ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
---|---|
管理番号 | 1102774 |
異議申立番号 | 異議2003-70250 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-02-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-01-23 |
確定日 | 2004-07-12 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3311522号「半導体装置の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3311522号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3311522号に係る手続の主な経緯は次のとおりである。 特許出願(特願平6-269872号) 平成 6年11月 2日 (優先権主張平成 6年 5月30日) 特許権設定登録 平成14年 5月24日 特許異議申立(異議申立人:吉成迪夫) 平成15年 1月23日 特許異議申立(異議申立人:大沢敏昭) 平成15年 2月 3日 取消理由通知 平成16年 1月28日 特許異議意見書・訂正請求書 平成16年 4月 9日 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を 「RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法。」と訂正する。 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2を 「基板上に、光を反射する膜、基板よりも熱伝導率の低い材料による膜、光を吸収する材料による膜のうち少なくともいずれか一つの膜を形成する工程と、 その膜の上に非晶質シリコン膜を形成する工程と、 RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (2-1)訂正事項aについて 訂正事項aは、ランプ光を複数回照射させることで非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程について、「ランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正前の明細書の段落【0049】には、「・・・非晶質シリコン膜4へのランプ光の照射を極短時間で複数回行うことができる。その結果、加熱溶融された非晶質シリコン膜4中の潜熱が基板1に流出し難くなり、凝固速度が早くなるのが防止される。」と、段落【0050】には、「・・・ランプ光の照射を極短時間で複数回行うことにより、非晶質シリコン膜4の凝固速度を遅くすることができる。・・・」と記載されている。また、「1回照射することに比べて」という限定は、何に対して凝固速度が遅くなるかを明確にするために限定したものであり、斯かる構成は、上記段落【0049】【0050】の記載に内在されている事項であり、本件特許の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項であるので、明細書等の記載から自明な事項といえる。 したがって、訂正事項aは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2-2)訂正事項bについて 訂正事項bは、ランプ光を複数回照射させることで非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程について、「ランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程」と技術的限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、上記(2-1)訂正事項aについてと同様な理由により、訂正事項bは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)異議申立理由の概要 (1-1)異議申立人吉成迪夫は、下記の甲第1〜3号証を提出し、特許第3311522号の請求項1,2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、特許を取り消すべきものである旨主張しており、 甲第1号証:特開昭55- 68638号公報(a) 甲第2号証:特開昭63-166219号公報(b) 甲第3号証:特開平 6-140325号公報(c) (1-2)異議申立人大沢敏昭は、下記の甲第1号証を提出し、特許3311522号の請求項1,2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、甲第1号証の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しており、又、下記の参考資料1〜5を提出し、請求項2に係る発明に関する周知慣用技術が参考資料1〜5に記載されている旨主張している。 