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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1097367
審判番号 不服2002-17365  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-09 
確定日 2004-05-24 
事件の表示 平成 4年特許願第255530号「位置決め制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 3月25日出願公開、特開平 6- 83433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成4年8月31日の特許出願であって、その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成14年9月9日付手続補正書により補正がなされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、次のとおりである。
「予めプログラムされた位置制御データと、位置センサから順次供給されるモータの回転情報とに基づいて、上記モータの回転を制御する位置決め制御装置において、
所定の第1の経過時間毎に第1の起動信号を出力する第1のタイマと、
上記第1のタイマから上記第1の起動信号が与えられる毎に、上記位置制御データに基づき得られる上記第1の経過時間後の上記モータの回転量に関する目標値データを順次第1のメモリに格納する目標値発生手段と、
上記目標値データを上記第1のメモリから読み出して光伝送信号として出力する第1の通信手段と、
上記光伝送信号に基づいて上記目標値データを再生すると共に、上記目標値データを第2のメモリに格納する第2の通信手段と、
上記第1の経過時間より短い所定の第2の経過時間毎に第2の起動信号を出力する第2のタイマと、
上記第2のメモリから上記目標値データを読み出し、当該目標値データに基づく上記モータの回転過程経路を所定分割して上記第2の経過時間毎の上記モータの補間目標値を形成すると共に、上記第2のタイマから上記第2の起動信号が与えられる毎に、対応する上記補間目標値に基づいて上記モータの回転を制御する所定の制御処理を実行する回転制御手段と
を具えることを特徴とする位置決め装置。」
第2 引用例記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平1-99102号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1) 公報第1頁左欄下から第4行〜第2頁左上欄第12行
「[従来の技術]
自動組立工場等で使用されるロボット等のサーボ制御装置は、制御プログラムに基づく動作指令に応じて所定の演算を行ない、サーボ系の軌道を算出して位置指令として出力する運動制御部と、その位置指令に応じてサーボ系の位置を制御するサーボ制御部とを備え、そのサーボ制御部からの制御信号によりロボットの位置決め装置を作動させるように構成されている。
上記のサーボ制御装置において、運動制御部で行なわれる軌道生成及び座標変換には多くの演算を必要とし、1回の位置を求める演算で数十ミリ秒から百ミリ秒程度の計算時間を要する。このため、運動制御部で時々刻々変化する指令位置を求める計算は、数十ミリ秒から百ミリ秒程度の周期で行なわれる場合が多い。
これに対し、サーボ制御部では、サンプリング周期の大きさが応答性や外乱除去特性に直接影響するため、周期をできるだけ短くし、通常5ミリ秒又はそれ以下の周期で演算処理が行なわれることが多い。このとき、上記の運動制御部で計算された値を直接サーボ制御部での処理に使用すると、サーボ制御部からの速度指令が運動制御部での処理周期毎に不連続的に変化することになり、サーボ系に振動が発生する原因となる。そこで、サーボ制御部に補間演算部を設け、運動制御部からの数十ミリ秒から百ミリ秒毎の指令を、その周期の整数分の一のサンプリング周期毎に補間することが行なわれている。
従来は、上記の補間演算に次のような一次式を用いて、各指令点(位置)の間を直線的に補間していた。第7図(A)に示すように、運動制御部からの位置指令は、Ts1秒(軌道生成及び座標変換の周期)毎に計算される。サーボ制御部では、この位置指令をTs2秒(サンプリング周期)毎に直線補間して実際の指令とする。」
(2) 同第2頁右下欄下から第2行〜第3頁右上欄第17行
「第1図は本発明によるサーボ制御装置の構成を示す。このサーボ制御装置は、プログラムを解読して動作指令を出力する言語処理部1と、その動作指令に応じて所定の演算を行ない、サーボ系の軌道を算出して位置指令として出力する運動制御部2と、その位置指令に応じてサーボ系の位置を制御するサーボ制御部3とを備えている。
