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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A47J
管理番号 1093148
異議申立番号 異議1999-72647  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-09 
確定日 2004-02-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第2845375号「金属製魔法瓶の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2845375号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第2845375号(平成1年4月26日出願、平成10年10月30日特許権の設定登録。)の請求項1に係る発明についての特許は、特許異議申立人 乾 潤二及び特許異議申立人 樋口 守孝より特許異議の申立てがなされ、平成11年11月30日付けで取消理由が通知され、特許権者よりその指定期間内である平成12年2月10日に特許異議意見書と共にその明細書についての訂正の請求がされ、これに対して、平成13年11月22日付けで前記訂正の請求についての訂正拒絶理由通知がされ、特許権者よりその指定期間内である平成14年2月4日に意見書のみが提出されたものである。

2.訂正請求の適否について
(1)訂正の内容
平成12年2月10日付けの訂正請求で、特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
イ.訂正事項1
願書に添付した明細書(以下、特許明細書という)の特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の
「金属製の内筒と金属製の外筒とを口部で連結して二重構造とし、これら内筒と外筒との間の空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法において、前記内筒と一部分に小孔または切り抜きを穿設した外筒とを口部で連結して二重壁一体化構造とした後、前記小孔または切り抜きの近傍、あるいはその切り抜きの一部を覆うようにろう材を配して、真空加熱炉内に前記外筒の小孔または切り抜きが穿設された部分を上に向けて収納して真空加熱処理してろう材を溶融させて、このろう材を小孔または切り抜きに流し込み、これにより上記空隙部を真空封止することを特徴とする金属製魔法瓶の製造方法。」を、
「金属製の内筒と金属製の外筒とを口部で連結して二重構造とし、これら内筒と外筒との間の空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法において、前記内筒と一部分に0.1〜2.0mmの小孔または切り抜き間隙を穿設した外筒とを口部で連結して二重壁一体化構造とした後、前記小孔または切り抜きの近傍、あるいはその切り抜きの一部を覆うようにNi、Cu、Al、Ti、及びP系のろう材から選ばれるろう材を配して、真空加熱炉内に前記外筒の小孔または切り抜きが穿設された部分を上に向けて収納して真空加熱処理してろう材を溶融させて、このろう材を小孔または切り抜きに流し込み、これにより上記空隙部を真空封止することを特徴とする金属製魔法瓶の製造方法。」に訂正する。
ロ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の減縮訂正に伴って、特許請求の範囲の記載内容と発明の詳細な説明の記載内容との整合をとるため、特許明細書第4頁第7行乃至同書同頁第19行を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「 「課題を解決するための手段」
本発明は、金属製の内筒と金属製の外筒とを口部で連結して二重構造とし、これら内筒と外筒との間の空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法において、前記外筒の一部分に小孔または切り抜きを穿設し、その小孔または切り抜きの近傍、あるいはその切り抜きの一部を覆うようにろう材を配した後、真空加熱炉内で前記外筒の小孔または切り抜きが穿設された部分を上に向け真空加熱処理してろう材を溶融させて、このろう材を小孔または切り抜きに流し込み、これにより上記空隙部を真空封止することを問題解決の手段とした。」を、
「 「課題を解決するための手段」 本発明は、金属製の内筒と金属製の外筒とを口部で連結して二重構造とし、これら内筒と外筒との間の空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法において、前記外筒の一部分に0.1〜2.0mmの小孔または切り抜き間隙を穿設し、その小孔または切り抜きの近傍、あるいはその切り抜きの一部を覆うようにNi、Cu、Al、Ti、及びP系のろう材から選ばれるろう材を配した後、真空加熱炉内で前記外筒の小孔または切り抜きが穿設された部分を上に向け真空加熱処理してろう材を溶融させて、このろう材を小孔または切り抜きに流し込み、これにより上記空隙部を真空封止することを問題解決の手段とした。」に訂正する。
(2)訂正拒絶理由の概要
訂正拒絶理由の概要は次のとおりである。
