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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1094340
審判番号 不服2003-11490  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2004-03-25 
事件の表示 平成6年特許願第208030号「部屋ユニット及びそれを用いた施工方法」拒絶査定に対する審判事件[平成8年2月20日出願公開、特開平8-49291]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成6年8月9日の出願であって、平成15年5月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年6月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月18日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年7月18日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項2を新たな請求項1として、次のとおりに補正することを含むものである。
「階下を部屋ユニットで構築し、その階上をパネル工法で構築する施工方法において、工場にて階上用床面部が取り付けられた前記階下の部屋ユニットを、建築現場の基礎上に固定する工程と、前記部屋ユニットの前記階上用床面部を足場として、その階上の壁パネルを取り付け固定する工程とを含み、前記部屋ユニットは、外壁サイディングを取り付けた壁面部の天面で、外壁サイディングと階上用床面部の間に胴差が取り付けられ、前記階上用床面部の表面が部屋ユニットの最大高さ面となる平坦面として形成されていることを特徴とする施工方法に用いる部屋ユニットであって、
前記部屋ユニットは階下用床面部と、その床面部の縁部に立設される壁面部とを有し、前記壁面部の天面に前記階上用床面部が固定され、外壁サイディングと階上用床面部の間に胴差が取り付けられる構造であり、しかも、前記部屋ユニットは、前記階下用床面部上に台所用設備が予め工場にて取り付け固定された台所ユニット、及び、下部枠体と、その下部枠体に支持される防水パンと、前記下部枠体上に立設される壁面部とを有する浴室ユニット、を含むものである部屋ユニット。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、特開昭61-106841号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。
「浴室、洗面所、トイレ、台所等の水廻り設備を要する各室を必要に応じ水廻り設備以外の部分及び水廻り設備の一部を除き且つ階段部を具備させて、組込んだカプセルを、予め所定位置に形成した基礎上に設置固定した後、その他の家屋の構成部をパネル工法により順次組立形成してなることを特徴とする組立家屋。」(1頁左欄5〜11行)
「本発明は、ユニット工法及びパネル工法を併用して組立形成した組立家屋に関するものである。」(1頁左欄14〜15行)
「以下、本発明の組立家屋を図面に示す一実施例について説明する。
第1図は本発明の組立家屋の分解斜視図を示すもので、同図において、1は予め所定位置に形成した基礎、2は予め工場生産したカプセルである。
カプセル2について詳述すると、その内部には、第2図に示す如く、浴室21及びこれに隣接するトイレ兼用の洗面所22を、これらの室に要する全ての水廻り設備、例えば、浴室蛇口(図示せず)、蛇口付洗面台23、大型化粧鏡24、水洗便器(図示せず)とともにFRP製の所謂ユニット形式で設けてある。そして、これらの室の外側部側に亘っては、浴室換気扇付の窓(図示せず)を形成し且つ外装仕上げした外壁パネル25を固定してあり、浴室21の別の外側部側には斯る外壁パネル25に直交する外装仕上げした外装パネル26を固定してある。又……上記外壁パネル25の反対側には内装し上げした間仕切パネル27を設けてあり、該間仕切パネル27の第1図上手前にはフローリングを施し且つ化粧階段28を固定した階段収容部29を形成してある。そして又、該階段収容部29の第1図上右方且つ洗面所22の第1図上手前には……洗面所出入部30を形成してあり、該洗面所出入部30と洗面所22との間には洗面所出入口扉31……間仕切パネル32を設けてある。又、洗面所22及び上記洗面所出入り部30の一側部に亘っては台所との境界壁となる間仕切パネル33を固定してあり、該間仕切パネル33の外側面(台所側面)下部には、台所に要する流し台34(水廻り設備)やガス台35等を備えた厨房セット36を固定してある」(2頁左上欄17行〜左下欄9行)(なお、上記アンダーラインを付した3ヶ所の「第1図上」の記載は「第2図上」の明白な誤記と認める。)
「第2図において39はカプセル2に固定した二階部の床パネル」(2頁左下欄13〜14行)
「而して、本発明の組立家屋は、上記カプセル2を上記基礎1に設置固定した後、パネル工法により組立形成される。これを施工順序の一例に従って詳述すると……先ず、第1図に示す如く、カプセル2を一階部のコーナー部に位置させて設置固定した後、常法により床パネル4,4,・・・を基礎1上の残部に敷設する。
次いで、常法により一階部の外壁パネル5,5,・・・及び間仕切パネル6,6を固定し、居間7、台所8等を一階部に形成する。」(2頁左下欄20行〜右下欄10行)
「しかる後、一階部の天井パネル兼二階部の床パネル9,9,・・・を常法により敷設し、更に、二階部の外壁パネル(外壁屋切パネル)10、10及び二階部の間仕切パネル(間仕切屋切パネル)11を常法により固定して寝室等を二階部に形成し、最後に屋根パネル12,12,・・・を常法により固定すれば、本発明の組立家屋が組立形成される。」(3頁左上欄10〜17行)
そして、図面を参照すれば、上記の施工方法において、カプセル2とその二階部分との施工方法に着目すると、カプセル2には少なくともその一部に二階部の床パネル39が設けてあるから、該カプセル2の外壁パネル25,26の上縁、あるいは該床パネル39の外壁側周縁上に二階部の外壁パネル10,10がパネル工法により組立形成されること、及び、その作業の際、床パネル39を足場として利用し得るものであり、実際に足場として利用することがあることが当業者に明らかな事項である。また、該床パネル39はカプセル2の最大高さ面となる平坦面であることも当業者に明らかな事項である。
したがって、刊行物には以下の発明が記載されていると認められる。
「浴室、洗面所、トイレ、台所等の水廻り設備を要する各室を必要に応じ水廻り設備以外の部分及び水廻り設備の一部を除き且つ階段部を具備させて組込んだ、工場においてユニット工法により予め組立てられたカプセル2であって、
該カプセル2を基礎1に設置固定した後、その上に、カプセル2の二階部の床パネル39を足場として利用し、二階部の外壁パネル10,10をパネル工法により組立形成するものであり、
該カプセル2は、カプセル2により構成される室の床面部と、その床面部の縁部から立設される外装仕上げした外壁パネル25,26と、カプセル2の最大高さ面となる平坦面である二階部の床パネル39とを含む、
組立家屋形成用カプセル2。」