甲第1号証:特開平 6-140325号公報(c) 参考資料1:特開昭58- 46618号公報(d) 参考資料2:特開平 5-218367号公報(e) 参考資料3:特開平 5-121350号公報(f) 参考資料4:特開平 3-181120号公報(g) 参考資料5:特開平 4- 33327号公報(h) (2)取消理由の概要 特許第3311522号の請求項1及び2に係る発明は、下記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、本件の請求項1及び2に係る発明の特許は取り消されるべきものであり、若しくは本件の請求項1及び2に係る発明は下記刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 記 刊行物1:特開平 6-140325号公報(異議申立人吉成迪夫が提出 した甲第3号証、異議申立人大沢敏昭が提出した甲第1号証) (3)異議申立てについての検討 (3-1)本件発明 特許第3311522号の請求項1及び2に係る発明は、上記のとおり訂正が認められたから、平成16年4月9日付けの上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、それぞれ以下のとおりのものである。 「【請求項1】 RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法。」(以下、「本件発明1」という。) 「【請求項2】 基板上に、光を反射する膜、基板よりも熱伝導率の低い材料による膜、光を吸収する材料による膜のうち少なくともいずれか一つの膜を形成する工程と、 その膜の上に非晶質シリコン膜を形成する工程と、 RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法。」(以下、「本件発明2」という。) (3-2)取消理由で引用された刊行物に記載された発明/異議申立人提出の証拠に記載された発明 (3-2-1)当審が通知した取消の理由で引用した刊行物1(特開平6-140325号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【従来の技術】従来より、薄膜トランジスタや薄膜太陽電池の製造プロセスの簡素化および製造コストの低減のために多結晶シリコン薄膜が用いられている。・・・ ・・・ ・・・そして、この高速ランプアニール法をa-Si:H膜のアニールに適用した場合、下地のガラス基板はランプアニールの光源の光を吸収しないのでa-Si:H膜の温度が上昇せず、アニーリングが充分になし得ないという問題がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、高速ランプアニール法によっても形成することができる大粒径の多結晶シリコン薄膜およびその形成法を提供することを目的としている。」(段落【0002】〜【0005】) 「本発明の多結晶シリコン薄膜の形成法は、ガラス基板上にアモルファスカーボンの薄膜を形成した後、該ガラス基板上多結晶シリコン薄膜を形成することを特徴としている。」(段落【0011】) 「また、本発明の多結晶シリコン薄膜の形成法においては、前記多結晶シリコン薄膜を、高速ランプ加熱により形成するのが好ましい。」(段落【0013】) 「【作用】本発明においては、ガラス基板上にランプアニールの光源の光吸収係数が大きなアモルファスカーボンの薄膜を形成しているので、高速ランプアニール法を適用することができる。そして、このアモルファスカーボンの薄膜は、また熱伝導率も低いので、ガラス基板への熱伝導を小さくすることができる。このこともまた、高速ランプアニール法の適用を助長している。」(段落【0016】) 「本発明の多結晶シリコン薄膜3は、図1に示す如く、アモルファスカーボンの薄膜2が形成されたガラス基板1の上に形成されている。」(段落【0021】) 「このアモルファスカーボンの薄膜2の本発明での役割は以下の3つである。 (1)ハロゲンランプ光をよりよく吸収し、特にアモルファスカーボンの薄膜2とa-Si:Hの界面をより高温とし良好な多結晶シリコンの結晶成長を行う。」(段落【0025】) 「(2)アモルファスカーボンの薄膜2は熱伝導度が悪く、下地のガラス基板1への熱ダメージを小さくする。」(段落【0026】) 「しかして、このアモルファスカーボンの薄膜2上にa-Si:Hを形成するのであるが、その前にアモルファスカーボンの薄膜2表面を5分間程度H2 プラズマ処理する。・・・」(段落【0033】) 「H2 プラズマ処理した後、プラズマCVD法にてa-Si:Hを2μm〜20μm堆積させる。」(段落【0034】) 「最後に、ガラス基板1の温度を室温から800℃までの昇温を8秒間〜20秒間で行う昇温工程、その次のハロゲンランプによる急速加熱を15秒間〜500秒間を行う急速加熱工程、さらにその次の室温までの降温工程を1サイクルとするアニーリング処理を所定回行い、a-Si:H膜から多結晶シリコン薄膜を形成する。」(段落【0035】) 「・・・基板温度を450℃にて、アモルファスカーボンの薄膜の上にa-Si:H膜を10μm堆積させた。」(段落【0041】) 「最後にこのガラス基板を高速ランプにより加熱処理を行い、多結晶シリコン薄膜を得た。より具体的には、80℃/秒の昇温速度により800℃まで昇温し、その温度で5秒間保持した後冷却するという処理を100回繰り返して、多結晶シリコン薄膜を得た。」(段落【0042】) 「【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば高速ランプアニール法を用いても、ガラス基板上に大粒径の多結晶シリコン薄膜を得ることができる。」(段落【0048】) (3-2-2)異議申立人吉成迪夫が提出した甲第1号証(特開昭55-68638号公報)には、以下の事項が記載されている。 「3.半導体ウエハの一主表面に単位面積ごとにステップアンドリピートにより光をパルス照射する際に光照射部が互いに重ならないように照射することにより半導体表面を加熱することを特徴とする半導体表面の加熱処理法。」(特許請求の範囲第3項) 「Xeランプ(キセノンランプ)により波長λ=3000Å〜1μで・・・集光し、直径5インチのシリコンウエハ表面全体に一括パルス照射してウエハ表面を瞬間的に加熱する。 