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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04H
管理番号 1095434
審判番号 不服2003-11440  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2004-04-08 
事件の表示 平成6年特許願第125399号「住宅の設計方法および住宅」拒絶査定に対する審判事件[平成7年12月19日出願公開、特開平7-331894]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成6年6月7日の出願であって、平成15年5月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年6月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月22日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年7月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月22日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「平面視略矩形状の敷地に構築され、かつ建物本体内に居住区画と車庫区画とを一体に設けた複数階建て住宅であって、
前記建物本体における一階の一辺側中央部に、玄関と一階階段部とを備えた平面視矩形状の玄関・階段領域が玄関が敷地に接する道路に向けて配置され、
前記玄関に隣接する一階部分に車庫区画がその出入り口側を前記道路側に向けて配置され、
前記車庫区画と二階との間に蔵型収納区画が配置され、二階の、前記玄関・階段領域の直上に洗面所および浴室と二階階段部とを備えた平面視矩形状の水回り・階段領域が配置され、
前記玄関・階段領域と、前記水回り・階段領域とが平面視同一形状、同一寸法に形成され、前記玄関・階段領域と、前記水回り・階段領域とが重なる配置で予め組み立てられてユニット化されてなることを特徴とする住宅。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、特開平4-80480号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
「図において、1は建物本体で、この建物本体1の妻側の一方の壁面3に、玄関2がその壁面3の中央に設けられている。この玄関2を設けた壁面3の一方の隅が入り隅4となっており、この入り隅4に沿うようにして独立したガレージ5が配置されている。このガレージ5は、建物本体1に対して前記妻側壁面3の外方に突出し、この突出方向の端部が車の出入口6となっている。」(2頁左上欄2〜10行)
そして、上記記載及び図面の記載によれば、建物本体1が2階建て住宅であること、玄関2に隣接して階段が設けられていること、玄関2及びガレージ5の出入口6が敷地に接する道路に向けて配置されていること、が当業者に明らかな事項である。
したがって、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「ガレージ5を有する2階建て住宅であって、建物本体1の壁面3の中央に玄関2が設けられ、玄関2に隣接して階段及びガレージ5が設けられ、玄関2とガレージ5の出入口6とが敷地に接する道路に向けて配置された、住宅。」

同じく、特開平5-79099号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ユニット住宅の構成要素である住宅ユニットに係り、特にガレージ等に利用できる住宅ユニットに関する。」
「【0012】住宅ユニット4の骨組み10には、図3および図4に示すように、工場で内壁材17、外壁材18が取付けられ、中間梁14,15、小梁16の上面および下面には床材19および天井材20がそれぞれ取付けられている。これにより、住宅ユニット4は長辺側の2つの側面と床が開口されるとともに、中間梁14,15、小梁16と床材19、天井材20により中間床21が形成される。
【0013】一方、その他の住宅ユニット3,5は、従来と同様に柱の上端間および下端間を上梁、下梁で結合して構成されるボックス状の骨組みに、工場で壁材、天井材、床材等の所定の設備、造作材が取付けられて生産される。なお、住宅ユニット4の上に載置される住宅ユニット5の床の一部は開閉可能な扉22が設けられ、住宅ユニット4の中間床21上に出入りするための出入口23が形成されている。」
「【0022】……。……中間床21を形成したほうが収納スペースを形成できてユニット住宅1のスペース効率を向上できるという利点がある。」

同じく、実願昭63-157505号(実開平2-77242号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
「実施例について図面を参照して説明する。
Aは本案の1〜2階の中間に多目的スペースを組み込んだ住宅である。」(明細書8頁2〜4行)
「4は1〜2階の中間に位置する多目的スペース」(同8頁7〜9行)
「図中、12は玄関、13は玄関ホール、14は納戸……である。」(同8頁下から2行〜9頁1行)
「18は例えば子供室(洋間)、19は例えば書斎……である。」(同9頁9〜10行)
そして、図面を参照すれば、1階の玄関12・玄関ホール13と階段部を備えた領域、2階の書斎19と階段部を備えた領域、及び1,2階の中間に位置する多目的スペースと階段部を備えた領域が、平面視同一形状・同一寸法の矩形状であることが、当業者に明らかな事項である。