このサーボ制御装置によって制御されるロボット(サーボ機構)は、各関節を駆動するモータ4を駆動源とし、上記サーボ制御部3からの制御信号(速度指令)をアナログ変換するD/A変換器5と、そのアナログ信号を増幅して各モータ4に供給するサーボアンプ6とを有する。更に、各モータ4の回転角から各々の関節位置を検出するエンコーダ7と、そのエンコーダからの周波数出力を電圧信号に変換してサーボアンプ6に供給するF/V変換器8が設けられている。エンコーダ7からの現在位置信号は、サーボ制御部3にフイードバツクされる。
動作の際には、プログラム言語処理部1で制御プログラムを解読して動作指令を出力し、その動作指令に応じて運動制御部2が所定の演算を行ない、ロボットの軌道を算出して位置指令として出力する。運動制御部2における演算は直線補間・・・・であり、直線補間・・・・時の軌道は、通常直交座標系上の値として計算されるため、これに座標変換の演算を施して関節座標に変換する。サーボ制御部3は、その関節座標値に基づいてロボットの各関節角のサーボ制御信号を出力する。すなわち、サーボ制御部3では、運動制御部2から送られた関節角指令値とエンコーダ7からフイードバツクされた関節角現在値との差を各制御軸毎に求め、これにPID等の補償演算を行なって得られた速度指令をD/A変換器5を介してサーボアンプ6に供給する。サーボアンプ6は、D/A変換器5からの速度指令信号とF/V変換器8からの速度フイードバツク信号により、モータ4を指令速度と同一の速度で回転させる駆動信号を出力する。」
(3) 同第3頁右上欄第18行〜同頁左下欄第13行
「第2図は、上記のサーボ制御部3の構成を示す。サーボ制御部3は、前述の振動発生を防止する補間演算を行なう補間演算部11と、ここで演算された結果を格納する補間位置バッファ12と、サーボアンプ6への速度指令を生成するサーボ処理部13とを有する。
動作の際には、第1図の運動制御部2から数十ミリ秒〜百ミリ秒周期の位置指令が補間演算部11に送られる。補間演算部11は、位置指令が来る毎にその前の指令値と新しい指令値との間で補間演算を行ない、その結果得られた値を補間位置バッファ12に格納する。サーボ処理部13は、補間位置バッファ12に格納された値を順次(例えば5ミリ秒の周期で)取り出し、これと前記エンコーダ7からの位置フイードバツク信号によりサーボ処理を行なって速度指令を出力する。」
また、上記記載事項より、運動制御部2は、所定の周期Ts1毎に位置指令値を算出しているのであるから、サーボ制御装置が所定の周期Ts1毎に第1の起動信号を出力する第1の制御手段を具えていること、及び、その第1の制御手段から第1の起動信号が与えられる毎に所定の周期Ts1後の位置指令値を算出していることは明らかであり、さらに、サーボ制御部3は、所定の周期Ts1の整数分の一のサンプリング周期Ts2毎の補間演算を行っており、そして、補間演算により得られた補間位置を格納されたバッファ12から順次取り出して速度指令を出力しているのであるから、サーボ制御装置が上記所定の周期Ts1より短いサンプリング周期Ts2毎に第2の起動信号を出力する第2の制御手段を具えていることも明らかである。
以上のとおりであるので、引用例には以下の発明が記載されていると認める。
予めプログラムされた位置制御データと、エンコーダ7から順次供給されるモータ4の回転情報とに基づいて、上記モータ4の回転を制御するサーボ制御装置において、
所定の周期Ts1毎に第1の起動信号を出力する第1の制御手段と、
上記第1の制御手段から上記第1の起動信号が与えられる毎に、上記位置制御データに基づき得られる上記所定の周期Ts1後の上記モータ4の位置指令値を出力する運動制御部2と、
上記所定の周期Ts1より短いサンプリング周期Ts2毎に第2の起動信号を出力する第2の制御手段と、
運動制御部2から位置指令値を受ける毎にその前の位置指令値と新しい位置指令値との間の上記モータの回転過程経路を補間演算してサンプリング周期Ts2毎の上記モータの補間位置を得ると共に、上記第2の制御手段の第2の起動信号が与えられる毎に、対応する上記補間位置に基づいて上記モータ4の回転を制御する所定の制御処理を実行するサーボ制御部3と
を具えるサーボ制御装置(以下「引用例記載の発明」という。)。
第3 対比
本件発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「エンコーダ」が本件発明1の「位置センサ」に相当し、以下同様に、「周期Ts1」が「第1の経過時間」に、「サンプリング周期Ts2」が「第2の経過時間」に、「モータの位置指令値」が「モータの回転量に関する目標値データ」に、「その前の位置指令値と新しい位置指令値との間の上記モータの回転過程経路を補間演算してサンプリング周期Ts2毎の上記モータの補間位置を得る」が「当該目標値データに基づく上記モータの回転過程経路を所定分割して上記第2の経過時間毎の上記モータの補間目標値を形成する」に、それぞれ相当しており、また、引用例記載の発明の「サーボ制御装置」は、本件発明1の「位置決め制御装置」に相当すると共に「位置決め装置」にも相当していることが明らかである。
また、本件発明の「第1のタイマ」は第1の制御手段という限りで、また、「第2のタイマ」は第2の制御手段という限りで引用例記載の発明と一致している。