又、キセノンランプのパワーが一桁程度小さい場合は、第1図にて示すように光を・・・寸法に絞りステップアンドリピートによりシリコンウエハ1上にシリコンウエハ1上のスクライブラインとして用いるところ所謂スクライブエリア3をはずして照射する」(第2頁左上欄第11行〜右上欄第3行) 「このようにキセノンランプ等の光ランプによる光をパルス照射することにより、瞬間的に半導体表面を有効に加熱することができるので、例えば半導体ウエハ表面における0.1μ〜1μ程度の厚さのイオン打込み層のアニールによる活性化,表面結晶欠陥の除去,アモルファス半導体層の単結晶化,多結晶層の結晶粒の拡大等に有効に活用することができる。」(第2頁右上欄第13〜20行) 「3.ランプ光の一かつ照射又はステップ照射により必要な部分を均一に処理することができる」(第2頁左下欄第11,12行) (3-2-3)異議申立人吉成迪夫が提出した甲第2号証(特開昭63-166219号公報)には、以下の事項が記載されている。 「この状態で、前記フラッシュランプ17により、時定数2msec,繰返し周波数 800 /secで、50回の閃光を照射する。」(第3頁右上欄第5〜8行) 「閃光の光量と照射の繰返し周波数を制御すると、不純物の拡散深さを容易に制御でき、0.1μm以下の拡散深さを実現することも可能である。さらに、高濃度のAsをシリコン表面に形成するための拡散効率にも優れている。 ・・・ ・・・さらに接合深さ0.1μm以下と極めて淺い接合深さを実現することができる。」(第3頁左下欄第13行〜右下欄第6行) (3-2-4)異議申立人大沢敏昭が提出した参考資料3〜5には、非晶質シリコン膜等に光を照射させることで該シリコン膜を溶融再結晶化させて再結晶化シリコン膜を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法において、基板への熱ダメージの防止や効率的に加熱溶融して大粒径の多結晶シリコン等を得るべく、基板上に光反射膜を形成し、その上に非晶質シリコン膜等を形成する技術思想が記載されている。 (3-3)対比・判断 (3-3-1)本件発明1について 本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明は、本件発明1の構成要件である、非晶質シリコン膜にランプ光を照射させることで、非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法であって、「RTA法によってランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて」多結晶シリコン膜を形成する工程を備えていない。 また、かかる点は、異議申立人吉成迪夫が提出した甲第1号証及び甲第2号証、並びに異議申立人大沢敏昭が提出した参考資料1〜5のいずれにも記載されていない。 そして、本件発明1は、上記の点を備えることにより、以下の明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 「請求項1に記載の発明によれば、加熱溶融された非晶質シリコン膜中の潜熱が流出し難くなり、凝固速度が遅くなるため、結晶粒径が大きな多結晶シリコン膜を形成することができる。」(明細書段落【0020】) したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1、異議申立人吉成迪夫が提出した甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3-3-2)本件発明2について 本件発明2と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明は、本件発明2の構成要件である、非晶質シリコン膜にランプ光を照射させることで、非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法であって、「RTA法によってランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて」多結晶シリコン膜を形成する工程を備えていない。 また、かかる点は、異議申立人吉成迪夫が提出した甲第1号証及び甲第2号証、並びに異議申立人大沢敏昭が提出した参考資料1〜5のいずれにも記載されていない。 そして、本件発明2は、上記の点を備えることにより、以下の明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 「請求項2に記載の発明によれば、非晶質シリコン膜の加熱溶融を効率的に行うことができる上に、加熱溶融された非晶質シリコン膜中の潜熱が流出し難くなり、凝固速度が遅くなるため、結晶粒径が大きな多結晶シリコン膜を形成することができる。」(明細書段落【0021】) したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1、異議申立人吉成迪夫が提出した甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 4.むすび 以上のとおりであるから、異議申立人吉成迪夫、大沢敏昭による特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 半導体装置の製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法。 【請求項2】 基板上に、光を反射する膜、基板よりも熱伝導率の低い材料による膜、光を吸収する材料による膜のうち少なくともいずれか一つの膜を形成する工程と、 その膜の上に非晶質シリコン膜を形成する工程と、 RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで、1回照射することに比べて非晶質シリコン膜の凝固速度を遅くしつつ非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、半導体装置の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 近年、アクティブマトリクス方式の液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)が高画質な表示装置として注目されている。