前記訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、前記訂正事項2は明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
前記訂正事項1及び訂正事項2において訂正した特許請求の範囲および発明の詳細な説明の記載の「0.1〜2.0mmの小孔または切り抜き間隙を穿設し」は、0.1mm〜2.0mmの小孔、または0.1mm〜2.0mmの切り抜き間隙を穿設することと理解される。
ところで、特許明細書及び図面において、「0.1mm〜2.0mm」という数値に関しては、特許明細書第6頁17〜20行の「切り抜き11の幅は小さ過ぎると排気が不十分となり、大き過ぎるとろう材の表面張力でふさぎきれなくなってしまうために、0.1mm〜2.0mmが適当である。」に切り抜きの幅について記載されているのみである。しかし、小孔が0.1mm〜2.0mmである点については特許明細書及び図面には何ら記載されていない。また、切り抜きについても「切り抜きの幅」が0.1mm〜2.0mmである点は記載されているが、「切り抜き間隙」が0.1mm〜2.0mmである点は記載されていない。そして、「間隙」は「すきま」を意味する(例えば、新村 出 編「広辞苑」第三版第二刷、株式会社 岩波書店、昭和59年11月20日発行、533頁を参照)ものであるから、訂正後の「切り抜き間隙」は切り抜きのすきま全体を意味し、切り抜きの幅だけでなく、切り抜きの幅と長さを含めた切り抜きの大きさ(特許明細書第13頁14〜15行の「切り抜きの大きさは0.5mm×8mmであった。」を参照)が0.1mm〜2.0mmであることを意味するものでもある。
よって、「0.1〜2.0mmの小孔または切り抜き間隙を穿設し」点は、特許明細書または図面には何ら記載されておらず、また、該特許明細書または図面の記載から直接的かつ一義的にも導き出されるものとも言えないから、前記訂正事項1、2における訂正は、特許明細書または図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件の訂正請求による訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3) この訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は平成14年2月4日に意見書を提出し、「小孔が0.1mm〜2.0mm」である点については、「切り抜きと小孔は同じ機能を有するものであり、出願時明細書においても、請求項1の4行、6行、7〜8行、10行にいずれも両者が併記されてことからもこの両者が同じ目的で同じ機能を果たすために用いられ、互いに置き換え可能であることは明らかである。小孔もろう材の表面張力により落下せずに塞ぐのであるから切り抜きの幅に対応するのは小孔では直径である。原明細書6頁の説明は第1図、第2図を用いて説明しており、図2には切り抜きが記載されており、小孔と切り抜き共通の説明を切り抜きで代表して説明しているのであるから、0.1mm〜2.0mmの説明は小孔にも共通しており、小孔直径が0.1mm〜2.0mmであることについては記載されているに等しい。」と主張している。しかし、小孔と切り抜きが同じ機能を果たすものであっても、小孔と切り抜きは図面からみても明らかなようにその形状が相違しており、ろう材の封止作用にその形状の相違により寸法が影響すること、しかもその数値については、特許明細書及び図面には切り抜きの幅と長さのうちの幅が0.1mm〜2.0mmが適当であるとする点、及び切り抜きの大きさが0.5mm×8mmの実施例が記載されているのみであり、小孔については、具体的な数値は特許明細書または図面には何ら記載されておらず、また、該特許明細書または図面の記載から直接的かつ一義的にも導き出されるものとも言えない。
また、特許権者は上記意見書にて、「0.1mm〜2.0mmの切り抜き間隙」の点について、「間隙」には「すきま」と「へだたり」の意味があり、この「へだたり」には距離の意味があって、また、すきまには「隙間ゲージ」という用語もあること等から、「切り抜きの幅」を示すものであり、特許明細書第6頁17〜20行の「切り抜き11の幅は…0.1mm〜2.0mmが適当である」の記載に基づくものであり、特許明細書範囲内おいてなされたもので新規事項ではない旨を主張している。しかし、「すきま」には「物と物との間のすいた所」(例えば、新村 出 編「広辞苑」第三版第二刷、株式会社 岩波書店、昭和59年11月20日発行、128頁を参照)という、すいた所自体を意味する場合もあり、これによれば、「切り抜き間隙」という記載には、切り抜きの幅というものを意味するだけでなく、それ以外に、幅と長さを含めた切り抜きの大きさ、すなわち切り抜きのすきま全体を意味する場合もあり、「0.1mm〜2.0mmの切り抜き間隙」は、実施例では切り抜きの大きさが0.5mm×8mmが記載されているのみであり、「0.1mm〜2.0mmの切り抜き幅」以外に、幅と長さを含めた切り抜きの大きさを0.1mm〜2.0mmとしたことを意味するものでもあり、この点において「0.1mm〜2.0mmの切り抜き間隙」は特許明細書または図面の記載から直接的かつ一義的にも導き出されるものとも言えない。
したがって、特許権者の前記主張は認められない。