(3)対比・判断
補正発明と、上記刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「組立家屋形成用カプセル2」、「二階部の床パネル39」、「二階部の外壁パネル10」、「外壁パネル25,26」、及び「カプセル2により構成される室の床面部」は、補正発明の「部屋ユニット」、「階上用床面部」、「階上の壁パネル」、「(部屋ユニットの)壁面部」、及び「階下用床面部」にそれぞれ相当する。そして、刊行物記載の発明の「外装仕上げ」、及び「浴室、洗面所、トイレ、台所等の水廻り設備を要する各室を必要に応じ水廻り設備以外の部分及び水廻り設備の一部を除き且つ階段部を具備させて組込んだカプセル2」も、補正発明の「外壁サイディング」、及び「階下用床面部上に台所用設備が予め工場にて取り付け固定された台所ユニット、及び、下部枠体と、その下部枠体に支持される防水パンと、前記下部枠体上に立設される壁面部とを有する浴室ユニット」も、共に「外装材」、及び「工場生産された設備ユニット」である点で共通するから、両者は、
「階下を部屋ユニットで構築し、その階上をパネル工法で構築する施工方法において、工場にて階上用床面部が取り付けられた前記階下の部屋ユニットを、建築現場の基礎上に固定する工程と、前記部屋ユニットの前記階上用床面部を足場として、その階上の壁パネルを取り付け固定する工程とを含み、前記部屋ユニットは、外装材を取り付けた壁面部の上部の前記階上用床面部の表面が部屋ユニットの最大高さ面となる平坦面として形成されている施工方法に用いる部屋ユニットであって、
前記部屋ユニットは階下用床面部と、その床面部の縁部に立設される壁面部とを有し、前記壁面部の上部に前記階上用床面部が固定された構造であり、しかも、前記部屋ユニットは、工場生産された設備ユニットである部屋ユニット。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:部屋ユニットの壁面部の外装材が、補正発明は外壁サイディングであるのに対し、刊行物記載の発明はその具体的材料が不明な点
相違点2:補正発明は、部屋ユニットの壁面部の天面に階上用床面部が固定され、外壁サイディング(外装材)と階上用床面部の間に胴差が取り付けられる構造であるのに対し、刊行物記載の発明は、部屋ユニットの壁面部と階上用床面部との関連構成が不明な点
相違点3:設備ユニットが、補正発明は、階下用床面部上に台所用設備が予め工場にて取り付け固定された台所ユニット、及び、下部枠体とその下部枠体に支持される防水パンと前記下部枠体上に立設される壁面部とを有する浴室ユニットを含むものであるのに対し、刊行物記載の発明は、浴室、洗面所、トイレ、台所等の水廻り設備を要する各室を必要に応じ水廻り設備以外の部分及び水廻り設備の一部を除き且つ階段部を具備させて組込んだものである点