そのアクティブマトリクス方式LCDの画素駆動素子(画素駆動用トランジスタ)として、透明絶縁基板上に形成された多結晶シリコン膜を能動層に用いた薄膜トランジスタ(以下、多結晶シリコンTFT(Thin Film Transistor)という)の開発が進められている。 【0003】 多結晶シリコンTFTは、非晶質シリコン膜を能動層に用いた薄膜トランジスタ(以下、非晶質シリコンTFTという)に比べ、移動度が大きく駆動能力が高いという利点がある。そのため、多結晶シリコンTFTを用いれば、高性能なLCDを実現できる上に、画素部(表示部)だけでなく周辺駆動回路(ドライバ)までも同一基板上に一体にして形成することができる(ドライバ一体型LCDと呼ばれる)。 【0004】 従来の多結晶シリコンTFTは、1000℃程度の高温の工程(高温プロセスと呼ばれる)を使って形成されていた。高温プロセスは長年に渡る十分な技術的蓄積のあるLSI技術を踏襲したものである。そのため、高温プロセスで形成された多結晶シリコンTFT(高温多結晶シリコンTFTと呼ばれる)は、素子特性,信頼性,再現性に優れている。しかし、高温プロセスはプロセス温度が高いため、基板には石英ガラスを使わざるを得ない。石英ガラスは大型化に伴って著しく高価になる上に現在のところ大型化には限りがあるため、基板の寸法が制限を受ける。そのため、コスト的に見合うLCDのパネルサイズは2型以下となり、ビデオカメラのビューファインダ用や液晶プロジェクタ用としては十分に使用できるものの、直視用としてはパネルサイズが小さすぎて使用できない。 【0005】 一方、非晶質シリコンTFTは、400℃以下の低温の工程を使って形成可能なため、基板に通常のガラスを使うことができる。通常のガラスは石英ガラスの約1/10の価格で寸法にも制限がないが、LCD用に市販されている高耐熱ガラス(例えば、米国Corning Inc.製の「7059」)でも600℃程度の耐熱温度しかない。 【0006】 そこで、基板に通常のガラス(高耐熱ガラス)を使用できるように、多結晶シリコンTFTを600℃程度以下の低温の工程(低温プロセスと呼ばれる)を使って形成することが求められている。低温プロセスで形成された多結晶シリコンTFTは低温多結晶シリコンTFTと呼ばれる。低温多結晶シリコンTFTで問題となるのは、能動層となる多結晶シリコン膜の形成方法、ゲート絶縁膜の形成方法、ソース・ドレイン領域の形成方法などである。 【0007】 シリコン薄膜の形成方法には種々の方法(CVD法,蒸着法,スパッタ法など)があるが、いずれの方法でもシリコン薄膜を低温でガラス基板上に形成すると、膜は非晶質になる。その非晶質シリコン膜を多結晶化する方法としては、固相成長法や溶融再結晶化法がある。 【0008】 固相成長法は、非晶質シリコン膜に600℃前後で長時間の熱処理を行うことにより、固体のままで多結晶化させて多結晶シリコン膜を得る方法である。溶融再結晶化法は、非晶質シリコン膜の表面だけを溶融させて再結晶化を図りながら基板温度を600℃以下に保つ方法であり、レーザアニール法やRTA(Rapid Thermal Annealing)法がある。レーザアニール法は、非晶質シリコン膜の表面にレーザを照射して加熱溶融させる方法である。RTA法は、非晶質シリコン膜の表面にタングステンランプやキセノンランプなどのランプ光を照射して加熱溶融させる方法である。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 固相成長法には以下の問題がある。 1)多結晶シリコンの結晶粒径に対する制御方法がないため、基板全体にわたって均一な結晶粒径の多結晶シリコン膜を形成することが難しい。 【0010】 非晶質シリコン膜における結晶成長は、主に非晶質シリコン膜と基板との界面から起こるが、非晶質シリコン膜中で起こることも多い。つまり、非晶質シリコン膜中のどの場所から結晶成長が起こるかは不確定である。従って、結晶成長が密に起こった場所では結晶粒径が小さくなり、結晶成長が疎らに起こった場所では結晶粒径が大きくなるため、結晶粒径の均一性が低下する。 【0011】 多結晶シリコン膜は結晶粒径が大きいほど電界効果移動度が高くなり、電界効果移動度の高い多結晶シリコン膜を能動層として用いれば多結晶シリコンTFTの素子特性は向上する。そのため、多結晶シリコン膜中で結晶粒径が大きい場所に形成された多結晶シリコンTFTの素子特性は優れたものになる一方、結晶粒径が小さい場所に形成された多結晶シリコンTFTの素子特性は劣ったものになる。つまり、多結晶シリコン膜における結晶粒径の均一性が低下すると、多結晶シリコンTFTの素子特性にバラツキが生じる。その結果、LCDのパネル全面にわたって均質な画像を表示できなくなる。 【0012】 低温プロセスを採用する目的は、通常のガラス基板を用いてパネルサイズの大きなLCDを安価に提供することにある。多結晶シリコン膜における結晶粒径の均一性の低下は基板の大型化に伴って顕著になるため、パネルサイズの大きなLCDでは特に問題となる。 【0013】 2)非晶質シリコン膜が完全に多結晶化するには(すなわち、100%の結晶化率を得るには)、20時間といった長時間の熱処理が必要となる。従って、スループットが低下してしまう。また、LCD用の高耐熱ガラスを用いた場合でも、その耐熱温度限界近くで長時間の熱処理を行うことになるため、基板に歪みなどのダメージが生じやすくなる。熱処理時間を短くするには、基板の耐熱温度の範囲内においてできるだけ高温で熱処理を行えばよい。 