よって、「0.1〜2.0mmの小孔または切り抜き間隙を穿設し」点は、特許明細書または図面には何ら記載されておらず、また、該特許明細書または図面の記載から直接的かつ一義的にも導き出されるものとも言えないから、前記訂正事項1、2における訂正は、特許明細書または図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとは認められない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、平成13年4月6日付け訂正請求による訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議の申立について
(1)本件発明
前述のとおり、平成12年2月10日付けの訂正は認められない。
そうすると、本件特許第2845375号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「金属製の内筒と金属製の外筒とを口部で連結して二重構造とし、これら内筒と外筒との間の空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法において、前記内筒と一部分に小孔または切り抜きを穿設した外筒とを口部で連結して二重壁一体化構造とした後、前記小孔または切り抜きの近傍、あるいはその切り抜きの一部を覆うようにろう材を配して、真空加熱炉内に前記外筒の小孔または切り抜きが穿設された部分を上に向けて収納して真空加熱処理してろう材を溶融させて、このろう材を小孔または切り抜きに流し込み、これにより上記空隙部を真空封止することを特徴とする金属製魔法瓶の製造方法。」
(2)取消理由通知
当審では平成11年11月30日付けで刊行物として、
刊行物1:実願昭62―156984号(実開平1―62734号)のマイクロフィルム(特許異議申立人 樋口 守孝提出の甲第2号証)
刊行物2:特開昭60―148032号公報(特許異議申立人 樋口 守孝提出の甲第1号証)
を引用して、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記刊行物1および2に記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨の取消理由を通知した。
(3)刊行物に記載の発明
イ.刊行物1(実願昭62-156984号(実開平1-62734号)のマイクロフィルム)
刊行物1には、「金属材料を用いて内瓶1、外瓶胴部4、外瓶底部5、封止板8を所定形状に形成し、次いで粉末状のゲッター剤を保持金具9内に充填した状態でこの保持金具9の鍔部11を上記封止板8の凸部8aの裏面に接着し、これを真空加熱処理によって焼結しておく。このようにした後、この外瓶胴部4の口部に内瓶1の口部を嵌め込んだ状態で溶接して接合し、次いで外瓶胴部4の開口する端部に外瓶底部5を接合する。このようにした後、第2図に示すように、外瓶底部5を上に向けた状態で、この外瓶底部5の凹部6に間隔を設けて固形ろう材13上に封止板8の鍔部8bを載せる。そして、この状態で真空加熱炉内に入れて加熱処理を行うことにより、空隙部3に面した表面の脱ガスを行ってこのガスを固形ろう材13の隙間から排出しつつ、この固形ろう材13を溶融して上記封止板8を自重により落下させ、これによりこの封止板8の鍔部8bと外瓶底部5の凹部6とを接合して排気口7を真空封止する。」(第7頁9行〜第8頁8行)点が記載されている。
ロ.刊行物2(特開昭60-148032号公報)
刊行物2には、「第14図ならびに第19図に示す如くV形溝(17)は真空容器(2a)の表面に同心円状のV形の溝を形成している。そのV形溝の底部に円周上複数個の排気口(8)を設けて、V形溝の円周上に沿ってロウ材(6e)を設けるものである。(第3頁左上欄10〜14行)、「真空容器を組立てるに当たって各部材とロウ材をセットした後、800〜900℃の高温真空中で組立てを行うもので、ロウ材が溶融して各部分の接合部に流出して封止をするに必要な部分に流れると同時に排気口(8)の気体分子の流れる通路の隙間も密閉される。」(第3頁左上欄19行〜同頁右上欄4行)、「第11図は先の第9図と同様にロウ材(6e)が排気口(8)を溶融して密閉するが、排気口の面積は可能な限り大きくする方が排気速度を大きくして、真空容器組立(15)の排気速度を短縮することになる。一方排気口(8)の面積が大きくなって、溶融して流出したロウ材(6e)が排気口(8)を密閉するに必要な表面張力と釣合って、溶融したロウ材(6e)が排気口(8)を充填して落下しない範囲のものでなければならない。従って溶融したロウ材(6e)の表面張力はロウ付温度では一定の値となるため、排気口(8)の開口面積はロウ材(6e)が落下せず保持される一定量がロウ材(6e)の表面張力の値から決定される。」(第3頁右下欄1〜12行)、「第14図は真空容器(2a)の中心軸に同軸円周上にV形溝(17)を加工して、その底部に排気口(8)を穴明けし、V形溝(17)に沿ってロウ材(6e)がV形溝(17)に沿って流出し、排気口(8)に流れ込んで排気口(8)を封止する。」(第4頁左上欄8〜12行)点が図面と共に記載されている。
(3)対比・判断