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
外装材として外壁サイディングは従来周知のものにすぎず、補正発明が該周知の外壁サイディングを部屋ユニットの壁面部の外装材として選択した点には何らの技術的意義も認められず、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。

<相違点2について>
壁面部の天面に階上用床面部を固定し、外壁パネルと階上用床面部との間に胴差を取り付けた構造は、原査定の備考中に提示した、特開平6-136868号公報、特開平6-173366号公報等にみられるとおり従来周知の技術にすぎず、該周知技術に基づき相違点2として摘記した補正発明の技術的事項を当業者が想起する点には格別困難性が認められない。

<相違点3について>
刊行物には、上記のとおり、浴室と台所とを含む水廻り設備を一体に含む設備ユニットが記載されており、補正発明のように浴室部分と台所部分とをそれぞれ別個のユニットとすることは、当業者がユニットの大きさ、機能、レイアウト等に配慮して適宜なし得る設計変更にすぎない。また、相違点3として摘記した、補正発明における台所ユニット、及び、浴室ユニットの構成は、いずれも従来周知の構成にすぎない。

そして、補正発明が奏する作用効果も、上記刊行物及び周知技術から当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年7月18日付手続補正が上記のとおり却下されたので、平成14年12月3日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】階下を部屋ユニットで構築し、その階上をパネル工法で構築する施工方法であって、
工場にて階上用床面部が取り付けられた前記階下の部屋ユニットを、建築現場の基礎上に固定する工程と、
前記部屋ユニットの前記階上用床面部を足場として、その階上の壁パネルを取り付け固定する工程と、
を含み、
前記部屋ユニットは、外壁サイディングを取り付けた壁面部の天面で、外壁サイディングと階上用床面部の間に胴差が取り付けられ、前記階上用床面部の表面が部屋ユニットの最大高さ面となる平坦面として形成されていることを特徴とする部屋ユニットを用いた施工方法。
【請求項2】請求項1に記載の施工方法に用いられる部屋ユニットであって、
階下用床面部と、その床面部の縁部に立設される壁面部と、を有し、前記壁面部の天面に前記階上用床面部が固定され、
外壁サイディングと階上用床面部の間に胴差が取り付けられ、前記階上用床面部の表面が部屋ユニットの最大高さ面となる平坦面として形成されていることを特徴とする部屋ユニット。
【請求項3】請求項2において、
前記部屋ユニットが前記階下用床面部上に台所用設備が予め工場にて取り付け固定された台所ユニットであることを特徴とする部屋ユニット。
【請求項4】請求項2において、
前記部屋ユニットは、下部枠体と、その下部枠体に支持される防水パンと、前記下部枠体上に立設される壁面部と、を有する浴室ユニットであり、前記壁面部の天面に前記階上用床面部が固定されていることを特徴とする部屋ユニット。」
(以下、請求項2記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された各刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明から「部屋ユニット」の限定事項である「前記階下用床面部上に台所用設備が予め工場にて取り付け固定された台所ユニット、及び、下部枠体と、その下部枠体に支持される防水パンと、前記下部枠体上に立設される壁面部とを有する浴室ユニット、を含むものである」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-28 
結審通知日 2004-01-29 
審決日 2004-02-12 
出願番号 特願平6-208030
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介長谷部 善太郎南澤 弘明  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 新 井 夕起子
長 島 和 子
発明の名称 部屋ユニット及びそれを用いた施工方法  
代理人 土井 清暢  

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