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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1107266
審判番号 不服2003-7444  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-26 
確定日 2004-11-17 
事件の表示 平成 6年特許願第121689号「車両用現在位置表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月10日出願公開、特開平 7-294278〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年4月25日の出願であって、平成15年2月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月22日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年4月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月22日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「請求項1】 一般道路に係るデータと自動車専用道路に係るデータとが区別されているデジタルカラー地図データにもとづいて画面に写し出されている道路地図上における自車の位置を求めて、その道路地図上に自車の現在位置を表示する車両用現在位置表示装置において、自車が道路地図の自動車専用道路上を走行していることを判定する手段を設け、その判定時に画面に写し出されている道路地図中の一般道路に係る表示色を背景色に近い色に変化させる手段をとるようにしたことを特徴とする車両用現在位置表示装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「一般道路に係る表示色を背景色またはそれに近い色に変化させる手段」から「一般道路に係る表示色を背景色に近い色に変化させる手段」と並列的記載を選択・限定するものであって、特許法(平成5年改正法)第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-72972号公報(平成5年3月26日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
a.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の車載用ナビゲーションシステムは以上のように構成されているので、自動車専用道路を走行中に詳細な地図を表示すると走行に不要な道路まで表示され運転者にとって分りにくく危険であった。」

b.「 【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車載用ナビゲーションシステムは、道路網記憶手段と、現在位置検出手段とを有し、該現在位置を道路地図上に表示するようにした車載用ナビゲーションシステムにおいて、少なくとも自動車専用道路を所定速度以上で走行中には、詳細な地図を表示しないようにする詳細地図表示規制手段を有することを特徴とする。」
c.「【0009】・・・2aは一般道路から自動車専用道路までの全道路網、及び全道路網を構成する全道路セグメントの経路探索に用いられる情報を格納する経路探索用道路網記憶部、2bは一般道路から自動車専用道路までの全道路網、及び全道路網を構成する全道路セグメントの現在位置の演算に用いられる情報を格納する現在位置演算用道路網記憶部・・・30は現在位置演算部5から出力される車両の現在位置から自動車専用道路を走行中であるかないかの判断を行い自動車専用道路を走行中であれば詳細表示を規制する詳細道路地図表示規制部、・・・」
なお、この記載から、詳細道路地図表示規制部30は、自動車専用道路を走行中であるかないかの判定手段を備えていることが明かである。
d.「【0012】図2において、まずステップ101で自動車専用道路を走行中かどうか判断され、自動車専用道路を走行中であればステップ102で所定速度以上で走行中であるか判断され、所定速度以上であればステップ103で詳細地図の表示規制が行われ、所定速度以上でなければステップ104へ進み詳細地図の表示規制が解除される。ステップ101で自動車専用道路の走行中でなければ、ステップ102から104は実行されず、ステップ105で詳細地図の表示規制の解除が行われる。」

との記載が認められる。
そして、上記記載において、技術常識を考慮すると、以下のことが言える。
イ) 上記b.において、「一般道路から自動車専用道路までの道路網記憶手段」を備えるとの記載及び上記c.における「全道路網を構成する全道路セグメントの経路探索に用いられる情報」、「全道路網を構成する全道路セグメントの現在位置の演算に用いられる情報」との記載は、道路地図を表示するための装置である車載用ナビゲーション装置において、一般道路から自動車専用道路まで、道路の種類に応じて複数種に区別して記憶していることは自明のことである。
ロ)また、上記d.において、自動車専用道路以外の詳細地図即ち、複数種類の一般道路からなる道路地図を表示しない制御をしているのであるから、道路網記憶手段に記憶されている道路網データは、少なくとも一般道路と自動車専用道路を区別していることは明かである。
ハ)又、このような記憶手段の「道路網」データはデジタルデータ形式とし、かつ、カラー表示することも普通に行われていることである。
これら点も考慮すると、引用例1には、
「 一般道路に係るデータと自動車専用道路に係るデータとが区別されているデジタルカラー道路網データと、現在位置検出手段とを有し、現在位置を道路地図上に表示するようにした車載用ナビゲーションシステムにおいて、自動車専用道路を所定速度以上で走行中であるかないかを判定するとともに、自動車専用道路を所定速度以上で走行中であると判定された場合は、一般道路データからなる詳細地図を表示しないようにする詳細地図表示規制部を有することを特徴とする車載用ナビゲーションシステム。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。
(2-2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-137678号公報(平成3年6月12日公開、以下「引用例2」という。)には、以下の記載が認められる。
a.「車両の停止中に画面の地図を見ることは問題ないが、走行中に画面の地図を視認したとき、詳細な非幹線道路まで目に入れることになり紛らわしさから幹線道路を確認するために時間がかかって前方不注意が惹起され、安全走行に支障を来す恐れがあった。」(2頁右上欄8行〜13行)の課題、b.「車載用ナビゲーション装置において、表示器の画面と異なるカラーで表示される地図の背景や道路について、移動体の停止時にはそれぞれを異なるカラーで表示し、移動体の移動時には地図の背景色と非幹線道路とを同一のカラーで表示する」(2頁右上欄14行〜19行参照)との発明(以下「引用発明2」という。)。
c.そして、この構成により「移動体の運転操作者に紛らわしい情報を与えないようにして、運転操作時における安全性を高める」(2頁右上欄19行〜左下欄1行)との効果。