本件特許明細書の請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載されたものを対比すると、両者は、「金属製の内筒と金属製の外筒とを口部で連結して二重構造とし、これら内筒と外筒との間の空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法において、前記内筒と一部分に孔を穿設した外筒とを口部で連結して二重壁一体化構造とした後、前記孔の近傍にろう材を配して、真空加熱炉内に前記孔が穿設された部分を上に向けて収納して真空加熱処理してろう材を溶融させて、これにより上記空隙部を真空封止する金属製魔法瓶の製造方法」の点で一致するが、本件特許明細書の請求項1に係る発明が、外筒の一部分に小孔または切り抜きを穿設し、この小孔または切り抜きの近傍、あるいはその切り抜きの一部を覆うようにろう材を配して、ろう材を溶融して小孔または切り抜きに流し込み空隙部を封止するのに対して、刊行物1に記載されたものは、外筒の一部分に孔である排気口を形成し、該排気口の周辺にろう材を配して、その上に封止板を載せ該ろう材を溶融して該排気口に封止板を接合する点で相違する。
以下この相違点について検討する。
刊行物2には、真空にすべき容器の表面に同心円状のV形の溝を形成し、そのV形溝の底部に複数個の排気口(本件特許明細書の請求項1に係る発明における小孔または切り抜きに相当する)を設けて、V形溝の円周上に沿ってロウ材を配するものであって、高温真空中でロウ材を溶融させてV形溝に沿って流出させ、排気口に流し込んで排気口を封止させる点が記載されており、また「第11図は先の第9図と同様にロウ材(6e)が排気口(8)を溶融して密閉するが、排気口の面積は可能な限り大きくする方が排気速度を大きくして、真空容器組立(15)の排気速度を短縮することになる。一方排気口(8)の面積が大きくなって、溶融して流出したロウ材(6e)が排気口(8)を密閉するに必要な表面張力と釣合って、溶融したロウ材(6e)が排気口(8)を充填して落下しない範囲のものでなければならない。従って溶融したロウ材(6e)の表面張力はロウ付温度では一定の値となるため、排気口(8)の開口面積はロウ材(6e)が落下せず保持される一定量がロウ材(6e)の表面張力の値から決定される。」(第3頁右下欄1〜12行)に、排気速度を大きくし、かつ、ロウ材の表面張力で落下せずに排気口を密閉できるような排気口の大きさとするという、本件特許明細書の請求1に係る発明と同様な作用を奏する真空封止方法が記載されている。さらに、刊行物1、2に記載された各発明は真空加熱処理による容器の真空封止という同一の技術分野に属するものである。以上の点を勘案すれば、刊行物1に記載の、外筒の一部分に形成した排気口に封止板をろう材でもって接合する構成のものに代え、刊行物2に記載された容器の真空封止の発明を適用し、本件特許明細書の請求項1に係る発明のように、外筒の一部分に小孔または 切り抜き間隙を穿設し、小孔または切り抜きの近傍あるいはその切り抜きの一部を覆うようにろう材を配して、ろう材を溶融して小孔または切り抜きに流し込み空隙部を封止するようにすることは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果も当業者によって予測できる範囲内のものである。
なお、これに対して特許権者は、前記特許異議意見書において「しかしながら、かかる実施の形態も、引用例2の特許発明の一実施の形態である以上、引用例の発明の主たる要旨(特許請求の範囲の記載)である、排気口に密接に嵌め込まれるフタをロウ材と共にロウ付けして接合封止するための一実施形態であるとするのが必然である。かかる点からすると、引用例の第14図及び第19図に図示された封止方法も又前記した如く本件特許の真空封止方法とは相違する。」と主張している。しかし、一般的に、明細書又は図面には、従来例、比較例、参考例等様々の態様のものが記載されていることがあり、実施例のなかにも特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明の実施例ではないものも実施例と記載されている場合もあり、明細書又は図面に記載されたものが全て特許請求の範囲により特定される発明であるとは必ずしも言えない。そして、刊行物2においては、フタが記載されているのは第3〜8図及び第18図のものであり、第14図、19図にはフタは記載されておらず、フタを接合封止するものではなく、ロウ材が排気口に流れ込んで排気口を封止するものであるから、特許権者の前記主張は認められない。

4.むすび
したがって、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記刊行物1および2に記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-04 
出願番号 特願平1-106925
審決分類 P 1 652・ 121- ZB (A47J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉田 一朗  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
登録日 1998-10-30 
登録番号 特許第2845375号(P2845375)
権利者 日本酸素株式会社
発明の名称 金属製魔法瓶の製造方法  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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