さらに、引用例記載の発明の「運動制御部」は、上記第1の制御手段から上記第1の起動信号が与えられる毎に、上記位置制御データに基づき得られる上記第1の経過時間後の上記モータの回転量に関する目標値データを取り扱うものであるという限りで、本件発明1の「目標値発生手段」と一致し、引用例記載の発明の「サーボ制御部」は、当該目標値データに基づく上記モータの回転過程経路を所定分割して上記第2の経過時間毎の上記モータの補間目標値を形成すると共に、上記第2の制御手段から上記第2の起動信号が与えられる毎に、対応する上記補間目標値に基づいて上記モータの回転を制御する所定の制御処理を実行するものであるという限りで、本件発明1の「回転制御手段」と一致している。
したがって、本件発明1と引用例記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。
予めプログラムされた位置制御データと、位置センサから順次供給されるモータの回転情報とに基づいて、上記モータの回転を制御する位置決め制御装置において、
所定の第1の経過時間毎に第1の起動信号を出力する第1の制御手段と、
上記第1の制御手段から上記第1の起動信号が与えられる毎に、上記位置制御データに基づき得られる上記第1の経過時間後の上記モータの回転量に関する目標値データを取り扱う目標値発生手段と、
上記第1の経過時間より短い所定の第2の経過時間毎に第2の起動信号を出力する第2の制御手段と、
当該目標値データに基づく上記モータの回転過程経路を所定分割して上記第2の経過時間毎の上記モータの補間目標値を形成すると共に、上記第2の制御手段から上記第2の起動信号が与えられる毎に、対応する上記補間目標値に基づいて上記モータの回転を制御する所定の制御処理を実行する回転制御手段と
を具える位置決め装置。
そして、本件発明1と引用例記載の発明とは、以下の2点で相違している。
1 相違点1
本件発明1では、第1の制御手段が第1のタイマであり、第2の制御手段が第2のタイマであるのに対し、引用例記載の発明では、そのようなものであるのか明らかではない点。
2 相違点2
本件発明1では、目標値発生手段が目標値データを順次第1のメモリに格納しており、上記目標値データを上記第1のメモリから読み出して光伝送信号として出力する第1の通信手段と、上記光伝送信号に基づいて上記目標値データを再生すると共に、上記目標値データを第2のメモリに格納する第2の通信手段とを具えており、回転制御手段が上記第2のメモリから上記目標値データを読み出しているのに対し、引用例記載の発明では、そのような第1及び第2のメモリを具えているのか明らかではなく、上記のような構成になっていない点。
第4 相違点についての検討
1 相違点1について
技術分野の如何を問わず機械や装置の起動又は停止時間を管理・設定するためにタイマを使用することは従来周知であるので、この従来周知の事項を引用例記載の発明の所定の第1の経過時間毎に第1の起動信号を出力する第1の制御手段及び所定の第2の経過時間毎に第2の起動信号を出力する第2の制御手段に適用して、相違点1における本件発明1のように構成することに格別の困難性は見当たらない。
2 相違点2について
本件発明1のような位置決め制御装置において、目標値データを光伝送信号として出力する第1の通信手段と、上記光伝送信号に基づいて上記目標値データを再生する第2の通信手段とを具えることは、原査定の際にも、特開昭63-66609号公報、特開昭57-111607号公報が例示され指摘されているように従来周知である。
また、一般に、数値制御装置においてメモリをどこにどのように配備するかは必要に応じて適宜決定すればよい設計的事項であって、引用例記載の発明において、目標値データを出力する目標値発生手段側及び目標値データを受ける回転制御手段側のそれぞれに目標値データを格納するメモリを配備することは、必要に応じて適宜なし得るところである。
そうしてみると、上記従来周知の事項を引用例記載の発明に適用すると共に引用例記載の発明の目標値発生手段側及び回転制御手段側のそれぞれに目標値データを格納するメモリを設けることにより、相違点2における本件発明1のように構成することに格別の困難性は見当たらない。
3 本件発明1の効果について
本件発明1によってもたらされる効果は、引用例記載の発明及び上記従来周知の各事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
第5 むすび
したがって、本件発明1は、引用例記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-25 
結審通知日 2004-03-26 
審決日 2004-04-09 
出願番号 特願平4-255530
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 鈴木 孝幸
平田 信勝
発明の名称 位置決め制御装置  
代理人 田辺 恵基  

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