しかし、処理温度を高くすると結晶化速度を速くできる反面、結晶粒径が小さくなってしまう。その結果、LCDのパネル全面にわたって多結晶シリコンTFTの素子特性が悪化し、画質が低下してしまう。特に、ドライバ一体型LCDでは、周辺駆動回路に用いられる多結晶シリコンTFTに対して、画素部に用いられる多結晶シリコンTFTよりも優れた素子特性が要求される。従って、多結晶シリコン膜の結晶粒径が小さくなると、ドライバ一体型LCDを具体化することができなくなる。 【0014】 レーザアニール法では、固相成長法に比べて熱処理時間が短いため、基板にダメージが生じることはなく、スループットが低下することもない。しかし、現在のところ大型の基板を一括して処理できるような大口径のレーザ装置がないため、レーザスポットを基板全面に走査させる必要がある。そのため、レーザスポットが照射される部分に重なりができ、非晶質シリコン膜には、レーザスポットが2回照射されて2回加熱溶融される場所と、レーザスポットが1回しか照射されず1回しか加熱溶融されない場所とが生じる。 すると、2回加熱溶融された場所では結晶粒径が小さくなり、1回しか加熱溶融されない場所では結晶粒径が大きくなるため、結晶粒径の均一性が低下する。従って、レーザアニール法においても固相成長法と同様に、基板全体にわたって均一な結晶粒径の多結晶シリコン膜を形成することが難しいという問題がある。 そこで、レーザアニール法では、レーザスポットの走査速度を落として重なり部分を極力小さくさせたり、レーザスポットを複数回照射してレーザスポットの重なり部分を平均化させることで、結晶粒径の均一性を向上させる方法がとられている。しかし、それでもなお十分な均一性を得ることは難しい。 【0015】 RTA法においても、固相成長法に比べて熱処理時間が短いため、基板にダメージが生じることはなく、スループットが低下することもない。加えて、RTA法では、基板全面に一括してランプ光を照射することができるため、非晶質シリコン膜全体を均一に加熱溶融することができる。そのため、基板全体にわたって均一な結晶粒径の多結晶シリコン膜を形成することができる。しかし、あまり長時間にわたってランプ光を照射し続けると、基板全体が加熱され過ぎて基板にダメージが生じるため、ランプ光の照射時間はできるだけ短くする必要がある。 ところが、ランプ光の照射時間を短くすると非晶質シリコン膜の熱処理時間も短くなり、多結晶シリコン膜の結晶粒径を大きくすることができなくなる。つまり、RTA法では、基板全体にわたって均一な結晶粒径の多結晶シリコン膜を形成することはできるものの、その結晶粒径を大きくすることはできないという問題がある。 【0016】 本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、結晶粒径が大きな多結晶シリコン膜を備えた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。 【0017】 【課題を解決するための手段】 【0018】 請求項1に記載の発明は、RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を備えたことをその要旨とする。 【0019】 請求項2に記載の発明は、基板上に、光を反射する膜、基板よりも熱伝導率の低い材料による膜、光を吸収する材料による膜のうち少なくともいずれか一つの膜を形成する工程と、その膜の上に非晶質シリコン膜を形成する工程と、RTA法によって非晶質シリコン膜にランプ光を複数回照射させることで非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程とを備えたことをその要旨とする。 【0020】 【作用】 請求項1に記載の発明によれば、加熱溶融された非晶質シリコン膜中の潜熱が流出し難くなり、凝固速度が遅くなるため、結晶粒径が大きな多結晶シリコン膜を形成することができる。 【0021】 請求項2に記載の発明によれば、非晶質シリコン膜の加熱溶融を効率的に行うことができる上に、加熱溶融された非晶質シリコン膜中の潜熱が流出し難くなり、凝固速度が遅くなるため、結晶粒径が大きな多結晶シリコン膜を形成することができる。 【0022】 【実施例】 以下、本発明を具体化した一実施例の製造方法を図1〜図3に従って説明する。 【0023】 工程1(図1(a)参照);透明絶縁基板1(石英ガラス,高耐熱ガラス)上に、後記するRTA装置のランプ光を反射する膜(以下、反射膜という)2を形成する。反射膜2はランプ光を反射する性質があればどのような材質でもよいが、例えば、金属(アルミ,銅,金,銀,プラチナなど),高融点金属(チタン,タンタル,モリブデン,タングステンなど),金属シリサイドなどが用いられ、その形成にはCVD法またはPVD法が用いられる。CVD法には常圧CVD法,減圧CVD法,プラズマCVD法,光励起CVD法などがある。また、PVD法には蒸着法,EB(Electron Beam)蒸着法,MBE(Molecular Beam Epitaxy)法,スパッタ法などがある。そして、反射膜2の膜厚は、反射膜2の材質およびランプ光の波長に合わせて、ランプ光を十分に反射するために必要十分な膜厚に設定されている。 【0024】 工程2(図1(b)参照);反射膜2上にバッファ膜3を形成する。バッファ膜3は、後記するRTA処理において、反射膜2と多結晶シリコン膜とが反応するのを防ぐために設けられている。従って、RTA処理において多結晶シリコン膜と反応しないような材質で反射膜2を形成した場合には、バッファ膜3を省いてもよい。バッファ膜3の材質としては、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜,シリコン窒酸化膜(SiOxNy)などが用いられ、その形成にはCVD法またはPVD法が用いられる。 【0025】 工程3(図1(c)参照);バッファ膜3上に非晶質シリコン膜4(膜厚;500Å)を形成する。