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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1097677
審判番号 不服2003-20707  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-24 
確定日 2004-06-07 
事件の表示 平成6年特許願第138351号「住宅建造物のための壁面構築ユニット及びその施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成7年12月5日出願公開、特開平7-317181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成6年5月27日の出願であって、平成15年9月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年10月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同年11月25日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年11月25日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年11月25日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「低階層の住宅建造物用の壁面ないしは間仕切り壁等の壁面構築ユニットUであって、壁面パネル体1と、該壁面パネル体1の一方の面に重ね合わせ状に固定連結される金属製枠組立体2とによって構成され、前記金属製枠組立体2は、リップ溝型鋼7による厚さ寸法tを有する矩形の外枠5と、該外枠5内で縦方向並びに横方向にのびるそれぞれ複数の補強梁6と、該金属製枠組立体2の枠内であって、厚さ寸法t内において前記外枠5と縦方向並びに横方向補強梁6とによって区画される少なくとも四隅の矩形領域内に設けた剛域機構9とを含むものからなり、前記金属製枠組立体2の外枠5は、リップ溝型鋼7の長さ方向に沿ってのびるチャンネル開口8が該枠組立体2の内方向に向いて組み立てられていて、外周囲に向いたリップ溝型鋼7の外周囲壁7bを突き合わせた状態で、連結手段17、19により直接的に連結固定可能であり、前記壁面構築ユニットUは、前記金属製枠組立体2を介して直接的に上下左右に突き合わせ状に連結され、前記金属製枠組立体2に床受梁20、21並びに天井梁23を連結することによって、支柱を構築することなく、一連なりの耐力壁を形成するようになしたことを特徴とする住宅建造物のための壁面構築ユニット。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された特開昭53-27213号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
「第1図は本発明による多層独立建造物1の一例を示す外観図であり、本実施例の多層独立建造物1は3層構造になつている。
第2-1図〜第2-4図は本発明による多層独立建造物1の断面を構造モデルとして示す断面構造図である。第2-1図は中央1本柱方式の構造例で、多層独立建造物1の外周壁2がモノコツク構造の殻を構成し、格子梁構造の梁3および柱4が外周壁2とピン5で、また基礎6とピン7で結合されている。」(2頁右下欄10〜19行)
「第2-3図は最上階のみには柱4を持たない構造例である。一般に、屋根スラブ9の鉛直荷重は床スラブの鉛直荷重よりも少なく、その荷重を外周壁2に伝達させても特に大きな影響はないので、所望によりこの構造を採用することができ、材料の節約、屋内自由空間の拡大をさらに図ることが可能となる。」(3頁左上欄5〜12行)
「第3-1図〜第3-4図はそれぞれ第2-1図〜第2-4図に対応する多層独立建造物の平面構造モデルを示す。
第3-1図は第2-1図に対応する中央1本柱方式の平面構造……第3-3図は第2-3図に対応する最上階に柱を持たない場合の屋根構造……をそれぞれ示している。」(3頁左上欄18行〜右上欄7行)
「第4図は外周壁2を構成する外周壁パネル10で構成された多層独立建造物1の一例を示す側面図であり、第5図は外周壁パネル10が鉄板11とリブ12で構成された一例を示す図である。
第6-1図〜第6-4図及び第7図ならびに第8-1図と第8-2図は本発明における構造要素間の結合部の詳細を示す図である。」(3頁右上欄12〜18行)
「第6-2図は外周壁パネル10どうしの結合方式を示す詳細平断面図で、鉄板11に設けたリブ12がスペーサ14を挟んでボルト15またはピン等で剛結合され、鉄板11どうしの間はシーリング16で防水されている。
第6-3図は外周壁パネル10と梁3との結合と、外周壁パネル10どうしの結合とを一体化した結合方式を示し、ボルトとピンを兼ねた結合部材17により、外周壁パネル10のリブ12がスペーサ14を挟んで結合されると同時に、リブ12と梁3の一端部も一体的に結合される。この場合も、外周壁パネル10の鉄板11どうしの間はシーリング16で防水されている。」(3頁左下欄3〜15行)
「第7図はスラブ構造と外周壁2との結合方式を示す部分平面図で、スラブ構造を構成する格子構造の梁3は平板20と一体となり、屋根および床の剪断変形剛性を高めると共に、この梁3の一端部と外周壁2の外周壁パネル10の鉄板11に設けたリブ12とがピン、ボルト等の結合手段により曲げモーメントを伝達しないように結合されている。」(3頁右下欄2〜9行)
「本発明の多層独立建造物によれば、外周壁が構造体を兼ねており」(3頁右下欄20行〜4頁左上欄1行)
したがって、上記各記載を含む明細書全体及び図面の記載からみて、第2-4図,第3-4図に記載されたもの以外は、外周壁2が支柱のない一連なりの耐力壁であること、リブ12が金属製であること、及び、上記「多層独立建造物」が低階層の住宅として使用し得るものであること、が当業者に明らかな事項であるから、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「低階層の住宅建造物の外周壁2を形成するための外周壁パネル10であって、
この外周壁パネル10は、鉄板11と、その一面の四周縁及びその中間部に重ね合わせ状に固定連結された金属製で断面アングル状のリブ12とで構成され、
この外周壁パネル10のリブ12相互を、スペーサ14を挟んで上下左右に結合すると同時に、リブ12と梁3の一端部も一体的に結合し、
支柱のない一連なりの耐力壁を形成するようにした、
外周壁パネル10。」

