に用いることができる。
(中略)
細状HB1およびHB2の最適幅はスクリーン幅と観察者の観察距離だけでなく,被写体の内容と前景および背景に生じるものに依存する。」(公報7頁右上欄16行〜左下欄14行)

同じく原査定で引用された道路等を走行する車両等のガイド用表示装置に関する発明である特開平04―365087号公報以下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
エ 「同一画像に適度の視差を持たせてCRT2c,2dに夫々表示すると,図5(a)に示すように,ドライバは映像を三次元像として捕らえることができる。」(公報3頁右欄5〜8行)

(2)対比
2次元の画像を立体的に視認するために種々の方法が提案されていることは,本願の明細書にも従来例として記載されているように,レンチキュラー方式(レンティキュラ方式ともレンチクラール方式ともいう)やスリットバリアを用いるパララックスバリア方式として当業者に周知な事項である。
本願発明のステレオ画像表示装置は,2次元の画像を3次元として立体的に視認できるようにしたものであり,一般に物体が立体的に見えることは人間の両眼の視差に基づくものであることは自明の事項であって,2次元の画像を立体的に見せるために視差を利用すること自体は何ら新規な事項とはいえない。
以上を踏まえ,引用例1と本願発明とを対比すると,引用例1のテレビジョンは用途が明示されておらず,画像の形成方法,及び切り取る分量が本願発明と同じかどうか不明であることが伺われる。これらを相違点として挙げることにすると,一致点,相違点は次のとおりである。

【一致点】左,右視点用の各画像を合成する画像合成器と,その合成画像を左,右視点用の各画像に分離して表示するステレオ用ディスプレイとからなるステレオ画像表示装置であって,左視点用画像の右端部および右視点用画像の左端部における画像部分を,各画像の視差に応じた分だけ切り取る画像処理を施す手段をとるようにしたことを特徴とするステレオ画像表示装置。

【相違点】
a 本願発明が車載用のステレオ画像表示装置であるのに対し,引用例1には,車載用に利用できることが明記されていない点。
b 本願発明では,左視点用と右視点用の画像を画素単位で交互に並べているのに対し,引用例1では,フィールド単位に左右の視点用画像を合成している点。
c 本願発明では,左視点用画像の右端部及び右視点用画像の左端部における画像部分を切り取ることにより表示しないようにする分量を,人間の左右の目の間隔から決定される所定の各画像の視差に応じた分,と規定しているのに対し引用例1では,このような人間の目との関係で具体的な幅が記載されていない点。

3 当審の判断
相違点aについて
引用例2には,車載用の表示装置が示され,かつ,映像を三次元像として捕らえることができるようにしており,車載用であることに限定した特別な構成は本願発明には認められないことから,単に,車載用に限定したにすぎないものであり,この点になんら創意工夫を認めることはできない。
相違点bについて
左視点用と右視点用の画像を画素単位で交互に並べて配置することにより,画像を立体的に認識できるようにすることは,立体視の代表的な手段として当業者に周知な技術であり,当該相違点に何ら進歩性は認められない。
相違点cについて
引用例1には,前掲したように「レンチクラール細状の使用に基づく3次元表示装置に非常に簡単に用いることができる。(中略) 細状HB1およびHB2の最適幅はスクリーン幅と観察者の観察距離だけでなく,被写体の内容と前景および背景に生じるものに依存する。」と記載されており,左右の細状HB1およびHB2は,人間の左右の目に応じて決められることが,間接的ではあるが記載されている。すなわち,細状の幅は,スクリーン幅と観察者の左右の目との距離に依存することが明示されていると理解できる。
そうすれば,観察者のそれぞれ左目及び右目に向けられる情報を伝えないようにしていることは,引用例1も各画像の視差に応じた分だけ切り取る画像処理を施す手段を備えているといえるから,当該相違点に当業者が格別の困難を要したとは認められない。

そして,相違点全体としてみても,当業者であれば引用例1及び2から容易に推考できる程度の事項であり,かつ,効果についても,格別評価すべき事項は認められない。

4 むすび
したがって,本願発明は,前記引用例1,2記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,他の請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-24 
結審通知日 2004-01-06 
審決日 2004-01-19 
出願番号 特願平5-338732
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 小林秀美
小松 正
発明の名称 車載用ステレオ画像表示装置  
代理人 鳥井 清  

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