非晶質シリコン膜4の形成にはCVD法またはPVD法が用いられるが、以下の方法が一般的である。 【0026】 ▲1▼減圧CVD法を用いる方法;減圧CVD法でシリコン膜を形成するには、モノシラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)の熱分解を用いる。この場合、処理温度が550℃以下では非晶質、620℃以上では多結晶となる。 【0027】 ▲2▼プラズマCVD法を用いる方法;プラズマCVD法で非晶質シリコン膜を形成するには、プラズマ中でのモノシランまたはジシランの熱分解を用いる。この場合、処理温度は300℃程度で水素を添加すると反応が促進される。 【0028】 工程4(図1(d)参照);RTA処理を行うことにより、非晶質シリコン膜4を多結晶化させて多結晶シリコン膜5を形成する。図3に、RTA処理を行うためのRTA装置の概略構成を示す。RTA装置11は、予備加熱室A,処理室B,冷却室Cを備えている。各室A〜Cにまたがってステージ12が設けられ、そのステージ12上をRTA処理されるサンプル(基板1)が一定速度で移動する。予備加熱室A内では基板1が予備加熱される。処理室B内には、円柱状のランプ本体(タングステンランプまたはキセノンランプ)13と反射板14(集光光学系)とからなるランプ装置15が、基板1の移動方向に沿って均等な間隔で複数個配置されている。ランプ本体13から照射されたランプ光は反射板14によって反射され、基板1の表面(非晶質シリコン膜4の表面)に照射される。冷却室C内では基板1が冷却される。 【0029】 ランプ光が照射されると非晶質シリコン膜4の表面は加熱されて溶融し、続いて、冷やされると凝固して結晶化することで多結晶シリコン膜5が形成される。ここで、ランプ光は非晶質シリコン膜4の全面に一括して照射されるため、非晶質シリコン膜4全体を均一に加熱溶融することができる。そのため、基板1全体にわたって均一な結晶粒径の多結晶シリコン膜5を形成することができる。 【0030】 このとき、非晶質シリコン膜4はランプ光のごく一部しか吸収せず、ランプ光の大部分は非晶質シリコン膜4を透過する。非晶質シリコン膜4を透過したランプ光は反射膜2によって反射され、再び非晶質シリコン膜4中へ戻される。そのため、反射膜2を設けない場合に比べてランプ光の利用効率が高まり、非晶質シリコン膜4の加熱溶融を効率的に行うことができる。例えば、蒸着法で形成された銀からなる反射膜2を用い、ランプ本体13にはキセノンランプを用いた場合、反射膜2はキセノンアークスペクトル全波長の98%以上を反射することができる。また、ランプ光が反射膜2によって反射されるため、非晶質シリコン膜4を透過したランプ光によって基板1が加熱されるのを防止することができる。 【0031】 そして、基板1の移動速度に対応して各ランプ装置15を順次発光させると、非晶質シリコン膜4へのランプ光の照射は複数回行われる。ここで、基板1の移動速度と各ランプ装置15の発光のタイミングとを調整すれば、非晶質シリコン膜4へのランプ光の照射を極短時間で複数回行うことができる。その結果、加熱溶融された非晶質シリコン膜4中の潜熱が基板1に流出し難くなり、凝固速度が早くなるのが防止される。 【0032】 このように、反射膜2を設けることでランプ光の利用効率を高めて非晶質シリコン膜4の溶融を効率的に行うと共に、ランプ光の照射を極短時間で複数回行うことにより、非晶質シリコン膜4の凝固速度を遅くすることができる。その結果、多結晶シリコン膜5の結晶粒径を大きくすることができる。また、ランプ光の照射を極短時間で複数回行うことで、基板1全体が加熱され過ぎることはなくなり、基板1に歪みなどのダメージが生じるのを防ぐことができる。さらに、RTA処理に要する時間は固相成長法における熱処理時間に比べればはるかに短いため、スループットが低下することもない。 【0033】 但し、非晶質シリコン膜4へのランプ光の照射回数および1回当たりの照射時間については、ランプ光(ランプ装置15の投射光)の性質(波長や光の強度など)および非晶質シリコン膜4の性質(光の吸収係数)を勘案して最適化する必要がある。 【0034】 このように、本実施例によれば、結晶粒径が均一で且つ大きな多結晶シリコン膜5を低温プロセスによって短時間に得ることができる。従って、基板1に高耐熱ガラスを用いることが可能になるだけでなく、その耐熱温度を下げることもできる。 【0035】 尚、非晶質シリコン膜4の形成に減圧CVD法を用いた場合、多結晶シリコン膜5の膜質が良好になる反面、処理温度が高くなるため基板1に石英ガラスを用いなければならない。一方、プラズマCVD法を用いた場合、多結晶シリコン膜5の膜質は減圧CVD法に比べれば劣るものの、処理温度が低くなるため基板1に高耐熱ガラスを用いることができる。従って、目的に合わせていずれかの方法を選択すればよい。 【0036】 工程5(図2参照);多結晶シリコン膜5を能動層として用いるプレーナ型の多結晶シリコンTFTを形成する。まず、多結晶シリコン膜5上にゲート絶縁膜6(膜厚;1000Å)を形成する。ゲート絶縁膜6の形成方法には以下のものがある。 【0037】 [1]酸化法を用いてシリコン酸化膜を形成する方法;高温酸化法(乾燥酸素を用いるドライ酸化法,湿った酸素を用いるウェット酸化法,水蒸気雰囲気中での酸化法),低温酸化法(高圧水蒸気雰囲気中での酸化法,酸素プラズマ中での酸化法),陽極酸化法などを用いる。 【0038】 この中では、900〜1200℃程度の高温酸化法が一般的である。 [2]被着法を用いてシリコン酸化膜,シリコン窒化膜,シリコン窒酸化膜を形成する方法;CVD法やPVD法を用いる。また、各膜を組み合わせて多層構造にする方法もある。 【0039】 CVD法によるシリコン酸化膜の形成には、モノシランまたはジシランの熱分解,有機オキシシラン(TEOSなど)の熱分解,ハロゲン化珪素の加水分解などを用いる。