(3)対比・判断
補正発明と、上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「2階建て住宅」、及び「ガレージ5」は、補正発明の「複数階建て住宅」、及び「車庫区画」にそれぞれ相当するから、両者は、補正発明が備える以下<1>〜<4>の構成を、刊行物1記載の発明が備えているかどうか不明あるいは備えていない点で相違し、その他の点に実質的な差異はない。
<1>敷地が平面視略矩形状である点
<2>居住区画と車庫区画を建物本体内に一体に設け、車庫区画と二階との間に蔵型収納区画が配置されている点
<3>玄関と一階階段部とを備えた玄関・階段領域が平面視矩形状であり、この玄関・階段領域の直上(二階)に洗面所および浴室と二階階段部とを備えた平面視矩形状の水回り・階段領域が配置され、玄関・階段領域と、水回り・階段領域とが平面視同一形状、同一寸法に形成されている点
<4>玄関・階段領域と、前記水回り・階段領域とが重なる配置で予め組み立てられてユニット化されている点
(上記<1>〜<4>に摘記した構成を、以下、それぞれ「相違点1」〜「相違点4」という。)

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
住宅を平面視略矩形状の敷地に建設することは通常よく行なわれていることであり、この点には何らの技術的意義も認められない。

<相違点2について>
刊行物2には上記のとおり、ガレージ(補正発明の「車庫区画」に相当。以下、同じ。)の上方に収納スペース(「蔵型収納区画」)が形成可能な一つのユニットと、他の複数の1・2階の住宅ユニットとを組み合わせて構成される住宅が記載されており、これを、相違点2として摘記した補正発明の構成とすることに格別困難性は認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計事項にすぎない。

<相違点3について>
刊行物3には上記のとおり、1階の玄関・玄関ホールと階段部を備えた領域、2階の書斎と階段部を備えた領域、及び1,2階の中間に位置する多目的スペースと階段部を備えた領域を、平面視同一形状・同一寸法の矩形状とした2階建て住宅が記載されている。そして、洗面所や浴室等の水回り諸室を2階に配置した住宅は、例を示すまでもなく当業者によく知られており、また、1,2階の中間に多目的スペースを設けるか否かは設計事項にすぎないから、刊行物3記載の書斎を洗面所および浴室とからなる水回り諸室に替え、かつ、多目的スペースを省いて、相違点3として摘記した補正発明の構成とすることには何らの困難性も認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計変更にすぎない。

<相違点4について>
住宅の少なくとも一部をあらかじめ工場生産された箱状のユニットで構成するものにおいて、1,2階部分が重なる配置で予め組み立てられたユニットを使用することは、特開昭60-164528号公報、特開平3-151464号公報等にみられるとおり従来周知である。そして、そのようなユニットにより構成される領域を、補正発明のように、玄関・階段領域と、水回り・階段領域とすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計事項にすぎない。

そして、補正発明が奏する作用効果は、上記各刊行物や周知技術が奏する効果の総和を超えるものではなく、格別のものがあるとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年7月22日付手続補正が上記のとおり却下されたので、平成15年3月24日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】平面視略矩形状の敷地に構築され、かつ建物本体内に居住区画と車庫区画とを一体に設けた複数階建て住宅であって、前記建物本体における一階の一辺側中央部に、玄関と一階階段部とを備えた平面視矩形状の玄関・階段領域が玄関が敷地に接する道路に向けて配置され、前記玄関に隣接する一階部分に車庫区画がその出入り口側を前記道路側に向けて配置され、前記車庫区画と二階との間に蔵型収納区画が配置され、二階の、前記玄関・階段領域の直上に洗面所および浴室と二階階段部とを備えた平面視矩形状の水回り・階段領域が配置され、
前記玄関・階段領域と、前記水回り・階段領域とが平面視同一形状、同一寸法に形成され、玄関・階段領域と、前記水回り・階段領域とがほぼ重なるように配置されてなることを特徴とする住宅。
【請求項2】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された各刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明から、玄関・階段領域と、前記水回り・階段領域との関係についての限定事項である「重なる配置で予め組み立てられてユニット化されてなる」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-03 
結審通知日 2004-02-10 
審決日 2004-02-23 
出願番号 特願平6-125399
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04H)
P 1 8・ 575- Z (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 新 井 夕起子
長 島 和 子
発明の名称 住宅の設計方法および住宅  
代理人 荒船 博司  

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