同じく、原査定の拒絶の理由で引用された、特開昭53-132123号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
「この発明は鋼製枠をもつて構成されるパネルを主材とする建築構造に関するものである。」(1頁右欄8〜9行)
「鋼製枠パネルは平面状パネル15と……隅角部用パネル16とよりなる。そして、平面状パネル15、隅角部用パネル16とも上辺、下辺に互いに向き合せ状にリツプ溝型鋼17が配されている。さらに前記各パネル15、16は450mm、900mm、1800mmの巾のものが用意される。」(2頁右上欄7〜14行)
「なお、各パネル15,16,18の内外面にはボードを貼つて壁を完成する。」
そして、上記各記載を含む明細書全体及び図面の記載からみて、第16図に記載されたものは、巾1800mmの平面状鋼製枠パネルであり、左辺,右辺、及びその中間に略450mmの間隔を置いてリツプ溝型鋼からなる縦枠を備え、さらに上下辺を構成するリツプ溝型鋼からなる横枠とこれら上下辺の横枠に平行する中間横枠とを備え、これらの縦枠と横枠により画成された区画の内、四隅の区画には、枠パネルの面内剛性を高めるための三角形状の補強部材を備えていることが、当業者に明らかな事項である。

(3)対比・判断
補正発明と、上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「外周壁2」、「外周壁パネル10」、「鉄板11」、「梁3」、及び「スペーサ14を挟んで上下左右に結合」は、補正発明の「壁面」、「壁面構築ユニット」、「壁面パネル体」、「床受梁20、21並びに天井梁23」、及び「直接的に上下左右に突き合わせ状に連結」にそれぞれ相当する。そして、刊行物1記載の発明の「金属製で断面アングル状のリブ12」も補正発明の「金属製枠組立体」も共に「金属製枠体」といえるから、両者は、
「低階層の住宅建造物用の壁面の壁面構築ユニットであって、壁面パネル体と、該壁面パネル体の一方の面に重ね合わせ状に固定連結される金属製枠体とによって構成され、
前記金属製枠体を介して直接的に上下左右に突き合わせ状に連結され、前記金属製枠体に床受梁並びに天井梁を連結することによって、支柱を構築することなく、一連なりの耐力壁を形成するようになした住宅建造物のための壁面構築ユニット。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:「金属製枠体」が、補正発明では、リップ溝型鋼による厚さ寸法tを有する矩形の外枠と、該外枠内で縦方向並びに横方向にのびるそれぞれ複数の補強梁と、その枠内であって、厚さ寸法t内において前記外枠と縦方向並びに横方向補強梁とによって区画される少なくとも四隅の矩形領域内に設けた剛域機構とを含む金属製枠組立体からなり、前記金属製枠組立体の外枠は、リップ溝型鋼の長さ方向に沿ってのびるチャンネル開口が該枠組立体の内方向に向いて組み立てられていて、外周囲に向いたリップ溝型鋼の外周囲壁を突き合わせた状態で、連結手段により直接的に連結固定可能なものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、四周縁及びその中間部に設けた断面アングル材のリブである点

上記相違点について検討する。
上記相違点として摘記した補正発明の構成、すなわち金属製枠体の構成は建築の分野においては、上記刊行物2等にみられるように従来周知であり、刊行物1記載の発明における金属製枠体に替えて上記従来周知のものを採用して補正発明を当業者がなすことには格別困難性は認められず、補正発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物1記載の発明及び刊行物2等にみられる周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年11月25日付手続補正が上記のとおり却下され、また、同年8月28日付手続補正が原審において却下されたので、同年5月19日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】壁面パネル体1と、前記壁面パネル体1の一方の面に重ね合わせ状に固定連結される金属製枠組立体2とによって壁面構築ユニットUを形成してなり、前記金属製枠組立体2は、リップ溝型鋼7によって厚さ寸法tを有する矩形の外枠5と、前記外枠5内で縦方向並びに横方向にのびるそれぞれ複数の補強梁6とを含むものからなり、該金属製枠組立体2の枠内であって厚さ寸法t内であって、前記外枠5と縦方向並びに横方向補強梁6とによって区画される少なくとも四隅の矩形領域内に、該壁面構築ユニットUの変形を防止し、剛性を付与する剛域機構9を備えてなり、前記壁面構築ユニットUは、前記金属製枠組立体2を介して上下左右に突き合わせ状に連結し、前記金属製枠組立体2を介して床受梁20、21並びに天井梁23を連結することによって、支柱を構築することなく、一連なりの耐力壁を形成するようになしたことを特徴とする住宅建造物のための壁面構築ユニット。
【請求項2】前記壁面構築ユニットUにおける金属製枠組立体2の少なくとも外枠5が、リップ溝型鋼7によって構成されていて、その長さ方向に沿ってのびるチャンネル開口8が該枠組立体2の内方向に向いて組み立てられていて、外周囲に向いたリップ溝型鋼7における外周囲壁7bを突き合わせ、連結手段17、19により直接的に連結固定可能になしたことを特徴とする請求項1に記載の住宅建造物のための壁面構築ユニット。
【請求項3】(記載を省略)」
(以下、請求項2記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された各刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明から「壁面構築ユニット」の限定事項である「低階層の住宅建造物用の壁面ないしは間仕切り壁等の(壁面構築ユニット)」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2等にみられる周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2等にみられる周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-24 
結審通知日 2004-03-30 
審決日 2004-04-12 
出願番号 特願平6-138351
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 575- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也鉄 豊郎小島 寛史  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 長 島 和 子
新 井 夕起子
発明の名称 住宅建造物のための壁面構築ユニット及びその施工方法  
代理人 村田 紀子  

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