CVD法によるシリコン窒化膜の形成には、アンモニアおよびジクロルシラン(SiH2Cl2),アンモニアおよびモノシラン,窒素およびモノシランなどの熱分解などを用いる。シリコン窒酸化膜は酸化膜と窒化膜の両膜の特性をもつもので、CVD法によるシリコン窒化膜の形成の系に酸化窒素(N2O)を少量導入することで形成することができる。 【0040】 尚、ゲート絶縁膜6の形成方法にも高温プロセスおよび低温プロセスがある。高温プロセスでは、一般に前記した高温酸化法が用いられる。一方、低温プロセスでは、一般に前記した酸素プラズマ中での酸化法や被着法などが用いられ、処理温度が600℃程度以下に抑えられる。 【0041】 次に、ゲート絶縁膜6上にゲート電極7を形成して所望の形状にパターニングする。ゲート電極7の材質としては、不純物がドープされた多結晶シリコン(ドープドポリシリコン),金属シリサイド,ポリサイド,高融点金属単体,その他の金属などが用いられ、その形成にはCVD法またはPVD法が用いられる。 【0042】 続いて、自己整合技術により、ゲート電極7をマスクとして多結晶シリコン膜5にソース・ドレイン領域8を形成する。ソース・ドレイン領域8の形成方法にも高温プロセスおよび低温プロセスがある。高温プロセスでは、不純物をイオン注入後に高温の熱処理を行って不純物を活性化させる。低温プロセスでは、ホスフィンガス(PH3)またはジボランガス(B2H6)と水素ガスとの混合ガスによるイオンシャワーを照射することで、特別な熱処理工程を設けることなく不純物の注入と活性化を同時に行う。尚、低温プロセスでは、不純物をイオン注入後に600℃程度以下の低温で数時間〜数十時間の熱処理を行うことで不純物を活性化させる方法もある。基板1に高耐熱ガラスを用いた場合には、多結晶シリコン膜5の形成時だけでなく、ゲート絶縁膜6の形成時およびソース・ドレイン領域8の形成時にも低温プロセスを用いなければならない。 【0043】 そして、デバイスの全面に層間絶縁膜9を形成する。層間絶縁膜9の材質としては、シリコン酸化膜,シリケートガラス,シリコン窒化膜などが用いられ、その形成にはCVD法またはPVD法が用いられる。 【0044】 その後、ソース・ドレイン領域8とコンタクトするコンタクトホール10が層間絶縁膜9に形成され、ソース・ドレイン電極11が形成されて多結晶シリコンTFTが完成する。 【0045】 このように、本実施例によれば、多結晶シリコン膜5の結晶粒径が均一で且つ大きいため、基板1の全体にわたって素子特性にバラツキがない上に、優れた素子特性の多結晶シリコンTFTを形成することができる。そのような多結晶シリコンTFTをアクティブマトリクス方式LCDの画素駆動素子として用いれば、LCDのパネル全面にわたって均質で高品位な画像を表示することができる。また、素子特性の優れた多結晶シリコンTFTは、画素駆動素子としてだけでなく、周辺駆動回路にも使用することができるため、ドライバ一体型LCDを具体化することができる。さらに、多結晶シリコン膜5が短時間で形成されることから、多結晶シリコンTFTおよびLCDのスループットを向上させることができる。 【0046】 また、本実施例において、ゲート絶縁膜6およびソース・ドレイン領域8の形成に低温プロセスを採用すれば、基板1に高耐熱ガラスを用いてパネルサイズの大きなLCDを安価に提供することができる。 【0047】 ところで、LCDでは、画素駆動素子としての多結晶シリコンTFTに光が当たると、多結晶シリコンTFTの素子特性が変化して、性能劣化や誤動作を引き起こすことがある。本実施例においては、反射膜2が設けられているために、基板1側から多結晶シリコンTFTに光が当たることがなくなり、LCDの性能劣化や誤動作を防止することができる。 【0048】 尚、上記実施例は以下のように変更してもよく、その場合でも同様の作用および効果を得ることができる。 (1)反射膜2の成膜後にフォトリソ工程によって反射膜2の不要な部分をエッチング除去し、反射膜2を必要とする部分にだけアイランド形成する。 【0049】 (2)反射膜2を、光を吸収する膜(非晶質シリコン膜4が吸収しない波長の光を吸収する膜、または非晶質シリコン膜4に吸収されずに透過した光を吸収する材料による膜。以下、光吸収膜という)に置き代える。この場合には、非晶質シリコン膜4を透過したランプ光が光吸収膜によって吸収され、光吸収膜が加熱されることで光吸収膜および非晶質シリコン膜4に熱が蓄えられる。その結果、非晶質シリコン膜4からの潜熱の流出が少なくなり、非晶質シリコン膜4の加熱溶融を効率的に行うことができる。光吸収膜の材質としては、酸化チタン,酸化タンタル,窒化チタン,酸化アルミなどが用いられ、その形成にはCVD法またはPVD法が用いられる。 【0050】 また、可視光領域やその近傍の光はシリコンを含む多くの物質に吸収されるが、透明絶縁基板上に形成された非晶質シリコン薄膜は輻射のごく一部しか吸収しないため、大部分の光は透過する。そこで、光吸収膜の材質としては、シリコン系の化合物(非晶質シリコン,微結晶を含む非晶質シリコン,多結晶シリコン,酸化シリコン,窒化シリコン,窒酸化シリコン,炭化シリコンなど)を用いてもよく、その形成にはCVD法またはPVD法が用いられる。 【0051】 (3)反射膜2を、基板1よりも熱伝導率の低い材料による膜(以下、低熱伝導膜という)に置き代える。この場合には、非晶質シリコン膜4から基板1への潜熱の流出が少なくなり、非晶質シリコン膜4の加熱溶融を効率的に行うことができる。低熱伝導膜の材質としては酸化シリコンが用いられ、その形成にはCVD法,PVD法,LPD(液相成長)法,塗布法などが用いられる。 【0052】 (4)反射膜2と光吸収膜と低熱伝導率膜とをそれぞれ組み合わせる。例えば、反射膜2の上層に低熱伝導膜を形成する。また、反射膜2の上層に光吸収膜を形成する。