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「現在位置」は本願補正発明の「自車の位置」に相当し、又引用発明1の詳細地図表示規制部の「自動車専用道路を所定速度以上で走行中であるかないかを判定する」との記載は本願補正発明の「自車が道路地図の自動車専用道路上を走行していることを判定する手段」に相当し、更に引用発明1は車載用ナビゲーションにおいて現在位置を表示しているときの地図表示に関するものであって本願補正発明の「車両用現在位置表示装置」に相当するから、
両者は、「一般道路に係るデータと自動車専用道路に係るデータとが区別されているデジタルカラー地図データにもとづいて画面に写し出されている道路地図上における自車の位置を求めて、その道路地図上に自車の現在位置を表示する車両用現在位置表示装置において、自車が道路地図の自動車専用道路上を走行していることを判定する手段を設けたことを特徴とする車両用現在位置表示装置。」の点で一致し、
自車が道路地図の自動車専用道路上を走行していることを判定時に、本願補正発明は「その判定時に画面に写し出されている道路地図中の一般道路に係る表示色を背景色に近い色に変化させる手段をとるようにした」と規定しているのに対し、引用発明1は、詳細表示規制部により「一般道路データから成る詳細地図を表示しないようにする」点と、単に表示したくない部分を表示しないだけで、具体的にどのようにして表示しないように制御するのか記載していない点で相違している。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
車載用表示装置において、画面上に表示された道路地図中の所定の道路についての表示制御を背景色との関係で行うことは、引用例2に記載されている。
具体的には、車載用ナビゲーション装置において、「表示器の画面と異なるカラーで表示される地図の背景や道路について、移動体の移動時には、地図の背景色と非幹線道路とを同一のカラーで表示すること」との引用発明2が記載されている。この場合、同じ部分を他のカラー(色)に変えるのであるから、本願補正発明の「色を・・・に変化させる」と同義と認められる。
即ち、引用発明2は、車載用ナビゲーション装置において、地図上で表示したくない道路等のカラーを背景色に変えてしまい背景中に埋没させ、結果として操作者を含む人間の目に道路を表示しないものであるから、引用発明1においても、表示したくない一般道路データから成る詳細地図(道路)を消すための手段として、引用発明2のように表示したくない非幹線道路のカラーを背景色と同じカラーに変えることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、本願発明は、道路地図中の重要でない部分(一般道路)を背景色と同じ色にせず、背景色と近い色に設定してコントラストを小さくし、見えにくくしているが、このような技術は、例えば、特開平3-135719号公報(「細街路部のパレット色を背景に近いものに変化して当該背景画面とのコントラストを小さくして、目立たないようにした変更モード・・・高速道路や国道等の基本となる幹線道路だけが目立つ様にして」(4頁左下欄15行〜右下欄5行))、特開平5-210348号公報(【(0019】・・・交差点B2を含めて進行路B1以外の情報の色を同系色にする。・・・これによって、他の情報の認識性を損うことなく交差点B2及び該交差点B2に関わる進行路B1の情報を目立つようにして、それらの認識性を高めることができ」)と記載されているように周知慣用の技術にすぎないので、引用発明1に引用発明2を適用する際、一般道路の色を背景色と同じ色を用いず、背景色と近い色を用いることは、一般的に適宜実施し得ることにすぎない。
そして、本願発明のように構成しても、その効果は、引用例1,2及び周知技術から当然期待し得ることと認められる。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法(平成5年法)第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年4月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年2月28日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 一般道路に係るデータと自動車専用道路に係るデータとが区別されているデジタルカラー地図データにもとづいて画面に写し出されている道路地図上における自車の位置を求めて、その道路地図上に自車の現在位置を表示する車両用現在位置表示装置において、自車が道路地図の自動車専用道路上を走行していることを判定する手段を設け、その判定時に画面に写し出されている道路地図中の一般道路に係る表示色を背景色またはそれに近い色に変化させる手段をとるようにしたことを特徴とする車両用現在位置表示装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明を特定する事項である「一般道路に係る表示色を背景色に近い色に変化させる手段」について、「一般道路に係る表示色を背景色またはそれに近い色に変化させる手段」と並列的な構成を付加したものである。 そうすると、構成要件の一部を選択することにより本願発明の構成要件と全て一致する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、引用例2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-06 
結審通知日 2004-09-14 
審決日 2004-09-28 
出願番号 特願平6-121689
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 村上 哲
大野 覚美
発明の名称 車両用現在位置表示装置  
代理人 鳥井 清  

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