また、反射膜2の上層に光吸収膜を形成し、その上層に低熱伝導膜とを形成する。これらの場合には、各膜の相乗作用により、本発明の効果をさらに高めることができる。 【0053】 (5)RTA法ではなくレーザアニール法に適用する。この場合には、非晶質シリコン膜4表面へのレーザスポット(レーザ光)の照射を複数回行うことで、加熱溶融された非晶質シリコン膜4中の潜熱が基板1に流出し難くなり、凝固速度が早くなるのが防止される。 【0054】 (6)多結晶シリコンTFTの製造工程において、多結晶シリコン膜5の形成後に、水素化処理を行うことで多結晶シリコンTFTの素子特性を向上させる。水素化処理とは、多結晶シリコンの結晶欠陥部分に水素原子を結合させることにより、欠陥を減らして結晶構造を安定化させ、電界効果移動度を高める方法である。 【0055】 (7)多結晶シリコン膜5のチャネル領域に相当する部分に不純物をドーピングして多結晶シリコンTFTの閾値電圧(Vth)を制御する。溶融再結晶化法で形成された多結晶シリコンTFTにおいては、nチャネルトランジスタではディプレッション方向に閾値電圧がシフトし、pチャネルトランジスタではエンハンスメント方向に閾値電圧がシフトする傾向にある。特に、水素化処理を行った場合には、その傾向がより顕著となる。この閾値電圧のシフトを抑えるには、チャネル領域に不純物をドーピングすればよい。 【0056】 (8)プレーナ型だけでなく、逆プレーナ型,スタガ型,逆スタガ型などあらゆる構造の多結晶シリコンTFTに適用する。 (9)多結晶シリコンTFTだけでなく、絶縁ゲート型半導体素子全般に適用する。また、太陽電池や光センサなどの光電変換素子,バイポーラトランジスタ,静電誘導型トランジスタ(SIT;Static Induction Transistor)などの多結晶シリコン膜を用いるあらゆる半導体装置に適用する。 【0057】 (10)絶縁基板1をセラミックス基板やシリコン酸化膜などの絶縁層に置き代え、LCDではなく密着型イメージセンサや三次元ICなどに適用する。 (11)多結晶シリコンTFTを、LCDではなくダイナミックRAM(DRAM)のメモリセル内の電荷転送素子やスタティックRAM(SRAM)のメモリセル内の負荷素子などに用いる。 【0058】 以上、各実施例について説明したが、各実施例から把握できる請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果と共に記載する。 【0059】 (イ)請求項1に記載の半導体装置の製造方法によって形成された多結晶シリコン膜を基板上に形成する工程と、多結晶シリコン膜下にゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜下にゲート電極を形成する工程とを備えた薄膜トランジスタの製造方法。 【0060】 このようにすれば、逆スタガ型または逆プレーナ型の多結晶シリコンTFTを得ることができる。 【0061】 (ロ)請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、基板上に、光を反射する膜、基板よりも熱伝導率の低い材料による膜、シリコンが吸収しない波長の光を吸収する材料による膜のうち少なくともいずれか一つの膜を形成する工程と、その膜の上に非晶質シリコン膜を形成する工程との間に、バッファ膜を形成する工程を加えた半導体装置の製造方法。 【0062】 このようにすれば、非晶質シリコン膜を溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する際に、前記膜と多結晶シリコン膜とが反応するのを防ぐことができる。 【0063】 ところで、本明細書において、発明の構成に係る部材は以下のように定義されるものとする。 (a)基板としては、石英ガラス,高耐熱ガラス,高耐熱樹脂,セラミックスなどのあらゆる絶縁材料による基板を含むだけでなく、表面にシリコン酸化膜などの絶縁層を設けた金属などの導電性基板をも含むものとする。 【0064】 (b)薄膜トランジスタとしては、プレーナ型だけでなく、逆プレーナ型,スタガ型,逆スタガ型などをも含むものとする。 (c)ゲート絶縁膜としては、高温の熱酸化法などの高温プロセスで形成されたシリコン酸化膜だけでなく、プラズマ酸化法,常圧CVD法,減圧CVD法,プラズマCVD法,ECRプラズマCVD法,光励起CVD法,蒸着法,スパッタ法などの低温プロセスで形成されたシリコン酸化膜,シリコン窒化膜,シリコン窒酸化膜などをも含むものとする。 【0065】 【発明の効果】 本発明によれば、結晶粒径が大きな多結晶シリコン膜を備えた半導体装置の製造方法を提供することができる。 【0066】 【図面の簡単な説明】 【図1】一実施例の製造方法を説明するための概略断面図。 【図2】一実施例の製造方法を説明するための概略断面図。 【図3】RTA装置の概略構成図。 【符号の説明】 1 絶縁基板 3 反射膜 4 非晶質シリコン膜 5 多結晶シリコン膜 6 ゲート絶縁膜 7 ゲート電極 8 ソース領域またはドレイン領域(ソース・ドレイン領域) 9 層間絶縁膜 10 コンタクトホール 11 ソース電極またはドレイン電極(ソース・ドレイン電極) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-06-21 |
出願番号 | 特願平6-269872 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 河本 充雄 |
登録日 | 2002-05-24 |
登録番号 | 特許第3311522号(P3311522) |
権利者 | 三洋電機株式会社 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 芝野 正雅 |
代理人 | 芝野 正雅 |